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ついに、LOUD PARK 2023

いよいよ本日、大阪から始まるLOUD PARK 2023。

私は東京在住なので明日行くわけですが、天気悪くて肌寒い日になりそうなので何を着て行こうかちょっと悩んでいます(笑)。

最後にLOUD PARKがあったのが2017年、もう5年以上前と思うと愕然とするというか、ちょっとエモい気分になります。

私は第1回が行なわれた2006年から2017年まで12年間、皆勤賞で参加することができたわけですが、これが私がもっと若くて、高校生とか大学生のうちに開始されていたら、受験やら就職活動やらがあって参加が難しい年があったでしょうし、そもそも金銭的にもキツかったと思います。

一方で、結婚して子供ができたようなタイミングの時期にLOUD PARKがあったとしたら、それはそれでなかなか毎年参加は難しかったかもしれません。

そういう意味で、社会人初期という、私のライフステージ的にはちょうどいい時期に開催されていたフェスで、私の人生にとってひとつの大きな財産となった体験だったと思っています。

きっとLOUD PARKという場がなかったら一生ライブでは観なかったであろう素晴らしいアーティストのライブを数多く観ることができましたし、私のメタラーとしてのキャパシティを大きく拡張してくれるイベントでした。

恐らく、なんとなく好きなバンドが出るから、友人に誘われたから、くらいのテンションで来場した人が、このLOUD PARKで色々なバンドに触れたことがきっかけでメタルに深くのめり込んだ、みたいなケースも結構あったのではないかと思います。

KNOTFESTだったりDOWNLOADだったり、一応メタル・フェス的なものはその後にもありましたが、私のようなクラシック・メタルを好む層とは異なるもう少し若い世代をターゲットにしたものであることは明らかで、それらに参加したこともありますし、それぞれそれなりに楽しめてはいるのですが、やはり自分はLOUD PARK派だな、と感じています。

クラシックなHR/HM界隈の近年のニュースと言うと、訃報だとかフェアウェル・ツアーだとか、誰それが病気になったとか、そんなニュースばかりで、いよいよ「終わり」が見えてきています。

興行主であるクリエイティブマンが、元々予定してたDOWNLORD FESTIVALではなく、今回LOUD PARKとして開催したのは、ほぼ同時期に行なわれるKNOTFESTとの住み分けのためでしょう。21世紀以降のメタルではなく、20世紀のメタルが好きな人を結集する場として、今回のLOUD PARK 2023は用意されているのだと思います。

おそらく集客はKNOT FESTの方がいいと思います。私の記憶では、LOUD PARKも一番集客できていた日はSLIPKNOTが出演した08年の1日目でしたし、KORNというかつてLOUD PARKでトリを務めたクラスのバンドがトリではないポジションで出演している。しかもマキシマム・ザ・ホルモンやMAN WITH A MISSONといった日本の人気バンドも出るわけですから。

今年についても、この直前のタイミングになっても一般チケットはおろか、GOLDチケットさえ完売しなかったわけで、集客については発売すぐにチケットが完売するドイツのWACKEN OPEN AIRなどとは全く比べられないものであることは推して知るべし、という感じです。

やたら沢山数が出る欧米のフェスと違い、ヘッドライナーの求心力が集客を決めてしまう部分がある日本のフェス事情を踏まえると、トリの常連だったSLAYERも既になく、METALLICAやIRON MAIDENはビッグ過ぎて予算が合わず、しばしばLOUD PARKのトリをつとめた「21世紀以降のバンド」も、恐らく今後はLOUD PARKではないフェスに出ることになるということを考えると、今年はたまたま再結成(?)PANTERAという格好のタマがあったから成立したものの、よほど今回大成功しない限り、今後LOUD PARKという「20世紀のメタル」のイメージが強いフェスを開催できる可能性はあまり高くないと思われます。

