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CREYE / CREYE

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2015年にギタリストのアンドレアス・ガルストランド(元GRAND DESIGN)を中心に結成されたスウェーデンのメロディアス・ハード/AORバンドのデビュー・アルバム。

本作以前にリリースされたEP「STRAIGHT TO THE TOP」(2017)がマニアの間で話題になっていたバンドで、もはや大手といっていい『Frontiers Music』が契約したのも頷ける上質なAORサウンドを聴かせてくれる。

上記のEPではART NATIONのアレクサンダー・ストランデルが歌っていたが、本作ではALIENのジム・ジッドヘッドの息子(!)だというロビン・ジッドヘッドがヴォーカルを務めている。

スティーヴ・ハリスの娘や息子、ブルース・ディッキンソンの息子などもそれぞれメタル・ミュージシャンとしてデビューしていますが、いよいよHR/HMの世界も二世が幅を利かせる時代になったのでしょうか。

そのロビン・ジッドヘッドの歌声は父親に比べてやや線が細く、客観的にはアレクサンダー・ストランデルの方が高く評価されるのかもしれませんが、個人的にはこのバンドのサウンドにはマッチしていると思う。

とにかくピュア80'Sというサウンドで、楽曲・サウンドとも洗練を極めており、ロックが元々持っていた持つ無骨さ、泥臭さ、猥雑さが完全にろ過消毒されたクリーンなサウンドであり、そこに北欧ならではの哀愁を漂わせた甘いメロディが乗るのだから、もはや「爽やか」と形容していいほどの清涼飲料水的音楽。

こういうサウンドを軟弱なものとして忌避、あるいは蔑視する人も多いと思いますが、個人的にはこういう方向にロックが進化し続けなかったことでロックはポップ・ミュージックの王道から転落し、R&BやEDMにメインストリームの座を明け渡すことになったのではないかと思っています。

そう、80年代までロックは洗練・大衆化に向かい、実際大衆に支持されていたのです。それが90年代に入り、グランジ/オルタナティブ革命によって70年代以前のサウンドに揺り戻されてしまった。

それはある意味ロックの原点に立ち返る動きで、一部にそういう動きがある分にはよかったと思うのですが、ロック・シーン全体がそうなってしまった結果、ロックから子供が聴いてもわかるような大衆性は失われてしまった。

原点回帰、それは古き良き時代を取り戻すということである一方、一面では「退行」であり、少なくとも「大衆的なわかりやすさ」が減退したことは間違いない。

まあ、ロックとは元々そういうアンチ・コマーシャリズム的なスピリットを内包しているものだったのだから、このバンドの音楽のように完全に毒を抜いて聴きやすい商業性を推し進めること自体、ある意味「自ジャンル否定」的な無理、いわばアイデンティティ・クライシスを内包していたのかもしれません。

しかし個人的には(というか世代的に)自分が意識的に音楽を聴き始めるようになる以前に、テレビやラジオ、そして街角などで自然に親しんでいたタイプのサウンドなので、どうしても心惹かれてしまうのです。

さらに個人的な思い入れを語るなら、このバンドが多用するKeyサウンドがまたツボなんですよ。こういう人工的でスペーシーなキラキラしたサウンドは、大いなる宇宙へと飛躍する輝かしい未来をイメージさせて、なんとも希望を感じるんですよね。

そういう希望に満ちた幸せな未来を信じられた最後の時代が80年代だと思うんですよね。今となってはそれは「誤解された未来」であり、80年代を実体験していない人にとってはこのやたらと大仰な輝きを放つサウンド自体、時代錯誤でレトロフューチャーな感覚なのかもしれませんが…。

個人的には今年のベスト・メロハー作ですね。とはいえここで書いた文章に共鳴しない人は点数を真に受けないほうがいいかもしれませんが(笑)。【87点】








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MICHAEL ROMEO / WAR OF THE WORLDS, PT.1 [EXPLICIT]

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SYMPHONIY Xのギタリスト、マイケル・ロメオのソロ名義としては1994年の『THE DARK CHAPTER』以来となるアルバム。

マイケル・ロメオといえばシーン屈指のテクニカル・ギタリスト、『THE DARK CHAPTER』がそうであったようにギター・インストものであろうと勝手に思い込み、あまりマークしていなかったが、ほぼ全曲歌入りであると聞き、興味を持って聞いてみた。

そしたらこれがかなりナイスな仕上がり。個人的にはなんでこれをSYMPHONY Xでやらないの、というのが最初の感想だった。

H.G.ウェルズの科学小説『宇宙戦争』をテーマにしたコンセプト・アルバムの第1弾という、ロメオらしいちょっとオタク的なテーマ設定もあり、所々『す、スター・〇ォーズのサントラ?』みたいな印象の箇所もあるが(笑)、そのテーマの壮大さが音楽のスケール感に結び付いている。

