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BURRN! ONLINEがリニューアル

一昨年にローンチしたものの、今一つ『BURRN!』とは無関係な感じだった『BURRN! ONLINE』が、去る6月9日にリニューアルしました。「ロックの日」に合わせたのでしょうか。

これまでの『BURRN! ONLINE』は運営会社も『BURRN!』誌の発行元であるシンコーミュージックではなく、『BURRN!』編集部の方の関与も少なそうで、妙にニッチな情報ばかりを扱うサイトでした。

しかし、このリニューアルで運営会社がシンコーミュージックとなり、元『BURRN!』編集部の藤木昌生氏が編集責任者を務めるということで、だいぶ『BURRN!』色が感じられるようになりました。

藤木氏、先日しれっと編集部を去っていたので(まあこの人はかつても一度編集部を離れたことがありますが)、ついに偏屈な人柄が災いして寂しい部署に異動か…と思っていましたが、ONLINEを任されることになったわけですね。

▼しかししょっぱなから自分の媒体名を誤植してますが、大丈夫ですかね…(苦笑)。
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従来の『BURRN! ONLINE』は、とにかく内容的に『BURRN!』本誌と重複しないことを意識していたと思います。「ONLINEがあるから雑誌は読まなくていいや」という人が一人も出てはいけない、と(雑誌の編集部側が)考えていたのだと思います。老人ばかりの編集部が考えそうなことですね。

しかしそんな、本誌が扱っている日本におけるメインストリームなHR/HM情報を丸々避けた形で集客力のある媒体が作れるはずもなく、『BURRN! ONLINE』はただの一部国産アーティストと辺境メタルの情報ばかりが載るニッチ媒体と化していました。

私はずっと雑誌を購読してきた世代なのであまりリアルに想像できませんが、もし今の若い人が「『BURRN!』って面白いのかな? とはいえ紙の雑誌なんて買いたくないし立ち読みしようにも近所に本屋もないし、ネットでチェックしてみるか」という風に興味を持ってくれたとしても、『BURRN! ONLINE』だけ見て「ああ、『BURRN!』って超マニアックなんだな、俺には関係ないや」と、機会損失につながっていたかもしれません。

そういう意味で、多少なりとも本誌と連動感のある形にリニューアルされたことは良いことなのではないかと思いますが、とはいえこの新生『BURRN! ONLINE』には致命的な弱さがあります。

それは、『BURRN!』誌の唯一と言ってもいいキラー・コンテンツである新譜レビューがないことです。これがない限り、『BURRN! ONLINE』が大きく化けることはないでしょう。

とはいえ、それこそ『BURRN!』誌の編集部にとっては「それをWebに載せちゃったら、雑誌買ってくれる人がいなくなるでしょ」という意識なのだと思います。「レビューは載せない」ことが『BURRN! ONLINE』リニューアルにおける編集部の「譲れない線」だったのではないでしょうか。

実際、レビューがWebで読めるなら、もう雑誌は買わない、読まない、という人が一定数出てくることは想像に難くありませんが…。

以前、『BURRN! ONLINE』がオープンした時にもこのブログに書きましたが、『BURRN!』誌の価値というのはほぼ全てのHR/HM国内盤がレビューされ、国内で行なわれる来日公演のほぼ全てがレポートされ、国内盤がリリースされるアーティストの大半のインタビューを取ることができるという「網羅性」にあるので、それが満たされないのであれば『BURRN! ONLINE』が『BURRN!』を求める読者を満足させることはできないと思われます。

個人的には、レビューまではいらないから、国内盤がリリースされるアルバムのリリース情報だけでも掲載してくれれば、そこだけでもチェックするようになると思うんですけどね。

意外とHR/HM国内盤の新譜情報を網羅的に見やすくまとめているサイトって他にないので。

CDショップのサイトとかだと、再発とか輸入盤と渾然一体になって、国内盤が出る新譜がどれなのかわかりづらいですし。

あとこれも以前書きましたが、有料コンテンツになってもいいので、『BURRN!』創刊号以来の全レビューと全ライブレポート、全インタビュー記事をWEBアーカイブ化してくれると、このサイトの価値は一気高まると思います。会員登録も相当されるんじゃないでしょうか。

