MASTERPLAN / PUMPKINGS

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元HELLOWEENのローランド・グラポウ(G)率いるMASTERPLANの、『NOVUM INITIUM』(2013)以来、通算6作目となるアルバムは、ローランドがかつて在籍したHELLOWEENで、ローランドが作曲した曲のリメイク・アルバムとなった。

なぜこのタイミングで、というと恐らくはHELLOWEENがカイ・ハンセン(G)&マイケル・キスク(Vo)をゲストに迎えての『PUMPKINS UNITED』というツアーを発表したことと無関係ではないだろう。

自分がそのツアーに声がかからなかったことに対するあてつけか、単に話題に乗っかろうという便乗商法かはともかく、あまり前向きなニュアンスは感じない。

とはいえ個人的にはローランドがHELLOWEENで残した楽曲には見るべきものがあると思っていたし、マイケル・ヴァイカート(G)にアンディ・デリス(Vo)という卓越したソングライターがいたがためにローランドの能力は過小評価されていた観もあっただけに、本作によってローランドの才能が再評価されるきっかけになれば、それ自体は悪くない話だと思う。

本作の収録曲は(例外も多いが)なんとなく時系列に並んでおり、アルバムの冒頭3曲はHELLOWEENにおけるローランド初参加作品となった『PINK BUBBLES GO APE』からの楽曲。この#1「Chance」、#2「Someone’s Crying」、#3「Mankind」という3曲を聴くと、同作のメロディック・パワー・メタル作品としての質を担保していたのはローランドだったことがよくわかる。

ローランドとしても当時は新メンバーとして、自分がHELLOWEENというバンドに期待されている楽曲を生み出すことができることを示す必要を感じていた、ということなのかもしれない。その後の楽曲はむしろHELLOWEENの多様性の部分を担うような楽曲が多いだけに、なおのことそう感じる。

特に『MASTER OF THE RINGS』(1994)収録の「Mr.Ego」や『THE TIME OF THE OATH』(1996)収録の「The Time Of The Oath」、『THE DARK RIDE』収録の「Escalation 666」などは、HELLOWEENのヘヴィ・サイドの楽曲として知られる楽曲であり、90年代にトレンドだったヘヴィ・サウンドを好むリスナーへのアプローチはローランドに一任されていたと言っても過言ではない。

もっともそのせいで日本ではローランドに対して「つまらん曲を書く奴」という印象がついてしまった観もあるが、「Mr. Ego」は欧州ではリード・シングルになっただけあって意外とキャッチーで耳に残る曲だし、「The Time Of The Oath」もリフや歌メロはともかくギター・ソロのパートはめっぽうカッコいい。

そう、本人の技術が必ずしも高くないだけにローランドについてあまりギタリストとして評価する声を聞かないが、個人的にはギター・ソロの「作曲」能力についてはかなり高いものがあると思っている。#6「Still We Go」のソロなんて学生時代一生懸命コピーしたものです(タッピングのパートが目立つ割に簡単で取っ掛かりやすかったんですよね)。

そして何と言ってもローランドがHELLOWEENに残した最高の名曲は「The Dark Ride」でしょう。日本ではアルバム『THE DARK RIDE』自体の評判があまり芳しくない印象なのであまり同曲についても充分に評価されていないような気がしますが、ドラマティックに疾走するサビ、絶品の展開と構築美を聴かせるギター・ソロと、ローランド一世一代の名曲でしょう。この曲が再評価されてこそ、本作が制作された意味も出てくるというもの。

まあ、正直な所#9「Music」みたいなつまらん曲も収録するくらいだったら、ウリ・カッシュ(Dr)が在籍しているうちに、ローランドだけでなくウリの楽曲も含めて選りすぐった楽曲でアルバムを作るべきだったと思うけど、まあタイミングというものがあるからやむを得ない所でしょう。

でもウリがいた頃ということは必然的にヨルン・ランデが歌っていたわけで、やはりその時に作っていたほうが良かったよなあ…。いや、現シンガーのリック・アルツィも充分な実力のあるヴォーカリストですが、ちょっと声質がガサツというか、ヨルン・ランデの方が器用に歌いこなしたと思うんですよね。

蛇足ですが本作のドラムは前作で叩いていたマーティン・スカロウプカ(CRADLE OF FILTH)から、リック・アルツィ同様AT VANCEのメンバーでもあるケヴィン・コットに替わっている。

◆本作収録「The Chance」のOfficial Lyric Video



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EDGUY / MONUMENTS

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ドイツのメロディック・パワー・メタル・バンド、EDGUYのデビュー25周年を記念したベスト・アルバム。

