LOUD PARK 2023 感想
2017年以来、約6年ぶりに復活したLOUD PARK。正直な所、興行として大成功しているフェスとは言い難かったし、DOWNLOAD FESTIVAL JAPANが実質後継イベントとなっていたため、復活の可能性は少ないと思っていましたが、「2023年限定」とエクスキューズされる形で開催されました。
恐らく、KNOTFEST JAPANが翌週に行なわれるという状況が、本来DOWNLOAD FESTIVAL JAPANとして行なわれる予定だったイベントを、より「PANTERA世代」への認知度が高く、「復活開催」という話題性になるLOUD PARKというブランドでの開催に踏み切らせたのだと思います。
いずれにせよ、私にとってLOUD PARKというのは非常に思い入れの深い名前なので、この開催についてはなかなか感慨深く、楽しみにしていました。
ただ、天気は残念ながら雨。この文章を書いているKNOTFEST初日が好天に恵まれたことを考えると、クリエイティブマンとしてはちょっと祟られた気分だったかもしれません。
私が現地である幕張メッセに到着したのは開場時間である10時ちょうどくらい。本当はもう20分くらい前に着いている予定だったのですが、地元駅で電車を1本逃して5分後の電車に乗ると、海浜幕張駅への到着が15分後になってしまう。
天気が悪いこともあってか、入口までの行列の歩みは遅い。結局30分以上かかって入場する。遅刻して行くことの方が多かったため、もしかすると開場時間合わせで行くとこれくらいの時間がかかるのが当たり前だったのかもしれませんが、もはや記憶になく。
ショートカットして入場できるGOLDチケットをケチらず買っておけばよかったとちょっと後悔しました。

◆Phantom Excaliver
というわけでオープニング・アクト1バンド目のPhantom Excaliverは観れていません。入場列に並びつつ、微かに漏れ聞こえてくる音で、「ああ、やってるな」というのを感じるのみでした。
長年LOUD PARKに通っていた人であれば、彼らが毎年LOUD PARKに出没し、さいたま新都心駅への帰り道でサンプルCDなどを配っていたのは、フロントマンであるかっちゃん氏のインパクト大な風貌もあって多くの人が記憶していたのではないかと思います(残念ながら私には一度もサンプルCDをくれませんでしたが/笑)。
そんな言ってしまえば「オーディエンス側」だった彼らがオープニング・アクトという扱いとはいえLOUD PARKに出演するというのは本人たちはもちろん、私のような「知っているだけの部外者」にとってもなかなか感慨深い話で、その姿は観たかったのですが。
基本的には私の好きなメロディック・パワー・メタル色の強いサウンドで、MVも毎回チープなりに面白く作られていて結構楽しみにしていただけに残念です。

◆BRIDEAR
オープニング・アクト2バンド目である日本のガールズ・メタル・バンド。このバンドの演奏中に私は入場しました。まだこの時点ではホールはガラガラ、という印象でしたが、彼女らが演奏しているULTIMATE STAGE側の前方にはそれなりに人が集まっていました。
サウンドの印象はALDIOUS以降の典型的なガールズ・メタルという感じで、オープニングの盛り上げにはこういうわかりやすい歌謡メタルはうってつけなのではないかと思いました。
職業柄イベント会場の動線などが気になってしまうタチなので、失礼ながらステージに集中するというよりは、どこに行けばそれぞれのステージの前方に行けるのか、トイレの位置はどこなのかなど、場内を歩き回って確認しながら横目に見ていた感じです。

◆JASON RICHARDSON & LUKE HOLLAND
ジェイソン・リチャードソン(G)とルーク・ホランド(Dr)によるデュオ。正直、このLOUD PARKでの出演告知を見るまで全然知らないアーティストでした。
公式サイトの紹介を見ると、ジェイソン・リチャードソン氏はかつて、つい先日来日公演を行なったばかりのプログレッシヴ・メタルコア・バンドBORN OF OSIRISのメンバーだったこともあり、現在ALL THAT REMAINSのツアー・ギタリストも務めているなど、私の知っているバンドとの接点はありましたが、その程度の経歴では(と言っては失礼ですが)、私のようなマニアックではないメタル・ファンが認知することは難しく。
とはいえ「未知との遭遇」こそがフェスの醍醐味でもあり、あえて「予習」はせずに観ることにしました。入場時にもらったドリンクチケットをオフィシャル・バーでビールに換え、午前ビールをキメつつステージ後方で観ることに。
結論から言えば、インスト中心の音楽でフェスらしい高揚を得ることは難しく、演奏は予想通りテクニカルでしたし、時折良いメロディなども聞こえてきましたが、なんとなく「鑑賞」という感覚でステージを観ていました。
途中、ヴォーカルはレコーディング音源を流すことで歌モノの曲もプレイし、そういう「カラオケ演奏をバックに歌う」の逆バージョンは個人的に新鮮な体験で印象に残りました(インスト系アーティストのライブではよくあることなのかもしれませんが)。
まあ、このLOUD PARK 2023自体を1枚のメタル・アルバムだと考えれば、彼らはメタル・アルバムの1曲目にありがちな序曲的インストとしての役割を担ったという感じでしょうか(失礼)。
◆H.E.R.O
デンマーク出身のバンド。バックの演奏はなかなかヘヴィで、本日のサウンドも耳栓がないとキツいレベルでしたが、基本的にはヴォーカル・オリエンテッドなサウンドで、そのヴォーカル・メロディはアレンジを変えればイマドキのポップ・ミュージックとして聴けてしまいそうな洗練された大衆性があり、なかなか耳を引き付ける魅力を感じます。
これは前の方で観ようかな、と前方エリアに向かってみると、普通に進めるのはステージからかなり遠い位置まで。見るとGOLDチケット保持者向けのVIPエリアはかなり広くとられており、一般エリアとの格差はこれまでに見たVIPエリアが設けられた他のフェスと比べても大きいように感じられた。
2バンド目である彼らの段階でこれでは先が思いやられるというか、私が観たいSTRATOVARIUSがマトモに観られる気がしなかったので、ここで私は「金で解決する」という大人の決断に至り、インフォメーションカウンターに向かってGOLDチケットにアップグレードしてステージに戻りました。
GOLDチケットで入れるエリアは相当に快適で、さすがに最前近くは人が密集していてよほどの熱意がないと厳しいですが、だいぶ前まで行って観ることができ、彼らのヘヴィなのにスウィートな、ユニークなサウンドに浸りました。
そう、彼らの北欧出身らしい哀愁を纏いつつも現代的なそのメロディは、古典的なHR/HMのキャッチーさとは趣を異にするもので、盛り上がる、というよりは個人的には「浸る」という感覚のもので、これまであまりLOUD PARKでは体験したことのない感覚を味わった気がします。