コロナ禍という、それまで予想もしなかったような事態を経験したからか、このサイトを始めた時には20代だった私も40代半ばとなり、平均寿命の半分を過ぎたためか、両親との死別を体験したためか、何事も「これが最後になるかもしれない」という思いを持つことが多くなったこともあって、このLOUD PARKも「もしかしたら最後になるかもしれない」という気持ちで、瞬間瞬間を心に刻むつもりで臨みたいと思います。

本日のLOUD PARK開催に合わせて、クラシック・メタル・ファンの注目が一番集まるタイミングで発表されたHELLOWEENの日本武道館公演、昨年アメリカで大成功を収めていたMOTLEY CRUEとDEF LEPPARDのジョイント公演など、ここに来て一気にスペシャルな来日公演が決まっていますが、これらも「もう二度とないかもしれない」可能性が高いイベントで、恐らく来年くらいまでには決まるであろう(?)METALLICAやIRON MAIDENの来日なども、あと何回あるかわからず、彼らの年齢を考えると、「今」より良いライブが未来にある可能性というのは残念ながらあまり高くないかもしれません。

前述の通り天気が悪いので、なかなか当日券でフラッと来る気分になりにくいとは思いますが、もし「一度LOUD PARKに行ってみたかったな」と思っていて、まだチケットを買っていない人は、ちょっと無理してでも行っておくべきなのではないかと思います。

なんだかお祭りの前日にしては辛気臭いというか重たい文章になってしまいましたが(苦笑)、それくらい私にとってLOUD PARKというイベントは特別な思い入れがあるということでご了承ください。今日明日行かれる方、楽しみましょう。

LOUD PARK公式サイト

▼歴代のLOUD PARKのステージでも最も印象的なもののひとつだった2013年のSTRATOVARIUSのパフォーマンス。恐らく彼らのファンではない人も巻き込んだ"Hunting High And Low"の大合唱は感動的でした。
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2022年 印象に残った10枚

感染者自体はさほど減っていないにもかかわらず、重症化率や死亡率が下がったことによってなんとなく「元に戻ろう」モードになったことでライブやフェスなども復活してきた2022年。

とはいえ私自身はDOWNLOAD JAPANに足を運んだ程度でさほどライブには足を運ばなかったのですが、このブログで紹介している新譜にサブスクで耳を通し、サブスク配信のないものと、これはと思ったものについてはCDを購入するなどして地味にメタルライフを堪能していました。

本ブログの新作紹介頻度が平均で週2枚程度で、その他YouTubeで見つけたものとか、SNSを含むWeb上の評判を見て気になったものなどをちょいちょい聴いていたので、1回しか聴いていないものを含めて100枚ちょっとでしょうかね。CDの収納場所をあまり考えなくてよくなったのは本当にありがたいです。

そんな100枚ちょっとのアルバムの中で印象に残ったものをピックアップしたのが以下のリストになります。並べ方は順位ではなく思いついた順ですが、1枚目と2枚目はパッと同時に思いついて、どちらを「1枚目」扱いにするかはちょっと悩みました(笑)。


DYNAZTY "FINAL ADVENT"関連記事
欲を言えばもう1曲キメ曲が欲しかったものの、今年聴いたアルバムの中で一番注釈なしの「カッコよさ」を感じたアルバムでした。やはりHR/HMには「華」があってほしい。


TOBIAS SAMMET’S AVANTASIA "A PARANORMAL EVENING WITH THE MOONFLOWER SOCIETY"関連記事
アルバムの完成度だけで言ったらこちらをファースト・チョイスにしてもよかったのですが、前作に比べるとちょっとだけ聴き劣りしたので個人的に現時点の最高傑作だと思ったDYNAZTYに譲った次第。


FALLEN SANCTUARY "TERRANOVA"関連記事
私の琴線に一番触れてくるタイプの典型的な欧州型メロディック・パワー・メタル。コーラス・ワークをはじめ、もはや優美ですらある。


