SECRET SPHERE 来日公演 20th Anniversary Show at 新宿BLAZE 2017.12.8

まさかの3年連続来日。一昨年、もう二度と来日しないだろうから、という理由で名古屋遠征までした自分に、タイムマシンで翌年も、さらにその翌年もSECRET SPHEREは来日するよ、と伝えたい気持ちでいっぱいですが、SECRET SPHEREが3年連続で来日する、なんて、当時の私に言っても絶対信じなかったでしょうね(笑)。

そんなわけで行ってきました、SECRET SPHEREの結成20周年公演@新宿BLAZE。
DSC_0154.jpg

前座は同じイタリアのARTHEMISに、日本のCROSS VEIN、そしてMARCO ANGELOなるソロ・ギタリストが付く豪華仕様…なのはいいのですが、平日に開場17:00って、どんな会社でもギリギリ定時ですがな。

正直オーディエンスは学生さんより社会人の方がはるかに多いと思われるだけにかなり厳しいスケジュール。

MARCO ANGELO氏はともかく(失礼)、CROSS VEINは観たい所でしたが、16時から打ち合わせがあったため、案の定間に合わず。到着した時にはARTHEMISがプレイしていました。フロアの入り口に向かう途中の通路で、ミケーレ・ルッピが普通にスタッフ?と立ち話をしていたのがライブハウスならでは。

会場の新宿BLAZEは、公称キャパシティはMAX800なので、まあまあ大き目のハコだ。正直SECRET SPHEREとARTHEMISではガラガラなのでは…と危惧していたが、どうにかカッコが付くだけの客入り。仮にもメジャー所属であるCROSS VEIN効果でしょうか。

とはいえ余裕はたっぷりで(苦笑)、その気になれば簡単に前の方に行けそう。いったんフロアの外に出て、コインロッカーにキルティングジャケットとビジネストートを押し込むと、再度入場し、前の方に進んでARTHEMISを鑑賞。

ARTHMISは、個人的には既に興味を失ったバンドで、長らくアルバムは聴いておらず、「予習」は本日に備えてYouTubeに上がっている最近のMVを3曲ほどチェックしてきた程度。

その「予習」で、彼らが日本デビュー当時のようなメロディック・パワー・メタルとは全く異なる音楽性になっていることは承知しており、そのスタイルは必ずしも私好みではないにせよ、ライブで観ればカッコよさそうだったのでそれなりに楽しみにしていた。

そして実際好演と言っていいライブだった。パフォーマンスはキャリア相応の安定感があったし、イタリア人らしい男の色気と愛嬌があるヴォーカリストのファビオ・デッシがなかなか好感の持てるフロントマンぶりで、オーディエンスを上手く味方にしていた。

今年リリースされた彼らの最新作の邦題が「カクメイノノロシ(革命の狼煙)」だというのはこの日この場で知りました(笑)。

Aクラスに行くにはややフックと個性不足ではあるものの、それなりにキャッチーでイキのいいヘヴィ・メタル・サウンドは観ていて気持ちが良かったし、ある意味失礼な物言いかもしれないが、前座として理想的な会場の温め方をしていたと思う。

私が予習した曲のひとつ、「Vortex」でARTHEMISのステージが終わると、会場内のSEとしてDOMINEの超名曲「The Hurricane Master」が流れて個人的な心のボルテージがARTHEMISの演奏中より高まる。「アイ、アム、ズィハリーケンマストァ」というサビは口ずさまずにいられないし、ギター・ソロ前の「So, Here I Go!」ももはや意識せずに口をつく。エンディングで「A Justice Is Done」というスクリームがどんどん高くなっていく様にはエクスタシーを禁じ得ない。危うくライブ中でもないのにパンツを汚すところでした。

その後もDRAGONLANDやらDRAGONFORCEやらELEGYやら、私のような往年のメロディック・メタル・ファン感涙の選曲が続き、気持ちの高まりを持続させてくれる。

そして、そのBGMがフェードアウトし、客電が落ち、SECRET SPHEREのショウがスタート…するかと思いきや、もう一度客電が点き、BGMが流れ出す。誰かトイレにでも行きたくなったのでしょうか(苦笑)。

そんなこんなで事前に告知されていたタイムテーブルより遅れてSECRET SPHEREのショウがスタート。前回観た時には長かったアルド・ロノビレ(G)の髪が短くなっている。生え際がだいぶキているので、落ち武者にならないよう潔く断髪したのでしょうか。てかこの人、髪の毛短くなるとニコラス・ケイジにそっくりだわ。

前半は、事前に聞いていた通り、最新作であるコンセプト・アルバム『THE NATURE OF TIME』の完全再現。

もはや純然たるプログ・メタル・スタイルとなった同作のサウンドは必ずしもライブ映えするとは思えないものだったが、やはりミケーレ・ルッピの歌唱が素晴らしい。いや、他のメンバーのプレイも非常にプロフェッショナルなのだが、やはりルッピは次元が違う。

声自体の美しさ、声量の豊かさもさることながら、ちょっとした息遣いのひとつひとつにまで歌心が満ちていて、聴き惚れざるを得ない。SECRET SPHEREのことを全然知らない、なんならメタルは嫌いという人でさえ、ここに連れて来たらミケーレ・ルッピというシンガーが非凡であることだけはたちどころに理解することだろう。

スピード・メタル・チューンである「Courage」におけるオーディエンスの熱い反応から、何だかんだ言って「そういう曲」が好きなオーディエンスが(私も含めて)集まっていたと思われるが、メロウな曲ではミケーレ・ルッピの卓越した歌唱に、プログレッシヴな曲では楽器隊のスリリングな演奏によって、まったく退屈させられることがない。

「Kindness、君たちのようなね」というMCに導かれて始まった「Kindness」ではあまりのミケーレ・ルッピの歌声の素晴らしさに、思わず涙ぐんでしまいました。

もし、地上では歌うことが許されない天上のメロディというものがあったとして、それが地上でただ1回だけ歌うことが許されるとしたら、その任はこのミケーレ・ルッピが担うべきだろう。そんなとりとめのない妄想が浮かぶような素晴らしい歌唱だった。

ライブ・レポートというよりは単なるミケーレ・ルッピのヨイショ記事みたいになってしまっているが、実際目も耳もミケーレに釘付けだったのだから仕方がない。ついでにちょっと痩せて、前回観た時より腹が引っ込んでいた気がします。

アルバム同様、曲と曲の間にはストーリーを暗示するSEが流れるのだが、これは正直スタジオ音源を聴いている分には想像力が働いて雰囲気があるものの、ライブ会場ではなんだかメンバーも手持ち無沙汰な感じでちょっと微妙。イメージ的なものでいいので、何か映像が欲しかったですね。まあ、コンセプトアルバム再現の合間にベラベラMCされるよりは手持ち無沙汰な方がマシだったとは思いますが。

そして『THE NATURE OF TIME』完全再現が終わると、「この後は違うバンドが出てくるよ~、チャオ!」というミケーレのお茶目な挨拶と共にバンドはいったん引っ込む。

ここからはバンド結成20周年記念公演ということで過去の楽曲をメインにプレイされることになっている。プロモーターであるEvoken de Valhall PRのTwitterではプレイしてほしい曲のリクエストを募っていた。

そして流れるデビュー・アルバムのイントロ、「Dawn Of Time」が流れる。非常に幻想的で美しい、数あるメタル・アルバムのイントロの中でも個人的に1、2を争うほど好きな序曲だ。

この曲が流れるということはまさか、のまさかで始まった「Age Of Wizard」…だが、メンバーたちの様子がおかしい。みんな動物の被りものに、「オヤジギャグ製造機」だの「自分、何松?」だの「動けるデブ」だのといった日本語が書かれたいわゆる「ネタTシャツ」に身を包んでいる。
DSC_0159.jpg

そしておかしいのはメンバーの服装だけでなく、「Age Of Wizard」に歌が乗らない(苦笑)。ミケーレ・ルッピが完全に入るタイミングを間違ったようだ。まあ恐らくライブでプレイするのは初めての曲だから無理もないといえば無理もないが…。

というわけで、アマチュアのライブであればしばしば目にするものの、プロのライブで目にするのは珍しい「もう一回最初からやり直し」が発生。あのイントロから続くから感動的なのに…。

そしてやり直しての「Age Of Wizard」も、ミケーレ・ルッピの歌はヨレヨレ(苦笑)。まあ、正直この曲の歌メロは前任Voであるロベルト・メッシーナ独特の歌い回し満載で、普通の人にはいささか歌いにくそうであろうことは素人目(耳)にもなんとなく想像がつくが、やはりミケーレほどに歌が上手い人であっても苦手な曲があると知ってなんとなく安心しました(笑)。

