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LOUD PARK 2023 感想

2017年以来、約6年ぶりに復活したLOUD PARK。正直な所、興行として大成功しているフェスとは言い難かったし、DOWNLOAD FESTIVAL JAPANが実質後継イベントとなっていたため、復活の可能性は少ないと思っていましたが、「2023年限定」とエクスキューズされる形で開催されました。

恐らく、KNOTFEST JAPANが翌週に行なわれるという状況が、本来DOWNLOAD FESTIVAL JAPANとして行なわれる予定だったイベントを、より「PANTERA世代」への認知度が高く、「復活開催」という話題性になるLOUD PARKというブランドでの開催に踏み切らせたのだと思います。

いずれにせよ、私にとってLOUD PARKというのは非常に思い入れの深い名前なので、この開催についてはなかなか感慨深く、楽しみにしていました。

ただ、天気は残念ながら雨。この文章を書いているKNOTFEST初日が好天に恵まれたことを考えると、クリエイティブマンとしてはちょっと祟られた気分だったかもしれません。

私が現地である幕張メッセに到着したのは開場時間である10時ちょうどくらい。本当はもう20分くらい前に着いている予定だったのですが、地元駅で電車を1本逃して5分後の電車に乗ると、海浜幕張駅への到着が15分後になってしまう。

天気が悪いこともあってか、入口までの行列の歩みは遅い。結局30分以上かかって入場する。遅刻して行くことの方が多かったため、もしかすると開場時間合わせで行くとこれくらいの時間がかかるのが当たり前だったのかもしれませんが、もはや記憶になく。

ショートカットして入場できるGOLDチケットをケチらず買っておけばよかったとちょっと後悔しました。

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Phantom Excaliver

というわけでオープニング・アクト1バンド目のPhantom Excaliverは観れていません。入場列に並びつつ、微かに漏れ聞こえてくる音で、「ああ、やってるな」というのを感じるのみでした。

長年LOUD PARKに通っていた人であれば、彼らが毎年LOUD PARKに出没し、さいたま新都心駅への帰り道でサンプルCDなどを配っていたのは、フロントマンであるかっちゃん氏のインパクト大な風貌もあって多くの人が記憶していたのではないかと思います(残念ながら私には一度もサンプルCDをくれませんでしたが/笑)。

そんな言ってしまえば「オーディエンス側」だった彼らがオープニング・アクトという扱いとはいえLOUD PARKに出演するというのは本人たちはもちろん、私のような「知っているだけの部外者」にとってもなかなか感慨深い話で、その姿は観たかったのですが。

基本的には私の好きなメロディック・パワー・メタル色の強いサウンドで、MVも毎回チープなりに面白く作られていて結構楽しみにしていただけに残念です。

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BRIDEAR

オープニング・アクト2バンド目である日本のガールズ・メタル・バンド。このバンドの演奏中に私は入場しました。まだこの時点ではホールはガラガラ、という印象でしたが、彼女らが演奏しているULTIMATE STAGE側の前方にはそれなりに人が集まっていました。

サウンドの印象はALDIOUS以降の典型的なガールズ・メタルという感じで、オープニングの盛り上げにはこういうわかりやすい歌謡メタルはうってつけなのではないかと思いました。

職業柄イベント会場の動線などが気になってしまうタチなので、失礼ながらステージに集中するというよりは、どこに行けばそれぞれのステージの前方に行けるのか、トイレの位置はどこなのかなど、場内を歩き回って確認しながら横目に見ていた感じです。

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JASON RICHARDSON & LUKE HOLLAND

ジェイソン・リチャードソン(G)とルーク・ホランド(Dr)によるデュオ。正直、このLOUD PARKでの出演告知を見るまで全然知らないアーティストでした。

公式サイトの紹介を見ると、ジェイソン・リチャードソン氏はかつて、つい先日来日公演を行なったばかりのプログレッシヴ・メタルコア・バンドBORN OF OSIRISのメンバーだったこともあり、現在ALL THAT REMAINSのツアー・ギタリストも務めているなど、私の知っているバンドとの接点はありましたが、その程度の経歴では(と言っては失礼ですが)、私のようなマニアックではないメタル・ファンが認知することは難しく。

とはいえ「未知との遭遇」こそがフェスの醍醐味でもあり、あえて「予習」はせずに観ることにしました。入場時にもらったドリンクチケットをオフィシャル・バーでビールに換え、午前ビールをキメつつステージ後方で観ることに。

結論から言えば、インスト中心の音楽でフェスらしい高揚を得ることは難しく、演奏は予想通りテクニカルでしたし、時折良いメロディなども聞こえてきましたが、なんとなく「鑑賞」という感覚でステージを観ていました。

途中、ヴォーカルはレコーディング音源を流すことで歌モノの曲もプレイし、そういう「カラオケ演奏をバックに歌う」の逆バージョンは個人的に新鮮な体験で印象に残りました(インスト系アーティストのライブではよくあることなのかもしれませんが)。

まあ、このLOUD PARK 2023自体を1枚のメタル・アルバムだと考えれば、彼らはメタル・アルバムの1曲目にありがちな序曲的インストとしての役割を担ったという感じでしょうか(失礼)。


H.E.R.O

デンマーク出身のバンド。バックの演奏はなかなかヘヴィで、本日のサウンドも耳栓がないとキツいレベルでしたが、基本的にはヴォーカル・オリエンテッドなサウンドで、そのヴォーカル・メロディはアレンジを変えればイマドキのポップ・ミュージックとして聴けてしまいそうな洗練された大衆性があり、なかなか耳を引き付ける魅力を感じます。

これは前の方で観ようかな、と前方エリアに向かってみると、普通に進めるのはステージからかなり遠い位置まで。見るとGOLDチケット保持者向けのVIPエリアはかなり広くとられており、一般エリアとの格差はこれまでに見たVIPエリアが設けられた他のフェスと比べても大きいように感じられた。

2バンド目である彼らの段階でこれでは先が思いやられるというか、私が観たいSTRATOVARIUSがマトモに観られる気がしなかったので、ここで私は「金で解決する」という大人の決断に至り、インフォメーションカウンターに向かってGOLDチケットにアップグレードしてステージに戻りました。

GOLDチケットで入れるエリアは相当に快適で、さすがに最前近くは人が密集していてよほどの熱意がないと厳しいですが、だいぶ前まで行って観ることができ、彼らのヘヴィなのにスウィートな、ユニークなサウンドに浸りました。

そう、彼らの北欧出身らしい哀愁を纏いつつも現代的なそのメロディは、古典的なHR/HMのキャッチーさとは趣を異にするもので、盛り上がる、というよりは個人的には「浸る」という感覚のもので、これまであまりLOUD PARKでは体験したことのない感覚を味わった気がします。

YouTubeにあるMVの再生回数やSNSのフォロワー数などを見る限りまだまだ人気バンドというには程遠いようですが、何かきっかけがあれば大ブレイクしてもおかしくないバンドだなと思いましたし、だからこそ日本のソニーミュージックも結構推している感じなのでしょうね。


OUTRAGE

LOUD PARKではもはや常連というべき名古屋のOUTRAGE。彼らのステージを観るのは前回のLOUD PARK以来だ。

1曲目、私が(OUTRAGEの曲としては)知らない曲でスタートする。最新作"RUN RIOT"(2020)はチェックしていなかったので、そこからの曲だろうか、と一瞬思ったが、どうにも曲には聞き覚えがある。

恥ずかしながら気付いたのはサビに至ってからで、THIN LIZZYの"Thunder And Lightning"だ。なんでまたこの曲? いやカッコいい名曲であることは間違いないのですが、彼らがプレイする必然性が見えず。

その後3曲ほど、私にとっては耳馴染みのない曲がプレイされる。これは、私の愛した「スラッシュ・メタルとしてのOUTRAGE」を少なくとも今回のステージで演じる気はないんだな、と感じました。

近年の彼らのアルバムやステージからも、彼らの現在の志向がヘヴィ・メタル然としたものよりも、もっとラフで、20世紀の一時期に流行った言葉で言えばスポンテニアスな感覚を持った荒々しさを放っている。

個人的な嗜好を別にすればそれはそれでいいし、彼らの活動規模を考えると音楽だけで生計を立てているとは思えないので、私のような「過去の作品は好き」という程度のファンの期待に応えるよりは自分たちがやりたいことを優先する、というスタンスでいいと思うのですが、個人的に受け付けなかったのがフロントマンである橋本直樹氏のMC。

目深にニット帽を被り、フラフラしたステージアクションも職質必至の挙動不審さでしたが、喋ることはもう完全に酔っ払いのそれで、実際に飲酒していたのかどうかは不明ですが、むしろ泥酔しないでアレだとしたら逆にヤバいでしょという感じのMCは正直安っぽい飲み屋でアブないオヤジに絡まれている感覚で、私の好きな曲をやらなそうなこともあり、退出して飲食ブースに向かいました。

そしてラウパ恒例のケバブ屋さんでケバブデラックスを購入し、GOLDチケットにアップグレードした際にもらったGOLDチケット用のドリンクチケットを再びビールに換え、残りのOUTRAGEの曲をBGMに飲み食いしていました。

てか、ケバブデラックス、レシピ変わってて価格は上がっているにもかかわらず満足感が下がっているのが残念でしたね…。

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BREED FROM WITHIN

スコットランド出身のメタルコア・バンド。日本盤が出ていないと思われるこのバンドがなぜ出演しているのか不明ですが、LOUD PARKは2006年というメタルコア全盛期に始まったこともあってか、特に初期はメタルコア色の強いアーティストがラインナップの中核を担っていた観があり、そういう意味でこういうバンドの出演は「ラウパらしさ」を担保する上で必要だったと思います。

検証の結果、一番ステージ全体がよく見えるのはPAブースに挟まれたGOLDチケット用のデッキであるという結論に至ったため、そこで見物。

ヴォーカルのスコット・ケネディが場内アナウンス的には禁止されているサークル・ピットを煽り、実際にサークル・ピットが生まれている様が一段高いGOLDデッキからは観ることができ、「ああ、ラウパだな」という感覚になりました(いや、別にラウパ以外のフェスでもピットは生まれているのですが、大きなピットを観たのはラウパが初めてだったので)。

GOLDデッキの上では4歳くらいの女の子とそのお母さんと思われる女性が彼らの音楽に合わせて踊っており、音楽は色々な人が様々な楽しみ方をしているんだな、とダイバーシティを感させられました(?)。

ウォール・オブ・デスは不発気味でしたが(苦笑)、最後の曲ではヴォーカリストがステージからダイブするなど、非常にアグレッシヴなステージで会場を盛り上げていました。正直、個人的にはこのバンドからラウパが始まった感じがします。

そしてその最後の曲を始める前、ヴォーカルの人が「This is the Last Song for Tonight !」と言ってから、まだ14時過ぎくらいであることに思い至ったのか「ん?」という感じの怪訝な顔になり、「Today」と言い直したのがかわいらしかったです(笑)。


AMARANTHE

DOWNLOAD FESTIVAL JAPAN 2019に出演した際は寝坊して観損ねてしまったため、ニルス・モーリン(DYNAZTY)加入後の彼らを観るのは初めてで、結構楽しみにしていました。

そして総論として期待通りのアッパーで盛り上がる華やかなステージが展開され、楽しめました。

引き続きGOLDデッキで鑑賞していましたが、私のすぐ前方にノースリーブにショートパンツという露出度高めでギャルギャルしい、あまりメタルのライブではお見掛けしないタイプの女性が踊りまくっていて、EDM的なニュアンスのある彼らの音楽は、いわゆる『BURRN!』読者ではないタイプのリスナーも惹きつける魅力があるのかなと思いました。

FEELCYCLEにハマっている会社の同僚(非メタルリスナー)も、「FEELCYCLEのプログラムで試しにメタルをセレクトしてみたんですけど、AMARANTHEってバンドいいっすね」と言っていたので、ある意味本日一番大衆性の高い存在だったのかもしれません。

ニルス・モーリンも期待通りスター然とした存在感と力強い歌唱力を示していて、彼の本業である(はずの)DYNAZTYのライブを観たいという気持ちが一層募ると同時に、逆にちょっと存在感が強すぎて、ちょっとこのバンドのメイン・ヴォーカルであるはずのエリゼとちょっとぶつかっているような気がしました。

とはいえ、"Strong"をプレイしている時にはエリゼがニルスの手を握るなど仲は良さそうでしたが。

グロウル担当のツアー・ゲスト・シンガーの声がちょっと私が苦手なタイプで(ブルーの髪にインパクトがあって、ルックスは良かったですが)、そういう意味では初期ラインナップが一番AMARANTHEのヴォーカル・フォーメーションとしては完成度高かったように思いましたが、冒頭述べた通り、全体的に華があって楽しめるステージだったと思います。

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CARCASS

このタイミングで、これまでも何度か一緒にLOUD PARKを観ている大学以来の友人と合流。彼は今回のLOUD PARKではCARCASSとPANTERAにしか興味がなく、私と違って知らないバンドのライブを観ることは好まないタイプなのでこのタイミングからの参加に。

友人はGOLDチケットではなく一般チケットなので、私もGOLDではない一般エリアでCARCASSを鑑賞。

CARCASSの出自はグラインドコアという、HR/HMというよりはむしろパンク/ハードコアの文脈にあるもののはずなのですが、現在の彼らのサウンドからはHR/HM、それもかなり古典的なそれのフィーリングが強く感じられる。

それは必ずしも北欧のメロディック・デス・メタル・バンドが持つようなHR/HMの素養とは異なるニュアンスなのですが、いずれにせよ私のような、真性のエクストリーム・メタルを苦手とする人間でも楽しめる魅力があります。

ただ、その出音の大きさは間違いなくエクストリーム・メタルのそれであり、受け止めるのにかなりの体力を要するもので、ここしばらく業務多忙で疲労が蓄積している身にはなかなか堪える時間帯。