楽曲単位でダウンロードして聴くのが当たり前になっている現在、ベスト・アルバムなんてものにどれだけニーズがあるのかわからないが、個人的には「ちゃんと聴いてみたいが、どのアルバムから聴けばいいかわからない」アーティストへの入口としてそれなりに存在意義はあると思っている。

ベスト・アルバムをリリースするのは2004年の「HALL OF FLAMES」以来なので、今これからEDGUYを聴いてみたいと思っている人にとってはいい機会かもしれない。

ただ、そういうビギナーがいきなり2枚組なんていう重たい商品を買うかというといささか疑問で、個人的にはベストアルバムというのは1枚にまとめるべきだと思っている。長いキャリアの多い曲から、バランス良く選曲する編集センスこそがベストアルバムの付加価値だと思うので。

EDGUYの場合は楽曲の平均点が高いので、いくつかのライブ定番曲さえ押さえておけば、あとは極端に言えば適当に選曲してもそれなりに聴けるベストアルバムになると思われるが、こうしてあらためて聴くと速い曲からバラード、ドラマティックな長尺の曲からコンパクトでキャッチーな楽曲まで、クオリティの高さに感心させられる。

バラードの「Land Of The Miracle」と「Save Me」を聴き比べると、彼らがいかに垢抜けたかも端的に見えてくる。

新たに収められた新曲5曲も、彼ららしいメロディックかつエネルギッシュな楽曲に仕上がっており、ファンであればこの5曲のために買わざるをえないだろう。特に#4「Landmarks」は近年の彼らには珍しいストレートな疾走チューンで気持ちいいし、HELLOWEENの「I Want Out」を彷彿させるイントロ・リフの#5「The Mountaineer」もいい感じで、ここ10年でもトップクラスの楽曲だ。

1、2曲の新曲をエサに、全てのアルバムを持っているようなファンにベスト・アルバムを買わせるのはあこぎな商売だと思うが、5曲であればなんとか納得できるレベルだろう。トビアス・サメット(Vo)はその辺の気遣いができるタイプのような気がする。

そして2004年、「HELLFIRE CLUB」ツアーのブラジル・サンパウロ公演のライブDVDがオマケで付いているのも嬉しい(実際の所、私にとって最大の購入動機がこれだ)。部分的には商品化されていた映像だが、フルセットでの映像商品化は初めてのはず。

映像はHDではなく、現代の感覚で「キレイな映像」とは言い難いが、パワー・メタル・バンドとして一番輝いていた時期の、上昇気流に乗っているバンドならではのエナジーが伝わってくる素晴らしい映像。メロディック・パワー・メタル・バンドに求められるライブの在り方を示すお手本のようなライブだ。

この次のアルバムのツアーもブラジル・サンパウロ公演で映像化されているが、そのタイミングでは既に「成功したバンド」としての貫禄を感じさせるようになっているので、若いバンドというのは本当にアルバム1枚、ツアー1回で成長していくのだということを感じさせられる。

ブックレットに収められたヒストリー写真もバンドの成長が伝わってくる作りになっているし、本当に良心的に作られたベスト・アルバムである。ファンはもちろん、「ファン未満、関心あり」の方にもオススメ。2CD+DVDという仕様だけにちょっと高いけど。

◆本作のトレーラー映像


SECRET SPHERE / THE NATURE OF TIME

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早いもので、ミケーレ・ルッピ(Vo: 元VISION DIVINE)がこのバンドに加入してからもう5年になる。ミケーレ・ルッピがキーボーディストとしてWHITESNAKEに加入するというアクシデント(?)がありつつも、名盤2nd「A TIME NEVERCOME」の再録盤を含めれば3作目、さらにはライブ・アルバムもリリースしていることを考えると順調な活動ぶりだ。

前作「PORTRAIT OF A DYING HEART」(2012)は、従来のSECRET SPHEREサウンドを継承しつつ、それを意図していたとは思わないが、ミケーレがかつて在籍していたVISION DIVINEのサウンドにも近いプログレッシヴ風味のパワー・メタル・サウンドで、ファンの期待に応えたかどうかはともかく裏切りのないサウンドだった。

名盤2nd「A TIME NEVERCOME」を思わせる4部構成のコンセプト・アルバムとして制作された本作はよりプログレッシヴ・メタル風味を強め、「パワー・メタル・チューンもプレイするプログレッシヴ・メタル」といった感じである。

とはいえ、バリバリの変拍子や楽器隊の超絶技巧の応酬でスリリングに聴かせるというタイプではない(インストの#9などそういう曲もあるが)「雰囲気プログレッシヴ・メタル」という趣で、あくまで主役はミケーレ・ルッピの歌声である。そういう意味ではもっと広く、単純に「メロディック・メタル」と形容してしまっていいのかもしれない。

