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TRICK OR TREAT “THE LEGEND OF THE XII SAINTS” アルバム・レビュー

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現TWILIGHT FORCEのヴォーカリストでもあるアレッサンドロ・コンティを擁するイタリアのメロディック・パワー・メタル・バンド、TRICK OR TREATの通算5作目となるオリジナル・アルバム(アニメ・ソングのカヴァー・アルバム”RE-ANIMATED”を除く)。

本作は2018年から徐々にオンライン上でリリースを続けていた、日本の漫画/アニメ作品『聖闘士星矢』に登場する十二宮を守護する黄金聖闘士をモチーフにした楽曲を集めたコンセプト・アルバムとなっている。

イタリアでは『聖闘士星矢』が大人気だったそうで、実際過去にもHIGHLORDのようにその主題歌である”Pegasus Fantasy (ペガサス幻想)”をカヴァーした例もあるが、彼らもまた『聖闘士星矢』に心酔したクチのようだ。

私自身も小学生の時分に大流行していたので『聖闘士星矢』にはかなり強い思い入れがあり、主題歌の『ペガサス幻想』を歌っていたのがメタル・バンドであるMAKE-UPであったのは単にその時期メタルの人気が高かったからということでしかなかったのではないかと思うものの、同作の世界観・熱さはなんとなくメタルに通じるものがあるのは間違いないと感じている。

黄金聖闘士はそれぞれ出身地などにも特色があり、非常に個性豊かなので、楽曲の世界観のモチーフにするには格好の素材だったのではないかと思われるが、中国出身という設定のライブラ(天秤座)の童虎の必殺技「廬山百龍覇」をタイトルに持つ#8 ”LIBRA One Hundred Dragons Force”にオリエンタルなアレンジが施されていることを除くと、それ以外の楽曲にそこまで各聖闘士の個性が反映されているかというと「言われてみれば」という程度。

強いて言えば、黄金聖闘士中で最もゴツいイメージだったタウラス(牡牛座)のアルデバランの曲#3 “TAURUS Great Horn”が一番ヘヴィな印象なのと、バルゴ(乙女座)のシャカの曲#7 “VIRGO Tenbu Horin”がプログレッシヴ・メタル調の緊張感を湛えているのはなんとなくそれっぽいかな、というくらい。

そういう意味で、『聖闘士星矢』の世界観を彼らなりに尊重した結果、「ハッピー・メタル」を標榜してきた彼らにしてはややシリアス度が高いものの、基本的にはTRICK OR TREATがこれまで発表してきた作品のサウンドから大きく逸脱はしていない。

特にモチーフとなる作品『聖闘士星矢』に思い入れがない人にとっては適度にバラエティのある良質なメロディック・パワー・メタル作品として楽しめることだろうが、個人的には『聖闘士星矢』の世界を描くにはこのバンドの音はちょっと軽すぎるというか、「熱さ」が足りないと思ってしまったり(笑)。

ちなみに#4 “GEMINI Another Dimension”にはBEAST IN BLACKのヤニス・パパドプロス(Vo)がゲスト参加。ギリシャ人である彼を招いたのは、もちろん作品の舞台を踏まえてのことなのでしょうね。

しかし、HELLOWEENタイプのメロディック・パワー・メタルという、かつて日本人好みと言われたスタイルのバンドが日本のコミックをモチーフにした作品をリリースしたというのに、どうやら日本盤はリリースされないようです。むごい…。

きっとこの作品が90年代前半にリリースされていたら相当話題になったのではないでしょうか。【83点】



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MAGNUS KARLSSON’S FREEFALL "WE ARE THE NIGHT" アルバム・レビュー

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LAST TRIBE解散後、『Frontiers Music』が送り出す数多くのプロジェクトに関わり、PRIMAL FEARのレコーディング・メンバーとしても活動するスウェーデンの才人、マグナス・カールソン(G, B, Key, Vo)のソロ・プロジェクト第3弾。

このプロジェクトでは毎回複数のゲスト・シンガーを招いてアルバムを制作しているが、本作のトラックリストと参加ヴォーカリストは以下の通り(ボーナス・トラックを除く)。

01. Hold Your Fire (ディノ・ジェルシック:ANIMAL DRIVE, DIRTY SHIRLEY)
02. Kingdom Falls (レナン・ゾンタ:ELECTRIC MOB)
03. We Are The Night (マグナス・カールソン)
04. Queen Of Fire (ノーラ・ロウヒモ:BATTLE BEAST)
05. Dreams And Scars (レナン・ゾンタ:ELECTRIC MOB)
06. All The Way To The Stars (マイク・アンダーソン:元CLOUDSCAPE, TUNGSTEN)
07. One By One (ロニー・ロメロ:LORDS OF BLACK, THE FERRYMEN)
08. Under The Black Star (ディノ・ジェルシック:ANIMAL DRIVE, DIRTY SHIRLEY)
09. Temples And Towers (トニー・マーティン:元BLACK SABBATH)
10. Don’t Walk Away(マグナス・カールソン)
11. On My Way Back To Earth (Instrumental)
12. Far From Over(トニー・マーティン:元BLACK SABBATH)

