UNLEASH THE ARCHERS / APEX

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『MAD MAX』の世界観を思わせる(パロディ?)「Tonight We Ride」のMVがYouTubeで400万回以上の再生を記録するなど話題になったカナダはバンクーバー出身バンドの通算4作目、『Napalm Records』からのワールドワイド・リリースとしては2作目となるフル・アルバム。

アルバム・デビューは2009年ながら、結成は2007年にさかのぼるということで、もはや10年選手。先述の通り、前作が欧州を中心としたメタル・ファンの間で話題になったことで予算が増えたのか、VOLBEATやAMARANTHE、EPICA、DELAINといったバンドを手掛ける売れっ子、ヤコブ・ハンセンをミキシング&マスタリングに迎え、前作の弱点だったサウンド・プロダクションの弱さが解消されているのがまず明確な進歩。

日本デビュー作となった前作『TIME STAND STILL』は、なかなか魅力のあるアルバムではあったが、少々楽曲のクオリティにバラつきが感じられる作品だった。しかし、前作発表後、ベーシストの交替を経て発表された本作においては楽曲クオリティ、特にメロディ面の充実において顕著な成長が感じられる一枚に仕上がっている。

大枠のジャンルとしては「パワー・メタル」に一番近いと思われるが、まるでNWOBHMのバンドのアルバムかと思われるようなジャケットのアートワークが象徴するように、よりプリミティブでオーセンティックなヘヴィ・メタルを感じさせるサウンドである。

一方で、前身バンドはデス・メタルだったというだけあって、所々デス系のスクリームが入るし、リフ・ワークは時にスラッシーと言ってもいいほどのエッジを感じさせることもあり、北欧やドイツのメロディック・パワー・メタルのような小奇麗かつ大仰なサウンドにならず、「メタル魂」とでも呼ぶべきものを感じさせるのがこのバンドの魅力。

個人的にはこういうメタル然としたバンドのヴォーカルは男であってほしいと思うクチで、それはつまりこういう「男の世界」に女性ならではの愛嬌や甘さ、可愛らしさは不要と思っているということなのだが(私が日本の「嬢メタル」と呼ばれるバンドにあまり惹かれないのもその嗜好ゆえである)、このバンドの看板である女性ヴォーカリスト、ブリトニー・スレイズの歌声は、もしかすると前情報なしで聴けば男性だと間違う人がいるかもしれない「熱さ」があり、このメタル魂溢れるサウンドにマッチしている。

エクストリーム・メタル的なエッセンスをちりばめつつも、基本的にはIRON MAIDENなどに通じるドラマティックなメタル・サウンドは、やや長尺の楽曲が多いにもかかわらず、最後まで緊張感を失うことなく聴かせてくれる。

どの曲にも「オッ」と思わせる煽情的なパートがあるものの、一撃必殺のキメ曲に欠けるのがちょっともったいない。まあそれは次作以降の課題ということで。

日本盤ボーナス・トラックはQUEENSRYCHEの「Queen Of The Reich」のカヴァーで、5オクターブの音域を誇るブリトニー嬢の実力を示すにはピッタリの選曲。

まだ粗削りな部分もあるけど、そういう面も含めて魅力だと思えるバンド。日本で人気が出るにはバンド名が日本人になじみの薄い単語で構成されている上に略しにくいという問題がある気がするが、LOUD PARKで観たいぞ!【84点】

◆MVにするにはちょっとツカミの悪い「Cleanse The Bloodlines」


◆シングルとして切るならこの曲の方がわかりやすいかも、の「The Matriarch」のリリック・ビデオ


◆メイデニックな展開がたまらないタイトル曲「Apex」のOfficial Audio


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RHAPSODY OF FIRE / LEGENDARY YEARS

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ファビオ・リオーネ(Vo)とアレックス・ホルツヴァース(Dr)脱退後、ニュー・シンガーとしてジアコモ・ヴォーリ(Vo)とマヌ・ロッター(Dr)を迎えた新生RHAPSODY OF FIREの、往年の名曲を現編成で再録した、いわゆるリ・レコーディング・ベスト的なアルバム。