YouTubeにあるMVの再生回数やSNSのフォロワー数などを見る限りまだまだ人気バンドというには程遠いようですが、何かきっかけがあれば大ブレイクしてもおかしくないバンドだなと思いましたし、だからこそ日本のソニーミュージックも結構推している感じなのでしょうね。
◆OUTRAGE
LOUD PARKではもはや常連というべき名古屋のOUTRAGE。彼らのステージを観るのは前回のLOUD PARK以来だ。
1曲目、私が(OUTRAGEの曲としては)知らない曲でスタートする。最新作"RUN RIOT"(2020)はチェックしていなかったので、そこからの曲だろうか、と一瞬思ったが、どうにも曲には聞き覚えがある。
恥ずかしながら気付いたのはサビに至ってからで、THIN LIZZYの"Thunder And Lightning"だ。なんでまたこの曲? いやカッコいい名曲であることは間違いないのですが、彼らがプレイする必然性が見えず。
その後3曲ほど、私にとっては耳馴染みのない曲がプレイされる。これは、私の愛した「スラッシュ・メタルとしてのOUTRAGE」を少なくとも今回のステージで演じる気はないんだな、と感じました。
近年の彼らのアルバムやステージからも、彼らの現在の志向がヘヴィ・メタル然としたものよりも、もっとラフで、20世紀の一時期に流行った言葉で言えばスポンテニアスな感覚を持った荒々しさを放っている。
個人的な嗜好を別にすればそれはそれでいいし、彼らの活動規模を考えると音楽だけで生計を立てているとは思えないので、私のような「過去の作品は好き」という程度のファンの期待に応えるよりは自分たちがやりたいことを優先する、というスタンスでいいと思うのですが、個人的に受け付けなかったのがフロントマンである橋本直樹氏のMC。
目深にニット帽を被り、フラフラしたステージアクションも職質必至の挙動不審さでしたが、喋ることはもう完全に酔っ払いのそれで、実際に飲酒していたのかどうかは不明ですが、むしろ泥酔しないでアレだとしたら逆にヤバいでしょという感じのMCは正直安っぽい飲み屋でアブないオヤジに絡まれている感覚で、私の好きな曲をやらなそうなこともあり、退出して飲食ブースに向かいました。
そしてラウパ恒例のケバブ屋さんでケバブデラックスを購入し、GOLDチケットにアップグレードした際にもらったGOLDチケット用のドリンクチケットを再びビールに換え、残りのOUTRAGEの曲をBGMに飲み食いしていました。
てか、ケバブデラックス、レシピ変わってて価格は上がっているにもかかわらず満足感が下がっているのが残念でしたね…。

◆BREED FROM WITHIN
スコットランド出身のメタルコア・バンド。日本盤が出ていないと思われるこのバンドがなぜ出演しているのか不明ですが、LOUD PARKは2006年というメタルコア全盛期に始まったこともあってか、特に初期はメタルコア色の強いアーティストがラインナップの中核を担っていた観があり、そういう意味でこういうバンドの出演は「ラウパらしさ」を担保する上で必要だったと思います。
検証の結果、一番ステージ全体がよく見えるのはPAブースに挟まれたGOLDチケット用のデッキであるという結論に至ったため、そこで見物。
ヴォーカルのスコット・ケネディが場内アナウンス的には禁止されているサークル・ピットを煽り、実際にサークル・ピットが生まれている様が一段高いGOLDデッキからは観ることができ、「ああ、ラウパだな」という感覚になりました(いや、別にラウパ以外のフェスでもピットは生まれているのですが、大きなピットを観たのはラウパが初めてだったので)。
GOLDデッキの上では4歳くらいの女の子とそのお母さんと思われる女性が彼らの音楽に合わせて踊っており、音楽は色々な人が様々な楽しみ方をしているんだな、とダイバーシティを感させられました(?)。
ウォール・オブ・デスは不発気味でしたが(苦笑)、最後の曲ではヴォーカリストがステージからダイブするなど、非常にアグレッシヴなステージで会場を盛り上げていました。正直、個人的にはこのバンドからラウパが始まった感じがします。
そしてその最後の曲を始める前、ヴォーカルの人が「This is the Last Song for Tonight !」と言ってから、まだ14時過ぎくらいであることに思い至ったのか「ん?」という感じの怪訝な顔になり、「Today」と言い直したのがかわいらしかったです(笑)。
◆AMARANTHE
DOWNLOAD FESTIVAL JAPAN 2019に出演した際は寝坊して観損ねてしまったため、ニルス・モーリン(DYNAZTY)加入後の彼らを観るのは初めてで、結構楽しみにしていました。
そして総論として期待通りのアッパーで盛り上がる華やかなステージが展開され、楽しめました。
引き続きGOLDデッキで鑑賞していましたが、私のすぐ前方にノースリーブにショートパンツという露出度高めでギャルギャルしい、あまりメタルのライブではお見掛けしないタイプの女性が踊りまくっていて、EDM的なニュアンスのある彼らの音楽は、いわゆる『BURRN!』読者ではないタイプのリスナーも惹きつける魅力があるのかなと思いました。
FEELCYCLEにハマっている会社の同僚(非メタルリスナー)も、「FEELCYCLEのプログラムで試しにメタルをセレクトしてみたんですけど、AMARANTHEってバンドいいっすね」と言っていたので、ある意味本日一番大衆性の高い存在だったのかもしれません。
ニルス・モーリンも期待通りスター然とした存在感と力強い歌唱力を示していて、彼の本業である(はずの)DYNAZTYのライブを観たいという気持ちが一層募ると同時に、逆にちょっと存在感が強すぎて、ちょっとこのバンドのメイン・ヴォーカルであるはずのエリゼとちょっとぶつかっているような気がしました。
とはいえ、"Strong"をプレイしている時にはエリゼがニルスの手を握るなど仲は良さそうでしたが。
グロウル担当のツアー・ゲスト・シンガーの声がちょっと私が苦手なタイプで(ブルーの髪にインパクトがあって、ルックスは良かったですが)、そういう意味では初期ラインナップが一番AMARANTHEのヴォーカル・フォーメーションとしては完成度高かったように思いましたが、冒頭述べた通り、全体的に華があって楽しめるステージだったと思います。

◆CARCASS
このタイミングで、これまでも何度か一緒にLOUD PARKを観ている大学以来の友人と合流。彼は今回のLOUD PARKではCARCASSとPANTERAにしか興味がなく、私と違って知らないバンドのライブを観ることは好まないタイプなのでこのタイミングからの参加に。
友人はGOLDチケットではなく一般チケットなので、私もGOLDではない一般エリアでCARCASSを鑑賞。
