LOUD PARK 17 二日目の感想
昨日の反省(寝坊)を活かせずこの日も寝坊。さいたまスーパーアリーナに駆けつけた時にはオープニング・アクトであるCRY VENOMが最後の曲をプレイしていました。
◆CRY VENOM
とりあえずメンバーが若くてグッド・ルッキンなこと、パフォーマンスがポスト・パンクっぽいヤンチャな感じであること、楽曲がDRAGONFORCEタイプのわかりやすいメロスピであることは1曲観ただけでわかりました。終演後のBGMがEDMっぽい曲であることも含めてチャラっとしたイマドキな感じで、レコード会社的には若い人へのメタル入門バンドとして期待しているんだろうな、という気がしました。
真面目なメタルおじさんには「ケッ」とバカにされそうなバンドという気もしますが、X JAPANでメタル入門した人間としては「チャラいバンドで入門したからといって、いつまでもチャラいバンドしか聴かないわけじゃない」ということを知っているので、わかりやすい入口はとても重要だと思います。アルバムを聴いてみようかな。
◆BLACK EARTH
本日(オープニング・アクトを除く)1バンド目は「シークレット・アクト」扱いでした。
正直な所、あまり期待していませんでした。アイドルとかアニソン歌手のような企画モノの類か、レコード会社ゴリ押しの嬢メタルか、せいぜい来日したばかりのバンドが「早くも戻ってきたぜ」と出てくるくらいの話だろうと思っていました。普通に発表したら反感を食らいそうなアーティストですね。まあ指定席で高みの見物ですよ。
しかし、開演時間が近づき、BGMが大音量の「Ace Of Spades」(MOTORHEAD)になったとき、あれあれ、この展開はなんかかつて経験したことがあるぞ、デジャヴを感じました。
そして現れたのは、BLACK EARTH。思わず腰を浮かせました。
「Black Earth」のイントロから「Bury Me An Angel」が始まると、たちどころにアリーナ前方にピットが発生する。シークレット・アクトなのにやけに人が集まっているな、と思っていましたが、知っている人は知っていたということなんでしょうね(後で知りましたが、ヨハン・リーヴァ(Vo)がTwitterで「日本に向かっている」とツイートしていたらしい)。
アリーナには後方含めてどんどん人が集まり、朝イチだというのにまるでヘッドライナーかのような人集まり。もう今後ARCH ENEMYはトリ扱いでいいんじゃないですかね。その方が興行主としてもトリ探しに苦労しなそうですし。
私もできることならアリーナに駆け下りたかったのですが、本日の指定席がステージ正面という初体験のエリアで、この席からだと一度通路に出ないとアリーナに降りられない。1音たりとも聞き逃したくないので、やむなくそのまま指定席で観覧することにしました。
やっぱりARCH ENEMY組の演奏は素晴らしい。タイトでありつつアグレッシヴなそのパフォーマンスはある種メタルの理想形だ。シャーリー・ダンジェロ(B)が以前に比べると動きが少なくなったのが年齢を感じさせてちょっと寂しいが、1バンド目にして早くも本日ベストアクトなんじゃないの? この後のバンドはご愁傷様、という感じのカッコよさ。
マジックを感じるほどに日本人の琴線に触れる「Silverwing」では、ヨハンお得意の(?)「アラレちゃんの『キーン』のポーズ」(若い人にはわからないのだろうか…)を見ることができ、自然と笑みがこぼれました。
告知した方が絶対集客は伸びたと思うのですが、アーティスト側の意向でシークレットのままになったという今回。まあオーディエンスとしては「粋な計らい」として素直に喜ぶべきでしょう。
ただ、これで今後「シークレット・アクト」がアイドルだったり嬢メタルだったり、日本在住のギタリストだったりしたら暴動が起きるのではないでしょうか(笑)。
◆OUTRAGE
BLACK EARTHの後という厳しいポジションを任されたのはOUTRAGE。その厳しさはなまじBLACK EARTH同様エクストリーム系寄りの音楽性であるだけになおのことである。これがメロハーとかメロスピだったら全く別物として切り替えができたと思うのですが。
しかし、結果から言うと大健闘だったんじゃないでしょうか。「My Final Day」から「Madness」という、名盤『FINAL DAY』冒頭の鉄板の流れで場内をOUTRAGEの空気に力づくで切り替える。
実は私はBLACK EARTH終演後すぐに外に出て朝食を食べていたため、「My Final Day」をプレイしている最中は通路にいたのですが、「My Final Day」のイントロ・パートが終わってアグレッシヴなパートに切り替わった途端、近くにいた若者が「えっ、何このバンド」とビビッドに反応していました(通路にも激しく音漏れしていたので)。
しかし、一緒にいた友人が入口で配られるタイムテーブルを見て「OUTRAGEだって」と言うと、「なんだ、日本人か」と言ってそのままフードの屋台に向かってしまいました。
「日本人だから聴かない」なんてのは80年代の玉石混交(というか石だらけ?)のジャパメタを目の当たりにしてきたような世代の人たちだけの意識かと思っていましたが、若い人たちでもそうなんだなあ、とちょっと切なくなりました。音で惹かれたなら観てみればいいのに。と、ルーロー飯をビールで流し込みながらそう思いました。
実際、OUTRAGEのパフォーマンスは、少なくとも演奏に関しては海外のバンドに何ら引けを取らないパワーを放っていました。橋本直樹(Vo)の服装がちょっとカジュアル過ぎるのと、ステージ・アクションがちょっと挙動不審なのがやや気になりましたが、歌声については日本人離れした芯の太さがあって、これまた世界基準を余裕でクリアしていたと思います。
往年のクラシックはもちろん、新曲としてプレイされた曲もカッコよくて、後日アルバムを購入してしまいました。
気になったのは、橋本直樹がMCをしていると、必ずと言っていいほど丹下眞也(Dr)がカットインしてきて話を奪ってしまうこと。かつてバンドメンバーの仲が悪いことで有名だった時期のDOKKENに、ドン・ドッケンがMCをしているうちにジョージ・リンチが次の曲のリフをプレイし始めた、みたいなエピソードがありましたが、なんとなくそれを彷彿とさせる状況で、これ、橋本さんはどう思ってるんだろう…と心配してしまいました(大きなお世話ですが)。
今回も「Blind To Reality」を観られなかったのが残念です。そんなに観たけりゃ単独公演に行け、って話なんですけどね(苦笑)。
◆APOCALYPTICA
