ONE DESIRE / ONE DESIRE

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2012年にドラマーのオッシ・シヴラによって結成されたODというプロジェクトを母体にスタートした、もはやメロディアス系バンドの総本山というべき『Frontiers Records』がパワー・プッシュをかけている新バンドのデビュー作。

2014年にオッシ・シヴラが、かつてNEGATIVEやSTURM UND DRANGなどのプロデューサーを務めていたギタリストのジミー・ウェスターランドと出会って制作し、インターネット上に公開した3曲のデモが『Frontiers Records』のオーナーであるセラフィノ・ペルジーノの目に留まったことで道が開けた。

そして、そのセラフィノからもっと強力なヴォーカリスト(当時はダン・ヴァスクなるブラジル人シンガーが歌っていた)を入れることを勧められ、かつてジミー・ウェスターランドが手掛けたSTURM UND DRANGのアンドレ・リンマンが加入することになったという。

アンドレ加入後、バンド名をONE DESIREに改名して本格的に活動を開始するにあたり、それまであくまで裏方的に関わっていたジミー・ウェスターランドがギタリストとして正式に加入、また、CAIN’S OFFERINGのヨナス・クールバーグ(B)が参加してバンドのラインナップが完成、晴れて『Frontiers Records』との契約も成立した。

作曲にはその『Frontiers Records』が擁するソングライター・チームや、ジミー・ウェスターランドの人脈も関わり、クオリティの高い楽曲を揃えてきている。

特に冒頭を飾る#1「Hurt」はジミーと、CRASH THE SYSTEMのメンバーとしても知られる『Frontiers Records』お抱えソングライターの一人、ソーレン・クロンクヴィストと、そしてフィンランドで活動中のノルウェー人ソングライター、ゲイル・ローニンの3人で共作したナンバーで、80年代の歌謡曲を思わせる珠玉の哀愁ナンバーに仕上がっている。これは個人的に今年のベスト・チューン有力候補のキラー・チューンっすわ。

続く#2「Apologize」はECLIPSEのエリック・モーテンセンと、これまた『Frontiers Records』からリリースされたアルバムをよく聴いている方にはおなじみであろうスウェーデン人ソングライターのヨハン・ベッカーが共作した曲で、これまた北欧然とした哀愁が魅力のナンバーに仕上がっている。

Voのアンドレ・リンマンが一人で手掛けた#3「Love Injection」や#6「Straight Through The Heart」といったナンバーは、STRUM UND DRANGのラスト(?)・アルバム「GRADUATION DAY」に通じるモダンなポップ・フィーリングと80年代的なセンスが絶妙に融合した楽曲で、HR/HM色は薄いが、アンドレがソングライターとしても確かな実力を備えていることを示している。しかしアンドレ、いいヴォーカリストになったなあ。声質も北欧タイプ(?)だし。

全体的にはHR/HMというよりはAORといった趣の楽曲が大半を占める中、エリック・モーテンセンとヨハン・ベッカー、そしてアンドレも関わった#9「Buried Alive」は唐突にPRETTY MAIDSを思わせるメロディックなパワー・メタル・チューンで異彩を放つが、ECLIPSEもアルバムに1曲はこの手の曲を収録している気がするので、もはや欧州メロディアス・ハード界隈においてはこのタイプの楽曲も「(アルバム収録曲の)幅の内」なのかもしれない。

収録曲を10曲に絞った(日本盤ボーナス・トラックを除く)ことも功を奏し、印象的な楽曲ばかりが揃った素晴らしいデビュー・アルバムに仕上がっている。バンド名やジャケットのアートワークのセンスはいささかアレだし、サウンド・プロダクションを含め、過剰なまでに80年代テイストを漂わせていることをネガティブに受け止める人もいるかもしれないが、この北欧ならではの切なさと哀愁、個人的には大好物なサウンド。【87点】

◆本作収録「Hurt」のMV

もうイントロから名曲の予感しかしません。


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BLOODBOUND / WAR OF DRAGONS

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ライブ作品『ONE NIGHT OF BLOOD』(2016)を挟んでリリースされた通算7作目のスタジオ・アルバム。