"HEARTWORK"に"SURGICAL STEEL"という、私が比較的聴き込んでいるアルバムからの曲の時はまだいいのですが、あまり記憶にない曲をプレイされている時には時折睡魔を感じてしまったのが実情で、終演後、オフィシャルバーに行ってレッドブルを注入するという判断に至りました(苦笑)。

どうでもいいですが、ジェフ・ウォーカー(Vo, B)と、ビル・スティアー(G)って、パッと見とても1歳しか違わないように見えませんよね…。いや、ジェフが老けているというよりはビルが若々しい、ということなのですが。

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STRATOVARIUS

私にとって「本日のハイライト」であるこのバンドについてはちゃんとステージが見える場所で観たいので、いったん友人と別れ、GOLDデッキの前方の見やすい位置に陣取りました。

このバンドについてはもう何回もライブを観ているのですが、そしてそれは毎回しっかり満足させてくれるから観に行きたくなるいうことで、個人的な音楽の好みとパフォーマンスのクオリティの掛け算によって算出されるライブにおける満足度の高さは個人的にARCH ENEMYとこのバンドが現在のメタル・バンド界隈における双璧だと思っています。

最新アルバムからの"Survive"で幕を開け、続く"Eagleheart"の冒頭は機材トラブルであの印象的なキーボード・リフがノイズに変わってしまっていたものの、キャッチーなサビで合唱を誘います。

「We are STRATOVARIUS from Finland, We Play POWER METAL!」という力強いMCの後、クラシカル&テクニカルなインスト・ナンバー"Stratoshpere"がプレイされて、あらためて彼らの高い演奏力をオーディエンスに示しつつ、立て続けに彼らのレパートリーの中でも屈指のパワー・メタル・ナンバー、"Father Time"によって「古典的なメタルの魅力の何たるか」をLOUD PARKに来ているオーディエンスにアピール。

その後もオーディエンスのシンガロングを誘うキャッチーなナンバーを数多く繰り出し、ラストの"Hunting High And Low"では10年前にLOUD PARK 13の時と同様の大合唱を引き出し、場内に一体感を生み出しました。

個人的には最新作から"Frozen In Time"をやるなら他にやるべき曲があったのではないかという気がするのと、"Eagleheart"、"Paradise"、"Unbreakable"というキャッチー系の曲の比重が高めだったのを、もう少しメタリックな曲に振ってくれた方が盛り上がったのではないかという気がしますが、ティモ・コティペルトのコンディションは絶好調という感じではなかったので、「歌いやすい曲」に寄せたのかもしれません。

いずれにせよ、最後の来日公演から早や7年、彼らももう若くはないということ、そしてコロナ禍真っ盛りだった2020年、21年の間はライブもほとんどやっていなかったこともあり、「もしかして衰えているのでは…」とちょっと危惧していましたがそれは全くの杞憂で、結論から言うとここで展開されたパフォーマンスはこれまで通り、メロディック・メタルの王道を行く、堂々たるものでした。

ライブ終了後、友人と再び合流して「いや~、これこそ俺がメタルに求めているものだわ」と言うと、友人からはすげなく「俺は違う」と言われてしまいました(苦笑)。恐らく、彼にとってSTRATOVARIUSの音楽はEvilさが足りないのだと思われます。


NIGHTWISH

個人的にSTRATOVARIUSの次に観たかったバンド。こちらもフィンランド出身ということで、私にとってこの日は今はなき『FINLAND FEST』だったのかもしれません(?)。

ただ、前回観てからマルコ・ヒエタラ(B, Vo)という、このバンドのメタル・サイドを象徴するカリスマ・メンバーが脱退していたこともあり、その点は不安材料でした。

何しろ、"Wish I Had An Angel"や"Bye Bye Beautiful"といった、私にとって彼らの楽曲の中で最も好きな曲はマルコ・ヒエタラのヴォーカル・パートあっての楽曲だったので。

そして実際、それらの楽曲はプレイされなかったのですが、それでいてライブが終わった時の満足感を考えると、やはり彼らの音楽の素晴らしさは特定のハイライト曲に依存するものではないということが証明されたように思います。

妊娠中だというフロール・ヤンセン(Vo)のヴォーカルも素晴らしく、ターヤ時代の曲もアネット時代の曲も全く過不足なく歌い上げるその力量は非凡としか言いようがなく、楽曲の良さはもちろん、彼女の歌唱そのものに鳥肌が立つことも一再ではありませんでした。

そのスケール感はもはやメタル・バンドというよりはオーケストラという様相を呈していますが、PANTERAをはじめとするエクストリームなサウンドで暴れることだけを目的にこの場に集った荒くれ者たちでさえ、イマジネーションを刺激するイメージ映像と共に展開されるドラマティック極まりないサウンドスケープに人の子として何かしら感じるものはあったのではないかと思います。

そのドラマツルギーはラストを飾った大作"Ghost Love Score"で頂点を迎え、幕張をNIGHTWISHの世界に染め上げました。翌日から1週間、私の脳内でずっと鳴り響いていたのはこの"Ghost Love Score"です。


KREATOR

ドイツが産んだスラッシュ・メタル・ゴッド、KREATORは2014年以来9年ぶりのLOUD PARK出演。

LOUD PARK名物といえば一般的なスタンディングの会場では作り得ない大きなサークル・ピットなわけで、ある程度以上にアグレッシヴなバンドであればエクストリーム系のバンドに限らず発生するわけですが(過去ANGRAやDRAGONFORCEでも発生していました)、これまで特に印象的だったのは、おそらくフェス史上最大の直径に達したと思われる2011年のUNITEDのものと、複数のピットが結合し、もはや「サークル(円)」とは呼び難い、何とも形容できないアメーバ状の奇怪な形態になった2014年のKREATORのものでした。

あの狂宴が再び繰り広げられるのか…と思うと戦慄にも似た緊張感が身体を走りますが、STRATOVARIUSにNIGHTWISHという私的2大クライマックスを経て個人的にはかなり消耗しており、この後にPANTERAが控えていることを考えると、KREATORで前方に行くことは即ち死を意味します。

PANTERA終演後だと混みそうなのでこのタイミングでクロークから荷物を引き取った後、小腹も空いてきたタイミングだったので、場内下手(しもて)後方に設けられていたGOLD専用バーでステーキサンドとビールを購入し(しかしビール1杯800円ってインフレ過ぎません?)、フロアに座って飲食しながらKREATORを鑑賞するという、ヘタレの極み的な行動に出ました。これが邪神への冒涜とも言うべき所業であることは重々承知しており、大変反省しております。

最新アルバムのタイトル曲"Hate Uber Alles"で開始したライブは、NIGHTWISHが場内に残した感動の余韻を一瞬でかき消し、完全に空気を変えました。ステージの両サイドには槍で串刺しにされた人をモチーフにした不穏極まりない美術が設置されており、このライブから無事で帰れない雰囲気を醸し出しています(笑)。

後方で聴いていたからかもしれませんがサウンドはイマイチで、ギター・サウンドはまるでノイズの塊の如く押し寄せてきた感じがありましたが、きっと前方はモッシュまみれの修羅の国と化していることでしょう。

とはいえ、セットリスト全体としては爆走スラッシュというよりも、ミドルテンポ~アップテンポ程度の速さの楽曲も多く、より貫禄を増した印象。

メタル界随一のアジテーターであるミレ・ペトロッツァが「世界は炎上している。だが、俺たちは団結している」と言い、"666 - World Divided"をプレイする様には、もはやスラッシュ・メタルなどという枠にとらわれないメタル界の盟主とでも呼ぶべきカリスマ性を感じました。


PANTERA

90年代以降のメタルの流れを変えたPANTERAが、今は亡きダイムバッグ・ダレルとヴィニー・ポールの兄弟の代わりにザック・ワイルド(G)とチャーリー・ベナンテ(Dr)を代わりに迎えて復活したのは、ここ数年で一番話題になったメタル界隈における再結成劇でした(厳密には再結成ではないという扱いのようですが)。

フロア内の人口密度はこれまで以上に高く、散発的に巻き起こる「PANTERAコール」がいかに多くの人が彼らのライブを待望していたかを伝えています。

「PANTERA」とバンド名が大書された幕が落ちると"Mouth For War"でこのスペシャルなライブはスタート。"Revenge"という冒頭のスクリームから場内は大合唱。PANTERAファンの強いロイヤリティを感じました。

この曲を初めて聴いた中学生の時に感じた、この曲の持つ独特の、他のメタル・バンドには感じなかったちょっとクセになるノリが「グルーヴ感」と呼ばれるものであることを知ったのは少し後のことでしたが、やはりこのパワー・グルーヴがこのバンドの音楽を孤高たらしめていると言えるでしょう。

一方で当時の私には3曲目にプレイされた"Strength Beyond Strength"のようなスラッシュ・メタル的な突撃力を持った曲の方がわかりやすかったりもしたのですが(本日も個人的に一番アドレナリンが出たのはこの曲です)。

チャーリー・ベナンテのドラムは、その名前が明かされた時に「ああ、チャーリーのスタイルなら合うかも」と感じた予感そのままにフィットしており、ヴィニー・ポールはかなり個性の強いドラマーでしたが違和感はゼロ。

一方でザック・ワイルドは大筋でPANTERAの楽曲をそのまま変にアレンジすることなくプレイしつつも、ステージングやソロの弾き方など、ザック・ワイルド以外の何者でもないスタイルを貫いており、ちょっと微笑ましくなってしまいました。

まあ、きっとダイムバッグ・ダレルもザック・ワイルドに自分のクローンを演じてもらうことを望んだとは思えないのでこれはこれでいいのでしょう。

いずれにせよ、今夜の主役はフィリップ・アンセルモで、一時期髪を伸ばしたり、PANTERAのイメージから遠ざかっていた彼が、ファンが「PANTERAのフィル」として記憶しているイメージのアピアランスでそこにいる、それだけでファンとしてはグッと来るものがあったのではないでしょうか。

個人的にはフィルが終始ガムを噛んでいるのが気になりましたが、歌いにくくないのでしょうか。それとも歌っている時には吐き出してから歌っていたのか、私の距離からではわかりませんでした。

MCの途中何度か、「トモコ」と呼ばれる通訳スタッフと思われる坊主頭の女性がステージに呼ばれて、わざわざ訳す必要もなさそうな比較的簡単な英語を翻訳させられていたのは、フィルなりの配慮なのかジョークなのか、真意を量りかねるところです。

"COWBOYS FROM HELL"(1990)から"FAR BEYOND DRIVEN"(1994)までの人気作の代表曲を中心としたセットリストを含め、基本的にファンを喜ばせるためのショウが展開されており、そういう意味で多くのファンが求めているものがしっかり提供された、トリに相応しい盛り上がりのステージだったと思います。

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普通に前進できる範囲で前に行っていましたが、当然PANTERAの時には人が多く、それほど前進はできなかった分、出るのはスムーズ。帰り際、さいたまスーパーアリーナ名義で祝い花が出ているのを発見して苦笑してしまいました。これ、本当にさいたまスーパーアリーナが贈ったんですかね? だとしたら相当な皮肉というかユーモア感覚ですね。

小雨がパラつく中海浜幕張駅に向かい、これまでのLOUD PARKの際にも見かけたギター速弾きパフォーマンスの人がいるのを横目に見つつ、帰りの京葉線に乗車しました。


6年ぶりのLOUD PARKということで感慨もひとしお…と言いたい所ですが、間に2回、DOWNLOAD FESTIVAL JAPANという類似イベントがあったせいで、あまり久しぶり感はなく、実際今回のLOUD PARK 2023仕切りは完全にDOWNLOADのものだったので、そこまでノスタルジックな感情にはなりませんでした。

元々LOUD PARKも幕張メッセで始まったイベントでしたが、回数的にはさいたまスーパーアリーナで実施したことの方が多かったので、むしろさいたまスーパーアリーナで実施された方がノスタルジーを喚起されたかもしれません。

そして、あらためてLOUD PARKでこれまで一番楽しかった時間というのは何だったのか?ということを考えてみると、1日目と2日目の間、1日目の記憶を噛みしめつつ、まだもう1日ある、明日はどんなライブが観られるのか、ということを楽しみにしていた時間が一番幸福だった気がするので、やはり2日間、さらに言うなら「迷う楽しみ」を持つために3ステージ以上でやってほしいと思ってしまいました(笑)。

しかし、現在の日本におけるメタル人気の低調ぶりを考えると、無いものねだりをするよりも1日だけでも実施されたことを感謝する、というのが正解なのでしょうね。LOUD PARKでもDOWNLOAD FESTIVALでもいいので、大規模メタル・フェスがここ日本で継続開催されることを心から願っています。
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LOUD PARK 17 二日目の感想

昨日の反省(寝坊)を活かせずこの日も寝坊。さいたまスーパーアリーナに駆けつけた時にはオープニング・アクトであるCRY VENOMが最後の曲をプレイしていました。

CRY VENOM

とりあえずメンバーが若くてグッド・ルッキンなこと、パフォーマンスがポスト・パンクっぽいヤンチャな感じであること、楽曲がDRAGONFORCEタイプのわかりやすいメロスピであることは1曲観ただけでわかりました。終演後のBGMがEDMっぽい曲であることも含めてチャラっとしたイマドキな感じで、レコード会社的には若い人へのメタル入門バンドとして期待しているんだろうな、という気がしました。

真面目なメタルおじさんには「ケッ」とバカにされそうなバンドという気もしますが、X JAPANでメタル入門した人間としては「チャラいバンドで入門したからといって、いつまでもチャラいバンドしか聴かないわけじゃない」ということを知っているので、わかりやすい入口はとても重要だと思います。アルバムを聴いてみようかな。