ちなみに個人的には以前の『BURRN! ONLINE』に掲載されていた東南アジアやインドの辺境メタル情報は結構面白いと思っていたので、そのアーカイブが削除されてしまったのがちょっと残念です(笑)。

BURRN! ONLINE

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『BURRN!』21年7月号の感想

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表紙はウルフギャング・ヴァン・ヘイレン。

エディ・ヴァン・ヘイレンの息子だ。それは知ってる。VAN HALENの最後の来日公演で姿も見ている。というか表紙に映るその姿はたぶんその時のツアーのものだ。

ただ、彼はソロ・アーティストではない。MAMMOTH WVHというバンド名義で活動している。それは実質的に彼のソロ・プロジェクトではあるが、ウルフギャング・ヴァン・ヘイレン名義では活動していない。

たしかにMAMMOTH WVHは今月デビュー・アルバムがリリースされますが、あくまで「ウルフギャング・ヴァン・ヘイレン」としての表紙&巻頭インタビューになっている、というちょっと奇妙な状態。

先日、聖飢魔IIが表紙になった時点で、相当表紙ネタに困っていることは想像に難くない。音楽的にはHR/HMとは言い難いBLACKMORE'S NIGHTや、HR/HMではなくR&B/ソウルのソロ・アルバムを出したポール・スタンレーが表紙になってしまったのも、「他に表紙にできるアーティストがいなかった」ということなのだと思います。

その結果が、ウルフギャング・ヴァン・ヘイレンが表紙、といいつつ、エディ・ヴァン・ヘイレンが同じサイズでしっかり映っていて、このブログ・エントリーのサムネイルのサイズにしたらもはや「VAN HALEN」としか読めないサイズでしか「WOLFGANG」という彼の名前が記載されていない詐欺というか「釣り」みたいな表紙になっているのでしょう。

恐らくこれまでBULLET FOR MY VALNETINEとかDRAGONFORCEみたいな(相対的に)若いバンドを表紙にした号の売れ行きがよくなかったのでしょうね。恐らくこの編集部というか出版社の中では『BURRN!』は70年代~80年代の大物アーティストを表紙にしないと売れない、という「結論」が出ているに違いありません。

そして実際のところ、雑誌のような紙媒体にお金を出すのは70年代、80年代のバンドをある程度リアルタイムに実体験した世代(40代以上でしょうね)に限られているというのが現実なのかもしれません。

今月は絶対にHELLOWEENが表紙だろうと思っていたのですが、どうやらHELLOWEENは来月のようです。それは恐らくHELLOWEENに取材ができないとかそういうアーティスト側の事情ではなく、6月にHELLOWEENを表紙にしてしまったら7月以降の表紙ローテーションが回らない、とかそういう編集部都合なのではないかと邪推します。

来月のHELLOWEEN特集は広瀬編集長いわく「ビックリするほどの大ボリューム」だそうですが、レコード会社としては発売前のこの号のタイミングで盛り上げてほしかったはずで、それを上記の「編集部事情」でアルバム発売後になってしまう来月に先送りするバーターが「ビックリするほどの大ボリュームの特集」と、今月号に掲載されているHELLOWEENのクロス・レビューにおける「99点」という、この雑誌における実質最高点なのではないでしょうか。

広瀬編集長が熱心なHELLOWEENファンではないことは長年読んでいる人なら皆わかっているでしょうし(もちろんどちらかと言えば好き、くらいには評価していると思いますが)、「せっかくだから完全版2枚組をお勧めする」なんて締めの文言もレコード会社に阿っているようにしか見えません(苦笑)。

なんだかこの号の感想というよりも「BURRN!の表紙問題」みたいな文章になってしまったので一応内容にも触れておくと、ウルフギャング・ヴァン・ヘイレンに絡めて特集された「HR/HMシーンの二世達」という特集は、「最近よく見るなと思っていたけど、こんなにいたのか」ということを確認させてくれるという意味で興味深かったです。

ハワード・ジョンソン氏の「TALES FROM THE FRONTLINE」に書かれた70年代ロック・スターたちの貴族趣味の話も時代を感じさせて興味深いですね。最後の世代がIRON MAIDENということでだいぶ昔の話という感じですが。

