MILLENIUM / HOURGLASS (2000)

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なぜこのタイミングで18年前のアルバムである本作を取り上げるかというと、メタル系ニュースを日々チェックしている方であればご存知の通り、本作でギターをプレイしている中心人物、ラルフ・サントーラが5月31日に心臓発作を起こして昏睡状態に陥り、6月6日、家族の意思によって生命維持装置が外され、死去したことがきっかけです。

まだ51歳だそうですよ(一部サイトでは48歳と報じられていましたが、51歳が正しいようです)…。早すぎますよね。

私がラルフ・サントーラというギタリストの存在を認知したのは、95年に日本盤がリリースされたEYEWITNESSというバンドのデビュー作"EYEWITNESS"がメロディアス・ハードの傑作として『BURRN!』誌で高く評価されていたのがきっかけだった。

その後EYEWITNESSは当時流行していたグランジ/オルタナティブ・ロックを思わせるダークなサウンドに「転向」し、デビュー作を気に入ったファンを落胆させたが、その不評を知ってか同じメンバーでデビュー作同様の音楽性を演じて見せたのがこのMILLENIUMだった。

デビュー作"MILLENIUM"(1997)、セカンド・アルバム"ANGELFIRE"と佳作を重ね、メロハー・マニアの支持を固めつつあるタイミングでヴォーカリストだったトッド・プラントが脱退、当時所属していた『NOW & THEN』レーベルからの推薦で加入したのが本作で歌っているヨルン・ランデ(当時元VAGABOND, THE SNAKES, ARK他)だった。

ラルフ・サントーラとヨルン・ランデ。今にして思えばHR/HMシーンで最も過小評価されたギタリストとヴォーカリストの競演だったといえるのかもしれない。

もちろん2人とも無名というわけではない。しかし、その実力に対して正当な成功を得た(得ている)とは、彼らの実力を評価するファンであれば誰一人思わないだろう。

そんな2人が揃ったアルバムは本作1枚限りで、次作"JERICHO"(2004)ではオリジナル・シンガーであるトッド・プラントが復帰していたが、それだけに本作が放つマジックは際立つ。

個人的にはメロディアス・「ハード・ロック」とは本来こういう音楽を言うのではないか、とさえ思うマスター・ピースである。

「メロディアス・ハード」という音楽に対して「ポップスがちょっとハードになっただけじゃん」という意地悪な意見を耳にしたことがあり、個人的にはそれが良かったりもするのだが、本作はキャッチーでありつつもちゃんとロックならではのエナジーと味わいがある。

ヨルン・ランデというシンガーの資質もあり、AOR的なメロディアス・ハードを好む人にとっては「パワフルすぎる」という意見があるかもしれないが、ややもすると人畜無害なBGMになってしまいがちなメロディアス・ハードというジャンルにあってこのアルバムに漲るパワーは貴重である。

パワー・メタルばりのスピード・チューンから、明るくキャッチーに躍動する曲、ドラマティックな雰囲気の曲から、HR/HMの枠を超えるようなアダルトかつムーディーな楽曲まで、クオリティの高い曲がバラエティ豊かに揃っている。

本作でも見事な聴き所となっているラルフ・サントーラのギター・ワークはやはり際立っており、当時一部で「アメリカのマイケル・シェンカー」などと呼ばれていたが、個人的にはむしろゲイリー・ムーアやジョン・サイクスに近いフィーリングを感じる。

なお、ラルフ・サントーラはギターだけでなくキーボードもプレイしているが、本作についてはドン・エイリー(RAINBOW, OZZY OSBOURNE, GARY MOORE, DEEP PURPLE他)や、ダグ・ストッケ(TNT, VAGABOND)などもゲスト・キーボーディストとしてクレジットされている。

次作"JERICHO"(2004)発表以降はICED EARTHやセバスチャン・バック(元SKID ROW)のバックでプレイしつつ、なんとデス・メタル・バンドのDEICIDE、さらにOBITUARYに加入。2000年代後半以降にメタルを聴き始めた人にとってはすっかり「エクストリーム・メタル・バンドのギタリスト」というイメージになってしまった。

