CRY VENOM / VANQUISH THE DEMON

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ラスベガス出身のポスト・ハードコア/ポップ・パンク・バンド、FALLING IN REVERSEのギタリストだったジャッキー・ヴィンセントが結成したネオ・パワー・メタル/ハイブリッド・スピード・メタル・バンドのデビュー・アルバム。

キングレコードがそれなりに推していたこともあってリリース当時から存在は認知していたものの、なんとなくスルーしてしまっていたが、先日のLOUD PARK 17で1曲だけ観た印象が良かったので購入してみました。

そしてアルバムを聴いてみて、予想以上に良くてビックリしました。LOUD PARKでの評判は「Voが弱い」というもので、それはアルバムで聴いてわからなくはない感じではあるものの、音楽のクオリティを下げるほどでもない。出自ゆえかちょっとエモっぽい鼻にかかった感じがあるのは好き嫌いの分かれるところかもしれないが、個人的には気にならない。

基本的にはDRAGONFORCE以降のメロディック・スピード・メタルだと思う。疾走感溢れるキャッチーなパワー・メタル・サウンドを軸に、EDMやメタルコア、時にジェントなど、欧州の伝統的なパワー・メタル・バンドが取り入れないような新しいサウンドも貪欲に取り込んだハイブリッドな感性がイマドキである。

メンバーはDRAGONFORCEのほか、ANGRAや日本のGALNERYUSなども愛聴しているということで、アメリカ人としてはかなりマニアックなメロディック・パワー・メタル・フリークのようだ。そして本作の#6「Stronger Than Steel」にはGALNERYUSのSyu(G)がゲスト参加している。

そしてこのバンドの中心人物であるジャッキー・ヴィンセントも、ポール・ギルバートやジョー・サトリアーニに賞賛され、かのテクニカル・ギタリスト専門レーベルとして知られる「Shrapnel」からソロ・アルバムもリリースしているというだけあって、テクニカルかつフラッシーなプレイを随所で聴かせてくれる。

日本盤ボーナス・トラックはIRON MAIDENの「Aces High」。ベタの極みな選曲ながら、疾走感を増していてカッコいい。

激しく展開しつつも全体としては疾走感に溢れ、テクニカルなギターとキーボードの絡み、キャッチーなコーラスを備えつつ、EDMの要素が新鮮さと個性になり、これはポストDRAGONFORCEの最右翼と呼べる存在になり得るのではないだろうか。メンバーがまだ若く、グッドルッキンであることも含め、ブレイクが期待される。

1曲目を聴いたときはCDを間違えたかと思いましたけどね(笑)。ジャケットのアートワークが80年代のファミコンソフトみたいなのはご愛嬌。【86点】


◆本作収録「Wolfsbane」のリリック・ビデオ


◆本作収録「Second Wind」のMV


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GALNERYUS / ULTIMATE SACRIFICE

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担当ディレクターがバップからワーナー・ミュージック・ジャパンに転職したことを受け、同じディレクターが担当していたFear, and Loathing in Las VegasやColdrainと共にワーナー・ミュージック・ジャパンに移籍したGALNERYUSの、オリジナル・アルバムとしては通算11作目となるフル・アルバム。

レコード会社を移籍して心機一転、というわけでもなく、本作はコンセプト・アルバムだった前作『UNDER THE FORCE OF COURAGE』のストーリーのその後を描く続編的なコンセプト・アルバムである。

とはいえ、ドラマーが長年在籍していたJUNICHIからFUMIYAに代わっていることも含め、連続性がありながらも新たな出発、という印象もある作品だ。

前作が素晴らしい作品だったので、その続編となると、多くのシリーズ物の映画が2作目になるとテンションが下がるように、聴き劣りしてしまうのではないかと危惧していたが、それは全く杞憂だった。

『ULTIMATE SACRIFICE』、「究極の犠牲」なんていうタイトルからしていかにもだが、メタルにしか表現できない悲壮美がアルバムを貫き、典型的なメロディック・スピード・メタル・チューンからプログレッシヴ・メタル・タイプの曲、メロディアス・ハード風の楽曲、フォーク・メタル的なテイストを持った楽曲まで適度にバラエティを持たせつつも、これまで以上にエピカルなクサいメロディに対するこだわりが徹底されている。