飯食って、ビール飲んで、OUTRAGEでアタマ振った後に着席してのチェロ四重奏。完全に休憩タイムです。
いっそ寝てしまうんじゃないかと危惧していましたが、何しろやっている曲がMETALLICAの楽曲ばかりなのでそうそう寝ていられない(笑)。
かつて一度観ているので物珍しさみたいなものは既になかったのですが、歌詞をちゃんと覚えていれば一種カラオケ的な楽しみ方ができたのではないでしょうか。アリーナはかなり盛り上がっていました。
◆LOUDNESS
直近のリリースが先月発売された『HURRICANE EYES』30周年記念盤ということで、同作をこよなく愛する私としては、完全再現とは言わないまでも、同作収録曲中心のセットリストを期待していました。
しかし、始まってみると5曲連続で2000年の「再結集」以降の曲。
当人たちとしては「攻めてみた」ということなんでしょうが、トリがSLAYERでトリ前がEMPERORだった昨日であればともかく、ヘッドライナーがマイケル・シェンカーで、トリ前はジーン・シモンズである本日にこの選曲は完全にミスジャッジ。コア・ファンが集結するアリーナ前方がどうだったかはわかりませんが、アリーナ後方では曲が進むごとにオーディエンスが冷めていくのがヒシヒシと伝わってきました。
6曲目、「Rock This Way」がかろうじて前述の『HURRICANE EYES』30周年を意識した選曲か。当時なりのキャッチーさが満載だったあの作品の曲で(「S.D.I」を別格として)、メンバーの(というか高崎さんの)「許容範囲」がこの曲だったということなんでしょう。ギター・ソロ・パートの途中、タッピングの指が追い付かなくなって「あ~、もうええわ」という感じにアドリブで誤魔化していたのを見て、長いこと弾いてない曲だと世界のアキラでもこうなるんだな、と思いました(笑)。
その後は「Crazy Nights」、「In The Mirror」、「Crazy Doctor」、「S.D.I.」という鉄板のクラシック連発で一気に盛り返し、私も歌いまくり、アタマ振りまくりだったわけですが、それだけに彼らのやりたいこと、見せたいものとオーディエンス(特に彼らのコア・ファン以外のオーディエンス)が求めるもののギャップが浮き彫りになってしまった観は否めません。
海外のフェスでは80年代のクラシック・ナンバー中心のセットリストでやっているようなので、彼ら自身フェスで求められているものは理解していると思うのですが…。
あとちょっと、毎回のことなんですが、音、特にギターの音、デカ過ぎじゃないですかね。これ、耳栓なかったらマジでヤバいですよ。まあ、バンド名がLOUDNESS(大音量、うるささ、やかましさ)ですからね、しょうがないんですけどね。
それとですね、髪を短くしてサングラスかけた二井原さん(Vo)、長渕剛にしか見えません(笑)。声はよく出ていたと思いますが。
◆DEVIN TOWNSEND PROJECT
前回、LOUD PARK 13に出演した際には寝坊して観損ねたDTP。その緻密に作り込まれたサウンドは、なんか今ひとつライブ映えするイメージがなくてさほど期待せずに観始めたのですが、極上でした。
とにかく音が良い。今年のLOUD PARKは例年に比べてサウンドが凄く良くて、この会場ってこんなに良い音鳴らせたのか、あるいは何か設備自体が変わったのかと思うほどだったのですが、中でもこのDTPは絶品でした。まあ音楽自体アンビエントのような音響要素があるのでそう感じた部分もあると思いますが。
これは座って観ちゃもったいないとアリーナ前方に行くことを決意。前述の通り私の指定席からはいったん通路に出ないとアリーナに降りられないのですが、出てみるとどの屋台にも人が並び、通路は地べたに座り込んで飯を食っている人たちであふれていました。まあ今の日本におけるDTPの人気だとこうなってしまうのでしょう。
おかげさまで、スイスイとアリーナ前方に進むことができました。前の方に行くとさすがにちょっとうるさいのですが、耳栓をしてしまうと途端に魅力がなくなってしまうタイプのサウンドのため、私にしては珍しくノー耳栓で音に浸る。
デヴィン・タウンゼンドをはじめ、メンバーは全てハ…スキンヘッドばかり。それがこの特別な音響と照明の中で慈愛に満ちたハーモニーを奏でている様は、一種荘厳ですらあり、メンバーは観衆に救済を与える司祭たちにすら見えてくる。「音のシャワー」という表現はよく目にしますが、言うなればこれは轟音のミストサウナ。音に包まれる感覚というのはこういうことを言うのでしょう。これはまさに26世紀の宗教音楽。
DTPの音楽というのは、バンドの形態、そして基本的な音楽のスタイルという点では必ずしもHR/HMという枠から大きく逸脱しているわけではありません。
しかし、その音楽が与えるカタルシスは一般的なHR/HMとは根本的に異質なもので、非常にメロディアスであるにもかかわらず、なかなか普通の感性の人が日常的に聴くにはハードルの高いものだと思います。こういう音楽をガンガン量産できるデヴィン・タウンゼンドという人は間違いなく天才、あるいは鬼才というべき人でしょう。
私もご多分に漏れず彼らの音楽に日常的に親しんでいるとは言い難い(そもそも近年のアルバムはほとんどマトモに聴いていない)のですが、それだけに本日のステージでは多幸感とでも呼べる特別な非日常感を味わうことができました。
HR/HMのライブ・パフォーマンスとしては本日BLACK EARTHがベストだったと思いますが、体験として最も特別だったのはこのDTPだったと言えるでしょう。
そして終演を迎え、メンバーたちがオーディエンスに向かって礼をしたとき、唯一髪の毛があると思っていたキーボードの人も頭頂部が(以下自主規制)。
◆BLACK STAR RIDERS
ほとんど来日せず、アルバムを出したわけでもなかったので日本ではあまり知られていませんでしたが、1996年から2012年まで「再結成THIN LIZZY」というものが存在していました。
当初のメンバーはスコット・ゴーハム(G)、ジョン・サイクス(G, Vo)、マルコ・メンドーサ(B)、ブライアン・ダウニー(Dr)、ダーレン・ワートン(Key)という、THIN LIZZYのラスト・アルバム『THUNDER AND LIGHTNING』のラインナップに限りなく近いものですが、THIN LIZZYというのは故フィル・ライノット(Vo, B)の存在感があまりにも大きいバンドだったので、どうしても「金目当ての紛い物」感が漂っていました。