BLACK EARTH

本日(オープニング・アクトを除く)1バンド目は「シークレット・アクト」扱いでした。

正直な所、あまり期待していませんでした。アイドルとかアニソン歌手のような企画モノの類か、レコード会社ゴリ押しの嬢メタルか、せいぜい来日したばかりのバンドが「早くも戻ってきたぜ」と出てくるくらいの話だろうと思っていました。普通に発表したら反感を食らいそうなアーティストですね。まあ指定席で高みの見物ですよ。

しかし、開演時間が近づき、BGMが大音量の「Ace Of Spades」(MOTORHEAD)になったとき、あれあれ、この展開はなんかかつて経験したことがあるぞ、デジャヴを感じました。

そして現れたのは、BLACK EARTH。思わず腰を浮かせました。

「Black Earth」のイントロから「Bury Me An Angel」が始まると、たちどころにアリーナ前方にピットが発生する。シークレット・アクトなのにやけに人が集まっているな、と思っていましたが、知っている人は知っていたということなんでしょうね(後で知りましたが、ヨハン・リーヴァ(Vo)がTwitterで「日本に向かっている」とツイートしていたらしい)。

アリーナには後方含めてどんどん人が集まり、朝イチだというのにまるでヘッドライナーかのような人集まり。もう今後ARCH ENEMYはトリ扱いでいいんじゃないですかね。その方が興行主としてもトリ探しに苦労しなそうですし。

私もできることならアリーナに駆け下りたかったのですが、本日の指定席がステージ正面という初体験のエリアで、この席からだと一度通路に出ないとアリーナに降りられない。1音たりとも聞き逃したくないので、やむなくそのまま指定席で観覧することにしました。

やっぱりARCH ENEMY組の演奏は素晴らしい。タイトでありつつアグレッシヴなそのパフォーマンスはある種メタルの理想形だ。シャーリー・ダンジェロ(B)が以前に比べると動きが少なくなったのが年齢を感じさせてちょっと寂しいが、1バンド目にして早くも本日ベストアクトなんじゃないの? この後のバンドはご愁傷様、という感じのカッコよさ。

マジックを感じるほどに日本人の琴線に触れる「Silverwing」では、ヨハンお得意の(?)「アラレちゃんの『キーン』のポーズ」(若い人にはわからないのだろうか…)を見ることができ、自然と笑みがこぼれました。

告知した方が絶対集客は伸びたと思うのですが、アーティスト側の意向でシークレットのままになったという今回。まあオーディエンスとしては「粋な計らい」として素直に喜ぶべきでしょう。

ただ、これで今後「シークレット・アクト」がアイドルだったり嬢メタルだったり、日本在住のギタリストだったりしたら暴動が起きるのではないでしょうか(笑)。


OUTRAGE

BLACK EARTHの後という厳しいポジションを任されたのはOUTRAGE。その厳しさはなまじBLACK EARTH同様エクストリーム系寄りの音楽性であるだけになおのことである。これがメロハーとかメロスピだったら全く別物として切り替えができたと思うのですが。

しかし、結果から言うと大健闘だったんじゃないでしょうか。「My Final Day」から「Madness」という、名盤『FINAL DAY』冒頭の鉄板の流れで場内をOUTRAGEの空気に力づくで切り替える。

実は私はBLACK EARTH終演後すぐに外に出て朝食を食べていたため、「My Final Day」をプレイしている最中は通路にいたのですが、「My Final Day」のイントロ・パートが終わってアグレッシヴなパートに切り替わった途端、近くにいた若者が「えっ、何このバンド」とビビッドに反応していました(通路にも激しく音漏れしていたので)。

しかし、一緒にいた友人が入口で配られるタイムテーブルを見て「OUTRAGEだって」と言うと、「なんだ、日本人か」と言ってそのままフードの屋台に向かってしまいました。

「日本人だから聴かない」なんてのは80年代の玉石混交(というか石だらけ?)のジャパメタを目の当たりにしてきたような世代の人たちだけの意識かと思っていましたが、若い人たちでもそうなんだなあ、とちょっと切なくなりました。音で惹かれたなら観てみればいいのに。と、ルーロー飯をビールで流し込みながらそう思いました。

実際、OUTRAGEのパフォーマンスは、少なくとも演奏に関しては海外のバンドに何ら引けを取らないパワーを放っていました。橋本直樹(Vo)の服装がちょっとカジュアル過ぎるのと、ステージ・アクションがちょっと挙動不審なのがやや気になりましたが、歌声については日本人離れした芯の太さがあって、これまた世界基準を余裕でクリアしていたと思います。

往年のクラシックはもちろん、新曲としてプレイされた曲もカッコよくて、後日アルバムを購入してしまいました。

気になったのは、橋本直樹がMCをしていると、必ずと言っていいほど丹下眞也(Dr)がカットインしてきて話を奪ってしまうこと。かつてバンドメンバーの仲が悪いことで有名だった時期のDOKKENに、ドン・ドッケンがMCをしているうちにジョージ・リンチが次の曲のリフをプレイし始めた、みたいなエピソードがありましたが、なんとなくそれを彷彿とさせる状況で、これ、橋本さんはどう思ってるんだろう…と心配してしまいました(大きなお世話ですが)。

今回も「Blind To Reality」を観られなかったのが残念です。そんなに観たけりゃ単独公演に行け、って話なんですけどね(苦笑)。


APOCALYPTICA

飯食って、ビール飲んで、OUTRAGEでアタマ振った後に着席してのチェロ四重奏。完全に休憩タイムです。

いっそ寝てしまうんじゃないかと危惧していましたが、何しろやっている曲がMETALLICAの楽曲ばかりなのでそうそう寝ていられない(笑)。

かつて一度観ているので物珍しさみたいなものは既になかったのですが、歌詞をちゃんと覚えていれば一種カラオケ的な楽しみ方ができたのではないでしょうか。アリーナはかなり盛り上がっていました。


LOUDNESS

直近のリリースが先月発売された『HURRICANE EYES』30周年記念盤ということで、同作をこよなく愛する私としては、完全再現とは言わないまでも、同作収録曲中心のセットリストを期待していました。

しかし、始まってみると5曲連続で2000年の「再結集」以降の曲。

当人たちとしては「攻めてみた」ということなんでしょうが、トリがSLAYERでトリ前がEMPERORだった昨日であればともかく、ヘッドライナーがマイケル・シェンカーで、トリ前はジーン・シモンズである本日にこの選曲は完全にミスジャッジ。コア・ファンが集結するアリーナ前方がどうだったかはわかりませんが、アリーナ後方では曲が進むごとにオーディエンスが冷めていくのがヒシヒシと伝わってきました。

6曲目、「Rock This Way」がかろうじて前述の『HURRICANE EYES』30周年を意識した選曲か。当時なりのキャッチーさが満載だったあの作品の曲で(「S.D.I」を別格として)、メンバーの(というか高崎さんの)「許容範囲」がこの曲だったということなんでしょう。ギター・ソロ・パートの途中、タッピングの指が追い付かなくなって「あ~、もうええわ」という感じにアドリブで誤魔化していたのを見て、長いこと弾いてない曲だと世界のアキラでもこうなるんだな、と思いました(笑)。

その後は「Crazy Nights」、「In The Mirror」、「Crazy Doctor」、「S.D.I.」という鉄板のクラシック連発で一気に盛り返し、私も歌いまくり、アタマ振りまくりだったわけですが、それだけに彼らのやりたいこと、見せたいものとオーディエンス(特に彼らのコア・ファン以外のオーディエンス)が求めるもののギャップが浮き彫りになってしまった観は否めません。

海外のフェスでは80年代のクラシック・ナンバー中心のセットリストでやっているようなので、彼ら自身フェスで求められているものは理解していると思うのですが…。

あとちょっと、毎回のことなんですが、音、特にギターの音、デカ過ぎじゃないですかね。これ、耳栓なかったらマジでヤバいですよ。まあ、バンド名がLOUDNESS(大音量、うるささ、やかましさ)ですからね、しょうがないんですけどね。

それとですね、髪を短くしてサングラスかけた二井原さん(Vo)、長渕剛にしか見えません(笑)。声はよく出ていたと思いますが。


DEVIN TOWNSEND PROJECT

前回、LOUD PARK 13に出演した際には寝坊して観損ねたDTP。その緻密に作り込まれたサウンドは、なんか今ひとつライブ映えするイメージがなくてさほど期待せずに観始めたのですが、極上でした。

とにかく音が良い。今年のLOUD PARKは例年に比べてサウンドが凄く良くて、この会場ってこんなに良い音鳴らせたのか、あるいは何か設備自体が変わったのかと思うほどだったのですが、中でもこのDTPは絶品でした。まあ音楽自体アンビエントのような音響要素があるのでそう感じた部分もあると思いますが。

これは座って観ちゃもったいないとアリーナ前方に行くことを決意。前述の通り私の指定席からはいったん通路に出ないとアリーナに降りられないのですが、出てみるとどの屋台にも人が並び、通路は地べたに座り込んで飯を食っている人たちであふれていました。まあ今の日本におけるDTPの人気だとこうなってしまうのでしょう。

おかげさまで、スイスイとアリーナ前方に進むことができました。前の方に行くとさすがにちょっとうるさいのですが、耳栓をしてしまうと途端に魅力がなくなってしまうタイプのサウンドのため、私にしては珍しくノー耳栓で音に浸る。

デヴィン・タウンゼンドをはじめ、メンバーは全てハ…スキンヘッドばかり。それがこの特別な音響と照明の中で慈愛に満ちたハーモニーを奏でている様は、一種荘厳ですらあり、メンバーは観衆に救済を与える司祭たちにすら見えてくる。「音のシャワー」という表現はよく目にしますが、言うなればこれは轟音のミストサウナ。音に包まれる感覚というのはこういうことを言うのでしょう。これはまさに26世紀の宗教音楽。

DTPの音楽というのは、バンドの形態、そして基本的な音楽のスタイルという点では必ずしもHR/HMという枠から大きく逸脱しているわけではありません。

しかし、その音楽が与えるカタルシスは一般的なHR/HMとは根本的に異質なもので、非常にメロディアスであるにもかかわらず、なかなか普通の感性の人が日常的に聴くにはハードルの高いものだと思います。こういう音楽をガンガン量産できるデヴィン・タウンゼンドという人は間違いなく天才、あるいは鬼才というべき人でしょう。

私もご多分に漏れず彼らの音楽に日常的に親しんでいるとは言い難い(そもそも近年のアルバムはほとんどマトモに聴いていない)のですが、それだけに本日のステージでは多幸感とでも呼べる特別な非日常感を味わうことができました。

HR/HMのライブ・パフォーマンスとしては本日BLACK EARTHがベストだったと思いますが、体験として最も特別だったのはこのDTPだったと言えるでしょう。

そして終演を迎え、メンバーたちがオーディエンスに向かって礼をしたとき、唯一髪の毛があると思っていたキーボードの人も頭頂部が(以下自主規制)。


BLACK STAR RIDERS

ほとんど来日せず、アルバムを出したわけでもなかったので日本ではあまり知られていませんでしたが、1996年から2012年まで「再結成THIN LIZZY」というものが存在していました。

当初のメンバーはスコット・ゴーハム(G)、ジョン・サイクス(G, Vo)、マルコ・メンドーサ(B)、ブライアン・ダウニー(Dr)、ダーレン・ワートン(Key)という、THIN LIZZYのラスト・アルバム『THUNDER AND LIGHTNING』のラインナップに限りなく近いものですが、THIN LIZZYというのは故フィル・ライノット(Vo, B)の存在感があまりにも大きいバンドだったので、どうしても「金目当ての紛い物」感が漂っていました。

とはいえこのメンツでツアーをやればかなり客は入ったようで、ジョン・サイクスが2000年代に新作を出さなかった原動力になっていたわけですが、そのTHIN LIZZYからジョン・サイクスが脱退した後、後釜に迎えられたのが元THE ALMIGHTYのリッキー・ウォーウィック(Vo, G)でした。

既にブライアンもダーレンも脱退していたので、もはやTHIN LIZZYの関係者はスコット・ゴーハムのみになってしまった状況に腹を括ったのか、THIN LIZZYの看板を捨てた結果誕生したのがこのバンド。

サウンド的にはいたってオーセンティックなハード・ロックというか、THIN LIZZYとTHE ALMIGHTYを7:3の割合でミックスしたような音で、今どき珍しい、男らしさを感じるサウンドを出している。

THIN LIZZYの大ヒット曲「The Boys Are Back In Town」もプレイしていましたが、完全にサービスって感じでしたね。あくまで新しいオリジナル曲で勝負している、という印象を受けました。

個人的にはあまり琴線に触れる音ではなく、ジョン・サイクスをフィーチュアしたTHIN LIZZYが『THUNDER AND LIGHTNING』の曲をガンガンやってくれた方が盛り上がったと思いますが、普通にカッコいいと思いました。

特にリッキーの佇まいがカッコよかったこともあって、久しぶりにTHE ALMIGHTYを聴きたくなりましたね。

最新作『HEAVY FIRE』が全英6位を記録したそうですが、その人気も納得のタイトなパフォーマンスでした。リーダーであるはずのスコット・ゴーハムがむしろ引き気味に見えたのが気になりましたが。


CRADLE OF FILTH

イギリスのシンフォニック・ブラック・メタル・バンド…などといちいち説明が必要になるようなレベルのバンドではないですね。この界隈の超有名バンドです。

ただ、個人的にはLOUDNESS、DEVIN TOWNSEND PROJECT、BLACK STAR RIDERSと3バンド立て続けにアリーナで立って観たので、少々お疲れ。ビールとツマミを買って指定席で座って観ていたら案の定途中で寝落ちしてしまいました。

ダニ・フィルス(Vo)が時折発する金切声と、キーボード&コーラスのおねいさんのむっちりしたボディだけが印象に残っています。


MESHUGGAH

前回のLOUD PARK出演時、場内があまりにも静かでメンバーがご機嫌ななめな感じだったスウェーデンの元祖ジェントなエクストリーム・メタル・バンド。

しかし今回はオーディエンス側も前回の反省を踏まえてか、積極的に盛り上げに行く。演奏中はみなバラバラのリズムで(変拍子なので)拳を振り上げ、モッシュピットなども生まれていたようだ。静かになってしまいがちな曲間には盛んに「メシュガー」コールが投げかけられ、ストイックな趣のメンバーたちも満更でもない様子。

