KREATOR / GODS OF VIOLENCE

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2013年のLOUD PARKにおける恐るべきカリズマティックなパフォーマンス、そしてそれによって生み出されたもはや「サークル」とは呼べない、アメーバ状のカオティックなピットが今もなお鮮烈に思い出されるKREATORの通算14作目となる5年ぶりのニュー・アルバム。

WALTARIにも在籍するフィンランド人ギタリスト、サミ・ウリ・シルニヨ加入後のKREATORのアルバムというのはいずれも秀逸なスラッシュ・メタル・アルバムで、しかも作を追うごとに私のようなメロディック・メタルのファンも無視することができないメロディとドラマ性が強化されており、基本的にスラッシュ・メタルのアルバムはめったに取り上げない当ブログでも扱うことにした。

海外でも現在の彼らのスタイルは「スラッシュ・メタル+イエテボリ・スタイル」と形容されており、「イエテボリ・スタイル」というのは要はスウェーデンのイエテボリ出身のIN FLAMESやDARK TRANQUILLITYに代表されるメロディック・デス・メタルのことだが、KREATORらしいソリッドなスラッシュ・サウンドにメロディックなリード・ギターが絡むそのスタイルは、スラッシュ・メタルのファンだけに独占させるにはもったいないものである。

前作「PHANTOM ANTICHRIST」に引き続き、売れっ子プロデューサー、イェンス・ボグレンを迎えて制作された本作は前作以上にドラマ性を強化した作風で、そのドラマ性の強化が決して軟弱さにつながらず、むしろEvilさの強化につながっているあたりが素晴らしい。これぞブルータルなアグレッションとそれを活かすメロディの理想的マリアージュ。

私は良い音楽であれば「メタルらしさ」という観念的なことにはこだわらないし、ましてや「メタルらしさ」と「Evilであること」は特に関係ないと考えているクチだが、本作を聴くと、「このEvilさ…これぞメタルだぜ」などと思ってしまう。

正直、ここまでメロディックになってくると、普通のヴォーカル・メロディを乗っけられるんじゃないの? と思ってしまうが、それはメロデスに「ノーマル・ヴォイスで歌った方がいいんじゃないの?」というのと同じくらい野暮なことだろう。このバンドの最大の個性がミレ・ペトロッツァ(Vo)のアジテーションの如き苛烈なシャウト・ヴォーカルでることは明らかなのだから。

前作「PHANTOM ANTICHRIST」には「Victory Will Come」という年間ベスト・チューン級の名曲があったが、本作のタイトル曲もそれに準ずるカッコよさ。それ以外の楽曲も一部の隙とてなく、本編ラストの「Death Becomes My Light」のドラマティックさといったら、私のようなメロディック・メタル・ファンの琴線に触れまくりである。

SLAYERが「帝王」と呼ばれるなら、KREATORは「邪神」そのもの。当代最強のメタル・バンドとはこのバンドなのではないか、と思わせる傑作である。ドイツのナショナル・チャートではついにNo.1に輝くなど、デビューから30年以上の時を経て、ドイツが生んだ狂気の邪神は遂に至尊の地位へと上り詰めた。【87点】

◆「Gods Of Violence」のMV


◆「Satan Is Real」のMV


◆「Totalitarian Terror」のMV


◆「Fallen Brother」のMV


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FIREWIND / IMMORTALS

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2013年のアポロ・パパサナシオ(Vo)脱退後、ADAGIOのケリー・サンダウン・カーペンターをゲスト・シンガーに迎えてライブなどは行なったものの、その後開店休業状態が続いていたFIREWINDの約5年ぶりとなるニュー・アルバム。

所属元であった「Century Media」が2015年に「Sony Music Germany」に買収されたためか、日本盤はソニー・ミュージックからのリリースとなっている。

本作で新たなヴォーカリストとして迎えられたのは、07年のツアー時、家庭の事情で参加できなかったアポロ・パパサナシオに代わってゲスト・シンガーを務めていたへニング・バッセ(元METALLIUM)で、過去にジョイントしたことがあるという意味では順当な人選といえる。

本作の原型は、2009年にガス・Gが本作のプロデューサーであるデニス・ワード(PINK CREAM 69)と、ギリシャ戦記をテーマにしたメロディック・パワー・メタルをプレイするために立ち上げたプロジェクトで、その後ガス・GがOZZY OSBOURNEのギタリストに抜擢されたこともあって棚上げされていたマテリアルだという。