前作に引き続き、近年、イタリアン・メタル・シーンのクオリティ・アップの陰の立役者となっている観のあるシモーネ・ムラローニ(G: DGM)が所有する「DOMINATION」スタジオでレコーディングされたサウンドは、かつてイタリアン・メタルの総本山的な存在だったルイジ・ステファニーニの所有する「New Sin」スタジオで録音されたシケシケの音とは比べ物にならない上質ぶりで、ミケーレの卓越した歌唱ともあいまって、もはやサウンド全体にAクラスの風格が漂う。

正直、初期の姿からは想像もつかないほどに(Keyによるオーケストレーションを大きくフィーチュアしたメロディック・メタルという基本線は変わっていないにもかかわらず)垢抜けたそのサウンドは、いわゆる「メロスピ」のファン(私のような)にはちょっと地味に響くというか、「コレジャナイ感」を覚えるというのが正直な所だが、まるで映画を観ているかのようなスケール感を感じさせるという点においてはイタリアのメタル・シーンではトップ・クラスといえる。あまり安易にスルメ盤という言葉は使いたくないのだが(往々にして単なる地味であることに対する言い訳であることが多いので)、聴き込むほどに味わいの深まる音楽である。

強力なコーラス/セカンド・ヴォーカル要員でもあったマルコ・パストリーノ(G:TEMPERANCE)が脱退し、後任が補充されていないことがライブにおける不安要因かな。【82点】

◆当サイト/ブログの読者にはまずはコレかな、の「Courage」のリリック・ビデオ


◆本作収録「The Calling」のMV


◆本作収録「Kindness」のMV


UNLEASH THE ARCHERS / APEX

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『MAD MAX』の世界観を思わせる(パロディ?)「Tonight We Ride」のMVがYouTubeで400万回以上の再生を記録するなど話題になったカナダはバンクーバー出身バンドの通算4作目、『Napalm Records』からのワールドワイド・リリースとしては2作目となるフル・アルバム。

アルバム・デビューは2009年ながら、結成は2007年にさかのぼるということで、もはや10年選手。先述の通り、前作が欧州を中心としたメタル・ファンの間で話題になったことで予算が増えたのか、VOLBEATやAMARANTHE、EPICA、DELAINといったバンドを手掛ける売れっ子、ヤコブ・ハンセンをミキシング&マスタリングに迎え、前作の弱点だったサウンド・プロダクションの弱さが解消されているのがまず明確な進歩。

日本デビュー作となった前作『TIME STAND STILL』は、なかなか魅力のあるアルバムではあったが、少々楽曲のクオリティにバラつきが感じられる作品だった。しかし、前作発表後、ベーシストの交替を経て発表された本作においては楽曲クオリティ、特にメロディ面の充実において顕著な成長が感じられる一枚に仕上がっている。

大枠のジャンルとしては「パワー・メタル」に一番近いと思われるが、まるでNWOBHMのバンドのアルバムかと思われるようなジャケットのアートワークが象徴するように、よりプリミティブでオーセンティックなヘヴィ・メタルを感じさせるサウンドである。

一方で、前身バンドはデス・メタルだったというだけあって、所々デス系のスクリームが入るし、リフ・ワークは時にスラッシーと言ってもいいほどのエッジを感じさせることもあり、北欧やドイツのメロディック・パワー・メタルのような小奇麗かつ大仰なサウンドにならず、「メタル魂」とでも呼ぶべきものを感じさせるのがこのバンドの魅力。

個人的にはこういうメタル然としたバンドのヴォーカルは男であってほしいと思うクチで、それはつまりこういう「男の世界」に女性ならではの愛嬌や甘さ、可愛らしさは不要と思っているということなのだが(私が日本の「嬢メタル」と呼ばれるバンドにあまり惹かれないのもその嗜好ゆえである)、このバンドの看板である女性ヴォーカリスト、ブリトニー・スレイズの歌声は、もしかすると前情報なしで聴けば男性だと間違う人がいるかもしれない「熱さ」があり、このメタル魂溢れるサウンドにマッチしている。

エクストリーム・メタル的なエッセンスをちりばめつつも、基本的にはIRON MAIDENなどに通じるドラマティックなメタル・サウンドは、やや長尺の楽曲が多いにもかかわらず、最後まで緊張感を失うことなく聴かせてくれる。