それほどMCの言葉数が多いわけではないですが、何気にほぼ全てのMCが日本語で行なわれていたので、イェンス・キッドマン(Vo)が日本人女性と付き合っていた(いる?)というのはどうやら本当のようですね。

ネット上でも話題になっていましたが、彼らの複雑怪奇なリズムにピタリと合わせた照明ワークが凄まじかったことは特筆しておきます。常にカメラのストロボのように激しく照明が点滅していたので、ポケモンショックが起きるのではないかと思ってしまいました(笑)。というか、常に逆光状態で、アリーナからメンバーがほとんど見えないという(苦笑)。

ちなみに休暇中のフレドリック・トーテンダル(G)に代わってサポートしていたのはSCAR SYMMETRYや、最近ではNOCTURNAL RITESに加入したことでも知られるペア・ニルソンでした。


SABATON

LOUD PARK 15において、裏でやっていたAT THE GATESを見ていた人以外からはベストアクトの声が高かったスウェーデンの大人気バンド。

私を含め場内の期待も高く、開演前から「SABATON」コールで大盛り上がり。ステージに鎮座しているのはもちろん今回もYAMAHAの戦車ドラムだ。

ショウは定番の「Ghost Division」でスタート。ヨアキム・ブローデン(Vo)のキレのいいアクションも相変わらずだ。

新加入のトミー・ヨハンソン(G, REIN XEED)もしっかりフィーチュアされ、彼らのライブの特徴であるコント・パートで「バカ」を「乾杯」の意味だと教えられ、会場全体で「バカ!」と叫ぶなど、笑いを取っていました。トミーにはせっかくこういう軍隊バンドに入ったのだから、鍛えて身体を引き締めてもらいたいです(笑)。

どの曲もバックに楽曲のイメージ映像が流れ、合唱すべきパートでは歌詞も映る初心者に優しい親切設計。これは他のバンドも取り入れてほしい。

そしてパイロもさながらトリかというほどバンバン使われ、会場をさらにヒートアップさせる。

日本の西南戦争を題材にした「Shiroyama」ではヨアキムに「友人だ」と紹介されて出てきた「山岡さん」がゲストでギターをプレイ。「Shiroyama」自体は別に日本だからプレイしているわけではなく、今回のアルバムのツアーのセットリストにレギュラーで組み込まれている曲だが、ここ日本ではそれを特別なものにしようというヨアキムの粋な計らいだろう。

問題は山岡さんが誰なのか、場内の大半の人はわかっていなかったということですが。

(私も後で知りましたが、その筋では有名なゲーム音楽のクリエイターだそうです。今回のLOUD PARKの場内モニターで盛んにプロモ映像が流れていた『World Of Tanks』というオンラインゲームはSABATONとコラボしているのですが、このゲームに山岡氏が関わったことが縁でのゲスト出演と相成ったみたいです。紹介が雑だったのは、ヨアキムが山岡さんの日本のメタル・ファンにおける知名度を読み誤ったということでしょう)

今回もエンターテインメント精神にあふれた楽しいショウを提供してくれたわけですが、何が起きるか既に知っていた分、前回観た時よりもインパクトは薄かったかな。初見の人はより楽しめたのではないでしょうか。


GENE SIMMONS BAND

失礼ながら、KISSアーミーならぬ私にとっては今年一番どうでもいい出演者でした。

KISSの名曲がたくさん聴ける、って、KISSの曲はKISSがやるから特別なんじゃあ、と。こんなあからさまな副業/趣味バンドがトリ前ということ自体、ちょっと釈然としませんでした。

とはいえそんな不心得者は私くらいのものかと思いきや、トリ前だというのにアリーナはガラガラ。オープニング・アクトを別にすると今日イチ少ないかもしれない。

LOUD PARKに行ったことがない人のために説明しておくと、一般的にトリ前というのは一番人が多くなることが多いのです。もちろんそれなりの集客力があるアクトが出演しますし、反対側のステージ前にはトリ待ちの人がスタンバっています。そしてトリの時間になると、トリに興味がない人や、遠方から来ていて終電が早い人は帰ってしまうので、通常、トリよりもトリ前の方が場内に人が多くなる、というわけです。

然るにこのガラガラ具合…。皆さん私と思いは遠からず、ということでしょうか。私もトリに備えて飯タイムにしようと思っていましたが、まだそれほどお腹が空いていなかったので、アタマくらいは観ておこうか、と指定席に座って開演を待ちました。

ショウは「Deuce」で始まり、「Parasite」、「I Love It Loud」と、KISSナンバーのオンパレードだ。プレイは当然悪くない。ステージ前はそれなりに盛り上がっている。

そしてジーンは百戦錬磨のショウマンでエンターテイナー。巧みに日本語を交えたMCでアリーナを盛り上げていく。これがお昼頃のステージだったら、普通に良かったと思えたかもしれない。

しかし、しばらくすると観客?がぞろぞろとステージに登場。その数20人ほど。これはいったい何事?(後で知ったが、ジーンは2000ドルでステージに上がる権利を販売していたらしい。さすがというか何というか)

個人的には素人がステージに上がっても特にショウに貢献できるわけでもなく、手持無沙汰な雰囲気が醸し出されがちなので、こういう演出は好きではない。IRON MAIDENがかつてやっていた「Heaven Can Wait」のアレなんかはやることが明確だからまだいいのですが。

そして、ステージ上にいる人たちが、2000ドルという安からぬお金を払っているということを考えれば当然ながら、皆さん結構いい歳で、フォトジェニックとは言い難い(苦笑)。これが「ジーンが会場で選んだかわいい女の子ベスト20」とかだったらまだ見て楽しめたかもしれませんが(女の子たちにとっては貞操の危機になりますが/笑)。

正直ちょっといたたまれなくなってきたので、予定より少し早めに通路に出てしまいました。


MICHAEL SCHENKER FEST

以前MICHAEL SCHENKER FESTの単独公演の告知を見た時、イベント名だと思っていたのですが、実際はプロジェクト名だったようです。

ゲイリー・バーデン、グラハム・ボネット、ロビン・マッコーリーという、かつてM.S.G.に在籍した歴代のシンガーをフィーチュアした同窓会的な企画で、単独公演も盛況だったようなので、集客力という意味ではLOUD PARK歴代のトリと比較してなんら見劣りしないといえるでしょう。

ショウはマイケル・シェンカーというギタリストの名刺代わりと言える「Into The Arena」でスタート。曲名的にもショウのスタートにピッタリである。マイケルはすこぶる機嫌が良さそうでニッコニコである。そしてそれは本日ずっとそうで、とてもかつてコンサートを放棄して帰ってしまった、などという情緒不安定なエピソードを持つ人には見えない。

ゲイリー・バーデンはサビをオーディエンスに丸投げでしたが、私が以前に観た時もそうでしたし、この人は若い頃からそうだったようなので、ファンにとっては許容範囲でしょう(?)。

グラハム・ボネットはカンペをガン見していましたが、この人も昔からそうだったようなので、これもファンにとっては許容範囲でしょう。というか、むしろまだこれだけパワフルな声が出るのか、とポジティブに驚かされました。

この人の場合、スーツ姿で登場した瞬間に場内に笑いが巻き起こっていたので、出てきた時点で勝ち、という感じでしたけどね(笑)。

個人的にハイライトだったのはロビン・マッコーリーのパート。単純にMICHAEL SCHENKER GROUP時代の曲よりMcAULEY SCHENKER GROUP時代の曲のほうが私の肌に合うというのもありますが、ロビン・マッコーリーの声が衰えるどころかむしろMcAULEY SCHENKER GROUPのスタジオ盤より出てるんじゃないの? と思えるほどの素晴らしさでした。

なんかこの人はリアルタイム組の人たちには「マイケルには不釣り合い(実力不足という意味で)」という評判だったようですが、単純にMcAULEY SCHENKER GROUPの音楽性がアメリカナイズされた方向性に向かっていたことに対する不評の戦犯にされてしまったというだけなのではないでしょうか。

「Save Yourself」をやってくれたのは嬉しい驚きでしたが(結構難しい曲なので)、「Destiny」と「Anytime」も聴きたかったですね。そんなこと言っていたらキリがありませんが。

ラストはUFOナンバーで、「Rock Bottom」(Voはロビン・マッコーリー)で恒例の壮絶な、長いのに緊張感が切れないギター・ソロを披露、さらに3シンガー揃い踏みで「Doctor Doctor」をプレイして締め。

若い人は翌日が休みではないということもあってGENE SIMMONS BANDあたりでもう帰ってしまったのではないかという疑惑もありますが、残っていたのが「エクストリーム厨」な人たちであったとしても、マイケル・シェンカーが「神」と呼ばれる所以は伝わったのではないかと思います。技術的にはDEVIN TOWNSEND PROJECTやMESHUGGAHのギタリストの方が圧倒的に上手いのでしょうが、やはりこのトーン、アドリブの冴え、余人を寄せ付けぬものがありました。


正直な所、今年は歴代でも屈指の地味なラインナップだと思っていました。昨年、SCORPIONSにSYMPHONY Xという、長年の宿願というべきアーティストを観ることができたこともあって、今年はRPGでいえばラスボスクリア後のサブクエスト消化みたいな気分というか(笑)。

しかし終わってみるとその満足度は決してアベレージを下回るものではなく、充分に楽しめたと言っていいでしょう。特に初日のALICE COOPER、2日目のシークレット・アクトのサプライズは非常に印象的でした。他にEMPEROR、DEVIN TOWNSEND PROJECT 、MESHUGGAHのステージも「特別なものを観た」という気がします。

そんな満足感を胸にさいたまスーパーアリーナから出ると、ここ2、3年、毎回会場で見かけている(髪型が髪型だけに目立つ)PHANTOM EXCALIVERのVoの人に12月の赤坂BLITZ公演のフライヤーを渡されました。

私の今年のライブ納めはサイン入りポストカードが当選してしまった12月8日(金)のSECRET SPHEREになるのか、はたまたこの12月15日(金)PHANTOM EXCALIVERになるのか、どちらも仕事が長引きがちな金曜日のライブということもあって予断を許しません(苦笑)。

LOUD PARK 17 一日目の感想

ふと目覚めると、まだ朝7時前。私の家からさいたまスーパーアリーナまではドアtoドアで40分程度。「まだ余裕だな」と再び眠りにつく。

そして再び目覚めると、11時過ぎ。イングヴェイの「I’ll See The Light Tonight」冒頭のジェフ・スコット・ソート渾身のシャウト「No~~~~!! No!!!」が脳内に響き渡る。

慌てて家を飛び出し、さいたまスーパーアリーナに向かったものの、到着したときにはL.A.GUNSがプレイしていました。

かつて観たことがある、というか昨年観たばっかりのALDIOUSはともかく、レゲエやヒップホップという、HR/HMとはいささか相性が悪い(と思われている)ジャンルを取り入れたSKINDREDや、女性Voが大層キュートだったというドイツのシンフォニック・メタルBEYOND THE BLACKのような、単独での来日は難しそうなバンドこそぜひ観たかったのですが、残念ながら見逃してしまいました…。

なお、今年も私は指定席を購入しており、その席がBIG ROCK STAGE側だったため、基本的にBIG ROCK STAGEに出演したバンドは指定席で、ULTIMATE STAGEに出演したバンドはアリーナで観ています。

L.A.GUNS

メジャーからのドロップ後、もはやメンバーの変遷だけでWikipediaの1ページが作れてしまうほどの激しいメンバー・チェンジを繰り返し、さらにはVoのフィリップ・ルイスとGのトレイシー・ガンズがそれぞれにL.A.GUNSを名乗って活動するなどの迷走を経て、ついに今年そのフィル・ルイスとトレイシー・ガンズが合流したことで、こうしてLOUD PARK出演を果たした彼ら。

正直、「落ちぶれたロートル・バンド」的なイメージがあったし、個人的には全盛期の代表曲でさえあまり琴線に触れないバンドだったので特に期待していませんでしたが、バンドのパフォーマンスはタイトで、ドサ回りとはいえライブを続けてきたバンドの強さを感じました。

特に今年還暦を迎えたはずのフィル・ルイスが今なおフロントマンとしての華と毒と色気を保っており、さらには声もよく出ていて、いい意味で驚かされました。


ANTHEM

このバンドも一昨年に観たばっかりだったのであまりありがたみはありませんでしたが、「Bound To Break」で始められたら盛り上がらないわけはない。

森川之雄のMCがちょっと時代錯誤でこっ恥ずかしい(「ANTHEMの猛攻撃だ!ぶっ飛ばしていくぜ!」みたいなMCには思わず赤面してしまいました)ことと、決してパフォーマンスに足りないものがあるわけではないのになぜか全く華がないフロントマンぶりは前回観た時と変わらず、ライブ・パフォーマンスとしては坂本英三在籍時の印象を超えることはなかったのですが、ベテランにありがちな手抜き感のない全力投球のパフォーマンスは相変わらず好感が持てました。

ANTHEMを観ること3回目にしてようやく森川時代で一番好きな「Hunting Time」を観ることができたのは嬉しかったですね。でもライブではその後にプレイした「Venom Strike」の方が映えていた気がします。


BRUJERIA

メキシコ出身の謎の覆面集団…という設定のバンド。デス/グラインド系のバンドということで個人的には興味の対象外で、前半は通路で昼飯を食べてました。

アルバムを聴いたことはありませんでしたが、私が一番熱心にHR/HMを聴き、『BURRN!』誌を読み込んでいた頃にリリースされたデビュー・アルバムは人の生首の写真というショッキングなアートワークで印象に残っています。当時からNAPALM DEATHやFEAR FACTORYやFAITH NO MOREのメンバーが関わっている、という噂を聞いていましたが、とりあえず本日についてはベースがシェーン・エンバリー(NAPALM DEATH)であることは体型と髪型ゆえに覆面をしていても一目瞭然でした(笑)。