そういう、元々FIREWINDとして作曲が始まったわけではない、という事情が大きいのか、デニス・ワードが、このバンドにとって初の外部プロデューサーを迎えたことが大きいのか、もちろんヴォーカリストの交替も大きいのか、本作はこれまでのFIREWINDの作品とは一線を画する、メロディック・パワー・メタル色の強い作品に仕上がっている。

本作発表前にガス・Gがソロ・アルバムを制作、リリースしていたこともあってか、本作については「俺自身のニーズを必ずしも満たさなくてもいいから、ファンを満足させたいと思ったんだ」とインタビューで語っている。

私自身はこのバンドに必ずしもメロディック・パワー・メタルを求めていたわけでもないのだが、このバンドがプレイしていた王道感のあるHR/HMというのは、必ずしも商業的には王道ではなく、パワー・メタルのほうが市場のニーズがある、というのは事実だろう。

何しろアルバムのオープニング・トラックである「Hands Of Time」という曲名を見て、「なんだかSTRATOVARIUSみたいだな」と思って再生ボタンを押したら、モロにSTRATOVARIUSなイントロでちょっと笑ってしまいました(笑)。

新ヴォーカリストであるへニング・バッセの時にロブ・ロック(IMPELLITTERI)や森川之雄(ANTHEM)を彷彿させるアツい歌声も、こういうパワー・メタルなスタイルにマッチしている(個人的にはちょっと暑苦しさも感じるけど/笑)。

また、本作はガス・Gの出身地であるギリシャの古代戦史という、ギリシャ人にとって「とっておき」のネタをテーマにしたコンセプト・アルバムとなっており、そういう意味でも自らのアイデンティティを託した力作と言えるだろう(とは言ってもガス・Gは所詮ギター小僧、必ずしも自国の歴史に詳しいわけではなく、実際に歌詞テーマを掘り下げたのはデニス・ワードだったそうだが)。

個人的にはこういう母国の歴史をテーマにした作品を作るならドイツ人であるへニング・バッセに歌わせるのではなく、同じギリシャ人だったアポロ・パパサナシオがいるうちに作るべきだったんじゃないの、というツッコミもしたいし、パワー・メタル・バンドは掃いて捨てるほどいるのに対して、FIREWINDのような「ハード・ロック」の要素を強く宿したバンドは昨今貴重だったので、この「方向転換」を必ずしも手放しで絶賛できない思いもある。

ただ、それでも凡百のモダンなパワー・メタル・バンドに比べると、80年代以前のHR/HMの滋味は強く感じられ、ミドルテンポの楽曲やバラードにも説得力があるし、ガス・Gの古典的なギター・ヒーロー然としたソロ・ワークは流石としか言いようがなく、基本的にパワー・メタルが好きなこともあって、彼らのカタログの中で過去最高級の満足度を感じることができたというのも事実。

3月にはソロとして来日するガス・G(へニング・バッセも同行する)だが、この熱いサウンドはLOUD PARKなど大きな会場で聴きたいものである。

どうでもいいですが、タイトルの「IMMORTALS」は、日本盤タイトルである「不滅神話」みたいなニュアンスではなく、ギリシャに遠征してきたアケメネス朝ペルシアの中核をなす精鋭部隊だった「アタナトイ(不死隊)」のことだと思うのですが。【86点】

◆本作収録「Ode To Leonidas」のMV


◆本作収録「Hands Of Time」のOfficial Audio




陰陽座 / 迦陵頻伽

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唐突に重い話で恐縮ですが、今年、私の母が癌で亡くなったんです。

母の癌が発見された年にリリースされたのが、彼らのアルバム史上ある意味最もシリアスでダークと言ってもいい『鬼子神』でした。

『鬼子母神』は年末にリリースされており、年末年始、実家に帰って親と顔を合わせている時期にヘビロテしていたので、実家の風景と結びついて印象付けられています。

そして母が亡くなった今年にリリースされたのがこの『迦陵頻伽』。

迦陵頻伽とは、死後の世界である極楽浄土に住むとされる、美しい声を持つ上半身が人で下半身が鳥という、仏教における想像上の生物の名前。

そして彼らの13枚目のアルバムにして、13曲入り。これはどちらかというと西洋的な感覚ですが、13という数字も不吉な「忌み数」。

さらに、リーダー・トラックの曲名は「愛する者よ、死に候え」。

まるでこのバンドが私の母の死を見越していたかのようで、これはなかなか偶然にしては出来過ぎというか何というか。いや、偶然なんですけどね。

まあそんなわけで本作が、そして陰陽座というバンドが自分の中で特別な存在になっていくのを強く感じるわけですが、そんなことはこの文章をお読みになる方々にとってはどうでもいいこと。

