DGM&ELVENKING来日公演 at 新宿MARZ 2016.11.6

先週末はメタラーにとって熱い週末でした。

何しろKNOTFESTとJAPANESE ASSAULT FESTが同日に開催され、さらにDGMとELVENKINGの来日公演まで行なわれたのですから。

微妙に客層はバラけているとはいえ、私としてはKNOTFESTではDISTURBEDを観てみたかったですし、JAPANESE ASSAULT FESTではANCIENT BARDSを観てみたかった。

と言えばおわかりになると思いますが(ていうかこのブログエントリーのタイトルを見れば一目瞭然ですが)、私はDGMとELVENKINGの来日公演を選びました。

DISTURBEDかANCIENT BARDSは土曜日に観れただろ、もしANCIENT BARDSの出演時間が19時半以降であれば両方掛け持ちも不可能ではない、と言われそうですが(?)、土曜日は仕事のイベントがあって無理だったのです。

そして日曜日も休日出勤からの会場入り。前売り券はソールドアウトしているとのことながら、当日券があることを信じて会場である新宿MARZに向かう。

仕事が終わって会場に着いた時間は、開場時間どころか開演時間を大きく過ぎた18時前。案の定当日券はあったが、さすが前売りがソールドアウトしているというだけあってかなり混雑している。

オープニングアクトとしてRAKSHASAおよびANCIENT MYTHという2つの日本のバンドが付くことになっており、告知物の表記順からてっきりRAKSHASA→ANCIENT MYTHという出演順かと思っていたら、ANCIENT MYTH→RAKSHASAという出演順だったそうで、私がフロアに降りたタイミングでプレイしていたのはRAKSHASAでした。

RAKSHASA

全然知らないバンドでしたが、それもそのはず、まだ正式なアルバムはリリースしていない新しいバンドのようです。

とはいえド新人というわけでもなく、本日のプロモーターであるEvoken de Valhall Productionの主宰者であり、20年近いキャリアを持つもはやベテランと言ってもいいシンフォニック・ブラック・メタル・バンドETHEREAL SINのYama Darkblaze氏による新しいバンドとのこと。

自分で企画したイベントで自分のバンドをプロモーションする、という構図でしょうか。

そのサウンドはメロディック・パワー・メタルに和テイストを持ち込んだ、世の中的には「陰陽座フォロワー」と思われそうな音楽性で、個人的には好きな音。

特に最後から2曲目に演奏された「彼岸の月」という曲はなかなかカッコ良かったですが、正直な所女性ヴォーカルがちょっと弱いかな…。高音パートは悪くないのですが、中低音域がかなり説得力不足でした。

とはいえショウが進むほど場内の反応は良くなっていき、このバンドのサウンドがオーディエンスに受け入れられていった感じは確実に見て取れました。


ELVENKING

本日3バンド目(私にとって2バンド目)はイタリアのフォーク・メタル・バンド、ELVENKING。今回が初来日となる。

RAKSHASAがプレイしていたときは混雑していたので階段を下りてすぐの所で観ていましたが、転換の際の人の動きに乗じて奥の方へズズイと進み、センター後方あたりへ侵入。

ELVENKINGは買って聴いたのは、当時の「クサメタル」ブームの中で話題になっていたデビュー作のみで、その後は時々ネットでチェックしていた程度。正直日本ではあまりパッとしないバンドで、よくこんなマニアックなバンド呼んだものである。

DGMとの接点はイタリア出身で、メロディック・パワー・メタル的な要素がある音楽をプレイしている、ということくらいでしょうか。

転換が終わって幕が上がると、フォーク・メタル独特のメイクをしたメンバーたちが登場、ヴァイオリン奏者の存在もまたフォーク・メタルを主張している。

フォーク・メタルというと日本ではデス声をフィーチュアしたタイプのバンドが有名だが、このバンドは基本的にノーマル・ヴォイスで歌われている。

彼らのレパートリーの中でも最もヘヴィな部類に入る「The Scythe」で幕を開け、最新作のリーダー・トラックだった「Elevenlegions」がプレイされると、後方にいた私の周りでも合唱が起き、かなりコアなファンが駆けつけていることを窺わせる。

率直に言って演奏はあまり上手くなく(特にドラム…)、ちょっとB級な感じは否めなかったが、側頭部を大胆に刈り上げたエモっぽいルックスのイケメン・シンガー、ダムナゴラス(メンバー全員「エルフの王」というバンド名通り、エルフっぽい芸名を名乗っている)がなかなか巧みにオーディエンスを煽っていて、場内は結構盛り上がっていた。

このバンドの場合、「ヴァイオリンをフィーチュアしたフォーク風味」という体裁はキープしつつも、音楽性は時期によって結構ブレているため、パワー・メタリックな曲からメロディアス・ハードのような曲、エモ/パンクみたいな曲まで楽曲は良くも悪しくもバラエティに富んでいたが、オーディエンスの反応が一番いいのはフォーキッシュなメロディが奏でられる瞬間だったように思われ、そういう意味ではバンドの個性の部分が評価されていたと言える。

ヴァイオリン・ソロなど他のHR/HMバンドのライブではなかなか観られないものを観ることができた物珍しさ的な部分も含め、彼ら目当てで来場したファンにとってはかなり満足感のあるショウだったのではないでしょうか。

個人的には終始腕を上げるようなコーラス・パートでほのかに漂ってくるワ○ガの香り、そして途中至近距離で炸裂した屁の臭いで文字通り「クサメタルで悶絶」することになったのですが…。


DGM

当然ながらと言うべきか、基本的にはこのバンドがお目当てでした。今の時期も結構忙しいので、ちょっと足を運ぶのが億劫な気分もあったが、前回の来日時には別件があって行けなかったので、今回は観ておきたかった。

そしてまたELVENKINGからの転換時に起きる人の流れを利用して会場のほぼ真ん中辺りまで進出する。今日のBGMはなぜかずっとM.S.Gだ。

ステージに垂れ下がっている薄い幕の向こうでスキンヘッドが蠢いているのがシルエットでフロアからも見て取れ、マーク・バジーレ(Vo)本人がマイクなどのセッティングをしているのが丸わかりである(笑)。

そして準備が終わり、20時を少し回った頃、ショウがスタート。

音がデカい。RAKSHASAの時点ではあまり良くなかったサウンドがELVENKINGではかなり改善されていたが、DGMについては、サウンドが悪いわけではない(というかこの規模のライブハウスとしては良好な部類だろう)が、とにかく音がデカい。これは耳栓なしでは危険な音量である。

そしてやはり上手い。上手いのはスタジオ・アルバムを聴くだけでも容易に想像がついていたので、スタジオ盤ではどれだけ上手いのかよくわからなかったSECRET SPHEREの時のような意外な驚きはないが、音量はともかく歌唱も含めてほぼスタジオ音源通りである。中でも下手(しもて)に立っているシモーネ・ムラローニのプレイの正確さ、トーンの再現度といったら、スタジオ音源をそのまま流しているのではと勘繰りたくなってしまうほど。随所で繰り広げられるキーボードとのユニゾンもまさに「一糸乱れぬ」という形容に相応しい。

そしていかにもイタリア人らしい濃い顔立ちのヴォーカリスト、マイク・バジーレのフロントマンぶりも特筆に値する。ミケーレ・ルッピから過剰な艶を抜いてより男性的にしたかのような歌声も完全無欠の素晴らしさだが、ボクサーを思わせる独特のアクションで終始オーディエンスを煽り続け、フロアの盛り上がりをキープし続ける。

前に出たELVENKINGのダムナゴラスも悪くないフロントマンだったが、フロアの後方から2階席まで、その場にいるオーディエンス一人一人と目を合わせようとするかのごとく全方位的にコミュニケーションをとるマーク・バジーレのほうがより会場全体に気を配っていたことは間違いないだろう(ちょっと暑苦しさを感じなくもなかったが/苦笑)。

ショウの途中、オーディエンスの歓声を浴びて、感無量といった面持ちで言葉を失ってしまうあたり、この人は本当にエモーショナルな人なんだな、と思いました。実際、ライブ中何度も「DGMコール」が巻き起こるなど、フロアの熱気はかなりのもので、会場こそ小さいものの、その分濃いファンが集っていることがよくわかる。

