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ARCH ENEMY 来日公演 at Zepp DiverCity Tokyo 2023.3.3

ARCH ENEMYのZepp DiverCity Tokyo公演に行ってきました。

ここしばらくかなり激務が続いており、会社を出たのは18:40頃。もう開演時間まで20分ほどしかない。

タクシーに乗り、高速道路使って飛ばしてくれと運転手に伝えるも、都心のこの時間帯は慢性的に道が混んでいるので、実際には法定速度くらいでしか進まない。

なんとか19時ギリギリに到着し、先に入っている友人が上手(かみて)側の一番後ろにいる、とLINEを送ってきていたので後ろ側の扉から入場しようとするも、場内パンパンでとても扉の前から進めない。

私の後から入ってきた人で強引に奥に進もうとした人もいましたが、私のすぐ脇にいたオッサンがそれを阻止するという心の狭い動きをしていたため、遅く入ってきた人は扉前に滞留することになっていました。

入場してほどなくBGMでLOUDNESSの"Crazy Nights"が流れる。この開演時間直前に、日本のバンドが歌う、ライブについての曲が流れるというのは偶然ではなく「演出」なのでしょう。関係があるのかどうかわかりませんが、大阪公演には高崎晃(G)が観に来ていたようですね。

そして照明が落ち、オープニングSEが流れた後、ステージにかかっていた"PURE FUCKIN' METAL"の垂れ幕が落ちると同時に"Deceiver, Deceiver"でショウがスタートする。

ちなみに先述した通り、私がいるのは後方であり、私はあまり背が高い方ではないので、男ばかりのこの会場だとステージの様子はほぼ見えない。時々メンバーの頭が見える程度だ。つま先立ちをして背伸びをすれば多少観えるものの、ライブの最中ずっとつま先立ちをしているわけにもいかない(苦笑)。

2曲目の"The World Is Yours"の後、軽くアリッサがMCを挟んでもはやクラシック・ナンバーと言っても過言ではない名曲"Ravenous"がプレイされる。この曲のイントロはオーディエンスの集中力を一気に楽曲に集める力がある。その後アリッサ加入後最初のアルバムから"War Eternal"が演奏される間、私はもう見えないステージを追うのを諦め、無心に久方ぶりのヘッドバンギングに打ち込む。

そして最新作から私のお気に入りのフックを持つ"In the Eye of the Storm"をプレイした後、アリッサが「ニューアルバムから今夜この場にいるみんなにこの曲を捧げるわ」的なMCを挟んで"House of Mirrors"が始まる。この曲の歌に入る直前のスクリームは完全にノーマル・ヴォイスだ。

"My Apocalypse"の冷厳なギター・リフが場内を引き締めた後、「ニュー・アルバムから速い曲をやるわよ」というMCで歓声が上がり、"The Watcher"がコールされる。

たしかにここ3曲ほど、彼らのレパートリーの中では「速くない曲」が続いていたが、それでもダレるどころか、ライブの勢いが損なわれる感じは一切なかったのは、やはり彼らの楽曲の魅力がテンポの速さや単純な攻撃性に依存していないからこそだろう。

その"The Watcher"に続いたのは前作"WILL TO POWER"からの"The Eagle Flies Alone"で、この曲のリフは「ヘッドバンギングしやすいテンポ」だ。中間のメロディックなパート含め、フックに富んだ曲で、意外なほどライブで映えている。

曲を知らない人であれば「ギター・ソロ・タイムかな?」と思ってしまいそうなイントロから始まったのは、最新作"DECEIVERS"の冒頭を飾る、同作の作風を象徴するクラシック・メタル色の強い"Handshake With Hell"。

このJUDAS PRIEST的な(というか、ありていに言えば"Electric Eye"的な)ギター・リフを主軸とした楽曲の目玉は何と言ってもアリッサがサビをノーマル・ヴォイスで歌っていることだろう。アリッサの女性的なしなやかさと男性的な芯の強さを兼ね備えた歌声の魅力は、ギター・ソロ前のメロウなパートを含め、私のようなメロディック・メタル派のリスナーにとってはやはりグッと来る。

「地獄と握手」というタイトルもキャッチーだし、これは新たな代表曲としてセットリストの定番になっていくのではないでしょうか。

続く"Sunset Over the Empire"では途中でブレイクが入り、アリッサが「みんなの歌声が聞きたいわ」と曲中でリフレインされるメロディックなフレーズをオーディエンスに歌わせる。

この曲に限らず、ロイヤリティの高いオーディエンスは彼らの楽曲のメロディックなギター・フレーズを常に歌っていたものの、基本的に人間が歌うことを想定していないメロディやフレーズも多いので、「それ歌うのは無理があるやろ」というシーンも多いのですが、この曲についてはわざわざ歌わせるだけあって、ゆったりとしたメロディなので歌い甲斐(歌わせ甲斐?)がある。

続いてプレイされた"Blood on Your Hands"における"Remember"の合唱(というか雄叫び)といい、彼らの楽曲にはこういうメタルのライブ独特の双方向性を意識していると思われるフックがあるのがやはり巧妙。

「みんな信じられないくらい素晴らしいわ。またすぐに戻ってきてみんなに会いたい」という、ライブの終わりが近いことを匂わせるMCの後、本編ラスト曲として"As the Pages Burn"がプレイされる。この曲のエンディングのギター・パートにはクラシック・メタルとしての醍醐味のようなものが感じられる。

いったんメンバーがステージ袖に引っ込み、3分ほどアンコール待ちの時間を挟んで、現在の女性ヴォーカルをフィーチュアしたARCH ENEMYの原点となった名盤"WAGES OF SIN"から"Enemy Within"、そして"Burning Angel"というアルバムの1曲目、2曲目が流れ通りに演奏される。このオープニングからのコンビネーションはメロディック・デス・メタルのアルバム史上でも最も強力なインパクトを持つもののひとつだけに、このセットリストは神。

続く"Dead Eyes See No Future"はサビで曲名の「デス声合唱」が起きるという意味で、やはりデス・メタル離れしたフックを持つ名曲と言っていいだろう。まさにクラシック・タイムである。よく考えたら彼らももうじき30年選手、音楽性が音楽性だけにそういう印象は薄いものの、キャリア的にはもはや立派な「クラシック・ロック」バンドである。

さらに「他の日にも来ていた人いる? 明日会う人もいるかもね!」「私が加入した"WAR ETERNAL"が出てからもうすぐ10年になるのよ、信じられる?」といった、アンコールならではのリラックスした双方向型のMCを入れつつ、"WAGES OF SIN"から"Dead Bury Their Dead"がプレイされた後、ジェフ・ルーミス(G)のギター・ソロ・タイムを経て、実質マイケル・アモットのギター・ソロ・タイムである"Snow Bound"へ。

この泣きまくりのギター・インスト曲が名曲"Nemesis"へのイントロであることはファンにとっては周知の通りで、彼らのレパートリーの中はおろか、おそらくメロディック・デス・メタルというジャンルの中でも最もアンセム色の強い楽曲である"Nemesis"の"All for One, One for All"な連帯感で会場がひとつになった後、彼らのライブのエンディングSEの定番である"Fields of Desolation"が流れてきて今夜のライブは終了。

非常に充実した内容のライブで、アリッサ・ホワイト=グラズとジェル・ルーミスを擁する現在の編成は、もしかすると過去最強なのではないかと思わせられるものがありました。

冒頭に記した通り、今夜のライブはほぼメンバーの頭部と、時々高い所に立ったアリッサの上半身くらいしかメンバーの姿は見えず、そういう意味で彼らのライブ・パフォーマンスを「観た」と言うことはいささか憚られるのが事実です。

一方で、この頭を振りたくなる感覚というのは自宅で配信ライブを観ている時には生じないもので、そういう意味ではやはりライブというのは「現地でないと味わえない感覚を味わわせてくれるもの」であることを再確認することができ、ライブを「観た」とは言えなくとも、「体感した」ことは間違いないと思っています。

このブログのライブレポート履歴を振り返ると、HR/HMアーティストの単独公演に足を運ぶのは2019年10月に観に行ったNIGHT RANGER以来、約3年半ぶり。