STRATOVARIUS "SURVIVE"関連記事
私の最愛のバンドのひとつである彼らの久方ぶりの新作。成熟した安定感のあるプログ・パワー・メタルはもはや王者の風格。


ARCH ENEMY "DECEIVERS"関連記事
より「ヘヴィ・メタル」を強く感じさせるようになり、基本的に「エクストリーム・メタル」を好まない私のようなリスナーのハートさえつかんで離さない、理屈抜きにカッコいい1枚。


GLADENFOLD "NEMESIS"関連記事
今年最も「フィンラン度」が高かった1枚。メロデスというよりはデス・ヴォイスも取り入れたパワー・メタルという感じですが、メランコリックな叙情とKeyの使い方がとにかくツボ。


THOUSAND EYES "BETRAYER"関連記事
前作ほどの強烈なインパクトは薄れたが、練り込まれたメロディとアグレッションのコンビネーションは過去最高で、ひたすらカッコいいの一言。


TREAT "THE ENDGAME"関連記事
もはや「芳醇」みたいなワインとかチーズに使うような形容を用いたくなる円熟の北欧メロディアス・ハード。とにかく曲がいい。


MEGADETH "THE SICK, THE DYING...AND THE DEAD!"関連記事
結成から40年を経てここまで初期を思わせる鋭利なサウンドに回帰できたというのが驚き。これはやはりキコ・ルーレイロという才能を得たからこそ成し得たサウンドなのでしょうか。


H.E.A.T "FORCE MAJEURE"関連記事
エリク・グロンウォール(Vo)脱退は痛かったが、オリジナルシンガーだったケニー・レクレモを復帰させて制作した本作も超メジャー級のアリーナ・ロックであることは間違いない。


上記の10選に漏れたアルバムは数多くあって、THE HALO EFFECT、NORTHTALE、GINEVRA、Unlucky Morpheusあたりは1位を選ぶのとは違う次元でギリギリまで悩みました。BATTLE BEAST、VISIONS OF ATLANTIS、NEW HORIZON、MICHAEL ROMEO、SEVENTH WONDER、ROB MORATTI、LIV MOONなんかも曲のクオリティだけで言ったら捨てがたいものがありました。

そういう意味でいうと、年間ベスト候補になり得るようなクオリティの高いアルバムが私の好きなメロディックHR/HM界隈だけでも相当数リリースされており、そういう意味では豊作とも言えるのですが、違う角度から見ると、決め手に欠けるアルバムが多かったと言えなくもありません。

10選に入れたアルバムはどれも優れたアルバムだと確信できる出来ですし、それ以外に候補として思い浮かんだアルバムもそうなのですが、なんとなくの印象として「前作の方が良かったな」という作品が多かったのが気になる所です。

まあ、それが私の好きなアーティストがパワーダウンしたのではなく、私の感性が衰えただけかもしれませんし、単純に聴き込みが足りないという可能性も高いのですが。

現代における「王道」のメタル・サイトであれば全米・全英ともに2位を記録したGHOSTを筆頭に、OZZY OSBOUNE、LAMB OF GOD、MEGADETH、SLIPKNOT、MESHUGGAH、MACHINE HEAD、VOIVOD、POLYPHIA、欧州系ならRAMMSTEIN、BLIND GUARDIAN、KREATOR、SABATON、AMORPHISあたりが選出の対象になるのでしょうが、ご覧の通りMEGADETH以外に共通点はなく、もはや完全に『BURRN!』状態(苦笑)。

ワールドワイドの専門家というか評論家というかマニア筋で話題になっていたのはLORNA SHORE、SOUL GLO、ZEAL & ARDOR、CLUTCH、CHAT PILE、WORMROTあたりでしょうか。こちらはもう残念ながら完全に「理解できない(というかチェックしきれない)世界」になってしまっています(LORNA SHOREのシンフォ・アレンジはかなりインパクトを受けましたが)。

