fc2ブログ

KING COMPANY "TRAPPED" アルバム・レビュー

kingcompany03.jpg

フィンランドのメロディック・メタル・バンド、KING COMPANYの『Frontiers Music』から『Metal Heaven』にレーベルを移籍(日本でもキングレコードからルビコン・ミュージックに移籍)してのリリースとなるサード・アルバム。

ドラムのミルカ・ランタネン(元THUNDERSTONE, WARMEN, KOTIPELTO等)を中心に結成され、ギターはCHILDREN OF BODOMのヤンネ・ウィルマンの弟であるアンティ・ウィルマンで、ベースのティム・シュライファー(ENFARCE)やキーボードのヤリ・パイラモ(KIUAS)、ヴォーカルのイルッカ・ケスキタロ(LOST KINGDOM)など、フィンランドのメタルに親しんできた方であれば何となく知っているような名前や経歴の人たちが揃っている。

なんとなくパワー・メタル~メロディック・デス・メタルが想像されるメンツだが、バンドの音楽性はもっとオーセンティックなHR/HMで、2016年のデビュー作などはそういうクラシック・ロック的なサウンドが評価される『BURRN!』誌の読者人気投票で「BRITEST HOPE」で7位になるなど、地味に高評価を得ている。

しかし本作ではレーベル移籍が影響しているのか、サウンド全体に往年のフィンランドのパワー・メタルらしい空気感が増量されており、ミルカ・ランタネンの出身バンドであるTHUNDERSTONEなどを思わせる雰囲気に近づいてきている。

正直あまり期待していなかったのでリリース当時はスルーしていたのですが、YouTubeの自動再生で流れた本作からのMVに耳を惹かれ、アルバム全体を聴いてみるとこれが思いのほか良かったので遅まきながらこのブログで取り上げてみました。

哀愁を帯びたメロディとクリーンなプロダクションという、フィンランドのメロディック・メタルの美点を忠実に踏襲しつつ、とにかく今どき珍しいほどのキーボード・サウンドのフィーチュア度の高さが個人的にツボでした。オープニングを飾る#1 "I Will Be Here"のギター・リフに被さるキーボードを聴いた瞬間から笑みがこぼれましたね。

キーボードをふんだんに使ったメロディック・メタルがお好みの方でしたら一聴の価値がある高品質なアルバムです。地味にオススメ。【85点】





スポンサーサイト



EDU FALASCHI "VERA CRUZ"アルバム・レビュー

edufalaschi03.jpg

約半年前にリリースされたアルバムを今さらレビューしますが、元ANGRAのフロントマン、エドゥ・ファラスキのソロ・プロジェクトの実質的なデビュー・アルバムです。

実質的な、というのは、本作以前に"EDU FALASCHI"名義で"MOONLIGHT"(2016)に"BALLADS"(2017)という過去の楽曲(ANGRAやALMAHのもの)のリメイク・アルバムや、EP作"THE GLORY OF SACRED TRUTH"(2018)、そしてANGRA時代に生み出した名盤を完全再現した"TEMPLE OF SHADOWS IN CONCERT"などをリリースしていたためである。

それらの活動は"THE GLORY OF SACRED TRUTH"を除くと、いずれも過去の楽曲に依存したものばかりで、エドゥはまだ40代なのに過去の遺産だけで食べていくつもりなのか…?と思っていましたが、本作は全て新しいマテリアルによる純粋な新作となっているので、冒頭のように「実質的なデビュー・アルバム」という表現を使いました。

本作はANGRA時代の盟友であるアキレス・プリ―スター(Ds)やファビオ・ラグーナ(Key)、そしてロベルト・バローズ(G)、ディオゴ・マフラ(G)、ラファエル・ダフラスという、2018年に来日公演を行なった時のメンバーによって録音されており、「歌手エドゥ・ファラスキ」のソロ・アルバムというよりはEDU FALASCHIというバンドなのだろうと思われます。

本作は1482年、ポルトガルの都市トマールにある修道院を舞台に起こる事件を描いたコンセプト・アルバムになっているのだが、そのコンセプト・アルバムの仕立てといい、作風といい、ANGRAの"TEMPLE OF SHADOWS"に酷似した作風となっている。