それからHR/HM系ではないライブはいくつか観ていますが、それもコロナ前であることに変わりはなく、随分と久方ぶりになります。大学生になって以降は年に4~10回くらいはライブに足を運んでいたことを考えると、この3年間は本当にメタル・ファンのライフスタイルを変えてしまったと思います。

そんな人がどれだけいるのかわかりませんが、ここ3年の間にメタルを好きになった人の中には、ライブというものを一切体験したことがない人がかなりいるのではないかと思われるわけですが(もっとも、地方在住の方にとってそれはコロナ前からそうだったりするのかもしれませんが)、それは本当にもったいないことだと思いますし、アーティストの側から見てももファンのロイヤリティを高めることに対するチャンスロスだったに違いありません。

ようやくマスクを外すこともある程度公認され、都心では海外からの旅行客もよく見かけるようになってきましたが、今後このような事態が二度と発生しないことを願わずにはいられません。

まあ、今夜に関して言えば、やや体臭キツめの方が私の近くにいらっしゃったので、マスクがあってよかった、と思ってしまったりもしたわけなのですが(笑)。

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DOWNLOAD JAPAN 2022 at 幕張メッセ 8/14感想

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コロナ禍によって長いこと開催されていなかった日本のメタル・フェスティバル復活第1弾となるDOWNLOAD JAPAN 2022。

本来であればもはや開催されるというだけで即、行くことを決めて然るべき案件ですが(?)、行くかどうかは相当迷いました。チケットを買ったのは前々日の金曜日です。

行くことを躊躇った理由は大きく3つでした。

【1】規模・ラインナップに対する不満
1ステージ8バンドって、ショボくない…? LOUD PARK 06なんて2日間3ステージで36バンドだよ…? 本家イギリスのダウンロードだと50バンド以上出ているのに…。しかも個人的に「すごく観たいバンド」はいないんですよね…。

【2】日程的な理由
お盆時期とはいえ、翌日平日の日曜日。フェスの翌日なんて基本的に廃人状態なので、翌日休めなかったらとても当日全力で楽しめない、というもの。

【3】コロナ状況的な理由
ここに来てオミクロン株亜種BA.5への置き換わりによって感染が拡大しているのはご承知の通りで、私の周りでも次々と感染者が出ています。ちょっと仕事状況的に感染している場合ではないので、感染のリスクはとりたくない、という事情もありました。

これは個人的に観たいバンドがいるかどうかという話を除けば、きっと私だけの問題ではなく、特に地方在住の方が遠征参加を諦める理由としては充分過ぎるものではないかと思われ、実際チケットが売れていないという話は漏れ聞こえていました。

しかしまあ直前になり、幸い翌日休みが取得できるメドがついたこと(オンライン会議は1件外せませんでしたが…)、幸い自身は感染することなく、良好な体調で迎えられそうだということで、参加を決めました。

それに、実質LOUD PARKの後継イベントである(?)このDOWNLOAD JAPANがあまりの不入りで今後行なえない、などということになったら、「自分が行かなかったせいかもしれない…」と自分を責めることになりそうですし(笑)。

前日に行なわれた『ROCK IN JAPAN』最終日が台風で中止になったのを考えれば、台風一過の日に実施することができたというのもラッキーな話じゃありませんか。


◆出発~到着まで

なかなか思うように事が運ばないのがフェスというもの(?)。免疫力強化のおまじないに葛根湯を飲んで出発したものの、なぜか私は(オープニング・アクトを除く)1番手、THE HALO EFFECTの出番を11時だと勘違いして、余裕をかまして10:30くらいに幕張に着く電車に乗ってしまい、電車の中でTwitterを見て青ざめました。

まあ、二度寝で午後起きして観たいバンドをほとんど見逃した前回よりマシか、と気を取り直す。この辺の「自分に対する説得が上手くなる」ことが「大人になる」ということなのかもしれない(?)。

京葉線の電車の中は夢の国に向かう人ばかりで、およそ同じ目的地を目指していると思われる人は2人くらいしか見当たらない。

そして海浜幕張駅に降りてみると、こんなに人のいない海浜幕張駅初めて見た…という、とてもイベント開催日とは思えない光景。

幕張メッセ自体も、ダウンロードフェスの看板もバナーも何もなく、建物外に人気(ひとけ)もないので「もしかして中止になっちゃったのかな…?」と不安になるレベル。

中に入ってみるとさすがにチラホラとメタルTシャツの人がウロチョロしていましたが、当日券売場もガラガラ、待ち時間ほぼゼロで入れる状態と、ある意味快適ながら非常に寂しい状態。

イベントのマスコットキャラクターであるダウンロードドッグの頭部をかたどったゲートを抜け、場内に入ると、やはり閑散としている。

ただ、入口ゲートから見て左奥にある物販コーナーだけは人がひしめいていて、「今THE HALO EFFECTがプレイしているはずなのに物販に並んでいるなんて…」という思いを抱きつつ、ステージのあるスペースへの駆け込む。


◆THE HALO EFFECT

一昨日にデビュー・アルバムをリリースしたばかりの、イエスパー・ストロムブラード(G)、ニクラス・エンゲリン(G)とピーター・イワース(B)とダニエル・スヴェンソン(Dr)という元IN FLAMESのメンバーと、ミカエル・スタンネ(Vo: DARK TRANQUILLITY)によるニュー・バンド。

依存症の問題を抱えているイェスパー・ストロムブラードは今回の来日には帯同せず、THE HAUNTEDのパトリック・ヤンセンが代役を務めている。

実は本日のラインナップで一番観たかったのがこのバンドだったのですが、私が到着したタイミングは3曲目、"A Truth Worth Lying For"が終わりかけで、"Conditional"がコールされるタイミングでした。

私はライブ中は耳栓派ですが、このバンドに関してはだいぶ控えめな音量で、耳栓を使う必要は感じませんでした。

IN FLAMESを思わせるメロディックなリード・ギターのフレーズがフィーチュアされた楽曲から、どちらかというと DARK TRANQUILLITYを思わせるメランコリーにフォーカスされた楽曲まで、アルバムに収録された全曲がプレイされたわけですが、アルバムで聴くとややインパクトが弱く感じた後者のタイプの楽曲も、ライブで聴くと思いの外沁みるというか、意外に映えていて楽しめました。

ミカエルが途中「こいつら、みんな15歳くらいからの頃からの知り合いなんだ」とメンバーを紹介しましたが、その割にはあまりバンドらしい親密さはなく、お仕事感とは言わないまでも「ただ演奏に集中している」という感じだったのがちょっと寂しい感じでしたが、ミカエルのフロントマンぶりは文句なしにカッコよかったですね。

オーディエンスも非常に暖かく彼らを迎えていましたが、サプライズで"Embody The Invisible"とか"Punish My Heaven"あたりをやってくれたら盛り上がりは倍増したでしょうねえ…。

終演後、とりあえず場内を一通りぐるりと周り、フードトラックやトイレの位置などを確認。


◆CODE ORANGE

ここ数年のメタル/ヘヴィ・ロックシーンで最も評価の高いバンドのひとつである彼ら。その海外での高い評判を聞き、「そんなにいいのか?」とYouTubeで主だったMVを視聴してみたものの、正直今一つピンと来ていませんでした。

その魅力を確認しようとステージ下手(しもて)の前方のブロックへ行って観てみる。

するとやはりというか、近年のメタル・バンドが失ってしまった「危険な雰囲気」があり、なかなかカッコいい。というか、そもそもメタルというよりはハードコアとインダストリアルを融合したようなサウンドなのですが、緩急はあるものの、そのメリハリが特にドラマ性に繋がらず、起承転結みたいなわかりやすい展開をしない楽曲も、意外なほどライブ映えしていました。

2曲目には早くもモッシュピットが発生するなど盛り上がっており、バンドも「サークルピット!」とオーディエンスを煽る。

いいのか?と思いきや、やはりいいわけではなさそうで、セキュリティスタッフが登場してサークルを止めようとする(完全に止められはしないようでしたが…)。

だんだん人の数が増えてきて、空間が密になってきたので、後方に移動して鑑賞。ヴォーカルの人は「Let Me Hear You Scream!」と盛んにオーディエンスを煽っていて、「コロナ対策でみんなおとなしいのが気に食わないのかな…」などとなぜか観客であるこっちが申し訳ない気持ちになってしまいました。

