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HIDE BOUND "THE CURSE REDEMPTION"は昨年の11月22日発売

ここ2回ほど、日本のインディーズのメロディック・デス・メタル・バンドについてのエントリーが続いたので、ついでと言っては何ですがもう一発ジャパニーズ・インディのメロデスについてのエントリーを。

神奈川県を拠点に活動するメロディック・デス・メタル・バンド、HIDE BOUNDのファースト・アルバムとなる "THE CURSE REDEMPTION"を紹介します。

と言っても本作は新譜ではなく、ちょうど1年くらい前に出たアルバムです。

なんでまたそんな中途半端に古いアルバムを今このタイミングで取り上げるのかというと、1ヶ月ほど前にメンバーの方からレビューしてほしい、という連絡があったからですね。

ただ、当サイトではメッセージフォームのあるInformationのページに「また、このサイト・ブログなどで自分たちのバンド、CD、イベントなどを紹介してほしい、という依頼をしばしばいただくことがあり、過去にはそういった要望に応えることもありましたが、現在は基本的にお断りしております」と明記しています。

しかし、そのアナウンスを出してからもちょいちょいその手の依頼があり、いささか心苦しくはありつつも、全て無視させていただいておりました。

理由は単純で、ただでさえ小忙しくて自分が積極的に聴きたいと思える音楽を聴く時間さえ充分に取れないのに、他人に売り込まれた音楽を聴いて、しかもそれについて文章を書くなんて、私もサイト運営者である以前に一人の人間なので、自分の幸福度の向上という観点から本末転倒だな、と思うようになったからです。

にもかかわらずこのバンドをレビューではないとはいえ取り上げたのは、一応聴いてみたトレーラー音源が結構カッコよかったからですね。

そしてたまたま、冒頭述べた通りここ2回ほど、日本のインディーズのメロディック・デス・メタル・バンドについてのエントリーが続いたので、このバンドを取り上げるタイミングは今しかないんじゃないかと。いや、単なる書き手都合の個人的な感覚ですが。

GYZE、THOUSAND EYES、VEILED IN SCARLET、SERENITY IN MURDERなど、近年魅力的なバンドが次々と登場し、未曽有の活況を呈している日本のメロデス・シーンですが、前エントリーで取り上げたZemethといい、このHIDE BOUNDといい、さらにマイナーな(と言っては失礼ですが)レベルで活動しているバンド/プロジェクトさえ、かなりのレベルに達していて驚かされます。

このバンドはGYZEやVEILED IN SCARLETのようなクサクサメロメロ型ではなく、どちらかというとTHOUSAND EYESに近い硬派なサウンドですが、随所に北欧メロディック・デス・メタル由来の「慟哭の哀メロ」を聴くことができ、私のようなメロディ派のリスナーでも楽しめますし、このブログの読者の中にも気に入る方はいるのではないでしょうか。

実際の所、本作がファースト・アルバムとはいえ、結成は2002年まで遡るようで、どの程度の密度・頻度で活動していたのかは不明ですが、キャリア相応の熟練が感じられるサウンドです。

NOV(元AION, VOLCANO)みたいなスクリーム・ヴォイスのVoは果たしてデス声なのか、という疑問はありますが(笑)、このようなエントリーの在り方がアリなのかナシなのかという話と同様、「こまけえこたあいいんだよ」の精神で(笑)、まあとりあえずカッコいいのでよし、ということで。



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ALCHEMY CRYSTAL / 志鋼の扉

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都内を中心に活動する、コーラス専任メンバーを含む5人組のデビュー・ミニアルバム。

中心人物であるHAL(G)は沢田泰司(B:元X, LOUDNESS, DIRTY TRASH ROAD他)の晩年の活動のひとつだったTAIJI with HEAVEN'Sのメンバーでもあった人物。

それ以外のメンバーも高度な音楽的訓練を受けた、インディーズでの活動実績のあるメンバーばかりで、演奏力は高い水準で安定していて安心して聴くことができる。

DrのKeisuke Tsuboiは、VOMIT REMNANTSというデス・メタル・バンドで、欧米を中心に活動していた(日本人のバンドなのにウィキペディアは英語版とドイツ語版のみ存在している)実績もあるようだ。

音楽的にはメロディック・パワー・メタルという形容が一番近いと思われ、そのKeyサウンドをフィーチュアし、クラシカルなエッセンスを漂わせつつもギター・オリエンテッドなサウンドは、歌詞がオール日本語であることもあいまって、日本語詞で歌っているときのGALNERYUSを彷彿させることもある。

メタル然とした楽曲からバラードまで、どの曲においても、起承転結の明確な練られたギター・ソロは聴き応えがある。

ただ、このバンドを凡百のメタル・バンドと一番差別化しているのは、ヴォーカルのスタイルで、声楽科を卒業していると聞くとさもありなん、というクラシックっぽい(テノールとかバリトンとかそういう感じのアレ)朗々とした、シャウトやスクリームをしない歌唱は、このバンドの大きな個性と言えるだろう。