本作のオープニングはタイトル・トラックである「迦陵頻伽」。期待感を高める神秘的なイントロから始まるこの曲は、勢いのある曲から始まる曲が多いHR/HMアルバムのオープニングとしては異色な、彼らとしても新境地な曲だが、素晴らしいスケール感を感じさせる名曲。何気にアルバム・タイトルがそのまま楽曲の名前になっている例は初めてかも。

その後、彼らの王道チューンというべき正統的HMナンバー#2、彼らなりのシンフォニック・メタル・チューン#3、和音階を隠し味的に織り交ぜつつキャッチーなメタル・チューンに仕上げた#4と、往年のファンの溜飲を下げる楽曲を取り揃えつつ、インダストリアル・スラッシュ的なギター・リフを持つ#5、オールド・スクールというかクラシックという趣のハード・ロック・チューン#6、ギャグかと思うほどディスコティックな#7と、バラエティも充分。

その#7「轆轤首(ろくろくび)」は4th『鳳翼麟瞳』収録の「飛頭蛮(ろくろくび)」とストーリー的なつながりがある、一種のアンサー・ソングになっていたりするのもファンにとっては楽しい。

定番の忍法帖ソング#8「氷牙忍法帖」は6th『臥龍點睛』収録の「蛟龍の巫女」を思わせるピュアなメロディック・スピード・メタル・チューンでこれまた素晴らしい。

彼らがアルバムに一曲は収めてくるドラマティックな長尺曲(といっても今回は長さ自体は7分程度と控えめだが)#9から終盤シリアスに盛り上がっていくアルバムの流れも相変わらずよく考えられており、哀しきバラードの#11から、パチスロ『バジリスク~甲賀忍法帖~III』主題歌であり、本作のリーダー・トラックといって過言ではないであろう#12「愛する者よ、死に候え」(リフがANGRA「Carry On」風)はまさにクライマックスといえるだろう。

こうしてほとんど全曲触れたくなってしまうほど充実した楽曲揃いであるのはこれまでも同様なのだが、本作を聴き終えて一番印象に残るのは、瞬火(B, Vo)にとっての迦陵頻伽、黒猫(Vo)のさらに表現力を増した歌声であり、その浜田麻里の正統的な後継者と呼ぶにふさわしい歌唱が、本作をして陰陽座史上最もヴォーカル・オリエンテッドなアルバムという印象に仕立てている。【86点】

◆「愛する者よ、死に候え」のMV


ETERNAL IDOL / THE UNREVEALED SECRET

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先日、長年在籍したRHAPSODY OF FIREからの電撃的な脱退でファンを驚かせたファビオ・リオーネ(Vo)が参加するプロジェクト(バンド?)のデビュー・アルバム。

「ETERNAL IDOL」といえばトニー・マーティンがヴォーカルを務めていた時期のBLACK SABBATHの名盤タイトル。ファビオみたいなイケボ・シンガーがああいう様式美サウンドを歌い上げるのだとしたらこれは期待できるぞ、と思っていましたが、残念ながらそういう路線のサウンドではありませんでした。

そもそも本プロジェクトにおいてはファビオ・リオーネだけがヴォーカルを務めているわけではなく、ジオルジア・コルレオーリという弱冠21歳の女性シンガーとの男女デュオ・スタイルの編成となっている。

ちなみに本プロジェクトの他のメンバーは、ジオルジア・コルレオーニが現在所属しているHOLLOW HAZEの現メンバーであるカミーロ・コルレオーリ(Dr)と元メンバーであるニック・サヴィオ(G, Key)、そしてSECRET SPHEREやHELL IN THE CLUBで活動するアンドレア・ブラットという顔ぶれ。

プロデュースはDGMのシモーネ・ムラローニ(G)が務めており、あらゆる意味で「純イタリアン・メタル」な人脈によって制作されているといえよう。

ファビオ・リオーネはHOLLOW HAZEの『COUNTDOWN TO REVENGE』(2013)にゲスト参加しており、その辺が本プロジェクトの発端になったのかもしれない。

男女デュオによるメタル、というと真っ先に思い浮かぶのは同じイタリアの人気バンド、LACUNA COILなわけだが、本作の音楽性にはLACUNA COILのようなオルタナティヴ・メタルの成分は含まれていない。