まあ、私も彼を生で観たのはLOUD PARK 08で観たOBITUARYだけですが。

本作こそがラルフ・サントーラの(もしかするとヨルン・ランデにとっても)ベスト・ワークだと思っている私としては、今回の訃報を受けてのニュースサイトでの見出しがだいたい「元DEICIDE / OBITUARYのギタリストが死去」という感じになっているの見て、けっこうやるせない気分になりましたね。

そもそもDEICIDEやOBITUARYはMILLENIUMと違ってラルフ・サントーラのバンドじゃないですからね。これほどの才能と実力を持ちながら自分のバンドで成功できなかったというのが世の中の厳しさですね。

あれだけメロディックなHR/HMが逆風だった90年代にこういう王道のメロディアス・ハード・ロックを実践していた人が一番好きな音楽がデス・メタルだったとはとても思えず(もちろん嫌いではなかったからこそ仕事として受けたのだろうと思いますが)、そんな人が「デス・メタルの人」として葬られていく…。人生というものについて考えされるものがありますね。【88点】



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コメント

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自分もこの作品はヨルンとラルフのベスト・ワークの一つだと思います。ヨルンは2000年代前半様々なタイプのバンド/プロジェクトに参加していた頃の方が、個人的には気に入った作品が多いですね。

ラルフの名前を最近聞かないなと思ったら(Deicideに参加して3作目が最後でした)こんなことに.....彼が参加した中でも特に好きなMonarchとこの「Hourglass」を聴いて、自分なりに哀悼の意を表したいと思います。
R.I.P.

48歳と報じていたサイトもあったので、同い年だったのかと驚きが・・。というのも、日本で注目された頃、かなり厳つ目のアーティスト写真をみて、てっきりかなり上だと思ってました。
変な表現ですが流れるように昇っていくギターは、なんで熱苦しいヴォーカルと組みたがるのかという疑問と共に心に残っています。私的には北欧声と組んで欲しかった。
そのあと、デスメタルへいって縁遠くなりましたが、試聴機などでチェックした時は、さすがだなと感じていました。
早すぎますね。歳が近かったので、よりこたえますね。

No title

個人的にはanglefireの方が叙情性が高くて好きですがこっちも名盤ですね。
wikiにeyewitnessやモナークの記事がないですが、
彼は作曲家としても超一流ので、それは残念ですね。

速けりゃいいんだろ、みたいなメタルギターの中にあって、
タメやビブラートといった美しさを教えていただいた貴重なギタリストでした。

近年、速さ以外の指標ではメタルギターが評価されることがないため、
今後益々こういったギタリストは評価されないでしょうね。

ご冥福をお祈りします。

>YTさん

ヨルン・ランデに関しては同感です。色々なプロジェクトで多彩に存在感を発揮していたころのヨルンは凄かったですね。

私も最近ラルフ・サントーラの名前を聞いていないと思いつつ、それは単に私がOBITUARYなどの活動にそれほど注意を払っていないからだろうと思っていましたが…。

せめて死後の再評価を願いたい所です。

>大介山さん

48でも51でも若いことに変わりはありませんが、おっしゃる通りルックスが厳ついことがメロハーよりもデス・メタルに引き寄せられたのかもしれません(?)。

私にとっては一回り上なのでまだしもですが、年齢の近い方にとっては、70歳近くになっても現役なミュージシャンもいるだけに、よりショッキングな訃報だったでしょうね…。

>名無しのメタラーさん

たしかに曲は"ANGELFIRE"の方が叙情性的で哀愁が強かったですね。
個人的にトッド・プラントの歌声があまりハマっているように思えなかったのですが…。

たしかに近年テクニック的にはレベルが上がっていますが、こういうHR/HMならではのワビサビのあるギターを弾くプレイヤーは減りましたね。

練習で身に付くものではない、ということなのかもしれませんが…。