音楽性は前述の通りメロディック・パワー・メタルということになると思いますが、「典型的」なスピード・チューンは少なく、全9曲というそれほど多くない曲数の中にキャッチーな曲やバラードが収められ、一方で#3 "I.C.T."などは明らかにJUDAS PRIESTの"Painkiller"のオマージュと思われるヘヴィな曲と、この手のジャンルの幅でメリハリに富んだバラエティが用意されています(I.C.T.というのは"Incection Control Team"の略で、病院内の感染管理チームのことだそうです)。
#5 "Way Of My Life"や#9 "Lost Senses"といったやや長尺のドラマティックな展開を持つ曲からはプログレッシヴ・メタルからの影響も明確に感じられ、学生時代のバンド名がSYNDROME Xだったというのも頷ける(笑)見事な構成力を披露しています。
彼女らの「復活宣言」であろうと思われるオープニングの#1 "We Are The Resurrection"から肩に力入り過ぎではと思ってしまうほどアグレッシブなファスト・チューンだが、続く先行MVが公開されていたタイトル曲#2 "Judgement Day"もスピード・ナンバー、そして#3 "The Spirit Lives On"も疾走曲とダメ押しされ、個人的にはもうこの時点で兜を脱ぎました。
その後もメイデン風の#4"Wicked Witch"、80年代テイストのある#7"My Orion"、スラッシーなアグレッションを示す#9"Dissonance"などフックのある楽曲を揃えつつ、#6"Victim Of Time"、#8"Lost In The Garden"、#10"Soldier Stands Solitarily"といった、日本人ならではのメロディ・センスを備えたパワー・メタル・チューンが目白押し。
メンバー・チェンジが多く、既にオリジナル・メンバーは残っていないようで、前任ヴォーカリストのガールフレンドに対する虐待による解雇騒動で予定されていた来日公演が中止になるなど紆余曲折を経ているようですが、現ヴォーカリストのウィル・ラモスを迎えて発表した前作EP"...AND I RETURN TO NOTHINGNESS"(2021)収録曲、"To The Hellfire"がリアクション動画などでバイラル・ヒットとなり(Spotyfyのバイラル・チャートで最高4位を記録したそう)、YouTubeでは2022年1月現在で1300万回近い再生数を記録し、一躍注目度を高めたそうです。
その"To The Hellfire"で体現されていたシンフォニック/ブラッケンド・デスコア・サウンドを突き詰めた本作はその筋ではちょっとしたセンセーションを巻き起こしており、こういうシンフォニックなデスコア・サウンドが今ちょっとトレンドになっているとか。