こういう悲劇的な世界を歌い上げるには小野“SHO”正利の歌声はちょっと明るすぎる気もするが、これで過剰にエモーショナルな歌声の持ち主が歌い込んでしまったらちょっとクドくなりすぎる可能性もあるので、これくらいでバランスがいいのかもしれない。

圧巻は三部構成、11分半におよぶ#8「Brutal Spiral Of Emotions」から全5章12分半から成るタイトル曲#9というクライマックスで、普通であれば胃もたれしそうな濃密な大作が続くにもかかわらず、その劇的な展開が一切長さを感じさせない。

描かれるストーリーは正直ベタの極みと言うか厨二病全開なのだが(失礼)、だからこそここまでストレートに感情に訴えかける作品になったとも言えるだろう。

RHAPSODY OF FIREなど、欧州のエピック・メタル・バンドの描くストーリーはやはりマイケル・ムアコックなどの海外ファンタジー小説からの影響が強く感じられるのに対し、Syu(G)の描くストーリーというのはある種ジャンプ的な熱い少年マンガの雰囲気があって、その辺は国民性を感じてちょっと面白い。

まあ率直に言って、日本のメロディック・メタル・バンドとして他の追随を許さないほど突き抜けた境地に達してしまったなーという感じです。ジャケットが落ち着いているのは、前作のアートワークが不評だったからですかね?(笑)【88点】


これは短く編集したバージョンで、オリジナルはこれの2倍以上ありますが、2倍以上聴き応えがあります。


NOCTURNAL RITES / PHOENIX

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2000年代に日本でパワー・メタルを愛していた人間であれば、およそ10年ぶりとなる彼らの復活は、ここ数年で最も喜ばしいニュースだったのではないだろうか。

もっとも、バンドとしては別に解散していたわけではないとのことだが、生計を立てるための仕事や家族との時間を大切にするうちに10年も経ってしまったということのようだ。まあ、私もこの10年なんてあっという間に過ぎてしまったという感覚なので、そんなものかもしれない。

幸か不幸か、彼らはこのバンドで生計を立てていたわけでもなく、レコード会社に新作を待望されるようなポジションのバンドではなかったので、ニュー・アルバムを出せというプレッシャーも外部からはほとんどなかったのだろう。人間、締切のない仕事というのは往々にしてはかどらないものだ。

10年前の前作『THE 8 SIN』リリース後に脱退してしまったニルス・ノーベリ(G)の後任として迎えられたクリス・ローランド(G)は、数回のライブに参加したのみで、母国スウェーデンの大人気バンドであるSABATONにリクルートされ、当面は「掛け持ち」という形をとっていたものの、NOCTURNAL RITESの活動が本格化するとなると現実に掛け持ちは困難ということで脱退、後任には顔見知りであったSCAR SYMMETRYのペル・ニルソンが加入することになった。

本作のオープニングを飾る#1『A Heart As Black As Coal』のヘヴィなリフを聴くと、モダンなメロディック・デス・メタルであるSCAR SYMMETRYの要素がNOCTURNAL RITESに注入されたかのような印象を抱くが、こうしたモダンなヘヴィネスはジョニー・リンドクヴィスト(Vo)加入後の彼らにはずっと存在してきた要素であり、決して彼らの本質が変化したわけではない。

そもそもソングライティングはフレドリック・マンベリ(G)とニルス・エリクソン・リッドマン(B)の2人によって行なわれており(#2「Before We Waste Away」のみ、脱退してしまったクリス・ローランドが関与)、ペル・ニルソンは関わっていない。

そのペル・ニルソンはSCAR SYMMETRYや、先日フレドリック・トーテンダルの代役として出演したMESHUGGAHのLOUD PARK 17のステージでも明らかなように圧倒的なテクニックの持ち主であり、アルバム全編に渡ってこれまで以上にテクニカルなギター・ワークがフィーチュアされている(「泣き」の面ではニルス・ノーベリに軍配が上がると思われるが)。

そしてやはりジョニーの歌声が素晴らしい。こういう熱くエモーショナルに歌えるシンガーというのはパワー・メタル・シーンには少ないだけに、彼のシーン復帰は本当に喜ばしい(10年も休むのであれば、他のバンドで「課外活動」してくれてもよかったのだが)。