とはいえこのメンツでツアーをやればかなり客は入ったようで、ジョン・サイクスが2000年代に新作を出さなかった原動力になっていたわけですが、そのTHIN LIZZYからジョン・サイクスが脱退した後、後釜に迎えられたのが元THE ALMIGHTYのリッキー・ウォーウィック(Vo, G)でした。
既にブライアンもダーレンも脱退していたので、もはやTHIN LIZZYの関係者はスコット・ゴーハムのみになってしまった状況に腹を括ったのか、THIN LIZZYの看板を捨てた結果誕生したのがこのバンド。
サウンド的にはいたってオーセンティックなハード・ロックというか、THIN LIZZYとTHE ALMIGHTYを7:3の割合でミックスしたような音で、今どき珍しい、男らしさを感じるサウンドを出している。
THIN LIZZYの大ヒット曲「The Boys Are Back In Town」もプレイしていましたが、完全にサービスって感じでしたね。あくまで新しいオリジナル曲で勝負している、という印象を受けました。
個人的にはあまり琴線に触れる音ではなく、ジョン・サイクスをフィーチュアしたTHIN LIZZYが『THUNDER AND LIGHTNING』の曲をガンガンやってくれた方が盛り上がったと思いますが、普通にカッコいいと思いました。
特にリッキーの佇まいがカッコよかったこともあって、久しぶりにTHE ALMIGHTYを聴きたくなりましたね。
最新作『HEAVY FIRE』が全英6位を記録したそうですが、その人気も納得のタイトなパフォーマンスでした。リーダーであるはずのスコット・ゴーハムがむしろ引き気味に見えたのが気になりましたが。
◆CRADLE OF FILTH
イギリスのシンフォニック・ブラック・メタル・バンド…などといちいち説明が必要になるようなレベルのバンドではないですね。この界隈の超有名バンドです。
ただ、個人的にはLOUDNESS、DEVIN TOWNSEND PROJECT、BLACK STAR RIDERSと3バンド立て続けにアリーナで立って観たので、少々お疲れ。ビールとツマミを買って指定席で座って観ていたら案の定途中で寝落ちしてしまいました。
ダニ・フィルス(Vo)が時折発する金切声と、キーボード&コーラスのおねいさんのむっちりしたボディだけが印象に残っています。
◆MESHUGGAH
前回のLOUD PARK出演時、場内があまりにも静かでメンバーがご機嫌ななめな感じだったスウェーデンの元祖ジェントなエクストリーム・メタル・バンド。
しかし今回はオーディエンス側も前回の反省を踏まえてか、積極的に盛り上げに行く。演奏中はみなバラバラのリズムで(変拍子なので)拳を振り上げ、モッシュピットなども生まれていたようだ。静かになってしまいがちな曲間には盛んに「メシュガー」コールが投げかけられ、ストイックな趣のメンバーたちも満更でもない様子。
それほどMCの言葉数が多いわけではないですが、何気にほぼ全てのMCが日本語で行なわれていたので、イェンス・キッドマン(Vo)が日本人女性と付き合っていた(いる?)というのはどうやら本当のようですね。
ネット上でも話題になっていましたが、彼らの複雑怪奇なリズムにピタリと合わせた照明ワークが凄まじかったことは特筆しておきます。常にカメラのストロボのように激しく照明が点滅していたので、ポケモンショックが起きるのではないかと思ってしまいました(笑)。というか、常に逆光状態で、アリーナからメンバーがほとんど見えないという(苦笑)。
ちなみに休暇中のフレドリック・トーテンダル(G)に代わってサポートしていたのはSCAR SYMMETRYや、最近ではNOCTURNAL RITESに加入したことでも知られるペア・ニルソンでした。
◆SABATON
LOUD PARK 15において、裏でやっていたAT THE GATESを見ていた人以外からはベストアクトの声が高かったスウェーデンの大人気バンド。
私を含め場内の期待も高く、開演前から「SABATON」コールで大盛り上がり。ステージに鎮座しているのはもちろん今回もYAMAHAの戦車ドラムだ。
ショウは定番の「Ghost Division」でスタート。ヨアキム・ブローデン(Vo)のキレのいいアクションも相変わらずだ。
新加入のトミー・ヨハンソン(G, REIN XEED)もしっかりフィーチュアされ、彼らのライブの特徴であるコント・パートで「バカ」を「乾杯」の意味だと教えられ、会場全体で「バカ!」と叫ぶなど、笑いを取っていました。トミーにはせっかくこういう軍隊バンドに入ったのだから、鍛えて身体を引き締めてもらいたいです(笑)。
どの曲もバックに楽曲のイメージ映像が流れ、合唱すべきパートでは歌詞も映る初心者に優しい親切設計。これは他のバンドも取り入れてほしい。
そしてパイロもさながらトリかというほどバンバン使われ、会場をさらにヒートアップさせる。
日本の西南戦争を題材にした「Shiroyama」ではヨアキムに「友人だ」と紹介されて出てきた「山岡さん」がゲストでギターをプレイ。「Shiroyama」自体は別に日本だからプレイしているわけではなく、今回のアルバムのツアーのセットリストにレギュラーで組み込まれている曲だが、ここ日本ではそれを特別なものにしようというヨアキムの粋な計らいだろう。
問題は山岡さんが誰なのか、場内の大半の人はわかっていなかったということですが。
(私も後で知りましたが、その筋では有名なゲーム音楽のクリエイターだそうです。今回のLOUD PARKの場内モニターで盛んにプロモ映像が流れていた『World Of Tanks』というオンラインゲームはSABATONとコラボしているのですが、このゲームに山岡氏が関わったことが縁でのゲスト出演と相成ったみたいです。紹介が雑だったのは、ヨアキムが山岡さんの日本のメタル・ファンにおける知名度を読み誤ったということでしょう)
今回もエンターテインメント精神にあふれた楽しいショウを提供してくれたわけですが、何が起きるか既に知っていた分、前回観た時よりもインパクトは薄かったかな。初見の人はより楽しめたのではないでしょうか。
◆GENE SIMMONS BAND
失礼ながら、KISSアーミーならぬ私にとっては今年一番どうでもいい出演者でした。
KISSの名曲がたくさん聴ける、って、KISSの曲はKISSがやるから特別なんじゃあ、と。こんなあからさまな副業/趣味バンドがトリ前ということ自体、ちょっと釈然としませんでした。
とはいえそんな不心得者は私くらいのものかと思いきや、トリ前だというのにアリーナはガラガラ。オープニング・アクトを別にすると今日イチ少ないかもしれない。