最新作のオープニング・トラックである「The Secret」2部作で幕を開けたショウはマイク・バジーレ加入後の3作のアルバムの楽曲のみで構成されていた。それでも特に不満は感じさせない辺り、いかに現在の編成が充実しているかが伝わってくる。

いっそマイク・バジーレが加入したタイミングで、もっとキャッチーなバンド名に変えたほうがよかったのではないか…と思ってしまうほど。

アンコールでは、現在の編成になって最初の楽曲となった「Hereafter」の後、メイクを落とした後のELVENKINGのメンバーをステージに上げて(特にELVENKINGのメンバーは特にやることがないので手持ち無沙汰な感じでしたが)、アルバム『MISPLACED』に収録されていた「You Wa Shock!」(アニメ『北斗の拳』主題歌)のカヴァーを披露。日本のファンへのサービス精神を炸裂させてショウは幕を閉じた。

パフォーマンスの素晴らしさはもちろん、メンバー皆、楽器の上手い人にありがちな(?)気難しさを感じさせない「いい人」感に溢れていて、その辺も含めて好感を持たずにいられませんでした。次回はぜひLOUD PARKのような大舞台でその高い実力を大勢のオーディエンスに見せつけてほしいものです。
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BABYMETAL来日公演 at 東京ドーム -RED NIGHT- 2016.9.19

タイトルの「来日公演」は、先日「来日記念盤」がリリースされていたので、その意向を尊重しました(笑)。

私はこれまで2012年1月の「Woman's Power」、2013年の「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」に「SUMMERSONIC」に「LOUD PARK」、2014年の「SUMMERSONIC」、そして今年のフジロックと、都合6回ほどBABYMETALのライブを観ていますが、単独公演に足を運んだことはありませんでした。

メタルのチケットというのは大抵ソールドアウトしないので、当日のスケジュールが見えてから買っても充分間に合うというか、ぶっちゃけ当日券で入れることが多いのですが、彼女らのライブに関してはすぐにソールドアウトしてしまうため、スケジュールの読みづらい多忙な身としては行けるかどうかもわからないライブのチケット争奪戦に参加することが躊躇われたからです。

しかし、今回会社の先輩から「ダメもとでチケットの先行予約申し込んだら取れちゃったからさ、一緒に行かない? メタル好きでしょ?」と声をかけられ行くこととあいなりました。

開場は16時だが、物販には二人とも興味がないので17時くらいに水道橋駅近くのスタバで集合し、会場である東京ドームへ。開場から結構時間が経っているにもかかわらず(開場が遅れていたようだが)入口付近はまだまだ混雑していて、自分たちの指定ゲートへ行くにはどこに並べばいいのかよくわからない状態でした。

列の最後尾を見つけて無事入場すると、ビニール製のコルセットが渡される。どうやらこれが光る仕組みになっているようだ。

2012年7月に行われた、シングル「ヘドバンギャー!」リリース記念のプレミアムライブ「LEGEND~コルセット祭り」以来の趣向であり、一昨年の武道館公演でも同様にコルセットが配られていたと聞いている。

「とりあえずビールでも飲もうか」と場内の売店に向かうと、本日は主催者の意向によりアルコール販売はなしとのこと。

仕方がないので席について開演を待つ。1塁側内野スタンドの後方で、決してステージに近くはないが、見づらい感じではない。360度タイプのステージで、三方向に花道が延びている。中心部はタワー状の建物になっている大がかりなステージだ。

BGMはSLAYERやらDRAGONFORCEやらJUDAS PRIESTやらSLIPKNOTやらIRON MAIDENやらMETALLICAやら、有名メタル曲ばかりが流れているが、特に周囲に反応はなく、ここに来ているのはやはり「メタルのファン」ではなく「BABYMETALのファン」なのだな、と。

初期のファンはどちらかというとメタル好きの比率が高かったのではないかと思いますが、さすがに東京ドーム公演をやれるほどにビッグになってしまうと、比率としては限りなく一般社会におけるメタル好きの構成比に近づいていくのはやむを得ないことでしょう。

開演時間である18時を20分ほど過ぎてようやく客電が落ちる。恒例の映像からのスタートで、『シン・ゴジラ』ネタが早くも取り入れられているあたり、相変わらず旬ネタに敏感である(笑)。

そしてKOBA-METALから、この東京ドーム公演においては、本日と明日の2日間でひとつの物語が構成されることが説明され、ファースト・アルバムとセカンド・アルバムの全曲がプレイされること、そしてそれぞれの曲は1回しかプレイされないこと、MCやアンコールは無いことが告げられる。

…てことは1日あたりアルバム1枚分の曲数しかプレイしないってこと? 演出やら映像やらで多少時間は伸びるにせよ、ちょっと短くね? てか元々2日目は「追加公演」のはずなのに、2日ワンセット扱いなのはおかしくね? などと思ってしまいました。

若干釈然としない思いがありつつも、ショウがスタートする。あたかも塔のように高く組まれたステージ・セットの上部から3人が登場したため、おそらくアリーナ前方の人は最初まったく本人たちが見えなかったのではないか(笑)。しかしこのセット、高所恐怖症だったら絶対にNGな高さだ。

オープニングは定番の「BABYMETAL DEATH」ではなく「Road Of Resistance」だ。個人的には「BABYMETAL DEATH」はイントロダクションとしては長すぎると感じていたのでこれはいい。

ただ、この曲を今日プレイしたということは、同じメロディック・スピード・メタル・チューンの「イジメ、ダメ、ゼッタイ」は明日かな~などという思考が脳裏をかすめる(そしてその予感は正しかった)。

続いて「ヤバッ!」に「いいね」と、どちらかというとポップな曲が続く。SU-METALの声の伸びは素晴らしく、明らかに前回観たフジロックの時よりコンディションは良さそうだ。

会場があたたまったところで私の好きな「シンコペーション」がプレイされる。ちょっとV系っぽいこの曲はオーディエンス的には合いの手などを入れやすいパートがないため、ライブ映えはイマイチかもしれない。

続くはやはり新作から私のフェイバリット・ナンバーである「Amore -蒼星-」がプレイされる。この曲がプレイされたということは「紅月」は明日か。

てっきり大合唱になるのかと思いきや、少なくとも1階席ではまったく歌声が起こらない。合唱の起きないメロスピのライブなんてちょっと寂しいものがあるが、これくらい会場規模が大きくなるとYouTubeにMVが上がってない曲は知らない人や、歌詞をちゃんと覚えていない人が大半を占めるようになるのもやむを得ないか。

一緒に観ていた会社の先輩の「バラードにこんな激しいビートをつけるってすげぇよな」というコメントを聞き、なるほど、メロスピというのは一般人には「激しいバラード」に聴こえるのか、と新鮮な驚きを感じるとともに、かつてYOSHIKIが「紅」を作曲した際に周囲から「なんでこのメロディでそんなに速くするの? バラードにすればいいのに」と言われたというエピソードを思い出しました。

YUI-METALとMOA-METALによるNU-METALチューン「GJ!」で、5万人の三三七拍子が響き渡ったの後、ファースト収録のゴシック・プログレッシヴ・メタル・チューン「悪夢の輪舞曲」がプレイされる。ノリやすい曲ではないため、盛り上がったとは言い難いが、これはなかなか俺得な選曲だ。

『スターウォーズ』ネタの映像が流れた後「4の歌」がプレイされる。YUI-METALとMOA-METALに煽られて場内は「よんよん!」「フォー!」と盛り上がる。ある意味本日一番盛り上がりというか、場内の一体感を感じる瞬間だったかもしれない。

ライブにおいては神バンドの超絶技巧を見せつけるソロから始まるのが「お約束」になっている「Catch Me If You Can」を挟んで人気曲「ギミチョコ!」そしてセカンド・アルバムのリード・トラックである「KARATE」がプレイされる。ここまでどちらかというとメジャーな曲が少な目だったことのバランスをとるかのような選曲だ。

そしてクライマックスを感じさせる映像が流れた後、ライブ初披露らしい「Tales Of The Destinies」がプレイされる。女子高生くらいの女の子がこんな変拍子バリバリのプログレッシヴ・チューンをライブで歌えるということ自体が驚きなのに、ダンスの振付まで付いているのだから恐ろしい。神バンドの演奏にも鬼気迫るものがあり、この曲・この瞬間が本日のハイライトだったと言えるだろう。