どの曲にも「オッ」と思わせる煽情的なパートがあるものの、一撃必殺のキメ曲に欠けるのがちょっともったいない。まあそれは次作以降の課題ということで。

日本盤ボーナス・トラックはQUEENSRYCHEの「Queen Of The Reich」のカヴァーで、5オクターブの音域を誇るブリトニー嬢の実力を示すにはピッタリの選曲。

まだ粗削りな部分もあるけど、そういう面も含めて魅力だと思えるバンド。日本で人気が出るにはバンド名が日本人になじみの薄い単語で構成されている上に略しにくいという問題がある気がするが、LOUD PARKで観たいぞ!【84点】

◆MVにするにはちょっとツカミの悪い「Cleanse The Bloodlines」


◆シングルとして切るならこの曲の方がわかりやすいかも、の「The Matriarch」のリリック・ビデオ


◆メイデニックな展開がたまらないタイトル曲「Apex」のOfficial Audio


RHAPSODY OF FIRE / LEGENDARY YEARS

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ファビオ・リオーネ(Vo)とアレックス・ホルツヴァース(Dr)脱退後、ニュー・シンガーとしてジアコモ・ヴォーリ(Vo)とマヌ・ロッター(Dr)を迎えた新生RHAPSODY OF FIREの、往年の名曲を現編成で再録した、いわゆるリ・レコーディング・ベスト的なアルバム。

新たな出発に際しては、新ラインナップの真価を問うような完全新作で勝負するべし、という意見も多いことと思うが、デビュー20周年という節目のタイミングという、こういうベスト的な作品を出すには格好の時期でもあり、かつ、それだけの歴史を持つバンドとなると、ライブにおいては往年のクラシック・ナンバーをプレイすることを期待されるのは不可避であり、自分たちが過去の名曲をちゃんとプレイできることを証明することが、CDの売上よりもライブの動員をメインの収入源とせざるをえない昨今の音楽ビジネス業界においては優先度が高いと判断されたのだろう。

しかも、現在ファビオ・リオーネはルカ・トゥリッリ(G:LUCA TURILLI'S RHAPSODY)と共にRHAPSODY名義で"20th Anniversary Farewell Tour"を行なっているというややこしい事態があり、過去の名曲をプレイする「競合」がいるという状況もこうしたアルバムを作る後押しになったのかもしれない。

選曲が、RHAPSODY名義だった『EMERALD SWORD SAGA』時代(デビューから『POWER OF THE DRAGONFLAME』まで)の楽曲に偏っているのも、ファビオやルカの動きを意識したものかもしれない。決して、過去の音源のライセンス料の問題などを意識しての判断ではないと信じたい(笑)。

経緯はさておき結果としての本作の仕上がりであるが、決して悪くはない。パワー・メタル・バンドのリ・レコーディングというのは往々にしてテンションが下がっていてガッカリさせられることが多いのだが、本作に関しては良くも悪しくもオリジナルを忠実に再現しようという強い意志が感じられ、多くの楽曲でそれは成功している。

そして初期の楽曲においてはプロダクションが向上しているし、オーケストレーションやクワイアの質も上がっている。そういう意味でクオリティが上がっている、と言える面もある(もっともそれは他のリ・レコーディング作品の多くにおいてもそうなのだが)。

しかし本作において注目されるのは、やはりヴォーカリストだろう。

新加入のジアコモ・ヴォーリはなかなか良いシンガーだ。多くの楽曲を無難に歌いこなしている。もし彼が新人バンドのヴォーカリストとしてデビューしたのであれば何の問題もなく普通に良いヴォーカリストとして評価されたことだろう。

ただ、やはりあのファビオ・リオーネの後任を務めるにはいささか個性が弱い。いや、個性があればいいというものではなく、このバンドの音楽にフィットする個性でなくては意味がないのだが、前任のファビオが奇跡的なまでにこの音楽にフィットした歌声の持ち主だったために、単に上手いだけのシンガーだと物足りなさを感じてしまうのは否めない。

現ラインナップが「ちゃんとやれる」ことを証明するという目的は果たしているアルバムだが、一方で「過去を超えてはいない」こともまた証明してしまっているアルバムで、これでは来日公演が組まれたとしても、既に決定しているファビオとルカのいるRHAPSODYによる"20th Anniversary Farewell Tour"を蹴ってこちらに馳せ参じるファンというのは多くなさそうである。

とはいえ一向に第2弾ラインナップが発表されないLOUD PARKに出演する、ということであればもちろん観たいし、「ファビオのいないラプソなんて…」という日本のファンのネガティブな思いを払拭する機会があるとしたらそれしかないような気がするんですけどね。

◆本作収録「Land Of Immortals」のOfficial Audio