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HAMMERFALL "DOMINION" アルバム・レビュー

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スウェーデンを代表するヘヴィ・メタル・バンド、HAMMERFALLの、"Napalm Records"移籍後第2弾となる、通算11作目のフル・アルバム。

彼らのディスコグラフィーで一番冴えない仕上がりだった(と、個人的には思っている)"INFECTED"(2011)を手掛けたアメリカ人プロデューサー/ミュージシャンのジェイムズ・マイケル(SIXX:AM)を再び共同プロデュースに起用したと聞いて、一抹の不安を感じていたが、結果論で言えば全くの杞憂、彼ららしさに満ちたピュア・メタル・アルバムに仕上がっている。

先行シングルとして公開された"(We Make) Sweden Rock"は、タイトルだけ見るといささか不遜な響きながら、歌詞を読むと、80年代初頭からのスウェーデンのHR/HMアーティストのバンド名や楽曲タイトルがそこかしこに織り込まれており、言うなれば自分たちを含むヘヴィ・メタル・バンドこそがスウェーデンのロック・シーンを作ってきたんだ、という気概を示す、アンセム的な楽曲。

こういうキャッチーな曲を狙って作れる所がこのバンドが成功を収めた要因だと考えており、それ以外の曲も、ACCEPT風だったりYNGWIE風だったりとネタ元は割と明白ながら、楽曲全体で見るとパクリにはなっていないソングライティングはここ数年でさらに磨きがかかっているように思われる。

速い曲からヘヴィな感触の曲、キャッチーな曲にバラードと、メタル・バンドに求められる範囲の中でバラエティを作り、どのタイプの楽曲にもちゃんとフックを設けてアルバム全体を飽きさせずに聴かせる手腕はもはや職人芸であり、ヨアキム・カンスの声質を生かした哀愁風味のメロディはクサくなり過ぎずにキャッチーに響く。

前作は母国スウェーデンで6位と、彼らにしてはやや不調なチャート成績だったが(彼らの歴史の中で出来は良い部類だったと思うが)、本作は2位を獲得、ドイツでも4位と、過去最高レベルの成功を収め、スウェーデンのメタル・キングとしての地位が盤石なものであることを示す充実のアルバム。【85点】





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SABATON “THE GREAT WAR” アルバム・レビュー

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昨年BABYMETAL主催のフェス(というと大げさかもしれませんが)“DARK NIGHT CARNIVAL”で来日したスウェーデンの大人気「ウォー・メタル」バンド、SABATONの、前作”THE LAST STAND”(2016)以来、通算9作目となるフル・アルバム。

デビュー以来戦争、あるいは戦闘を歌詞テーマに、そのテーマに相応しい勇ましいメタル・サウンドを特徴としてきた彼らだが、本作ではアルバム一枚を通して第1次世界大戦という「大ネタ」を扱っており、戦争の規模に相応しい(?)フル・コンセプト・アルバムとなっている。

約10年前の2010年に発表された”COAT OF ARMS”は第2次世界大戦を扱ったコンセプト・アルバムだったが、世界規模の大戦ネタが今後発生しないことを願うしかありません。

音楽的にはシンフォニックで勇壮でキャッチーな「SABATON節」が変わることなく展開されており、ヨアキム・ブローデン(Vo)の太く雄々しいヴォーカルがこの手のメロディック・パワー・メタルにおいては個性的であるがゆえに金太郎飴的に響かないでもない。

ただ、画一的な曲調にもかかわらず、楽曲のテンポやアレンジによって巧みに差別化され、どの曲にもその曲を特徴づけるフックが設けられているのは流石で、現在欧州随一と言っても過言ではない人気バンドであることも頷ける完成度の高さを誇っている。

このバンドについては毎回ながら、楽曲が3分台から4分台とコンパクトで、アルバムを全体でも40分程度に収まっているため、濃厚かつ画一的な作風でも聴き疲れすることがないのは、自らの音楽の強みと弱みをちゃんと理解しているのだろう。