そして、5万人を超えるオーディエンスが装着したコルセットがさながら煌めく星のように白く発光する中、本日のライブを締めくくったのはアルバムの流れ通り(実質組曲?)「THE ONE」。まさに感動の演出である。

あまりメンバーが花道に出てくるタイミングは少なく、また中心部のタワーが邪魔になってあまりメンバーがよく見えない時間帯が長かったのが不満と言えば不満だが(ライトスタンドやレフトスタンドの人たちはちゃんと彼女たちが見えていたのでしょうか?)、コンサートの構成としては短さをあまり感じさせない、充実感のあるものに仕上がっていたと思う。

もちろん、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」や「メギツネ」、「ヘドバンギャー!」みたいな人気曲が聴けなかった、という不満を持つ人も、初見の人も多いであろう東京ドームのオーディエンスの中にはいると思われるが、個人的なことを言えばそれらの楽曲はこれまで何度も聴いているので、これまで聴く機会のなかった楽曲が多かった本日の選曲は悪くなかった(強いて言えば「META! メタ太郎」を聴いてみたかったが…)。

とはいえ僕がプロデューサーだったら、こういう初見の人やライトなファンがいっぱい集まる大会場のライブでは、普通にグレイテスト・ヒッツな選曲でやると思いますが、まあその辺がこのプロジェクトならではのこだわりなのでしょう。

いずれにせよ東京ドームでメタル(ハード・ロックではない)を聴くことができるという、なかなかレアな喜びは充分に噛み締めました。

残念ながら2日目「BLACK NIGHT」の公演を観ることはできませんが、果たして何が起きるのか、ネット上の声やレポートを楽しみにしていたいと思います。

フジロックフェスティバル '16 三日目 7/24 Sun 感想

フジロック3日目、行ってきました。恥ずかしながら39歳にして初のフジロックです。

思い起こすこと20年前、当時大学でバンドサークルに所属していた私は、サークルの有志で初開催のフジロックに行かないか、という誘いを受けて悩んでいました。

たしかに凄いメンツによる未曾有のイベントであるとは思ったものの、何しろ当時はお金のない学生の身分、自分の個人的な音楽的嗜好を考えるといささかコスパが悪い(当時コスパという言葉はありませんでしたが)と感じ、見送りました。

そしてフジロックから帰ってきたサークルの友人たちはみなグッタリし、「マジで死ぬかと思った…」と口々に語りました。そう、台風の直撃を受けて2日目は中止となった、野外フェスにはアウトドア装備が必要である、という認識が日本に普及していなかったために、Tシャツにビーチサンダルで現地に行った輩が大雨に打たれて凍死しかけ、救護室が溢れかえったというあの日です。行かなくてよかった、と当時心から思いました。

今となってはむしろそれは伝説、行っておけば後で一生のネタになったのに、という思いもありますが、私の体力では実際に生還できなかった可能性もあるので、あまりに危険な賭けだったと思います。

まあそんな思い出もあり、アウトドア派の対極にある私としてはなんとなく敬遠してしまうフェスでした。

一方でやはり日本でロック・ファンとして生を受けた以上、一度は行ってみたいという思いがあったのも確か。毎年その背中を押してくれる何かを待っていたと言っても過言ではありません。

そしてそれは2013年のKILLSWITCH ENGAGEや2015年のMOTORHEADでは充分ではありませんでした。だってどちらもラウパで観たことあったんだもん。むしろそれなら2010年のROXY MUSICや2011年のFACESの方がレアであるという意味で観たかった。

結果的に私の背中を押したのは、確実に楽しめることがわかっているBABYMETALという「保証となるアーティスト」と、近年のメタル・シーンにおける最大の注目株といっても過言ではないポスト・ブラック・メタルのDEAFHEAVENという、この機会を逃したら観る機会がないかもしれない「レアなアーティスト」が同日にそろい踏みするという状況だった。しかもトリもRED HOT CHILLI PEPPERSという「ロック好きであれば間違いのない」存在。ここまで条件が揃う日はもうないかもしれない。

そんなわけで「メタラーのフジロック体験記」を書くことにします。超長くなるのでご覧になる方は覚悟を決めて読んで下さい(笑)。


当日前夜、準備不足が仇となり寝るのが3時に。指定券を買っている新幹線の時間から逆算すると6時前には起きなくてはならないので、睡眠時間は3時間弱になってしまうという事態。体力勝負だけに厳しいが、まあ1日くらいならなんとかなるだろ、と開き直る。

そして朝、案の定メチャクチャ眠いのを我慢して無理矢理起床。とりあえず日焼け止めを塗りたくって家を出る。

私の家からだと新幹線は東京駅から乗るよりも大宮駅から乗ったほうが少し早いので、埼京線で大宮に出て、MAXとき号に乗車。やはりというか、周りはいかにもフジロックに行きます、という感じの人たちばかりだ。

私は家を出る前に送られてきていたリストバンドを忘れたり無くしたりしないように装着していたが、周りを見るとあまりリストバンドをしている人はいない。意外と現地でチケットとリストバンドを交換する人が多いのだろうか。それとも単に直前に付けるつもりなのか。

MAXとき号であれば、目的の越後湯沢駅まで1時間もかからない。早く着くのはありがたいが、足りない睡眠時間を補えないという意味では痛し痒し。

越後湯沢駅からはシャトルバスが出ているのでそちらに乗車。かなり並んでいるが、コンスタントに複数台のバスが来るので待ち時間自体はさほどでもない。とはいえきっと初日や昨日はもっと混んでいたに違いない。

40分ほどバスに揺られると到着。苗場プリンスホテルのそばで降車。帰りはオフィシャルツアーの夜行バスを予約しているので、軽くその乗り場への道筋を確認した後、会場入口に向かう。

入り口前の飲食ブース群にある名物屋台、「カドヤ横丁」で朝ビールをキメ、まずは景気づけ。

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ビールを飲み終え、会場入口に向かう。
会場のゲート自体は20周年にもかかわらず割と簡素。これならサマソニやロックインジャパンのほうが見栄えがする気が。

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そのままOASIS(インフォメーションや救護スペースなどがあるメインのパブリックスペース。飲食の屋台が場内で一番多く立ち並んでいる)に行き、このフェスの定番飯である(予習済み)苗場食堂でとろろ飯を注文。温泉玉子もトッピング。

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食べ終わると密かな目当ての一つだったfox capture planを観に移動開始。まるでハイキングコースのような自然を満喫できる道を抜け、ステージとしては最も奥地にあるFIELD OF HEAVENに辿り着く。

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このサイト/ブログをお読みになっているような方にどれだけなじみがあるかわからないが、fox capture planは日本人によるジャズ系のトリオで、タワーレコードやヴィレッジ・ヴァンガードなどがかなり力を入れてプッシュしているアーティスト。私が彼らを知ったきっかけもやはりヴィレッジ・ヴァンガードの店頭演奏によるものだった。

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そのどこか切ないピアノのメロディと、ジャズとは思えないほど躍動感のあるリズムのコンビネーションはライブで聴くと(MCは非常に淡々としているが)さらにエネルギッシュかつ感情の高まりを感じさせるもので、ラスト2曲、「疾走する閃光」から「RIGING」の流れではちょっと泣きそうになってしまいました。序盤から楽しませてくれるぜフジロック。

※「疾走する閃光」MV


次に予定していたのはWHITE STAGEのDEAFHEAVENだが、まだ時間があるのでステージ途中にある小ステージ、GYPSY AVALONで「ザ・なつやすみバンド」という、全然知らないが(失礼)、とても今の時期にピッタリな名前のバンドがプレイしていたので、足を止めて観てみる。

ピアノ・ヴォーカルの女の子がとてもピュアな佇まいと歌声の持ち主で、癒される。スティール・パンやトランペットがフィーチュアされていて、ちょっと変わったサウンドだが、楽曲そのものはいたってポップで可愛らしく、結構楽しめました。ただ、日差しが強すぎていささか夏休み感が強すぎました(苦笑)。