LOUD PARKに行ったことがない人のために説明しておくと、一般的にトリ前というのは一番人が多くなることが多いのです。もちろんそれなりの集客力があるアクトが出演しますし、反対側のステージ前にはトリ待ちの人がスタンバっています。そしてトリの時間になると、トリに興味がない人や、遠方から来ていて終電が早い人は帰ってしまうので、通常、トリよりもトリ前の方が場内に人が多くなる、というわけです。
然るにこのガラガラ具合…。皆さん私と思いは遠からず、ということでしょうか。私もトリに備えて飯タイムにしようと思っていましたが、まだそれほどお腹が空いていなかったので、アタマくらいは観ておこうか、と指定席に座って開演を待ちました。
ショウは「Deuce」で始まり、「Parasite」、「I Love It Loud」と、KISSナンバーのオンパレードだ。プレイは当然悪くない。ステージ前はそれなりに盛り上がっている。
そしてジーンは百戦錬磨のショウマンでエンターテイナー。巧みに日本語を交えたMCでアリーナを盛り上げていく。これがお昼頃のステージだったら、普通に良かったと思えたかもしれない。
しかし、しばらくすると観客?がぞろぞろとステージに登場。その数20人ほど。これはいったい何事?(後で知ったが、ジーンは2000ドルでステージに上がる権利を販売していたらしい。さすがというか何というか)
個人的には素人がステージに上がっても特にショウに貢献できるわけでもなく、手持無沙汰な雰囲気が醸し出されがちなので、こういう演出は好きではない。IRON MAIDENがかつてやっていた「Heaven Can Wait」のアレなんかはやることが明確だからまだいいのですが。
そして、ステージ上にいる人たちが、2000ドルという安からぬお金を払っているということを考えれば当然ながら、皆さん結構いい歳で、フォトジェニックとは言い難い(苦笑)。これが「ジーンが会場で選んだかわいい女の子ベスト20」とかだったらまだ見て楽しめたかもしれませんが(女の子たちにとっては貞操の危機になりますが/笑)。
正直ちょっといたたまれなくなってきたので、予定より少し早めに通路に出てしまいました。
◆MICHAEL SCHENKER FEST
以前MICHAEL SCHENKER FESTの単独公演の告知を見た時、イベント名だと思っていたのですが、実際はプロジェクト名だったようです。
ゲイリー・バーデン、グラハム・ボネット、ロビン・マッコーリーという、かつてM.S.G.に在籍した歴代のシンガーをフィーチュアした同窓会的な企画で、単独公演も盛況だったようなので、集客力という意味ではLOUD PARK歴代のトリと比較してなんら見劣りしないといえるでしょう。
ショウはマイケル・シェンカーというギタリストの名刺代わりと言える「Into The Arena」でスタート。曲名的にもショウのスタートにピッタリである。マイケルはすこぶる機嫌が良さそうでニッコニコである。そしてそれは本日ずっとそうで、とてもかつてコンサートを放棄して帰ってしまった、などという情緒不安定なエピソードを持つ人には見えない。
ゲイリー・バーデンはサビをオーディエンスに丸投げでしたが、私が以前に観た時もそうでしたし、この人は若い頃からそうだったようなので、ファンにとっては許容範囲でしょう(?)。
グラハム・ボネットはカンペをガン見していましたが、この人も昔からそうだったようなので、これもファンにとっては許容範囲でしょう。というか、むしろまだこれだけパワフルな声が出るのか、とポジティブに驚かされました。
この人の場合、スーツ姿で登場した瞬間に場内に笑いが巻き起こっていたので、出てきた時点で勝ち、という感じでしたけどね(笑)。
個人的にハイライトだったのはロビン・マッコーリーのパート。単純にMICHAEL SCHENKER GROUP時代の曲よりMcAULEY SCHENKER GROUP時代の曲のほうが私の肌に合うというのもありますが、ロビン・マッコーリーの声が衰えるどころかむしろMcAULEY SCHENKER GROUPのスタジオ盤より出てるんじゃないの? と思えるほどの素晴らしさでした。
なんかこの人はリアルタイム組の人たちには「マイケルには不釣り合い(実力不足という意味で)」という評判だったようですが、単純にMcAULEY SCHENKER GROUPの音楽性がアメリカナイズされた方向性に向かっていたことに対する不評の戦犯にされてしまったというだけなのではないでしょうか。
「Save Yourself」をやってくれたのは嬉しい驚きでしたが(結構難しい曲なので)、「Destiny」と「Anytime」も聴きたかったですね。そんなこと言っていたらキリがありませんが。
ラストはUFOナンバーで、「Rock Bottom」(Voはロビン・マッコーリー)で恒例の壮絶な、長いのに緊張感が切れないギター・ソロを披露、さらに3シンガー揃い踏みで「Doctor Doctor」をプレイして締め。
若い人は翌日が休みではないということもあってGENE SIMMONS BANDあたりでもう帰ってしまったのではないかという疑惑もありますが、残っていたのが「エクストリーム厨」な人たちであったとしても、マイケル・シェンカーが「神」と呼ばれる所以は伝わったのではないかと思います。技術的にはDEVIN TOWNSEND PROJECTやMESHUGGAHのギタリストの方が圧倒的に上手いのでしょうが、やはりこのトーン、アドリブの冴え、余人を寄せ付けぬものがありました。
正直な所、今年は歴代でも屈指の地味なラインナップだと思っていました。昨年、SCORPIONSにSYMPHONY Xという、長年の宿願というべきアーティストを観ることができたこともあって、今年はRPGでいえばラスボスクリア後のサブクエスト消化みたいな気分というか(笑)。
しかし終わってみるとその満足度は決してアベレージを下回るものではなく、充分に楽しめたと言っていいでしょう。特に初日のALICE COOPER、2日目のシークレット・アクトのサプライズは非常に印象的でした。他にEMPEROR、DEVIN TOWNSEND PROJECT 、MESHUGGAHのステージも「特別なものを観た」という気がします。
そんな満足感を胸にさいたまスーパーアリーナから出ると、ここ2、3年、毎回会場で見かけている(髪型が髪型だけに目立つ)PHANTOM EXCALIVERのVoの人に12月の赤坂BLITZ公演のフライヤーを渡されました。
私の今年のライブ納めはサイン入りポストカードが当選してしまった12月8日(金)のSECRET SPHEREになるのか、はたまたこの12月15日(金)PHANTOM EXCALIVERになるのか、どちらも仕事が長引きがちな金曜日のライブということもあって予断を許しません(苦笑)。