そして続くはデビュー・アルバムからの流れ通り、「Recall Of The Valkyrie」。この曲名がコールされるとフロアが大いに沸き、人気曲であることが窺われる。個人的にもATHENAの「Twilight Of Days」やSKYLARKの「Belzebu」、HIGHLORDの「Frozen Heaven」などと並ぶB級イタリアン・クサメタル・ブームを象徴する名曲のひとつとして前述のTwitterでリクエストしていた曲のうちのひとつだ。

しかし「Age Of Wizard」以上に「ロベルト・メッシーナ節」全開のこの曲もやはりミケーレには歌いにくいらしく、歌メロは大幅に改変されていた。そして「Age Of Wizard」もそうだったが、ミケーレ・ルッピは足元のカンペを見まくり(苦笑)。

まあ、それでもライブで「リコール・オブ・ザ・ヴァルキ~リア!」の合唱ができる日が来るとは思っていなかっただけに、感無量である。演奏に関してはちょっとKeyの音色が地味になっているものの、ほぼ完コピだしね。

その後「ファストでハイな曲をやるぜ」というMCの後に「Loud & Raw」がコールされると、場内に妙な沈黙が満ちる。私もそうだったが、皆「どの曲だっけ?」と記憶を掘り返していたのかもしれない。

いささか気まずく始まった「Loud & Raw」だったが、もちろん実際に演奏が始まれば盛り上がる。ただ、『HEART & ANGER』アルバムからプレイするなら「Where The Sea Ends」にしていただきたかったというのが個人的かつ率直な思い(笑)。

その後にプレイされた前任Vo時代の曲は「The Scars That You Can’t See」に「Legend」、そして「Lady Of Silence」と、過去2回の来日公演でもプレイされたいわば定番曲。もちろん「Legend」はこのバンドで1、2を争う人気曲なので、この日最高の盛り上がりを見せたし、「Lady Of Silence」では、オーディエンスをしゃがませて、曲に合わせてジャンプさせるという、あまり経験のない演出があり、印象深い体験になりました(ミケーレ・ルッピ自身も素直にしゃがむオーディエンスに感銘を受けたようだった)。
DSC_0163.jpg

前述のネタTシャツは、少なくともミケーレ・ルッピとアルド・ロノビレは普通のTシャツの上から着ていたので途中で脱いだのですが、アルド・ロノビレが脱ぐときにはミケーレが「Naked! Naked!(裸になれ!裸になれ!)」とコールを掛けたり(もちろん裸にはなりませんでした/笑)、演奏中に最前列にいたファンの持っていたスマホを借り、しばらく動画撮影をしながら歌って返すなど、フランクなステージを観ることができました(あの時のスマホの持ち主の方、動画YouTubeにアップしてください/笑)。

そういう意味ではアルド・ロノビレは前半の「完全再現」はそれなりに緊張していたようで、終始表情が硬かったが、この後半では笑顔が多く見られ、やはりこの後半パートは「ファンサービス」というニュアンスだったんでしょうね。

メンバー紹介では、メンバー自身が驚くほどの大歓声が彼らを包み、場内のムードはすこぶる良く、メンバー自身もご満悦な感じでした。本国や、まして欧州の他の国ではここまで暖かい反応は珍しいのかもしれません(そもそも彼らはそんなに多くのライブをやっていませんが)。

終盤はミケーレ・ルッピ加入後の「Union」、「Lie To Me」、そしてアンコールのような形で「Healing」がプレイされて終演を迎えたわけですが、どうも本来はもっとプレイするつもりだったよう。

というのも、その時点で既に終了予定時刻である22時を15分近く過ぎており、「もう1曲プレイしていい? あ、ダメ?」みたいなやり取りがステージ上のミケーレとステージ袖のスタッフの間で行なわれていたからです。

結局時間切れということで「じゃあ、写真、写真を撮ろう!」と、最近のライブではどのバンドでもお約束になりつつある「オーディエンスを背景にしての写真撮影」が行なわれて本日のライブは幕を閉じました。アルド・ロノビレはちょっと不満そうでしたが(笑)。

そんなちょっとグダグダな感のある終わり方ではありましたが、演出からハプニングまで様々な「印象に残るポイント」があり、そしてもちろんパフォーマンスがこのクラスのバンドとしてはありえないほどに充実していたので、ライブトータルでの満足度はかなり高かったです。

心残りは、リクエストした曲のうちのひとつ「The Brave」がプレイされなかったことと、そのリクエストキャンペーンに参加したことでメンバーのサイン入りポストカードが当選していたのですが、引き換え場所である物販ブースが見つけられずに結局受け取れなかったことですね(苦笑)。CROSS VEINの音源とグッズを売っているブースは見つかったんですけどね。

終演後、ドリンクチケットと引き換えたビールを飲みながら場内を歩き回ったのですが、コインロッカーしか見当たらず。いったい物販ブースというのはどこにあったのでしょう。

まあ、別にポストカードが欲しくて楽曲のリクエストをしたわけではないので別にいいのですが。

しかしやはりミケーレ・ルッピの歌は絶品でした。今度、元RHAPSODY OF FIRE、現ANGRAのVoであるファビオ・リオーネと、LUCA TURILLI'S RHAPSODYのVoであるアレッサンドロ・コンティによるプロジェクト、LIONE/CONTIのアルバムがリリースされるそうですが、個人的にはミケーレ・ルッピとファビオ・リオーネのコラボ・アルバムも聴いてみたいですね。

個人的なイメージではファビオ・リオーネは「騎士の声」、ミケーレ・ルッピは「貴族の声」という印象を(勝手に)持っているので、プロジェクト名は「KNIGHT & NOBLE」でお願いします(誰に言っているんだって? そりゃ『Frontiers Records』のオーナー、セラフィノ・ペルジーノ氏ですよ/笑)。
スポンサーサイト

BATTLE BEAST来日公演 at 赤坂BLITZ 2017.9.27

ここ最近、稀に見るほど充実したクサメタル祭りだった『Evoken Fest』や、『IMAGES AND WORDS』完全再現のDREAM THEATER、そして個人的に一番鋼鉄魂を掻き立てられるライブを見せてくれるACCEPTと、観たいライブを公私に渡る様々な事情で見逃していて、「今年はもうLOUD PARK観て終わりかな…」と思っていましたが、BATTLE BEASTがありました。

しかも会場は赤坂BLITZ。私の職場から徒歩圏内という最も近いコンサート会場であり、これは観に行かない手はない。

赤坂BLITZ、職場から近いのですが、実際にライブを観るのは2001年のARCH ENEMY以来ほぼ15年ぶり。その間に赤坂サカスが再開発されて建て替え(改装?)されているので、現在の状態で観るのは初めて。

この会場でメタル系のライブって少ないんですよね。近年だとIN FLAMESがLAMB OF GODやUNEARTHとジョイントで来たときと、DRAGONFORCE、GWARにBABYMETALくらい? いずれも行っていませんが、スカスカだったというGWARのときを除き、普段は有閑マダムとビジネスマンばかりの赤坂サカスに場違いなメタTの人々が多数ウロウロして違和感を振りまいていたのを目撃しています(笑)。

近いということでナメすぎていてギリギリまで仕事をしていたら遅刻。当日券を買うための万札1枚だけをワイシャツの胸ポケットに入れ、上着も財布も持たずに駆け込みましたが、オープニング・アクトであるGYZEのライブが既に始まっていました。

MAXで1400人くらい入るこの会場ですが後方の2段目は封鎖されており、フロアは前半ですらかなり余裕があったので、半分も入っていなかったと思われます。開演後の当日券で入った私の整理番号も400番台でしたし。

しかしGYZEってBATTLE BEASTの前座としてフィットしてるんですかね? もちろん私自身はどちらの音楽も好きですし、「メロディアス」という共通点だけで愛せる人は少なからずいるとは思うんですが、まあでも結構違いますよね。

実際、私が観ていたのが後ろの方だからかもしれませんが、正直「様子見」という感じの人たちばかりでした(もちろん最前列付近はそれなりに盛り上がっていましたが)。

彼らを観るのはLOUD PARK 15に出演した時以来ですが、その後海外ツアー含めライブ経験を積んでレベルが上がっている感じは見て取れたものの、あの時感じた問題点はそのまま。やっぱりこの音の隙間がないことが様になる音楽スタイルでギター1本、しかもVoと兼任は厳しいんじゃないですかね。CHILDREN OF BODOMをはじめ、彼らが恐らく直接的に影響を受けたであろうバンドだってたいがいギターは2本ですからね。

あとVoもね、デス声でわめいている時はまだしも、ノーマル・ヴォイスになると途端に「普通のお兄ちゃん声」になってしまうのがちょっと興ざめというか…。これはやっぱりギターを弾きながら歌っているが故という面もあると思うんですよね。さすがに専任シンガーを入れろ、というのはこのバンドの場合無理があると思いますが、もうワンランク上に行くためにノーマル・ヴォイスもイケるセカンド・ギタリストを入れることは真剣に検討したほうがいいのではないかと思います。