CARCASSの出自はグラインドコアという、HR/HMというよりはむしろパンク/ハードコアの文脈にあるもののはずなのですが、現在の彼らのサウンドからはHR/HM、それもかなり古典的なそれのフィーリングが強く感じられる。
それは必ずしも北欧のメロディック・デス・メタル・バンドが持つようなHR/HMの素養とは異なるニュアンスなのですが、いずれにせよ私のような、真性のエクストリーム・メタルを苦手とする人間でも楽しめる魅力があります。
ただ、その出音の大きさは間違いなくエクストリーム・メタルのそれであり、受け止めるのにかなりの体力を要するもので、ここしばらく業務多忙で疲労が蓄積している身にはなかなか堪える時間帯。
"HEARTWORK"に"SURGICAL STEEL"という、私が比較的聴き込んでいるアルバムからの曲の時はまだいいのですが、あまり記憶にない曲をプレイされている時には時折睡魔を感じてしまったのが実情で、終演後、オフィシャルバーに行ってレッドブルを注入するという判断に至りました(苦笑)。
どうでもいいですが、ジェフ・ウォーカー(Vo, B)と、ビル・スティアー(G)って、パッと見とても1歳しか違わないように見えませんよね…。いや、ジェフが老けているというよりはビルが若々しい、ということなのですが。

◆STRATOVARIUS
私にとって「本日のハイライト」であるこのバンドについてはちゃんとステージが見える場所で観たいので、いったん友人と別れ、GOLDデッキの前方の見やすい位置に陣取りました。
このバンドについてはもう何回もライブを観ているのですが、そしてそれは毎回しっかり満足させてくれるから観に行きたくなるいうことで、個人的な音楽の好みとパフォーマンスのクオリティの掛け算によって算出されるライブにおける満足度の高さは個人的にARCH ENEMYとこのバンドが現在のメタル・バンド界隈における双璧だと思っています。
最新アルバムからの"Survive"で幕を開け、続く"Eagleheart"の冒頭は機材トラブルであの印象的なキーボード・リフがノイズに変わってしまっていたものの、キャッチーなサビで合唱を誘います。
「We are STRATOVARIUS from Finland, We Play POWER METAL!」という力強いMCの後、クラシカル&テクニカルなインスト・ナンバー"Stratoshpere"がプレイされて、あらためて彼らの高い演奏力をオーディエンスに示しつつ、立て続けに彼らのレパートリーの中でも屈指のパワー・メタル・ナンバー、"Father Time"によって「古典的なメタルの魅力の何たるか」をLOUD PARKに来ているオーディエンスにアピール。
その後もオーディエンスのシンガロングを誘うキャッチーなナンバーを数多く繰り出し、ラストの"Hunting High And Low"では10年前にLOUD PARK 13の時と同様の大合唱を引き出し、場内に一体感を生み出しました。
個人的には最新作から"Frozen In Time"をやるなら他にやるべき曲があったのではないかという気がするのと、"Eagleheart"、"Paradise"、"Unbreakable"というキャッチー系の曲の比重が高めだったのを、もう少しメタリックな曲に振ってくれた方が盛り上がったのではないかという気がしますが、ティモ・コティペルトのコンディションは絶好調という感じではなかったので、「歌いやすい曲」に寄せたのかもしれません。
いずれにせよ、最後の来日公演から早や7年、彼らももう若くはないということ、そしてコロナ禍真っ盛りだった2020年、21年の間はライブもほとんどやっていなかったこともあり、「もしかして衰えているのでは…」とちょっと危惧していましたがそれは全くの杞憂で、結論から言うとここで展開されたパフォーマンスはこれまで通り、メロディック・メタルの王道を行く、堂々たるものでした。
ライブ終了後、友人と再び合流して「いや~、これこそ俺がメタルに求めているものだわ」と言うと、友人からはすげなく「俺は違う」と言われてしまいました(苦笑)。恐らく、彼にとってSTRATOVARIUSの音楽はEvilさが足りないのだと思われます。
◆NIGHTWISH
個人的にSTRATOVARIUSの次に観たかったバンド。こちらもフィンランド出身ということで、私にとってこの日は今はなき『FINLAND FEST』だったのかもしれません(?)。
ただ、前回観てからマルコ・ヒエタラ(B, Vo)という、このバンドのメタル・サイドを象徴するカリスマ・メンバーが脱退していたこともあり、その点は不安材料でした。
何しろ、"Wish I Had An Angel"や"Bye Bye Beautiful"といった、私にとって彼らの楽曲の中で最も好きな曲はマルコ・ヒエタラのヴォーカル・パートあっての楽曲だったので。
そして実際、それらの楽曲はプレイされなかったのですが、それでいてライブが終わった時の満足感を考えると、やはり彼らの音楽の素晴らしさは特定のハイライト曲に依存するものではないということが証明されたように思います。
妊娠中だというフロール・ヤンセン(Vo)のヴォーカルも素晴らしく、ターヤ時代の曲もアネット時代の曲も全く過不足なく歌い上げるその力量は非凡としか言いようがなく、楽曲の良さはもちろん、彼女の歌唱そのものに鳥肌が立つことも一再ではありませんでした。
そのスケール感はもはやメタル・バンドというよりはオーケストラという様相を呈していますが、PANTERAをはじめとするエクストリームなサウンドで暴れることだけを目的にこの場に集った荒くれ者たちでさえ、イマジネーションを刺激するイメージ映像と共に展開されるドラマティック極まりないサウンドスケープに人の子として何かしら感じるものはあったのではないかと思います。
そのドラマツルギーはラストを飾った大作"Ghost Love Score"で頂点を迎え、幕張をNIGHTWISHの世界に染め上げました。翌日から1週間、私の脳内でずっと鳴り響いていたのはこの"Ghost Love Score"です。
◆KREATOR
ドイツが産んだスラッシュ・メタル・ゴッド、KREATORは2014年以来9年ぶりのLOUD PARK出演。
LOUD PARK名物といえば一般的なスタンディングの会場では作り得ない大きなサークル・ピットなわけで、ある程度以上にアグレッシヴなバンドであればエクストリーム系のバンドに限らず発生するわけですが(過去ANGRAやDRAGONFORCEでも発生していました)、これまで特に印象的だったのは、おそらくフェス史上最大の直径に達したと思われる2011年のUNITEDのものと、複数のピットが結合し、もはや「サークル(円)」とは呼び難い、何とも形容できないアメーバ状の奇怪な形態になった2014年のKREATORのものでした。