◆CRY VENOM
とりあえずメンバーが若くてグッド・ルッキンなこと、パフォーマンスがポスト・パンクっぽいヤンチャな感じであること、楽曲がDRAGONFORCEタイプのわかりやすいメロスピであることは1曲観ただけでわかりました。終演後のBGMがEDMっぽい曲であることも含めてチャラっとしたイマドキな感じで、レコード会社的には若い人へのメタル入門バンドとして期待しているんだろうな、という気がしました。
真面目なメタルおじさんには「ケッ」とバカにされそうなバンドという気もしますが、X JAPANでメタル入門した人間としては「チャラいバンドで入門したからといって、いつまでもチャラいバンドしか聴かないわけじゃない」ということを知っているので、わかりやすい入口はとても重要だと思います。アルバムを聴いてみようかな。
◆BLACK EARTH
本日(オープニング・アクトを除く)1バンド目は「シークレット・アクト」扱いでした。
正直な所、あまり期待していませんでした。アイドルとかアニソン歌手のような企画モノの類か、レコード会社ゴリ押しの嬢メタルか、せいぜい来日したばかりのバンドが「早くも戻ってきたぜ」と出てくるくらいの話だろうと思っていました。普通に発表したら反感を食らいそうなアーティストですね。まあ指定席で高みの見物ですよ。
しかし、開演時間が近づき、BGMが大音量の「Ace Of Spades」(MOTORHEAD)になったとき、あれあれ、この展開はなんかかつて経験したことがあるぞ、デジャヴを感じました。
そして現れたのは、BLACK EARTH。思わず腰を浮かせました。
「Black Earth」のイントロから「Bury Me An Angel」が始まると、たちどころにアリーナ前方にピットが発生する。シークレット・アクトなのにやけに人が集まっているな、と思っていましたが、知っている人は知っていたということなんでしょうね(後で知りましたが、ヨハン・リーヴァ(Vo)がTwitterで「日本に向かっている」とツイートしていたらしい)。
アリーナには後方含めてどんどん人が集まり、朝イチだというのにまるでヘッドライナーかのような人集まり。もう今後ARCH ENEMYはトリ扱いでいいんじゃないですかね。その方が興行主としてもトリ探しに苦労しなそうですし。
私もできることならアリーナに駆け下りたかったのですが、本日の指定席がステージ正面という初体験のエリアで、この席からだと一度通路に出ないとアリーナに降りられない。1音たりとも聞き逃したくないので、やむなくそのまま指定席で観覧することにしました。
やっぱりARCH ENEMY組の演奏は素晴らしい。タイトでありつつアグレッシヴなそのパフォーマンスはある種メタルの理想形だ。シャーリー・ダンジェロ(B)が以前に比べると動きが少なくなったのが年齢を感じさせてちょっと寂しいが、1バンド目にして早くも本日ベストアクトなんじゃないの? この後のバンドはご愁傷様、という感じのカッコよさ。
マジックを感じるほどに日本人の琴線に触れる「Silverwing」では、ヨハンお得意の(?)「アラレちゃんの『キーン』のポーズ」(若い人にはわからないのだろうか…)を見ることができ、自然と笑みがこぼれました。
告知した方が絶対集客は伸びたと思うのですが、アーティスト側の意向でシークレットのままになったという今回。まあオーディエンスとしては「粋な計らい」として素直に喜ぶべきでしょう。
ただ、これで今後「シークレット・アクト」がアイドルだったり嬢メタルだったり、日本在住のギタリストだったりしたら暴動が起きるのではないでしょうか(笑)。
◆OUTRAGE
BLACK EARTHの後という厳しいポジションを任されたのはOUTRAGE。その厳しさはなまじBLACK EARTH同様エクストリーム系寄りの音楽性であるだけになおのことである。これがメロハーとかメロスピだったら全く別物として切り替えができたと思うのですが。
しかし、結果から言うと大健闘だったんじゃないでしょうか。「My Final Day」から「Madness」という、名盤『FINAL DAY』冒頭の鉄板の流れで場内をOUTRAGEの空気に力づくで切り替える。
実は私はBLACK EARTH終演後すぐに外に出て朝食を食べていたため、「My Final Day」をプレイしている最中は通路にいたのですが、「My Final Day」のイントロ・パートが終わってアグレッシヴなパートに切り替わった途端、近くにいた若者が「えっ、何このバンド」とビビッドに反応していました(通路にも激しく音漏れしていたので)。
しかし、一緒にいた友人が入口で配られるタイムテーブルを見て「OUTRAGEだって」と言うと、「なんだ、日本人か」と言ってそのままフードの屋台に向かってしまいました。
「日本人だから聴かない」なんてのは80年代の玉石混交(というか石だらけ?)のジャパメタを目の当たりにしてきたような世代の人たちだけの意識かと思っていましたが、若い人たちでもそうなんだなあ、とちょっと切なくなりました。音で惹かれたなら観てみればいいのに。と、ルーロー飯をビールで流し込みながらそう思いました。
実際、OUTRAGEのパフォーマンスは、少なくとも演奏に関しては海外のバンドに何ら引けを取らないパワーを放っていました。橋本直樹(Vo)の服装がちょっとカジュアル過ぎるのと、ステージ・アクションがちょっと挙動不審なのがやや気になりましたが、歌声については日本人離れした芯の太さがあって、これまた世界基準を余裕でクリアしていたと思います。
往年のクラシックはもちろん、新曲としてプレイされた曲もカッコよくて、後日アルバムを購入してしまいました。
気になったのは、橋本直樹がMCをしていると、必ずと言っていいほど丹下眞也(Dr)がカットインしてきて話を奪ってしまうこと。かつてバンドメンバーの仲が悪いことで有名だった時期のDOKKENに、ドン・ドッケンがMCをしているうちにジョージ・リンチが次の曲のリフをプレイし始めた、みたいなエピソードがありましたが、なんとなくそれを彷彿とさせる状況で、これ、橋本さんはどう思ってるんだろう…と心配してしまいました(大きなお世話ですが)。
今回も「Blind To Reality」を観られなかったのが残念です。そんなに観たけりゃ単独公演に行け、って話なんですけどね(苦笑)。
◆APOCALYPTICA
飯食って、ビール飲んで、OUTRAGEでアタマ振った後に着席してのチェロ四重奏。完全に休憩タイムです。
いっそ寝てしまうんじゃないかと危惧していましたが、何しろやっている曲がMETALLICAの楽曲ばかりなのでそうそう寝ていられない(笑)。