もちろん個性というのは往々にして諸刃の剣なので、このヴォーカル・スタイルが受け付けない、というリスナーもいるかもしれないが、日本のインディー・メタル・バンドでは貴重な歌唱力の持ち主であることは確かだろう。

このクラシカルなメタル・サウンドとヴォーカル・スタイルが、日本語であることもあって時折VERSAILLESのようなV系メタル・バンドを連想させることもあり、そういうバンドを好むリスナーには受け入れやすいかもしれない。

本作のラストを飾る#6「不滅花」という曲を聴いていて、その曲名もあって、ふとRaphaelがメロディック・パワー・メタル・スタイルのまま成熟したらこんなサウンドになっていたかも…などと思ったり。

自主制作盤としては音質も良好な部類だが、Drのトリガー・サウンドがやや人工的なのが個人的にはちょっと気になる。

なお、蛇足ですが、中心人物であるHALさんは当サイトの記事を多分全てご覧いただいている読者様とのことで、本作の制作にあたって当サイトの記事内容なども参考にしていただいたとのことです。

◆ALCHEMY CRYSTAL公式サイト
http://xththys.wix.com/alchemy-crystal

◆本作収録「誇り高くあれ」PV

ギター・ソロの美味しい所で終わってしまうので、続きは音源で(笑)。


GAUNTLET / ARISING FOR THE FAITH

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福岡のメロディック・パワー・メタル・バンドのシングルCD-R。

バンドとしては2010年から活動を開始し、何度かのメンバーチェンジを経つつ、これまでに2枚のミニアルバムを発表している。

ライヴなどもある程度コンスタントに行なっているようだが、変わったところでは昨年10月にZepp Fukuokaにて行われたゴールデンボンバーFCツアーの福岡公演にて樽美酒研二扮するナルシス研二のバックバンドを務めたこともあるという。

1月31日に発売された本作は、ヴォーカルがこれまで発表した音源で歌っていた人物から、この音源で歌っているYUTAにメンバー・チェンジして以来初の音源となる。

音楽性はいわゆるメロディック・パワー・メタルで、Voの雰囲気が似ていることもあってYAMA-B在籍時のGALNERYUSやMinstreliXなどを彷彿とさせるが、楽曲自体はより海外の同系バンドのそれに近いものを感じる。

まだメンバーは20代前半と若いにもかかわらず、なかなか演奏のレベルも高く、それでいて若さならではの勢いが感じられる力強いサウンドは聴いていて非常に気持ちがいい。

新たに加入したシンガーの歌唱も、ビブラートのかけ方がややナルシスティックで好き嫌いが分かれるかもしれないが、声域・声量とも非凡なものがあり、このバンドのサウンドを世界で勝負できるポテンシャルに押し上げている。

現在ベーシストが不在で後任を探しているようですが、早くメンバーを補充し、活発な活動とフル・アルバムの制作を期待したいと思います。

大きなお世話かもしれませんが、日本でこの手の音楽をやる限りGALNERYUSとの比較は避けられない中、「GA」から始まるバンド名は余計にGALNERYUSフォロワー的な印象を強めてしまうような気がしてちょっと損してしまうような気がします。

◆本作タイトル曲「Arising For The Faith」[YouTube]

VIGILANTE / OF INSANITY AND JUSTICE

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日本を代表するプログレッシヴ・メタル・バンドと言っても過言ではないであろうVIGILANTEの、2010年の「RETROSPECTIVE INTO CHAOS Vol.1」(ライヴ会場限定販売の、過去楽曲のリメイクEP)以来2年ぶり、純粋な新曲マテリアルという意味では2008年のアルバム「IV」以来となる新音源EP。

このバンドは1988年に結成されていたそうだが、私がその存在を認知したのは彼らのファースト・アルバムである「CHAOS- PILGTIMAGE」が1998年にリリースされ、BURRN!誌でも高く評価されていたのを目にしたときである。

そして日本発のプログレッシヴ・メタルということで興味を持って聴いてみると、これがハイレベルで驚いた。楽曲も練られているし、もちろんこの手のジャンルに挑むだけあって演奏力も高く、何よりヴォーカルが日本人離れしたハイトーンを聴かせているため、パッと聴きでは欧米のバンドかと錯覚するほどだった。

プログレッシヴ・メタルというと誰もが思い浮かべるDREAM THEATER的な要素もありつつ、どちらかというとそのDREAM THEATERに影響を与えたであろうFATES WARNINGを思わせるその楽曲は日本のメタル・バンドにありがちな歌謡曲臭は皆無で、そのことが「本格感」につながると同時に、バンドの音楽的ポテンシャルに相応しい商業的成功への壁になっているような印象を個人的には抱いていた。