せっかく表紙になって巻頭インタビューもされているのに、「現在の写真」はほとんど使われず、この号ではアルバムレビューもされていないウルフギャング・ヴァン・ヘイレンはある意味気の毒なので、MAMMOTH WVHのMVを貼っておきます。

本人としてはどうなんでしょうね。たぶん彼を表紙にしようという雑誌なんて世界中探しても他にないと思うので(?)、喜んでいるのでしょうか…。


ちょっと太りすぎですね…。




『BURRN!』21年3月号の感想

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『BURRN!』が聖飢魔IIを表紙にする。そんな日が来るなんて誰が予想したでしょうか。

もっとも、聖飢魔IIのこともよく知らないような若い方にとっては何のことやら、という感じでしょうが、そもそもそんな若い方は『BURRN!』のことさえよく知らない、というのが2021年の現状かもしれません(苦笑)。

『BURRN!』というのは初期(創刊から最初の10年くらいですかね)は割と物議を醸すレビューを掲載する雑誌で、レコード会社のディレクターたちにめんどくさがられていたそうですが、最も有名なレビューのひとつが、この聖飢魔IIのデビュー・アルバムに対する当時の編集長、酒井康氏の「0点」という評価でした。

「0点」という評価の理由は、そのメタルのイメージをカリカチュアライズしたかのようなバンド・コンセプトがヘヴィ・メタルの冒涜に当たるから、という話もありつつ、実際の所は当時の聖飢魔IIのスタッフが酒井氏の逆鱗に触れるような失礼な行ないをしたことが一番の原因だったようです。

いずれにせよ、当時『BURRN!』は日本のメタル・ファンのバイブルであり、そのレビューを鵜呑みにしたピュアな読者は聖飢魔IIをキワモノ扱いし、一方で聖飢魔IIはメジャー・シーンで紅白歌合戦に出場するほどの人気バンドとなり、そのことで逆に「硬派なメタル・ファン」=『BURRN!』誌の読者からは嫌われるという構図が出来上がっていました。

とはいえ、私のように90年代に入ってから『BURRN!』を読み始めたような人間にとっては完全に昔話、「そういうことがあった」という話は知っていても、実際に聴いてみた聖飢魔IIの音楽は控えめに言っても高品質なヘヴィ・メタルで、好きになる理由はあれど、嫌いになる理由は見当たらず、『BURRN!』とは一切関係なくファンになりました(信者というほどのテンションではありませんでしたが…)。

この聖飢魔IIを表紙にする「前フリ」として、昨年末に広瀬編集長が聖飢魔IIの広島公演に登場し、正式に「0点」事件の謝罪をしたというニュースがネット上で報じられていました。

そして実際、こうして表紙を飾り、巻頭および巻末に及ぶ大特集となったわけですが。なぜこのタイミングだったのか、と考えると、この雑誌は基本、日本である程度の売上実績のあるアーティストを、ニュー・アルバムを出す、もしくは来日公演を行なうタイミングで表紙にすることでこれまで回してきたわけだが、いよいよそういうバンドのアルバム・リリースのペースが落ち、さらにこのコロナ禍で来日公演も行われなくなった結果「表紙にできるネタがなくなった」ための苦肉の策だったのではないかと思われます。

そのことは今月号のレビューで、クロスレビューされているアーティストがひとつもないことで裏付けられているといえるでしょう(当然ながらライブ・レポートも皆無ですし)。

皮肉にも、ほぼ同じタイミングでアレキシ・ライホ(元CHILDREN OF BODOM)が亡くなったことで、実際には聖飢魔IIと和解せずとも表紙に起用できるアーティストが出てきてしまったというのは、同誌にとっては色々な意味で残念な事実に違いない。

聖飢魔IIの大特集は全構成員(メンバー)がキャリアを総括するようなインタビューに答えており、今だからこそ言えるような話なども語られているので、信者(ファン)にとってはなかなか興味深い話かと思われます。

『THE OUTER MISSION』(1988)がほぼ全ての構成員にとってキャリアを代表する重要な作品として捉えられており、それ以外で印象に残っている作品として複数の構成員が『PONK!』(1994)や『NEWS』(1997)を挙げている点は、作り手側と聴き手側の意識の違いを端的に示す事実だなと思いました。