新たな出発に際しては、新ラインナップの真価を問うような完全新作で勝負するべし、という意見も多いことと思うが、デビュー20周年という節目のタイミングという、こういうベスト的な作品を出すには格好の時期でもあり、かつ、それだけの歴史を持つバンドとなると、ライブにおいては往年のクラシック・ナンバーをプレイすることを期待されるのは不可避であり、自分たちが過去の名曲をちゃんとプレイできることを証明することが、CDの売上よりもライブの動員をメインの収入源とせざるをえない昨今の音楽ビジネス業界においては優先度が高いと判断されたのだろう。

しかも、現在ファビオ・リオーネはルカ・トゥリッリ(G:LUCA TURILLI'S RHAPSODY)と共にRHAPSODY名義で"20th Anniversary Farewell Tour"を行なっているというややこしい事態があり、過去の名曲をプレイする「競合」がいるという状況もこうしたアルバムを作る後押しになったのかもしれない。

選曲が、RHAPSODY名義だった『EMERALD SWORD SAGA』時代(デビューから『POWER OF THE DRAGONFLAME』まで)の楽曲に偏っているのも、ファビオやルカの動きを意識したものかもしれない。決して、過去の音源のライセンス料の問題などを意識しての判断ではないと信じたい(笑)。

経緯はさておき結果としての本作の仕上がりであるが、決して悪くはない。パワー・メタル・バンドのリ・レコーディングというのは往々にしてテンションが下がっていてガッカリさせられることが多いのだが、本作に関しては良くも悪しくもオリジナルを忠実に再現しようという強い意志が感じられ、多くの楽曲でそれは成功している。

そして初期の楽曲においてはプロダクションが向上しているし、オーケストレーションやクワイアの質も上がっている。そういう意味でクオリティが上がっている、と言える面もある(もっともそれは他のリ・レコーディング作品の多くにおいてもそうなのだが)。

しかし本作において注目されるのは、やはりヴォーカリストだろう。

新加入のジアコモ・ヴォーリはなかなか良いシンガーだ。多くの楽曲を無難に歌いこなしている。もし彼が新人バンドのヴォーカリストとしてデビューしたのであれば何の問題もなく普通に良いヴォーカリストとして評価されたことだろう。

ただ、やはりあのファビオ・リオーネの後任を務めるにはいささか個性が弱い。いや、個性があればいいというものではなく、このバンドの音楽にフィットする個性でなくては意味がないのだが、前任のファビオが奇跡的なまでにこの音楽にフィットした歌声の持ち主だったために、単に上手いだけのシンガーだと物足りなさを感じてしまうのは否めない。

現ラインナップが「ちゃんとやれる」ことを証明するという目的は果たしているアルバムだが、一方で「過去を超えてはいない」こともまた証明してしまっているアルバムで、これでは来日公演が組まれたとしても、既に決定しているファビオとルカのいるRHAPSODYによる"20th Anniversary Farewell Tour"を蹴ってこちらに馳せ参じるファンというのは多くなさそうである。

とはいえ一向に第2弾ラインナップが発表されないLOUD PARKに出演する、ということであればもちろん観たいし、「ファビオのいないラプソなんて…」という日本のファンのネガティブな思いを払拭する機会があるとしたらそれしかないような気がするんですけどね。

◆本作収録「Land Of Immortals」のOfficial Audio


THE FERRYMEN / THE FERRYMEN

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再編成RITCHIE BLACKMORE'S RAINBOWのヴォーカリストに抜擢されたことで一躍注目を集めたHR/HM界のシンデレラボーイ、ロニー・ロメロ(LORDS OF BLACK)。

大手クラシック・ロック・レーベル『Frontiers Records』のオーナー、セラフィノ・ペルジーノも早速この才能に目を付け、レーベルお抱えソングライターの一人、マグナス・カールソンをパートナーに立ち上げたのがこのプロジェクト。

ロニー・ロメロはALLEN/LANDEのファンだったそうで、マグナスのことはよく知っており、また、ロニー・ロメロが「一番好きなドラマー」ということで、マイク・テラーナ(元YNGWIE MALMSTEEN, ARTENSION, RAGE他)が起用されている。

てっきりRAINBOWそのままのサウンドをプレイして、「RAINBOWのシンガー」に対する期待に応えにいくのかと思いきや、RAINBOWに通じる様式美色やメロディアス・ハード色が皆無ではないものの、Keyの存在感が薄く、極めてギター・オリエンテッドであるということもあって、むしろロニー・ロメロの「ロニー・ジェイムズ・ディオっぽい歌唱法」をDIOっぽいサウンドの方向性で活かしにかかったと感じられなくもない。