これまでの作品で最もヘヴィであることは間違いないし、わかりやすい疾走ナンバーが存在しないことも含め、これまでのNOCTURNAL RITESのファンが諸手を上げて喜ぶような作風ではないかもしれない。しかし全ての楽曲に息づく熱い叙情性にはなんの変化もなく、さながら「パワー・メタル版FAIR WARNING」とでも形容したくなるサウンドは健在である。

と、書いていてふと思いましたが、FAIR WARNINGもNOCTURNAL RITESも日本以外ではさっぱり人気がないのは、こういう熱い叙情サウンドは日本人の琴線に触れないのでしょうか? 出自も近い同期のバンドであるHAMMERFALLがあれだけ売れて、NOCTURAL RITESがさっぱり、というのは日本人の感覚ではイマイチ納得がいかないのですが…。【83点】

◆本作収録「Repent My Sins」のMV


◆本作収録「What's Killing Me」のMV


KEE OF HEARTS / KEE OF HEARTS

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「心の鍵(Key of Hearts)」ではありません。「KEE」of HEARTSです。

KEEとは元EUROPEのギタリストとして知られるキー・マルセロのことで、そのキーとFAIR WARNINGのヴォーカリスト、トミー・ハートによるプロジェクトによるファースト・アルバム(と言ってもセカンドがあるかどうかは本作の売れ行き次第でしょうが)。

まあ、「KEE & TOMMY」とか「MARCELLO & HEART」よりは気の利いたプロジェクト名ですよね。悪くないと思います。

この手の「あのバンドの有名人とこのバンドの有名人をくっつけてできました」というプロジェクトの仕掛け人といえばもはやメロディックなHR/HMのファンにはおなじみのイタリアの『Frontiers Records』。

正直な所、『Frontiers Records』が送り出すプロジェクトというのはどれも高品質ながら、ちょっと人工甘味料めいた印象があってそんなに期待しておらず、ましてキー・マルセロというギタリストについても、技術的には相当高度なものを持っている人だし、ポップス畑の歌手に楽曲提供をしていたり、プロフェッショナルなミュージシャンだとは思っていたが、私個人のツボに入る音楽のクリエイターとしては認識していなかった。

まして、トミー・ハートが歌う曲に期待するのはどうしてもFAIR WARNING。SOUL DOCTORじゃダメなんですよ。

そんなわけでさほど期待せずにYouTubeにリコメンドされたアルバムのオープニング曲、「The Storm」を試聴してみたら、これはもうイントロからしてFAIR WARNING。サビの熱唱を聴く頃にはアルバムをポチっていました。

そして届いたアルバムを最後まで聴き、呟きました「これだよ、FAIR WARNINGに求めていたのは…」。

ブックレットのクレジットを見る限り、作曲にはトミー・ハートもキー・マルセロもタッチしておらず、プロデューサーであるアレッサンドロ・デル・ヴェッキオがソングライティングのイニシアティブを握っているようだが、結果としてこれだけ充実した楽曲が揃っているのであれば文句はない。

聴き込んでみればやはりFAIR WARINGに比べると洗練されたAOR風味が強いが、それでも充分にエッジがあって、近年のレイドバックした本家よりずっとメロディアス・ハード然とした「熱さ」がある(もっともその熱さを担っているのはやはりトミー・ハートの歌声だが)。ぶっちゃけ『GO!』以降のどのFAIR WARNINGのアルバムより楽曲が充実している。

キー・マルセロもさすがのギターを聴かせているものの、さすがにヘルゲ・エンゲルケやアンディ・マレツェクほどの強烈な泣きは発散しておらず、別にキー・マルセロである必然性はなかったのではないかという気もするが、これもまた結果良ければ全て良し。ベースやドラムも全然知らない人ですが、まったく問題なし。

しかし驚きなのは、FAIR WARNINGなんておよそ日本以外では全く無名だったはずなのに、ここまでFAIR WARNING然としたサウンドを人工的にクリエイトしてきたこと。90年代ならいざ知らず、このご時世に日本市場向けの商品なんか作る意味はないでしょうに。

やっぱり欧州でもこの熱き叙情に満ちた天空のメロディアス・ハードの魅力、わかる人はわかってたってことなんですかね。その辺、『BURRN!』誌はぜひインタビュー(トミー・ハートとキー・マルセロだけじゃなく、アレッサンドロ・デル・ヴェッキオにぜひ話を聞いてほしい)してもらいたいものです。【87点】