映画的なイントロダクションの#1"Burden"から、高速&テクニカルな#2"The Ancestry"の流れはメロディック・パワー・メタルによくある流れ、と言うこともできるが、続くプログレッシヴ・メタルな#3 "Sea Of Uncertainties"の流れは完全に"Spread Of Fire"から"Angels And Demons"の流れを彷彿させるもので、その後もさすがに曲順こそ「そのもの」ではないながらも、"TEMPLE OF SHADOWS"にこういうタイプの曲あったなあ…という楽曲が並ぶ。

もちろん、"TEMPLE OF SHADOWS"は超名盤なので、それをトレースした本作も駄作であろうはずがない。というかあのアルバムをトレースできるこのバンドのポテンシャルは驚異的であり、このレベルのミュージシャンがゴロゴロしているのだとしたらブラジルは恐ろしい国である。

客観的に見れば本作は今年リリースされたメロディック・パワー・メタル系のアルバムでトップ・クラスの音楽的密度を持った傑作であり、ANGRAが"TEMPLE OF SHADOWS"以降にリリースしたどのアルバムよりも良いと思うが、やはりリアルタイムで"TEMPLE OF SHADOWS"の衝撃を体験した身としては、どうしても「二番煎じ」感を覚えてしまうのは致し方ない所。

本作を手に取るリスナーの中に"TEMPLE OF SHADOWS"を聴いたことがない、という人がどれくらいいるのかわかりませんが、そういう人にとっては掛け値なしのメロディック・パワー・メタルの傑作と感じられるのかもしれません。

エドゥ・ファラスキとしては自身に求められるものを提供した、という思いなのだろうと思いますし、そういう開き直った作品だからこそALMAH名義ではなく自身の名前でリリースしたのではないかと思いますが、次作はさすがにもう少し後ろ向きでない作品を期待したい気持ちも個人的にはあったりします。才能のある人だと思うので…。【87点】





HELLOWEEN "HELLOWEEN" アルバム・レビュー

helloween19.jpg

先月の『BURRN!』8月号のHELLOWEEN大特集におけるマーティン・ハウスラー(彼らのミュージック・ビデオを制作している人物)のインタビューの中で、「アルバムがリリースされてからしばらくしたら3曲目のシングルがリリースされるからね。"Best Time"だよ」と語られていたので、そのシングルのリリースを待ってこのレビューを公開しようと思っていたのですが、一向にそのシングルが発表されることなく、"Mass Pollution"のリリック・ビデオが公開されてしまったので、そろそろ公開することにしました(苦笑)。

まあ、もう買うべき人は皆購入している頃合いだと思いますのでいいタイミングなのかなと。私のレビューを読んで買うのをやめた、みたいな人が一人でも出てしまったらそれこそバンドに顔向けできませんからね(笑)。

さて本作はHELLOWEENを特別な存在に押し上げた名作、"KEEPER OF THE SEVEN KEYS Part1&2"を生んだカイ・ハンセンとマイケル・キスクが復帰したアルバムで、ニュアンスとしては「再結成アルバム」的に受け止めている人もいるかと思う。

ただ、もちろんHELLOWEENは解散したことはなく、低迷することすらなく活動してきたし、2018年にその二人を加えてのツアーも行なっているので布石は充分、よほど変なこだわりがある人以外にとっては充分な納得のもとに制作されているので、本作の価値が2人の再加入というニュース性にあるわけではないことは言うまでもない。

「再結成」の結果、ギタリストが3人になったケースはIRON MAIDENもそうだが、「バンドの顔」であるヴォーカリストを2人にする、という決断をしたケースはほとんどないのではないか。そういう意味でこの「誰も傷つかない再結集」はロック史上でも稀有な奇跡と思われ、ファンとしては自分の愛したバンドが特別なバンドであることをあらためて信じることができる、とてもハッピーな事象であり、アルバムといえる。

本作を制作するにあたってはオリジナル・ドラマーである故インゴ・シュヴィヒテンバーグ(Dr)のドラム・キットを使い、80年代当時のサウンド・プロダクションを再現するなどして、かつて2人が在籍していた当時のヴァイブを再現しようとしたそうで、その思いは「守護神伝」なアルバムのアートワークからも伝わってくる。

とはいえ、"KEEPER OF THE SEVEN KEYS Part1&2"そのものがここに再現されているわけではない。そのことは(“賛”が多いとはいえ)賛否両論ある本作を否定する人はもちろん、肯定する人ですら認めることだろう。

オープニング・ナンバーである#1 "Out For The Glory"を聴いた時には「メロディックで速い曲をマイケル・キスクが歌っている」という、ただその事実に脳内麻薬が過剰分泌されてしまい冷静を失ってしまうが、アルバムを最後まで聴くうちに本作の基本的な作風が近年のものと変わらないことに気づくはず。