「1999年に解散する」ということがあらかじめ決められていたことに対する各構成員の意識の違いもなかなか興味深く、こういう意識や温度感の違いがバンド活動の難しさで、バンドによってはそれ自体が解散や分裂の原因になるんだろうな、などと思ったり。

そして実質もう一つの特集と言えるアレキシ・ライホの追悼特集もなかなか興味深い内容で、特に彼らのことを初期から知るフィンランド人ジャーナリスト、ティモ・イソアホ氏が語るCHILDREN OF BODOMのバンド・ヒストリーは、かなり裏事情的なことも語られていて、ファンであれば必読の内容になっています。

ただ、私が体験した名古屋公演のキャンセル事件について、"HATE CREW DEATHROLL"のツアーだったのに"FOLLOW THE REAPER"のツアーのこととして書かれていたりするので、内容的な信憑性についてはやや疑問があったりもするのですが(苦笑)。

日本盤がトイズファクトリーからリリースされていた、CHILDREN OF BODOMの初期の担当者である宮本哲行氏(現トゥルーパー・エンターテインメント代表)が語る初期のアレキシの素顔もなかなか興味深い話で、若いころのアレキシに「ワイルドチャイルド」という異名(自称)がイメージさせるようなロックンローラー的な印象はなく、酒の飲み方も普通で、純朴な北欧のメタル・ミュージシャンという感じだったという話はやや意外でした。

まあ、冷静に考えればロックンローラー気質な人があの若さであんなにギターが上手くなるはずもないのですが。

そしてイギリスやスウェーデンのミュージシャンは情に厚い人が多いが、アメリカやフィンランドのミュージシャンはビジネスライクな傾向、という話も個人的にはどの国の人とも交流の機会がないので関係ない話ながら、国民性に関する豆知識だなと思いました。

この聖飢魔IIとアレキシ追悼の2大特集の陰に隠れてしまった観はあるが、平野和祥氏による「ブルーズ・ロックのすすめ」なる企画も、ちょっと「お勉強」感は漂うものの、なかなか読み応えがあり、そういう意味で本号は近年の同誌の中ではかなり読み応えのある内容ではなかったかと思います。

もっとも、聖飢魔IIにもアレキシにも関心のない人にとっては「読む所がない」のかもしれませんし、Amazonのレビューを見ると絵に描いたような賛否両論になっていて、未だに『BURRN!』に「洋楽雑誌」であることを求めている、ある意味ピュアな人が現存しているんだな、とちょっと感銘を受けました(笑)。

蛇足ながら個人的に、この号に掲載されていたインタビューで印象に残ったのはTHERIONのクリストフェル・ユンソンの言葉で、「俺はもうヘヴィ・メタルの範疇に“オリジナリティ”があるとは信じていない。実際のところ、この10年か15年を振り返ってみても、音楽ジャンルとしてのヘヴィ・メタルが大きな進化を続けているとは思わない。(中略)メタル・シーン全体は停滞しているし、殆どのバンドは使い古したトリックを繰り返しているだけだ」という意見は、この『BURRN!』がこういう内容になっている理由を端的に表す、この号における隠れたハイライトなのではないかと思います。

そして「1990年代にはTHERIONはシンフォニック・ヘヴィ・メタルの革新者とみなされていたけれど、最近の俺たちはシンフォニックなメタルをプレイするバンドのひとつでしかない。(中略)だから最近は、自分たちだけのスタイルを磨いて完璧なものにする時期だと考え始めている。25年、30年と修練を積んだんだから」という発言は、アーティストというもののキャリアや存在感のあり方に関する、キャリアを切り開いてきた人ならではの含蓄のあるものだと思いましたし、これはアーティストだけに限らない、自分の人生についても考えさせられる話だと思いました。

長くなってしまいましたが、やはりこのブログとしてこの号については触れないわけにいきませんでした(笑)。

『BURRN!』19年6月号の感想

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先日、Twitterをチェックしていたら「トレンドワード」(多くの人が話題にしているワード)に「BURRN!」というワードが上がってきました。

かれこれ10年近くTwitterやっていてこんなことは初めてです。

『BURRN!』も公式Twitterアカウントを持っていますが、まあ有効活用されているとは言い難いですし(編集部員の趣味を垂れ流すのは公式アカウントのオフィシャル感を損なうだけなのでマジでやめたほうがいいと思います)、「めたるったー」なる読者投稿企画も、一部の常連読者の承認欲求を満たすためだけに機能している印象しかありません。

てか、Web上に投稿されたテキストをわざわざ印刷物に起こすって、生産性ゼロどころかマイナスじゃないですか?