最後の方は(アルコールを扱っているのがここだけであるがゆえに)混雑しているオフィシャルバーに並び、ドリンクチケットをビールに引き換えながら聴いてました。


◆AT THE GATES

CODE ORANGE終演後、オフィシャルバーで引き換えたビールを持って外のフードコーナーへ行き、空いていたお好み焼き屋でマヨたま焼きそばを購入してサクッと食事。

前回のレポを振り返ると、前回もこのマヨたま焼きそばを購入しており、マヨネーズも卵も焼きそばも好きな私にとって引かれやすいメニューなんだな、と後で思いました(笑)。

そして食べ終わると会場に戻り、今度はステージ上手(かみて)前方で待機。

ステージの背景に、全曲演奏が予告されていた名盤"SLAUGHTER OF THE SOUL"のアートワークが映し出されると(控えめに)歓声が上がる。

そして、アルバム冒頭のSEから、名曲"Blinded by Fear"が始まると一気にボルテージが上がる。

ただ、この曲に限らず本作収録の速い曲は、速過ぎてスネアドラムの連打に合わせてヘッドバンギングすることはとても不可能で(小刻みに頷いているというか、痙攣しているみたいなことになる/笑)、どうノっていいものかよくわかりませんでしたが、この硬質でヘヴィなサウンドはただ身を浸しているだけでも気持ちいい。

チェックのシャツにキャップを被り、お腹周りに肉(脂肪?)を蓄えたトーマス・リンドバーグの風貌はあまりカッコいいとは思えませんでしたが(苦笑)、MCを最低限に控えたことで、完全再現される"SLAUGHTER OF THE SOUL"の勢いが削がれなかったのは良かったと思います。

全曲演奏を終えた後のラストの曲は"The Night Eternal"で、なんだか辛気臭い終わり方だなと思ってしまいましたが…。


◆SOULFLY

正直、あまり期待していませんでした。いや、ライブ・パフォーマンスはきっと悪くないんだろうな、と予想しつつ、そのトライバルなヘヴィ・サウンドというのが私にとってはあまり魅力的に響かないというか、どの曲も似たような感じに聴こえてしまうというのが本音。

そんなわけで、ちょっと疲れてきたので後方で寝転がりながら観始めました。

失礼ながら、なんだったら寝落ちしてもいいくらいの気分で観始めた(聴き始めた)ライブでしたが、とにかく出音がカッコいい。
AT THE GATEの研ぎ澄まされた攻撃性とはまた異なる、オーガニックで骨太な感触のあるヘヴィさは聴いていて単純に気持ちよかったです。

そしてマックス・カヴァレラのフロントマンぶりがまた見事で、「アリガトー」など簡単な日本語を交えて親しみを作りつつ、オーディエンスを鼓舞し、巻き込んで盛り上げていく手腕はある種カリスマ的なものを感じました。ラスト曲の"Jumpdafuckup"では私もマックスに言われるがままにしゃがみ、ジャンプしてしまいましたね。

昨年脱退したマーク・リゾ(G)に代わってツアー・ギタリストとして参加していたのが元FEAR FACTORYのディーノ・カザレスで、そのFEAR FACTORYの曲もプレイしていたあたりが、マックス・カヴァレラという人のカリスマにつながる度量なんじゃないかな、と思ったりしました。

しかしラスト曲前の"Eye For An Eye"ではオーディエンスに掛け合い歌唱を要求していましたが、プロモーター側から「声出し禁止」と言われていることって伝わってないんですかね? 伝わっていた所でおとなしく言うことを聞くようなロック・ミュージシャンなんていない、というだけのことかもしれませんが…。

肉食な音を聴いてちょっと疲れが出てきたので、いったん会場外に出て、メッセ内のコンビニ(デイリーヤマザキ)で栄養ドリンクを買ってチャージしました。


◆STEEL PANTHER

バンドの演奏終了後、なぜか必ず流れるBLACK SABBATHの"Paranoid"のBGMにも、演奏開始前に毎回出て来る「モッシュしちゃダメ」おじさんのアナウンスにもだんだん飽きてきた頃合で、空気を換えるヘア・メタル。

というか、最新作"HEAVY METAL RULES"(2019)はもう3年も前のリリースで、日本盤もマトモにはリリースされていなかった(輸入盤帯付き仕様とかだったような)だけに、なんでこのタイミングで出演するんだろう?と思っていましたが、登場してみるとそんな事情はどうでもいいってくらい楽しい。ここまで割とヘヴィでシリアスなバンドが立て続いた中、ちょっと場違いなノリの彼らはまさに一服の清涼剤(?)。

キャッチーなグラム・メタル・サウンドは、「声援禁止」とか「モッシュ・クラウドサーフ禁止」と書かれたボードを持って場内をグルグル回っているイベント・スタッフにとって「ようやくただの轟音じゃない、歌っぽいバンドが出てきた…」と思えたのではないでしょうか(笑)。

「俺たち、プレイステーションや芸者、寿司も大好きだから、日本が大好きだ」「(日本語で)オッパイミセテ」「フシダラナオンナ」といったMCでも場内の笑いをとっていましたが、正直な所、オーディエンスの大半は(私も含め)その英語漫談の面白さの半分も理解できていなかったのではないかと思います。

途中、ドラマーがキーボードをプレイしてバラードを歌った時も、多くのオーディエンスは「ああ、バラードだな」なんなら「いい歌だな」くらいに思っていた雰囲気でしたが、歌詞が実はスイートなメロディとはおよそ似つかわしくない、お下劣極まりない内容だということが理解できていたらきっと爆笑に包まれていたことでしょう。

彼らのライブのハイライトは2つあり、ひとつは海外の公演でも披露していた、オジー・オズボーンの物真似による"Crazy Train"のカバー(アクションがよく似ている)、そしてもう一つは、"Asian Hooker"およびラストの2曲で登場した日本人ポールダンサーのお姉さん4名のパフォーマンスでした。

私は過去に2回くらい、こういうポールダンスが披露される場に行ってそのパフォーマンスを見る機会があったので知ってはいましたが、とにかくエロいというよりも体幹と筋力凄そう…という感じで、いずれにせよオーディエンスに強いインパクトを与えたことは間違いありません。

せっかくサッチェル(G)がテクニカルなギター・ソロを披露していても、目はついついお姉さんを追ってしまっていましたからね…(苦笑)。

しかしいずれにせよ彼ら(彼女ら?)の存在が、本日のフェス全体の印象を大きく変えたことは間違いありません。終演後は会場入り口ゲートで、そのポールダンサーのお姉さんたちとの撮影会という新たなコンテンツも提供されていましたし(笑)。


◆MASTODON

グラミー賞のメタル・パフォーマンス部門受賞経験もある、現代メタル・シーンの代表格とも言うべき彼ら。

LOUD PARK 06で、裏被りのない時間帯だったのでなんとなく観ていた記憶はありますが、ほとんど印象に残っていません。

その時に予習した"LEVIATHAN"(2004)と"BLOOD MOUNTAIN"(2006)は聴きましたし、当時話題になっていた感があった"CRACK THE SKY"(2009)もチェックした記憶があります。が、いずれも印象に残っていません。

評論家筋には非常に高く評価されているバンドだし、「なんだか凄そうなムード」は感じます。そして今、目の前で演奏しているバンドからもオーラのようなものを感じます。そして部分的にはカッコいい、と思えるパートもあったりするのですが、どうにも「曲」としての輪郭がつかめない。

やはり私には高尚というか、ちと敷居の高い音楽で、凄いからといって必ずしも好きになれるわけではない、ということですね。

終わり10分ほど前にまたオフィシャルバーでビールを買い求め、ラウパ時代からの定番といえる『イスタンブールGINZA』の屋台でケバブデラックスを買って食べる。50円値上がりしてました。


◆BULLET FOR MY VALENTINE

彼らのライブを観るのはSUMMER SONIC 2013以来。その時は広大なマリンスタジアムのステージで、同日同ステージに出ていたONE OK ROCKやマキシマムザホルモンの1/4~1/5くらいしか人を集められてなくて気の毒だった記憶があります。