その後WHITE STAGEに移動すると、まだDEAFHEAVENの前のバンドであるBO NINGEN(棒人間?)という、これまた全然知らないロンドンを拠点とする日本人4人組バンドがプレイしている。

HAWKWINDや初期MOTORHEADのようなヘヴィ・ガレージ・サイケといった感じのそのサウンドはかなりラウドで、「貞子vs伽椰子」に登場しそうなルックスのベース・ヴォーカルには不思議なインパクトがある。

「今日は観に来てくれてありがとう。全員の目、見ました」という、ちょっと不気味なエンディングのMCを聴いたあと、ちょっと頭痛を感じ、熱中症になりそうだったので最寄の木陰のスペースに退避。この日のために購入したHelinoxのチェアを組み立てて座り、休憩する。この時間帯FIELD OF HEAVENでプレイしていたdCprG(BABYMETALのギタリストでもある大村孝佳が参加している)を観に行くという手もあったが、ここで30分くらいウトウトできたことは体力回復的には結構大きかった。


DEAFHEAVEN

さて、今回の目的のひとつ、DEAFHEAVENである。音楽的には実はこの時間帯に裏でやっている2CELLOSの方が好みだったのだが、彼らは今後も頻繁に来日しそうなので、今回を逃すともう観る機会がないかもしれないDEAFHEAVENを優先するのは仕方ない。

このサイトの読者にどこまで知名度があるか不明だが、DEAFHEAVENは世界で最も影響力のある音楽メディアとして知られるアメリカのインディー系ミュージック・サイト『Pitchfork』など、主に「メタル村」の外部で高く評価されているポスト・ブラック・メタル・バンドである。

ブラック・メタルのようなアグレッシヴなパートと、ポスト・ロックのようなメロウで、ある種叙情的なパートが交錯するそのサウンドはTOOLやISISなどに通じる内省的で密室的な印象もあり、およそこの真夏の陽光が降り注ぐステージには全くもって不似合いである(笑)。

バックの楽器陣はシューゲイザー・バンドのように動かないが、フロントマンであるヴォーカルのジョージ・クラークはまるでオーケストラの指揮者のようなナルシスティックにも映る不思議なアクションでオーディエンスを煽り、3曲目「Come Back」ではサークル・ピットを要求する。

そしてアグレッシヴなパートで巻き起こったサークル・ピットは乾いた大地から砂埃をもうもうと巻き上げていた。正直マスクが欲しい埃っぽさである。事前にチェックした「持ち物リスト」にマスクはなかったなー。

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彼らの楽曲は1曲1曲が長いので、およそ50分のステージで5曲しかプレイしなかった(できなかった)わけだが、歌がスクリームでなければかなりポップな曲になるであろう「Gift For The Earth」から、再びサークル・ピットやクラウド・サーフが巻き起こったアグレッシヴな「Dream House」で幕を閉じる。

彼らの日本における知名度の低さと、最大15,000人を収容できるWHITE STAGEの規模を考えると、ガラガラなのではないかと危惧していたが、そこそこ客入りはあり、盛り上がっていた。BABYMETALのTシャツを着た人も多く、そういった人たちはジョージ・クラークが激しくスクリームするたびに盛り上がっていたので、私のような「BABYMETAL+DEAFHEAVEN」を目的にしていた人も少なくなかったのではないだろうか。

※「Luna」のNYでのライブ映像


その後OASISに戻り、これまたこのフェスの定番フードとされる「元祖 越後もち豚」の豚串焼きを食べる。たしかにジューシーでなかなか旨い。

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ひどい後ピンである…。お恥ずかしい。

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ラウパでは一番人気のあのケバブ屋も、フジロックにおいては「その他大勢」な感じです。

食べ終わって、OASIS最寄にあるこのフェス唯一の屋内ステージRED MARQUEEを覗きに行く。ちょうど直前に出演していたTROYE SIVANのステージが終わった直後でガラガラだったが、既に次のSHERBETS(元BLANKEY JET CITYの浅井健一率いるバンド)待ちと思われる人たちがステージ前に貼りついていた。

単純にどんな場所か興味本位で観に行ったRED MARQEEを出ると、苗場スキー場とかぐらスキー場を結ぶ、日本最長のゴンドラ、ドラゴンドラの入口があった。「待ち時間0分」という状況だったため、マンガ『モテキ』で主人公が乗っていて楽しそうだったのを思い出し、観ようかと思っていたSTEREOPHONICSを蹴ってゴンドラに乗る。残念ながら傍らに土井亜紀のような素敵な女の子はいませんでしたが(苦笑)。

25分におよぶゴンドラからの眺めはまさに大自然と呼ぶに相応しいもので、なかなか気分が良かったが、こんな山奥にこれほどの巨大ゴンドラ施設をいったいどのように工事したのか、全くもって想像がつかない。

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そしてゴンドラから下りると、標高が上がっているので体感気温が明らかに低い。小さなステージはあるものの、大して興味のあるアクトがプレイしていたわけでもないので軽く冷やかして戻ろうとしたら、帰りの行列はいったいどこが最後尾なのかわからないほど長大で愕然とする。「行きはよいよい、帰りは怖い」とはこのことか。並んでいる間、あまりに暇なので前日から始めたポケモンGOをやってみるも、田舎ゆえほとんどポケモンはいない。電池の無駄なのでピードルを1匹とパラスを1匹捕まえて終了する。

20分強ほど並んで帰りのゴンドラに搭乗。となりに座っていたカップルの会話がなかなか面白かった(女の子がなかなか面白い子だった)のだが、印象に残ったのが次の会話。

「BABYMETALな人たちって、BABYMETAL終わったら帰るのかな? 他は興味ないよね、きっと」
「まあレッチリくらいは観て帰るんじゃないの」

やっぱりBABYMETALが好きな人というのは広く音楽一般、ロック一般が好き、というタイプの音楽ファンだとは思われてないんだなあ、と思いました。まあ実際私もBABYMETALとレッチリが主な目的なので苦笑せざるを得ませんでしたが。

ゴンドラから降りて再びOASISへ行き、今度は「殿堂入り店舗」である「ジャスミンタイ」のマッサマンカレーを食べる。マッサマンカレーといえば2015年にアメリカの人気情報サイト「CNN Go」が「世界で最も美味しい食べ物」に認定したことで話題となり、私も何度か食べたことがあるが、たしかにここのカレーはなかなかマイルドで美味しかった。

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食後、この後観たいステージが連続するので念のために行っておこう、とトイレに行くと、恐ろしい行列ができており、これは切羽詰まった尿意/便意が起きてから行くと地獄を見るな、と思いました(実際の所、かなり暑くて汗をかきまくっていたのでトイレに行ったのはこの1回だけだったのですが)。

トイレを終えてBABYMETALが出演するWHITE STAGEに向かうも、同じくBABYMETAL目当ての人たちで大混雑しており、なかなか進まない。

ようやくステージが近づいたところで、財布がないことに気付いて青ざめる。

ヤバい、トイレが和式だったので、落とさないよう尻ポケットから取り出して、そのまま置いてきてしまったのだ。お金はもちろん、クレジットカードや家のカギも入っているのであわてて引き返し、インフォメーションに向かう。

インフォメーションに着くと、幸いなことに無事財布は届いていた。お金もなくなっていない。民度の高い国に生まれてよかったと心底思う瞬間でした。届けてくれた方、本当にどうもありがとうございます。

そしてあらためてWHITE STAGEに向かうと、途中で混雑のため、ステージが見られない可能性があるので他のステージへの移動を促すアナウンスがある。

こうなるとインフォメーションに引き返したことが悔やまれる。どうせ届くか、盗まれるか二者択一なのだから、BABYMETALのステージを見てからインフォメーションに行っても結果は同じだったのだ。ここは腹をくくるべきだった。

しかし、何とかWHITE STAGEに潜り込むことに成功。文字通り寿司詰めである。本日来場者のTシャツを見る限り、RED HOT CHILLI PEPPERSの次に多かった(あるいは同等に多かった)のがBABYMETALのものであり、セカンド・ステージでやらせるのは無理があったのではないか。

とはいえアイドルかつメタルという、本来のフジロックの属性からは程遠い存在をメイン・ステージであるGREEN STAGEに立たせるのはフジロック運営者の矜持が許さなかったのだろう(実際、彼女らが記念すべき20周年に出演することを非難する声もネット上でしばしば目にした)。個人的にはつまらない矜持だと思いますが。


