FC2ブログ

QUEENSRYCHE "OPERATION : LIVECRIME" DVDレビュー

queensryche_dvd03.jpg

新型コロナウイルスによる外出自粛を受け、この週末に観たDVDその2(その1は前エントリーをご覧ください)。

HR/HM史上に残るコンセプト・アルバムの傑作として知られる"OPERATION : MINDCRIME"(1988)を完全再現した公演を収録したライブ作品。

この完全再現は"OPERATION : MINDCRIME"のツアーではなく、次作"EMPIRE"(1990)のツアー『BUILDING EMPIRES TOUR』で行なわれており、"EMPIRE"が全米7位、300万枚に及ぶ大ヒットを記録していたタイミングだけに、会場の規模も大きく、かなりの予算が投じられていたため、こういう(予算がかかる)試みをするのに絶好のタイミングだったと言えるだろう。

アニメや実写などの映像を使用してアルバムのストーリーと世界観を表現するステージは明らかにPINK FLOYDの"THE WALL"を意識(というか模倣?)したものと思われ、スクリーンを使用してのコンセプト表現はDREAM THEATERなど、後続のバンドもこのやり方を踏襲していると言える。

HR/HMにおけるコンセプト・アルバム自体はその後ありふれたものになり、中にはコンセプト・アルバムしかリリースしていないようなバンドさえ存在する始末だが、ライブでこの規模の表現(パフォーマンスのクオリティ含めて)を行なえたHR/HMバンドは彼らのこのツアーだけと言っても過言ではなく、そういう意味で本作はHR/HM史上不朽の価値を持つと言っても過言ではないだろう。

当然、『BURRN!』誌の映像作品レビューでも星10個の満点を得ており、Amazonのレビューなどを見ても絶賛のレビューが並ぶ。もちろん私もその高評価の理由は理解できる。

ただ、個人的にこの映像作品を見て100%満足できているかというとそうでもなかったり。

映像とパフォーマンスの連動、と言っても、どっちを見ていいのかわからん、というが同時に見られるほど器用じゃない、というのが正直な所だし、実際の所、映像自体はさして面白いものではない。

そういう意味ではパフォーマンスを見るべきなのだろうし、ここで展開されているパフォーマンスは確かに素晴らしい。QUEENSRYCHEというとメタル界の知性派代表、みたいなイメージがあるが、非常にアクティブで、単純にメタル・バンドとしてカッコいいパフォーマンスだ。そして先述した通り、ステージ演出も売れているバンドならではの充実したものである。

ただ、パフォーマンス記録作品としての完成度を優先したためだろうが、かなり大きな会場でプレイしているにもかかわらず、演奏中にオーディエンスの存在感が皆無で、臨場感に欠けるのが個人的にはライブ映像に期待しているものとは違うのだ。

演奏や歌唱は完璧だが(たぶん、多少修正もされているのだろう)、それだけにむしろライブというよりはライブ映像を素材にしたミュージックビデオのように感じられてしまう。

まあ、それはそれで作品としての価値があると言えるが、それなら映画のように完全なストーリー作品にしてほしかったというか(もっとも、話自体はやや陳腐なストーリーなので本格的に俳優使って映像化したらB級映画にしかならない気もするが…)。

そういう意味では、スタジオ盤の"OPERATION : MINDCRIME"を歌詞カードを読みながら聴く、というのがこの作品世界に浸る上ではベストだな、というのが個人的な意見です。

どうでもいいですが、先のエントリーで触れたFIREHOUSEといい、彼らといい、別にルックスが売りのバンドではないにもかかわらず、ちゃんと見た目含めて華があってカッコいいんですよね、この時期は。さすがはアメリカのメジャー・レーベル所属で売れたバンドというか。