イントロである#1のシンフォニックなオーケストレーションからして「そうそう、これこそ「SYMPHONY X」というバンド名に期待されているものでしょ!」と膝を叩いてしまった。

続く#2「Fear The Unknown」が美しいサビ・メロを備えたスピード・チューンという時点で既に傑作認定してしまいそう(笑)。

本作で歌っているリック・カステラーノなるシンガーの声はラッセル・アレン(SYMPHONY X)にそっくりで、ラッセルほどガナり立てないので聴きやすい。楽曲自体が近年のSYMPHONY Xよりメロディアスなので必然的にガナらず丁寧に歌っているということなのかもしれない。

しかし、SYMPHONY Xの初代ヴォーカリストだったロッド・タイラーも力量的にはともかくタイプ的にはラッセル・アレンと似たような声質だったし、マイケル・ロメオにとってはこういう声が「理想の声」なんでしょうかね。

ちなみにベースはBLACK LABEL SOCIETYのジョン・ディサルヴィオが、ドラムはTNTやRIOT、YNGWIE MALMSTEEN、ジェイムズ・ラブリエのソロなど数々のバンドでの活動実績があり、ジェイソン・ルロ(Dr)が体調を崩していた時期にSYMPHONY Xのツアーに代打で参加していた経験のあるジョン・マカルーソがプレイしている。

音楽性自体もSYMPHONY Xと同系統のヘヴィでネオクラ風味のあるプログレッシヴ・メタルを基本に、ダブステップのような新しい音楽の要素を取り入れた#4「F*cking Robot」(実はこの曲のヴォーカル・パートのメロディが一番耳に残った)や、#6「Believe」におけるSYMPHONY Xではあまり見られない明るめのメロディなどが、孤高の世界観を持っているがゆえに、ファン以外には単調に聞こえがちなサウンドに上手く起伏を作っている。

アルバムの終わりがややクライマックス感に欠けるのは続編が控えているからなんでしょうね。「PT.2」自体はもうほぼほぼ出来上がっているようですが、完成した本作をしっかり受け止めてからリリースするということなので(リアクションによっては多少アレンジなどを変えるつもりがある、ということでしょうか?)、すぐには出ないようです。

マイケル・ロメオとしては、通常のSYMPHONY Xのアルバムよりもオーケストレーションが派手にフィーチュアされているということで「ソロ・アルバム」にしたのかもしれませんが、これくらいならSYMPHONY X名義でリリースしても許容範囲というか、むしろ日本のファンなどは歓迎だったりするのではという気がするのですが…。

欧米ではSYMPHONY Xの「ヘヴィ・サイド」こそが評価されているということなんでしょうかねえ…。たしかに欧米で売れるようになったのはヘヴィさが目立つようになってからですが。

てか、これの日本盤が出ないってのが解せぬ。HR/HMはソロ名義のアルバムは売れない傾向があるとはいえ、このクオリティの音楽で日本盤が出ないのはもはや社会問題ではないでしょうか。【85点】





PRIMAL FEAR / APOCALYPSE

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もはやドイツを代表する正統派ヘヴィ・メタル/パワー・メタル・バンドと言っていいであろう、PRIMAL FEARの通算12枚目となるフル・アルバム。

前作『RULEBREAKER』(2016)からメンバー交代はなく、マグナス・カールソン、アレックス・バイロット、トム・ナウマンのトリプル・ギター体制で制作されている。

元々キャリアのあるメンバーによって結成されたバンドなので、デビュー作の時点からあらゆる面において高い水準に達していたバンドだが、ここ数作の充実ぶりは、もはや「安定感がある」などという、ベテランにありがちな形容ですまされるべきレベルではなく、特にここ3作については毎回「最高傑作なのでは?」と感じさせられているのだから舌を巻く。

事前にMVが公開されていた#4 “King Of Madness”や#8 “Hounds Of Justice”で今回も間違いのないアルバムを届けてくれそうだと予感していたが、その予感を上回るクオリティをアルバム全体として感じさせてくれるのだから、このバンドのポテンシャルは底が知れない。

個人的にはやはりイントロダクションである#1 “Apocalypse”に続く#2 “New Rise”が彼らの楽曲の中では必ずしも主流ではないメロディック・スピード・メタル然とした疾走曲なのがポイント高い。こうしてのっけから気分を上げてくれるアルバムはやはり印象がいい。

余談ながら海外(カナダ)のレビューサイトで、この”New Rise”が弱いのでオープニング曲を変えるべきだった、という意見を見かけ、世の中にはやはり色々な感性があるものだと感じさせられました。