BABYMETAL

BABYMETALの開演時間が近づくと、これまで晴れていた会場に雨が落ちてくる。山の天気は変わりやすいとは言いますが、何もこの逃げようのない満員電車状態のシチュエーションで…。

これでゲリラ豪雨でも降ったら「BABYMETALが嵐を呼んだ!」みたいな新たな伝説になってしまうところでしたが、幸いパラついた程度で済んだ。Fox Godの加護だろうか。とりあえず持ってきていたモンベルのバーサライト・ジャケットを狭い隙間をぬってカッパ代わりに着用(ポンチョも持ってきていたが、そこまで強い雨ではなかったので出さなかった)。

ステージは定番の「BABYMETAL DEATH」でスタート。これは一種のイントロダクションみたいなものだとすれば、実質1曲目は「ギミチョコ!!」。メタル・ファンが少ないであろうことが予想されるフジロックでは、最も一般層に対する知名度が高いであろうこの曲で始めることは理解できる。

「ギミチョコ!!」の後、いきなり神バンドのソロタイム。フジロックにはおよそ似つかわしくない、むしろそういうものを嫌う人が多そうなこの場で速弾き中心の「演奏テクニックの見せつけ」が行なわれたことは個人的には痛快。

そしてソロからつながる「Catch Me If You Can」から、「YAVA!」というどちらかというとメタル色薄めの楽曲が続く。SU-METALの煽りは基本的にほぼ英語で、これはここまで長い海外ツアーを経験してきた「世界的アーティスト」ならではのアピールか。個人的にはここは日本で、彼女たちは日本人なんだから日本語でいいんじゃないの、と思いましたが。

先に満員電車状態だったと書きましたが、1曲終わるごとにかなりの人数がコンスタントに離脱していて(ちょっと興味本位で観てみたい、という人たちだったのでしょう)、徐々に前の方に進むことができた。特に5曲目、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」の前には、私の脇を通り過ぎた人だけで100人近くが流出する大量離脱があり、だいぶ前の方まで行くことができた。

「イジメ、ダメ、ゼッタイ」がプレイされると、ステージ上の大型モニターに巨大なサークル・ピットの様子が映し出され、私のいる後方でどよめきが起きる。私の近くにいた人が発した「マジで走ってる奴とかいるんだ? ステージ見えないじゃん」という言葉には苦笑せざるを得ませんでしたが、普段フジロックに出演するようなアーティストのライブしか観たことがない人にとってサークル・ピットというのは目新しいものであったに違いありません。

SU-METALは私がこれまで観た5回ほどのステージ(全部フェス)と比べ、必ずしも絶好調という感じではなかったが、それでもかつてはただまっすぐだった歌唱に抑揚がつくようになっており、成長を感じることができた。彼女の「少女性」を強く感じさせる歌声こそが、BABYMETALの大きな求心力となっていることは間違いない。

YUI-METALとMOA-METALによるダンスも、かつてはちょっとシンクロ具合や位置取りの左右対称性に甘さを感じることもあったが、もはやほぼ完璧で、世界のステージで鍛えられたエンターテインメント・アクトとして既に完成形に達したことを印象付けられた。

「イジメ、ダメ、ゼッタイ」の後は「メギツネ」に「KARATE」と、やはりどちらかというと一般受けしそうな楽曲がプレイされ、私の近くにいた、父親に肩車された3歳くらいの子供も両手を上げて盛り上がっていた。

それにしても「KARATE」、個人的には苦手なタイプのリフで、楽曲テーマであるあざとい「ジャパン・アピール」もちょっと気に入らないのだが、SU-METALの歌い上げるサビのメロディにはグッと来てしまう。

ラストは「Road of Resistance」で激しく疾駆して終了。私の周囲で聞こえてきた感想は主に「かわいい」という音楽とは無関係なものが多かったが、概ね好意的に受け止められていた様子。

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BABYMETAL終了後、GREEN STAGEに移動。私と同じく本日単日で来場している職場の上司イチオシのBEN HARPER & THE INNOCENT CRIMINALSを観る。

個人的には「渋めのレニー・クラヴィッツ」くらいの印象だったベン・ハーパーだが、時にジミヘンやSANTANA、LED ZEPPELINなどを彷彿させるそのサウンドはライブで観ると非常にグルーヴィーでカッコいい。特にベン・ハーパーのスライド・ギターと激ウマなベースの絡みは絶品で、ある意味本日一番「ロック」らしいステージを観た気がしました。

BEN HARPER & THE INNOCENT CRIMINALSを少し早めに抜け、最後のエネルギーチャージ。昨年のフェス飯ランキングで1位に輝いた「博多もつ鍋 うみの」の「もつ鍋ちゃんぽん」を食べる。スープが絶妙で、「フェス飯にしては」などという注釈なしで素直に美味しかったです。

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RED HOT CHILLI PEPPERS

GREEN STAGEに戻り、ヘッドライナーのRED HOT CHILLI PEPPERS待機。再びHelinoxのチェアが活躍。この待ち時間を座って待てるというのは、もうだいぶ体力が削られているだけにありがたい。そもそもアウトドア派ではない自分的にはもう一生使う機会がないかもしれないが、買っておいてよかった。

とはいえ、開演20分くらい前になると人口密度が上がりすぎて椅子は片づけざるをえない状況。ソールド・アウトしているだけあって、凄い人口密度だ。

そして21時、いよいよヘッドライナーであるRED HOT CHILLI PEPPERSのステージがスタート。

ヴォーカルのアンソニー・キーディスは口髭を生やしてキャップを被っており、その姿はさながらマリオを彷彿させる(笑)。アンコール時にキャップを外したときにはフレディ・マーキュリー(QUEEN)みたいに見えましたが(笑)。

事前にチェックしておいた最近のセットリストでは「Can’t Stop」で始まることが多かったが、「Goodbye Angels」からという意外なスタート。その後、日本映画『デスノート』主題歌だった「Dani California」から「Scar Tissue」、「Dark Necessities」という流れは予想通りというか、最近の定番である。

もちろん演奏は素晴らしい。フリーのベース・プレイには既に巨匠の風格が漂っているし、チャド・スミスのドラムもパワフルかつグルーヴィーで、この強力無比なリズム隊が歌モノっぽい曲でさえ単なる歌モノにしない。

前作から正式加入したイケメンギタリストであるジョシュ・クリングホッファーも、前任のジョン・フルシャンテほどの風格はないものの、そのプレイに特に過不足は感じなかった。

アンソニーは、曲によっては終始音程が外れているようなこともあったが、声自体はよく出ていたと思う。
本日サウンド(音響)がイマイチで、ひょっとするとモニターの返りが悪かったりしてアンソニーの音程に悪影響を与えていたのかもしれない。

でもやっぱり、一番存在感があったのはフリーかな。プレイの凄さもさることながら、ステージ・アクションがいちいちカッコいいし、アンコールの際、逆立ち歩きで登場したのもインパクトがあった。

両サイドのモニターに加え、ステージの後ろにある4つの円形のモニターにも映像が映し出されるステージの仕様や、モノクロ映像を効果的に使った演出、それと対比するかのようにカラフルなライティングなど、ステージ演出もカッコ良かった。そして彼らのステージの際には終始撮影用と思しきドローンが飛び回っていた。

ただ正直、睡眠不足に加え、疲労がピークにきていたこともあり、近年の歌モノ路線の曲が連発された中盤、ちょっと眠くなってしまったことは否定できない。オーディエンスとのコミュニケーションもあまり多くなく、割と淡々と曲がプレイされていったこともその理由のひとつかもしれない。毎回こんなものなんでしょうか。

まあ、そもそも近年の彼らの曲というのは歌モノ路線と言われますが、個人的な感覚では彼らの「歌モノ」というのはサビでの盛り上がりに欠けるというか、ありていに言えば歌謡曲っぽさが乏しく(きっとファンはだからカッコいい、と言うのでしょうが)、ちょっと平坦に聴こえる、というのが個人的な感想。

むしろ初期の、ファンクっぽさバリバリのヤンチャでわんぱくな頃の曲を多めにやってくれたほうが楽しめた気がする、と、ラストの定番曲「Give It Away」を聴いて思いました。