あの狂宴が再び繰り広げられるのか…と思うと戦慄にも似た緊張感が身体を走りますが、STRATOVARIUSにNIGHTWISHという私的2大クライマックスを経て個人的にはかなり消耗しており、この後にPANTERAが控えていることを考えると、KREATORで前方に行くことは即ち死を意味します。
PANTERA終演後だと混みそうなのでこのタイミングでクロークから荷物を引き取った後、小腹も空いてきたタイミングだったので、場内下手(しもて)後方に設けられていたGOLD専用バーでステーキサンドとビールを購入し(しかしビール1杯800円ってインフレ過ぎません?)、フロアに座って飲食しながらKREATORを鑑賞するという、ヘタレの極み的な行動に出ました。これが邪神への冒涜とも言うべき所業であることは重々承知しており、大変反省しております。
最新アルバムのタイトル曲"Hate Uber Alles"で開始したライブは、NIGHTWISHが場内に残した感動の余韻を一瞬でかき消し、完全に空気を変えました。ステージの両サイドには槍で串刺しにされた人をモチーフにした不穏極まりない美術が設置されており、このライブから無事で帰れない雰囲気を醸し出しています(笑)。
後方で聴いていたからかもしれませんがサウンドはイマイチで、ギター・サウンドはまるでノイズの塊の如く押し寄せてきた感じがありましたが、きっと前方はモッシュまみれの修羅の国と化していることでしょう。
とはいえ、セットリスト全体としては爆走スラッシュというよりも、ミドルテンポ~アップテンポ程度の速さの楽曲も多く、より貫禄を増した印象。
メタル界随一のアジテーターであるミレ・ペトロッツァが「世界は炎上している。だが、俺たちは団結している」と言い、"666 - World Divided"をプレイする様には、もはやスラッシュ・メタルなどという枠にとらわれないメタル界の盟主とでも呼ぶべきカリスマ性を感じました。
◆PANTERA
90年代以降のメタルの流れを変えたPANTERAが、今は亡きダイムバッグ・ダレルとヴィニー・ポールの兄弟の代わりにザック・ワイルド(G)とチャーリー・ベナンテ(Dr)を代わりに迎えて復活したのは、ここ数年で一番話題になったメタル界隈における再結成劇でした(厳密には再結成ではないという扱いのようですが)。
フロア内の人口密度はこれまで以上に高く、散発的に巻き起こる「PANTERAコール」がいかに多くの人が彼らのライブを待望していたかを伝えています。
「PANTERA」とバンド名が大書された幕が落ちると"Mouth For War"でこのスペシャルなライブはスタート。"Revenge"という冒頭のスクリームから場内は大合唱。PANTERAファンの強いロイヤリティを感じました。
この曲を初めて聴いた中学生の時に感じた、この曲の持つ独特の、他のメタル・バンドには感じなかったちょっとクセになるノリが「グルーヴ感」と呼ばれるものであることを知ったのは少し後のことでしたが、やはりこのパワー・グルーヴがこのバンドの音楽を孤高たらしめていると言えるでしょう。
一方で当時の私には3曲目にプレイされた"Strength Beyond Strength"のようなスラッシュ・メタル的な突撃力を持った曲の方がわかりやすかったりもしたのですが(本日も個人的に一番アドレナリンが出たのはこの曲です)。
チャーリー・ベナンテのドラムは、その名前が明かされた時に「ああ、チャーリーのスタイルなら合うかも」と感じた予感そのままにフィットしており、ヴィニー・ポールはかなり個性の強いドラマーでしたが違和感はゼロ。
一方でザック・ワイルドは大筋でPANTERAの楽曲をそのまま変にアレンジすることなくプレイしつつも、ステージングやソロの弾き方など、ザック・ワイルド以外の何者でもないスタイルを貫いており、ちょっと微笑ましくなってしまいました。
まあ、きっとダイムバッグ・ダレルもザック・ワイルドに自分のクローンを演じてもらうことを望んだとは思えないのでこれはこれでいいのでしょう。
いずれにせよ、今夜の主役はフィリップ・アンセルモで、一時期髪を伸ばしたり、PANTERAのイメージから遠ざかっていた彼が、ファンが「PANTERAのフィル」として記憶しているイメージのアピアランスでそこにいる、それだけでファンとしてはグッと来るものがあったのではないでしょうか。
個人的にはフィルが終始ガムを噛んでいるのが気になりましたが、歌いにくくないのでしょうか。それとも歌っている時には吐き出してから歌っていたのか、私の距離からではわかりませんでした。
MCの途中何度か、「トモコ」と呼ばれる通訳スタッフと思われる坊主頭の女性がステージに呼ばれて、わざわざ訳す必要もなさそうな比較的簡単な英語を翻訳させられていたのは、フィルなりの配慮なのかジョークなのか、真意を量りかねるところです。
"COWBOYS FROM HELL"(1990)から"FAR BEYOND DRIVEN"(1994)までの人気作の代表曲を中心としたセットリストを含め、基本的にファンを喜ばせるためのショウが展開されており、そういう意味で多くのファンが求めているものがしっかり提供された、トリに相応しい盛り上がりのステージだったと思います。

普通に前進できる範囲で前に行っていましたが、当然PANTERAの時には人が多く、それほど前進はできなかった分、出るのはスムーズ。帰り際、さいたまスーパーアリーナ名義で祝い花が出ているのを発見して苦笑してしまいました。これ、本当にさいたまスーパーアリーナが贈ったんですかね? だとしたら相当な皮肉というかユーモア感覚ですね。
小雨がパラつく中海浜幕張駅に向かい、これまでのLOUD PARKの際にも見かけたギター速弾きパフォーマンスの人がいるのを横目に見つつ、帰りの京葉線に乗車しました。
6年ぶりのLOUD PARKということで感慨もひとしお…と言いたい所ですが、間に2回、DOWNLOAD FESTIVAL JAPANという類似イベントがあったせいで、あまり久しぶり感はなく、実際今回のLOUD PARK 2023仕切りは完全にDOWNLOADのものだったので、そこまでノスタルジックな感情にはなりませんでした。
元々LOUD PARKも幕張メッセで始まったイベントでしたが、回数的にはさいたまスーパーアリーナで実施したことの方が多かったので、むしろさいたまスーパーアリーナで実施された方がノスタルジーを喚起されたかもしれません。
そして、あらためてLOUD PARKでこれまで一番楽しかった時間というのは何だったのか?ということを考えてみると、1日目と2日目の間、1日目の記憶を噛みしめつつ、まだもう1日ある、明日はどんなライブが観られるのか、ということを楽しみにしていた時間が一番幸福だった気がするので、やはり2日間、さらに言うなら「迷う楽しみ」を持つために3ステージ以上でやってほしいと思ってしまいました(笑)。
しかし、現在の日本におけるメタル人気の低調ぶりを考えると、無いものねだりをするよりも1日だけでも実施されたことを感謝する、というのが正解なのでしょうね。LOUD PARKでもDOWNLOAD FESTIVALでもいいので、大規模メタル・フェスがここ日本で継続開催されることを心から願っています。
