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STORMWARRIOR “NORSEMEN”(2019) アルバム・レビュー

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HELLOWEEN、RUNNING WILDを輩出したドイツ北部の都市ハンブルク出身のSTORMWARRIORによる、通算6作目のフル・アルバム。

約6年前にリリースされた前作、” THUNDER & STEELE”(2014)から、ドラマーに2009年まで在籍していたファルコ・レシェフトが復帰し、中心人物であるラーズ・ラムケ(Vo, G)ではない方のギタリストがビヨルン・ダイガー(元MAJESTY他)に交代している(実はベースのイェンツ・レオンハルトも2017年に一度脱退していたが、本作の制作に当たって復帰している)。

いや~カッコいい。これですよ、私が聴きたいメタルは。好き好き。

ドイツ出身でありながら、常に北欧ヴァイキングの世界観を描き続けていることと関係があるのか、北欧めいた哀愁を感じさせるメロディが勇壮かつドラマティックに突き進むサウンドにはヒロイズムを強く刺激され、胸を熱くしてヘドバンせざるを得ない。

メロディックで速いので、メロディック・パワー・メタルと呼んでもいいのだろうが、この音はやはりシンプルに「ヘヴィ・メタル」と呼びたいところだ。

基本線はデビュー以来何一つ変わっていないバンドではあるが、本作はアルバム全編に漲る緊張感と楽曲の完成度の両面において名盤”HEADING NORTHE”に匹敵するものがあり、一歩間違うと一本調子になってしまいそうだが、アルバム全体が50分とコンパクトにまとめられていることもあり、ダレることなく聴きとおすことができる。

Voがカイ・ハンセンにそっくり(たぶん意図的に真似している)なのをチャーム・ポイントと捉えられる人ばかりではないと思うので(笑)、もっと上手いシンガーが入ればもっと幅広い層にアピールできそうだが、この不器用なVoだからこそここまで音楽性を絞り込むことができているのかもしれない。

#8 “Shield Wall”なんて、モロにGAMMA RAY。と言うか、この曲に限らず随所でGAMMA RAYですが(笑)、自分が今でもこういう音が大好きなんだということをあらためて認識させてもらえました。

「ジャーマン・メタル」草創期の粗削りなエキサイトメントを21世紀の今日に伝えるこの力作が国内盤リリースなしとは残念な限り。ちなみにミックスとマスタリングはピート・シルーク(IRON SAVIOR)、アートワークのデザインはアンドレアス・マーシャルの手によるもの。【86点】






こういうギャロップ・ビートのメイデニックな曲もいいですね。

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BRITISH LION “THE BURNING” アルバム・レビュー

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IRON MAIDENの中心人物であるスティーヴ・ハリス(B)のソロ・プロジェクト、BRITISH LIONの2012年のデビュー・アルバムから約7年ぶりのセカンド・アルバム。

昨年に行なわれた来日公演はEXシアター六本木というハコは大きすぎてガラガラだったという噂だが、それはアルバムのリリースから6年経ってからという妙なタイミングのせいもあるだろうし、そもそもアルバム自体、評論家からの評価はともかく、熱心なIRON MAIDENファン以外に誰が聴いたのだろう? という感じで地味な印象は否めなかった。

本作を聴いて思うのはVoの声質が違うのでパッと聴きの印象は違えど、基本的には近年のIRON MAIDENのアルバムと大きく変わらないもので、楽曲によってはいかにもブルース・ディッキンソンが歌いそうなメロディも散見され、IRON MAIDENからドラマティックさやプログレッシヴな要素をそぎ落とすとこの音になりそう。

前作同様、一聴しての印象はやや地味だが、ヴォーカルのやや憂いのある歌声を生かすためかウエットな哀愁のメロディが多く聴かれ、個人的には意外と(?)楽しめた。#9 “Land Of The Perfect People”なんて単純に歌モノとしていい曲だな、と。

近年のIRON MAIDENにも言えるが、生っぽくオーガニックな音作りは個人的にはエッジに欠けてHR/HMとしては迫力不足だと感じるし、ヴォーカルも癖の強いブルース・ディッキンソンよりある意味聴きやすいのだが、その分インパクトに欠ける。