一部の役所とか古い企業では、Excelで表組みだけ作って、中に入れる数字は電卓で手計算して入力する、みたいなスーパー非効率な仕事をしているというホラーみたいな都市伝説を聞いたことがありますが、それに近いものを感じます。

話が逸れましたが、そんな『BURRN!』がTwitterのトレンドに上がるなんて「すわ、これはついに休刊か」と思ってタップしてみたら、なんのことはない(?)、B'zが表紙になります、というだけの話でした。

元々は洋楽誌というカテゴリーだった『BURRN!』ですが、『BURRN! JAPAN』が復活してからも普通に日本のバンドは載っているし、LOUDNESSにANTHEMと、日本人が表紙になる「布石」は着々と打っていたわけで。

それでもトレンドに上がってきたのは、単純にB'zファンが表紙になることに反応している(最近はB'zが表紙を飾れるようなJ-POP雑誌ってあまりないですからね。『WHATS' IN』とか『CDでーた』とかがご存命の時であればいざ知らず)のと、恐らくオールド・ファンや、狭量なメタル・ヘッズによるものと思われる『BURRN!』が彼らを表紙にすることに対するネガティブな意見がそれなりに盛り上がっていたからですね。

まあ、この雑誌の売上が低下していることは皆薄々感じているであろうこの状況でB'zを表紙にするというのは販売部数の減少に耐えかねてJ-POPアーティストの軍門に下って靴を舐めた、という風に映るであろうことは想像に難くなく、「この雑誌も終わった」と感じる人もいるだろうとは私も思いました。

特にB'zと言えば、批判的な人からは常にHR/HMアーティストの楽曲のパクリがあげつらわれる、「いわくつき」の存在だけに尚更。

私は彼らはパクっているわけではなく、オマージュであるという意見の持ち主であり、そのことはかつてこのブログでも書いたことがあります。

とはいえ、この雑誌を未だに買い続けているような熱心なHR/HMファンにとってB'z、ひいてはJ-POPというのは否定すべき存在であろうことは言うまでもなく(?)、この表紙によってそういうコア読者からの支持を失ってしまうのではないかという危惧が生まれたとしてもおかしくありません。

まして今でもこの雑誌を買い支えている人というのは、どちらかというとそういう「メタル純血主義」みたいな意識の強い人たちなのではないかと思われ、そういう読者に配慮してきたからこそ、この雑誌は保守的な誌面作りをしてきたのではないかと思っています。

それが、これまで一度も掲載したことのないB'zをいきなり表紙にする、というのはかなりの勇断。

これは、令和という新しい時代を迎えるに当たって、ついに編集方針を変更したのか、誌面刷新かと、ちょっと期待して買って読んでみました。

しかし、結果論から言うと、全体としては何も変わっていませんでした。ただ巻頭にB'zのインタビューがあるというだけ。

そのインタビューも、特にB'zのお二人が持っているであろうHR/HMなルーツの話に触れることもなく、新譜と今後のライブに関する当たり障りのないやり取りだけ。まあ、もしかするとそれ以外の話題に触れることはNG、みたいな条件でのインタビューだったのかもしれませんが。

インタビュアーは広瀬編集長ですが、B'zの旧譜を全然聴いていなくても(実際大して聴いていないと思いますが)できるような質問・話しかしておらず、恐らくB'zのファンにとっては物足りない、薄味な内容だったのではないかと思います。

インタビューの後に、メタル・ファンにオススメなB'zのアルバムや楽曲の紹介、音楽面におけるB'zとHR/HMの接点、みたいな記事でも付いていればまだしも、そういった工夫もなく。