ここ数作、安定したラインナップで活動していた彼らだが、本作完成後、ドラマーのペレ・エイカーリンドが「音楽性の違い」のために脱退している。

前作『STORMBORN』をレビューした際に「これまでで最もメロディック・パワー・メタル色の強い作風」と形容していたが、本作はその表現をそのまま継承・更新し「これまでで最もメロディック・パワー・メタル色の強い作風」と言わざるをえない(笑)。

『BURRN!』誌のレビューでも指摘されていたが、とにかく曲名からしてベタベタで、「Dragon」というワードが入った楽曲が12曲(ボーナス・トラックを除く)中3曲も含まれ、それ以外にも「Battle In The Sky」「King Of Swords」「Fallen Heroes」といった、メロディック・パワー・メタル・バンドのトラック・リスト頻出単語ばかりで固められた楽曲が並んでおり、これにパロディのニュアンスがあるかどうかはわからないが、「狙っている」ことは間違いないだろう。

というか、「Guardian At Heaven’s Gate」なんて曲名、「ジャーマン・メタル」世代であれば頭に「Blind」と付けたくなってしまいますよ(笑)。

ジャケットのアートワークも、彼らのアルバムで毎回多少姿を変えながら登場し続けてきた魔物(私は勝手に「ノスフェラトゥ君」と呼んでいるが)は、ドラゴンの背に乗る形で小さく登場しつつも、基本的にはドラゴンの姿が大きくフィーチュアされ、ファンタジックでエピカルな嗜好のメタル・ファンの目を引くようになっている。

前作から顕著になってきた派手なクワイアの使い方はまるでSABATONあるいはPOWERWOLF的であり、楽曲にインパクトをつける効果的なスパイスとなっている。

#5「Silver Wings」のようにケルティックな旋律がフィーチュアされたフォーク・メタル的な楽曲の存在も、このバンドがかつてのような王道正統派から、日本でいう「クサメタル」(もはや死語?)の領域にシフトチェンジしたことを証明する楽曲と言えるだろう。

相変わらず特定のバンドの特定の楽曲を思わせるようなパートが随所に登場するが、「1曲丸々そっくり」という楽曲は存在しないのでギリギリセーフか(笑)。オマージュというよりは美味しい所を拝借している、という感じの「確信犯」な観は否めないが。

いずれにせよ、この手の音楽のファンであればついツボに入ってしまうフックに満ちたフレーズがあちこちにちりばめられており、私のようにメロディック・パワー・メタルのファンを自認するような人間であれば何だかんだ言ってかなり楽しめることだろう。

加入後4作目としてすっかりバンドの「顔」になったパトリック・ヨハンソン(元DAWN OF SILENCE)のトビアス・サメット(EDGUY, AVANTASIA)とヨアキム・カンス(HAMMERFALL)を7:3の割合でブレンドしたかのようなヴォーカルも強い個性は感じないが、安定感と表現力は充分。

ライブ映像を観る限りパフォーマンスも充分にプロフェッショナルだし、ここらでLOUD PARKとか、単独である程度集客できるメロディック・メタル系のバンドの前座とかでもいいので来日を実現させてほしいですね。【85点】

◆本作収録「Battle In The Sky」のMV


LIONVILLE / A WORLD OF FOOLS

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イタリアのメロディアス・ハード/AORプロジェクト、LIONVILLEのサード・アルバム。

これまでは「Avenue Of Allies Music」というマイナー・レーベルからのリリースで、日本盤もルビコン・ミュージックというインディーズでのリリースだったが、近年DGMやSECRET SPHEREなど、自国のバンドと積極的に契約し始めた大手「Frontiers Records」に移籍し、日本盤もメジャーのキングレコードからのリリースとなった。

元々「Frontiers Records」のお抱えソングライターの一人であるアレッサンドロ・デル・ヴェッキオとの縁も深く、「Frontiers Records」所属バンドであるWORK OF ARTのラーズ・サフサンドがヴォーカルを務め、それ以外にも「Frontiers Records」人脈の人たちが多数関わっていただけに、同レーベルに移籍したことについては驚きはない、というかむしろ収まるべき所に収まった、という感さえある。