しかし本日に関して言えば大盛況といった感じに見えるのは、単純に会場が小さいからかもしれませんが、単純にBFMVが大人気だったというか、「メタルの未来」的にもてはやされていた2000年代後半あたりにメタルにハマった人が多かったということなのかもしれません。

1曲目が、私のフェイバリット・ナンバーである"Your Betrayal"だったので私もPAブース横くらいまで前進し、(声を出せない代わりに)腕を振り上げて盛り上がりました。

ライブが進むにつれて思ったのが、「こんなにドラムがパワフルで上手かったっけ?」ということ。スタジオ盤はカッコいいけど、ライブだとちょっと迫力不足、という印象だったのが、随分逞しくなっている。

いくつかの問題作から、このバンドがどこまで本気でメタルを追求しているのかちょっと疑わしいと思っているのですが、このドラマーのおかげでメタル・バンドとしてのポテンシャルは間違いなく上がっていて、ある種私好みのパワー・メタリックな快感すら感じました。

ラスト、"Teas Don't Fall"から、そのドラマーの真骨頂となった怒涛の"Scream Aim Fire"がクライマックスだったわけですが、なんか彼らも「初期の名曲」でショウに人を呼ぶ中堅バンドに収まってしまいつつあるのがちょっと寂しい感じがしましたね。もっとビッグになれるポテンシャルはあったと思うのですが。

そして"Teas Don't Fall"のプレイ中、背景映像になぜかSTEEL PANTHERが使っていた映画『マトリックス』風の背景映像(緑色の文字が上から下に流れていくアレです。流れていく文字は「6」と「9」だけでしたが/笑)がちょいちょい混入して「何事?」と思わされました。


◆DREAM THEATER

そしていよいよ本日のトリ、DREAM THEATER。

LOUD PARKで何度も感じていた、「体力削られまくった後のSLAYERって、まあまあキツいよな…」という感覚、正直キツさのベクトルは違えど、DREAM THEATERにも同じことが言える。

しかも直近のセットリストは予習していたのですが、私のフェイバリットである"IMAGES AND WORDS"(1992)や"SCENES FROM A MEMORY"(1999)からの曲はなく、"AWAKE"からの"6:00"を除くと2000年代以降の(私の感覚で)新しい曲ばかり、かつ10分超え、あるいはほぼ10分クラスの大作揃い。これはかなりの耐久力を要する内容。

そもそもメタル・フェスのトリにDREAM THEATERってどうなの? という意見については、武道館でやったこともあるくらいの集客力があって、しかも他のメタル・バンドには決して提供できないような凄いパフォーマンスを見せてくれるわけですから、何の問題もないと思っています。むしろLOUD PARKのトリでDREAM THEATERより動員力があるバンドはむしろ少なかったんじゃないですかね。

そんなわけで始まったDREAM THEATERのライブは、最新作"A VIEW FROM THE TOP OF THE WORLD"からの"The Alien"で幕を開け、のっけから超絶技巧が炸裂。

DREAM THEATERのライブを観たことがない人は、「DREAM THEATERって、ライブで観るような音楽じゃないんじゃない? 家で『鑑賞』すべき音楽だと思うんだけど…」みたいなことを言いがちなのですが(というか私もそう思ってました)、意外なほど「パフォーマンス」としての見応えがあるんですよ。

ジェイムズ・ラブリエ(Vo)も、あんな長い曲の歌詞と曲構成を憶えているだけで凄いのに、結構ステージを動き回ってオーディエンスを盛り上げてくれますし、キーボードなんていうおよそ「魅せる」場を作りようもないように思えるパートを担当する還暦オーバーのジョーダン・ルーデスでさえ時にキーボードごと回転し、時にショルダーキーボードに持ち替えて前面に出て来る。

凡庸な演奏者であればテンポにあわせて音符を追いかけるのが精いっぱいになってしまいそうな高難度曲も、彼らのような卓越した演奏者であればライブでエモーショナルに聴かせることができる。

そもそもこの演奏を生で見られる、それだけで彼らのライブというのは観る価値があるんです。本来、音楽のライブというのは素晴らしい演奏を体験する場なんですからね。

彼らの音楽のイマジネーションを広げるための演出として用意されていると思しき背景のイメージ映像が、この2022年にPS2クオリティのCGなのがちょっと気になる所ですが(苦笑)、彼らの音楽はテクニカルかつプログレッシブでありつつも、ちゃんと起承転結というかストーリー性が感じられ、目を閉じれば映像などなくとも自然とイマジネーションは広がってくる。

とまあ、相変わらず非の打ち所がないパフォーマンスを繰り広げていたわけなのですが、本日に関しては音がデカすぎた(苦笑)。個人的にこれまで音がデカいと感じたMACHINE HEAD、LOUDNESS、MANOWARなどを超えるとまでは言いませんが、それらに匹敵するレベルの大音量で、しかも本日出演した全てのバンドが出した音符の数を凌駕するのではないかという勢いの音数が連打されるのだから正直耳に優しくない。

最近公私共にストレスが多いせいか、その超高密度な音の塊に消化しきれないような息苦しさを覚え、いったん場外に離脱して距離を取る。

音量が音量なので、場外に出てもその演奏は丸聞こえで、音楽を聴く分には何の問題もない。

最新作のタイトル曲からの、"BLACK CLOUDS & SILVER LININGS"(2009)収録の"The Count of Tuscany"という20分級の大作2連発という狂気の(?)クライマックスが終わると、アンコールを求める拍手が前方を中心に巻き起こっている。なんてみんなタフなんだ。

そしてそのアンコールの求めに応じて演奏されたのは"Pull Me Under"。20分級の大作2曲の後ということで、さしものメンバーも疲れていたのか、少々ラフな感触ではありましたが、その辺もアンコールっぽいということで、みんなが知っている(?)クラシックで盛り上がって締めることができました。

他の国では"The Count of Tuscany"が「アンコール曲」だったわけですが、正直(素晴らしいイマジネーションを備えた曲とはいえ)その曲では後味が「疲労感」になっていた気がします(苦笑)。


◆エピローグ

「行く前は微妙だと思っていたラインナップでも、行けば結局楽しい」という、LOUD PARK時代から感じていた「法則」は今回もしっかり生きていました。

というか、個人的にはライブ自体が2020年の3月以来、ほぼ2年半ぶりだっただけに、この音圧を再び体験できただけでなかなかグッと来るものがありました。

正直、もはやサマソニの1ステージにしてくれたほうがイベントとしての体験価値が上がるんじゃないかという気もしていたりするのですが(苦笑)、こうして「メタル」に特化したフェスが行なわれるのは本当に貴重なことだと思います。

終演後、次回の『DOWNLOAD JAPAN』は来春の開催であることが発表されましたが、元々2019年の第1回も、コロナ禍で中止になった2020年も3月実施だったわけで、次回からは「本来の形」に戻る、ということなのでしょう。

もしかすると、ここまでメタル度の高い『DOWNLOAD JAPAN』はこれが最初で最後でした、ということになるのかもしれず、そういう意味では貴重な体験をしたのかもしれません。

ベストアクト? どれも甲乙つけ難い内容でしたが、一番「話したくなるネタ」が多かったという意味でSTEEL PANTHERを推しておきましょう(笑)。





◆当日のフォトギャラリー
https://www.downloadfestivaljapan.com/photogallery

GAMMA RAY 30周年公演 "30 YEARS OF AMAZING AWESOMENESS"感想

GAMMA RAYのデビュー30周年公演"30 YEARS OF AMAZING AWESOMENESS"が有料ストリーミング配信で行なわれるということで、ユーロで料金を払って(もちろんクレジットカードです)観てみることにしました。

個人的には無観客ライブのオンライン配信という手法については懐疑的で、これだけYouTubeに様々なアーティストの過去のライブ映像が無数にアップされている状況下、お金を払ってまで観る価値があるとは思っていなかったというのが正直な所です。

まして今回、ライブがスタートするのがドイツ時間で8月27日(木)の20時、日本だと27時になるということで、翌日に普通に仕事がある身としてはリアルタイム視聴は難しく、アーカイブ映像を観るしかないとなると、いよいよ過去のライブ映像を観るのと何が違うのか、という感覚になってしまうわけで。