最新作『NORTHERN HELL SONG』はとてもいい出来だったし、そのアルバムからの楽曲を中心としたセットリスト(と言っても6曲しかプレイしなかったわけですが)には攻めの姿勢が感じられて、そういう意味では好印象でした。例え彼らの音楽に興味のなかった人たちでも、このバンドが、というかRyojiが奏でるギターがクサメロに満ちているということは伝わったのではないでしょうか。

GYZEのパフォーマンスが終わり、セットチェンジで照明がついたところで周りを見回すと、年齢層はかなり高め。白髪頭や、だいぶ寂しくなった頭髪が目立ちます。BGMでDEEP PURPLEの「Highway Star」などが流れた際などに身体が反応していました(笑)。つまりBATTLE BEASTはそういうクラシックなHR/HMファンのハートをつかんでいるということですね。

そしていよいよBATTLE BEAST。まずはいいカラダしたイケメンなドラマーのプル・ヴィッキがオーディエンスをひと煽りし、最新作『BRINGER OF PAIN』からの「Straight To The Heart」でスタート。

私が彼らのライブを観るのはこちらもLOUD PARK 14以来なのですが、そんな私の第一印象は「ノーラ、太ったな…」というものでした。これは本格的に女子プロレスラーめいてきました(いや、最近の女子プロレスラーにはスリムでキレイな女性も多いようですが)。ノーラさん、体型で前任者を意識しなくてもいいんやで…。BEASTっぷりは歌唱力で示してくれれば充分です。

そのまま「Bringer Of Pain」に「Familiar Hell」と、最新作の楽曲がプレイされた後、セカンドからの「Into The Heart Of Danger」がプレイされる。この日のライブは現編成になった最新作からの楽曲中心のセットリストだったのだが、次に多かったのがセカンド『BATTLE BEAST』からの楽曲で、それはやはりノーラ加入第一弾で、まだ脱退したアントン(G, Vo)との確執も表面化していない時期の作品だからでしょうか。

とはいえ私が彼らの楽曲で一番好きな「Newromancer」はプレイしてくれなかったのですが(苦笑)。

GYZEのときはややおとなしかったオーディエンスもここにきて一気に盛り上がっている。私の前にいた女性も、GYZEのときは微動だにしなかったが、BATTLE BEASTが始まってからは別人のようにキレキレなダンスめいた動きを見せている。さっきまでは石化魔法にかかっていたのかもしれない。

LOUD PARKで観た時は持ち時間が少なかったこともあってか、押しの一手、という感じのパフォーマンスで、それはそれで良かったというか、だからこそ勢いが感じられて好印象だったのですが、本日のライブはトークや「遊び」があり、ライブ・パフォーマンス全体としてこなれてきたというか、本人たちがリラックスしてライブを楽しめているという印象を受けました。

なぜかバンドの「トーク担当」はベースのエーロ・シピラらしく、「日本のビールも楽しんでるよ! アサヒ、サッポロ、あと名前は忘れたけどドラゴンが描いてあるやつ」などという音楽とは関係のない話も色々としてくれました。まあ麒麟はドラゴンというよりは合成獣(キメラ)ですけどね(どうでもいい)。

しまいには「アサヒ・チャレンジ」と称して、ヤンネ・ヴィルクロト(Key)がショルダーキーボードで『スター・ウォーズ』の「帝国のマーチ(ダース・ベーダーのテーマ)」を弾きながら、エーロが口元に差し出したスーパードライの350ml缶を一気飲みするという余興まで披露。私がアサヒビールを担当していた時代にこれを見せてくれたら話のネタになったし、「CMとは言わないまでもWeb用の動画とかで使いませんか」と提案できたのですが(笑)。

こういう和気あいあいなムードが、中心人物だったアントンが追放されたからこそのものだとしたら、アントンの脱退はやむなしだったんだろうなあ…と思いつつ、ちょっとトークタイムはオーディエンスの人数や客層もあって静かになってしまいがちでしたし、個人的にはもっとガンガン曲をプレイしてほしかったというのが正直な所。

単純にそういうライブ運びの面を除いても、楽曲自体ノーラの歌唱をメインにしたポップ(と言っていいだろう)なものが増えているだけに、バラードやミドルテンポの楽曲、特に「ダンスは好き?」なんてMCに導かれて始まった前作収録のダンサブル・チューン「Touch Of The Night」のあたり、なんだかメタル・バンドというよりは女性シンガーのソロ・ライブを観ているような気分になってしまったのもまた事実で。

というのも、実はノーラ以外のメンバーは「普通のメタル兄ちゃん」という佇まいで、演奏が凄く上手い、というタイプのバンドでもないので、どうしてもノーラの歌唱とキャラクターだけが立ってしまうのだ。

とはいえ、本質的に楽曲志向のバンドであり、楽曲自体ライブ映えするキャッチーなものが揃っているので、盛り上がれることは間違いない。

そして実際、アンコール1曲目「King For A Day」では、オーディエンスの合唱ぶりを見たノーラが感極まって最後のほうは歌えなくなるほど。私だったらそもそもこのスカスカな会場を見て多少落胆する気持ちになりそうだが、彼ら、少なくともノーラにとっては充分感動的なオーディエンスだったようだ。

ライブの最後は新作で私が一番気に入った曲である「Beyond The Burning Skies」。この曲のちょっと切なさをはらみつつも力強く盛り上がるサビはクライマックスにピッタリですね。今後この曲がライブのエンディング定番になっていったりするのでしょうか?

アントン在籍時に観た前回のライブに比べるとやはり鉄分が少なくなっていて、そういう意味では期待していたものが提供されたとは言い難いのだが、いいライブだったことは間違いなく、こういう親しみの持てるキャラクターのバンドというのは日本では人気が出やすい気がする。楽曲も日本の80年代型HR/HMファンには親しみやすいものだし、新たなビッグ・イン・ジャパンになれるポテンシャルをひしひしと感じました。

いや、最新作は(前作も)母国フィンランドのチャートで1位だし、欧州のメイン・マーケットであるドイツでも14位と成功しているので、むしろ日本の人気は控えめに過ぎるという状況だったりするのですが。

そしてライブ終演から15分後には会社のデスクで業務に復帰していた私です。いや、最近は働き方改革の声がうるさくてそんなに遅くまで残業はしませんでしたけどね。

DGM&ELVENKING来日公演 at 新宿MARZ 2016.11.6

先週末はメタラーにとって熱い週末でした。

何しろKNOTFESTとJAPANESE ASSAULT FESTが同日に開催され、さらにDGMとELVENKINGの来日公演まで行なわれたのですから。

微妙に客層はバラけているとはいえ、私としてはKNOTFESTではDISTURBEDを観てみたかったですし、JAPANESE ASSAULT FESTではANCIENT BARDSを観てみたかった。

と言えばおわかりになると思いますが(ていうかこのブログエントリーのタイトルを見れば一目瞭然ですが)、私はDGMとELVENKINGの来日公演を選びました。

DISTURBEDかANCIENT BARDSは土曜日に観れただろ、もしANCIENT BARDSの出演時間が19時半以降であれば両方掛け持ちも不可能ではない、と言われそうですが(?)、土曜日は仕事のイベントがあって無理だったのです。

そして日曜日も休日出勤からの会場入り。前売り券はソールドアウトしているとのことながら、当日券があることを信じて会場である新宿MARZに向かう。

仕事が終わって会場に着いた時間は、開場時間どころか開演時間を大きく過ぎた18時前。案の定当日券はあったが、さすが前売りがソールドアウトしているというだけあってかなり混雑している。

オープニングアクトとしてRAKSHASAおよびANCIENT MYTHという2つの日本のバンドが付くことになっており、告知物の表記順からてっきりRAKSHASA→ANCIENT MYTHという出演順かと思っていたら、ANCIENT MYTH→RAKSHASAという出演順だったそうで、私がフロアに降りたタイミングでプレイしていたのはRAKSHASAでした。

RAKSHASA

全然知らないバンドでしたが、それもそのはず、まだ正式なアルバムはリリースしていない新しいバンドのようです。

とはいえド新人というわけでもなく、本日のプロモーターであるEvoken de Valhall Productionの主宰者であり、20年近いキャリアを持つもはやベテランと言ってもいいシンフォニック・ブラック・メタル・バンドETHEREAL SINのYama Darkblaze氏による新しいバンドとのこと。

自分で企画したイベントで自分のバンドをプロモーションする、という構図でしょうか。

そのサウンドはメロディック・パワー・メタルに和テイストを持ち込んだ、世の中的には「陰陽座フォロワー」と思われそうな音楽性で、個人的には好きな音。

特に最後から2曲目に演奏された「彼岸の月」という曲はなかなかカッコ良かったですが、正直な所女性ヴォーカルがちょっと弱いかな…。高音パートは悪くないのですが、中低音域がかなり説得力不足でした。

