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Damian Hamada's Creatures "旧約魔界聖書 第1章&第2章"アルバム・レビュー

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聖飢魔Ⅱの創始者として知られるダミアン浜田陛下によるプロジェクトのデビュー作。

こう書くと、事情を知らない人には「ふーん。聖飢魔Ⅱの元メンバーの新プロジェクトね」くらいに受け流されてしまうかもしれないが、ダミアン浜田という人(悪魔)は、聖飢魔Ⅱのメジャー・デビューにあたって故郷の山口県に帰って教職に就くことを選び脱退しているので、(主に初期の)楽曲の制作には関わっているが、アルバムに彼の演奏は収められていないという意味で、「メジャーデビュー」はしたことがない人物(悪魔)である。

そんなダミアン浜田陛下であるが、35年務めた教職を早期退職したことをきっかけに楽曲制作を始め、発表の場について聖飢魔Ⅱの関係で知己であったソニー・ミュージックの人間に相談したところ、人間としての年齢にして59歳にしてメジャーデビューが決まったというのだから、人生(悪魔生?)いつ何が起きるかわからない。

メジャーデビューしていないといえ、聖飢魔Ⅱの代表曲である「蝋人形の館」を始め、初期の名曲の作者としてファン(信者)の間では有名な存在であり、半ば伝説化していたので、その彼がデビューするとなれば少なくとも昨今の音楽ビジネスの規模においては充分に商売になる、と担当者は判断したのだろう。

ダミアン浜田陛下は初期聖飢魔Ⅱにおいてはギタリストだったが、元々デビューではなく教職に進むことを選んだ一因としてギターの腕前がプロのレベルではなかったからという話があり、かつ長年普通に高校教師をやっていて演奏から離れていたこともあって、本作では演奏には関わらず、作詞作曲プロデュースといった、本来であれば音楽ビジネスにおいて「裏方仕事」とされることしかしていない。

それにもかかわらず「ダミアン浜田陛下のメジャーデビュー」とされ、アルバムジャケットもダミアン浜田陛下がフィーチュアされる形で発売されるというのは、これまた59歳のデビューという事実と並んで特異な事例と言えるだろう。

しかし、メイクなどの効果もあるだろうとはいえ、59歳でこのルックス、若い頃は女子生徒にさぞやモテたでしょうね(笑)。

本作でダミアン浜田がクリエイトした楽曲を実演するのは、彼が選んだ「改臟人間」という設定(とか言ったら怒られますかね)で、14歳の時にオーディション番組『X FACTOR OKINAWA JAPAN』に出演したり、日本テレビ「歌唱王」(GALNERYUSの"Destiny"を歌っており、その時のことはこのブログでも少し取り上げていました)のファイナリストになった経験のある、伊舎堂さくらがヴォーカル、バックの演奏はプログレッシヴ・ロック・バンド、金属恵比寿のメンバーたちである。

そして本作で展開されているのは初期聖飢魔Ⅱの楽曲に通底するフィーリングを持った様式系のヘヴィ・メタルで、そういう意味では期待通りの作品に仕上がっている。

ただ、今回、自分で演奏しないのをいいことに好き勝手に作曲・アレンジしたということで、演奏するのがプログレ畑のバンドということもあり、聖飢魔Ⅱ時代の曲よりはだいぶ複雑というか高度化された楽曲になっており、個人的に期待していたようなメタルとしてのわかりやすいキャッチーさはやや控えめ。

さくら“シエル”伊舎堂のヴォーカルも、ちょっとこの世界観に対してピュア過ぎる印象があり、このダミアン節とでもいうべき荘厳でドラマティックな楽曲を歌う上ではもっと適材がいたのではないかという気がしてしまった(もちろん歌自体は上手だし、こういうストレートな歌声だからこそ本作に聴きやすさが生まれている、という意見もあると思います)。

何より釈然としないのは、どう考えてもアルバム1枚分のマテリアルなのに、カラオケバージョンで水増ししてわざわざ2枚に分けて販売していること。

まあ、この売り方をダミアン浜田陛下自身が望んだとは思えないので、そこは特例的なデビューをさせるにあたっての条件とか、大人の事情的な話なのでしょう。

とはいえ聴き手としてはこの濃密な世界観にドップリ浸りたいという思いもあり、普通のフル・アルバム(教典)としてリリースしてほしかったというのが正直な所。

なのでささやかな抵抗(?)として、こうして2枚を1作扱いでレビューするという挙に出てみました(笑)。

いずれにせよ個人的にこういうクラシカルなエッセンスを感じる様式美系のHR/HMというのは好物なので、今後も継続的に作品をリリースしてほしいと思います。

そしてついでに、こういう「自分で演奏はできないけど、良い楽曲は作れる」という人が「アーティスト」としてデビューできるというのは、良い音楽が世に送り出される可能性が上がるという意味でいい話だと思うので、今後もこういうアーティストのあり方というのはもっと広がっていいんじゃないか、などと思ったりしました。【84点】※点数は2枚の平均点だとお考え下さい。