ただ、「DIOっぽい」というのもあくまで「RAINBOWよりは」という話であって、もっと直接的にサウンドの印象が近いのはMASTERPLANやAXEL RUDI PELL(どちらもかつてマイク・テラーナが在籍したバンドだ)あたりだろう。

全体的にロニー・ロメロの男っぽい、クドめのヴォーカルを活かした、良く言えば重厚で渋めな、悪く言えばちょっと地味な曲調の楽曲が多く、個人的にはマグナス・カールソンにはもう少しキャッチーな曲を期待していたのでちょっと肩透かし。とはいえこういうストイックなHR/HMサウンドを評価する人はきっといるだろう。

もちろんプロフェッショナルなミュージシャンによるものなので、どの楽曲もしっかり構築されているし、演奏も素晴らしい。マグナスのギターがフラッシーな要素を押さえ、いつもよりクラシックなHR/HMスタイルのギター・ソロを展開しているのは本作の聴き所のひとつ。

ただ、このサウンドだとロニー・ロメロの本業である(?)LORDS OF BLACKとの差別化も難しいような…。あと、ちょっとバンド名が地味じゃないですかね?【82点】

◆本作収録「Eyes On The Sky」のMV


◆本作収録「End Of The Road」のMV



DRAGONFORCE / REACHING INTO INFINITY

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前作『MAXIMUM OVERLOAD』(2014年)発表後、ライブ作品『IN THE LINE OF FIRE… LARGER THAN LIVE』、ベスト・アルバム『KILLER ELITE : THE HITS, THE HIGH, THE VIDS』を挟んでリリースされた通算7作目、現シンガーであるマーク・ハドソン加入後3作目となるアルバム。

前作『MAXIMUM OVERLOAD』はある種、原点回帰的とも言える「速さへのこだわり」が感じられるアルバムだったが、本作ではこれまで以上に起伏のあるアレンジによって、楽曲単位でも、アルバム単位でも過去最高級にバラエティを感じさせる作品に仕上がっている。これは、ソングライティングのイニシアティブをとったのが(クレジット表記を見る限り)サム・トットマン(G)からフレデリック・ルクレール(B)に移行したことが影響しているのだろうか。

スラッシュ・メタル風の#8「War!」(およびボーナス・トラックの「Evil Dead」や、彼らの楽曲史上最長となる、11分超えの#10「The Edge Of The World」などは本作における「新機軸」の典型的な例といえるだろう。

楽曲がバラエティに富んでいる分「平均BPM」で言えばカタログの中では「遅い」作品になるのではないかと思われるが、アレンジの起伏はむしろスピード・パートの疾走感を増幅する方向で寄与しており、ファンが彼らに求めるものはちゃんと提供されている。

疾走一辺倒の金太郎飴的な印象が後退し、マーク・ハドソンのヴォーカルに力強さと表現力が増したこと、そして前作に引き続いてプロデュースを担当したイェンス・ボグレンによる芯のあるサウンドによって、かつての彼らが「メタル通」を気取る人たちにあげつらわれてきた「軽さ」はだいぶ払拭されている。

とはいえ随所に哀愁を漂わせつつも基本明るくキャッチーなメロディが疾走する、典型的なメロディック・スピード・メタルとしての全体イメージは変わらないので、決して「メタルとはDarkでHeavyでEvilであるべし」と思っているような「硬派なメタラー」に支持されるような音楽ではないと思われるが、何だかんだいってこういう「わかりやすい」サウンドを展開するバンドの存在こそが日本におけるメタルの間口を広げることにつながると私は思っている。

このバンドもARCH ENEMY同様、やや「BIG IN JAPAN」の気がある(他の国で全く売れていないわけではないが)わけだが、そんな状況に対する感謝の意の表現か、日本盤ボーナスは日本のR&RバンドZIGGYの1989年の大ヒット曲「Gloria」のカヴァー。例によってカヴァー曲もスピード・メタル・アレンジにしてしまっているわけだが、サビの一部では日本語で歌う努力も見せている。【85点】

◆本作収録「Ashes Of The Dawn」のMV


◆日本盤ボーナス「Gloria」のカヴァー(Short Ver.)