ヴォーカル・パートがメキシコの公用語であるスペイン語であるということは、デス系の音楽ゆえにどうでもよかったのですが、MCまでスペイン語なので、時折挟まれる英語以外は何を言っているかさっぱりわからず。とりあえずバンド名の読み方が「ブルヘリーア(リにアクセント)」であることを知りました(笑)。たしかにそう発音するとスペイン語っぽいですね。

とりあえず何も考えずに爆音に包まれて暴れたい人にはピッタリという感じのサウンドで、アリーナ前方では盛んにモッシュが行なわれていました(私は指定席で高みの見物)。

メンバーが時折ポーズめいたものをキメていましたが、あれは何だったのでしょう。「俺達テロリスト集団だぜ」みたいな雰囲気は出ていましたが。


WINGER

BRUJERIAの後にWINGER。激辛料理の後にスイーツといった趣の流れ。これは確信犯でしょう。

全米チャートにおける実績という意味ではALICE COOPER、SLAYERに続いてトップクラスの実績を持つバンドですが、本日のアリーナの人集まりは少なめ。以前彼らのライブを観た時、その巧さに舌を巻いた記憶があったので、アリーナ前方に進んで観てみることにしました。

やっぱり上手い。やっている音楽はキャッチーでコンパクトだが、そこらのプログレッシヴ・メタル・バンド顔負けの演奏力。フェスで、持ち時間も少ないというのにドラムとギターのソロ・タイムがあるというのが自信の表れでしょう。ソロ・タイムというのは楽器をやらない人にとっては往々にしてトイレタイムになってしまいがちですが、これだけわかりやすく超絶技巧を披露されれば、エクストリーム厨と呼ばれるような人でさえ、退屈した人はそんなに多くないのではないでしょうか。

あと、彼らの場合、キップ・ウインガー(B)、レブ・ビーチ(G)、ロッド・モーゲンステイン(Dr)のメイン3人とも、いい歳のとり方をしているというか、変な若作りをするわけでもなく、中年なりのカッコよさをちゃんと身に付けているあたりがいいですね(セカンド・ギタリストであるジョン・ロスもちょっと地味ながらちゃんと上手くてカッコいい)。

惜しむらくは、このバンドの代表曲が「Seventeen」というティニー・ポップな曲である、ということですね。もちろんヒットしただけあってキャッチーでいい曲ですが、このバンドの魅力の本質を伝える曲ではないかなと。

個人的にはとても楽しめたショウでしたが、今回も「Rainbow In The Rose」が観られなかったのが残念です。まあメタル・フェス向きの曲とは言い難いのでやむを得ないですが。

ライブを観終わって指定席に戻る途中、川島未来さん(SIGH)とすれ違いました。


OPETH

彼らを観るのはLOUD PARK 06以来、約10年ぶり。先ほどのBRUJERIAからWINGERの流れもドラスティックでしたが、WINGERからOPETHの落差もかなりのもの。

OPETHの音楽が「深イイ」ものであることは理解できるものの、個人的にHR/HMにはもっとわかりやすいものを求めているので、何枚かアルバムは購入して聴いていつつも、あまり親しんでいるとは言い難いのが実情。

酒飲んで、スタンディングで盛り上がった後に座って観たら寝てしまうだろうなあ、と思っていましたが、案の定寝てしまいました(苦笑)。

1曲目からウトウトし、2曲目「Ghost Of Perdition」で「おお、この曲は知ってるぞ」と目を覚まし、3曲目でまた眠りに落ち、5曲目にしてラスト(彼らの曲は長いので…)の「Deliverance」のヘヴィなイントロでようやく目を覚ます、という体たらく。大変失礼いたしました。


OVERKILL

このバンドもライブが強力、という評判を耳にしていたので期待していました。

スラッシュ・メタルとビールって合うよね、とアリーナ後方のオフィシャルバーでドリンクチケットをビールに換え(それまでは普通に屋台でフードと一緒にビールを買っていました)、ビールを飲みつつOVERKILLの開演を迎える。

いやいや、後ろで飲みながらまったり観ている場合じゃないですよ。まず出音が違う、キャリア30年以上におよぶベテランとは思えないほどの荒々しい勢いがサウンドに漲っている。当然のごとく盛り上がっていて、アリーナ後方からだと見えないものの、きっと前方ではサークル・ピットやモッシュピットが発生していることは間違いなかったでしょう。

てか、私もピットの側にいたら年甲斐もなく飛び込んだかもしれません。それくらいイキリ立って飲み終えたビールのカップをゴミ箱に放り込むと、アリーナ前方に走ったのですが、人が多すぎてスゴスゴとアリーナ後方に引き返しました(苦笑)。

正直、ボビー“ブリッツ”エルスワース(Vo)のミッキーマウス的なハイトーン・ヴォイスはちょっと苦手で、アルバムで聴くことはあんまりないのですが、ライブは素晴らしいですね。こういうスラッシュ・メタル・バンドはフェス1日にひとつは欲しい気がします。

ラスト、ボビーの「俺は、日本語はほとんど喋れない。英語だってひどいもんだけどな。だけど、このサインだけは完璧だ!」と言って中指を立て、カナダのパンク・バンドSUBHUMANSのカヴァーであり、既に彼らの代表曲となっている「Fuck You」がプレイされる。平均年齢は若く見積もっても30歳、下手すると40歳を超えるであろうオーディエンスが「Fuck You!」と絶叫できるこの空間は全銀河系でも貴重なものだと言えるでしょう。痛快なライブでした。


ALICE COOPER

開演前、ステージに張られたアリス・クーパーのパンダ風メイク柄の幕からして期待感を煽りましたが、照明が落ち、ただならぬ存在感とオーラを身にまとって登場したアリス・クーパーがとても御年69歳とは思えぬキレキレの動きでステッキをクルクルと回した瞬間、これは特別なショウになると予感しました。

1曲目は2000年の『Brutal Planet』からのヘヴィなタイトル曲で、ALICE COOPERがメタル・フェスに出演するに相応しい存在であることをアピールしつつ、2曲目は「No More Mr. Nice Guy」、3曲目は「Under My Wheels(邦題:『俺の回転花火』)」と、クラシック・ナンバーがプレイされる。正直70年代の曲は本日の他のバンドの楽曲に比べると古臭いというかのどかな印象を受けるが、アリス・クーパー御大のカリスマ性が有無を言わせず、そしてバンド・メンバーのパフォーマンスがソリッドなので充分にカッコいい。

てか、スティックをクルクル回しながらパワフルなドラミングを聴かせているドラマーはどこかで見たことがあると思ったら、元IMPELLITTERIのグレン・ソーベルだ。実力に相応しい就職先を見つけましたね。

『俺の回転花火』の後、リズム・ギターを引いていたブロンドの女性ギタリストのソロ・タイム。ライブが始まったときからダントツで目立っていた(こんなに動き回るギタリストは他にイングヴェイくらいしか知らない)彼女、めちゃくちゃカッコよくて、一発でファンになってしまいました。そういう人は私以外にも多かったのではないでしょうか。

後で調べてみた所、彼女はオリアンティの後任として2014年にこのバンドに加入したニタ・ストラウスという女性で、女性のみによるIRON MAIDENのカヴァー・バンドとして有名なTHE IRON MAIDENSでの活動経験があるようだ。そしてなんと「美しく青きドナウ」など数々のウインナ・ワルツの名曲を作曲したことで知られるクラシック作曲家、ヨハン・シュトラウスII世の末裔とのことで、シベリウスの曾孫であるSTRATOVARIUSのラウリ・ポラー(B)と並ぶ音楽サラブレッドでした。

そんなバンド・メンバーのみならず、ステージの演出やギミックがスペシャル。パイロやスモークはもちろん、「Feed My Frankenstein」ではIRON MAIDENのエディよろしくフランケンシュタインが登場、他にもダンサーのような女性も登場して小芝居を展開、しまいにはアリス・クーパーがギロチンで処刑されるなど、ステージがさながら劇場と化す。こりゃ曲を知らなくても単純に見世物として楽しい。

ラストの全米TOP10ヒット曲、クラシック・ロックのコンピレーションにもよくピックアップされている代表曲「School’s Out」では場内にカラフルなバルーンのようなものが投げ込まれ、インスタ映え(笑)する光景に。

いや~、参りました。正直、最初は単に『観たことがあるロック・レジェンド・スタンプカード』を埋めるだけ、くらいの気持ちで観始めたのですが、ぶっちぎりのベスト・アクトです。ショウとして楽しめた度ではLOUD PARK史上屈指でしょう。なんでこれがトリどころかトリ前ですらないのか。60分そこそこで終わらせるにはあまりにももったいない、最高のエンターテインメントでした。


EMPEROR

前評判というか、ネット上の評判を見るに、本日一番注目/期待されていたのはこのブラック・メタル・レジェンド、EMPERORだったのではないでしょうか。

私のようなメロディ派の人間が彼らについて何を言っても説得力に欠けるので多くは語りませんが、そんなメロディ派の人間でもこのバンドの音楽が「ブラック・メタル」というジャンルを超越した完成度と説得力を備えていることは充分に感じ取れました。会場の空気も本日一番緊張感がありましたね。

メンバーも、もはやブラック・メタル独特のコープス・ペイントなどはしていませんが、それでも皆さん充分に怖い。私がこの手のバンドのライブを観るのはほぼLOUD PARKに限られるわけですが、これまで観たブラック・メタル・バンドの中で一番凄味を感じました。


SLAYER

もはやLOUD PARKのトリ常連と言っていいでしょう。正直「またか」という気持ちもある一方、SLAYERのステージを観ることで「ああ、今日もLOUD PARKが終わるな」という気分が生まれるようになったということもまた事実です(笑)。

彼らに関しては「SLAYER is SLAYER」なので、特に過去に観たライブと比べて何が変わるということもなく、このブログの過去の感想をコピペして貼り付けてもいいくらいなのですが(笑)、本日このフェス史上最も音響が良かったこともあり、SLAYERの純度100%のスラッシュ・サウンドが一層研ぎ澄まされて聴こえました。こんなにアホみたいに速い(褒めてます)タテノリのリズムを刻んでいるのに一種のグルーヴが生まれているあたり、本当にSLAYERというのはモンスター・バンドだと思います。

クライマックスの「Raining Blood」、「Chemical Warfare」、「Angel Of Death」の畳み掛けは、我々の首を折りに来ているとしか思えませんでした(笑)。完全燃焼です。

しかし毎年思いますが、この時間にサークル・ピットでグルグル回っている人たち、凄い体力ですね。いや、LOUD PARKの華はこの巨大ピットだと思います。今年はプレミアムチケット用のスペースが確保されたせいでアリーナ前方が狭くなっていて、ピットもその分小さくなったり少なくなったりしていたような気がしますが、ガラガラのVIPスペースで観ていた人たちより、ピットで走っていた人の方がきっとこの時間を楽しんでいたと思います。

てか、あのプレミアムチケット用のスペース、あの場所でいいんですかね? アリーナ最前列の前にスペース取ってあげればよかったのに。それならあんなにガラガラにならなかったと思うのですが。


そして終演してふと気づくと例年サッシャ氏かDJ BOO氏が務めていたMCがいない。しかしこのイベントに関しては別段困ることはない。毎年MCって別にいらないんじゃね? と薄々思っていましたが、経費削減の結果?その疑惑が正しかったことが証明されてしまった感じです。

LOUD PARK 16 二日目の感想

実は前日の一日目は、疲れが溜まっている中、朝食もとらずにすきっ腹でいきなり飲んだのが悪かったのか、最初のビールを飲んだ後、頭痛になってちょっと体調不良でした。

その反省を活かして(?)、地元駅のカフェで優雅にモーニングなど食べていたらまんまと遅刻、せっかく今年から始まった企画、「出れんの?ラウパ」バンドを2日連続で見逃してしまいました。

建前上の1バンド目であるSAVAGE MESSIAHがプレイを開始した直後、会場に到着、例によって自分の指定席に向かいました。ちょうどいいことに、SAVAGE MESSIAHがプレイするBIG ROCK STAGE側なので、そのまま座って鑑賞。

SAVAGE MESSIAH
LOUD PARKへの出演が発表される前あたりからTwitterで日本人のメタラーを盛んにフォローしていた彼ら(私のアカウントにも何度もフォロー/リムーブを繰り返していましたが、無視してしまいました…)。日本でライブをやることに対してはかなりモチベーションを高くしていたと思われます。

そして実際、充実のパフォーマンスでした。NWOBHMをちょっとスラッシュ寄りにしたような、現代のイギリスのバンドとは思えないピュア・メタルな音楽性でマニアの注目を集めていましたが、その実力がフロックではないことをこの場で証明しました。

完璧なまでにメタルであり、(相対的に)フレッシュな若手であるこういうバンドが1バンド目に来るのはすごく適役な感じがします。朝っぱらからサークル・ピットも生まれ、盛り上がっていました。何ともすがすがしい、気持ちのいいライブでした。


NOCTURNAL BLOODLUST
日本のヴィジュアル系エクストリーム・メタル・バンド。割と評判がいいのでサブステージであるEXTREME STAGEに足を伸ばしてみました。

元々はメタルコア・バンドとしてスタートし、ヴィジュアル系の装いは後付けだったらしいですが、メンバーの皆さんイケメンで、中でもよく回る上手(かみて)のギタリストはかなりコテコテのメイクをしていらっしゃる。

そして度々モニターに抜かれる最前列では、いわゆる「バンギャ」な皆さんが一心不乱にヘドバンをしており、その後ろでエクストリーム・ミュージック好きの若者がサークル・ピットや、バンドに煽られるウォール・オブ・デスを繰り広げている。