とはいえ、今回は30周年記念公演というメモリアルなライブのゲストとして初代ヴォーカリストであるラルフ・シーパース(現PRIMAL FEAR)が参加するということで、ラルフ在籍時のライブを観たことがない身としては興味をそそられるし、そもそもフランク・ベックなるヴォーカリスト加入後のライブも観たことがないので、「過去のライブ映像」だとしても観ておきたいかなと思って課金を決断しました。

パフォーマンスが行なわれる会場は、ドイツ中西部の都市デュッセルドルフにあるISSドームという会場で、主にアイスホッケーの試合に使われるアリーナ。収容人数12,500人というから、恐らくGAMMA RAYが単独でプレイする会場としては通常よりかなり大きな会場である。

どうやらこの会場はGAMMA RAYのためだけに借りられたわけではなく、このライブを主催しているNine Lives Entertainment、Headline Concerts、Twisted Talent Entertainmentによる合同オンライン興行プロジェクト、WORLD WIDE LIVEが、メタル以外のポップ・アーティストなども含む様々なアーティストの有料ライブ配信を行なうために一定期間会場を押さえているようで、おそらくまとめて会場レンタルする分、費用を抑えているのでしょう。

金曜日の仕事も遅かったので、実際に視聴できたのは土曜日の夜。缶ビールを用意し、ログインして再生開始ボタンをクリックすると、表示された映像尺は2時間25分。

「おお、そんなに長いライブをやったのか。さすが30周年公演やな」と思って画面を見つめていると、「STREAM WILL START SOON(もうすぐ始まるよ)」という表示のまま時間が過ぎていく。

そこでタイムスライドバーを少しずつ進めてみると、22分過ぎまではこの表示のまま。これってリアルタイムだと27時23分から始まったということなのか、このアーカイブ映像が27時の23分前から視聴可能状態になっていたということなのか。時間が時間だけに前者ならきっとキレてましたね(多分そんなことはなく、きっと後者なのだと思いますが…)。

WORLD WIDE LIVEの他公演告知映像の後、女性MCが登場。まずは公演前のインタビュー映像が流れたのですが、ラルフ・シーパースやカイ・ハンセンとフランク・ベックのような出演者のほか、何故かヨルグ・マイケル(元STRATOVARIUS他)が登場したのはちょっとしたサプライズでした。

ようやく始まったライブはオープニングSEの"Induction"から"Dethrone Tyranny"という、アルバム"NO WORLD ORDER"(2001)のオープニングの流れでスタート。11台のカメラでシューティングされているということで、基本的にはステージの全景というよりもここのメンバーが抜かれるカットが多いため、パッと見の印象は通常のライブ映像とあまり変わらない。

ただ、やはり歓声がないし、ステージ全景が見えるような引きのシーンになると、無観客であることの違和感というか、見慣れない感じがあり、今年初めてテレビで無観客のプロ野球や大相撲の映像を観た時に感じたようなもの寂しさを感じずにはいられなかった。

カイ・ハンセンも、なんだか複雑な表情をしており、見慣れない光景にちょっと戸惑っている感じが伝わってくる。

2015年にフランク・ベックという専任ヴォーカリストを加入させたにもかかわらず、カイ・ハンセンは未だにステージの中央に立っており、楽曲の歌い出しもカイが一人で歌う。

フランクは、サビやヴァースの一部など、「アルバムでは高音で歌っているが、ライブではカイがフェイクしてしまう箇所」を補う役目が中心のようだ。これはなかなか専任シンガーにとっては手持無沙汰になりがちなポジションである。「セカンド・ヴォーカリスト」という触れ込みだったが、「単なるコーラス・メンバーよりは出番があるよ」くらいの立ち位置である。

まあ、今どきギターが3人いたり、ラッパーやDJがいたり、ヴァイオリン奏者やなんだかよくわからない民俗楽器の演奏者がいたりと、メタル・バンドの編成のあり方も多様化しているので、フランク本人が「シンガーだがフロントマンではない」という立ち位置に納得しているのであれば、こういう役割分担もアリなのかもしれません。

もともと「カイ一人で長いツアーを歌いきるのが大変だから」という理由で加入したにもかかわらず、HELLOWEENの"PUMPKIN UNITED"が始まってしまったために、GAMMA RAYは長いツアーをやらなくなってしまったのは皮肉ですが(苦笑)。

"Dethrone Tyranny"の後、"New World Order"という"NO WORLD ORDER"からの楽曲がもう一発続いた後、最新作(といっても6年前ですが)の"EMPIRE OF THE UNDEAD"から"Avalon"、そして"Master Of Confusion"がプレイされる。

1曲終わるごとに、視聴者がリアルタイムで送っていると思われる写真と、メッセージがそれぞれ4つ5つ表示された画面が挿入されるのですが、どうやらステージからはその画面が大型モニターで映し出された状態で見えているらしく、それがバンドが確認できる「オーディエンスのリアクション」のようだ。

「オーディエンスとのコミュニケーション」がライブの醍醐味なので、こういう仕掛け/仕組みは必要なのだと思いますが、一方でライブ・シーンの映像がブツ切りになってしまうので、人によっては煩わしいと感じそう。マルチ・モニターであれば1画面でライブを、もう1画面で他のオーディエンスの反応を見る、みたいなこともできそうですが、それはそれでパフォーマンスに集中できない気もしますし、なかなか難しいですね。

11台分のカメラ・クルーやPAスタッフなど、もちろん運営スタッフは会場におり、時々小さくはあるものの歓声なども聞こえてきたので、場内は完全に無人というわけではなく、関係者なども多少いるようだ。カイをはじめとするバンドのメンバーも、そのモニターや場内にわずかながらいる人たちに向けてプレイをする、というスタンスで、なんとなくライブ・パフォーマンスのペースを徐々につかんでいったように見えました(何しろGAMMA RAYにとっては名実ともに初めての無観客ライブだったようなので)。

単なる習慣なのか、モニターの向こうで観ているオーディエンスに対する意識的なアピールなのか、カイやフランクがコーラス・パートなどでオーディエンスに合唱を促すような身振り手振りをするのはいささか滑稽ではありましたが…。

"TO THE METAL"(2010)収録の"Empathy"(カイはこの曲がどのアルバムに収録されていた曲か正確に憶えていないようでした/苦笑)がプレイされた後は、フランク・ベックが「俺が好きなアルバムの曲だ」と、名盤"LAND OF THE FREE"(1995)からの"Rebellion In Dreamland"と、"Land Of The Free"がプレイされ、個人的にはこの辺りで缶ビールの酔いも回り、テンションが上がってくる。

そしていよいよ本日のスペシャル・ゲスト、ラルフ・シーパースが登場、デビュー作"HEADING FOR TOMORROW"(1990)の実質的オープニング・トラック"Lust For Life"がプレイされる。

うーん、フランクには失礼だが、やはり存在感が違う(単純にガタイがデカいからというのも大きいですが)。私が最初に聴いた彼らのアルバムが"HEADING FOR TOMORROW"ということもあり、この曲には思い入れがある。

セカンド・アルバムからの"One With The World"を挟み、再び"HEADING FOR TOMORROW"からの"The Silence"。その後どんどん希薄化していったGAMMA RAYのQUEEN的側面が最も強く表れた曲で、これはラルフの歌で歌われてこその説得力。こういうポジティブな感動を生むメタル・バラード(単純にバラードという感じの曲ではないですが)って、本当に希少だと思います。

なぜかいったんラルフが引っ込んで、"POWERPLANT"(1999)収録の"Armageddon"がプレイされた後、再びラルフが戻ってきて、あの印象的なコーラスと共に"HEADING FOR TOMORROW"がプレイされる。

もしかするとバンド側の意識としては"Armageddon"が「本編ラスト曲」で、この"Heading For Tomorrow"からは「アンコール扱い」なのかもしれないな、などと思ったり。

"Heading For Tomorrow"が終わると、彼らのライブのエンディングの定番である"Send Me A Sign"(なぜこの曲が定番エンディング曲になったのか、事情知っている人がいたら教えてください)がプレイされる。あれ、もう終わり? という気分になりましたが、動画のタイムゲージを観ても確かに終わりのタイミング。