とはいえショウが進むほど場内の反応は良くなっていき、このバンドのサウンドがオーディエンスに受け入れられていった感じは確実に見て取れました。


ELVENKING

本日3バンド目(私にとって2バンド目)はイタリアのフォーク・メタル・バンド、ELVENKING。今回が初来日となる。

RAKSHASAがプレイしていたときは混雑していたので階段を下りてすぐの所で観ていましたが、転換の際の人の動きに乗じて奥の方へズズイと進み、センター後方あたりへ侵入。

ELVENKINGは買って聴いたのは、当時の「クサメタル」ブームの中で話題になっていたデビュー作のみで、その後は時々ネットでチェックしていた程度。正直日本ではあまりパッとしないバンドで、よくこんなマニアックなバンド呼んだものである。

DGMとの接点はイタリア出身で、メロディック・パワー・メタル的な要素がある音楽をプレイしている、ということくらいでしょうか。

転換が終わって幕が上がると、フォーク・メタル独特のメイクをしたメンバーたちが登場、ヴァイオリン奏者の存在もまたフォーク・メタルを主張している。

フォーク・メタルというと日本ではデス声をフィーチュアしたタイプのバンドが有名だが、このバンドは基本的にノーマル・ヴォイスで歌われている。

彼らのレパートリーの中でも最もヘヴィな部類に入る「The Scythe」で幕を開け、最新作のリーダー・トラックだった「Elevenlegions」がプレイされると、後方にいた私の周りでも合唱が起き、かなりコアなファンが駆けつけていることを窺わせる。

率直に言って演奏はあまり上手くなく(特にドラム…)、ちょっとB級な感じは否めなかったが、側頭部を大胆に刈り上げたエモっぽいルックスのイケメン・シンガー、ダムナゴラス(メンバー全員「エルフの王」というバンド名通り、エルフっぽい芸名を名乗っている)がなかなか巧みにオーディエンスを煽っていて、場内は結構盛り上がっていた。

このバンドの場合、「ヴァイオリンをフィーチュアしたフォーク風味」という体裁はキープしつつも、音楽性は時期によって結構ブレているため、パワー・メタリックな曲からメロディアス・ハードのような曲、エモ/パンクみたいな曲まで楽曲は良くも悪しくもバラエティに富んでいたが、オーディエンスの反応が一番いいのはフォーキッシュなメロディが奏でられる瞬間だったように思われ、そういう意味ではバンドの個性の部分が評価されていたと言える。

ヴァイオリン・ソロなど他のHR/HMバンドのライブではなかなか観られないものを観ることができた物珍しさ的な部分も含め、彼ら目当てで来場したファンにとってはかなり満足感のあるショウだったのではないでしょうか。

個人的には終始腕を上げるようなコーラス・パートでほのかに漂ってくるワ○ガの香り、そして途中至近距離で炸裂した屁の臭いで文字通り「クサメタルで悶絶」することになったのですが…。


DGM

当然ながらと言うべきか、基本的にはこのバンドがお目当てでした。今の時期も結構忙しいので、ちょっと足を運ぶのが億劫な気分もあったが、前回の来日時には別件があって行けなかったので、今回は観ておきたかった。

そしてまたELVENKINGからの転換時に起きる人の流れを利用して会場のほぼ真ん中辺りまで進出する。今日のBGMはなぜかずっとM.S.Gだ。

ステージに垂れ下がっている薄い幕の向こうでスキンヘッドが蠢いているのがシルエットでフロアからも見て取れ、マーク・バジーレ(Vo)本人がマイクなどのセッティングをしているのが丸わかりである(笑)。

そして準備が終わり、20時を少し回った頃、ショウがスタート。

音がデカい。RAKSHASAの時点ではあまり良くなかったサウンドがELVENKINGではかなり改善されていたが、DGMについては、サウンドが悪いわけではない(というかこの規模のライブハウスとしては良好な部類だろう)が、とにかく音がデカい。これは耳栓なしでは危険な音量である。

そしてやはり上手い。上手いのはスタジオ・アルバムを聴くだけでも容易に想像がついていたので、スタジオ盤ではどれだけ上手いのかよくわからなかったSECRET SPHEREの時のような意外な驚きはないが、音量はともかく歌唱も含めてほぼスタジオ音源通りである。中でも下手(しもて)に立っているシモーネ・ムラローニのプレイの正確さ、トーンの再現度といったら、スタジオ音源をそのまま流しているのではと勘繰りたくなってしまうほど。随所で繰り広げられるキーボードとのユニゾンもまさに「一糸乱れぬ」という形容に相応しい。

そしていかにもイタリア人らしい濃い顔立ちのヴォーカリスト、マイク・バジーレのフロントマンぶりも特筆に値する。ミケーレ・ルッピから過剰な艶を抜いてより男性的にしたかのような歌声も完全無欠の素晴らしさだが、ボクサーを思わせる独特のアクションで終始オーディエンスを煽り続け、フロアの盛り上がりをキープし続ける。

前に出たELVENKINGのダムナゴラスも悪くないフロントマンだったが、フロアの後方から2階席まで、その場にいるオーディエンス一人一人と目を合わせようとするかのごとく全方位的にコミュニケーションをとるマーク・バジーレのほうがより会場全体に気を配っていたことは間違いないだろう(ちょっと暑苦しさを感じなくもなかったが/苦笑)。

ショウの途中、オーディエンスの歓声を浴びて、感無量といった面持ちで言葉を失ってしまうあたり、この人は本当にエモーショナルな人なんだな、と思いました。実際、ライブ中何度も「DGMコール」が巻き起こるなど、フロアの熱気はかなりのもので、会場こそ小さいものの、その分濃いファンが集っていることがよくわかる。

最新作のオープニング・トラックである「The Secret」2部作で幕を開けたショウはマイク・バジーレ加入後の3作のアルバムの楽曲のみで構成されていた。それでも特に不満は感じさせない辺り、いかに現在の編成が充実しているかが伝わってくる。

いっそマイク・バジーレが加入したタイミングで、もっとキャッチーなバンド名に変えたほうがよかったのではないか…と思ってしまうほど。

アンコールでは、現在の編成になって最初の楽曲となった「Hereafter」の後、メイクを落とした後のELVENKINGのメンバーをステージに上げて(特にELVENKINGのメンバーは特にやることがないので手持ち無沙汰な感じでしたが)、アルバム『MISPLACED』に収録されていた「You Wa Shock!」(アニメ『北斗の拳』主題歌)のカヴァーを披露。日本のファンへのサービス精神を炸裂させてショウは幕を閉じた。

パフォーマンスの素晴らしさはもちろん、メンバー皆、楽器の上手い人にありがちな(?)気難しさを感じさせない「いい人」感に溢れていて、その辺も含めて好感を持たずにいられませんでした。次回はぜひLOUD PARKのような大舞台でその高い実力を大勢のオーディエンスに見せつけてほしいものです。

BABYMETAL来日公演 at 東京ドーム -RED NIGHT- 2016.9.19

タイトルの「来日公演」は、先日「来日記念盤」がリリースされていたので、その意向を尊重しました(笑)。

私はこれまで2012年1月の「Woman's Power」、2013年の「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」に「SUMMERSONIC」に「LOUD PARK」、2014年の「SUMMERSONIC」、そして今年のフジロックと、都合6回ほどBABYMETALのライブを観ていますが、単独公演に足を運んだことはありませんでした。

メタルのチケットというのは大抵ソールドアウトしないので、当日のスケジュールが見えてから買っても充分間に合うというか、ぶっちゃけ当日券で入れることが多いのですが、彼女らのライブに関してはすぐにソールドアウトしてしまうため、スケジュールの読みづらい多忙な身としては行けるかどうかもわからないライブのチケット争奪戦に参加することが躊躇われたからです。

しかし、今回会社の先輩から「ダメもとでチケットの先行予約申し込んだら取れちゃったからさ、一緒に行かない? メタル好きでしょ?」と声をかけられ行くこととあいなりました。

開場は16時だが、物販には二人とも興味がないので17時くらいに水道橋駅近くのスタバで集合し、会場である東京ドームへ。開場から結構時間が経っているにもかかわらず(開場が遅れていたようだが)入口付近はまだまだ混雑していて、自分たちの指定ゲートへ行くにはどこに並べばいいのかよくわからない状態でした。

列の最後尾を見つけて無事入場すると、ビニール製のコルセットが渡される。どうやらこれが光る仕組みになっているようだ。

2012年7月に行われた、シングル「ヘドバンギャー!」リリース記念のプレミアムライブ「LEGEND~コルセット祭り」以来の趣向であり、一昨年の武道館公演でも同様にコルセットが配られていたと聞いている。