そういう意味で、やっぱり今のHR/HMの人気低迷の理由って高齢化なんじゃないの、って気がします(苦笑)。割と真面目に。やっぱり若いってそれだけで華なんですよ。



スポンサーサイト



FIREHOUSE "ROCK ON THE ROAD" DVDレビュー

firehouse_DVD.jpg

新型コロナウイルスによる外出自粛を受け、この週末は久々に自宅にあるHR/HMのDVDをいくつか観ていました。

最近はYouTubeで手軽に色々な映像を観ることができるため、わざわざDVDをトレイに乗せることも少なくなっていましたが、せっかく買ったのだから複数回観ないともったいないな、という貧乏性的な考えですね(笑)。

本作はFIREHOUSEの唯一のオフィシャル映像作品で、1991年10月にVHSとレーザー・ディスクでリリースされたものが2008年にDVDで再発されたもの。

内容は1991年5月にクラブチッタで行なわれたショウケース・ライブ(プロモーション来日の際に、『BURRN!』の読者や『POWER ROCK TODAY』のリスナーで行なわれた募集に当選した人たちが無料で招待されるという、近年HR/HM系アーティストではまず考えられない太っ腹な企画)を収録したもの。

彼らはこのライブの翌月、1991年6月にシングル"Love Of A Lifetime"が全米5位の大ヒットを記録してブレイク、そういう意味ではブレイク直前の瞬間を記録したドキュメンタリーである。

ブレイク前とはいえ、既にバンドのパフォーマンスは完全に人気バンドのそれで、歌唱、演奏、アクティブなステージ・アクションと、メジャー感にあふれたパフォーマンスを楽しむことができる。

C.J.スネアの伸びるハイトーンは冴えわたっているし、あまりギター・ヒーロー的なイメージのないビル・レヴァティのギター・プレイもアルバムで聴く以上にエッジが効いており、ドラムのマイケル・フォスターのパワフルなプレイとショウマンシップも素晴らしい。

ただ、この時代の映像作品にありがちなのだが、数曲ごとにメンバーへのインタビューやオフショット映像などがインサートされており、MV集などであればともかく、ライブでは流れが断ち切られてしまってショウに没入できないのが残念。

とはいえ初期のライブをこの画質(4K時代の今見ると貧弱な画質だし、画角も4:3だが)で楽しめるという意味では貴重だし、音質は悪くない。

歌っている歌詞全てに日本語訳が付いているのは時代を感じさせるが、新人バンドのショウケース・ギグとは思えないほどオーディエンスは盛り上がっており、当時この場にいた人たちはきっと「間違いなくこのバンドは成功する」という確信を得たであろう勢いのあるライブがパッケージされている。

そして余談になるが、先述した通り、本作にはインタビュー映像が随所に挿入されており、自分たちの音楽に対して以下のような発言が記録されている。

「俺たちの音楽は聴けばすぐわかると思う。ギターもボーカルもすごく特徴があるからね」

「俺たちは見かけのイメージじゃなく、音楽で勝負してる」

「ジャンルの幅も広い。バラードからハードな曲までこなす」

「言葉で説明するより、聴いてもらった方が早い」

「ライヴを見れば、俺たちの音楽の本質がわかると思う」

「俺たちがやってるのはいわゆるロックンロールだ」

「小細工はいらないんだ。ビジュアルやイメージなんて関係ない。4人の男が集まってロックンロールをやってるだけさ」

「俺たちの音楽はスラッシュでもポップスでもメタルでもない。ジャンルの枠を超えてるが、あえて言うなら『ひたむきな音楽』ってところさ」

「色々な要素が混ざってる。それが唯一無二のファイヤーハウスさ」

こういった発言は、近年はともかく、80年代、HR/HMがメインストリームだった時代の残り香が残っていた90年代半ばくらいまではよく目にする紋切り型のインタビュー文言で、「唯一無二のファイヤーハウスさ」の箇所を他のバンドに入れ替えても成立してしまう所が滑稽ではある。

そもそもFIREHOUSEは間違いなく良い曲を良い演奏でプレイする良いバンドながら、個性的とは言い難いし、音楽性の幅は決して広くない(それは焦点が絞れているということで、必ずしも悪いことではない)と思うんですが、その辺やはり当事者は客観的になれないということなのか、「そういう風に思ってもらいたい」というだけのいわば心意気なのか。