ソロ・プロジェクトでもこういう音楽をやっているということは、スティーヴ・ハリスのやりたいこと(あるいはできること)というのはやはりこういう音楽なのだろうし、そういう意味でIRON MAIDENでは意図的にエピカルな大作志向の、インスト・パートが多い曲を作っているということなのだろうが、個人的にはコンパクトな曲の方が楽しめるので、IRON MAIDENにもこれくらいヴォーカル・オリエンテッドな作風を期待したい(無理かな…)。【82点】



TYGERS OF PAN TANG “RITUAL” (2019) アルバム・レビュー

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2019年はNWOBHM40周年ということもあってか、ANGEL WITCHやDIAMOND HEADもニュー・アルバムをリリースし、プチNWOBHMリバイバルな年だったが、私がそういうNWOBHM出身バンドの新作で最も気に入ったものがこれ(他の2つも良かったです)。

後追い世代である私にとってTYGERS OF PAN TANGというバンドは「昔ジョン・サイクス(G)が在籍していた、変わった名前のバンド」以上でも以下でもなく、当時のアルバムを聴いても、NWOBHMならではのメタル・サウンドで、それなりにカッコいいとは思いつつ、それほど特筆すべき特徴を感じなかった。

そんな私が本作を聴くきっかけになったのはたまたまYouTubeで自動再生された本作収録の”White Lines”のMVで、その曲が意外とカッコよかったことで興味を持ち、アルバムを聴いてみることにした。

そしたらこれが大正解で、意外なほどロートル感や時代遅れ感のない、「NWOBHMの歴史の重み」云々を抜きにしても楽しめるメロディックなヘヴィ・メタル・サウンドが展開されており、アルバム全編に渡って楽しめた。

たしかにIRON MAIDENやDEF LEPPARDなどのメジャーになったバンドほどのオーラや個性は薄いものの、2004年から加入しているイタリア人シンガー、ジャコポ・メイレの歌う哀愁がかったメロディを中心に据えた、シンプルだがヘヴィ・メタルの基本に忠実なサウンドには、単なるノスタルジーを超えた普遍的魅力がある。

Amazon Musicでちょっと聴いてみた感じ前作もかなり良さげな感じで、やっぱり世の中にリリースされているいいアルバムを全てアンテナに引っ掛けるのは難しいとあらためて感じた今日この頃。【83点】






TUNGSTEN “WE WILL RISE” (2019) アルバム・レビュー

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SILVER MOUNTAINやYNGWIE MALMSTEEN’S RISING FORCE、HAMMERFALLなどの活動で知られ、現在はMANOWARのライブ・サポート・メンバーにもなっているスウェーデンのベテラン・ドラマー、アンダース・ヨハンソンが息子2人と始めたバンドのデビュー作。

アンダースは元々SILVER MOUNTAINやYNGWIE MALMSTEEN’S RISING FORCEでは弟のイェンス・ヨハンソン(Key)と一緒にバンドをやっていたし、イェンスとはTHE JOHANSON BROTHERSというそのまんまなユニットでプレイしていたりもしたので、今度は息子とのバンドということで、かなり血縁重視な人ですね(笑)。

まあ、アンダース(とイェンス)の父親はスウェーデンではかなり有名なジャズ・ピアニストということで、ヨハンソン家には家庭環境含めミュージシャンのDNAがあるのでしょう。

このTUNGSTENは元々2016年に、ニック(G)とカール(B/Key)の2人の息子から彼らが作った曲を聴かされ、自分が思いつかないようなモダンなセンスのメタル・サウンドに感銘を受け、VoにCLOUDSCAPE、PLANET ALLIANCE、FULLFORCEなどのプロジェクトで北欧メロディック・メタル・ファンには知られるマイク・アンダーソンを迎えてSTROKKURというバンドを結成したのが始まりだそう。

2017年にアルバム” VANTABLACK”をデジタルのみでリリースし、その後現在のバンド名を現在のものに改名して2015年に設立されたドイツの新興レーベル『Arising Empire』(日本のLOVEBITESの欧州における所属レーベルでもある)からリリースされたのが本作。

日本人がアンダース・ヨハンソンの名前に期待するメタル・サウンドというのはいわゆる様式美系正統派という日本でしか通用しない概念のメタル・サウンドであると思われるが、本作で展開されているのはRAMMSTEINやPAINといった欧州のインダストリアル・メタルからの影響が感じられるモダンなメタル・サウンド。