その後も彼ららしいソリッドなメタル・ナンバーを核に、ややキャッチーな味わいの曲から、ドラマティックなバラード、エピカルな曲まで、正統派ヘヴィ・メタルという文脈の中で許される充分なバラエティがあり、そのいずれも高品質なのだから、自分のバンドでメイン・ソングライターをやっていたレベルのミュージシャンが複数いるバンドはやはり強い。

どうでもいいですが、8分におよぶエピック・チューン#10 “Eye Of The Storm”のイントロはHELLOWEENの”A Million To One”を思い出させますね。

デラックス・エディション収録の3曲のボーナス・トラックも、アルバム本編から外れた理由はなんとなく理解できるものの、それぞれ単体で充分に聴く価値があるクオリティの楽曲で、ファンであれば必携だろう。

また今回バラードの#6 “Supernova”が悲壮美に満ちていてとても良いのですが、これまた日本盤ボーナス・トラックである「オーケストラ・ヴァージョン」が原曲に輪をかけて素晴らしくて、こちらを本編に収録した方が良かったのでは、と思ってしまいました。

なお本作は本国ドイツのチャートで10位と、バンド史上初のTOP10ヒットを記録。特に話題性や新しさなどなくても、その質にちゃんと評価がついてきているというのが素晴らしいですね。【88点】





浜田麻里 / GRACIA

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2010年のアルバム、『AESTETICA』以降、「メタル回帰」を強めていた浜田麻里の、デビュー当時のレコード会社である古巣、ビクターエンタテインメントへの復帰第一弾アルバム。

いや、これはビックリ。正直ここまでガチなメタル路線で来るとは思わなかった。

これまでも高崎晃(G : LOUDNESS)をはじめ、日本のHR/HM系ミュージシャンが彼女のアルバムに参加することは珍しくなかったし、海外の凄腕ミュージシャンが参加することも少なくなかったが、海外のミュージシャンについては主にスタジオ・ミュージシャン系の人たちであることがほとんどだった。

しかし今回ゲスト参加しているミュージシャンのラインナップと来たら、ポール・ギルバート(G : MR. BIG)にビリー・シーン(B : MR.BIG, THE WINERY DOGS)、クリス・インペリテリ(G : IMPELLITTERI)、マイケル・ロメオ(G : SYMPHONY X)、クリス・ブロデリック(G : 元NEVERMORE, MEGADETH)、そしてデレク・シェリニアン(Key : 元DREAM THEATER, PLANET X, SONS OF APOLLO他)に、マルコ・ミネマン(Dr)といった恐るべき技巧派メタル・ミュージシャンが名前を連ねている。

そして本作はその名前から受ける期待を裏切らないテクニカルな高密度のHR/HMサウンドが展開されており、時にプログレッシヴ・メタルとしか形容できないパートが頻出、そのインストゥルメンタル・パートの緊張感とフィーチュア度の高さは、もはや女性ソロ・シンガーのアルバムとはとても思えない領域に(笑)。

特に若井望(DESTINIA)が作曲に関わった冒頭3曲は強烈。アグレッシヴ、テクニカル、ドラマティックの三拍子揃ったそのサウンドは、「浜田麻里はヘヴィ・メタル」だとわかっている人でさえ「ここまでやっちゃう?」と驚くこと間違いなし。

いや、1曲目「Black Rain」のソロ、ポール・ギルバートが弾いているんですが、やっぱりポールはメタル・ギタリストとして凄い人だわ、とあらためて思い知らされましたね。

メロディックな速い曲が好きな人(それは私です)にはマイケル・ロメオ(G)とビリー・シーン(B)という恐るべきカップリングが実現している#3「Orience」と、クリス・インペリテリ(G)とデレク・シェリニアン(Key)のソロ・バトルが聴ける#10「Dark Triad」という珠玉の名曲が用意されており、これらを聴かずに今年のメタルを語るわけにはいかないでしょう。

一方で#5~#8の中盤には歌謡系メロディアス・ハード路線の曲が集められており、これがまたいい感じに哀愁路線の曲ばかりでマイ琴線にジャストミート。

もちろん浜田麻里のヴォーカルは圧巻の一言で、50歳を超えてなお衰えるどころかますます冴え渡る高音は「今更そこまで誇示しなくても、もう誰も貴女の実力を疑う人なんていないんですから、もっと喉を大切にしてください」と諫めたくなってしまうような、偏執狂的とさえいえるヴォーカル・ワークを響かせている。

これは大ヒット曲「Return To Myself」が好きでファンになったような人は付いていけるのかしら…と余計な心配をしたくなるほどに力の入ったアルバムだが、実際これで久しぶりのオリコンTOP10入り(6位)を記録しているのだから、今の彼女を支えているファンというのは「そういう層」なのだろう。