基本的には中心人物であるステファノ・ライオネッティ(G, Key, Vo)のプロジェクトなので、これまではレコーディングにはアレッサンドロ・デル・ヴェッキオやブルース・ガイチといった、その筋では著名なサウンド・クリエイターのサポートを受けているケースが目立ったが、今回はいわゆるバンド形式でレコーディングが行なわれているようだ。今後はコンスタントなライブ活動なども見込んでいるのかもしれない。

とはいえサウンドについてはこれまでと何の変わりもなく、洗練された上質なAORサウンドが展開されており、これまでの2作を気に入った人であれば安心して身を委ねることができるだろう。

ヴォーカルがWORK OF ARTのラーズ・サフサンドで、基本的な音楽性も通じることから、もちろんWORK OF ARTのファンにもオススメである。

一方で、私のようにWORK OF ARTがきっかけでこのプロジェクトに手を出した人間にとっては、その「WORK OF ARTっぽさ」が不満に通じるというのも皮肉な事実。要するにWORK OF ARTの方が私好みの北欧らしい哀愁が強いし、テクニカルな要素も強めでフックがあるので、WORK OF ARTとの比較においてちょっぴり聴き劣りしてしまうのだ。

ただ、その辺は好みの問題で、LIONVILLEのサウンドの方が明るく洗練され、スムーズで聴きやすい、と感じる人もいることだろう。

まあ、とにかく私はラーズ・サフサンドの「声ファン」で(もし生まれ変わったらこんな声の持ち主になりたい)、この歌声を一人でも多くの人に知ってもらいたくてこのレビューを綴っている次第です。

とりあえず以下に貼っているMVを観て、その歌声に感じるものがあれば、個人的なイチオシ作であるWORK OF ARTの2ndをぜひ聴いてみてください。【83点】

◆本作収録「I Will Wait」のMV


◆本作収録「Bring Me Back Our Love」のMV


BATTLE BEAST / BRINGER OF PAIN

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前作『UNHOLY SAVIOR』発表後、それまで全ての楽曲の作詞・作曲を手掛けてきたアントン・カバネン(G / Vo)がバンド内における人間関係の悪化によって、解雇に近い形で脱退するという衝撃的な事態が勃発。

2015年5月に行なわれた来日公演でアントンに代わってプレイしていた、キーボーディストであるヤンネ・ビョルクロトの弟、ヨーナ・ビョルクロトを正式なメンバーに迎えてリリースされた通算4作目。

そのヤンネ&ヨーナのビョルクロト兄弟を中心に、バンドのメンバー全員が参加する形で行なわれたソングライティングの結果は、拍子抜けするほどに前作の延長線上にあるもので、中心人物の脱退の影響はパッと聴きほとんど感じられない。

ただ、前作時点でだいぶ進行していた「キャッチーさの増加」はある意味さらに進んでいて、デビュー当時に顕著だったACCEPTを彷彿させる「鋼鉄感」が減少の一途をたどっているのはいささか懸念材料。今の所楽曲のクオリティがその辺の不満を上回る満足感を提供してくれてはいるが…。

特に、前作からのシングル曲の中でも最も物議を醸した「Touch In The Night」路線の80年代ダンサブル・ポップ・ナンバー#9「Dancing With The Beast」なんてもはや非メタルの領域。個人的には好きですが、彼らに期待されている「イキのいいメタル・バンド」のイメージをキープする上ではあえてアルバムからは外す、という選択もあったのでは。

個人的にリフといいKeyアレンジといい「ザ・80年代」という感触の#3「King For A Day」、北欧のバンドらしい哀愁がたまらない#4「Beyond The Burning Skies」、勇壮なKeyリフがカッコいい#7「Bustard Son Of Odin」などがお気に入りだが、やはり全体としてみるとリフのエッジやサウンド全体のパワーが減退しているように感じられるのはアントン脱退の影響なのかもしれない。