これまで観た彼らのライブでハイライトになっていた"Future World"や"I Want Out"といったHELLOWEEN曲がないのはPUMPKIN UNITEDが実現した今となっては不思議ではないし、期待もしていなかったのですが、昨年何度か行なわれていたライブで必ずプレイされていた"Heaven Can Wait"と"Man On A Mission"、"Heavy Metal Universe"がプレイされなかったのはちょっと残念。

ファンにあるまじきことを言ってしまうと、彼らはライブ・パフォーマンス自体が無茶苦茶カッコいい、というタイプのバンドではないので、ライブの満足度というのはほぼ選曲の良さに比例してしまうため、そういう意味で本日のライブは最高とは言い難いものがありました。

しかしまあ、彼らにとってもこういう無観客ストリーミング・ライブというものが初めてだったのと同様、私にとっても初めての体験だったので、経験としては新鮮で、さらにはフランク・ベックがいるGAMMA RAYを観られたし、ラルフ・シーパースが歌うGAMMA RAYを観られたという意味でも、19.99ユーロ(2,500円くらいですかね)以上の価値は確実にありました。

というか、本来30周年イヤーとなればもっと大々的にツアーをやって儲けられたはずなのに、この配信ライブくらいしかイベントができないとしたら、非常にもったいないというか、気の毒ですよね。彼らに限らず、アニバーサリーイヤーがこのコロナ禍に重なってしまったアーティストは本当に不本意だろうと思います。

カイ・ハンセンがショウの途中のMCで「5,000人のファンが観てくれている」ということを言っていましたが、それはリアルタイムで観ている人が5,000人ということなのか、私のようにアーカイブで観る非リアルタイム組も含めての5,000人なのか、いずれにせよ実際にワールド・ツアーをやれていたらもっと多くの人に観てもらえたはずだと思うのですが。

そんな彼らに少しでもお布施をして、音楽活動継続の協力ができたという意味でも、このライブを視聴した甲斐はあったかなと思います。

しかしライブ中に寄せられていたコメント、大半がヨーロッパと中南米からのもので(特にブラジルやアルゼンチン、チリ、ニカラグア、ホンジュラス、ベネズエラといった中南米が多かったのは、ファン層が若いのだろうと思います)、30年前には彼らのメイン・マーケットだったはずの日本からのものが1件もなかったのは、時差の問題で仕方がないとはいえ、ちょっと寂しい気持ちになりましたね。

1件だけ、香港からのメッセージがあり、それにはカイ・ハンセンも「おお、香港からもコメントが来てる!」と反応していました。それが「ド深夜であるアジアから来てて凄い、ということなのか、今、中国本土との関係で話題になっているニュースなエリアから来てることに対して感銘を受けたのかは定かではありませんが…。

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KORPIKLAANI, SKYCLAD, SKILTRON 来日公演 at 渋谷ストリームホール 2020.3.1

コロナウィルスの影響であらゆるイベントが中止になるわ、学校が休みになるわ、マスクからティッシュまでいろんなものが店頭からなくなるわ、このままだと2020年は「オリンピック・イヤー」ではなく「コロナ・イヤー」として日本人の記憶に残ってしまうのではないかという状況の中、中止になることなく行われたKORPIKLAANI JAPAN TOUR 2020の東京公演に足を運びました。

何しろ日本で一番人気のあるフォーク・メタル・バンドであるKORPIKLAANIに、フォーク・メタルの「元祖」とされるSKYCLADがまとめて観られるのだ。こんなお得なパッケージ、観に行かない理由はないやろ、と。

いや、このサイト/ブログであまり扱っていないことから推察されるように(?)、私はフォーク・メタルの熱心なファンというわけではありません。

個人的にはアルバムの中に1、2曲、フォーキッシュな曲がある分には「いいアクセントだな」と思うのものの、アルバム全編をフォークな旋律でやられるとちょっと飽きる、というのが正直な所ですが、決して嫌いではないし、あえて観るならこの2バンドでしょう、と。

会場は最近メタル系の公演にもよく使われる渋谷ストリーム。

「渋谷駅直結」が売りだが、改札からの地下通路が長い上、縦方向の移動も多いので肌感覚的には駅からちょっと距離のあるO-EASTあたりとあんまり変わらない(苦笑)。

ちょっと最近野暮用が多くて、本日の開演時間である18時には間に合わず、現地に到着したのは19時過ぎ。オープニング・アクトのAllegiance Reignには間に合わず、SKILTRON からの鑑賞となった。

昨今の外出自粛ムードゆえ、ひょっとするとガラガラなんじゃないかと危惧していましたが、それは完全に杞憂で、パッと見ソールド・アウトなんじゃないかというくらいに入っていました(公称650、MAX700と言われるキャパに対し、600人は入っていたそう)。

SKILTRON

アルゼンチンのフォーク・メタル・バンド。

フォーク・メタルというとメロデス寄りかパワー・メタル寄りかどちらかになるのだが、このバンドは完全に後者で、楽曲の骨格は完全にパワー・メタル。

ただ、バグパイプ奏者が正式メンバーとして存在し、どの曲でも大きな存在感を放っている。

狭いステージだとだいぶ邪魔というか、他のメンバーにぶつかってケガさせそうなバグパイプだが(笑)、そういう意味ではビジュアル的にも目立っていて、バンドのアイデンティティとなっている。

2004年に結成され、2006年にデビュー・アルバムを発表するなど、それなりのキャリアがあるだけあってパフォーマンスも安定していたし、楽曲もバグパイプ抜きでもかなり良質なパワー・メタルで、こうして終わってから感想を書く段になってみると本日一番私の琴線に触れる音楽をプレイしていたのはこのバンドかもしれません。遅刻で後半3曲しか観れなかったのが残念です。

なお、前日の大阪公演および本日の公演では、リーダーであるギタリストのエミリオ・ソウトが「プライベートのトラブル」で急遽帰国したため、ギター・テックだったアリエルなる人物が代打を務めていました。

ヴォーカリストが「12時間で曲を覚えてくれた」と紹介していましたが、せっかく短時間で覚えたのに翌日の公演にはエミリオ氏が戻ってきてしまったそうです(笑)。コロナを忌避して逃げたわけじゃなかったんですね(笑)。


SKYCLAD

ぶっちゃけ、個人的にはこのバンドがお目当てでした。まさか1990年に結成されて以来一度も来日していないこのバンドが、結成30周年にして初来日するとは、全く予想していませんでした。

これは収益度外視で(?)興行するEVPだから実現できたと言えるでしょう。

ケルト風のトラディショナルなフォーク要素と、メタル・サウンドを大胆に融合する、現在「フォーク・メタル」と呼ばれるジャンルの始祖というべき存在であり、中心人物であるスティーブ・ラムゼイはNWOBHMの名バンドとして知られるSATANのメンバーだったこともあり、このフォーク・メタルの界隈ではレジェンドと呼べる存在だ。

とはいえ、KORPIKLAANIやELUVEITIEのようなフォーク・メタルの人気バンドが、このバンドなしに存在しなかったかというとそういう感じはなく、むしろちょっと「早すぎた存在」とでもいうべきかもしれない。

このバンドが日本で一番知名度があったのは、ビクターから日本盤が出ていた90年代前半でしょう(それでも知れたものですが…)。

しかし私がこのバンドに出会ったのは、日本盤が出なかった1996年の"IRRATIONAL ANTHEMS"アルバムが欧州のメタル・マニアの間では大評判になっている、という輸入盤店の手書きポップを見て(実際、デジパックに欧州のメタル雑誌で軒並み高得点を獲得している、というステッカーが貼ってあった)興味を持って聴いてみたのがきっかけ。

実際のところ、彼らの牧歌的なフォーク・サウンドとメタル・サウンドの融合は個性的だと思いつつもハマることはなかったのですが、後に「フォーク・メタル」というジャンルが確立した後に振り返ってみると、まさしく彼らのサウンドは先駆者だったと思い(とはいえ、いわゆるメロデスの流れを汲むフォーク・メタル・バンドがSKYCLADに直接影響を受けていたかというとやや疑問ですが)、リスペクトの感情は芽生えていた。