とはいえ2022年はPOWER PALADINやFELLOWSHIPなど、パワー・メタル系で久々に多少注目される新人がデビューしてきましたし、DRAGONLANDやDREAMTALE、HIGHLORDなど、2000年代初頭のメロスピ/クサメタル・ブームの際によく名前を目にしていたバンドが久しぶりにアルバムを発表したり、カイ・ハンセンの息子のバンドが登場したり、STRATOVARIUSが久々の新作リリース、BLIND GUARDIANも(若干ですが)パワー・メタル路線に回帰するなど、パワー・メタル復興の機運が感じられたのが好材料ですね(気のせいかもしれませんが/笑)。

今年はLOUD PARKも久々に開催されますし、きっとライブの本数なども増えていくと思いますので、皆さんにとっても良いメタル・ライフが送れる年になるのではないかと期待しています。

ちょっと遅い新年のご挨拶となりましたが、本年もよろしくお願いいたします。

ギター・ソロの必要性について

本日5月7日(土)、「ギターソロ」というワードがTwitterのトレンド入りして盛り上がっていました。

発端は高野寛氏のこのツイートのようです。



引用ツイートなので、元を辿ればグラミー賞のロック・カテゴリーのノミネート曲にギター・ソロがある曲がほとんどない、という事実が問題の根源でしょうか。

これに対して、マーティ・フリードマンがTwitterでコメントしたことも議論を活性化したようです。

▼マーティーのツイート内容をまとめて紹介しているページ
マーティ・フリードマン「サブスクでギターソロが来たらスキップする件」について持論を語る

直接的な問題というか、若者がギター・ソロをスキップする原因としてはマーティーが言う通り、「バンド物じゃなくてアーティスト系」であることが多い(アイドルなども含めて、だと思います)という前提で、「作成チームの中、曲はギターソロ「存在感」さえあれば大丈夫と思ってる方居ると思う。なので、とにかくボーカル休憩の8小節、ちょっとした喧しい歪んでるギターソロあったら大丈夫になってしまう」という、音楽業界の問題が主要な要因だと思います。

かく言う私も、中学2年生になるくらいまでは、ギター・ソロというのはただの間奏だと思っていましたし、なんなら単なるボーカルの休憩時間だと思っていました。

そんな私にギター・ソロには音楽的な意味がある、と気付かせてくれたのは、X(JAPAN)の「紅」のギター・ソロ、それ単体で楽曲として成立するようなギター・ソロ・パートでした。

そういう意味で、マーティー・フリードマンの認識は正しくて、ヴォーカル・パートに負けないくらいギター・ソロ・パートに魅力があればスキップされないはず、ではあるのです。

ただまあ、そんな魅力的なギター・ソロがヴォーカルメインのポップ・ミュージックに提供される例は少ないというのは事実なのでしょう。ギター・ソロを聴きたいと思っていない人がリスナーに想定されている楽曲に素晴らしいギター・ソロを提供するなんてもったいないですもんね。

しかし実は私はこれはそういうギターの魅力云々の問題ではないような気がしているのです。

若者に限らず、最近の傾向として、長いコンテンツが好まれない気がしています。2時間の映画や1時間のドラマ、30分のアニメ、どれも「長い」と思われて、5分とか、せいぜい15分くらいのネット動画の方が好まれる。ドラマを観るなら2倍速で観る、みたいな人が私の周囲にもどんどん増えているような気がしますし、私自身そういう傾向もあります。

そういう観点で、今後音楽はサビしか必要とされない、一時期の着メロみたいな事態になっていくのではないでしょうか。

現代の人はやはり忙しくて時間がないですし、一方でできれば多くの人と共通の話題を持ちたいので「チェック」はしたい。そうなると間奏まで聴く必要はなくて、サビだけ知ってればとりあえず友達と「この曲知ってる?」「知ってる!」と盛り上がれる。