曲名からしていかにも来日公演で演奏しそうだと思っていた新作のラスト曲「Dreams Of A Samurai」は、案の定アンコール1曲目でプレイされましたが、まだ浸透していなかったのと、曲調がおとなしい(ありていに言えば地味)なこともあって、一番盛り上がらない曲になってしまいました…。バンドとしては日本のファンに対するサービスだったと思うのですが。

全体としての印象はMETALLICAなどを見たときに通じる「大御所感」に満ちたもので、オーディエンスの反応含めて、彼らこそ現在のロック界を代表するバンドであるということに納得させられる風格と力強さは感じました。

彼らがデビューした80年代にはどちらかというと「ロック界の異端児」的なポジションだったと思うのですが、いつの間にかこうして「ロック界の代表」になっているのですから、世の中どう変わっていくかわかりませんね。

個人的には、正直それほどメロディが(歌謡曲的という意味で)良いとは思わないし、パッと聴きのラウドさ、ヘヴィさではHR/HMやパンクのようなわかりやすい派手さもなく、さらに楽器初心者がコピーするにはちょっと難しすぎるという意味でとっつきやすいバンドではないと思っています。

ただ、それでも彼らの持っている「特別な何か」がちゃんと世の中に理解されたのは、もちろんバンドとしての実力もさることながら、歌モノ路線にシフトしていくタイミングとか、バンドの歴史に伴うストーリー、あと単純にバンド名にインパクトがあって覚えやすいこととか、色々な理由が複合的にあったから、なのでしょう。


ヘッドライナーが終わっても朝までライブが続く(一部ステージ)のがフジロック。レッチリが終わっても大半のオーディエンスがそのままGREEN STAGEに残っている。

私も深夜バスの発車時刻までまだ時間があるので、そのままGREEN STAGEに残ってSPECIAL GUESTである電気グルーヴを待つ。もちろんこの時もHelinoxのチェアは大活躍だ。てかもう黙って立っているのが体力的につらい。

電気グルーヴなんてメタルどころかロックですらないじゃないか、と言われそうですが、個人的にはテクノとかEDMとかも嫌いじゃないです。家ではあまり聴きませんが、クラブとか然るべきシチュエーションで聴けば盛り上がります。

そもそも「気持ちのいいフレーズ(HR/HMで言えばギター・リフ)の反復が生み出す快感」という点でHR/HMとテクノは共通点があるんですよ(ホントかよ)。

クラブではなく屋外でテクノを聴くのは実は初めてで、それがちょっと楽しみなポイントでした。

さらに電気グルーヴについては、昨年末に公開された彼らのドキュメンタリー映画『DENKI GROOVE THE MOVIE ?-石野卓球とピエール瀧-』を観てしまうくらいに関心があったのです。

そして実際、日曜の深夜に聴くテクノというのはなんだかむやみな高揚感と多幸感があって、年甲斐もなく踊り狂ってました。

ステージバックの映像には「終電が終わったので、もう踊るしかありません」というメッセージが映し出されましたが、しかし私には深夜バスがあるのです。

年齢相応の分別があるので、深夜バスの集合時間に遅れないようにアンコールは切って深夜バス乗り場に向かう。しかし後でアンコールは「Shangri-La」に「虹」という超名曲だったと聴いて最後まで聴いていけばよかったと大後悔。実際深夜バス乗り場で行列に並んでいた時間を考えるとラストまで聴いても充分間に合った気がするだけになおさら。

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そして深夜バス乗り場では、新宿行きとそれ以外(東京駅、羽田空港、横浜、船橋、池袋、さいたま新都心)に分かれて並ばされる。なんて大ざっぱな分け方だと呆れましたが、実際それで2つの列が同じくらいの長さなので、いかに新宿が最大公約数的に使用されているかということを実感させられました。「それぞれ帰り先が違うメンバーのグループが、あえてひとつのゴールを選ぶならそれは新宿」という感じなのだろうと思います。神奈川方面、千葉方面、埼玉方面にそれぞれ一本で出られる電車がありますからね。

夜行バスなんて学生時代にはスキーなどでよく利用していましたが、社会人になってからはほとんど乗る機会がなく、15年ぶりくらいでしたが、幸いにして近くにイビキのうるさい人や体臭のキツい人もおらず、ほぼ眠って帰ることができました。

とはいえ所詮4時間ほどのバス旅で熟睡できるはずもなく、帰宅後はシャワーを浴びて泥のように眠り込み、目が覚めたのは夕方になろうかという時間でした(もちろん会社は休みをとっていました)。

フジロック、これはたしかになかなか非日常な空間・体験で、毎年通う人がいるのも頷けます。ただまあ、個人的には苗場プリンスに泊まれないなら1日が体力の限界ですね(苦笑)。でも、このイベントを体験できて良かったです。思わずこんな1万字を超えるレポ(というか日記ですね)を書いてしまうほどに記憶に残したい体験でした。

◆FUJI ROCK FESTIVAL公式サイト
http://www.fujirockfestival.com/

◆FUJI ROCK EXPRESS '16
http://fujirockexpress.net/16/

BLACK EARTH 来日公演 at 東京 渋谷CLUB QUATTRO 2016/5/25

ARCH ENEMYのデビュー・アルバム「BLACK EARTH」リリースから20周年を記念して結成された、オリジナル・シンガーであったヨハン・リーヴァが、当時の(厳密に言えば「BURNING BRIDGES」期の)ARCH ENEMYのメンバーをバックに、自らが在籍していた時期のARCH ENEMYの名曲のみをプレイするプロジェクト、BLACK EARTH。

その来日公演(というか現状日本限定のプロジェクトのようだ)の東京会場がクアトロと聞いて、ARCH ENEMY本体じゃないとはいえ、さすがにそれは小さすぎるんじゃないの、と思っていたら案の定、近年のHR/HM公演にしては珍しい即完だったそうです。

だからせめてO-EASTにしておけばよかったのに、と思っていたら追加公演が組まれたので、足を運んできました。こんなに小さい会場でARCH ENEMY(ではないが)を観るのはかつて原宿アストロホールで観たとき以来だ。

平日の追加公演ながらソールド・アウト。HR/HM系のライブでここまで人口密度を感じたのは久しぶりだ。例によって仕事で開演直前の到着となったため、会場の上手(かみて)側の後方に陣取る。

私がフロアに入場してほどなくしてBGMが、BGMではない音量の「Ace Of Spades」(MOTORHEAD)に切り替わり、それがショウの幕開けを告げるものであることを知っているオーディエンスから歓声が上がる。

ショウはそのタイトルに反して「BLACK EARTH」アルバムに収録されていない「Black Earth」でスタート。彼らのレパートリーの中では比較的地味な部類の曲だと思っているが、このプロジェクト名だけにこの曲でスタートするのは必然性がある。

2曲目に人気曲「The Immortal」がプレイされると、場内に「ヨハン」コールが満ち溢れる。人口密度もさることながら、フロアにいるオーディエンスの熱気も近年のHR/HM系のライブではなかなかお目にかかれないレベルの高さだ。楽曲中のメロディアスなギター・フレーズは(恐らく合唱を想定していないようなものまで)ヲーヲーと合唱しまくり、クラウドサーフが行なわれる頻度も高い(というか、私が最近あまりそういうライブを観に行ってないだけかもしれませんが)。

ヨハン・リーヴァはLOUD PARKで観たときにはやっぱり現在のARCH ENEMYのフロントを張るにはいささかパフォーマンスがB級すぎる、ありていに言えばアンジェラやアリッサに比べてカリスマ性が無さすぎると感じたが、こういう小さいクラブであればそのアングラな存在感がむしろハマる。

なんかアニメに出てくる「悪役側なんだけど、なんか悪役になりきれない愛すべき敵キャラ」みたいな雰囲気のヨハンは、デス・メタルらしい禍々しさを表現しようとしつつもどこか重みに欠けるステージ・パフォーマンスが可愛らしい(?)。

何しろ自分がARCH ENEMYを脱退してからバンドはみるみるビッグになっていっただけに色々と思う所があったと思いますが、こうして再びオーディエンスの熱烈な歓迎を受け、ヨハンは本当に嬉しそう。