そして本作については、オープニング・ナンバーである#1 ”The Future Of Warfare”(NIGHTWISHのフロール・ヤンセンがゲスト参加しているが、あまり存在感はない)が、ちょっと機械的な印象を受ける彼らにとっては変わった曲で、一聴時に「あれ、本作はちょっと今までと違う?」という良い意味での違和感を与えるのと、ちょうど中盤に当たる#6 “The Red Baron”のイントロのオルガン・パート(バッハのフーガですね)が一種の小休止的役割を果たしており、そしてアウトロの少年合唱団的な#11 “In Flanders Fields”の存在によって「特別なアルバム」として個性を形作っている。

前作のツアーから参加したトミー・ヨハンソン(G ; MAJESTICA)の名前がクレジットされているのは#8 “A Ghost In The Trenches”のみだが(たしかにこの曲は言われてみるとどことなくREINXEEDっぽいパートが多い)、本作では従来にも増してギター・ソロがメロディックに歌っている印象があり、そういう意味でトミー・ヨハンソンの貢献は小さくなかったのではないかと思われる。

本作は2014年の”HEROES”以来3作連続となる母国スウェーデンのチャート1位を獲得しており、さらに本作に先立って発表された、ドイツ人の愛国心を掻き立てる”Bismarck”(日本人にとっての戦艦大和である)のMVが評判を呼んだこともあってか、ドイツのチャートでも彼ら初となる1位を獲得している(もっとも前作も2位まで上昇していたが)。

あと、どうでもいいっちゃいいんですが、ジャケットのアートワークの雰囲気が前作と似すぎてませんかね? (苦笑)【85点】





TURILLI / LIONE RHAPSODY “ZERO GRAVITY” アルバム・レビュー

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アレックス・スタロポリ(Key : RHAPSODY OF FIRE)抜きで行なわれたRHAPSODYデビュー20周年のフェアウェル・ツアーは大成功を収め、メタルを離れてアコースティックな音楽、もしくはQUEENのようなロック・オペラを始めようと思っていたルカ・トゥリッリ(G)に「自分とファビオ・リオーネ(Vo)のコンビこそが、ファンの望む最強タッグである」という理解を促すことになった。

それは少なくともRHAPSODY時代から彼らを支持する私のようなファンにとって完全に事実で、「今更それに気づいたのかよ」という感じなのだが(苦笑)、結果的にルカ・トゥリッリという才能がこういう形でメタルのフィールドに留まってくれたことは喜ばしい。

ルカ・トゥリッリとファビオ・リオーネ以外のメンバーもドミニク・ルアキン(G)、パトリス・ガース(B)、アレックス・ホルツワース(Dr)という元RHAPSODY OF FIREのメンバーなので、どうしても「アレックス・スタロポリのいないRHAPSODY OF FIRE」というか、むしろメンツ的にはこっちが本家で、現RHAPSODY OF FIREの方がパチモンのように映ってしまうが、本作を聴けば音楽的に”RHAPSODY”というブランドに期待されているものを継承しているのがアレックス・スタロポリの現RHAPSODY OF FIREであることが明確にわかる。

本作で展開されている音楽はシンフォニック・プログレッシヴ・パワー・メタル(長い)とでも形容すべきもので、現RHAPSODY OF FIREに比べるとやや複雑で、語弊を恐れずに言えば高尚な印象を与えるものである。

アルバムのタイトルやアートワーク、バンド(ルカいわくプロジェクトではなくバンドだそうです)のロゴデザインなどを見るとちょっと近未来的な印象で、これまでルカ・トゥリッリが制作してきた作品の中で見られたSF趣味が強く押し出された、デジタルな音色がフィーチュアされたサウンドになるのかと予想していたが、パッと聴きそういう印象は薄く、その点は意外。

そういう意味ではファビオと組んでいた時期のRHAPSODY(OF FIRE)のサウンドを再現するものというよりは、LUCA TURILLI'S RHAPSODYのサウンドを発展させたものであり、バンド名がLUCA TURILLI'S RHAPSODYではなくTURILLI / LIONE RHAPSODYなのは単にファビオ・リオーネの顔を立てたというか、マーケティング的な思惑によるものでしかなさそうだ。