今もそういう動画が結構上がってますが、「過去の名曲サビだけメドレー」みたいなコンテンツは今後さらに需要が伸びるのではないでしょうか。

よく考えると、ギター・ソロを飛ばさない世代である私だって、クラシック音楽なんてサビ(というか有名なテーマメロディというか)しか知らない曲いっぱいありますし。

40分のクラシック曲を全部聴いて憶えられない、というのと、5分のポップソングを全部聴くのダルいから間奏パート来たら次の曲にスキップする、というのは本質的には同じようなことなのかもしれません。

ただまあ、ことHR/HMに関してはギター・ソロこそがハイライトであり、ギター・ソロを聴かずしてその曲の魅力に触れたことにならない、みたいな曲も多いんですよね。80年代のイングヴェイとか、マイケル・シェンカーなんてその典型だと思います。

そういう意味で、HR/HMという音楽は若者へのアピールが弱くなっているんだろうなあと思います。曲が始まって3分経ってからハイライトが来るとか、待ってられないでしょうね(苦笑)。

いや、90年代にはギター・ソロを弾かないNU METALみたいなサウンドも流行りましたが、このサイト/ブログを長年読んでくださっている方であれば私がそういうメタルのことを言っているのではないとおわかりかと思います。

私はとにかくトーンやタッチがどうとか、ギター弾きでないとわからない凄味よりも、ギター・ソロ自体に音楽的な魅力があるかどうか、がギター・ソロを評価するポイントですね。本来は楽曲全体の調和の中で魅力を放つのが良いギター・ソロなのだろうと思いますが、個人的にはギター・ソロ単体で主張するくらいの方が好きだったりします。

そういう私のギター・ソロの嗜好を決定づけたのはこの曲のこのギター・ソロでした。3分半もない曲なのに、ギター・ソロが1分以上あるのがイカす。

2021年 印象に残った10枚

2021年も昨年に引き続きコロナ禍が継続。ワクチン接種が進んだことで多少緩和された部分もありますが、元通りには程遠く(というか、完全に元通りになることはないのかもしれませんが)、ライブは回数・規模・やり方など、いずれも限定された開催となり、結果としてこのサイトを始めた2004年以来、初めて年に1度もライブに行かない年になりました。

大御所アーティストの多くは新作のリリースを大規模なツアーを行なえそうな来年以降を見据えているようですが、いずれにせよツアーの規模が限られる、あるいは新作を出さないことには収入面でキツい、というクラスのアーティストのリリースはライブがないことで活性化され、結果としてこの年も私好みの作品は相当数リリースされました。

2021年のメタル・アルバムとしてはIRON MAIDENの"SENJUTSU"、CARCASSの"TORN ARTERIES"、MASTDONの"HUSHED AND GRIM"、GOJIRAの"FORTITUDE"、SPIRITBOXの"ETERNAL BLUE"あたりが割と広く支持された作品でしょうか。そしてこのブログをコンスタントにご覧いただいている方であればご承知の通り、それらの作品は一枚も私の年間ベストにはランクインしてきません(笑)。

サブスクが音楽を聴く中心的手段になり、新譜も旧譜も手軽に手広く聴くことができるようになったため、正直なところ1枚のアルバムを聴き込むということが少なくなりました。当ブログであまりレビューを行なわなくなったのはそのためです。YouTubeも含め、これだけ実際に音源を聴くことが容易になった今、活字で音楽を紹介することの意義は(なくなったとは思いませんが)低下していることは否めないと思いますし。

そういう意味で年間ベスト・アルバムを選出するという行為自体にも疑問が出てくるわけですが、これはこれであらためて自分がその年聴いてきた音楽を振り返る良い機会になり、個人的に有意義なので継続することにします。

上述の通り、聴き込みが甘いので、ちょっとしたきっかけ、極論もう一回聴き返すことでさえ変動する可能性があるものですが、現時点で思いついたものを挙げていったらこんな感じになりました、という程度のものということでご覧いただければと思います