「オレらこんなオープニングアクトなんて扱いに納得する気ねえからよ」「2016年ラウドパークに出ました、なんて肩書きはいらねえンだよ」みたいなヴォーカルの人のイキり散らかしたオラオラなMCはV系の伝統としてもちょっと若気の至り感がハンパなく、苦笑せざるを得ませんでしたが…。

目をつぶって聴けば楽曲や演奏はエクストリーム・メタルとして充分なクオリティに達しており、普通にカッコよかったです。こういうイケメン兄ちゃんがどんどんメタルやってくれれば、日本におけるメタルの扱いもちょっと変わるのかもしれません(?)。

とりあえず3、4曲観てメインステージに帰還。


KUNI
LOUD PARK皆勤賞である私が、歴代の中でも屈指のワースト・アクトだったと感じているKUNIを観にわざわざNOCTURNAL BLOODLUSTを途中抜けしてメインステージに戻ったのは、決してKUNIのラスト・ステージだったからではありません。

それは、今回KUNIのバンドのヴォーカリストを務めているのが、かつてKUNIのアルバムに参加したことがあるジェフ・スコット・ソート様だったからです(ちなみに他のメンバーはダレン・スミスにトニー・モンタナ)。

イングヴェイのRISING FORCEの初代ヴォーカリストであり、TALISMANをはじめ数々のプロジェクトでの活動実績を持つジェフ・スコット・ソートは私のフェイバリット・シンガーの一人で、近年はなかなか来日できるような活動をしていないため、この機会にぜひ一度観てみたいと思っていました。

そしてこうして観てみると、やはりジェフは堂々としてカッコいい。楽曲はいささか類型的で、KUNIのギターは相変わらず大学のサークル活動に毛が生えたレベルだが、ジェフが歌うことで説得力が生まれている。こうして考えると前回のマーク・スローターはちょっと「軽かった」のかもしれません。

モデルみたいなお姉ちゃんがステージに登場するなど、業界人ならではのコネをフル活用したステージは、とりあえず前回よりマシだったような。

最後に演奏されたKISSのカヴァー、「Rock And Roll All Night」がプレイされた後、KUNIが「引退宣言」を喋り始めたが、そのコメントが終わらないうちにジェフがMCでカットインして強制終了させてしまったのには失礼ながら笑ってしまいました。


THE DEAD DAISIES
ジョン・コラビ、マルコ・メンドーサ、ブライアン・ティッシー、ダグ・アルドリッチ等、往年のHR/HMファンであれば名前くらいは聞いたことがあるはずの面子によるオールド・ファッションなハード・ロック・バンド。

彼らのルーツなのであろう70年代スタイルのブルージーでロックン・ロールなハード・ロック・サウンドは、特筆すべき何かがあるわけではありませんが、安定感のあるパフォーマンスで、ビールを飲みながらまったり観るにはいい感じでした。


TERRORIZER
グラインド・コアの元祖のひとつとも言うべきバンド。エクストリーム・ミュージックにおける伝説のドラマーであるピート・サンドヴァル見たさに再びEXTREME STAGEへ。

ピートが着ている明るい色のタンクトップに面喰いつつ、その強烈な轟音ブラストを浴びてきました。
ただ、さすがに50代になってこのドラミングはちょっとしんどいのではないか、という観もありましたが…。

正直なところ私にはどの曲も同じに聞こえるので、3~4曲でメインステージに引き返す。


LACUNA COIL
前回出演したLOUD PARK07の二日目においては、個人的にはANTHEMと並ぶベスト・アクトであり、その日のライブを収録したDVDも購入してしまったほど気に入ったイタリアのゴシック系オルタナティヴ・メタル・バンド。

今回は何やら「バイオハザード」(バンドではなくゲーム/映画のほう)のようなというかSLIPKNOTのようなというか、ホラー映画風の白いツナギみたいな衣装にメンバー全員が身を包んでいる。

髪を赤く染めたクリスティーナ・スカビア(Vo)は、さすがにモニターのアップで観るとちょっとオバサン化していたものの、それでもなお充分にチャーミング。

アメリカでも成功を収めたバンドに相応しい安定感のあるライブを繰り広げていたものの、前回観たときには今まさにピークに達せんとする「勢い」のようなものが感じられたのですが、メンバー・チェンジのせいかセットリストのせいか、今回はちょっとそういう特別な何かは感じられなかったのが残念。


RIOT
前回出演時から新作を出したわけでもないのに再びの出演。なんでも、『FIRE DOWN UNDER』完全再現を条件にクリエイティブマンからオファーがあったのだという。

たしかに同作は初代ヴォーカリストであるガイ・スペランザ在籍時のアルバムの中では楽曲の平均点が高い作品だが、完全再現するほどの作品かというと…?

恐らくはギャラの安そうな割にある程度の集客力がありそうな彼らを呼ぶための「口実」だったのでしょうね。一応同作がリリースされてから35周年という「節目」だし。

ただ、個人的には前回と同じセットリストでよかったというか、『FIRE DOWN UNDER』は地味な曲もあるので、途中眠くなってしまったというのが正直な所。せっかく当時のギタリストであるリック・ヴェンチュラ氏までお越しいただいたのに申し訳ないですが…。

しかし、完全再現終了後にプレイされた「Thundersteel」と「Warrior」、この2曲がプレイされるだけで「いいライブだった…」と思えてしまうのですから、名曲を持つバンドは強いですね。その1、2曲だけで何十年も食えそうです(いや、恐らくRIOTのメンバーはバンドだけでは食えていませんが)。


SIXX A.M.
ニッキー・シックスのバンド。建前上は「ソロではなくバンド」のようだが、ステージ上での存在感を見る限り、やはりこのバンドは「ニッキー・シックスのバンド」という感じである。存在感が段違いだ。

80年代の良さと90年代の良さを統合・止揚した21世紀ならではの普遍的なハード・ロック・サウンドをプレイしており、その辺のバランス感覚はさすがにニッキー・シックス。ジェイムズ・マイケル(Vo)にD.J.アシュバ(G)というメンバーの人選も、そのニッキーの狙いどころを実現するにあたって最適な人材といえよう。

全米チャートでもそれなりの成果を出しており、80年代のHR/HMスターが名前を変えて成功した数少ない例になっているあたりは、さすがニッキーというべきか。

エロそうなお姉ちゃんも登場してのステージは、80年代ほど享楽的でないにしても(むしろちょっと内向的な暗さも表現されている)、当時のファンが楽しめるものに違いない。

でもやっぱり、MOTLEY CRUEほどの「バンド・マジック」は感じられなかったかな…。


ULI JOHN ROTH
伝説のギター仙人、ウリ・ジョン・ロート。正直、こういったいわゆる「メタル・フェス」にはあまり似つかわしくないアーティストだが(?)、一度観てみたいとは思っていたので、こうして出演してくれることはありがたい。

スカイ・ギターという特殊な機材を使っているせいなのか、ウリ以外にも2人、合計3本ものギターがあるせいか、サウンドチェックに時間がかかっていて開演が遅れる。定刻を10分以上遅れてスタート。

基本的には「Tokyo Tapes Revisited World Tour」の一環のステージということで、セットリストは全てウリがウルリッヒ・ロートと名乗っていた(というかこっちが本名?)SCORPIONS時代の楽曲のみ。個人的にはELECTRIC SUN時代の曲や、中途半端に頓挫している(?)シンフォニック・プロジェクトの曲も聴きたかったが、世の中的なニーズが大きいのはやはりSCORPIONS時代の楽曲なのでしょう。

複数の扇風機を足元に設置し、髪をたなびかせながら(もはやバンダナではごまかしきれないほど前頭部は後退していましたが…)他のバンドで使用されているそれと同じものとは思えない美しいトーンで陶酔するかのようにギターを奏でる様はまさに仙人。

その「仙人オーラ」を支えるのがスカイ・ギターにエフェクター、そして扇風機(笑)という、いわば「道具の力」(だけではないが)であるというのは味わい深い事実ですが、彼の音楽に知識も興味もない人であっても、そのギターの音色が特別であることは理解できたのではないかと思います。

ウリの脇を固める2人の弟子(?)ギタリストのうちの一人、ニクラス・ターマンがヴォーカルを兼ねていたわけですが、その歌声もなかなか強力で印象的でした。


SYMPHONY X
このブログを長年ご覧いただいている方の中にはご存じの方もいらっしゃると思いますが、このバンドのLOUD PARK出演はほぼ10年来の宿願でした。

なぜそこまでこのバンドをLOUD PARKで観たかったか。もちろん彼らの音楽や演奏力が素晴らしいから、というのはもちろん、「SYMPHONY X」という中二病めいたバンド名から「クラシカルで軟弱なメロディアス系マニア向けのバンド」という先入観・誤解を持っていそうな人たちに、彼らの音楽が下手なエクストリーム・メタル・バンドにも引けを取らないほどのアグレッションを備えた存在であることを見せつけてもらいたい、と思っていたからです。

そしてまあ、そういう誤った先入観を抱いていた人は、まるでプロレスラーかマフィアのようなラッセル・アレン(Vo)がステージに登場した瞬間に、彼らがそこらの単なる「メロディアス系」とは違うことを感じ取ったのではないでしょうか。

そして実際、ここで展開されたライブはその期待を裏切らないアグレッシヴなものでした(何しろ音がデカい!)。そういう客層の人たちは反対側のステージ前でKILLSWITCH ENGAGE待ちをするかEXTREME STAGEに行っていたのでサークル・ピットこそ発生しませんでしたが、個人的にはそういう盛り上がりがあってもおかしくないくらいのサウンドだったと思います。

最新作の曲が中心の前半も悪くはなかったですが、やはり名盤「PARADISE LOST」の曲が演奏された中盤でさらに盛り上がり、神盤「THE DIVINE WINGS OF TRAGEDY」からの「Out Of The Ashes」、「Of Sins And Shadows」、「Sea Of Lies」の3曲は感涙ものでした。

特にショウの後半、全体的にテンポアップしていたのは、前のウリ・ジョン・ロートで時間が押したせいでしょうか。

元々ちょっと孤高の雰囲気がある音楽の上、ギターもベースもほとんど持ち場を離れずにストイックに演奏に徹し、フロントマンは夜の街で会ったら財布を置いて逃げ出したくなるようなイカツさで、しかも本日のサウンドはあまり良くなかったため、どこまでファン以外の人たちにその魅力が伝わったかわかりませんが、彼らが単なる「メロディアス系」みたいな雑なカテゴリーに収まるバンドではない、という凄みのようなものは伝わったのではないかと思います。


KILLSWITCH ENGAGE
SYMPHONY Xで燃え尽きた後、いったんアリーナ外に出てスマホを眺めつつクールダウンしていると、視線を感じる。顔を上げると、このサイト/ブログの読者であるプロの音楽クリエイター/ミュージシャンの方だ。

ひとしきり今回のラウパの話題(主にDOKKEN/苦笑)で盛り上がると、その方が裏方の音楽制作で関わっており、先月にはかのアニサマで幕張メッセのステージに立ったという「BanG Dream!(バンドリ)」というコンテンツの宣伝をされました。来年あたりこのブログがバンドリ応援ブログに変わっていたらこれがきっかけです(笑)。

自分の指定席に戻ると、足元が濡れている。そして必然的に床に直置きしていたバッグの下がグッショリ。どうやら隣に座っている女性(暗かった上にまじまじと見たわけではないので年齢は不明ですが、自分が把握する限りポジティブな反応を示していたのがSIXX:AMとWHITESNAKEだけなのできっと私より年上でしょう)が床に置いていたドリンクのカップを倒したようだ。昨日の朝の女性といい、どうしてどいつもこいつも前のイスに付いているカップホルダーを使わないのか。

と、憤りつつ一旦外に出てトイレから少々トイレットペーパーを拝借、臭いからするとおそらくZIMAと思われる液体で濡れたバッグを拭きながらKILLSWITCH ENGAGEを観る。

このバンドは過去のLOUD PARKで2度ほど観ているが、ジェシー・リーチ(Vo)復帰後のステージを観るのは初めて。前任のハワードよりもエクストリーム・ミュージックのフロントマンらしい佇まいがあって、アダム(G)も以前観たときより落ち着いたステージングになっていた観があり、ステージ全体が引き締まった気がする。

そしてサウンドも先ほどのSYMPHONY Xより格段に良好で、何より剛柔のメリハリが効いた楽曲が大いにオーディエンスを盛り上げていた。指定席から観ていると終始アリーナ前方ブロックで大型のサークル・ピットが2つ渦巻いているのがよく見えて壮観。

人間誰しも第一印象というのは強いもので、私にとっての初LOUD PARKである06年には非常にメタルコア・バンドが多く出演していたために、個人的にはこういうバンドが普段なかなか見られない巨大なサークル・ピットを生み出すのがLOUD PARK、というイメージが今でも強かったりします。そのため、このKILLSWITCH ENGAGEのようなステージこそがLOUD PARKらしい、と感じますね。とても充実したパフォーマンス、オーディエンスの盛り上がりだったと思います。


DIZZY MIZZ LIZZY
前のKILLSWITCH ENGAGEが演奏中、反対側のステージにおけるステージセット/ステージ映像のチェックの様子が、ちょっと普通のバンドと違うぞ、と思っていました。そもそもトリ以外のバンドが映像を使った記憶がありません。

そして彼らのライブがスタートすると、なんと昨日のSCORPIONSでさえ使わなかったパイロがバーンと炸裂。各メンバーを映し出す映像がバックに配され、ライティングも含めまるでトリのような豪華セット。

なんでもこれらの機材は彼らが自腹で持ち込んだのだという。母国デンマークの人気バンドだからこそできる芸当だが、彼らが日本のファンを大切に思っていればこそ実現したものに違いない。ありがたいありがたい…と言いつつ、途中この後のNIGHTWISHとWHITESNAKEに備えて食事に抜け出したことは内緒です。