正確に言えば、本作の作風はサシャ・ゲルストナー(G)が加入した"RABBIT DON'T COME EASY"(2003)以降変わらぬものであり、そういう意味でサシャの加入というのはこのバンドにとって結構大きかったのではないかと思う。

サシャは私と同世代で、HELLOWEENのオリジナル・メンバーたちとは世代がひと回り違うため、逆に「HELLOWEENに何が求められているか」を客観的に理解しており、その感覚が他のメンバーと共有されることで"RABBIT DON'T COME EASY"以降の、良くも悪しくも安定したメロディック・パワー・メタル路線が実現しているのではないかという気がする。

その結果として本作も適度にバラエティに富んでいるが意外な曲や違和感のある曲はなく、もちろん捨て曲のないフックに富んだ楽曲が揃ったハイ・クオリティなメロディック・パワー・メタル・アルバムに仕上がっており、作品の出来にケチをつける余地はない。

ただ、このラインナップに「捨て曲がない」とか「ケチをつける余地がない」程度のものが期待されているはずがないわけで、ネット上でちょいちょい見かける「否」を唱える人の不満はその辺にあると思われる。

たしかに、本作に"KEEPER OF THE SEVEN KEYS Part1&2"にあったマジックはないし、アンディ・デリス加入後の作品のいくつかは本作より魅力的な楽曲が揃っていたかもしれない。

ただ、これはファンの贔屓目かもしれないが、ここにはキーパー時代のHELLOWEENにも、アンディが一人で歌っていた時期のHELLOWEENにもない新しいマジックがある。

それはキラー・チューンがあるとかないとかそういうレベルの話ではなく、3人のヴォーカリスト、3人のギタリストがごく自然に役割を分け合い、調和したサウンド全体に宿っているものである。ああ、「7つの鍵」とはこの7人のことだったんだな、と。

そしてそのマジックは、今回作曲においては1曲だけの貢献にとどまり、『BURRN!』誌のインタビューでマイケル・キスクに「ちょっとレイジー(怠惰)だった」と言われてしまったカイ・ハンセン(G, Vo)の貢献が増せばさらに輝きを増すものであろうと思われ、単に「もう一度このメンツでやれてよかったね」で終わらない、次作へのさらなる期待を生むものであるという点も、このバンドが「過去の栄光」頼みのバンドではない、特別な存在であることを感じさせる…というのはちょっと贔屓目が過ぎますかね(笑)。

"PUMPKINS UNITED TOUR"から本作のリリースまでの情報公開の仕方についても、かなりマーケティング的な戦略性が感じられましたが(恐らくそれはコロナ禍によってかなり変更を強いられたはずですが)、その甲斐あって母国ドイツで初のチャート1位に輝き、アメリカでも初のTOP40入り(35位)を果たすなど、商業的にも成功を収めているのが長年のファンとしては嬉しいですね。

ちなみに私が買った限定盤オマケのメッタリマンシールはマーカスでした。【90点】








WEEZER "VAN WEEZER" アルバム・レビュー

weezer15.jpg

このブログを読んでいるような方にどのくらいの認知があるのかわかりませんが、1994年のデビュー以来、ワールドワイドで3,500万枚以上のセールスを誇る人気オルタナティブ・ロック/パワー・ポップ・バンドのWEEZERの通算15作目となるアルバム。

私は一応世代なので彼らのアルバムをデビュー作から3作目までは聴いてました。ファーストとセカンドは友人に借りて、サードは自分で買いましたね。HMVの「輸入盤、○枚買ったらいくら」セールの数合わせ的な買い方でしたが、嫌いだったら買わないわけで、どちらかと言えば好きでした。オルタナ系のバンドの中では抜群にポップで聴きやすかったので。

本作のテーマ(?)はハード・ロック/ヘヴィ・メタルへのオマージュ、ということで興味を持っていたわけですが、本作の存在というかコンセプト自体はだいぶ前に発表されていて、本作のファースト・シングルである"The End Of The Game"も2019年に公開されています。

しかしコロナ禍によるものか、マーケティング的な戦略によるものか、発売が延期になり、今年の1月に"OK HUMAN"というアルバムのリリースを挟んで先日、5月7日に発売になりました。

先述した"The End Of The Game"で見当はついていましたが、本作はバリバリのHR/HMというわけではなく、それっぽいアレンジを取り入れているというだけで、楽曲の基本的なスタイルは彼ららしいパワー・ポップです。