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TEARS OF TRAGEDY "TRINITY"アルバム・レビュー

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日本のメロディック・パワー・メタル・バンド、TEARS OF TRAGEDYの通算4作目となるフル・アルバム。

このバンドのことは一応デビュー当時から知っていて、J-POPっぽいヴォーカル・メロディをフィーチュアしたメロディック・パワー・メタルとして「結構いいね」と思っていたのですが、本作はいよいよJ-POPとして売れていいレベルにクオリティが上がってきていて驚きました。

いや、実際このアルバムが90年代にメジャー・レーベルからリリースされていたら結構売れたんじゃないでしょうか。実はHR/HM的なエッセンスを隠し味にしてきたビーイングが契約してもおかしくないサウンドだと思います。

HARUKA(Vo)の歌声が故坂井泉水(ZARD)を思わせることもそういう印象を強めているわけですが、この独特の儚さを感じる歌声の魅力はきっと日本人にしかわかるまい…と思っていたらYouTubeのコメント欄などを見るとかなり海外からの書き込みも多く、このバンドの音楽は日本人向けのようで意外と(?)普遍的な魅力があるのかもと思いました。

初期はもう少しあからさまにクサメタルっぽいアレンジだったような気がしますが、本作のモダンなタッチのサウンドの方がこのバンドの持つ個性や独特のメジャー感にマッチしていますね。

このブログの読者に伝わるかどうかわかりませんが、私が好きなKeyのゲーム/アニメの主題歌、"鳥の詩"や"My Soul, Your Beats"に通じる、儚さと飛翔感が同居する不思議なフィーリングがあって、個人的な琴線に触れまくるんですよね。

バンドが描こうとするものにクオリティが追いついた感のある傑作だと思います。日本人だけが作れるメロディック・パワー・メタルとしてもっと広く知られ、評価されてほしい音楽です。

しかしここまで音楽が洗練されてくると、このいかにもクサメタル然としたバンド名とちょっとミスマッチなような気がしますね。【87点】





SKELETOON "NEMESIS" アルバム・レビュー

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イタリアのメロディック・パワー・メタル・バンド、SKELETOONの、日本デビュー作となった前作"THEY NEVER SAY DIE"(2019)に続く通算4作目のフル・アルバム。

先行公開されていたタイトル曲のMVが、これまでのHELLOWEEN直系の楽曲とは趣を異にするモダンなテイストの楽曲だったため、「すわ、これはメロスピの鬼門、方向転換に手を出したか」と危ぶんでいましたが、SFっぽい雰囲気のイントロ序曲#1に続く、#2 "Brighter Than 1000 Suns"、そしてアレッサンドロ・コンティがゲスト参加する#3 "Will You Save Us All"と、かつて「ジャーマン・メタル」と呼ばれたバンドに期待される疾走感とドラマティックなメロディを備えた楽曲が続き、「変わってないやん…」と思わずニッコリ。

前述のタイトル曲#4や、#6 "Cold The Night"のようなバラードでアルバムに緩急をつけつつ、スピード感のある楽曲を中心にまとめた作風は、そのメロディ・センスの高さもあって往年のHEAVENLYを思い出してしまった。

#5 "Starseeker"や、ビル・ハドソンがゲスト参加した#8 "Wake Up The Fire"などに顕著なキャッチーなセンスは初期GAMMA RAYに通じるものがあり、これまた頬が緩む。

DGMのシモーネ・ムラローニ(G)や現RHAPSODY OF FIREのジャコモ・ヴォーリなど母国の大先輩をゲストに迎えた8分超の大作#10 "Arcana Opera"も聴き応えがあるし、自らのことを標榜していると思われる本編ラストの#11 "The Nerdmetal Superheroes"はきっと今後ライブで重要な位置を占めるアンセムとなっていくことだろう。

ダメ押しの日本盤ボーナスはANGRAの"Carry On"に、AVANTASIAの"The Seven Angels"と、この手のジャンルのクラシックというべき名曲が収録され、特に後者はアレッサンドロ・コンティの他、イヴァン・ジャンニーニ(VISION DIVINE, DERDIAN)、サラ・スクワラドーニ(ANCIENT BARDS)など、豪華なゲスト・シンガーが揃い踏みでイタリアン・メタル・ファンにとってはたまらない。

ヴォーカルがギリギリの音域で歌っているのがちょっとあからさま過ぎてライブで歌えるのかがやや不安ですが(笑)、今年のメロスピ部門一等賞はこのアルバムですね、個人的には。【87点】





MAJESTICA "A CHRISTMAS CAROL" アルバム・レビュー

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現SABATONのギタリストとしても知られるトミー・ヨハンソン(Vo, G, Key)率いるMAJESTICAのセカンド・アルバム。