食事から戻ってくると「Rotator」が終わり、なんとWHITESNAKEの定番曲であるボビー・ブランドの「Ain’t No Love In The Heart Of The City」が歌われる、すわ、これはこの後出演するWHITESNAKEへのオマージュか、と思いきや、どうやら「Silverflame」につながる演出として他の公演でも歌っているらしい。それがこの後出演するデイヴィッド・カヴァデールに対するあてつけになってしまうことをこの時ティム(Vo / G)はまだ知らない…。

最後は名曲「Glory」。他の国でのライブではラストにやる曲ではないが、ここ日本ではこの曲が一番の人気曲ということでセットリストまでカスタマイズしている。本当に日本のファンに対して特別扱いをしてくれているなあ、と感銘を受けました。

途中抜けしていたので偉そうなことは言えませんが、パフォーマンスも非常にタイトで、ファンにとってはたまらないステージだったのではないでしょうか。


NIGHTWISH
SYMPHONY Xと並ぶ、本日のお目当てでした。今年行なわれた単独来日公演は仕事が忙しくて行けなかったので…。

何でも、フロール・ヤンセン(Vo)は現在妊娠中(お相手はSABATONのドラマーだそうな)とのことで、このツアーが終わったらしばらくバンドは活動停止するとのことで、そういう意味でも貴重なステージと言えるでしょう。

そして始まったステージは、過去に3度見たライブ同様、メタル大国フィンランドのトップ・バンドに相応しい貫禄と風格を感じさせる素晴らしさ。

クラシックと呼べる曲が「Wishmaster」と「Once」しかなかったのはやや物足りなかったものの、彼らの楽曲はどれも素晴らしいので、退屈する瞬間などは全くない。

フロールはターヤ、アネットという全く個性の違う前任シンガーの楽曲をどちらも大きな違和感を与えずに歌いこなすことができるという意味でも、186cmを超える女性としてはかなり大柄なその体躯が、160cmあるかどうかも怪しい小人のようなギタリストのエンプと絶妙な視覚的コントラストを生んでいるという意味でも、バンドに完璧にフィットしている。

最新作のエンディングを飾る20分超えの超大作「The Greatest Show On Earth」途中のシアトリカルなパートではゴリラのようなモンスター(?)の着ぐるみが登場したものの、どう考えてもフロールやマルコ・ヒエタラ(B, Vo)の方が強そうなので、あまり危機感が出ない。単にステッカーをアリーナにバラ撒いて帰っていっただけでした(笑)。

彼らがプレイする音楽は楽曲の新旧を問わず、たとえ初めて聴く人であってもそこにストーリーがあり、ドラマがあることを否応なしに感じ取れるであろうメロディ、展開、アレンジがある。特に映像などが使われているわけではないにもかかわらず、まるで映画か演劇を観ているような気分になり、感情が揺さぶられる。

なぜ音楽を聴いているか、それは感情を揺さぶられるからだ、という、とても根源的な事実に気付かせてくれる、メタルを超えた音楽として普遍的な魅力と圧倒的なスケール感に溢れるショウでした。陳腐な言葉ですが、感動のステージです。


WHITESNAKE
正直な所、NIGHTWISHのステージが素晴らしかったので、前回デイヴィッド・カヴァデールが衰えていることをまざまざと見せつけられていたWHITESNAKEの存在は、バンド名通り「蛇足」に思えてしまっていました。

とはいえ、私のフェイバリット・シンガーの一人であるミケーレ・ルッピ(元VISION DIVINE, 現SECRET SPHERE)がキーボード奏者として参加したラインナップを観るのは初めてなので、(反対側ながら)指定席でビールを飲みながら観ることにする。

期待値ほぼゼロで観始めたステージだったが、1曲目が「Bad Boys」。あのリフ、そして「アウアウアウ~!」を聴くと反射的に血沸き肉躍らざるをえない。一気にボルテージが上がる。デイヴィッドの声も思ったより出ているように思える。

まあ、実際にはデイヴィッドの声が出ているように感じたのは楽曲およびコーラス隊のフォローによる錯覚で、ショウが進むともはやデイヴィッドの声から艶や伸びが全く失われていることを否応なしに痛感させられる。声が伸びないのでシャウトに逃げるのだが、そのシャウトもカイ・ハンセンかブラック・メタルか、みたいな感じで痛々しいことこの上ない。

ただ、新しめの曲を排し、アメリカ進出後の商業的黄金時代の楽曲ばかりで固めたセットリストはやはり魅力的。特に本編終盤の「Crying In The Rain」、「Is This Love」、「Give Me All Your Love」「Here I Go Again」というアルバム『WHITESNAKE』ラッシュでは名曲を数多く持つバンドの強さを感じずにはいられませんでした。

このセットリストでいくとなれば、たしかにダグ・アルドリッチよりもNIGHT RANGERから引き抜いたジョエル・ホークストラのようなフラッシーなギタリストの方がサウンドにマッチする。心なしかジョエル・ホークストラはヘアスタイルや衣装など、ちょっとジョン・サイクスを意識していたようにも見えました。

ここしばらく白シャツなどのカジュアルな服装だったデイヴィッド・カヴァデールの衣装も黒のメタル・ミュージシャンの衣装っぽいものになっており、今回の『The Greatest Hits Tour 2016』というツアーのコンセプトは80年代後期の「ゴージャスWHITESNAKE」のリバイバルなのでしょう。

当時オールド・ファンはWHITESNAKEのゴージャス化を必ずしも歓迎しなかったようだが、この期に及んでWHITESNAKEにブルース・フィーリングが薄れることに文句を言う輩もいるまい。

当時と寸分たがわぬドラム・ソロを見せるトミー・アルドリッジは、さすがにソロ後半の素手で叩くパートあたりではちょっとしんどそうでしたが、ライブ全体を通してデイヴィッドより年長の66歳とは思えぬエネルギッシュなプレイをキープしており、ちょっと感心しました。

「裏お目当て」だったミケーレ・ルッピはBIG ROCK STAGE側の指定席からは全く見えず、時々モニターに映し出される姿を見るのみでしたが、衰えたデイヴィッドを手厚くサポートするコーラスの軸として確かな存在感を放っており、「いっそ代わりに歌ってくれ」とさえ思ってしまいました(もっとも彼の声はWHITESNAKEにはあまり合わないと思いますが)。

アンコールは「Still Of The Night」、そして「Burn」と、HR/HM史上に残る名曲2連発で締め。なんだかんだ言いつつもこれだけの名曲をやられたら満足せざるを得ませんね。

デイヴィッドの声に限界を感じつつも、前日のドン・ドッケンと違って「ファンを楽しませようと精一杯頑張っている」というプロフェッショナルな姿勢は伝わってきたので、その点にも納得はできました(むしろ、もはや余生を楽しむに充分なお金は稼いでいるだろうに、これだけしんどそうなステージを続けることの意味については疑問を抱かざるをえないのですが)。

そしてラウドガールのお姉ちゃんが何やらしゃべっているのを背に、満足感を抱いて会場を後にし、家路につきました。三連休で翌日休みというのが本当にありがたいですね。


しかし今年は例年にもまして充実したパフォーマンスを見せてくれるバンドが多く、宿願であったSYMPHONY X、そしてSCORPIONSを観ることもでき、個人的な満足度の高い年でした。

正直な所、もう積極的に観たいと思えるバンドはこれでひと通り見尽くしたかな、という感もあって、来年以降はもっとリラックスしてこのイベントを楽しめるな、という気がします。今までのようにガツガツと、できるだけ多くのバンドを観ることに執心するというよりは、時折外の「世界市」を覗きに行くくらいの心の余裕を持って臨みたいと思います(と言いつつラインナップによっては食事の時間も惜しんでステージに貼りつくことになるのだろうと思いますが/苦笑)。

でも本当に、このLOUD PARKというイベントのおかげで、自発的には観なかったであろうバンドの素晴らしいライブに沢山触れることができ、自分のメタル人生は明らかに豊かになったと思います。本当にありがとう、LOUD PARK。イベントが続く限り(そして諸々の事情が許す限り)通い続けたいと思います。

◆LOUD PARK 16 公式サイト
http://www.loudpark.com/16/

LOUD PARK 16 一日目の感想

ふと目を覚ますと既に9時過ぎ、慌てて飛び起きる。

ここ2、3日睡眠時間2~3時間の激務が続いており、昨夜帰り着いてからの記憶がほとんどない。ちゃんとベッドで寝ていたのが不思議なくらいだ。

当然目覚ましもかけていなかったのだが、普段土日は昼まで寝ているのが常なだけに、逆にこの時間に目覚めたのは奇跡的。やはり深層心理レベルでLOUD PARKがインプットされていたということなのでしょう(?)。

シャワーを浴びて歯を磨き、身仕度をして家を出る。あいにくの雨である。

さいたまスーパーアリーナに辿り着くと、ちょうど(オープニングアクトを除く)1バンド目であるSONS OF TEXASが最後の曲を演奏している所だった。パッと聴きでもなかなかカッコいい音を出していたので、最初から観られなかったことが悔やまれる。

指定席ユーザーなので、自分の席に向かうと、途中の席に座っているお嬢さんの飲み物のカップを倒してしまい、スニーカーがグッショリ。

てか何で前の席に付いているカップホルダーを使わずに足元に置いているんだ、という思いもありつつ、お金払いましょうか、と申し出るも断られ、いささか気まずい思いで着席。荷物を置いてアリーナに降りる。

今年はなんだか格闘技イベントのように女の子が開演前にバンド名が書かれたボードを持ってステージに表れる演出になっている。ツイート検索してみると柳いろはというグラドルで、ラウンドガールならぬ「ラウドガール」なのだとか。

個人的にはどうでもいいが、こういう華というかセクシーな要素がなくなったことがHR/HMに若いファンが入って来なくなった一因ではないかという気もするので、バンドに予算のしわ寄せが行かない範囲でどんどんやってください。

ZARDNIC
ベネズエラ出身のDJ。基本的にはEDMというか、いわゆるクラブ・ミュージック畑の人だが、ヘヴィなサウンドを持ち味とし、HR/HMバンドのリミックスも手掛けている。

冒頭、ACCEPTの「Metal Heart」のイントロ(チャイコフスキーの「スラブ行進曲」)が流れる中登場し、「つかみに来たな」と感じる。

そしてDJプレイが始まるが、正直一般的なHR/HMファンにとってDJというのはせいぜい開演前のBGMを流す人、くらいの認識で、「ショウはいつ始まるの?」的な微妙な空気が流れ続ける。

サウンド自体は結構カッコいいと思うものの、踊る気がない人間にはどう聴いていいかわからないというのが正直な所。次第にスペースに余裕があるやや後ろの方で身体を揺らし始める人が現れるものの、全体的な盛り上がりは今ひとつ。DJだけをするにはだだっ広いステージも、本人の表情が読み取れないマスクも、全てがこのフェスに対してはマイナスに作用していた気がする。

3曲ほど観て、LORDS OF BLACKがプレイしているサブステージ、「KINGDOM STAGE」
に向かう。


LORDS OF BLACK
ヴォーカルのロニー・ロメロが、新生RAINBOWのヴォーカリストに抜擢されたことで注目を集めたスペインのバンド。

サブステ後方の屋台でビールとツマミ的なものを買って、飲みながら観ていました。

ヴォーカルのみに注目が集まっているが、他のメンバーの力量も確かで、手堅いパフォーマンスを展開している。

正直サウンドがあまり良くないのだが、それでも埋もれずに確かな存在感を放つロニー・ロメロの歌唱はさすがで、安心して楽しむことができました。

個人的にはRAINBOWの曲をプレイしてくれることをちょっと期待していたのですが、40分程度の持ち時間しかなかったのでそれはなし。まあしょうがないですよね。


ALDIOUS
サブステージは転換の時間帯なのでメインステージに戻って、ガールズ・メタル・バンドの代表格、ALDIOUSのステージを観る。

以前観たときとVoとDrが変わっており、Drはかの超有名ドラマー、テリー・ボジオの義理の娘だという。

Voの水色のドレスを始め、メタル・バンドには珍しい華やかな衣装が目を引いたし、ピンクの衣装を着たToki(G)がいつスクリーンに抜かれても満面の笑顔なのが好感度高く、個人的には印象良かったです。

Yoshi(G)のあまりまとまってない感じのMCも、「思い」みたいなものは伝わってきました。てか彼女らももう7年目なのですね。J-POPとしての成功を望むのはなかなか難しそうなのがちょっと残念ですが。


MYRATH
本日SCORPIONSと並ぶ最大の目当てと言っても過言ではないチュニジアのプログレッシヴ・メタル・バンド。

イントロのアラビアンなSEが流れる中、日本人のベリーダンサーが登場。大層美しい。ベリーダンサーが登場する演出は海外のライブでもやっているようだが、まさか日本の、30分程度のステージでもやってくれるとは感謝感激。

そしてクラウドファンディングで制作した傑作MVが印象的な、最新作のオープニング・トラックである「Believer」でショウがスタート。

いや~、演奏も上手いし、ヴォーカルのフロントマンとしてのオーディエンス・コントロールも慣れたもんだし、とてもチュニジアなんていう片田舎(失礼。実際には首都など大都市は結構都会なのだろうと思います)のバンドとは思えないレベルの高さ。

途中ベリーダンサーの再登場もあり、その旋律のエキゾチックなムードもあって、ひょっとすると彼氏に無理矢理連れてこられた彼女や奥さんのような「メタルに興味がない人」にとっては一番インパクトのあるライブだったのではないでしょうか。

時間が短いのと、サウンドが今ひとつだったのが残念ですが、個人的な期待には100%応えてくれる素晴らしいショウでした。再来日希望!