GYZE / NORTHERN HELL SONG

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外資系メジャー「UNIVERSAL Music Japan/Virgin Music」に移籍してリリースされた3作目のフル・アルバム。

前作発表後、CHILDREN OF BODOMのサポートとしての中国ツアー、DRAGONFORCEのサポートとしての台湾公演、ドイツの『SUMMER BREEZE Open Air』、スロバキアの『MORE THAN FEST』への出演を行ない、DIZZY MIZZ LIZZYやSONATA ARCTICA、マイケル・シェンカーやウリ・ジョン・ロートなども所属する欧州のツアー・ブッキング・エージェンシー『DRAGON PRODACTIONS』と契約するなど、デビュー以来の(デビュー・アルバム自体イタリアのレーベルからだった)「海外志向」を着実に実現させ、本作もSENTENCEDやKALMAH、SONATA ARCTICAなどが使用したフィンランドの名門スタジオ『Tico Tico Studio』でミキシングを行ない、さらなる「世界志向」のサウンドに仕上がっている。

とはいえ、彼らの音楽スタイルというのはデビュー時から一貫しており、身も蓋もなく言えば「初期CHILDREN OF BODOMのフォロワー」なのだが、もはや本家自体がそのスタイルを放棄した(恐らくCOB自身、あのスタイルをあのクオリティで新しく再現することは不可能だろう)今、このスタイルを現役で、このクオリティで聴かせてくれるのは彼らくらいのもの。

厳密にいえばKALMAHあたりも今なお近しい音楽スタイルを保っているが、(失礼ながら)彼らにかつてのCHILDREN OF BODOMが持っていたような「華」はなく、その辺の「バンドのアピアランス/存在感のカッコよさ」も含めて、神がかっていた初期CHILDREN OF BODOMの魅力を現代に伝えてくれるのは彼らのみだろう。

すなわち激しく疾走していくリズムに乗って乱舞するかの如く歌い続けるリード・ギターのメロディックなフレーズの数々。この快感指数の高さは半端ではなく、3作目となる本作においてもその煽情力は衰えることがない。

本作では「カムイ(神)」や「シュマリ(狐)」、「ウパシ(雪)」など、アイヌ語を持ったタイトルを持った楽曲を数多く収め、「北海道」という彼らのルーツを表現することによって己のアイデンティティを確立しようという意識も垣間見える。

アルバム・タイトルの「NORTHERN HELL SONG」にある「NORTHERN(北)」というのはもちろん北海道のことを表しているのだろうし、彼らの音楽に多大なインスピレーションを与えたバンドの出身地である北欧にそのイメージを重ねていることも想像に難くない(ひょっとすると、「NORTHERN HELL」という響き自体は日本におけるメロディック・デス・メタルの先達BLOOD STAIN CHILDの『SILENCE OF NORTHERN HELL』にインスパイアされたのかもしれない)。

トリオというバンド編成上、私の好きな「ツイン・リードのハモり」とか「クラシカルなフレーズにおけるキーボードとの掛け合いやユニゾン」みたいなものは(ライブで再現できないからか)あまりフィーチュアされないのが物足りなくはあるのですが、文句なしに今日本で一番カッコいい若手メタル・バンドでしょう。

「海外のメタル・フェスのヘッドライナーになる」という「夢」を掲げ、実際に本作のリリースに先立って欧州で(会場規模こそ小さいものの)30公演を超えるツアーを行なっているという行動力も素晴らしいと思います。こういう「ファンが夢を託し、共有できる」バンドってとても魅力的だと思うし、さらなる飛躍を願ってやみません。

ちなみに私が本作で一番好きな楽曲は#2「Horkew」(アイヌ語における狼であり、そのイメージに託された「狩りの神」のことも指す言葉)なのですが、これ、歌詞カードを見るまでは全然気づきませんでしたが、日本語詞なんですね(笑)。ぜひ歌番組にこの曲で出演して、歌詞テロップと実際に聴こえてくる歌とのギャップで笑いをとってほしいと思います(笑)。【88点】

◆本作収録「The Bloodthirsty Prince」のMV


◆本作収録「Northern Hell Song」のOfficial Video