なお、アルバムのジャケットはAmazonのリンクになっています。


HELLOWEEN "HELLOWEEN"
まあ、「予想通り」かもしれませんが、この30年越しの奇跡を素直に噛みしめたいですね。


BEAST IN BLACK "DARK CONNECTION"
もっと王道メタルでもいいのに、という思いもありつつ、そんな偏狭な意見をねじ伏せる楽曲の力がある。やはりこいつらはモノが違いますね。


TEMPERANCE "DIAMANTI"
2作続けてこのクオリティ、これは本物でしょう。トリプル・ヴォーカル体制のようなギミックを抜きにしても、楽曲のバラエティとクオリティが素晴らしい。


SKELETOON "1.21 GIGAWATTS CLUB"
2年連続メロスピ一等賞。このアルバムが日本盤リリースされないなんて、ただただ嘆かわしい。メロスピは本当に日本で人気がなくなってしまったんですね…。


NESTOR "KIDS IN A GHOST TOWN"
私のような80年代サウンド、特に後半の愛好家にとってはたまらない一枚。当時デビューし損なったバンドのある意味「再デビュー作」というエピソードもちょっといい話。


SERENITY IN MURDER "REBORN"
今年のメロデス一等賞。もはやメロデスは北欧より日本の方が充実していますね。デス声という異形の表現形態にもかかわらず、映像的なドラマを感じさせる圧倒的な哀しみを湛えたサウンド。


PERPETUAL ETUDE "NOW IS THE TIME"
昨年のMOON REVERIEに続く今年のネオクラ一等賞。いよいよネオクラ復権の気運でしょうか。本家の王者が捨ててしまった「キャッチーなネオクラ」サウンドがここにある。


ORDEN OGAN "FINAL DAYS"
この手のバンドが世界観を変えてうまく行くケースはほとんどないのだが、このバンドについてはかなりうまくやっている。ソングライティングの底力を感じる、母国ドイツでは3位を記録した新世代ジャーマン・メタルの意欲作。


MOTORJESUS "HELLBREAKER"
ドイツ出身という以外このブログとしてはちょっと異色かもしれませんが、こういうエネルギッシュでガッツのある音もたまに欲しくなるんです。理屈抜きでカッコいい。


SECRET SPHERE "LIFEBLOOD"
なぜだか思い入れがあるんですよね、このバンド。オリジナル・シンガーのロベルト・メッシーナを復帰させて、独自の叙情プログレッシヴ・パワー・メタルを追求している姿にグッとくる。


ILLUSION FORCE "ILLUSION PARADISE"
正直に言うと、作品の完成度だけ見るなら他に選ぶべきアルバムもありましたが、メロディック・パワー・メタルというスタイルをベースに、自分たちだけの特別な音楽を作ろうという心意気が強く伝わってきてとても好印象でした。


さりげなく(?)11枚あるのは、一番上のアルバムがあまりにも特別すぎるから、とご理解ください(?)。

上記以外にも、POWERWOLFの完成度・安定感は評価したかったし、CRAZY LIXXの80年代っぷりはNESTOR同様個人的なストライクゾーンでした。北欧AORのCREYEもマイ琴線に触れるアルバムでしたし、ARIONの新作も成長を感じる仕上がりでした。

ベテランではNIGHT RANGERの新作は健在を印象づける力作でしたし、キー・マルセロ(G)とトミー・ハート(Vo)のOUT OF THIS WORLDもバンド名に期待されるサウンドを提供してくれました。ステージ4の癌だというロニー・アトキンスのソロ・アルバムも胸を打たれるものがありましたし、RHAPSODY OF FIREの新譜も納得感のある作品で、不作の年なら10選に入ってもおかしくなかったと思っています。