あまり上手ではない、しかしそれだけに日本人には聞き取りやすい英語でしゃべってくれるし、「なじみの顔がいるな、お前も、お前も、見覚えがあるぞ!」(きっと全国追っかけている人も多いのでしょう)とフロアをあちこち指差しながらフレンドリーに話しかけてくるあたり、その顔に反し(?)「いい人」感満載です。

ただ、ステージ上で一番アグレッシブに動き回っていたのはシャーリー・ダンジェロ(B)で、まあこれはいつものこと。ガタイがデカいだけに、本日のステージは狭そうです(苦笑)。

私の位置からは(前の人の頭で隠れて)マイケル・アモットはほとんど見えなかったのですが、要はほとんど動かなかったということでしょう。

個人的にはは2曲目からの「The Immortal」、「Dead Inside」、「Pilgrim」という、メロデス史上で5本、いや3本の指に入る名盤と確信している「BURNING BRIDGES」アルバムからの名曲3連発でもはや元が取れたという感じです。

プロジェクトの趣旨からいえば、10曲目からの「BLACK EARTH」アルバム完全再現がこのショウの目玉だったのだろうと思いますが、個人的なハイライトはその直前、「Let The Killing Begin」から「Angelclaw」の流れでした。「Angelclaw」はかつてライブで聴いたときにも(その時のシンガーはアンジェラでしたが)あの疾走パートでゾクゾクしましたが、こうして聴くと改めてライブ映えが半端ない。毎回やってくれればいいのに。

「BLACK EARTH」アルバムのラスト・ナンバー(日本盤ボーナストラックを除く/笑)であり、今夜のショウの本編ラスト・ナンバーである「Fields Of Desolation」のエンディングのギター・ソロ、マイケルとクリスの兄弟が揃ってのツイン・ギターのハモリは圧巻でしたね~。これぞツイン・ギターの醍醐味。全身総毛立ちました。

一旦ステージから下りると、たちまち巻き起こる「BLACK EARTH」コール。その熱気にほだされるかのようにほどなくメンバー再登場。かつてIRON MAIDENのトリビュート・アルバムに提供していた「Aces High」をプレイ。メタル・ファンであれば必ず盛り上がる鉄板の選曲だ。

セカンド「STIGMATA」のリード・トラックであった「Beast Of Man」を挟み、恐らく日本では彼らの楽曲中でもトップクラスに日本人好みな名曲「Silverwing」がプレイされる。

そのデス・メタル離れした爽やかなメロディに包まれ、これでショウが終われば明るい気持ちで帰れるというものですが、彼らは北欧のメロディック・デス・メタル・バンド、笑顔で帰すわけにはいきません(?)。

ショウを締めくくる定番曲のひとつである「Bridges of Destiny」(なんかこの曲のときだけスネアドラムの音が変じゃありませんでした?)、そのエンディングのギター・ソロでたっぷり泣かせて、熱いライブが幕を閉じました。

以下、本日のセットリスト(たぶん今回のツアー共通?)。

1. Black Earth
2. The Immortal
3. Dead Inside
4. Pilgrim
5. Sinister Mephisto
6. Diva Satanica
7. Tears of The Dead
8. Let The Killing Begin
9. Angelclaw
10. Bury Me an Angel
11. Dark Insanity
12. Eureka
13. Idolatress
14. Cosmic Retribution
15. Demoniality
16. Transmigration Macabre
17. Time Capsule
18. Fields Of Desolation

アンコール:
19 Aces High
20 Beast of Man
21 Silverwing
22 Bridges of Destiny

ふとこういう、「オリジナル・シンガーが過去在籍していたバンドのベスト選曲で歌うプロジェクトのライブ」、というコンセプトにデジャヴを感じたわけですが、何のことはない、つい先日観てきたDIRKSCHNEIDERのライブでした(笑)。もっともあちらはヴォーカルだけがオリジナル・メンバーだったわけですが…。

きっかけはやはりLOUD PARK 15での共演だったのでしょうね。あのときのヨハン・リーヴァは本当に嬉しそう&楽しそうでした。「ヨハンのいるARCH ENEMYを観たい」というニーズがビジネスとして成立するほどあって、本人がやりたがっているということであれば、ヨハンとプライベートでは今でも親友だというマイケル・アモットとしてやらない理由はなかったのでしょう。

幸いなことに現在のARCH ENEMYのヴォーカリストは未だ「新入り」で自己主張の発言権が小さいであろうアリッサですし(笑)。

ていうか、現在同時期に行なわれているKAMELOTの来日公演でアリッサも今日本にいるんですよね。自分が所属しているはずのバンドが、違うヴォーカリストを迎えてライブをやっているというのはどんな気分なのでしょうかね。

私は別にヨハン期至上主義者ではなく、アンジェラの時代も、現在のアリッサも好きです。そしてそもそもフロントマンとしてはヨハンよりもアンジェラやアリッサの方がスター性があると考えており、現在のARCH ENEMYの地位はヨハンが歌い続けていたらなかっただろうと思っています。

それでもARCH ENEMYで一番好きなアルバムは、と訊かれたらやはり「BURNING BRIDGES」なわけで、ヨハン時代に特別な思い入れがあることも事実。そして本日のライブはその思い入れに100%応えてくれる素晴らしいライブだったと言えるでしょう。

ただ、私が唯一恐れているのは、未だ発表されないLOUD PARK 16における恒例の「アモット枠」。それがこのBLACK EARTHなのではないかという事態です。何しろ昨年のDRAGONFORCEの例(単独公演が終わった後、LOUD PARKへの出演が発表された)があるだけに…。

CAIN’S OFFERINGも「この機を逃したらもう一生観れないかも!」と意気込んでライブに足を運んだらあっさりLOUD PARKへの出演がアナウンスされてちょっとズコーという感じでしたが、同じことが起こりうる可能性は決して低くないと思っています。

とはいえ、LOUD PARKであればここまで充実したセットリストを堪能することはなかったであろうし、ヨハンが輝くのは小さいハコだと思われるだけに、ここで観ておいて良かった、と自分に言い聞かせている今現在です(笑)。

それでは2年後、「STIGMATA」というプロジェクトでまた会いましょう(笑)。

DIRKSCHNEIDER来日公演 at 品川ステラボール 2016.5.13

ACCEPTのオリジナル・シンガーであるウド・ダークシュナイダーは、ACCEPT脱退後は(再結成していた時期を除いて)自己のバンドであるU.D.Oで活動しており、少なくとも本国ドイツを中心とした欧州ではそれなりに順調に活動している。

そのウドがDIRKSCHNEIDER名義(メンバーは現在のU.D.Oと同じ)で来日しACCEPT時代の楽曲のみをプレイするライブをやると聞き、これは行かねばと思いました。

しかも、ウドがACCEPT時代の曲を歌うのはこのDIRKSCHNEIDER名義のツアーが最後になるとのこと。

個人的にはACCEPTの名曲が聴けるなら、という思いだけでU.D.Oを観たいと思う人だって結構な数いると思うし、これから新曲を1曲も出さなくてもACCEPTの曲だけ歌って食べていけるんじゃないの、という気がするだけに、完全引退するならともかく、ACCEPTの楽曲を「封印」する意味がわかりませんが、本人としては思う所があったのでしょう。

私はLOUD PARKに2006年の初開催から皆勤賞で参加しており、数々の名バンドのライブを観ることができたわけですが、LOUD PARK史上で最も感動したライブは2010年のACCEPTでした。

そのためその後の来日公演も欠かさず馳せ参じているわけですが、それだけに現在のACCEPTはあまりプレイしないような曲も聴けそうだという期待があり、平日、しかも職場からのアクセスはあまりよくない品川へと駆けつけました。

実際の所、職場を出るのがギリギリになったためタクシーに乗ってみたら、週末の夜だけに道が激混み、仕方がないので途中のJRの駅で降ろしてもらって電車に乗ろうとしてみたら車内に急病人発生とかで電車がストップ、やべー間に合わねーと焦りましたが、なんとか照明が落ちるのと同時に場内に入ることができました。

ギリギリに入った私で700番台前半。ステラボールのキャパは1,800人だからかなり寂しい客入り(予想はしていましたが…)。左右のスペースをグッと絞ってスカスカ感が出ないようにしていましたね。