恐らく、KNOTFEST JAPANが翌週に行なわれるという状況が、本来DOWNLOAD FESTIVAL JAPANとして行なわれる予定だったイベントを、より「PANTERA世代」への認知度が高く、「復活開催」という話題性になるLOUD PARKというブランドでの開催に踏み切らせたのだと思います。
いずれにせよ、私にとってLOUD PARKというのは非常に思い入れの深い名前なので、この開催についてはなかなか感慨深く、楽しみにしていました。
ただ、天気は残念ながら雨。この文章を書いているKNOTFEST初日が好天に恵まれたことを考えると、クリエイティブマンとしてはちょっと祟られた気分だったかもしれません。
私が現地である幕張メッセに到着したのは開場時間である10時ちょうどくらい。本当はもう20分くらい前に着いている予定だったのですが、地元駅で電車を1本逃して5分後の電車に乗ると、海浜幕張駅への到着が15分後になってしまう。
天気が悪いこともあってか、入口までの行列の歩みは遅い。結局30分以上かかって入場する。遅刻して行くことの方が多かったため、もしかすると開場時間合わせで行くとこれくらいの時間がかかるのが当たり前だったのかもしれませんが、もはや記憶になく。
ショートカットして入場できるGOLDチケットをケチらず買っておけばよかったとちょっと後悔しました。

◆Phantom Excaliver
というわけでオープニング・アクト1バンド目のPhantom Excaliverは観れていません。入場列に並びつつ、微かに漏れ聞こえてくる音で、「ああ、やってるな」というのを感じるのみでした。
長年LOUD PARKに通っていた人であれば、彼らが毎年LOUD PARKに出没し、さいたま新都心駅への帰り道でサンプルCDなどを配っていたのは、フロントマンであるかっちゃん氏のインパクト大な風貌もあって多くの人が記憶していたのではないかと思います(残念ながら私には一度もサンプルCDをくれませんでしたが/笑)。
そんな言ってしまえば「オーディエンス側」だった彼らがオープニング・アクトという扱いとはいえLOUD PARKに出演するというのは本人たちはもちろん、私のような「知っているだけの部外者」にとってもなかなか感慨深い話で、その姿は観たかったのですが。
基本的には私の好きなメロディック・パワー・メタル色の強いサウンドで、MVも毎回チープなりに面白く作られていて結構楽しみにしていただけに残念です。

◆BRIDEAR
オープニング・アクト2バンド目である日本のガールズ・メタル・バンド。このバンドの演奏中に私は入場しました。まだこの時点ではホールはガラガラ、という印象でしたが、彼女らが演奏しているULTIMATE STAGE側の前方にはそれなりに人が集まっていました。
サウンドの印象はALDIOUS以降の典型的なガールズ・メタルという感じで、オープニングの盛り上げにはこういうわかりやすい歌謡メタルはうってつけなのではないかと思いました。
職業柄イベント会場の動線などが気になってしまうタチなので、失礼ながらステージに集中するというよりは、どこに行けばそれぞれのステージの前方に行けるのか、トイレの位置はどこなのかなど、場内を歩き回って確認しながら横目に見ていた感じです。

◆JASON RICHARDSON & LUKE HOLLAND
ジェイソン・リチャードソン(G)とルーク・ホランド(Dr)によるデュオ。正直、このLOUD PARKでの出演告知を見るまで全然知らないアーティストでした。
公式サイトの紹介を見ると、ジェイソン・リチャードソン氏はかつて、つい先日来日公演を行なったばかりのプログレッシヴ・メタルコア・バンドBORN OF OSIRISのメンバーだったこともあり、現在ALL THAT REMAINSのツアー・ギタリストも務めているなど、私の知っているバンドとの接点はありましたが、その程度の経歴では(と言っては失礼ですが)、私のようなマニアックではないメタル・ファンが認知することは難しく。
とはいえ「未知との遭遇」こそがフェスの醍醐味でもあり、あえて「予習」はせずに観ることにしました。入場時にもらったドリンクチケットをオフィシャル・バーでビールに換え、午前ビールをキメつつステージ後方で観ることに。
結論から言えば、インスト中心の音楽でフェスらしい高揚を得ることは難しく、演奏は予想通りテクニカルでしたし、時折良いメロディなども聞こえてきましたが、なんとなく「鑑賞」という感覚でステージを観ていました。
途中、ヴォーカルはレコーディング音源を流すことで歌モノの曲もプレイし、そういう「カラオケ演奏をバックに歌う」の逆バージョンは個人的に新鮮な体験で印象に残りました(インスト系アーティストのライブではよくあることなのかもしれませんが)。
まあ、このLOUD PARK 2023自体を1枚のメタル・アルバムだと考えれば、彼らはメタル・アルバムの1曲目にありがちな序曲的インストとしての役割を担ったという感じでしょうか(失礼)。
◆H.E.R.O
デンマーク出身のバンド。バックの演奏はなかなかヘヴィで、本日のサウンドも耳栓がないとキツいレベルでしたが、基本的にはヴォーカル・オリエンテッドなサウンドで、そのヴォーカル・メロディはアレンジを変えればイマドキのポップ・ミュージックとして聴けてしまいそうな洗練された大衆性があり、なかなか耳を引き付ける魅力を感じます。
これは前の方で観ようかな、と前方エリアに向かってみると、普通に進めるのはステージからかなり遠い位置まで。見るとGOLDチケット保持者向けのVIPエリアはかなり広くとられており、一般エリアとの格差はこれまでに見たVIPエリアが設けられた他のフェスと比べても大きいように感じられた。
2バンド目である彼らの段階でこれでは先が思いやられるというか、私が観たいSTRATOVARIUSがマトモに観られる気がしなかったので、ここで私は「金で解決する」という大人の決断に至り、インフォメーションカウンターに向かってGOLDチケットにアップグレードしてステージに戻りました。
GOLDチケットで入れるエリアは相当に快適で、さすがに最前近くは人が密集していてよほどの熱意がないと厳しいですが、だいぶ前まで行って観ることができ、彼らのヘヴィなのにスウィートな、ユニークなサウンドに浸りました。
そう、彼らの北欧出身らしい哀愁を纏いつつも現代的なそのメロディは、古典的なHR/HMのキャッチーさとは趣を異にするもので、盛り上がる、というよりは個人的には「浸る」という感覚のもので、これまであまりLOUD PARKでは体験したことのない感覚を味わった気がします。
YouTubeにあるMVの再生回数やSNSのフォロワー数などを見る限りまだまだ人気バンドというには程遠いようですが、何かきっかけがあれば大ブレイクしてもおかしくないバンドだなと思いましたし、だからこそ日本のソニーミュージックも結構推している感じなのでしょうね。