私は80年代のアルバムと、2010年以降のアルバム以外はほとんど聴いていない、浜田麻里のファンとしてはニワカな単なるメタル好きですが、そんな私の感覚だと本作はアルバム単位で見た時に彼女の最高傑作ではないかと思います。グレイト!【89点】


▼「テクよりも味、というのは逃げ」と語る挑発的なインタビュー。読み応えあり。
浜田麻里が語る、音楽的快感を作品に求める理由「同じ自分で居続けるのが面白くない」(Real Sound)


ビクターはショート・バージョンとかケチくさいものではなくフル・バージョンを上げてほしい…。

VOLCANO / DARKER THAN BLACK

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2015年以降、それ以前の寡作ぶりはなんだったのかと思うほどにコンスタントなリリースを続け、もはや「7月の風物詩」というほどに(?)恒例化しているVOLCANOの、スタジオ・フル・アルバムとしては7作目となる作品。

VOLCANOはこれまで英単語ワンワードのアルバム・タイトルにこだわって(?)きていたが、本作は初めてセンテンスというか複数ワードによるフレーズのタイトルになっている。

『DARKER THAN BLACK』…10年くらい前にそんなタイトルのアニメがありましたね。もっとも(当然ながら)本作はそのアニメとは一切関係なく、「BLACK」は屍忌蛇の本名である「黒岩」とリンクしているそうですが(笑)。

これまで変わっているのはタイトルだけではなく、サウンドも過去作とは変わっている。セカンド「DAVI」以降、このバンドには良くも悪しくもいわゆる「ジャパメタ」っぽさがあったが、本作にはその色が薄く、いつになくエクストリーム・メタル色、あるいはハードコア色が強い。

#4「Great Crisis」などはブラック・メタルばりのブラスト・ビートがフィーチュアされているし、#8「Arena」や#9「Penetration」のヴォーカル・パートはまるでハードコアだ(といっても、アメリカのハードコアではなく、80年代ジャパコアっぽい所は世代ならではのご愛敬)。

制作時、屍忌蛇がTHE CROWNにハマっていたようで、その影響が出たのか(もっとも、本作は全然THE CROWNっぽくはない)、このバンドのメンバーが持つルーツのアグレッシヴな面にフォーカスされた作風である。

このサイト/ブログをある程度コンスタントにご覧いただいている方であればご存知の通り、私はメロディ重視派なので、そういう作風が必ずしも好みなわけではない。

しかしこのバンドの場合、歌メロをメロディックにしてしまうと、実は極めてジャパメタ的なセンスのバンドであることが浮き彫りになってしまうことがあるので(メンバーの大半はいわゆるジャパメタ世代なので仕方のないことですが)、その匙加減は意外とデリケート。

そして、こういうアグレッシヴな作風であればこそ屍忌蛇の、オールアドリブでさえメロディックに泣きまくるギター・ソロとのコントラストがより印象的に響くと言えなくもない。

元々VOLCANOの魅力というのはスラッシュ以降のモダンなアグレッションと70年代ハード・ロックをルーツに持つクラシックなメロディ・センスの絶妙な融合だったので、ある意味本作はこのバンドのコンセプトに最も忠実な作品なのかもしれない。

てか、じっくり時間をかけて構築してさえここまでメロディックなソロを弾けないギタリストがごまんといるというのに、このギター・ソロが全部アドリブだというのだから本当に舌を巻く。

彼について何も知らなければ、「きっとこの屍忌蛇という人は、大きな哀しみを抱えて生きている人に違いない…」と思う所なのですが、下記のようなインタビューを読んでしまうと、ねえ…(苦笑)。特に2番目。「屍忌蛇」の「蛇」ってコブラ、つまり股間のことだったんかい!

52歳ヘヴィメタル界の超問題児・屍忌蛇の“爆裂”インタビュー! 4歳で飲酒、歌舞伎町で暴動、ギターがなければただのクズ!?

「僕のセックスは五十二手、股間はコブラ」52歳ヘヴィメタル界の問題児・屍忌蛇の下半身武勇伝が激ヤバ!

「落ち武者の幽霊と晩酌したらウィキにも載ってる有名志士だった」ヘヴィメタル界の問題児・屍忌蛇のオカルト体験!


てか、そもそもなんでTOCANAなんて音楽サイトじゃない所で本作の発売記念インタビューをやっているのか、意味が分かりません(苦笑)。

まあ、このブログで本作をレビューしようと思った動機はこのインタビューを読んだことがきっかけだったので、そういう意味では意味はあったのかもしれませんが。【83点】



ちなみに、当サイトで91点をつけたVOLCANOの名作デビュー・アルバム、『VIOLENT』が今秋再発されるそうです。これは朗報ですね。