シンフォニック・アレンジのクオリティはさすがこのジャンルのオリジネイターと言うべきクオリティで、この手の音楽でこれ以上のレベルに達しているものはほぼ皆無だと思われる。

サウンド・プロダクションの上質さも本作のクオリティに大きく貢献しており、そこはミキシングとマスタリングを手掛けたシモーネ・ムラローニ(DGM)の手腕に帰せられる所が大だろう。

そしてクレジットによると本作のリズム・ギター・パート(つまりバッキングのギター)はルカ・トゥリッリによって書かれてはいるものの、演奏はシモーネ・ムラローニが担当しており(いくつかの曲でギター・ソロも)、もはやルカ・トゥリッリはギタリストとしての自己主張は捨て、プロデューサー/コンポーザーとしてこのプロジェクトのクオリティアップに徹している。

作曲者が演奏者としての自分に重きを置いていないことで、プログレッシヴ・メタルにありがちな楽器のソロ・パートばかりが延々と続いて10分とか20分とかのやたらに長い曲になる、という私の苦手なパターンが回避されているのは、シモーネ・ムラローニというルカ・トゥリッリが自らの代わりに演奏を託すに相応しいと思える人材がいたことの副産物と考えることもでき、そういう意味で本作におけるシモーネ・ムラローニの貢献は大きい(もう一人のギタリストであるドミニク・ルアキンは立場がないが)。

楽曲は複雑ながら随所に耳を引くメロディも存在しているので、退屈することはないどころか聴くたびに新たな発見があり、聴き込めば聴き込むだけ入り込むことができる音楽作品であると言えるだろう。

一方で、これだけ大量の音楽が世の中に供給され、Webサービスを介して低コストで次々と新しい音楽を聴くことができる環境においては、ひとつの作品を何度も聴き込むという向き合い方はなかなか難しく、本作の真価が広く理解されることは難しいような気がしないでもない。

「聴き込みたい」というモチベーションを作るにはやはりそれなりのファースト・インパクトを与えなくてはならず、恐らく本作を手に取るリスナーの大半を占めるであろう「オリジナルRHAPSODYのファン」が期待する「勇壮なシンフォニック・パワー・メタル」のスタイルではない本作がそこまでのモチベーションを喚起できるかというと、なかなかそれは難しいのではないかというのが正直な所。

そういう意味で、今年リリースされたRHAPSODY OF FIREの”THE EIGHTH MOUNTAIN”が彼らの主戦場であるドイツのチャートで過去最高の22位を記録し、本作が51位にとどまったのは、リスナーが”RHAPSODY”というブランド名にどのようなサウンドを求めているかを端的に表す事実だと思う。【85点】







MAJESTICA “ABOVE THE SKY” アルバム・レビュー

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2016年にギタリストとしてSABATONに加入したことで一躍知名度を上げたトミー・ヨハンソン(Vo, G)が、これまでREIN XEED名義でやっていた自身のプロジェクトをMAJESTICAと改名してリリースした再(?)デビュー・アルバム。

これまでREIN XEED名義で2008年から2013年までの間に6枚のオリジナル・アルバムと2枚の企画盤と、年に1枚以上のペースで精力的に音楽をクリエイトしていたトミーが、数年前には断ったというSABATONへの加入に踏み切ったのは知名度やお金、人脈などを得るための、いわゆる「売名行為」だったのではないかと推察するが、その選択は本作が大手"Nuclear Blast"からリリースされている事実と、この仕上がりから考えて正解だったと言えるのではないだろうか。

基本的な音楽スタイルはREIN XEED時代となんら変わらないピュアな欧州型メロディック・パワー・メタルだが、全ての面で洗練され、グレードアップしているのは明らかで、きっとあのままREIN XEEDとして創作を続けていたらこうはならなかったことだろう。

元々メロディ・メーカーとしての作曲センスは充分だったトミーだが、ライブ・バンドとして卓越した存在であるSABATONで数多くの大きなステージを経験したことが活きているのか、これまでよりもライブで映えそうな楽曲に磨かれている。