◆OUTRAGE
LOUD PARKではもはや常連というべき名古屋のOUTRAGE。彼らのステージを観るのは前回のLOUD PARK以来だ。
1曲目、私が(OUTRAGEの曲としては)知らない曲でスタートする。最新作"RUN RIOT"(2020)はチェックしていなかったので、そこからの曲だろうか、と一瞬思ったが、どうにも曲には聞き覚えがある。
恥ずかしながら気付いたのはサビに至ってからで、THIN LIZZYの"Thunder And Lightning"だ。なんでまたこの曲? いやカッコいい名曲であることは間違いないのですが、彼らがプレイする必然性が見えず。
その後3曲ほど、私にとっては耳馴染みのない曲がプレイされる。これは、私の愛した「スラッシュ・メタルとしてのOUTRAGE」を少なくとも今回のステージで演じる気はないんだな、と感じました。
近年の彼らのアルバムやステージからも、彼らの現在の志向がヘヴィ・メタル然としたものよりも、もっとラフで、20世紀の一時期に流行った言葉で言えばスポンテニアスな感覚を持った荒々しさを放っている。
個人的な嗜好を別にすればそれはそれでいいし、彼らの活動規模を考えると音楽だけで生計を立てているとは思えないので、私のような「過去の作品は好き」という程度のファンの期待に応えるよりは自分たちがやりたいことを優先する、というスタンスでいいと思うのですが、個人的に受け付けなかったのがフロントマンである橋本直樹氏のMC。
目深にニット帽を被り、フラフラしたステージアクションも職質必至の挙動不審さでしたが、喋ることはもう完全に酔っ払いのそれで、実際に飲酒していたのかどうかは不明ですが、むしろ泥酔しないでアレだとしたら逆にヤバいでしょという感じのMCは正直安っぽい飲み屋でアブないオヤジに絡まれている感覚で、私の好きな曲をやらなそうなこともあり、退出して飲食ブースに向かいました。
そしてラウパ恒例のケバブ屋さんでケバブデラックスを購入し、GOLDチケットにアップグレードした際にもらったGOLDチケット用のドリンクチケットを再びビールに換え、残りのOUTRAGEの曲をBGMに飲み食いしていました。
てか、ケバブデラックス、レシピ変わってて価格は上がっているにもかかわらず満足感が下がっているのが残念でしたね…。

◆BREED FROM WITHIN
スコットランド出身のメタルコア・バンド。日本盤が出ていないと思われるこのバンドがなぜ出演しているのか不明ですが、LOUD PARKは2006年というメタルコア全盛期に始まったこともあってか、特に初期はメタルコア色の強いアーティストがラインナップの中核を担っていた観があり、そういう意味でこういうバンドの出演は「ラウパらしさ」を担保する上で必要だったと思います。
検証の結果、一番ステージ全体がよく見えるのはPAブースに挟まれたGOLDチケット用のデッキであるという結論に至ったため、そこで見物。
ヴォーカルのスコット・ケネディが場内アナウンス的には禁止されているサークル・ピットを煽り、実際にサークル・ピットが生まれている様が一段高いGOLDデッキからは観ることができ、「ああ、ラウパだな」という感覚になりました(いや、別にラウパ以外のフェスでもピットは生まれているのですが、大きなピットを観たのはラウパが初めてだったので)。
GOLDデッキの上では4歳くらいの女の子とそのお母さんと思われる女性が彼らの音楽に合わせて踊っており、音楽は色々な人が様々な楽しみ方をしているんだな、とダイバーシティを感させられました(?)。
ウォール・オブ・デスは不発気味でしたが(苦笑)、最後の曲ではヴォーカリストがステージからダイブするなど、非常にアグレッシヴなステージで会場を盛り上げていました。正直、個人的にはこのバンドからラウパが始まった感じがします。
そしてその最後の曲を始める前、ヴォーカルの人が「This is the Last Song for Tonight !」と言ってから、まだ14時過ぎくらいであることに思い至ったのか「ん?」という感じの怪訝な顔になり、「Today」と言い直したのがかわいらしかったです(笑)。
◆AMARANTHE
DOWNLOAD FESTIVAL JAPAN 2019に出演した際は寝坊して観損ねてしまったため、ニルス・モーリン(DYNAZTY)加入後の彼らを観るのは初めてで、結構楽しみにしていました。
そして総論として期待通りのアッパーで盛り上がる華やかなステージが展開され、楽しめました。
引き続きGOLDデッキで鑑賞していましたが、私のすぐ前方にノースリーブにショートパンツという露出度高めでギャルギャルしい、あまりメタルのライブではお見掛けしないタイプの女性が踊りまくっていて、EDM的なニュアンスのある彼らの音楽は、いわゆる『BURRN!』読者ではないタイプのリスナーも惹きつける魅力があるのかなと思いました。
FEELCYCLEにハマっている会社の同僚(非メタルリスナー)も、「FEELCYCLEのプログラムで試しにメタルをセレクトしてみたんですけど、AMARANTHEってバンドいいっすね」と言っていたので、ある意味本日一番大衆性の高い存在だったのかもしれません。
ニルス・モーリンも期待通りスター然とした存在感と力強い歌唱力を示していて、彼の本業である(はずの)DYNAZTYのライブを観たいという気持ちが一層募ると同時に、逆にちょっと存在感が強すぎて、ちょっとこのバンドのメイン・ヴォーカルであるはずのエリゼとちょっとぶつかっているような気がしました。
とはいえ、"Strong"をプレイしている時にはエリゼがニルスの手を握るなど仲は良さそうでしたが。
グロウル担当のツアー・ゲスト・シンガーの声がちょっと私が苦手なタイプで(ブルーの髪にインパクトがあって、ルックスは良かったですが)、そういう意味では初期ラインナップが一番AMARANTHEのヴォーカル・フォーメーションとしては完成度高かったように思いましたが、冒頭述べた通り、全体的に華があって楽しめるステージだったと思います。

◆CARCASS
このタイミングで、これまでも何度か一緒にLOUD PARKを観ている大学以来の友人と合流。彼は今回のLOUD PARKではCARCASSとPANTERAにしか興味がなく、私と違って知らないバンドのライブを観ることは好まないタイプなのでこのタイミングからの参加に。
友人はGOLDチケットではなく一般チケットなので、私もGOLDではない一般エリアでCARCASSを鑑賞。
CARCASSの出自はグラインドコアという、HR/HMというよりはむしろパンク/ハードコアの文脈にあるもののはずなのですが、現在の彼らのサウンドからはHR/HM、それもかなり古典的なそれのフィーリングが強く感じられる。