「とりあえずビールでも飲もうか」と場内の売店に向かうと、本日は主催者の意向によりアルコール販売はなしとのこと。

仕方がないので席について開演を待つ。1塁側内野スタンドの後方で、決してステージに近くはないが、見づらい感じではない。360度タイプのステージで、三方向に花道が延びている。中心部はタワー状の建物になっている大がかりなステージだ。

BGMはSLAYERやらDRAGONFORCEやらJUDAS PRIESTやらSLIPKNOTやらIRON MAIDENやらMETALLICAやら、有名メタル曲ばかりが流れているが、特に周囲に反応はなく、ここに来ているのはやはり「メタルのファン」ではなく「BABYMETALのファン」なのだな、と。

初期のファンはどちらかというとメタル好きの比率が高かったのではないかと思いますが、さすがに東京ドーム公演をやれるほどにビッグになってしまうと、比率としては限りなく一般社会におけるメタル好きの構成比に近づいていくのはやむを得ないことでしょう。

開演時間である18時を20分ほど過ぎてようやく客電が落ちる。恒例の映像からのスタートで、『シン・ゴジラ』ネタが早くも取り入れられているあたり、相変わらず旬ネタに敏感である(笑)。

そしてKOBA-METALから、この東京ドーム公演においては、本日と明日の2日間でひとつの物語が構成されることが説明され、ファースト・アルバムとセカンド・アルバムの全曲がプレイされること、そしてそれぞれの曲は1回しかプレイされないこと、MCやアンコールは無いことが告げられる。

…てことは1日あたりアルバム1枚分の曲数しかプレイしないってこと? 演出やら映像やらで多少時間は伸びるにせよ、ちょっと短くね? てか元々2日目は「追加公演」のはずなのに、2日ワンセット扱いなのはおかしくね? などと思ってしまいました。

若干釈然としない思いがありつつも、ショウがスタートする。あたかも塔のように高く組まれたステージ・セットの上部から3人が登場したため、おそらくアリーナ前方の人は最初まったく本人たちが見えなかったのではないか(笑)。しかしこのセット、高所恐怖症だったら絶対にNGな高さだ。

オープニングは定番の「BABYMETAL DEATH」ではなく「Road Of Resistance」だ。個人的には「BABYMETAL DEATH」はイントロダクションとしては長すぎると感じていたのでこれはいい。

ただ、この曲を今日プレイしたということは、同じメロディック・スピード・メタル・チューンの「イジメ、ダメ、ゼッタイ」は明日かな~などという思考が脳裏をかすめる(そしてその予感は正しかった)。

続いて「ヤバッ!」に「いいね」と、どちらかというとポップな曲が続く。SU-METALの声の伸びは素晴らしく、明らかに前回観たフジロックの時よりコンディションは良さそうだ。

会場があたたまったところで私の好きな「シンコペーション」がプレイされる。ちょっとV系っぽいこの曲はオーディエンス的には合いの手などを入れやすいパートがないため、ライブ映えはイマイチかもしれない。

続くはやはり新作から私のフェイバリット・ナンバーである「Amore -蒼星-」がプレイされる。この曲がプレイされたということは「紅月」は明日か。

てっきり大合唱になるのかと思いきや、少なくとも1階席ではまったく歌声が起こらない。合唱の起きないメロスピのライブなんてちょっと寂しいものがあるが、これくらい会場規模が大きくなるとYouTubeにMVが上がってない曲は知らない人や、歌詞をちゃんと覚えていない人が大半を占めるようになるのもやむを得ないか。

一緒に観ていた会社の先輩の「バラードにこんな激しいビートをつけるってすげぇよな」というコメントを聞き、なるほど、メロスピというのは一般人には「激しいバラード」に聴こえるのか、と新鮮な驚きを感じるとともに、かつてYOSHIKIが「紅」を作曲した際に周囲から「なんでこのメロディでそんなに速くするの? バラードにすればいいのに」と言われたというエピソードを思い出しました。

YUI-METALとMOA-METALによるNU-METALチューン「GJ!」で、5万人の三三七拍子が響き渡ったの後、ファースト収録のゴシック・プログレッシヴ・メタル・チューン「悪夢の輪舞曲」がプレイされる。ノリやすい曲ではないため、盛り上がったとは言い難いが、これはなかなか俺得な選曲だ。

『スターウォーズ』ネタの映像が流れた後「4の歌」がプレイされる。YUI-METALとMOA-METALに煽られて場内は「よんよん!」「フォー!」と盛り上がる。ある意味本日一番盛り上がりというか、場内の一体感を感じる瞬間だったかもしれない。

ライブにおいては神バンドの超絶技巧を見せつけるソロから始まるのが「お約束」になっている「Catch Me If You Can」を挟んで人気曲「ギミチョコ!」そしてセカンド・アルバムのリード・トラックである「KARATE」がプレイされる。ここまでどちらかというとメジャーな曲が少な目だったことのバランスをとるかのような選曲だ。

そしてクライマックスを感じさせる映像が流れた後、ライブ初披露らしい「Tales Of The Destinies」がプレイされる。女子高生くらいの女の子がこんな変拍子バリバリのプログレッシヴ・チューンをライブで歌えるということ自体が驚きなのに、ダンスの振付まで付いているのだから恐ろしい。神バンドの演奏にも鬼気迫るものがあり、この曲・この瞬間が本日のハイライトだったと言えるだろう。

そして、5万人を超えるオーディエンスが装着したコルセットがさながら煌めく星のように白く発光する中、本日のライブを締めくくったのはアルバムの流れ通り(実質組曲?)「THE ONE」。まさに感動の演出である。

あまりメンバーが花道に出てくるタイミングは少なく、また中心部のタワーが邪魔になってあまりメンバーがよく見えない時間帯が長かったのが不満と言えば不満だが(ライトスタンドやレフトスタンドの人たちはちゃんと彼女たちが見えていたのでしょうか?)、コンサートの構成としては短さをあまり感じさせない、充実感のあるものに仕上がっていたと思う。

もちろん、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」や「メギツネ」、「ヘドバンギャー!」みたいな人気曲が聴けなかった、という不満を持つ人も、初見の人も多いであろう東京ドームのオーディエンスの中にはいると思われるが、個人的なことを言えばそれらの楽曲はこれまで何度も聴いているので、これまで聴く機会のなかった楽曲が多かった本日の選曲は悪くなかった(強いて言えば「META! メタ太郎」を聴いてみたかったが…)。

とはいえ僕がプロデューサーだったら、こういう初見の人やライトなファンがいっぱい集まる大会場のライブでは、普通にグレイテスト・ヒッツな選曲でやると思いますが、まあその辺がこのプロジェクトならではのこだわりなのでしょう。

いずれにせよ東京ドームでメタル(ハード・ロックではない)を聴くことができるという、なかなかレアな喜びは充分に噛み締めました。

残念ながら2日目「BLACK NIGHT」の公演を観ることはできませんが、果たして何が起きるのか、ネット上の声やレポートを楽しみにしていたいと思います。

フジロックフェスティバル '16 三日目 7/24 Sun 感想

フジロック3日目、行ってきました。恥ずかしながら39歳にして初のフジロックです。

思い起こすこと20年前、当時大学でバンドサークルに所属していた私は、サークルの有志で初開催のフジロックに行かないか、という誘いを受けて悩んでいました。

たしかに凄いメンツによる未曾有のイベントであるとは思ったものの、何しろ当時はお金のない学生の身分、自分の個人的な音楽的嗜好を考えるといささかコスパが悪い(当時コスパという言葉はありませんでしたが)と感じ、見送りました。

そしてフジロックから帰ってきたサークルの友人たちはみなグッタリし、「マジで死ぬかと思った…」と口々に語りました。そう、台風の直撃を受けて2日目は中止となった、野外フェスにはアウトドア装備が必要である、という認識が日本に普及していなかったために、Tシャツにビーチサンダルで現地に行った輩が大雨に打たれて凍死しかけ、救護室が溢れかえったというあの日です。行かなくてよかった、と当時心から思いました。

今となってはむしろそれは伝説、行っておけば後で一生のネタになったのに、という思いもありますが、私の体力では実際に生還できなかった可能性もあるので、あまりに危険な賭けだったと思います。

まあそんな思い出もあり、アウトドア派の対極にある私としてはなんとなく敬遠してしまうフェスでした。

一方でやはり日本でロック・ファンとして生を受けた以上、一度は行ってみたいという思いがあったのも確か。毎年その背中を押してくれる何かを待っていたと言っても過言ではありません。

そしてそれは2013年のKILLSWITCH ENGAGEや2015年のMOTORHEADでは充分ではありませんでした。だってどちらもラウパで観たことあったんだもん。むしろそれなら2010年のROXY MUSICや2011年のFACESの方がレアであるという意味で観たかった。