かつて一度観ているので物珍しさみたいなものは既になかったのですが、歌詞をちゃんと覚えていれば一種カラオケ的な楽しみ方ができたのではないでしょうか。アリーナはかなり盛り上がっていました。
◆LOUDNESS
直近のリリースが先月発売された『HURRICANE EYES』30周年記念盤ということで、同作をこよなく愛する私としては、完全再現とは言わないまでも、同作収録曲中心のセットリストを期待していました。
しかし、始まってみると5曲連続で2000年の「再結集」以降の曲。
当人たちとしては「攻めてみた」ということなんでしょうが、トリがSLAYERでトリ前がEMPERORだった昨日であればともかく、ヘッドライナーがマイケル・シェンカーで、トリ前はジーン・シモンズである本日にこの選曲は完全にミスジャッジ。コア・ファンが集結するアリーナ前方がどうだったかはわかりませんが、アリーナ後方では曲が進むごとにオーディエンスが冷めていくのがヒシヒシと伝わってきました。
6曲目、「Rock This Way」がかろうじて前述の『HURRICANE EYES』30周年を意識した選曲か。当時なりのキャッチーさが満載だったあの作品の曲で(「S.D.I」を別格として)、メンバーの(というか高崎さんの)「許容範囲」がこの曲だったということなんでしょう。ギター・ソロ・パートの途中、タッピングの指が追い付かなくなって「あ~、もうええわ」という感じにアドリブで誤魔化していたのを見て、長いこと弾いてない曲だと世界のアキラでもこうなるんだな、と思いました(笑)。
その後は「Crazy Nights」、「In The Mirror」、「Crazy Doctor」、「S.D.I.」という鉄板のクラシック連発で一気に盛り返し、私も歌いまくり、アタマ振りまくりだったわけですが、それだけに彼らのやりたいこと、見せたいものとオーディエンス(特に彼らのコア・ファン以外のオーディエンス)が求めるもののギャップが浮き彫りになってしまった観は否めません。
海外のフェスでは80年代のクラシック・ナンバー中心のセットリストでやっているようなので、彼ら自身フェスで求められているものは理解していると思うのですが…。
あとちょっと、毎回のことなんですが、音、特にギターの音、デカ過ぎじゃないですかね。これ、耳栓なかったらマジでヤバいですよ。まあ、バンド名がLOUDNESS(大音量、うるささ、やかましさ)ですからね、しょうがないんですけどね。
それとですね、髪を短くしてサングラスかけた二井原さん(Vo)、長渕剛にしか見えません(笑)。声はよく出ていたと思いますが。
◆DEVIN TOWNSEND PROJECT
前回、LOUD PARK 13に出演した際には寝坊して観損ねたDTP。その緻密に作り込まれたサウンドは、なんか今ひとつライブ映えするイメージがなくてさほど期待せずに観始めたのですが、極上でした。
とにかく音が良い。今年のLOUD PARKは例年に比べてサウンドが凄く良くて、この会場ってこんなに良い音鳴らせたのか、あるいは何か設備自体が変わったのかと思うほどだったのですが、中でもこのDTPは絶品でした。まあ音楽自体アンビエントのような音響要素があるのでそう感じた部分もあると思いますが。
これは座って観ちゃもったいないとアリーナ前方に行くことを決意。前述の通り私の指定席からはいったん通路に出ないとアリーナに降りられないのですが、出てみるとどの屋台にも人が並び、通路は地べたに座り込んで飯を食っている人たちであふれていました。まあ今の日本におけるDTPの人気だとこうなってしまうのでしょう。
おかげさまで、スイスイとアリーナ前方に進むことができました。前の方に行くとさすがにちょっとうるさいのですが、耳栓をしてしまうと途端に魅力がなくなってしまうタイプのサウンドのため、私にしては珍しくノー耳栓で音に浸る。
デヴィン・タウンゼンドをはじめ、メンバーは全てハ…スキンヘッドばかり。それがこの特別な音響と照明の中で慈愛に満ちたハーモニーを奏でている様は、一種荘厳ですらあり、メンバーは観衆に救済を与える司祭たちにすら見えてくる。「音のシャワー」という表現はよく目にしますが、言うなればこれは轟音のミストサウナ。音に包まれる感覚というのはこういうことを言うのでしょう。これはまさに26世紀の宗教音楽。
DTPの音楽というのは、バンドの形態、そして基本的な音楽のスタイルという点では必ずしもHR/HMという枠から大きく逸脱しているわけではありません。
しかし、その音楽が与えるカタルシスは一般的なHR/HMとは根本的に異質なもので、非常にメロディアスであるにもかかわらず、なかなか普通の感性の人が日常的に聴くにはハードルの高いものだと思います。こういう音楽をガンガン量産できるデヴィン・タウンゼンドという人は間違いなく天才、あるいは鬼才というべき人でしょう。
私もご多分に漏れず彼らの音楽に日常的に親しんでいるとは言い難い(そもそも近年のアルバムはほとんどマトモに聴いていない)のですが、それだけに本日のステージでは多幸感とでも呼べる特別な非日常感を味わうことができました。
HR/HMのライブ・パフォーマンスとしては本日BLACK EARTHがベストだったと思いますが、体験として最も特別だったのはこのDTPだったと言えるでしょう。
そして終演を迎え、メンバーたちがオーディエンスに向かって礼をしたとき、唯一髪の毛があると思っていたキーボードの人も頭頂部が(以下自主規制)。
◆BLACK STAR RIDERS
ほとんど来日せず、アルバムを出したわけでもなかったので日本ではあまり知られていませんでしたが、1996年から2012年まで「再結成THIN LIZZY」というものが存在していました。
当初のメンバーはスコット・ゴーハム(G)、ジョン・サイクス(G, Vo)、マルコ・メンドーサ(B)、ブライアン・ダウニー(Dr)、ダーレン・ワートン(Key)という、THIN LIZZYのラスト・アルバム『THUNDER AND LIGHTNING』のラインナップに限りなく近いものですが、THIN LIZZYというのは故フィル・ライノット(Vo, B)の存在感があまりにも大きいバンドだったので、どうしても「金目当ての紛い物」感が漂っていました。
とはいえこのメンツでツアーをやればかなり客は入ったようで、ジョン・サイクスが2000年代に新作を出さなかった原動力になっていたわけですが、そのTHIN LIZZYからジョン・サイクスが脱退した後、後釜に迎えられたのが元THE ALMIGHTYのリッキー・ウォーウィック(Vo, G)でした。