ただ、LACUNA COILのルーツのひとつであるゴシック的な要素は本プロジェクトにかなり明確に息づいており、「ゴシック風味のメロディック・メタル」というのが本作をわかりやすく説明するときのキーワードだろう。

楽曲はニック・サヴィオが担当し、ヴォーカル・ラインはファビオ・リオーネが作るというのが本作の基本的な作曲スタイルのようで、そういう意味でファビオ・リオーネのメロディ・メーカーとしての才能を証明するアルバムと言える。

本作のリリース元はイタリアの大手HR/HMおよびクラシック・ロック・レーベルの『Frontiers Records』であり、同レーベルの特色である楽曲、演奏、サウンド・プロダクションなどの平均点が高い「手堅さ」は本作でも強く感じられ、トータルのクオリティは高くまとまっている一方、同じく同レーベルの特徴である突き抜けた何かが感じられないという問題もまた本作には存在している。

楽曲自体は結構ドラマティックな割にスケール感に欠け、全体的にちょっと覇気が足りない印象を受けてしまったのは事実。「インパクトには欠けるがクオリティは高い」って言葉はきっと本人たちにとっては褒め言葉に聞こえないでしょうねえ…。

ただ、自分で歌メロを書いているだけあって、ファビオ・リオーネの歌声は伸びやかに響いており、彼の歌声のファンであれば聴いておくべき作品だと思います。【81点】

◆本作収録「Another Night Comes」のMV


◆本作収録「Awaken In Orion」のMV


HAMMERFALL / BUILT TO LUST

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LOUD PARK 15で約10年ぶりとなる久々の来日を果たした彼らの、「Napalm Records」移籍第一弾となる、通算10作目のオリジナル・アルバム(ライヴ盤やカヴァー・アルバムなどを除く)。

前作発表後、3rd「RENEGADE」以来このバンドのドラマーだったアンダース・ヨハンソン(元SILVER MOUNTAIN~YNGWIE MALMSTEEN’S RISING FORCE)が(メンバーにとっては)何の前触れもなく脱退し、STORMWINDなどの活動で知られるデヴィッド・ウォリンが加入している。

原点回帰的な印象のあった(と言っても彼らは大きな路線変更をしたことはないが)前作「(r)EVOLUTION」が、2006年の「THRESHOLD」以来となる母国スウェーデンでのチャートNo.1アルバムとなり(もっともその後のアルバムも2位なのだが)、欧州最大のマーケットであるドイツで過去最高となる4位を記録したことに気を良くしたのか、前作に引き続きフレドリック・ノルドストロームをプロデューサーに迎え、アンドレアス・マーシャルによるアートワークを擁した、デビュー当初を思わせるピュア・パワー・メタル路線のアルバムに仕上がっている。

このバンドの得意とするアンセム・タイプの「ハンマー・ソング」、#2「Hammer High」や、哀愁バラードの#5「Twilight Princess」など、彼らに期待される楽曲はキッチリ押さえつつも、全体的に彼らにしてはアップテンポなパートの多いソリッドな作風となっており、この作風を実現する上では新加入のデヴィッド・ウォリンの貢献は大きい。

特に#4「Dethrone And Defy」と#8「The Star Of Home」の2曲は彼らにしては珍しいほどストレートに疾駆するナンバーとなっており、メロディック・スピード・メタル・ファンに力強くオススメできる楽曲。特に前者のギター・ソロはあまりにも「お約束」な構成ながら、それがまた気持ちよくてたまらない(笑)。

以前所属していた「Nuclear Blast」に比べると企業規模が小さく、プロモーションの規模も小さくならざるをえないだろう「Napalm」からのリリースとなったためか、本国スウェーデンのチャートでは6位と、ここ15年でワーストの振るわないチャート成績になっているが、個人的には前作に勝るとも劣らぬ好ピュア・メタル・アルバムに仕上がっていると思う。

なお、日本盤の初回限定盤に付属しているライブDVD「LIVE AT MASTERS OF ROCK 2015」は、LOUD PARK 15のセットリストに近いので、あの場にいた人は思い出が蘇るだろうし、目撃できなかった人には疑似体験できる映像作品なので、通常盤との価格差の小ささを考えればオススメ度が高い。【85点】。

◆本作のリーダー・トラック「Hammer High」のMV

イントロが完全に「Over The Hills And Far Away」(GARY MOORE)…。