これだけ10選(11選)に入れたかった/入れてもよかったアルバムが思いつくということは、なぜかあまりそういう意識はなかったのですが、こうして振り返ってみると個人的には豊作の当たり年だったんだなと思いました。

そういう意識がなかった理由としては、やはり2021年のメタル・シーン全体を見ると今一つ新しい動きに欠けたこと、そして何よりライブがなかったことによるものでしょうね。

2022年はライブ活動が、そしてあわよくば5年ぶりにLOUD PARKが復活することを望みたいですね。ちょっと遅い新年のご挨拶となりましたが、本年もよろしくお願いいたします。

【祝?】1991年という、メタルにとって最大の節目となった年【30周年】

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現時点(2021年末)で最新号の『ヘドバン』と『炎』、両誌の特集がいずれも「1991年」という30周年を迎えた特定の年をテーマにしたものでした。

昨年、両誌が1990年特集をしていたわけではないので、1991年という年がそれだけ特別な年だった、ということでしょう。

どちらの雑誌も基本的には「メタル雑誌」という立ち位置なので、1991年に発表されたMETALLICAのメガ・ヒット・アルバム"METALLICA"のリリースを一つのメイン・トピックとしており、表紙にジェイムズ・ヘットフィールド(Vo, G)を起用しています(『炎』は差別化のためか、同年"USE YOUR ILLUSION I & II"をリリースしたGUNS N' ROSESのアクセル・ローズも同居させていますが)。

もちろん"METALLICA"はその後のメタル・シーンの流れを方向づけた重要作であり、メタルという音楽ジャンルにおいて最も売れたアルバムのひとつなので、特別扱いは納得できます。

ただ、1991年が特別扱いされるのは、単に"METALLICA"がリリースされたという理由によるものではなく、この年にいわゆる「グランジ/オルタナティブ革命」が起こったからです。

"METALLICA"アルバム自体、SOUNDGARDENやALICE IN CHAINSなど、その1、2年前にリリースされ、ジワジワと注目を集めていたオルタナティブ・ロックの影響によってああいうサウンドになったと言われており、そういう意味ではこの年の10月にリリースされたNIRVANAの"NEVERMIND"、PEARL JAMの"TEN"、SOUNDGARDENの"BADMOTORFINGER"、そしてRED HOT CHILLI PEPPERSの"BLOOD SUGAR SEX MAGIC"の4連打(なんて月だ!)がその後のロック・シーン、いや、ミュージック・シーンを永遠に変えてしまったと言えるでしょう。

実際、2021年に生きる人間として、90年代の音楽には「地続き感」を感じますが、80年代の音楽には「失われた過去」という感覚があります。

80年代のような装飾的で虚構的で浮ついたエンターテインメント性がもてはやされる時代というのは人類史的にはやや異常な時期で、より自然体で地に足の着いたスタイルが音楽にせよその他の文化にせよ見直された結果が90年代のオルタナティブ革命であり、それは大局的に見ると人類が自分を取り戻した、ということなのではないかと思っています(大げさかもしれませんが)。

80年代に一番売れたアルバムがスター然としたマイケル・ジャクソンの"THRILLER"(1982)で、90年代に一番売れたアルバムが辛気臭い地味な(失礼)女性アーティストのアラニス・モリセットが発表した"JAGGED LITTLE PILL"(1995)であるという事実が80年代から90年代の空気の大転換を象徴していると言えるでしょう。

浮ついていたのは一部のヘア・メタル・バンドのみにせよ、総じて虚構的あるいは装飾的だったヘヴィ・メタルという音楽スタイルはこの空気の変化の中で欧米のメイン・カルチャーから淘汰されていったわけです。

当時インターネットなどが今ほど普及していなかったこともあり、欧米のトレンドや空気感がすぐに日本に伝わらなかったため、日本ではその後もしばらく「装飾的で虚構的な」HR/HMがもてはやされており、そのおかげで私のような「90年代に青春を過ごしたメタラー」という人種が相当数誕生しています。