MAJESTICAはトミーが元々SABATON加入前からやっていたREINXEEDの改名バンドのようなものなので、REINXEED時代からカウントすると通算8作目となる(企画盤である"SWEDISH HITZ GOES METAL"シリーズは除く)。

本作は本作はチャールズ・ディケンズの名作小説、『クリスマス・キャロル』(1843)に基づいたコンセプト・アルバムになっており、作品のテーマ性からか、有名なクリスマス・ソングのフレーズが随所に取り入れられている。

そういうストーリー性を踏まえたドラマの演出ゆえか、「クリスマスっぽさ」の演出のためか、前作よりもキーボードによる大仰なオーケストレーションがフィーチュアされており、そういう意味では前身であるREINXEED時代に近い雰囲気がある。

このド派手なキーボード使いをゴージャスと感じるかチープと感じるかは聴き手の感性次第という気もするが、いずれにせよトミー・ヨハンソンらしいメロディックでドラマティックなサウンドが速い曲からバラードまで全編に渡って響き渡り、彼の音楽を愛好するものであれば納得のシンフォニック・パワー・メタル・アルバムとなっている。

ただ、やはり有名クリスマスソングの引用によって、全編に「クリスマス感」が漂っている関係で、12月25日を過ぎてしまうといささか季節外れというか、「今じゃない」感が漂ってしまうのもまた事実(苦笑)。次聴くとしたら最速でも来年の12月に入ってからでしょう。

まあ、クリスマス・ソングというのは一発当たるとデカいんですけどね。世界一売れたシングル(5000万枚以上!)はビング・クロスビーの『ホワイト・クリスマス』ですし、日本でも35年連続オリコンTOP100にランクインしている曲は山下達郎の『クリスマス・イブ』だけだと言いますし。それ以外にもワム!のアレとか、マライア・キャリーのアレとか、もはや毎年必ずどこかで流れている気がします。

このアルバムや、このアルバムに収録されているどれかの曲が、せめてメタル・ファンの間だけでもそんな存在になれば凄いことだと思いますが、とりあえず発売直後の反響を見る限りそういうことにはならなそうな気がします(苦笑)。

とはいえ、トミー・ヨハンソンのトニー・カッコ(SONATA ARCTICA)を思わせる、ちょっと甘いヴォーカルは、このメロディックでシンフォニックなサウンドにピッタリハマっており、この手の音楽のファンであれば、時期を外したとしても聴いて損のないアルバムだと思います。【83点】


この曲の歌い出しはSTRATOVARIUSの"Against The Wind"を思い出させますね。





DGM "TRAGIC SEPARATION"アルバム・レビュー

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イタリアのプログレッシヴ・メタル・バンド、というよりは、もはやプロデューサーやエンジニアとして多くのバンド/プロジェクトを手掛けるシモーネ・ムラローニ(G)が在籍するバンド、と言った方がむしろ通りがいいかもしれないDGMの、通算10作目となるフル・アルバム。

バンド通算で10作目、そしてシモーネ・ムラローニが加入してから5作目という「節目」のアルバムだから、ということなのかどうか不明だが、これまで彼らが実践してきたスタイルの集大成的な印象さえ感じる充実したアルバムに仕上がっている。

アルバムのオープニングを飾る#1 “Flesh And Blood”は、一般に「プログレッシヴ・メタル・バンド」として認知されている彼らのパブリック・イメージを完璧に体現する楽曲で、このスタイルならではの緊張感と、彼らならではのメロディによる聴きやすさが絶妙のバランスで均衡する楽曲。

一方で続く#2 “Surrender”は彼らのレパートリーでも1、2を争うであろうキャッチーな曲で、もはやメロディアス・ハードと呼んでも過言ではなく、本作を貫く豊かなメロディを象徴している。

アウトロ的なインストの小曲 #10を除くとアルバムのラストとなる#9 “Turn Back Time”が、パワー・メタリックな疾走パートを持つ楽曲であることが、プログレッシヴ・メタル×パワー・メタルという、このバンドの持つ2つのエレメントが本作には非常に良いバランスで(均等という意味ではない)同居する本作の作風をわかりやすく象徴している。

プログレッシヴでテクニカルな要素も決して演奏者のオナニーにならず、楽曲に緊張感とフックを与える役割に徹しており、マーク・バジーレの情熱的なヴォーカルが歌い上げるメロディは常に叙情的で、「プログレッシヴ」という言葉にあまり良い印象を持っていないメロディ志向のリスナーにも取っつきやすいアルバムといえよう。

演奏、サウンド・プロダクション、楽曲、そして全体から醸し出されるスケール感と全く非の打ち所がないアルバムで、完成度だけで言うならもしかすると今年リリースされたHR/HM作品の中で随一と言っても過言ではないかもしれない。

もちろん音楽、特にロック/メタルは完璧であることが必ずしも魅力につながらないのだが、それでも本作のクオリティはもっと広く認知され、高く評価されて然るべきものであることは間違いない。【87点】