それは必ずしも北欧のメロディック・デス・メタル・バンドが持つようなHR/HMの素養とは異なるニュアンスなのですが、いずれにせよ私のような、真性のエクストリーム・メタルを苦手とする人間でも楽しめる魅力があります。
ただ、その出音の大きさは間違いなくエクストリーム・メタルのそれであり、受け止めるのにかなりの体力を要するもので、ここしばらく業務多忙で疲労が蓄積している身にはなかなか堪える時間帯。
"HEARTWORK"に"SURGICAL STEEL"という、私が比較的聴き込んでいるアルバムからの曲の時はまだいいのですが、あまり記憶にない曲をプレイされている時には時折睡魔を感じてしまったのが実情で、終演後、オフィシャルバーに行ってレッドブルを注入するという判断に至りました(苦笑)。
どうでもいいですが、ジェフ・ウォーカー(Vo, B)と、ビル・スティアー(G)って、パッと見とても1歳しか違わないように見えませんよね…。いや、ジェフが老けているというよりはビルが若々しい、ということなのですが。

◆STRATOVARIUS
私にとって「本日のハイライト」であるこのバンドについてはちゃんとステージが見える場所で観たいので、いったん友人と別れ、GOLDデッキの前方の見やすい位置に陣取りました。
このバンドについてはもう何回もライブを観ているのですが、そしてそれは毎回しっかり満足させてくれるから観に行きたくなるいうことで、個人的な音楽の好みとパフォーマンスのクオリティの掛け算によって算出されるライブにおける満足度の高さは個人的にARCH ENEMYとこのバンドが現在のメタル・バンド界隈における双璧だと思っています。
最新アルバムからの"Survive"で幕を開け、続く"Eagleheart"の冒頭は機材トラブルであの印象的なキーボード・リフがノイズに変わってしまっていたものの、キャッチーなサビで合唱を誘います。
「We are STRATOVARIUS from Finland, We Play POWER METAL!」という力強いMCの後、クラシカル&テクニカルなインスト・ナンバー"Stratoshpere"がプレイされて、あらためて彼らの高い演奏力をオーディエンスに示しつつ、立て続けに彼らのレパートリーの中でも屈指のパワー・メタル・ナンバー、"Father Time"によって「古典的なメタルの魅力の何たるか」をLOUD PARKに来ているオーディエンスにアピール。
その後もオーディエンスのシンガロングを誘うキャッチーなナンバーを数多く繰り出し、ラストの"Hunting High And Low"では10年前にLOUD PARK 13の時と同様の大合唱を引き出し、場内に一体感を生み出しました。
個人的には最新作から"Frozen In Time"をやるなら他にやるべき曲があったのではないかという気がするのと、"Eagleheart"、"Paradise"、"Unbreakable"というキャッチー系の曲の比重が高めだったのを、もう少しメタリックな曲に振ってくれた方が盛り上がったのではないかという気がしますが、ティモ・コティペルトのコンディションは絶好調という感じではなかったので、「歌いやすい曲」に寄せたのかもしれません。
いずれにせよ、最後の来日公演から早や7年、彼らももう若くはないということ、そしてコロナ禍真っ盛りだった2020年、21年の間はライブもほとんどやっていなかったこともあり、「もしかして衰えているのでは…」とちょっと危惧していましたがそれは全くの杞憂で、結論から言うとここで展開されたパフォーマンスはこれまで通り、メロディック・メタルの王道を行く、堂々たるものでした。
ライブ終了後、友人と再び合流して「いや~、これこそ俺がメタルに求めているものだわ」と言うと、友人からはすげなく「俺は違う」と言われてしまいました(苦笑)。恐らく、彼にとってSTRATOVARIUSの音楽はEvilさが足りないのだと思われます。
◆NIGHTWISH
個人的にSTRATOVARIUSの次に観たかったバンド。こちらもフィンランド出身ということで、私にとってこの日は今はなき『FINLAND FEST』だったのかもしれません(?)。
ただ、前回観てからマルコ・ヒエタラ(B, Vo)という、このバンドのメタル・サイドを象徴するカリスマ・メンバーが脱退していたこともあり、その点は不安材料でした。
何しろ、"Wish I Had An Angel"や"Bye Bye Beautiful"といった、私にとって彼らの楽曲の中で最も好きな曲はマルコ・ヒエタラのヴォーカル・パートあっての楽曲だったので。
そして実際、それらの楽曲はプレイされなかったのですが、それでいてライブが終わった時の満足感を考えると、やはり彼らの音楽の素晴らしさは特定のハイライト曲に依存するものではないということが証明されたように思います。
妊娠中だというフロール・ヤンセン(Vo)のヴォーカルも素晴らしく、ターヤ時代の曲もアネット時代の曲も全く過不足なく歌い上げるその力量は非凡としか言いようがなく、楽曲の良さはもちろん、彼女の歌唱そのものに鳥肌が立つことも一再ではありませんでした。
そのスケール感はもはやメタル・バンドというよりはオーケストラという様相を呈していますが、PANTERAをはじめとするエクストリームなサウンドで暴れることだけを目的にこの場に集った荒くれ者たちでさえ、イマジネーションを刺激するイメージ映像と共に展開されるドラマティック極まりないサウンドスケープに人の子として何かしら感じるものはあったのではないかと思います。
そのドラマツルギーはラストを飾った大作"Ghost Love Score"で頂点を迎え、幕張をNIGHTWISHの世界に染め上げました。翌日から1週間、私の脳内でずっと鳴り響いていたのはこの"Ghost Love Score"です。
◆KREATOR
ドイツが産んだスラッシュ・メタル・ゴッド、KREATORは2014年以来9年ぶりのLOUD PARK出演。
LOUD PARK名物といえば一般的なスタンディングの会場では作り得ない大きなサークル・ピットなわけで、ある程度以上にアグレッシヴなバンドであればエクストリーム系のバンドに限らず発生するわけですが(過去ANGRAやDRAGONFORCEでも発生していました)、これまで特に印象的だったのは、おそらくフェス史上最大の直径に達したと思われる2011年のUNITEDのものと、複数のピットが結合し、もはや「サークル(円)」とは呼び難い、何とも形容できないアメーバ状の奇怪な形態になった2014年のKREATORのものでした。
あの狂宴が再び繰り広げられるのか…と思うと戦慄にも似た緊張感が身体を走りますが、STRATOVARIUSにNIGHTWISHという私的2大クライマックスを経て個人的にはかなり消耗しており、この後にPANTERAが控えていることを考えると、KREATORで前方に行くことは即ち死を意味します。