結果的に私の背中を押したのは、確実に楽しめることがわかっているBABYMETALという「保証となるアーティスト」と、近年のメタル・シーンにおける最大の注目株といっても過言ではないポスト・ブラック・メタルのDEAFHEAVENという、この機会を逃したら観る機会がないかもしれない「レアなアーティスト」が同日にそろい踏みするという状況だった。しかもトリもRED HOT CHILLI PEPPERSという「ロック好きであれば間違いのない」存在。ここまで条件が揃う日はもうないかもしれない。

そんなわけで「メタラーのフジロック体験記」を書くことにします。超長くなるのでご覧になる方は覚悟を決めて読んで下さい(笑)。


当日前夜、準備不足が仇となり寝るのが3時に。指定券を買っている新幹線の時間から逆算すると6時前には起きなくてはならないので、睡眠時間は3時間弱になってしまうという事態。体力勝負だけに厳しいが、まあ1日くらいならなんとかなるだろ、と開き直る。

そして朝、案の定メチャクチャ眠いのを我慢して無理矢理起床。とりあえず日焼け止めを塗りたくって家を出る。

私の家からだと新幹線は東京駅から乗るよりも大宮駅から乗ったほうが少し早いので、埼京線で大宮に出て、MAXとき号に乗車。やはりというか、周りはいかにもフジロックに行きます、という感じの人たちばかりだ。

私は家を出る前に送られてきていたリストバンドを忘れたり無くしたりしないように装着していたが、周りを見るとあまりリストバンドをしている人はいない。意外と現地でチケットとリストバンドを交換する人が多いのだろうか。それとも単に直前に付けるつもりなのか。

MAXとき号であれば、目的の越後湯沢駅まで1時間もかからない。早く着くのはありがたいが、足りない睡眠時間を補えないという意味では痛し痒し。

越後湯沢駅からはシャトルバスが出ているのでそちらに乗車。かなり並んでいるが、コンスタントに複数台のバスが来るので待ち時間自体はさほどでもない。とはいえきっと初日や昨日はもっと混んでいたに違いない。

40分ほどバスに揺られると到着。苗場プリンスホテルのそばで降車。帰りはオフィシャルツアーの夜行バスを予約しているので、軽くその乗り場への道筋を確認した後、会場入口に向かう。

入り口前の飲食ブース群にある名物屋台、「カドヤ横丁」で朝ビールをキメ、まずは景気づけ。

IMG_8107.jpg

ビールを飲み終え、会場入口に向かう。
会場のゲート自体は20周年にもかかわらず割と簡素。これならサマソニやロックインジャパンのほうが見栄えがする気が。

IMG_8113.jpg

そのままOASIS(インフォメーションや救護スペースなどがあるメインのパブリックスペース。飲食の屋台が場内で一番多く立ち並んでいる)に行き、このフェスの定番飯である(予習済み)苗場食堂でとろろ飯を注文。温泉玉子もトッピング。

IMG_8121.jpg

食べ終わると密かな目当ての一つだったfox capture planを観に移動開始。まるでハイキングコースのような自然を満喫できる道を抜け、ステージとしては最も奥地にあるFIELD OF HEAVENに辿り着く。

IMG_8132.jpg

IMG_8135.jpg

このサイト/ブログをお読みになっているような方にどれだけなじみがあるかわからないが、fox capture planは日本人によるジャズ系のトリオで、タワーレコードやヴィレッジ・ヴァンガードなどがかなり力を入れてプッシュしているアーティスト。私が彼らを知ったきっかけもやはりヴィレッジ・ヴァンガードの店頭演奏によるものだった。

IMG_8139.jpg

そのどこか切ないピアノのメロディと、ジャズとは思えないほど躍動感のあるリズムのコンビネーションはライブで聴くと(MCは非常に淡々としているが)さらにエネルギッシュかつ感情の高まりを感じさせるもので、ラスト2曲、「疾走する閃光」から「RIGING」の流れではちょっと泣きそうになってしまいました。序盤から楽しませてくれるぜフジロック。

※「疾走する閃光」MV


次に予定していたのはWHITE STAGEのDEAFHEAVENだが、まだ時間があるのでステージ途中にある小ステージ、GYPSY AVALONで「ザ・なつやすみバンド」という、全然知らないが(失礼)、とても今の時期にピッタリな名前のバンドがプレイしていたので、足を止めて観てみる。

ピアノ・ヴォーカルの女の子がとてもピュアな佇まいと歌声の持ち主で、癒される。スティール・パンやトランペットがフィーチュアされていて、ちょっと変わったサウンドだが、楽曲そのものはいたってポップで可愛らしく、結構楽しめました。ただ、日差しが強すぎていささか夏休み感が強すぎました(苦笑)。

その後WHITE STAGEに移動すると、まだDEAFHEAVENの前のバンドであるBO NINGEN(棒人間?)という、これまた全然知らないロンドンを拠点とする日本人4人組バンドがプレイしている。

HAWKWINDや初期MOTORHEADのようなヘヴィ・ガレージ・サイケといった感じのそのサウンドはかなりラウドで、「貞子vs伽椰子」に登場しそうなルックスのベース・ヴォーカルには不思議なインパクトがある。

「今日は観に来てくれてありがとう。全員の目、見ました」という、ちょっと不気味なエンディングのMCを聴いたあと、ちょっと頭痛を感じ、熱中症になりそうだったので最寄の木陰のスペースに退避。この日のために購入したHelinoxのチェアを組み立てて座り、休憩する。この時間帯FIELD OF HEAVENでプレイしていたdCprG(BABYMETALのギタリストでもある大村孝佳が参加している)を観に行くという手もあったが、ここで30分くらいウトウトできたことは体力回復的には結構大きかった。


DEAFHEAVEN

さて、今回の目的のひとつ、DEAFHEAVENである。音楽的には実はこの時間帯に裏でやっている2CELLOSの方が好みだったのだが、彼らは今後も頻繁に来日しそうなので、今回を逃すともう観る機会がないかもしれないDEAFHEAVENを優先するのは仕方ない。

このサイトの読者にどこまで知名度があるか不明だが、DEAFHEAVENは世界で最も影響力のある音楽メディアとして知られるアメリカのインディー系ミュージック・サイト『Pitchfork』など、主に「メタル村」の外部で高く評価されているポスト・ブラック・メタル・バンドである。

ブラック・メタルのようなアグレッシヴなパートと、ポスト・ロックのようなメロウで、ある種叙情的なパートが交錯するそのサウンドはTOOLやISISなどに通じる内省的で密室的な印象もあり、およそこの真夏の陽光が降り注ぐステージには全くもって不似合いである(笑)。

バックの楽器陣はシューゲイザー・バンドのように動かないが、フロントマンであるヴォーカルのジョージ・クラークはまるでオーケストラの指揮者のようなナルシスティックにも映る不思議なアクションでオーディエンスを煽り、3曲目「Come Back」ではサークル・ピットを要求する。

そしてアグレッシヴなパートで巻き起こったサークル・ピットは乾いた大地から砂埃をもうもうと巻き上げていた。正直マスクが欲しい埃っぽさである。事前にチェックした「持ち物リスト」にマスクはなかったなー。

IMG_8164.jpg

彼らの楽曲は1曲1曲が長いので、およそ50分のステージで5曲しかプレイしなかった(できなかった)わけだが、歌がスクリームでなければかなりポップな曲になるであろう「Gift For The Earth」から、再びサークル・ピットやクラウド・サーフが巻き起こったアグレッシヴな「Dream House」で幕を閉じる。

彼らの日本における知名度の低さと、最大15,000人を収容できるWHITE STAGEの規模を考えると、ガラガラなのではないかと危惧していたが、そこそこ客入りはあり、盛り上がっていた。BABYMETALのTシャツを着た人も多く、そういった人たちはジョージ・クラークが激しくスクリームするたびに盛り上がっていたので、私のような「BABYMETAL+DEAFHEAVEN」を目的にしていた人も少なくなかったのではないだろうか。

※「Luna」のNYでのライブ映像


その後OASISに戻り、これまたこのフェスの定番フードとされる「元祖 越後もち豚」の豚串焼きを食べる。たしかにジューシーでなかなか旨い。

IMG_8175.jpg
ひどい後ピンである…。お恥ずかしい。

IMG_8174.jpg
ラウパでは一番人気のあのケバブ屋も、フジロックにおいては「その他大勢」な感じです。

食べ終わって、OASIS最寄にあるこのフェス唯一の屋内ステージRED MARQUEEを覗きに行く。ちょうど直前に出演していたTROYE SIVANのステージが終わった直後でガラガラだったが、既に次のSHERBETS(元BLANKEY JET CITYの浅井健一率いるバンド)待ちと思われる人たちがステージ前に貼りついていた。