そんな「90年代メタラー」の拠り所となっていたのが、グランジ/オルタナティブを認知・意識しつつも頑なに80年代型のHR/HMをプッシュし、80年代メタル・バンドのオルタナティブへの「転向」に否定的なリアクションを取り続けた『BURRN!』誌だったわけですが、この1991年時点では、グランジ/オルタナティブの象徴たるNIRVANAに対してかの『rockin'on』誌より好意的に評価していたという話があります。

ただ、NIRVANAという一バンドの評価はともかく、BON JOVIよりもPEARL JAMが売れ、多くのHR/HMバンドがグランジ/オルタナティブに感化された作品をリリースする、というトレンドに対しては『BURRN!』誌はかなり明確に嫌悪を示していたと思います。

2000年代、2010年代と時を重ね、80年代的な音楽も90年代的な音楽も等しく過去のものとなった今となっては、サウンドもアティテュードも全く異なるPOISONとSEPULTURAが誌面に共存できていたのに、どうしてLED ZEPPELINやBLACK SABBATHにも影響を受けていたNIRVANAやSOUNDGARDENも同様に扱えなかったのか、というのは理解に苦しむ所がありますが、主に編集者(特に編集長)の世代や性格の問題だったのでしょうね。

もし、『BURRN!』誌がグランジ/オルタナティブも「メタルの一種」として認め、欧米での人気相応の扱いをしていたら何か変わっていたのか、というと何とも言えず、単に80年代型のメタルが好きな人から毛嫌いされ、かと言ってグランジ/オルタナティブのファンにも見向きもされずあえなく休刊、という事態になっていた可能性も高いと思うのですが、トレンドというのはそれまでの価値観を劇的に変えてしまうもの、という意識を私に強く印象付けたのがこの1991年に始まったグランジ/オルタナティブのムーブメントでした。

ただ、そういうトレンドの恐ろしさ(?)を私をはじめとするHR/HMファンに印象付けた、当時多くのHR/HMバンドが発表した「グランジ/オルタナティブ的なアルバム」なのですが、あれらが本当に「レコード会社に作らされたもの」だったのか、本人たちが「この音、けっこうイケてるじゃん。自分たちでもやってみたい」と思って作ったのか、というのは未だにちょっと謎だったりします。

DEF LEPPARDのジョー・エリオットなんかはMTVでSTONE TEMPLE PILOTSを観てすぐにスタッフにアルバムを買いに行かせた、みたいなことをインタビューで語っていたので実際に気に入っていたようですが…。

今フラットな気持ちで聴けばそういったアルバムの中にも悪くないものがありましたが、80年代的な価値観を脱却できていない状態でそれらのアルバムに接してしまうと駄作連発、という印象になり、日本でも徐々にHR/HMファンが減っていく要因になっていたのではないかと思っています(METALLICAの"METALLICA"ですら当時「ダメになった」と感じていた人は多かったと聞きます。まして"LOAD"は言わずもがな)。

2021年も終わろうという今、結局その1991年の「革命」に対する「反革命」は起きておらず、結局『BURRN!』誌が推していたような「正統的な」HR/HMというのは80年代という限られた時代にのみ輝いた徒花のような音楽、という位置づけになるのだろうと思います。

オルタナティブがロック・シーンにおけるメインストリーム化するという本末転倒な事態の結果として、1991年以降ロックというのは内向的な陰キャの音楽、という位置づけになってしまった観はありますが、個人の嗜好として80年代的な音楽を好む分には自由なので、私個人としては1991年以降の価値観とは無関係に(とはいえむろんその時代性から完全に逃れることはできないのですが)生きてきたと思っていますし、このサイト/ブログはそういうスタンスで書かれています。

▼80年代の象徴的なMVのひとつですね。


▼90年代の象徴はやはりこれでしょうか。