ただ、私がこういう受け答えを陳腐で滑稽だと感じるのは、私もなんだかんだで80年代はリアルタイムで体験していない、むしろ世代的にはグランジ/オルタナティブ世代で、HR/HMに対して(愛しつつも)斜に構えた見方をしているからというだけで、ガチ80'S世代の人にとっては納得感のある発言なのでしょうか。



MOON REVERIE “MOON REVERIE” アルバム・レビュー

moonreverie01.jpg

ウリ・ジョン・ロート、キー・マルセロ(元EUROPE)、ヴィニー・ムーア(UFO)、T.M.スティーヴンス、グラハム・オリヴァー(元SAXON)らのサポート・ギタリストを務めてきたことでマニアには知られるイタリア人ギタリスト、ルカ・ポマ率いるバンドのデビュー・アルバム。

いや~、これは清々しいまでにイングヴェイですね(笑)。このバンドの音を聴くと、我が国が誇るイングヴェイ・フォロワーである(イヤミではなく、彼らは間違いなく世界トップクラスのイングヴェイ・フォロワーだと思います)島紀史(CONCERTO MOON)、ケリー・サイモン(BLIND FAITH)、太田カツ(ARK STORM)などは個性が強い方だな、などと思えてしまうほど(笑)。

ディスクユニオンの宣伝文句だと「『TRILOGY』期のイングヴェイを思わせる」と表現されているが、より正確に言えば『TRILOGY』から『ECLIPSE』までの3作をミックスした感じだろうか。

Keyの使い方がイェンス・ヨハンソン的というよりはマッツ・オラウソン的であるのと、Voの線が細めなため、個人的な印象としてはヨラン・エドマン在籍時のサウンドに近い(アルバムのラストを組曲形式のインスト曲で締める辺りは”TRILOGY”的ですが)。

アレンジや歌メロ運びで「おや、この曲はモロにアレでは…?」などと思わせてしまうあたりは、近年めっきり名前を聞かなくなってしまったリチャード・アンダーソンが一時期乱発していた作品群を思わせるが、あくまでギター・オリエンテッドであるという点でこちらの方が「80年代のイングヴェイ度」は高い。

こう書くと「また無個性なフォロワーが出てきたか」くらいにあしらわれてしまいそうだが、何しろ近年の御大があのザマだけに、こういうピュアなネオ・クラシカル・サウンドに飢えている人にとっては久々の大当たりなのではないか。

もしイングヴェイ自身が本作の楽曲をクリエイトしたのだとしたら、多くのファンが「ついに目を覚ましてくれたか!」と感涙にむせぶに違いない(笑)。

#5”Eyes”みたいなキャッチーな曲はイングヴェイはもう一生やらないんでしょうねえ…。

オリジナリティの欠如に目くじらを立てず、「俺は80年代のイングヴェイみたいな音が聴きたいんだよ!」という人には間違いなくお勧めできる、ネオクラ様式美におけるなかなかの逸品です。【85点】


このMVを観ると、ヴォーカリストは堂々としていないとカッコ悪い、ということがよくわかりますね(苦笑)。



SERENITY “THE LAST KNIGHT” アルバム・レビュー

serenity07.jpg

中欧オーストリアのシンフォニック・パワー・メタル・バンド、SERENITYの通算7作目となるフル・アルバム。

2011年の3rd、”DEATH & LEGACY”から、(主に欧州の)歴史をテーマにした歌詞がメインになり、前々作である5th “CODEX ATLANTICUS”(2016)、前作”LIONHEART”(2017)はそれぞれレオナルド・ダ・ヴィンチ、リチャード獅子心王をモチーフにしたコンセプト・アルバムに仕上がっていた。

本作もその流れを受け、欧州随一の名家と呼ばれるハプスブルク家隆盛の礎を築き、中世最後の騎士と称えられる神聖ローマ帝国皇帝マクシミリアンI世の生涯を描くコンセプト・アルバムとなっている。