過去2作に比べると、この手のメロディックなメタル・サウンドを好む人が多いであろう80年代、90年代メタル・ファンの認知がある人が少ないので、日本での注目を集めにくいような気はするが、有名バンドのキャリアがあるヴォーカリストが少ないからといって、本作の音楽的クオリティが低いことを意味するものではない。

むしろ、ディノ・ジェルシックやレナン・ゾンタ、そして(いささかそのリリース頻度に食傷気味とはいえ)ロニー・ロメロといった人たちはここ数年に登場したメタル系ヴォーカリストの中でも最も優秀な部類のシンガーたちで、その実力は80年代、90年代の往年の名シンガーたちにおさおさ劣るものではなく、むしろ単純に歌唱力だけで言えば優越しているかもしれない。

そういう意味で、ザ・プロフェッショナルなソングライターであるマグナス・カールソンが書く曲を歌わせることで、才能のある若手のシンガーにとって一種のショウケースとなっているアルバムとも言える。

もっとも、このプロジェクトのアルバムが売れているという話は残念ながら聞いたことがないのでショウケースとしての意味は薄く、どちらかというとレーベルの功労者であるマグナスに『Frontiers Music』が優秀なヴォーカリストを優先的に提供している、ということなのかもしれないが。

そういう意味だと、#4 “Queen Of Fire”というエモーショナルなバラードで存在感を発揮しているノーラ・ロウヒモだけは『Frontiers Music』との所縁がないようだが、もしかすると現在制作中だという彼女のソロ・アルバムは『Frontiers Music』からリリースされるということなのでしょうか?(本作のレビューと関係ないですね)

いずれにせよ、本作も本人の名前を冠したソロ・プロジェクトだけあって、マグナス・カールソン節が遺憾なく発揮された、超ハイクオリティなメロディック・メタル作に仕上がっている。

4分台からせいぜい5分台とコンパクトにまとまっているにもかかわらず壮大なロマンを感じさせる、優れたメロディが満載の楽曲でアルバム全編が埋め尽くされており、欧州型メロディック・メタルを好む人であればきっと満足できることだろう。

ここまで隙がなく、非の打ち所がない作品を作れる人はメタル・シーン広しといえどもそれほど多くないと思うのですが、支持が割と狭いマニアに限られているように感じられるのは、やはり人は完璧なものより少しくらい欠点があるものに愛着を持つということなのかもしれません(苦笑)。ちょっと品が良すぎるのかなあ…。【87点】








インスト曲にまでMVが作られてるってかなり珍しいような気がします。

BONFIRE “BYTE THE BULLET” (2017) アルバム・レビュー

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せっかく前エントリーで“TEMPLE OF LIES”を2年越しでレビューしたので、ついでにその前作にあたる本作もレビューしてしまおうかと思います。

前身バンドの結成は1972年にまでさかのぼり、BONFIRE名義でデビューしたのも1986年と、結構なキャリアを誇るドイツの中堅HR/HMバンドの、通算14作目に当たるオリジナル・アルバム。

本作の前作にあたる"GLORIOUS"(2015)は、かつてACCEPTの"EAT THE HEAT"(1989)で歌っていたことで知られるデヴィッド・リースを迎えていたが定着せず、JADED HEARTをはじめ、ZENOやSILENT FORCE、BLOODBOUNDなど数多くのバンドにおける活動で知られるマイケル・ボーマンを迎えるもこれまた定着せず、変にキャリアと知名度がある人材に懲りたのか、MASTERS OF DISGUISEなるほぼ無名のパワー・メタル・バンドで歌っていたアレックス・シュタールを迎えて制作したのが本作である。

本作のオープニングを飾る#1 "Power Train"はまんま”Hellion~Electric Eye”で、次作“TEMPLE OF LIES”のオープニング・ナンバーがかなり露骨に"Painkiller"だったことを考えると、よっぽどJUDAS PRIESTが好きなんだろうなあ、という感じ(笑)。

続く#2 "Stand Up 4 Rock"も疾走感のあるメタリックな曲で、この序盤の流れに本作のメタリックな印象が象徴されている。

クラシックの名曲をつなげてアレンジした#11 “InstuMetal”などもある意味非常に「メタルっぽい」アプローチで、何が彼らを今さら古典的なメタルに走らせたのか。

これが生きのいい若いヴォーカリストの加入効果だとしたら、歌なしのこういう曲までやらせてしまうとは凄い影響力ですね。アンチエイジング効果というやつですかね(笑)。

とはいえバラードなどには従来のメジャー感のあるアリーナ系ハード・ロック・サウンドの名残が顕著だし、歌メロのキャッチーさにはかつてのスタイルが生きているので、従来のアメリカン・テイストなBONFIREが好きだった人も楽しめるはず。