PANTERA終演後だと混みそうなのでこのタイミングでクロークから荷物を引き取った後、小腹も空いてきたタイミングだったので、場内下手(しもて)後方に設けられていたGOLD専用バーでステーキサンドとビールを購入し(しかしビール1杯800円ってインフレ過ぎません?)、フロアに座って飲食しながらKREATORを鑑賞するという、ヘタレの極み的な行動に出ました。これが邪神への冒涜とも言うべき所業であることは重々承知しており、大変反省しております。
最新アルバムのタイトル曲"Hate Uber Alles"で開始したライブは、NIGHTWISHが場内に残した感動の余韻を一瞬でかき消し、完全に空気を変えました。ステージの両サイドには槍で串刺しにされた人をモチーフにした不穏極まりない美術が設置されており、このライブから無事で帰れない雰囲気を醸し出しています(笑)。
後方で聴いていたからかもしれませんがサウンドはイマイチで、ギター・サウンドはまるでノイズの塊の如く押し寄せてきた感じがありましたが、きっと前方はモッシュまみれの修羅の国と化していることでしょう。
とはいえ、セットリスト全体としては爆走スラッシュというよりも、ミドルテンポ~アップテンポ程度の速さの楽曲も多く、より貫禄を増した印象。
メタル界随一のアジテーターであるミレ・ペトロッツァが「世界は炎上している。だが、俺たちは団結している」と言い、"666 - World Divided"をプレイする様には、もはやスラッシュ・メタルなどという枠にとらわれないメタル界の盟主とでも呼ぶべきカリスマ性を感じました。
◆PANTERA
90年代以降のメタルの流れを変えたPANTERAが、今は亡きダイムバッグ・ダレルとヴィニー・ポールの兄弟の代わりにザック・ワイルド(G)とチャーリー・ベナンテ(Dr)を代わりに迎えて復活したのは、ここ数年で一番話題になったメタル界隈における再結成劇でした(厳密には再結成ではないという扱いのようですが)。
フロア内の人口密度はこれまで以上に高く、散発的に巻き起こる「PANTERAコール」がいかに多くの人が彼らのライブを待望していたかを伝えています。
「PANTERA」とバンド名が大書された幕が落ちると"Mouth For War"でこのスペシャルなライブはスタート。"Revenge"という冒頭のスクリームから場内は大合唱。PANTERAファンの強いロイヤリティを感じました。
この曲を初めて聴いた中学生の時に感じた、この曲の持つ独特の、他のメタル・バンドには感じなかったちょっとクセになるノリが「グルーヴ感」と呼ばれるものであることを知ったのは少し後のことでしたが、やはりこのパワー・グルーヴがこのバンドの音楽を孤高たらしめていると言えるでしょう。
一方で当時の私には3曲目にプレイされた"Strength Beyond Strength"のようなスラッシュ・メタル的な突撃力を持った曲の方がわかりやすかったりもしたのですが(本日も個人的に一番アドレナリンが出たのはこの曲です)。
チャーリー・ベナンテのドラムは、その名前が明かされた時に「ああ、チャーリーのスタイルなら合うかも」と感じた予感そのままにフィットしており、ヴィニー・ポールはかなり個性の強いドラマーでしたが違和感はゼロ。
一方でザック・ワイルドは大筋でPANTERAの楽曲をそのまま変にアレンジすることなくプレイしつつも、ステージングやソロの弾き方など、ザック・ワイルド以外の何者でもないスタイルを貫いており、ちょっと微笑ましくなってしまいました。
まあ、きっとダイムバッグ・ダレルもザック・ワイルドに自分のクローンを演じてもらうことを望んだとは思えないのでこれはこれでいいのでしょう。
いずれにせよ、今夜の主役はフィリップ・アンセルモで、一時期髪を伸ばしたり、PANTERAのイメージから遠ざかっていた彼が、ファンが「PANTERAのフィル」として記憶しているイメージのアピアランスでそこにいる、それだけでファンとしてはグッと来るものがあったのではないでしょうか。
個人的にはフィルが終始ガムを噛んでいるのが気になりましたが、歌いにくくないのでしょうか。それとも歌っている時には吐き出してから歌っていたのか、私の距離からではわかりませんでした。
MCの途中何度か、「トモコ」と呼ばれる通訳スタッフと思われる坊主頭の女性がステージに呼ばれて、わざわざ訳す必要もなさそうな比較的簡単な英語を翻訳させられていたのは、フィルなりの配慮なのかジョークなのか、真意を量りかねるところです。
"COWBOYS FROM HELL"(1990)から"FAR BEYOND DRIVEN"(1994)までの人気作の代表曲を中心としたセットリストを含め、基本的にファンを喜ばせるためのショウが展開されており、そういう意味で多くのファンが求めているものがしっかり提供された、トリに相応しい盛り上がりのステージだったと思います。

普通に前進できる範囲で前に行っていましたが、当然PANTERAの時には人が多く、それほど前進はできなかった分、出るのはスムーズ。帰り際、さいたまスーパーアリーナ名義で祝い花が出ているのを発見して苦笑してしまいました。これ、本当にさいたまスーパーアリーナが贈ったんですかね? だとしたら相当な皮肉というかユーモア感覚ですね。
小雨がパラつく中海浜幕張駅に向かい、これまでのLOUD PARKの際にも見かけたギター速弾きパフォーマンスの人がいるのを横目に見つつ、帰りの京葉線に乗車しました。
6年ぶりのLOUD PARKということで感慨もひとしお…と言いたい所ですが、間に2回、DOWNLOAD FESTIVAL JAPANという類似イベントがあったせいで、あまり久しぶり感はなく、実際今回のLOUD PARK 2023仕切りは完全にDOWNLOADのものだったので、そこまでノスタルジックな感情にはなりませんでした。
元々LOUD PARKも幕張メッセで始まったイベントでしたが、回数的にはさいたまスーパーアリーナで実施したことの方が多かったので、むしろさいたまスーパーアリーナで実施された方がノスタルジーを喚起されたかもしれません。
そして、あらためてLOUD PARKでこれまで一番楽しかった時間というのは何だったのか?ということを考えてみると、1日目と2日目の間、1日目の記憶を噛みしめつつ、まだもう1日ある、明日はどんなライブが観られるのか、ということを楽しみにしていた時間が一番幸福だった気がするので、やはり2日間、さらに言うなら「迷う楽しみ」を持つために3ステージ以上でやってほしいと思ってしまいました(笑)。
しかし、現在の日本におけるメタル人気の低調ぶりを考えると、無いものねだりをするよりも1日だけでも実施されたことを感謝する、というのが正解なのでしょうね。LOUD PARKでもDOWNLOAD FESTIVALでもいいので、大規模メタル・フェスがここ日本で継続開催されることを心から願っています。
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