単純にどんな場所か興味本位で観に行ったRED MARQEEを出ると、苗場スキー場とかぐらスキー場を結ぶ、日本最長のゴンドラ、ドラゴンドラの入口があった。「待ち時間0分」という状況だったため、マンガ『モテキ』で主人公が乗っていて楽しそうだったのを思い出し、観ようかと思っていたSTEREOPHONICSを蹴ってゴンドラに乗る。残念ながら傍らに土井亜紀のような素敵な女の子はいませんでしたが(苦笑)。

25分におよぶゴンドラからの眺めはまさに大自然と呼ぶに相応しいもので、なかなか気分が良かったが、こんな山奥にこれほどの巨大ゴンドラ施設をいったいどのように工事したのか、全くもって想像がつかない。

IMG_8219.jpg

そしてゴンドラから下りると、標高が上がっているので体感気温が明らかに低い。小さなステージはあるものの、大して興味のあるアクトがプレイしていたわけでもないので軽く冷やかして戻ろうとしたら、帰りの行列はいったいどこが最後尾なのかわからないほど長大で愕然とする。「行きはよいよい、帰りは怖い」とはこのことか。並んでいる間、あまりに暇なので前日から始めたポケモンGOをやってみるも、田舎ゆえほとんどポケモンはいない。電池の無駄なのでピードルを1匹とパラスを1匹捕まえて終了する。

20分強ほど並んで帰りのゴンドラに搭乗。となりに座っていたカップルの会話がなかなか面白かった(女の子がなかなか面白い子だった)のだが、印象に残ったのが次の会話。

「BABYMETALな人たちって、BABYMETAL終わったら帰るのかな? 他は興味ないよね、きっと」
「まあレッチリくらいは観て帰るんじゃないの」

やっぱりBABYMETALが好きな人というのは広く音楽一般、ロック一般が好き、というタイプの音楽ファンだとは思われてないんだなあ、と思いました。まあ実際私もBABYMETALとレッチリが主な目的なので苦笑せざるを得ませんでしたが。

ゴンドラから降りて再びOASISへ行き、今度は「殿堂入り店舗」である「ジャスミンタイ」のマッサマンカレーを食べる。マッサマンカレーといえば2015年にアメリカの人気情報サイト「CNN Go」が「世界で最も美味しい食べ物」に認定したことで話題となり、私も何度か食べたことがあるが、たしかにここのカレーはなかなかマイルドで美味しかった。

IMG_8228.jpg

食後、この後観たいステージが連続するので念のために行っておこう、とトイレに行くと、恐ろしい行列ができており、これは切羽詰まった尿意/便意が起きてから行くと地獄を見るな、と思いました(実際の所、かなり暑くて汗をかきまくっていたのでトイレに行ったのはこの1回だけだったのですが)。

トイレを終えてBABYMETALが出演するWHITE STAGEに向かうも、同じくBABYMETAL目当ての人たちで大混雑しており、なかなか進まない。

ようやくステージが近づいたところで、財布がないことに気付いて青ざめる。

ヤバい、トイレが和式だったので、落とさないよう尻ポケットから取り出して、そのまま置いてきてしまったのだ。お金はもちろん、クレジットカードや家のカギも入っているのであわてて引き返し、インフォメーションに向かう。

インフォメーションに着くと、幸いなことに無事財布は届いていた。お金もなくなっていない。民度の高い国に生まれてよかったと心底思う瞬間でした。届けてくれた方、本当にどうもありがとうございます。

そしてあらためてWHITE STAGEに向かうと、途中で混雑のため、ステージが見られない可能性があるので他のステージへの移動を促すアナウンスがある。

こうなるとインフォメーションに引き返したことが悔やまれる。どうせ届くか、盗まれるか二者択一なのだから、BABYMETALのステージを見てからインフォメーションに行っても結果は同じだったのだ。ここは腹をくくるべきだった。

しかし、何とかWHITE STAGEに潜り込むことに成功。文字通り寿司詰めである。本日来場者のTシャツを見る限り、RED HOT CHILLI PEPPERSの次に多かった(あるいは同等に多かった)のがBABYMETALのものであり、セカンド・ステージでやらせるのは無理があったのではないか。

とはいえアイドルかつメタルという、本来のフジロックの属性からは程遠い存在をメイン・ステージであるGREEN STAGEに立たせるのはフジロック運営者の矜持が許さなかったのだろう(実際、彼女らが記念すべき20周年に出演することを非難する声もネット上でしばしば目にした)。個人的にはつまらない矜持だと思いますが。


BABYMETAL

BABYMETALの開演時間が近づくと、これまで晴れていた会場に雨が落ちてくる。山の天気は変わりやすいとは言いますが、何もこの逃げようのない満員電車状態のシチュエーションで…。

これでゲリラ豪雨でも降ったら「BABYMETALが嵐を呼んだ!」みたいな新たな伝説になってしまうところでしたが、幸いパラついた程度で済んだ。Fox Godの加護だろうか。とりあえず持ってきていたモンベルのバーサライト・ジャケットを狭い隙間をぬってカッパ代わりに着用(ポンチョも持ってきていたが、そこまで強い雨ではなかったので出さなかった)。

ステージは定番の「BABYMETAL DEATH」でスタート。これは一種のイントロダクションみたいなものだとすれば、実質1曲目は「ギミチョコ!!」。メタル・ファンが少ないであろうことが予想されるフジロックでは、最も一般層に対する知名度が高いであろうこの曲で始めることは理解できる。

「ギミチョコ!!」の後、いきなり神バンドのソロタイム。フジロックにはおよそ似つかわしくない、むしろそういうものを嫌う人が多そうなこの場で速弾き中心の「演奏テクニックの見せつけ」が行なわれたことは個人的には痛快。

そしてソロからつながる「Catch Me If You Can」から、「YAVA!」というどちらかというとメタル色薄めの楽曲が続く。SU-METALの煽りは基本的にほぼ英語で、これはここまで長い海外ツアーを経験してきた「世界的アーティスト」ならではのアピールか。個人的にはここは日本で、彼女たちは日本人なんだから日本語でいいんじゃないの、と思いましたが。

先に満員電車状態だったと書きましたが、1曲終わるごとにかなりの人数がコンスタントに離脱していて(ちょっと興味本位で観てみたい、という人たちだったのでしょう)、徐々に前の方に進むことができた。特に5曲目、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」の前には、私の脇を通り過ぎた人だけで100人近くが流出する大量離脱があり、だいぶ前の方まで行くことができた。

「イジメ、ダメ、ゼッタイ」がプレイされると、ステージ上の大型モニターに巨大なサークル・ピットの様子が映し出され、私のいる後方でどよめきが起きる。私の近くにいた人が発した「マジで走ってる奴とかいるんだ? ステージ見えないじゃん」という言葉には苦笑せざるを得ませんでしたが、普段フジロックに出演するようなアーティストのライブしか観たことがない人にとってサークル・ピットというのは目新しいものであったに違いありません。

SU-METALは私がこれまで観た5回ほどのステージ(全部フェス)と比べ、必ずしも絶好調という感じではなかったが、それでもかつてはただまっすぐだった歌唱に抑揚がつくようになっており、成長を感じることができた。彼女の「少女性」を強く感じさせる歌声こそが、BABYMETALの大きな求心力となっていることは間違いない。

YUI-METALとMOA-METALによるダンスも、かつてはちょっとシンクロ具合や位置取りの左右対称性に甘さを感じることもあったが、もはやほぼ完璧で、世界のステージで鍛えられたエンターテインメント・アクトとして既に完成形に達したことを印象付けられた。

「イジメ、ダメ、ゼッタイ」の後は「メギツネ」に「KARATE」と、やはりどちらかというと一般受けしそうな楽曲がプレイされ、私の近くにいた、父親に肩車された3歳くらいの子供も両手を上げて盛り上がっていた。

それにしても「KARATE」、個人的には苦手なタイプのリフで、楽曲テーマであるあざとい「ジャパン・アピール」もちょっと気に入らないのだが、SU-METALの歌い上げるサビのメロディにはグッと来てしまう。

ラストは「Road of Resistance」で激しく疾駆して終了。私の周囲で聞こえてきた感想は主に「かわいい」という音楽とは無関係なものが多かったが、概ね好意的に受け止められていた様子。

IMG_8240.jpg

BABYMETAL終了後、GREEN STAGEに移動。私と同じく本日単日で来場している職場の上司イチオシのBEN HARPER & THE INNOCENT CRIMINALSを観る。

個人的には「渋めのレニー・クラヴィッツ」くらいの印象だったベン・ハーパーだが、時にジミヘンやSANTANA、LED ZEPPELINなどを彷彿させるそのサウンドはライブで観ると非常にグルーヴィーでカッコいい。特にベン・ハーパーのスライド・ギターと激ウマなベースの絡みは絶品で、ある意味本日一番「ロック」らしいステージを観た気がしました。