全体的にはベテランらしいクオリティの高さで、80年代型のメタルが好きな人なら楽しめる佳作だが、楽曲単位でもアルバム単位でも、若干の冗長さが感じられるのが惜しい。

#14 “Sweet Obsession”は彼らの代表作である”FIREWORKS”収録曲のリメイクだが、この曲は前作"GLORIOUS"でもセルフ・カヴァーしていたので、仕上がりに納得いっていなかったのでしょうか(笑)。【84点】





BONFIRE “TEMPLE OF LIES” (2018) アルバム・レビュー

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前エントリーでこのバンドの最新作“FISTFUL OF FIRE”を取り上げた時に気づいたのですが、2018年の年間ベストを選んだ際、本作を選出して、「レビューは忘れてたのでそのうち」などと書いておいて、再び忘れてしまっておりました(笑)。

ということで今さらレビューしてみる本作は、ヴォーカリストとしてアレックス・シュタール(元MASTERS OF DISGUISE)加入後第2弾となる通算15作目となるオリジナル・アルバム。

ピアノを絡めた期待感を煽るイントロ#1の時点で傑作の予感がしたが、それを裏切らない充実したアルバムである。

JUDAS PRIESTの”Painkiller”に着想を得たことは間違いない、このバンド史上最も攻撃的な印象の#2タイトル曲はBONFIREにメロディアス・ハード的なイメージを持っている人間(私もそうでした)に強烈な平手打ちを加える一撃(サビはメロディアスだが)。

一方で、続く#3 “On The Wings Of An Angel”は哀愁系メロディアス・ハードの秀曲で、欧州系メロディアス・ハードをこのバンドに期待する向きを満足させる1曲。

#4 “Feed The Fire (Like The Bonfire)”は、わざわざバンド名を入れた楽曲になっているだけあって、ライブでオーディエンスと盛り上がれそうなアンセム・タイプのミドル・テンポ。

MVになった#5 “Stand Or Fall”はソリッドなリフとキャッチーな歌メロが絶妙に絡み合う、これぞメタルの醍醐味的なキラーでしょう。こういう曲が入っているアルバムはそれだけで名盤の風格が出るというもの。

そして80年代のバンドならではというバラードの#6 “Comin’ Home”が出てきた時点で、メロディアス系HMバンドの名盤に必要な楽曲の要素はコンプリートされている。

さらに80年代ポップ・フィーリングを全開にしたハード・ポップ路線の名曲#8 “Fly Away”というダメ押しのキラー・チューンまで備えているのだから、本作は本当に充実している。

一部レゲエ調のビートを取り入れた#9 “Love The Way You Hate Me”のようなちょっと変わった曲も織り交ぜつつ、ラスト10曲目はクライマックス感のあるビッグなコーラスがフィーチュアされた楽曲で締めるなど、アルバム全編に渡って隙がない(7曲目にだけ言及しなかったが、それも哀愁がかったマイナー調の魅力的な曲だ)。

ドイツのチャートでも29位を記録するなど、80年代の全盛期には及ばぬにせよかなりの成果を収め、バンド後期の代表作と呼ばれるであろう傑作である。【87点】



BONFIRE “FISTFUL OF FIRE” アルバム・レビュー

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ドイツのベテラン、BONFIREのオリジナル・アルバムとしては通算16作目となるアルバム。

BONFIREというとメロディアス・ハードというか、80年代型売れ線HR/HMという印象が強く、悪くはないけど、ドイツのバンドに期待する音じゃないな…と長年思っていたのだが、2016年に現ヴォーカリストのアレックス・シュタール(元MASTERS OF DISGUISE)が加入してから、俄然正統派ヘヴィ・メタル色が増し、私好みのサウンドにシフト。

そして前作”TEMPLE OF LIES”(2018)は楽曲のクオリティ、バラエティとも非常に優れた、同年の私的年間ベスト10に食い込む好盤だった。

その傑作に続く本作も、ここ2作の彼らのアルバムが気に入った人であれば楽しめること間違いなしの上質なヘヴィ・メタル・アルバムに仕上がっている。

これまで以上にJUDAS PRIEST、ACCEPTを思わせるオーセンティックなヘヴィ・メタルの雰囲気が強まって、ソリッドなリフ主導の楽曲が増えており、その作風はアルバムのタイトルやアートワークからもなんとなく伝わってくる。

一方で、ドイツのナショナル・チャートで健闘し、イギリスのチャートにさえランクインしたことがある80年代から連綿と継承されているキャッチーな歌メロのセンスは今なお息づいており、いい意味でわかりやすさがあるのが好印象。

前作の充実に比べるとやや聴き劣りはするものの、いわゆる80年代型のヘヴィ・メタルが好きな人であればぜひトライしてもらいたい一枚。【83点】