元々KAMELOTとRHAPSODY OF FIREの中道を行くようなシンフォニック・パワー・メタル・サウンドが特徴のバンドで、本作も基本線は変わっていない。

ゲオルグ・ノイハウザー(Vo)のマイルドな歌声もあってKAMELOTやRHAPSODY OF FIREに比べると重厚になりすぎない音像はもはやこのバンドならではの個性で、このバンドならではの優美と勇壮のバランスが一番好みだ、という人もきっといるに違いない。

強いて言うなら、前作までに比べるとややシンフォニックな装飾がやや控えめになり、骨太なエッジが強調されている観があり、所属する『Napalm Records』企画の漢メタル(死語?)プロジェクトWARKINGSにゲオルグが参加した影響だろうか、などと思ったり。

ただ、私の場合どちらかというと彼らの欧州風味満載なシンフォ・アレンジに悶絶(死語?)してきたタイプなので、それが控えめな本作については「やや薄味」な印象を抱いてしまったというのが正直な感想。

特にアルバムのエンディングがややあっさりしている(あくまで彼らにしては、だが)のが、コンセプト・アルバムとしてはクライマックスの盛り上げ不足という感じでやや物足りない。

とはいえ過去作と比較しなければ充分にクオリティの高いシンフォニック・パワー・メタル・アルバムであることは間違いなく、この手の音楽の主要なマーケットであるドイツで前々作99位、前作29位、そして本作は25位と、着実に支持を高めているのは、その質を証明していると言っても過言ではないだろう。【82点】







ALLEN / OLZON “WORLDS APART” アルバム・レビュー

allenolzon01.jpg

SYMPHONY XやADRENALINE MOBの活動で知られるラッセル・アレンと、元NIGHTWISHで、最近ではヤニ・リマタイネン(G : 元SONATA ARCTICA)とのTHE DARK ELEMENTでも歌声を聴かせてくれたアネット・オルゾンによる『Frontiers Music』お得意のコラボレーション・プロジェクトのデビュー作。

デビュー作とはいえ、本作のソングライティングとプロデュース、そしてギター、ベース、キーボードの演奏は全てマグナス・カールソン(元LAST TRIBE, 現PRIMAL FEAR)によるもので、そう聞くと察しのいい人はこれがラッセル・アレンとヨルン・ランデによるALLEN / LANDEの続編であることに気づくかもしれない。

実際『Frontiers Music』からのステートメントによると、ALLEN / LANDEがマグナス・カールソンからティモ・トルキのプロデュースにスイッチして途絶えた後、マグナスが復帰するにあたって、(ヨルン・ランデに代わって)アネット・オルゾンを加えるというエキサイティングな新しいひねりを加えた、とあり、これがALLEN / LANDEと同じフォーマットで制作されていることが肯定されていた。

実際、音楽の方向性はまさしくALLEN / LANDEそのもので、欧州的な叙情性豊かなメロディと、程よいドラマティックさを備えたメロディアス・ハード(というには結構メタリックだったりするのだが)で、私のような欧州メロディック・メタルのファンであれば非常に心地よく聴くことができる。

ラッセル・アレンとアネット・オルゾンのマッチングも良く、(特にメロウな歌い方をした際に)似通ってしまいがちだったヨルン・ランデよりも「共演する意味」が見えやすい、メリハリの効いたコラボレーションになっている。

かつて、『Frontiers Music』オリジナル企画の半分以上を作曲していたのではないか、というマグナス・カールソンだったが、今はアレッサンドロ・デル・ヴェッキオ(EDGE OF FOREVER)やシモーネ・ムラローニ(DGM)といった新たなエースが育ったことで負担が減ったのが功を奏しているのか、一時期のマンネリを脱して作曲にフレッシュさが回復しているのも嬉しいポイント。

ALLEN / LANDEやKISKE / SOMERVILLEといった『Fronters Music』の企画プロジェクトのファンは勿論、広くメロディックなHR/HMが好きな人にお薦めできるクオリティのアルバム。【85点】