BEN HARPER & THE INNOCENT CRIMINALSを少し早めに抜け、最後のエネルギーチャージ。昨年のフェス飯ランキングで1位に輝いた「博多もつ鍋 うみの」の「もつ鍋ちゃんぽん」を食べる。スープが絶妙で、「フェス飯にしては」などという注釈なしで素直に美味しかったです。

IMG_8247.jpg


RED HOT CHILLI PEPPERS

GREEN STAGEに戻り、ヘッドライナーのRED HOT CHILLI PEPPERS待機。再びHelinoxのチェアが活躍。この待ち時間を座って待てるというのは、もうだいぶ体力が削られているだけにありがたい。そもそもアウトドア派ではない自分的にはもう一生使う機会がないかもしれないが、買っておいてよかった。

とはいえ、開演20分くらい前になると人口密度が上がりすぎて椅子は片づけざるをえない状況。ソールド・アウトしているだけあって、凄い人口密度だ。

そして21時、いよいよヘッドライナーであるRED HOT CHILLI PEPPERSのステージがスタート。

ヴォーカルのアンソニー・キーディスは口髭を生やしてキャップを被っており、その姿はさながらマリオを彷彿させる(笑)。アンコール時にキャップを外したときにはフレディ・マーキュリー(QUEEN)みたいに見えましたが(笑)。

事前にチェックしておいた最近のセットリストでは「Can’t Stop」で始まることが多かったが、「Goodbye Angels」からという意外なスタート。その後、日本映画『デスノート』主題歌だった「Dani California」から「Scar Tissue」、「Dark Necessities」という流れは予想通りというか、最近の定番である。

もちろん演奏は素晴らしい。フリーのベース・プレイには既に巨匠の風格が漂っているし、チャド・スミスのドラムもパワフルかつグルーヴィーで、この強力無比なリズム隊が歌モノっぽい曲でさえ単なる歌モノにしない。

前作から正式加入したイケメンギタリストであるジョシュ・クリングホッファーも、前任のジョン・フルシャンテほどの風格はないものの、そのプレイに特に過不足は感じなかった。

アンソニーは、曲によっては終始音程が外れているようなこともあったが、声自体はよく出ていたと思う。
本日サウンド(音響)がイマイチで、ひょっとするとモニターの返りが悪かったりしてアンソニーの音程に悪影響を与えていたのかもしれない。

でもやっぱり、一番存在感があったのはフリーかな。プレイの凄さもさることながら、ステージ・アクションがいちいちカッコいいし、アンコールの際、逆立ち歩きで登場したのもインパクトがあった。

両サイドのモニターに加え、ステージの後ろにある4つの円形のモニターにも映像が映し出されるステージの仕様や、モノクロ映像を効果的に使った演出、それと対比するかのようにカラフルなライティングなど、ステージ演出もカッコ良かった。そして彼らのステージの際には終始撮影用と思しきドローンが飛び回っていた。

ただ正直、睡眠不足に加え、疲労がピークにきていたこともあり、近年の歌モノ路線の曲が連発された中盤、ちょっと眠くなってしまったことは否定できない。オーディエンスとのコミュニケーションもあまり多くなく、割と淡々と曲がプレイされていったこともその理由のひとつかもしれない。毎回こんなものなんでしょうか。

まあ、そもそも近年の彼らの曲というのは歌モノ路線と言われますが、個人的な感覚では彼らの「歌モノ」というのはサビでの盛り上がりに欠けるというか、ありていに言えば歌謡曲っぽさが乏しく(きっとファンはだからカッコいい、と言うのでしょうが)、ちょっと平坦に聴こえる、というのが個人的な感想。

むしろ初期の、ファンクっぽさバリバリのヤンチャでわんぱくな頃の曲を多めにやってくれたほうが楽しめた気がする、と、ラストの定番曲「Give It Away」を聴いて思いました。

曲名からしていかにも来日公演で演奏しそうだと思っていた新作のラスト曲「Dreams Of A Samurai」は、案の定アンコール1曲目でプレイされましたが、まだ浸透していなかったのと、曲調がおとなしい(ありていに言えば地味)なこともあって、一番盛り上がらない曲になってしまいました…。バンドとしては日本のファンに対するサービスだったと思うのですが。

全体としての印象はMETALLICAなどを見たときに通じる「大御所感」に満ちたもので、オーディエンスの反応含めて、彼らこそ現在のロック界を代表するバンドであるということに納得させられる風格と力強さは感じました。

彼らがデビューした80年代にはどちらかというと「ロック界の異端児」的なポジションだったと思うのですが、いつの間にかこうして「ロック界の代表」になっているのですから、世の中どう変わっていくかわかりませんね。

個人的には、正直それほどメロディが(歌謡曲的という意味で)良いとは思わないし、パッと聴きのラウドさ、ヘヴィさではHR/HMやパンクのようなわかりやすい派手さもなく、さらに楽器初心者がコピーするにはちょっと難しすぎるという意味でとっつきやすいバンドではないと思っています。

ただ、それでも彼らの持っている「特別な何か」がちゃんと世の中に理解されたのは、もちろんバンドとしての実力もさることながら、歌モノ路線にシフトしていくタイミングとか、バンドの歴史に伴うストーリー、あと単純にバンド名にインパクトがあって覚えやすいこととか、色々な理由が複合的にあったから、なのでしょう。


ヘッドライナーが終わっても朝までライブが続く(一部ステージ)のがフジロック。レッチリが終わっても大半のオーディエンスがそのままGREEN STAGEに残っている。

私も深夜バスの発車時刻までまだ時間があるので、そのままGREEN STAGEに残ってSPECIAL GUESTである電気グルーヴを待つ。もちろんこの時もHelinoxのチェアは大活躍だ。てかもう黙って立っているのが体力的につらい。

電気グルーヴなんてメタルどころかロックですらないじゃないか、と言われそうですが、個人的にはテクノとかEDMとかも嫌いじゃないです。家ではあまり聴きませんが、クラブとか然るべきシチュエーションで聴けば盛り上がります。

そもそも「気持ちのいいフレーズ(HR/HMで言えばギター・リフ)の反復が生み出す快感」という点でHR/HMとテクノは共通点があるんですよ(ホントかよ)。

クラブではなく屋外でテクノを聴くのは実は初めてで、それがちょっと楽しみなポイントでした。

さらに電気グルーヴについては、昨年末に公開された彼らのドキュメンタリー映画『DENKI GROOVE THE MOVIE ?-石野卓球とピエール瀧-』を観てしまうくらいに関心があったのです。

そして実際、日曜の深夜に聴くテクノというのはなんだかむやみな高揚感と多幸感があって、年甲斐もなく踊り狂ってました。

ステージバックの映像には「終電が終わったので、もう踊るしかありません」というメッセージが映し出されましたが、しかし私には深夜バスがあるのです。

年齢相応の分別があるので、深夜バスの集合時間に遅れないようにアンコールは切って深夜バス乗り場に向かう。しかし後でアンコールは「Shangri-La」に「虹」という超名曲だったと聴いて最後まで聴いていけばよかったと大後悔。実際深夜バス乗り場で行列に並んでいた時間を考えるとラストまで聴いても充分間に合った気がするだけになおさら。

IMG_8259.jpg

そして深夜バス乗り場では、新宿行きとそれ以外(東京駅、羽田空港、横浜、船橋、池袋、さいたま新都心)に分かれて並ばされる。なんて大ざっぱな分け方だと呆れましたが、実際それで2つの列が同じくらいの長さなので、いかに新宿が最大公約数的に使用されているかということを実感させられました。「それぞれ帰り先が違うメンバーのグループが、あえてひとつのゴールを選ぶならそれは新宿」という感じなのだろうと思います。神奈川方面、千葉方面、埼玉方面にそれぞれ一本で出られる電車がありますからね。

夜行バスなんて学生時代にはスキーなどでよく利用していましたが、社会人になってからはほとんど乗る機会がなく、15年ぶりくらいでしたが、幸いにして近くにイビキのうるさい人や体臭のキツい人もおらず、ほぼ眠って帰ることができました。

とはいえ所詮4時間ほどのバス旅で熟睡できるはずもなく、帰宅後はシャワーを浴びて泥のように眠り込み、目が覚めたのは夕方になろうかという時間でした(もちろん会社は休みをとっていました)。

フジロック、これはたしかになかなか非日常な空間・体験で、毎年通う人がいるのも頷けます。ただまあ、個人的には苗場プリンスに泊まれないなら1日が体力の限界ですね(苦笑)。でも、このイベントを体験できて良かったです。思わずこんな1万字を超えるレポ(というか日記ですね)を書いてしまうほどに記憶に残したい体験でした。

◆FUJI ROCK FESTIVAL公式サイト
http://www.fujirockfestival.com/

◆FUJI ROCK EXPRESS '16
http://fujirockexpress.net/16/