そしてこうしてそのレジェンドを目の当たりにしてみると、まずVoは短髪にポロシャツ(普通の半袖シャツだったかも。私の距離ではよく見えなかった)姿と、「普通のオッサン」だし、フォーク要素の要であるフィドル(ヴァイオリン)奏者は太ったオバさんで、ロック/メタル・ミュージシャンらしさは皆無(彼女の名誉のために補足しておくと、彼女は常時ニコニコと笑顔で、大変感じのいい女性でした)。

いや、弦楽器隊は結構それっぽい人たちなのだが、一番よく動き回るのがそのオバさんなので、どうしても印象が「メタル・バンド」というよりは「地元のトラッド同好会の皆さん」という感じに…。いや、音楽性を考えるとそれはそれでアリのような気もしますが。

ステージの途中、Voが「モッシュしろ」というまさかの(?)煽りをし、それを真に受けた10人ほどがモッシュを始めた。

私は別にモッシュを否定するほど偏狭な人間ではないのですが、それはあくまで自分に被害が及ばなければ、という前提で、今回は不運にも私の至近距離でモッシュピットが発生したため、ピットから飛び出してくる輩をかわしたり、押し戻したりすることに神経を使ってしまい、音楽に対する集中力を削がれたのが残念。

前に出たSKILTRONに比べるとやはり楽曲は私の琴線に触れないのですが、さすが30年もやっているだけあってパフォーマンスにはそれなりの説得力があり、観て損をした気分にはなりませんでした。


KORPIKLAANI

前述した通り、恐らく日本で一番人気のある「フォーク・メタル」バンドは彼らであろう。

あえて2番手を挙げるならTURISASでしょうか。個人的にはELUVEITIEやEQUILIBRIUM辺りの方が音楽的には好みなのですが、やはり日本だとキャラが立ったバンドの方が受けるのでしょう。

もちろん私もリアルタイムで"Wooden Pints"の衝撃的(笑撃的?)なMVを体験した世代なので、彼らの存在は常に意識していたし、3rdくらいまではアルバムもチェックしていました。

しかし彼らの最大の持ち味である「お祭り感」「宴感」みたいなものが私の肌には合わなかったので、サイトやブログではスルーしていたというのが事実です。

とはいえライブでは楽しめそうな音楽だと思っていたのでこうして足を運んだわけです。

彼らのライブを素面で観るのは失礼だろうと思い(?)、彼らのステージの前にドリンクカウンターへ行き、ドリンクチケットをハイネケンに換えてアルコールを摂取。

メンバーが登場した際の歓声は間違いなく今日イチで、彼らの人気の高さを感じさせる。やはり私のようにSKYCLADがファースト・プライオリティだった人は少数派だった模様。

もっとも、メンバーの佇まいというか、衣装などを含めたアピアランスはやはりメイン・アクトに相応しいもので、バンドとしての華も間違いなく今日イチ。

そして彼らのライブにおけるオープニングの定番、"Hunting Song"でショウがスタートすると、先ほどSKYCLADでモッシュしていた人たちを中心にたちまちピットが形成される。

以前、ALESTORMのライブを観て「フォーク・メタルはモッシュ・ミュージックである」ということを理解していたので、あらかじめこの事態を警戒してさっきより後ろの方で観ていたのだが、ピットも後方になり、かつ大型化していたので結局私の間近(苦笑)。

ただ今回はピットから飛び出してくる輩を受け止めたり押し返したりしてサバいてくれる坊主頭の屈強な兄さんがいたので、守備はその方に任せて鑑賞することができました(笑)。

こういう「モッシュ・ガーディアン」みたいな人、今まで見た限り必ず何人か現れるのですが、この人たちは「今日もモッシュから周りの人を守るぞ」というモチベーションでライブに来ているのでしょうか。

話が逸れましたが、序盤は彼らのイメージ通りの「酒盛りソング」を中心にプレイされ、モッシュも大いに盛り上がっていたのですが、中盤になってここ2作からの楽曲が中心になるとやや鎮静化。

それは曲がまだ浸透していないというよりは、単純にそれらがモッシュ向きの曲ではないということが理由と思われる。

哀愁のメロディを中心に「聴かせる」タイプの楽曲が多い近作の曲は、音楽の方向性としてはむしろ「酒盛り系」の曲より私好みではあったのだが、こういう曲を歌うにはヨンネ・ヤルヴェラの歌唱力はいささか物足りない。

そういう曲ではアコーディオンやヴァイオリンはいい働きをしていて、これ、ブルース・ディッキンソンみたいなヴォーカルが歌ったらめっちゃイイんだろうなあ…などと思いながら聴いていました(苦笑)。

そういう微妙な時間帯を終えたのは、最新シングル"Jägermeister"。

「ドイツの養命酒」と呼ばれるお酒の銘柄の名前を冠したこの曲は久々の(?)酒盛りソングで、まだ浸透しているはずはないものの、シンプルに盛り上がる。

そして本編ラストは前述の名曲(迷曲?いや、迷なのはMVだけか)、"Wooden Pints"で、モッシュ勢も大はしゃぎ。

アンコールを求めるコールは最初「コルピ!コルピ!」だったのが程なくして「ウォッカ!ウォッカ!」に変わる(このバンドの代表曲の一つが"Vodka"なのである)。

そして、このバンドのイメージを決定づけていると言っても過言ではない「酒ソング」、"Beer, Beer"、そしてリクエスト(?)通りの"Vodka"がプレイされ、最後のお祭り騒ぎでライブは終了。

他の公演ではアンコールでプレイされているもう一つの「酒ソング」、"Tequila"がプレイされなかったのは時間の都合でしょうか。


どのバンドもそれぞれ見所があって、フォーク・メタルの大ファンならぬ私のような人でも楽しめる公演でした。

何より、このコロナ騒ぎの中、来日してくれた3バンドたちには感謝の気持ちしかありません。

特にKORPIKLAANIに関しては大阪公演に先んじて下記のツイートがちょっとバズっていたことで来た人、結構いるんじゃないですかね。日本のメタル・ファンを力づけてくれてありがとう、という気持ちでいっぱいです。とりあえずこのツイート見た日、プレミアムモルツ飲みました(笑)。



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NIGHT RANGER来日公演 at 昭和女子大学 人見記念講堂 2019.10.7

このサイト/ブログでは、意図的(サイト/ブログの個性を明確にするため)にハード・ロックよりメタル、アメリカンなものよりヨーロピアンなものをフィーチュアしてきたので、これまであまり触れてきませんでしたが、私はNIGHT RANGERが好きです。

と言っても、ほぼ1st"DAWN PATROL"と2nd"MIDNIGHT MADNESS"に好きな曲の大半が集中していて、近年のアルバムはほとんど聴いていないのでライブには足を運びかねていました(単にスケジュールが合わなかったというのも大きいですが)。

しかし今回の来日公演はその1st"DAWN PATROL"と2nd"MIDNIGHT MADNESS"を再現するツアーということで、私のような人間にはピッタリ。同じく80年代のNIGHT RANGERを愛する友人の誘いもあり、足を運ぶことにしました。

会場は昭和女子大学人見記念講堂という、5年くらい前にEXTREMEの来日公演が行なわれたとはいえ、HR/HMファンには(というか男性には?)あまり馴染みのない会場で、渋谷から東急田園都市線で世田谷方面に2駅の三軒茶屋にある。

開場18時30分、開演19時だったわけですが、私が銀座某所での打ち合わせが終わったのが18時35分。電車で行くと、開演には確実に間に合わない。しかし公演の趣旨から考えてオープニング1曲目はほぼ間違いなく私がこのバンドの楽曲で1番好きな"Don't Tell Me You Love Me"と想定される。遅刻は極力避けたい。

NAVITIMEで自動車ルートを検索すると、車なら首都高を使えば17分で着く、とある。これに賭けるしかない。

早速タクシーを捕まえ、首都高の銀座入口から高速道路に乗る…が、いきなりの渋滞。浜崎橋JCTで事故という表示は出ていたのでこれは想定内だが、その浜崎橋を過ぎてスムーズに流れだした、と思ったのも束の間、その後も断続的に渋滞が続き、渋滞情報のサイトをスマホでチェックすると、この先もずっと渋滞しているようだ。雨だしな…。