とはいえ、メンバーはシャレやネタだけでこういうアルバムを作ったわけではなく(そういうニュアンスも多少はあるのかもしれませんが)、フロントマンであるリヴァース・クモオはKISSの、ギターのブライアン・ベルはBLACK SABBATHの、ベースのスコット・シュライナーはMETALLICAとSLAYERの、そしてドラムのパトリック・ウィルソンはVAN HALENとRUSHの大ファンということで、実際、2019年にリリースされたカバー企画アルバム"TEAL ALBUM"ではBLACK SABBATHの"Paranoid"をカバーしている実績もある。

そういう意味で、90年代に幾多のHR/HMバンドがオルタナ/グランジっぽいアルバムを出したこととは、「自分たちのものとは違うスタイル/作風でやってみた」という点では共通ながら、トレンドに乗ることが目的だった90年代のHR/HMバンドのオルタナ作とは本質が真逆と言ってもいいほど違うわけですね(苦笑)。

あちこちに顔を出してくるそれっぽいリフやフレーズ、そして時折歌詞に出てくるHR/HM関連ワードにニヤリとしつつ、彼ららしいちょっとナイーブなメロディのパワー・ポップを楽しむ、というのが本作の楽しみ方でしょう。

ちなみに#6 "Blue Dream"のリフはOZZY OSBOURNEの"Crazy Train"まんまですが、ちゃんとクレジットにオジー・オズボーン、ランディ・ローズ、ボブ・デイズリーの名前が入っています。こういう、リフだけ拝借して違う曲に仕立てました、みたいな試みも、あらゆるリフがプレイし尽された現代における新しいソングライティングのあり方として面白いかもしれません。

HR/HMに全く興味も知識もないWEEZERファンが本作をどう受け止めているのか知りませんが、通常の彼らの作品よりギター・サウンドに力があって、意外とパワー・ポップとして出来がいいアルバムと受け止められるのかもしれません。

なお、アルバム・タイトルで想像がつくかもしれませんが、本作は昨年亡くなったエディ・ヴァン・ヘイレンに捧げられています。



▼サムネイルはなぜかWINGERですが、曲のネタはMETALLCAです。


▼こちらが"Crazy Train"の翻案ソング。


▼医療従事者に捧げられた曲。普通にいい曲、いいビデオです。


MOTORJESUS "HELLBREAKER"アルバム・レビュー

motorjesus06.jpg

ゴールデンウィークなのでもう1作、国内盤リリースのないタイトルをレビューしてみます。ドイツのMOTORJESUSというバンドの、フル・アルバムとしては通算6作目になる "HELLBREAKER"。

国内盤リリースがないとはいえ、結成は1997年にさかのぼるというベテランで、本作は本国ドイツのナショナル・チャートで20位にランクインしているので、マニアックなマイナー・バンドというわけではありません。

このバンドはマッスルカー(1960年代後半-1970年代の高馬力なアメリカ車のこと)をこよなく愛しているらしく、デビュー以来ずっとクルマのこと(だけではないが)を歌い続けており、そういう意味では海賊をテーマにするRUNNING WILDや、戦争をテーマにするSABATONに通じるものがあります。

日本の輸入盤を扱うショップではバンド名の印象もあってか「MOTORHEAD系」と形容されていることが多いようで、実際彼らに通じる男臭い爆走R&Rな雰囲気を醸し出すことも多いが、MOTORHEADに比べるとだいぶヘヴィ・メタリックで、メロディックなリード・ギターのフレーズが時折挟まれたり、サビ周りではほのかに哀愁を感じさせるあたり、「ドイツのバンドだなぁ」という感じがします。

ドイツのバンドということを踏まえて考えるとIRON SAVIORとTHUNDERHEAD(懐かしい)を足して2で割ったような印象もありつつ、音作りにはちょっと生っぽさもあって、ドイツのバンドの割に(というのも失礼ですが)「ダサくない」のもポイント。

こういう勢いがあってガッツィーな音を聴きながらガラ空きな田舎の高速道路をドライブしたいですね(オービスに引っかかるやつです)。

力押し一辺倒のようで意外と小技が効いてフック満載なのはベテランのなせる技でしょうか。これ、イギリスかアメリカのバンドだったら日本盤出たんじゃないですかね。コロナ巣ごもりでストレス溜まってるような方にオススメです(笑)。【86点】