B'zのインタビューの後に、彼らのファンにもなじみが深いであろうAEROSMITHのラスヴェガス公演のライブ・レポートという、特に今掲載する必然性のない記事を持ってきていることが言ってみれば「配慮」なのかもしれません。

せめて今回うっかり買ってしまうだろうB'zのファンの興味を引くような特集でも組んでいるならまだしも、特集はこの雑誌の35周年カウントダウン企画「編集長が語るBURRN!の35年間」って、もはや私くらいの年齢の読者の感覚的にはつい先日まで30周年企画を2年くらいに渡ってやってましたよね…? というウンザリ感に満ちたもの。

てか、編集長の思い出話なんて企画でもなんでもない代物が「特集」扱いって、作り手として色々と終わり過ぎなのでは…。

もし、B'zが表紙になったことに憤っているこの雑誌のコア読者(80年代組)の人たちを慮ってこういう懐古的な文章を特集にしたのだとしたら、他にできることがあったんじゃないかと思います。

こういういつもとは違う読者の獲得ができそうな表紙のタイミングでクロスレビューのトップにPOSSESSEDという、過去最高レベルにマイナーなバンドをピックアップしているあたりも、「攻めの姿勢」というよりは、天邪鬼にしか見えないのがこの雑誌の人徳のなさですね。

肝心のB'zはレビューしない、というのはアーティスト側の意向なのか、編集部の意向なのか。

実際、今月めぼしいアーティストのリリースがなく、過去最高級にネタがなかったためにこういう表紙になったのかもしれません。

個人的にはせっかく『Download Festival Japan』のレポートが載っているんだから、SLAYERにしておけばよかったんじゃないのという気もしますが、断られたのでしょうか(さすがにJUDAS PRIESTは2月号で表紙になったばかりなのでインターバル短すぎですし…)。

以前、編集長だったかそれ以外の編集部の誰だったか忘れましたが「読者からなぜ日本のこのバンドを『BURRN!』は扱わないんだ、という問い合わせをもらうことがあるが、バンドや事務所側から『BURRN!』では扱わないでくれ」と言われていることも多い」というような話をしていた記憶があります。

「ハードな音、ヘヴィな音は出しているがバンドのイメージとして古臭いHR/HMだと思われたくない」というアーティストもいるでしょうから、それは理解できなくもないですが、もしかするとB'zもかつてはそういうスタンスだったのかもしれません。

今この雑誌の大広告主である某レコード会社の社長はB'zとゆかりの深い人なので、その人が仲立ちをすることで今回の表紙とインタビューが実現したのかな、などと勝手に妄想していますが、これは結局誰が得したんだろう…という感じです。

近年とみにこの雑誌の表紙がベテランばかりなのは、結局CHILDREN OF BODOMやDRAGONFORCEを表紙にした号は売れ行きが悪かったから、ということなのだろうと思いますが、聞く所によると『ボヘミアン・ラプソディ』人気にあやかってQUEENを表紙にした1月号はいつもより売れ行きがよかったらしいので、やはり表紙の間口は広げるべきだ、と思ったのかもしれません。

ただ、この雑誌の場合QUEENやB'zにつられて買った、ジャンルとしてのHR/HMには興味がない人が、そのまま「面白い雑誌だな」と買い続けてくれることが期待できる内容ではないだけに、むしろ半ば惰性で買っている古参の固定読者に「買うのをやめる理由」を作るだけになってしまいそうな気がします。

まあ、もうこれ以上減りようがないだろう、という所まで固定読者も減っているのかもしれませんが。

あんまりクサしていても仕方がないので良かったと思う所にも触れておくと、GHOST、SAVAGE MESSIAH、MYRATH、BATTLE BEAST、HALESTORM、FROZEN CROWNといった比較的新しめの注目バンドはちゃんとカラーで扱っている、という所でしょうかね。

GHOSTなんかはもっと大きく扱ってもいいくらいだったんじゃないかと思いますが。

あと、『2』になってから初めてなんじゃないかというくらい超久しぶりに『ROCKOMANGA!2』でちょっと笑いました。『Download Festival Japan 2019』に行っていない人には笑えないかもしれませんが…(笑)。