SINERGYやDIONISUS、SAINT DEAMONなどのドラマーとして知られ、多くのバンドの裏方仕事を経験しているロニー・ミリアノヴィックを共同プロデューサーに迎えたことも、本作のサウンド・プロダクションを含めたメジャー感の向上に寄与しているに違いない。

自分でだいたいのことができてしまう人ほど、外部の専門家に関わってもらったほうが往々にして良い物になるんですよねえ…(あの大御所ギタリストに言ってます/笑)。

トミー自身の歌声は甘さがあって多少好き嫌いが分かれそうだが、かつてやや不安定だった高音域も力強さを増し、2017年にVoが脱退したTWILIGHT FORCEの代役シンガーとしてステージに立った(つまり、純粋にシンガーとしてニーズがあった)のも納得のクオリティで、この手のジャンルのメタルが好きな人なら減点要素になることはないであろう歌唱を聞かせている。

元GAMMA RAY, HELLOWEENのウリ・カッシュ(Dr)の参加(アルバムのみ)も話題のひとつではあるが、作品自体にこれだけのクオリティがあれば、「ちょっと箔をつけた」以上の意味はないだろう。

このバンドがブレイクしたら、ステージ上で「イジられ役」にされてしまっているSABATONはさっさと脱退しちゃいそう(笑)。

なお、#4 “Motley True”はMOTLEY CRUEについての歌でも、LAメタルっぽい曲でもありません(笑)【86点】


これは"Eagle Fly Free"のオマージュ・ソングでしょうね。歌詞にも"No Eagles Flying Free"というフレーズが登場するし。


こういう80年代っぽい曲もまたいい。

GLORYHAMMER “LEGENDS FROM BEYOND THE GALACTIC TERRORVORTEX” アルバム・レビュー

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スコットランドの「パイレーツ・メタル」バンド、ALESTORMのクリストファー・ボウズ(Key)が中心になり結成されたシンフォニック・パワー・メタル・バンドGLORYHAMMERの通算3作目となるアルバム。

本作でもデビュー・アルバム”TALES FROM THE KINGDOM OF FIFE”から続くストーリーの続編が展開され、前作” SPACE 1992 : RISE OF THE CHAOS WIZARDS”で宇宙にまで飛び出した彼らの物語は本作でも時空を超えて壮大に展開されている。

音楽的には完全に初期RHAPSODY(OF FIREが付く前)のフォロワーと言っていい、ピュアなシンフォニック・パワー・メタル路線が本作でも貫かれているが、もはや本家が失ってしまった勇壮さとキャッチーさを兼ね備えた「わかりやすさ」がこのバンド最大の武器で、2019年現在、こういうパワー・メタル系シンフォニック・メタルの入門に彼ら以上に相応しい存在はいないだろう。

#5 “Power Of The Laser Dragon Fire”のようなスネア裏打ち疾走系の楽曲は、かつてRHAPSODYに望んでほとんど得られなかったタイプの楽曲だけに、「これだよ、これ」と溜飲が下がる。

もちろんそれ以外の楽曲もフック充分、ライブで盛り上がる様子が目に浮かぶアツさがあり、大抵の曲はドラマティックでありながら5分以下とコンパクトにまとまっているのもクリストファーの優れた作曲センスを感じさせる。

一方で本作のクライマックスを飾る#10 “The Fires Of Ancient Cosmic”のような12分以上に及ぶ大作も退屈さを感じさせることなく構築してみせるあたり、MVこそネタめいて見えてしまうが(苦笑)、エピック・メタル・バンドとしての彼らの実力は本物である。

前作収録の” Universe On Fire”のようなダンサブルと言ってもいいようなノリノリの#8 “Hootsforce”のようなキャッチーな楽曲もバンドの世界観の一部にする辺りは、大陸欧州のシンフォニック・パワー・メタル・バンドよりも器用で、そういう懐の深さがあってこそドイツのナショナル・チャートで6位まで上昇するという成功につながっていると言えるだろう。

日本でもようやく大手キングレコードからの国内盤リリースとなったことだし、ブレイクを期待したいところ。なお、輸入盤のデラックス・エディションは、本作収録曲全曲のシンフォニック・アレンジ・バージョンがボーナス・ディスクとして付帯。【88点】