そもそも日本ではプログレッシヴ・メタルというジャンルそのものが、ただでさえ大きくはないメタル・マーケットの中でさえマイナーな存在であり、そういう環境の中、結成から20年以上の長きに渡ってある程度コンスタントに活動してきただけでも敬意を表するに値する。

その後彼らはプログレッシヴ・メタルとしての基本線はそのままに、VICIOUS RUMORSあたりを思わせるパワー・メタル的なエッジを強化、近年ではエクストリーム・メタル的なリフ・ワークやデス声の導入など、モダンな攻撃性の導入にも意欲的な姿勢を見せている。

そして本作もEPゆえ収録曲は3曲と少ないながら、これまでの流れを汲んだ「VIGILANTEの最新型」を凝縮した内容に仕上がっている。

パワー・メタリックな#1、モダンな感触の#2、ドラマティックな#3と、楽曲のタイプは異なりつつ、とにかくどの曲にもエナジーとアグレッションが漲っており、プログレ云々を差し置いても聴き応えがある。

中でもプログレッシヴなリフ・ワーク、デス声、モダンなグルーヴ感、叙情的でスケール感のあるサビと、様々な要素が混在しつつも5分半程度にまとめた#2はまさに現在のVIGILANTEのスタイルを凝縮した一曲と言えるだろう。

私は一度だけ彼らのライヴを観たことがあるが、本作に収録された楽曲はいずれもライヴで映えるであろうことが容易に想像できる楽曲ばかりである。

本作をディスクユニオンで購入すると12曲入りのライヴDVDが特典として付いてくる(数量限定)そうなので、ご興味のある方はお早めに。

◆VIGILANTEの公式サイト
http://vigilantemetal.com/


DIAMOND / AWAKENING TO FLY

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2007年4月に北海道札幌市でギタリストのDAIKIを中心に結成された4人組。メンバー・チェンジを繰り返しつつデモ音源のリリースや、道内を中心としたライヴ活動を続け、本作は2011年4月に揃った現ラインナップによる初のアルバム作品。

アルバムといってもiTunes Storeを通じてリリースされるいわゆる「デジタル・アルバム」で、これまでのマテリアルからメンバーによって6曲に絞り込まれた、ミニ・アルバム・サイズの作品である。

基本的な音楽性はメロディック・パワー・メタルにカテゴライズされるものだが、エッジの効いたギター・ワーク、前のめりな突進力のあるドラミングもあって、より剛直なパワー・メタルという印象。北海道出身で、Voが女性であることもあって、久保田陽子在籍時のSABER TIGERを目指しているのかと思わせる瞬間もある。

もっとも、本作で歌っているINは同じ女性といっても久保田陽子のような圧倒的な歌唱力でリスナーをねじ伏せるタイプではないので、最近の若いリスナーにはむしろ先日脱退したRami在籍時のALDIOUSに近い印象を持つ人もいるかもしれない。

収録された6曲は結成以来のレパートリーから厳選されただけあってどの曲にもフックがあり、飛翔感のあるサビが印象的な疾走チューン#1、個人的には本作のベストと思える、これまたスピード・チューンの#2でツカミはOK。

翳りのあるメロディと起伏のある展開で聴かせる#3も聴き応えがあるし、ヘヴィなリフをフィーチュアしつつ、サビでは流麗なメロディを聴かせる#4におけるギター・ソロは本作の白眉といえる。

ピアノをフィーチュアしたパワー・バラードの#5はX JAPANのようなクラシカルな路線というよりはGLAYなどのもっとメジャー志向のJ-ROCKバンドを思わせるメロディで、パワフルな楽曲が大半を占める本作にアルバムとしての起伏をつける役割を担っている。

そしてアルバムの最後を力強く締める#6は本作で最もストレートな突進力に満ちた疾走曲で、効果的に使用されたKeyが楽曲のテンションを高めている。

ソングライターであるDAIKIは、パワー・メタリックな疾走感にこだわりつつも、時にV系にカテゴライズされるバンドからの影響も感じさせる、日本人ならではのメロディ・センスによって楽曲にフックを作り出し、そのギター・ワークも、荒削りながら随所で煽情的なフレーズを聴かせ、楽曲を引き立てている。

惜しむらくはヴォーカルの弱さで、リズム感、ピッチともに不安定な、お腹から出ているとは思えない細い歌声が、楽曲の魅力を引き出し切れていないのは明らか。今後の精進が望まれる。

全体的にはまだまだ荒削りで、E.Z.O.やSABER TIGERのような、同じ北海道から全国的な知名度を得たバンドの背中は遠いものの、暗黒の90年代を経て、00年代以降徐々に充実の度合を増しつつある日本のアンダーグラウンドなメタル・シーンの「厚み」を感じさせてくれる、まさにダイアモンドの原石のような作品である。

◆DIAMONDのMySpace(本作のサンプル音源あり)
http://www.myspace.com/diamondjapan/

◆DIAMONDの公式サイト
http://diamondjapan.web.fc2.com/