▼終わり5年ほど欠けてますが、平成を振り返るのにピッタリな映像ですね。


▼アマゾンのレビューも、星1つと5つが拮抗する絵にかいたような賛否両論で面白い。

BURRN! ONLINEのスタートについて思うこと

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先月、3月の下旬に『BURRN! ONLINE』というサイトが始動しました。

『BURRN!』の公式Twitterアカウントおよび同誌編集者である前田岳彦氏のTwitterアカウントで告知されていたのは3月24日ですが、そもそもこのサイトは完全な新規サイトではなく、"METALLIZATION.JP"という、国内バンドを中心に扱うバンドとして数年前から存在していたサイトが、どういう経緯か『BURRN!』のオンライン版としてリニューアルしたもので、オープンから1ヶ月も経っていないにもかかわらず、それ以前からの記事がサイト内に存在しています(ただ、全てのアーカイブが残っているわけではない模様)。

以下のTwitterのタイムラインログを見ると、やはり3月20日から23日の間くらいにサイト移行が行なわれたようですね。

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『BURRN!』誌については、このインターネット全盛、雑誌冬の時代にオンライン版が存在しなかったことがむしろ不思議で、そのことが『BURRN!』誌の、引いてはメタルの若年層への浸透を妨げていると思っており、同誌と縁の深い某レコード会社の方に「"BURRN!"にWeb版を作ってもらってそこでプロモーションをするべきだ」と進言したこともあるのですが、その方は「うーん、あの雑誌は体質が古いからなあ…」と、難しそうな反応でした。

しかしこうして曲がりなりにも「WEB版」が登場したことは、やはり全盛期の1/3以下に部数が減少し、海外のメタル雑誌である"KERRANG!"にせよ"METAL HAMMER"にせよ、もはやWEB版が主戦場になっているという現実を踏まえての(苦渋の?)決断なのでしょう。

運営会社が『BURRN!』誌の発行元であるシンコーミュージックではなく、記事を書いているのも同誌の編集者ではないという事実は、単純に同誌の編集者にはWEBメディアを運営する余力もノウハウも(あるいは意欲も)ないということを意味していると思われます。

ただ、同誌編集者である前田氏の下記ツイートを見る限り、今後は同誌の編集者たちもこのサイトでライター的に記事を書くことになる模様。




個人的な予測では広瀬編集長が定年になったら雑誌としての『BURRN!』は終焉を迎えるのだろうと思っているので、残された編集者たちはいずれここで記事を書くことをメインにしつつ、ライター的な存在になっていくのかもしれません。

まあ、まだ始まったばかりなのでこのサイトの評価はできないのですが、『BURRN!』誌の価値というのはほぼ全てのHR/HM国内盤がレビューされ、国内で行なわれる来日公演のほぼ全てがレポートされ、国内盤がリリースされるアーティストの大半のインタビューを取ることができるという「網羅性」にあり、このサイトがどこまでそういう情報量を備えることができるかが注目されます。

海外アーティストにも周知されている『BURRN!』のブランド名によって、それこそMETALLICAとかIRON MAIDENクラスのバンドの独自インタビューを取れるようになるとしたら、日本最強のHR/HMメディアになることでしょう。

ただこれが、本誌では掲載できないような趣味的な記事が垂れ流されるだけの場になるようであれば『BURRN!』の名を冠する意味はなく、頼むから「LAメタルの真実」みたいな記事とか嬢メタルのプッシュ記事ばかりが掲載される場にするのはやめてくれ、と願うばかりです。

個人的には、そこは有料コンテンツになってもいいので、『BURRN!』創刊号以来の全レビューと全ライブレポート、全インタビュー記事をWEBアーカイブ化してくれると、このサイトの価値は爆上がりだと思うんですけどね。

そうすると現在大御所になっているアーティストや名盤認定されているアルバムを低評価していたこと(あるいはその逆)があらためて掘り返されて批判を浴びるリスクはありますが、それはそれで話題になるだけ御の字なんじゃないでしょうか。粗探しのために課金させるという、アンチからお金を吸い上げるビジネスモデルができると思います(笑)。

いずれにせよ、日本には「オフィシャル感」のあるHR/HMサイトというのはこれまでほとんど存在しなかったので、そういうサイトがこうして出来上がったことについては素直に喜び、今後に期待していきたいと思います。

BURRN! ONLINE