既にブライアンもダーレンも脱退していたので、もはやTHIN LIZZYの関係者はスコット・ゴーハムのみになってしまった状況に腹を括ったのか、THIN LIZZYの看板を捨てた結果誕生したのがこのバンド。
サウンド的にはいたってオーセンティックなハード・ロックというか、THIN LIZZYとTHE ALMIGHTYを7:3の割合でミックスしたような音で、今どき珍しい、男らしさを感じるサウンドを出している。
THIN LIZZYの大ヒット曲「The Boys Are Back In Town」もプレイしていましたが、完全にサービスって感じでしたね。あくまで新しいオリジナル曲で勝負している、という印象を受けました。
個人的にはあまり琴線に触れる音ではなく、ジョン・サイクスをフィーチュアしたTHIN LIZZYが『THUNDER AND LIGHTNING』の曲をガンガンやってくれた方が盛り上がったと思いますが、普通にカッコいいと思いました。
特にリッキーの佇まいがカッコよかったこともあって、久しぶりにTHE ALMIGHTYを聴きたくなりましたね。
最新作『HEAVY FIRE』が全英6位を記録したそうですが、その人気も納得のタイトなパフォーマンスでした。リーダーであるはずのスコット・ゴーハムがむしろ引き気味に見えたのが気になりましたが。
◆CRADLE OF FILTH
イギリスのシンフォニック・ブラック・メタル・バンド…などといちいち説明が必要になるようなレベルのバンドではないですね。この界隈の超有名バンドです。
ただ、個人的にはLOUDNESS、DEVIN TOWNSEND PROJECT、BLACK STAR RIDERSと3バンド立て続けにアリーナで立って観たので、少々お疲れ。ビールとツマミを買って指定席で座って観ていたら案の定途中で寝落ちしてしまいました。
ダニ・フィルス(Vo)が時折発する金切声と、キーボード&コーラスのおねいさんのむっちりしたボディだけが印象に残っています。
◆MESHUGGAH
前回のLOUD PARK出演時、場内があまりにも静かでメンバーがご機嫌ななめな感じだったスウェーデンの元祖ジェントなエクストリーム・メタル・バンド。
しかし今回はオーディエンス側も前回の反省を踏まえてか、積極的に盛り上げに行く。演奏中はみなバラバラのリズムで(変拍子なので)拳を振り上げ、モッシュピットなども生まれていたようだ。静かになってしまいがちな曲間には盛んに「メシュガー」コールが投げかけられ、ストイックな趣のメンバーたちも満更でもない様子。
それほどMCの言葉数が多いわけではないですが、何気にほぼ全てのMCが日本語で行なわれていたので、イェンス・キッドマン(Vo)が日本人女性と付き合っていた(いる?)というのはどうやら本当のようですね。
ネット上でも話題になっていましたが、彼らの複雑怪奇なリズムにピタリと合わせた照明ワークが凄まじかったことは特筆しておきます。常にカメラのストロボのように激しく照明が点滅していたので、ポケモンショックが起きるのではないかと思ってしまいました(笑)。というか、常に逆光状態で、アリーナからメンバーがほとんど見えないという(苦笑)。
ちなみに休暇中のフレドリック・トーテンダル(G)に代わってサポートしていたのはSCAR SYMMETRYや、最近ではNOCTURNAL RITESに加入したことでも知られるペア・ニルソンでした。
◆SABATON
LOUD PARK 15において、裏でやっていたAT THE GATESを見ていた人以外からはベストアクトの声が高かったスウェーデンの大人気バンド。
私を含め場内の期待も高く、開演前から「SABATON」コールで大盛り上がり。ステージに鎮座しているのはもちろん今回もYAMAHAの戦車ドラムだ。
ショウは定番の「Ghost Division」でスタート。ヨアキム・ブローデン(Vo)のキレのいいアクションも相変わらずだ。
新加入のトミー・ヨハンソン(G, REIN XEED)もしっかりフィーチュアされ、彼らのライブの特徴であるコント・パートで「バカ」を「乾杯」の意味だと教えられ、会場全体で「バカ!」と叫ぶなど、笑いを取っていました。トミーにはせっかくこういう軍隊バンドに入ったのだから、鍛えて身体を引き締めてもらいたいです(笑)。
どの曲もバックに楽曲のイメージ映像が流れ、合唱すべきパートでは歌詞も映る初心者に優しい親切設計。これは他のバンドも取り入れてほしい。
そしてパイロもさながらトリかというほどバンバン使われ、会場をさらにヒートアップさせる。
日本の西南戦争を題材にした「Shiroyama」ではヨアキムに「友人だ」と紹介されて出てきた「山岡さん」がゲストでギターをプレイ。「Shiroyama」自体は別に日本だからプレイしているわけではなく、今回のアルバムのツアーのセットリストにレギュラーで組み込まれている曲だが、ここ日本ではそれを特別なものにしようというヨアキムの粋な計らいだろう。
問題は山岡さんが誰なのか、場内の大半の人はわかっていなかったということですが。
(私も後で知りましたが、その筋では有名なゲーム音楽のクリエイターだそうです。今回のLOUD PARKの場内モニターで盛んにプロモ映像が流れていた『World Of Tanks』というオンラインゲームはSABATONとコラボしているのですが、このゲームに山岡氏が関わったことが縁でのゲスト出演と相成ったみたいです。紹介が雑だったのは、ヨアキムが山岡さんの日本のメタル・ファンにおける知名度を読み誤ったということでしょう)
今回もエンターテインメント精神にあふれた楽しいショウを提供してくれたわけですが、何が起きるか既に知っていた分、前回観た時よりもインパクトは薄かったかな。初見の人はより楽しめたのではないでしょうか。
◆GENE SIMMONS BAND
失礼ながら、KISSアーミーならぬ私にとっては今年一番どうでもいい出演者でした。
KISSの名曲がたくさん聴ける、って、KISSの曲はKISSがやるから特別なんじゃあ、と。こんなあからさまな副業/趣味バンドがトリ前ということ自体、ちょっと釈然としませんでした。
とはいえそんな不心得者は私くらいのものかと思いきや、トリ前だというのにアリーナはガラガラ。オープニング・アクトを別にすると今日イチ少ないかもしれない。
LOUD PARKに行ったことがない人のために説明しておくと、一般的にトリ前というのは一番人が多くなることが多いのです。もちろんそれなりの集客力があるアクトが出演しますし、反対側のステージ前にはトリ待ちの人がスタンバっています。そしてトリの時間になると、トリに興味がない人や、遠方から来ていて終電が早い人は帰ってしまうので、通常、トリよりもトリ前の方が場内に人が多くなる、というわけです。