やむなく途中で高速を降りるも、ほぼ全ての信号で赤信号に引っかかるという不運なリズム。結局現地に到着したのは開演から15分ほど経ったタイミングでした。

大学時代にインカレのサークルで何人か友達はいたものの、当然ながら昭和女子大に入ったことはない。そもそもアラフォーの男性サラリーマンが勝手に入ろうとしたら逮捕されるんじゃないかと思い(そんなバカな)、門の脇に立っている警備員に「怪しい者ではありません。人見記念講堂はどこですか?」と訊こうとする間もなく、警備員の方から「ナイト・レンジャーですか?」と話しかけてきて、道案内をしてくれる。

講堂内に入ると、いかにも大学職員といった感じの、きちんとした身なりの人たちが丁寧に席の場所を説明してくれる。てか、そこまで丁寧に説明してくれなくても席番号見ればなんとなくわかるから早く通してくれ、という気分でした(苦笑)。

そして19時20分くらいに自分の席に着くと"At Night She Sleeps"がプレイされている。当然だが"Don't Tell Me You Love Me"も"Sing Me Away"も聴き逃してしまった…いや、楽曲の尺を考えると"Call My Name"まで終わっていてもおかしくないので、まだマシだったと考えよう。

2階席だったので、先に着いていた私の友人を含め、周りの人たちの多くは座って観ている。私が立つと後ろの人が見えづらくなると思われるので、とりあえず私も座って観る。とりあえず"Call My Name"は立ち上がって盛り上がるような曲でもないですし。

遅刻でちょっとブルーな気分でしたが、"Eddie's Comin' Out Tonight"のスリリングなツイン・リードにたちまち気分はアガっていく。この曲が『MCA』と契約するきっかけになったそうだが、こういう曲が大手メジャーに評価されるいい時代だったんですね。

上手(かみて)にドラム、下手(しもて)にキーボードがあり、センター後方には大きな「お立ち台」があるという変則的なステージ構成だが、これは結成当初からこうなっているようなので、弦楽器隊3人が縦横無尽に動き回るステージングをする上でこういうステージが良い、ということになっているのだろう。

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結成当時の思い出話など、恐らく毎回喋ってるんじゃないかというトークも、日本人の英語リスニング能力を考えてかなりゆっくり話してくれていたし、そのステージはまさに百戦錬磨といった熟練を感じさせる。

バンド名を冠した"Night Ranger"がプレイされた際には、途中のテンポアップして盛り上がる場面でドラム・ソロに突入。ケリー・ケイギー(Dr, Vo)が「ドラム・ソロ・タイムかって? いや、グルーヴ・タイムだぜ」と言うと、他のメンバーも全員ドラムキットの周りに集まって思い思いにドラムスティックでドラムやシンバルを叩き始める。こんな光景は他のバンドでは見たことがない。

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"DAWN PATROL"最後の曲である"Night Ranger"が終わると「まだ帰るなよ! まだまだ音楽はあるからな! 5分だけ休ませてくれ!」と言って一旦袖に引っ込む。

そりゃあ"MIDNIGHT MADNESS"も再現するってあらかじめ知らされているわけだから帰らないよね…などと思っていたら、ブラッド・ギルス(G)つながりなのかOZZY OSBOURNEの"No More Tears"がBGMで流れる中、ステージ上にアコースティック・セットが組まれていく。あれ? "Rock In America"じゃないの?

明らかに5分以上経って現れた彼らがプレイを始めたのは4thアルバム"BIG LIFE"からの"Color Of Your Smile"のアコースティック・バージョン。おや、今日は一昨日に行なわれた追加公演とはセットリストが違う?

アコースティック・セットは続き、再結成アルバム(私がHR/HMを聴き始めてからリアルタイムでリリースされた最初の作品である)"NEVERLAND"からの"Forever All Over Again"、そしてジャック・ブレイズ(B, Vo)が在籍していたDAMN YANKEESの大ヒット曲"High Enough"、5th"MAN IN MOTION"からの"Reason to Be"という4曲がプレイされる。

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正直、ブラッド・ギルスという、エレクトリック・ギターならではの技術であるアーミングの達人を擁する彼らが4曲もアコースティックをプレイする意味は薄いように思ったが、ビルボードライブみたいな会場にはハマりそうな気はする(少なくとも、先日ビルボードライブで観たURIAH HEEPよりも!/笑)。

そしてアコースティック・セットが撤収され、いよいよ始まる"MIDNIGHT MADNESS"完全再現。名曲中の名曲、"Rock In America"が始まると、座っている人が多かった2階席も2/3以上の人たちが立ち上がる。あからさまな今夜のハイライト。

この曲のAメロのキーボードは初めて聞いた時衝撃でしたね。こんなに歌メロのバックでキーボードが目立っていいんだ、と(笑)。

このバンドは2人いるギタリストのどちらもギター・ヒーロー扱いで、ベースとドラムはヴォーカルも兼任しているので、皆存在感が強いわけだが、キーボードのフィーチュア度の高さもHR/HMとしてはかなりのもので、「目立たないメンバー」がいないというのがバントとして魅力的(いや、現在のキーボーディストは知名度などの点でやや地味な人ですが…)。ステージを見る限りメンバー同士の仲も良さそうで、気持ちよくステージを観ていられる。

カジュアルな服装のメンバーたちの中、一人LAのグラム・ロッカーみたいな風体のケリ・ケリー(G)も「あの」8フィンガーのタッピング・ソロを見事に弾きこなして大きな歓声を浴びる。

全米5位の大ヒット・バラード"Sister Christian"ではオーディエンスに歌声を要求、ちゃんと歌詞を憶えている観客が多く、見事な歌声が場内に響き渡る。これが長年のファンを抱えたバンドの単独公演における妙味ですね。フェスだとなかなかこうはいきません(笑)。

スタジオ盤ではちょっと退屈な曲だと思っていた"Touch Of Madness"もライブ映えは抜群で、"When You Close Your Eyes"みたいなメロディアスな楽曲はもちろん素晴らしい。ホント、このバンドには日本人好みの歌謡センスがあって、その辺が2019年になっても東京で2,000人規模の会場を2会場ソールド・アウトさせられる根強い人気の源泉なのではないか。

"MIDNIGHT MADNESS"完全再現が終わると、(今夜は既にセットチェンジで袖に引っ込んでいるからか)アンコールという形は取らずに、オマケ的に3rdアルバム"7 WISHES"からの"Four In The Morning"、そしてタイトル的には公演ラストに相応しい"Goodbye"がプレイされて今夜のショウは終了。

しんみりしてしまうからか、バラードで終わるライブって実はあんまりないんですよね。でも"Goodbye"は最後エレクトリック・ギターがパワフルに盛り上げるのでギリギリ「アリ」なんですかね。"Goodbye"ではなく"See You Again"であってほしいですが。

25曲、2時間半に渡る大満足のコンサートでした。メンバーの演奏やショウ運びも非常にプロフェッショナルで、これなら新しいヒット曲やヒット・アルバムが出なくてもお客さんは集まり続けるだろうな、と感じました。

実際、オーディエンスは普通の私服やスーツ姿の人が多く(もちろん80年代のツアーTシャツを着ているような歴戦のファンと思われる方もいっぱいいましたが)、このバンドがいわゆるコアなHR/HMファンというより、ライトなHR/HMファンの人気が高かったという話も納得でした。

彼らはやっぱり曲もパフォーマンスも大衆性やわかりやすさに満ちていて、それは今のHR/HMが失ってしまったものなんじゃないかと思います。もちろん、今NIGHT RANGERの音楽性を再現してもそれは「大衆的」とは言えないのですが。

しかし、ジャック、ケリー、ブラッドというオリジナル・メンバーが還暦オーバーなのは想像がついていましたが、このパワフルなドラムをプレイして、しかも多くの曲でヴォーカルもやっているケリー・ケイギーが67歳って…。そりゃ60歳じゃ年金もらえませんよね(苦笑)。まだまだ働けそうですもん(笑)。

※聴けなかったこの曲のオフィシャル・ライブ映像を新旧で。