1曲目は「BREAKER」収録の「Starlight」。本サイトのレビューにも書きましたが、私がACCEPTに初めて触れた思い出深い曲で、個人的な思い出を抜きにしても切れ味鋭いギター・リフと緊張感溢れる中間部、華麗なツイン・リードのギター・ソロが印象的な名曲だ。この曲を聴きたいがためにタクシーに乗ってまで遅刻を避けようとしたと言っても過言ではない(この曲がオープニングであることは事前に知っていた)。

この曲はウドの持ち味であるヒステリックなシャウト・ヴォーカルが特にインパクト強くフィーチュアされている曲で、正直マーク・トーニロをフロントに迎えた再結成ACCEPTのライブで一番違和感を覚えたのがこの曲だったのだが、さすがは本家、キーは下がっているものの、その歌声に違和感はない。

ただ、逆にそのサウンドにはちょっと違和感を覚えた。かつて同じ会場でACCEPTを観ているが、その時のサウンドはソリッドに引き締まった極上のものだったが、それに比べるといささか軽さがある(一般的な水準を下回っているわけではない)。

パフォーマンスも、本家ACCEPT同様、弦楽器隊が並んで同時にネックを上げたりというフォーメーションを頻繁に行っているが、ちょっとラフな感じが否めない。本家ACCEPTが「ドイツ正規軍」的な規律を感じさせるのに対し、「傭兵部隊」のような印象だ(もっともロックはキッチリしているよりもラフなくらいのほうがいい、という価値観もあると思うので、その辺は好みの問題か)。

もちろん傭兵部隊とはいっても、欧州では確固たる地位を築いているU.D.Oのレギュラー・メンバーたち、技術的な水準は高い。ロシア人ギタリスト、アンドレイ・スミルノフとフィンランド人ギタリスト、カスペリ・ヘイッキネンの繰り出すシュレッドはオリジナル以上だ。

ただ、弦楽器隊に比べるとドラムの技術レベルがちょっと甘いかな…と思ってライブ後に調べてみたら、現在のドラマーってウドの息子さんなんですね。縁故採用とあっては仕方ない(?)。てか父親とバンドやるってどういう気分なんでしょう。

しかしやはり本日のライブは選曲に尽きるでしょう。以下、本日のセットリスト。

1. Starlight
2. Living for Tonite
3. Flash Rockin' Man
4. London Leatherboys
5. Midnight Mover
6. Breaker
7. Head Over Heels
8. Princess of the Dawn
9. Winterdreams
10. Restless and Wild
11. Son of a Bitch
12. Up to the Limit
13. Wrong Is Right
14. Midnight Highway
15. Screaming for a Love Bite
16. Monsterman
17. T.V. War
18. Losers and Winners
アンコール:
19. Metal Heart
20. I'm a Rebel
21. Fast as a Shark
22. Balls to the Wall
23. Burning

80年代ACCEPTの名曲が目白押し。現在のACCEPTがプレイしないような曲をたくさん聴くことができ、恐らく私よりもACCEPTに対する思い入れと思い出が深いような80年代リアルタイム組の方々にとってたまらなかったことでしょう。

もう「Breaker」あたりで、あまりにカッコよくて泣けてくる、という謎の事態に。マジで涙がこみあげ、うっかりすると嗚咽さえしてしまいそうでした。メタルという音楽に出会えてよかった、普通の人はこのカッコよさ、興奮、高揚感を知らずに死んでいくなんて、なんて気の毒な、という思いで胸がいっぱいでした。

しかし「Princess of the Dawn」は何度聴いてもマジックがありますね。シンプルなリフが淡々と繰り返されるだけ(だけってことはないが)なのに不思議な迫力がある。このリフ、このリズムに乗せて重装歩兵部隊が進軍してきたら威圧感あるだろうな、みたいな妙な妄想を掻き立てられました。

ウドのヴォーカル・スタイルもあってAC/DCに例えられることも多いACCEPTですが、決定的に違うのは、徹底的にシンプルなAC/DCに対して、ツイン・リードやコーラス、リフ展開などの「仕掛けの多さ」と、メタリックな中に滲む哀愁ですね。これが絶妙なフックとなり、ライブの盛り上げどころになっています(AC/DCにフックがないというわけではない)。

「Winterdreams」のような哀愁のバラードや、「Screaming for a Love Bite」のような80年代的なキャッチーさを備えた曲もまた上手いもので、やはりソングライティングのセンスがずば抜けていたのだと思います。

特殊な歌唱スタイルゆえにウドが歌うヴォーカル・ラインを普通の人が歌うのは難しいわけですが、その分低音コーラス・パートが実に歌いやすくできているのがACCEPTの楽曲の秀逸なところで、気分はすっかりACCEPTをサポートする合唱隊です。残念ながらあそこまで迫力のある低音は出せないのですが(苦笑)。

そういう意味で、本日のバンドのコーラスは本家に比べると威厳不足だったのは否めませんが、そこはオーディエンスが支えるべき所でしょう(笑)。「Restless And Wild」のあのサビとか、「Losers And Winners」のブリッジの掛け合いとかやっぱ燃えますね。

あえて特筆するなら初めてライブで聴いた「T.V. War」のスピード・メタルとしての完成度の高さで、思わず首ももげよとばかりにヘドバンに打ち込んでしまいました。

アンコールは「Metal Heart」、「Fast As A Shark」、「Balls To The Wall」という、どれか1曲でも書けたらメタル史に名を残せるであろう超名曲ラッシュですから満足しないはずがありません。

「Balls To The Wall」の演奏前に、「この曲を東京でプレイするのもこれが最後だ」としんみりさせておきつつ、実際のラストは彼らのレパートリーの中で最もノリノリなメタル・ロケンロー・チューン「Burning」で締めたというのも、変に湿っぽくならずによかった気がします。

全23曲をほぼピッタリ2時間でプレイしたわけですが、その辺のタイムコントロールもベテランならではでしたね。オーディエンスに歌わせるのも、ギタリストとのアドリブっぽいやりとりも含め全てちゃんと計算されていたのだと思います。MCも「ロック・ライブの定型句」みたいなわかりやすくシンプルなものばかりなのも日本人にはありがたかったですね(笑)。

ウドはもともとドイツ人としては珍しいほど低身長で、しかも歳を重ねてちょっとずんぐりと丸くなっているので遠目にはマトリョーシカのようで可愛らしい(笑)。動きも64歳という年齢相応に緩慢でしたが、そのフロントマンぶりは想像以上に貫禄あふれるもので、さすがかつてドイツを代表するメタル・バンドのヴォーカリストを務めていただけあるな、と今更感心しました。

というのも、実はウド・ダークシュナイダーという人に関しては、その歌声がメタルという音楽に限って言えば強力な武器となる個性ながら、一般的な感覚では耳障りな歌声だし、ルックスもおよそロック・スターのイメージとはほど遠いだけに「なんでこの人がそもそもヴォーカリストになろうと思ったんだろ?」という大変失礼な思いを抱いていたくらいだったからです。

しかし64歳になってなお、(キーは下げているとはいえ)この歌唱スタイルで2時間に渡るショウをやりきることができるという点についてはリスペクトしかありませんね。

あらためてACCEPTの楽曲の素晴らしさと、ACCEPT以外のバンドがそれをプレイすることを聴いたことで、いかにACCEPTというバンドのサウンドが特別であるかということを思い知らされた一夜でした。

ACCEPTが国際的な知名度を得た1984年くらいを境に、いわゆる「正統派メタル」といわれるヘヴィ・メタルのスタイルは下火になり、スラッシュ・メタルやデス・メタル、PANTERAに代表されるグルーヴ・メタルといった新しいスタイルが台頭してきたわけですが、思うにそれは「正統派」と言われるようなスタイルでACCEPTを超えることは不可能なのでそうせざるをえなかったということなのではないか…などという説が私の中で思い浮かぶほど、素晴らしい楽曲、素晴らしいリフが満載のライブでした。大満足です。

◆3/16 アテネ公演の「Fast As A Shark」

何度聞いてもアドレナリンが暴走するのを抑えられません。

◆名古屋公演のドラムカメラ映像

ウドの息子であるスヴェン君がアップしていました。やはり親父さんに似てますね。