CAIN’S OFFERING
カルト・レジェンドCANDLEMASSはフルで観たかったものの、私の生き様的にこのバンドを完全に切ることはできない。MYRATH終演と同時に再びサブステに走る。

サブステに辿り着くと、ちょうどヤニ・リマタイネン(G)が「Stolen Waters」の長いギター・ソロを弾きまくっているところでした。

「Oceans of Regret」、「Antemortem」そして「I Will Biild You Rome」と、何とか3曲をフルで観ることができ、あらためてこのバンドの楽曲が自分好みのメロディで満ちていることを再認識。


CANDLEMASS
CAIN’S OFFERINGが終わると、今度はメインステージにダッシュ。忙しい。

エピック・ドゥームの開祖としてマニアの評価は異様に高い伝説のカルト・バンド。欧州では確固たる支持基盤があり、2005年の再結成(2回目)後はコンスタントに活動していたが、ドゥーム系のバンドの人気が低い日本ではその姿を目の当たりにすることはできなかったが、LOUD PARK担当者の趣味で(?)夢の来日が実現した。

ドゥームとはいえ、彼らの音楽はCATHEDRAL以降の「ドゥーム・デス」とは異なり、リフ・ワークこそヘヴィなれども歌メロもあれば、アップテンポなパートもあるし、結構聴きやすい。

特に現在ヴォーカルを務めるのは日本では「YNGWIE MALMSTEENの『FACING THE ANIMAL』で歌っていた人」という認識が一番強いであろうマッツ・レヴィンで、その普遍性のある上手いヴォーカルはこのバンドの「意外な聴きやすさ」をわかりやすく観衆に伝えていたのではないかと思われます。

個人的に「家や通勤時に聴きたい音楽」ではないのですが、ライブ自体はかなりカッコよく、自己判断の結果ではありますが、最初から観られなかったことが惜しまれます。


MASTERPLAN
RAGEとMASTERPLANが丸被りという、独産メタル・ファンにとっての悩みどころで私はMASTERPLANをチョイス。

同じドイツのパワー・メタル・バンドではあるものの、その音像は結構異なっているので好みが明確であれば迷うことはない…というよりは、単に来日がレアである方を選んだというのが正直な所ですが。

最新作からの「Keep Your Dream Alive」と、かつてローランド・グラポウ(G)が在籍していたHELLOWEENで書いた「The Chance」のカヴァーを除き、全てデビュー・アルバムからの楽曲という「超初期重視」なセットリストは、自分たちの音楽が一番日本で受け容れられていた時期を正しく理解した結果なのでしょう。

初期のヴォーカリストはかの歌神ヨルン・ランデだが、現シンガーのリック・アルツィもヨルンに劣らぬパワーの持ち主で、その声量はヨルンに勝るとも劣らない。

ただ、なにぶんサウンドが(これまで全体的に良くなかった中でも)最悪で、今ひとつ彼らの音楽の魅力が伝わりにくかった上、これは以前観に行った単独公演の際にも感じたのだが、彼らのステージ・パフォーマンスというのは「盛り上がりに欠ける」もので、今ひとつ胸が熱くならなかったというのが本音。

ラスト曲として「Crawling From Hell」がコールされたタイミングでサブステを後にし、メインステージに戻る。


RAGE
メインステージに戻ると、RAGEがラスト曲と思しき「Higher Than The Sky」をプレイしている。とりあえずあのサビは歌わずにいられない。

するとその「Higher Than The Sky」の途中でDIOの「Holy Diver」が挿入され、ギターの人が歌い出す。そしてその歌が超上手くてビックリ。声もいいし、もはやピーヴィーよりこの人に歌わせた方がいいんじゃないか? と思ってしまいました(笑)。

ぶっちゃけMASTERPLANよりRAGEを観た方が満足度高かったかも…。


ARMOURED SAINT
まさかこのバンドを日本で観ることができるとは思っていませんでした、というCANDLEMASSと並ぶ本日の「レアモンスター」枠。

まあ、元ANTHRAXのヴォーカリストが在籍しているということである程度の知名度はあるので、その辺を評価しての抜擢でしょうか。

最近の楽曲に中途半端なモダンさがあるのと、ジョン・ブッシュはともかく、なぜかジョーイ・ヴェラ(B)までANTHRAXに影響されたかのような服装・ステージングなのがちょっと気に食わないが、2人のギタリストの佇まいに「80年代B級正統派」の残り香がプンプンしているのは良い。このバンド名でモダン化するのは良くないと思います(笑)。

全体的には中堅らしい可もなく不可もない無難なパフォーマンスだったが、「March Of The Saint」のイントロ(ムソルグスキーの『キエフの大門』)を省略したのはいただけない。

途中、メンバーの子供と思われる小学生くらいの少年がギターを抱えて登場してました。


DANGER DANGER
裏でやっているEXODUSの方がこのイベントらしく盛り上がるのだろうと思いつつ、個人的な趣味嗜好を優先してDANGER DANGERを選択。

1曲目から私の好きな「Crazy Nights」で始まり、彼らの楽曲で一番好きな「Rock America」もプレイ、ラストは「Bang Bang」に「Naughty Naughty」という、曲名だけ見るとちょっとバカっぽい彼らの代表曲2連発と、ファンのニーズを正しく理解した初期曲中心のセットリストで満足度高し。

ヴォーカルのテッド・ポーリーは常にプロフェッショナルな笑顔をキープして素敵なフロントマンを演じており、演奏陣のプレイもハイレベル。特にロブ・マルセロのギターは「ある一線を超えた人」だけが出せるスーパー・テクニカルな速弾きの連発で、「ちょっと弾きすぎじゃね?」と思いつつもエキサイトさせられました。

ただ、途中そのロブのギターがトラブって、他のメンバーが無理矢理トークでつなぐことになったり、足元の扇風機が故障?してステージ上にずっとスタッフが修理で居座ったりと、なんだかトラブルが多くて気の毒なステージでした。


SHINEDOWN
一応メインステージには戻ってみたものの、EXODUSがまさに終了する瞬間で、その後SHINEDOWNまでしばらく待ち。

そしてSHINEDOWNが登場すると、なぜかドラムを除くメンバーがまさかのスーツ姿。

これはもしかしてバンド名の「SHINE」と「社員」を掛けているのか!? だとしたら日本人向けのサービスとしてはレベル高すぎるぞ! と思いつつ(真偽は不明)、そういった演出も含め、アメリカの現役人気バンドならではのパフォーマンスは非常にハイレベルで、音楽の趣味とは関係なく楽しめました。

ただ、次のQUEENSRYCHEのために4曲ほどで移動せざるをえませんでしたが…。


QUEENSRYCHE
かつてHR/HM史上に残るコンセプト・アルバム「OPERATION : MINDCRIME」で絶大な評価を獲得し、「EMPIRE」では全米TOP10シングルも生まれ、300万枚に及ぶ売上を記録したこのバンドが、サブステ、しかもトリですらない扱いとは、時の流れの非情さを感じさせずにはいられません。

しかし、さすがというべきか、裏のSHINEDOWNとファン層が被っていないためと言うべきか、このサブステにおける人集まりは本日最高。正直トリのBLIND GUARDIANより人が多かったです。

このバンドもDANGER DANGER同様、デビュー作から「EMPIRE」までという初期楽曲で固めた(1曲目のみ最新作から)、「自分たちはクラシック・ロック」と腹を括ったセットリスト。

「I Don’t Believe In Love」と「Another Rainy Night」が聴きたかったというのは個人的なわがままとしても、アルバム「RAGE FOR ORDER」から「Screaming In Digital」をやるくらいなら「Walk In The Shadows」のほうが良かったのでは?

演奏はタイトで、かつては全米をアリーナ規模で回っていたバンドならではのキャリアを感じさせられましたが、中でも看板シンガーであったジェフ・テイトに代わって加入したトッド・ラ・トゥーレの「ジェフそっくりさん」ぶりは(YouTube等で観て知っていたとはいえ)驚きの域で、「Queen Of The Reich」の冒頭のハイトーン・スクリームでは皆度肝を抜かれたのではないでしょうか。本日のベスト・ヴォーカリストは彼ですね。

しかしベースのエディ・ジャクソンがいなかったのはナゼ…?


BLIND GUARDIAN
QUEENSRYCHE 終了後にメインステージに戻ればCHILDREN OF BODOMも観られたはずなのですが、さすがに往復にくたびれたのと、今観ておかなければ晩ごはんを食べるタイミングを逸しそうなので、そのままサブステ後方の屋台で適当に食事。

そして始まるBLIND GUARDIAN。QUEENSRYCHEの時に比べて人が減っていて少し寂しい。

どうせ1曲目は最新作からの曲で始まるんだろ、と高を括っていたら、いきなり響き渡る私が高校生の時に身体に刻み込まれたリフ。

最近のライブで「IMAGINATIONS FROM THE OTHER SIDE」の完全再現をやっていることは把握していたが、まさか持ち時間の少ないラウパでそれをやるとは。

最近の彼らの楽曲と違ってしっかり覚えている曲ばかりだし、彼ら自身のパフォーマンスもかなり垢抜けて、いちパワー・メタル・バンドとして優れたライブを展開していた。実際前回出演した(07年)ときより引き締まったパフォーマンスだったと思う。

ただ、彼らの音楽世界って、本当は映像やらセットやらが豪華に使われていた方が引き立つと思うんですけどね。

完全再現が終わった後、ラストに名曲「Mirror, Mirror」をプレイしたのですが、持ち時間が余っていたっぽいので「Varhalla」もやってくれればよかったのに…。オーディエンスが少なかったからご機嫌を損ねたのでしょうか。


DOKKEN
BLIND GUARDIANが終わってメイン・ステージに戻ると、DOKKENの「MR.SCARY」がプレイされていた。

インストのその曲を聴いている分には何の問題もないが、続く「It’s Not Love」で、私が危惧していた問題が何ら解決されていないことを知る。

ドン・ドッケンの声が出ていない。いや、聴いていない人が想像するようなレベルではなく、本当に出ていないのだ。サビのコーラスはジェフ・ピルソンをはじめとした他のメンバーがフォローしてくれるからまだしも、ドンが一人で歌うパートは聴くに耐えない。

続く名曲「In My Dreams」冒頭のあの印象的なコーラスも、ドンの声が欠けているために厚みに欠けるものに。

「In My Dreams」が終わるとドンがオーディエンスに「バイバイ」と声をかける。そのままバイバイしてくれて何の問題もなかったのだが、それはジョークだったらしく、最後に「Tooth And Nail」がプレイされる。他のメンバーのプレイに衰えが感じられないだけに一層ドンの衰えが引き立つ。

「今回は特別な再結成だから、ドンも一念発起して頑張るのではないか」というファンのかすかな期待を完全に裏切る惨状が呈されていたわけだが、当の本人は一切悪びれることなくニッコニコだったことに「人はここまで厚顔になれるのか」と戦慄を禁じ得ませんでした。


SCORPIONS
長年トリ候補に挙げられていながら、ギャラや会場などの条件面で折り合わないという噂で流れて続けてきたSCORPIONSがついにラウパ降臨。個人的にも現実に観ることが可能なHR/HM系の大御所としては「未だ見ぬ最後の大物」という感じで、非常に楽しみにしていました。

どうせなら全盛期である30年前に観たかった、というのは私の年齢的な問題で叶わぬ夢としても、せめて私がHR/HMを聴き始めた90年代に観ておければという思いはある。とはいえ結局2007年に行なわれた来日公演まで、何度かあった機会を全て見送ってきたのも事実で、「SCORPIONSなんてアルバム出せば来るんだからいつでも観れるだろ」と高を括っていた当時の自分に「観たいものは次観られる機会を得たときにすぐ観ること!」と説教したい気分でいっぱいです。

実際の所、衰えが全くないと言ったら嘘になる。ステージ・アクションも過去のライブ映像などで観られるようなキレはないし、クラウス・マイネの歌声もかつての張りは失ってちょっとのっぺりしている(もう「Virgin Killer」は歌えないでしょうね)。

しかし、彼らが60代後半の年齢であることを考えたら、このクオリティは驚異的(特に先にドン・ドッケンの惨状を目の当たりにした後では!)で、全盛期の面影は今なおちゃんとある。そしてクラウスの歌声には天性の声質によるマジックがまだまだ感じられる。若い頃にキレキレなのはある意味当たり前で、この年齢でこれだけのパフォーマンスができることこそが特別だとすれば、ある意味このタイミングだからこそ特別なものを観ることができたと言えなくもない。

本公演は一応「50th Anniversary Tour」の一環としてのショウで、基本的なセットリストは同ツアーの基本構成を踏襲している。この期に及んでも最新作から3曲もプレイしているあたりの「現役感」に対する意識は凄いですが、このツアー中に正式メンバーになったミッキー・ディー(Dr)に敬意を表して(いや、建前上はレミーに対する追悼ですが、実際はそうでしょう)彼が以前在籍していたMOTORHEADの「Overkill」をセットリストに組み込む、といった柔軟さもまた特筆すべきでしょう。

そして日本公演の定番である「荒城の月」も当然のようにやってくれたし(それに続いたのが「Send Me An Angel」に「Wind Of Change」というバラード2連発だったために、ちょっとおとなしい時間帯になってしまいましたが)、やはり何よりスペシャルだったのはアンコール2曲目で登場したウリ・ジョン・ロート(G)との共演でしょう。

今回のラインナップが発表された時点で同じフェスに参加するということで予想はされていましたが、こうして実現してみると、リアルタイムのファンではない私のような人間でも「特別な瞬間を目の当たりにしている」という実感がありました。

そういうサプライズがなくとも、特別に花道が用意されたステージ・セットも含め、大御所ならではの貫禄と実力が充分に伝わってくる充実のライブでしたが、このウリのゲスト出演によって、我々日本のファンにとって「特別な記憶」として刻み込まれたことは間違いありません。

噂ではSLAYERの4倍と言われる過去最高額のギャラ(彼らのキャリアと成功の規模を考えれば当然ながら)が発生したという噂ではありますが、そのギャラに相応しい、過去最高の大団円を提供してくれた素晴らしいショウでした。