然るにこのガラガラ具合…。皆さん私と思いは遠からず、ということでしょうか。私もトリに備えて飯タイムにしようと思っていましたが、まだそれほどお腹が空いていなかったので、アタマくらいは観ておこうか、と指定席に座って開演を待ちました。
ショウは「Deuce」で始まり、「Parasite」、「I Love It Loud」と、KISSナンバーのオンパレードだ。プレイは当然悪くない。ステージ前はそれなりに盛り上がっている。
そしてジーンは百戦錬磨のショウマンでエンターテイナー。巧みに日本語を交えたMCでアリーナを盛り上げていく。これがお昼頃のステージだったら、普通に良かったと思えたかもしれない。
しかし、しばらくすると観客?がぞろぞろとステージに登場。その数20人ほど。これはいったい何事?(後で知ったが、ジーンは2000ドルでステージに上がる権利を販売していたらしい。さすがというか何というか)
個人的には素人がステージに上がっても特にショウに貢献できるわけでもなく、手持無沙汰な雰囲気が醸し出されがちなので、こういう演出は好きではない。IRON MAIDENがかつてやっていた「Heaven Can Wait」のアレなんかはやることが明確だからまだいいのですが。
そして、ステージ上にいる人たちが、2000ドルという安からぬお金を払っているということを考えれば当然ながら、皆さん結構いい歳で、フォトジェニックとは言い難い(苦笑)。これが「ジーンが会場で選んだかわいい女の子ベスト20」とかだったらまだ見て楽しめたかもしれませんが(女の子たちにとっては貞操の危機になりますが/笑)。
正直ちょっといたたまれなくなってきたので、予定より少し早めに通路に出てしまいました。
◆MICHAEL SCHENKER FEST
以前MICHAEL SCHENKER FESTの単独公演の告知を見た時、イベント名だと思っていたのですが、実際はプロジェクト名だったようです。
ゲイリー・バーデン、グラハム・ボネット、ロビン・マッコーリーという、かつてM.S.G.に在籍した歴代のシンガーをフィーチュアした同窓会的な企画で、単独公演も盛況だったようなので、集客力という意味ではLOUD PARK歴代のトリと比較してなんら見劣りしないといえるでしょう。
ショウはマイケル・シェンカーというギタリストの名刺代わりと言える「Into The Arena」でスタート。曲名的にもショウのスタートにピッタリである。マイケルはすこぶる機嫌が良さそうでニッコニコである。そしてそれは本日ずっとそうで、とてもかつてコンサートを放棄して帰ってしまった、などという情緒不安定なエピソードを持つ人には見えない。
ゲイリー・バーデンはサビをオーディエンスに丸投げでしたが、私が以前に観た時もそうでしたし、この人は若い頃からそうだったようなので、ファンにとっては許容範囲でしょう(?)。
グラハム・ボネットはカンペをガン見していましたが、この人も昔からそうだったようなので、これもファンにとっては許容範囲でしょう。というか、むしろまだこれだけパワフルな声が出るのか、とポジティブに驚かされました。
この人の場合、スーツ姿で登場した瞬間に場内に笑いが巻き起こっていたので、出てきた時点で勝ち、という感じでしたけどね(笑)。
個人的にハイライトだったのはロビン・マッコーリーのパート。単純にMICHAEL SCHENKER GROUP時代の曲よりMcAULEY SCHENKER GROUP時代の曲のほうが私の肌に合うというのもありますが、ロビン・マッコーリーの声が衰えるどころかむしろMcAULEY SCHENKER GROUPのスタジオ盤より出てるんじゃないの? と思えるほどの素晴らしさでした。
なんかこの人はリアルタイム組の人たちには「マイケルには不釣り合い(実力不足という意味で)」という評判だったようですが、単純にMcAULEY SCHENKER GROUPの音楽性がアメリカナイズされた方向性に向かっていたことに対する不評の戦犯にされてしまったというだけなのではないでしょうか。
「Save Yourself」をやってくれたのは嬉しい驚きでしたが(結構難しい曲なので)、「Destiny」と「Anytime」も聴きたかったですね。そんなこと言っていたらキリがありませんが。
ラストはUFOナンバーで、「Rock Bottom」(Voはロビン・マッコーリー)で恒例の壮絶な、長いのに緊張感が切れないギター・ソロを披露、さらに3シンガー揃い踏みで「Doctor Doctor」をプレイして締め。
若い人は翌日が休みではないということもあってGENE SIMMONS BANDあたりでもう帰ってしまったのではないかという疑惑もありますが、残っていたのが「エクストリーム厨」な人たちであったとしても、マイケル・シェンカーが「神」と呼ばれる所以は伝わったのではないかと思います。技術的にはDEVIN TOWNSEND PROJECTやMESHUGGAHのギタリストの方が圧倒的に上手いのでしょうが、やはりこのトーン、アドリブの冴え、余人を寄せ付けぬものがありました。
正直な所、今年は歴代でも屈指の地味なラインナップだと思っていました。昨年、SCORPIONSにSYMPHONY Xという、長年の宿願というべきアーティストを観ることができたこともあって、今年はRPGでいえばラスボスクリア後のサブクエスト消化みたいな気分というか(笑)。
しかし終わってみるとその満足度は決してアベレージを下回るものではなく、充分に楽しめたと言っていいでしょう。特に初日のALICE COOPER、2日目のシークレット・アクトのサプライズは非常に印象的でした。他にEMPEROR、DEVIN TOWNSEND PROJECT 、MESHUGGAHのステージも「特別なものを観た」という気がします。
そんな満足感を胸にさいたまスーパーアリーナから出ると、ここ2、3年、毎回会場で見かけている(髪型が髪型だけに目立つ)PHANTOM EXCALIVERのVoの人に12月の赤坂BLITZ公演のフライヤーを渡されました。
私の今年のライブ納めはサイン入りポストカードが当選してしまった12月8日(金)のSECRET SPHEREになるのか、はたまたこの12月15日(金)PHANTOM EXCALIVERになるのか、どちらも仕事が長引きがちな金曜日のライブということもあって予断を許しません(苦笑)。
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