しかし、このバンドのユニークネスや魅力というのはそういうサウンドの目新しさ(そもそもインダストリアル・メタル自体、今となっては大して目新しくもない)ではなく、欧州フォーク・ミュージックからの影響を強く感じるヴォーカル・メロディで、このヴォーカル・メロディのインパクトはここ数年でも最大レベル。

私自身はいわゆる「様式美系正統派」な音を好む保守的なメタル・ファンですが、このバンドはそういう嗜好を超えた魅力があり、ヘヴィなエッジがちゃんと効いているにもかかわらず、語弊を恐れずにいえば非常にキャッチーで、ある意味ポップでさえある。

モダンなヘヴィ・サウンドとトラディショナルなフォーク・メロディの融合、これは新しい「メタルの未来」のひとつかも。2019年の年間ベストにこれ入れてもよかったな。

一方で、バンドのロゴデザインやアートワークが、欧州パワー・メタル・ファンにはなじみ深いアンドレアス・マーシャルによるものであることは個人的にニヤリとさせられますが、このサウンドが気に入るであろうイマドキの若者(?)には古臭く見えるのでは? というのは杞憂でしょうか。そういう意味ではそもそもアンダース・ヨハンソンの存在自体に古臭さが出てしまうのかもしれませんが(苦笑)。【88点】







CYHRA “NO HALOS IN HELL” アルバム・レビュー

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元AMARANTHEのジェイク・E(Vo)と、元IN FLAMESのイエスパー・ストロムブラード(G)の音楽的ビジョンが一致したことで2016年に誕生したCYHRAのセカンド・アルバム。

前作発表後、ピーター・イワース(B : 元IN FLAMES)が脱退、本作では(イエスパー以外の)もう一人のギタリストであるオウゲ・ヴァロヴィルタ(元SHINING)がベースをプレイしている。

メイン・コンポーザーの一人であるイエスパー・ストロムブラードは、相変わらずメンタル的に不安定なようで、前作”LETTERS TO MYSELF” (2017)発表後に行なわれた数十本のライブ活動からは早々に離脱してしまったが、脱退するわけではなく本作のアルバム制作にも全面的に関わっている。

本作も前作の路線を受け継ぎ、メランコリックでキャッチーなモダン・メタル路線がアルバム全編に渡って展開されており、前作を気に入った人であれば間違いなく本作も好きになるだろうし、初めて聴く人も惹きつけるだけの楽曲クオリティがある。

ジェイク・Eの、メタルを歌うに足るだけのパワーと声域を持ちながらも野暮ったさを感じさせないイマドキな歌声は「ポップ・メタル」を現代的にアップデートさせており、実は結構ゴリゴリしたリフやアグレッシヴなリズム、ガッツリ弾いているギター・ソロが導入されているにもかかわらず、非常に聴きやすく耳触りのいいサウンドに仕上げている。

我々が「イエスパー節」と認識しているリード・ギターのメロディから始まる#4 “I Am The One”や#8 “Kings Tonight”から、ピアノをバックに歌い上げるバラードの#7 “Lost In Time”まで、どの曲もコンパクトなのにドラマティックな印象を与える佳曲揃いで、中でも#6 “Dreams Gone Wrong”は、なぜこれでMVを作らなかったのかと思ってしまう出色のキラー・チューン。

この歌モノとしての楽曲の粒ぞろい度は、近年でいえばBEAST IN BLACKに匹敵するほどだが、BEAST IN BLACKだと「メタリックすぎる」「80年代っぽすぎる」と感じる人にとってはこのバンドの方がハマりやすいだろう。

いや、実際のところ今10代とか20代という若い人で、あまり過激でエクストリームなサウンドは求めていないけどメタルに興味がある、という人にとって最良の入り口になるのは「ポップだけどダサくない」このバンドなのではないだろうか。

大げさな言い方をすれば80年代にBON JOVIやEUROPEが「メタルの入口」として機能したような役割を彼らの音楽に期待できるというか。世の中的な人気度合いではなく、J-POP的なわかりやすい曲しか聴いたことがない人でもスッと入ってくるメロディと歌唱を備えているという意味で。めっちゃ良いです。【88点】