◆本作収録「The Storm」のMV


ARCH ENEMY / WILL TO POWER

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前作『WAR ETERNAL』はメロデスの傑作と言っていい良質なアルバムだった。前々作『KHAOS LEGIONS』 が(彼らにしては)地味な仕上がりだったのは、人気フロントマンだったアンジェラ・ゴソウからアリッサ・ホワイト=グルーズへのVo交代をファンに納得させるための意図的な仕業だったのではないかと勘繰ってしまうほどに…。

初代シンガー、ヨハン・リーヴァを迎えて初期曲のみをプレイするBLACK EARTHでの活動を挟み、アリッサ・ホワイト=グルーズ加入後第2作目となる通算10作目のフル・アルバム。

#1「The Race」は、こりゃまたずいぶんと単刀直入に来ましたね、という感じの怒涛のスラッシュ・チューン。思わずアタマを振らずにいられない、問答無用のカッコよさ。

その後、#2「Blood In The Water」、#3「The World Is Yours」、#4「The Eagle Flies Alone」と、ヘヴィだがモダンではないギター・リフとメロディアスな「アモい」リード・ギターが絡み合う実に彼ららしい曲が立て続き、個人的には彼らに求めているものがバッチリ提供された満足感に浸ることができた。

そして#5「Reason To Believe」は、なんとアリッサのノーマル・ヴォイスによる歌唱をフィーチュアした、バラードと呼んでもいいような曲。以前インタビューでマイケル・アモット(G)はこのバンドではノーマル・ヴォイスによる歌唱は取り入れない、というようなことを言っていたような気がするが、どういう心境の変化なのか。

まあ、マイケルが忌避していたのはメタルコアのような「リフはヘヴィなのにサビで突然ポップス」みたいな方法論であって、ノーマル・ヴォイスによる歌唱そのものを嫌悪していたわけではないということですかね。

まあ、SPIRITUAL BEGGERSは全編ノーマル・ヴォイスな訳で、そりゃそうですね。実際、バラードといっても決して甘口な売れ線曲や、北欧のバンドにありがちなトラッド/フォーク路線ではなく、ブルーズの影響さえ感じられる70年代ロック・バラードといった趣な曲。個人的には甘口バラードやフォークっぽい曲の方が好みだが、これはこれでアルバムのアクセントとしては悪くない。

そして#6「Murder Scene」、これは個人的にはストライクゾーンど真ん中。このサビで鳴り響いているようなリード・ギターが大好物なんですよ、僕は。

イントロ的な小曲インストの#8「Saturnine」に導かれる#9「Dreams Of Retribution」はまるでSTRATOVARIUS(と言ってもティモ・トルキ在籍時ではなく近年の)のような、彼らにしては珍しいほどストレートに疾走する曲で、KeyのアレンジまでSTRATOVARIUSっぽい…と思ったらゲストでイェンス・ヨハンソン(STRATOVARIUS)がプレイしていました(笑)。ええ、STRATOVARIUSの大ファンである私はもちろんこの手のスピード・チューンはツボです。

アルバムのエンディングとなる#11「A Fight I Must Win」は、クライマックスに相応しい劇的なイントロと、80年代HR/HM的なダシの効いた展開が美味しい楽曲で、充実のアルバムの幕切れに相応しいスケール感のある楽曲。

全体的にリフやアレンジが現代的だった前作に比べるとシンプルかつわかりやすい作風で、ひょっとすると若いメタル・ファンには前作の方がエクストリーム・メタル然としていてカッコいい、と感じられるかもしれないが、私のようにこのバンドの魅力は70年代、80年代のクラシックなHR/HMの要素が強く感じられることだと思っている人間にとっては過去最高級の満足度が得られるアルバムである。

なお、本作の日本盤は本編のラストがオリジナルの海外版では1曲目のイントロダクションとなっている「Set Flame To The Night」になっているのだが、アウトロとして使うにはあまりにもイントロっぽい曲で、なぜこの曲順に変更したのかは謎。「The Race」のインパクトを最大化したかったからなのか、あるいはまさか日本盤ボーナス・トラックであるPRETTY MAIDSのカヴァー、「Back To Back」のイントロにしたかったから、じゃないですよね?【90点】

◆本作収録「The World Is Yours」のMV


◆本作収録「The Eagle Flies Alone」のMV