とはいえ未だ充分にハイクオリティで、むしろ80年代タイプのHR/HMのファンにとってはさらに親しみやすくなったと言えなくもなく、ライブではきっと楽しめそうな雰囲気が漂っているので 来日したらぜひ観に行きたいとは思いますけどね!【85点】

◆本作収録『Bringer Of Pain』のMV


◆本作収録『King For A Day』のMV


◆本作収録『Familiar Hell」のMV




DOLL$BOXX / DOLLS APARTMENT (2012)

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リリース当時はノーチェックで、リリースから1年以上経った中途半端なタイミングで聴いたために、このサイト/ブログでは特に触れてこなかったが、ここ5年ほどの間に出会ったアルバムの中で1、2を争うほど気に入っているアルバム。

このバンドはガールズ・ロック・バンドGacharic Spin と、元LIGHT BRINGER、現Fuki Communeのヴォーカリスト、Fukiによるプロジェクトで、かつてGacharic SpinとLIGHT BRINGERが対バンしたときに知り合い、2012年3月のGacharic Spinに、当時の専任ヴォーカリストが体調を壊してツアーに参加できなくなった際にFukiがサポート・ヴォーカルを務めたことが本プロジェクトの誕生につながったという。

Gacharic Spinの音楽というのはHR/HM的な要素を持ちつつもストレートにHR/HMと呼ぶことは難しい(本人たちもHR/HMというジャンルに括られることは望んでいないだろう)が、その男性顔負けにテクニカルでエネルギッシュな演奏、パフォーマンスはHR/HMファンの耳をも納得させるもので、そこにFukiの強力なヴォーカルが乗ることでマジカルなケミストリーが生まれている。

Fukiは本作リリース当時まだLIGHT BRINGERが活動中だったため、メタルではないものをやろうとしていたようだが、Gacharic Spinのメンバーは自分たちのバンドの音楽よりもストレートにカッコいいロックを作ろうと志向していたようで、結果としてかなりHR/HM寄りのハードで勢いのあるサウンドに仕上がっている。

快活さと哀愁を兼ね備えたメロディックな曲調、そしてFukiの声質もあって、パッと聴きはアニソン風のロックに聴こえるのだが、とにかく演奏が充実、主張しまくっていて、その点が圧倒的に「ロック・バンド」を感じさせる。

私は基本的にストレートなHR/HM系のロックにおいては、ベースにはドライブ感を強調する以上の役割を期待していないのだが、本作の中で聴かれる派手なスラッピングを含む動き回るベース・ラインは、目立ちまくるにもかかわらず単なるスタンド・プレイにならず楽曲の魅力を引き立てており、F チョッパーKOGA(B)のセンスには脱帽である。

そしてとにかく楽曲がいい。個人的な感覚ではLIGHT BRINGERやGacharic Spinのキラー・チューンばかりを集めてフュージョンしたかのような、両者の最良のエッセンスがブレンドされている楽曲ばかりだし、そのひたむきな思いが伝わってくる凛としてどこか切なさを秘めた歌メロはマイ琴線を掻き毟らんばかりである。きっと中高生の頃に出会っていたらナニを覚えたサルのように毎日聴き狂っていたことだろう。

特に1曲目から4曲目までの畳み掛けが凄まじい。この畳み掛けの押しの強さを一本調子と感じる人もいることだろうが、この想いとパッションの奔流とでもいうべきサウンドは成熟してしまったミュージシャンには出せないマジックだ。

インタビュー記事などを読むと制作スケジュールはかなりタイトだったようだが、本作に関して言えば変に煮詰める時間がなかったことがむしろ功を奏しているように思える。

そして今さらなぜこのタイミングで本作を取り上げたかというと、本日渋谷のTSUTAYA O-EASTで「WWフェイス」というDOLL$BOXX とGacharic SpinとFuki Communeの対バンイベントがあるからです。

私としてもぜひ観に行きたいイベントだったのですが、チケットが即完してしまったために行くことはかなわず…。その無念の思いをこの文章に叩きつけた次第です(笑)。

またぜひ近いうちにライブをやってくれることを願ってやみません。

◆本作収録「Loud Twin Stars」のMV


◆本作収録「Take My Chance」のMV