PATHFINDER / BEYOND THE SPACE, BEYOND THE TIME

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ポーランド出身の6人組シンフォニック・パワー・メタル・バンドのデビュー・アルバム。
ディスクユニオン新宿ヘヴィメタル館で凄い勢いでプッシュされていたので、つい乗せられて買ってしまいました(笑)。

パッと聴きの印象はRHAPSODY OF FIRE+DRAGONFORCEといった感じで、この形容だけ聞くと興味を持つ方も多いかもしれない。

何しろRHAPSODY OF FIREはシンフォニックで大仰なメタルという意味では極北の存在であり、一方DRAGONFORCEはメロディック・スピード・メタルの極北と言っていい存在。その融合はカレーと牛丼を一皿に盛るという荒業に近い。

しかし、所詮カレギュウ(別名あいがけカレー)が単品の牛丼やカレーに及ばないのと同様、彼らのサウンドもRHAPSODY OF FIREやDRAGONFORCEを超えてはいない。

ぶっちゃけシンフォニック・メタルの重厚なドラマ性にDRAGONFORCE的なピロピロ・ギターはちょっと軽薄で、ベスト・マッチとは言い難いのだ。

ハンズィ・キアシュ(BLIND GUARDIAN)とダニエル・ハイメン(元LOST HORIZON)を足して3で割ったような一見パワフル系のVoから時折ヘナチョコな弱さが垣間見えてしまうのと、ドラムがちょっと力不足(プロダクションのイマイチさもその印象を強めてしまっている)なのもB級っぽさを醸し出している観は否めない。

前述したRHAPSODY OF FIREやDRAGONFORCEだけではなく、KAMELOTやらNIGHTWISHやら、どこかで聴いたようなアレンジが頻出するし、女性ソプラノ歌手からブラック・メタル風のデス声まで取り入れ、アルバムトータル80分近い大作にしてしまった辺り「好きなものをとりあえず全部ブッ込んでみました!」的若気の至りを感じるし、個々の楽曲もちょっと未整理で、もう少しコンパクトにした方が作品が引き締まったような気がする。

とはいえ、Keyによる大仰かつシンフォニックなアレンジに彩られたドラマティックなパワー・メタル・サウンドにピロピロと弾きまくりのギターがフィーチュアされ、時に強力な疾走を聴かせる様は多くの好き者を悶絶させること必至で、ディスクユニオンでプッシュしたくなる気持ちもわからないではない。

中心人物であるベースのアルカディウス・E・ルースは元々映画やテレビ、ゲーム音楽などを手掛ける作曲家として活動していたというだけあって、楽曲のクオリティはおしなべて高く、タイトル曲のような10分を超える大作でも飽きさせずに聴かせる力量がある。

東欧というとVADERやBEHEMOTHといったエクストリーム系バンドの知名度が高いが、近年はSYMPHONITYCRYSTAL VIPEREMIR HOTなどメロディック・メタルのファンにも評価されるバンド /アーティストが続々と登場し、マニアの注目を集めている。そしてこのバンドも間違いなく注目株の一つだろう。10年代は東欧が来るかもね。

ちなみに本作にはロベルト・ティランティ(Vo:LABYRINTH)、マティアス・クピアイネン(G:STRATOVARIUS)、ボブ・カティオニス(Key:FIREWIND)などがゲスト参加している。

ディスクユニオンのオリジナル特典CD-Rに収められたマイク・オールドフィールドのヒット曲「Moonlight Shadow」のカヴァーは、そんなに褒められた出来ではないけど、とりあえず彼らが同じ曲をカヴァーしたことがあるSKYLARKより高いポテンシャルを持っていることは充分伝わる仕上がり(笑)。【81点】

◆PATHFINDERのMySpace
http://www.myspace.com/pathfinderband


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IRON MAIDEN 「THE FINAL FRONTIER」のチャート・アクション

IRON MAIDENのニュー・アルバム「THE FINAL FRONTIER」の各国のチャート・アクションは以下の通り。

イギリス:1位
ドイツ:1位
フランス:1位
イタリア:1位
スペイン:1位
ポルトガル:1位
スウェーデン:1位
フィンランド:1位
ノルウェー:1位
デンマーク:1位
スイス:1位
オーストリア:1位
チェコ:1位
ハンガリー:1位
クロアチア:1位
ブルガリア:1位
カナダ:1位
メキシコ:1位
ブラジル:1位
チリ:1位
ニュージーランド:1位
オランダ:2位
オーストラリア:2位
アイルランド:3位
ポーランド:3位
トルコ:3位
アメリカ:4位
日本:5位
シンガポール:5位
ベルギー:6位

母国イギリスでは92年の「FEAR OF THE DARK」以来18年ぶりの1位獲得、アメリカでの4位は予測よりも低かったものの、デビューから30年以上の年月を経て過去最高位です。

正直私は既に純粋な新曲に対する期待感というよりは「IRON MAIDENのアルバムを買うということがメタル・ファンであることの証である」的な「忠誠心」に近いモチベーションでアルバムを買っており、正直前作も本作もハマることはできていないというのが本音ですが、このチャート成績には一種の感動すら覚えますね。

トレンドにすり寄ることのない、「新しさ」の全くない伝統的でピュアなメタルがチャートに帰ってきた。
音楽は電気製品などと違って新しさなんかなくても力強くあることができる。そのことを象徴的に物語るチャート成績と言えるでしょう。メイデン万歳。

◆ニュースソース
http://www.roadrunnerrecords.com/blabbermouth.net/news.aspx?mode=Article&newsitemID=145069
http://www.roadrunnerrecords.com/blabbermouth.net/news.aspx?mode=Article&newsitemID=145133
+各国のWikipedia "Iron Maiden Discography"


IRON MAIDENの新作が全米3位に初登場の見込み

以前HEAVEN&HELLが全米8位にランクインしたことをコメントで教えてくれた“通りすが郎”さんが、今度はIRON MAIDENの新譜がビルボードの全米3位に、ということを教えてくれました。

まだあくまで見込みであり、次週そうなるだろうという予測ですが、情報技術の発達で全米の主だった販売チャネルでのセールス動向がたちどころに把握できるようになった昨今、ほぼほぼ堅い予測のようです。

最近のアメリカでのCDセールスの傾向を考えるとひょっとしたら今回1位になるんじゃね?、なんて話もあっただけに3位というのは「やはりそこまでは及ばなかったか…」というちょっと残念な気もするのですが、かつて90年代中期から後期にかけてのメタル暗黒期には彼らでさえ全米チャートの100位台に甘んじていたことを思えば隔世の感があります。

そのメタル暗黒期ですらビッグであり続けたオジー・オズボーンの新作だって全米4位ですから、メイデンが3位まで「復権」したというのは驚異的ですね。

今週はそのオジーのバンドを追い出されたザック・ワイルド率いるBLACK LABEL SOCIETYの新作「ORDER OF THE BLACK」がなんとオジーの新譜と同じ全米4位に初登場、そして先週はBUCKCHERRYの新作「ALL NIGHT LONG」が全米10位に初登場しましたし、さらにその前の週はAVENGED SEVENFOLDの「NIGHTMARE」の全米初登場No.1ですから、これで4週連続で(!)全米TOP10にHR/HM系のアルバムがランクインすることになります。

ここまでくればさすがにHR/HMというジャンルが「復活」したことを認めない輩はいないでしょ、と一メタルファンとして誇らしく思う一方で、実売枚数はかつて数百万枚クラスのお化けヒットが頻発していた80年代には遠く及ばず、単に私も含めて音楽をダウンロードすることに馴染めない古い考え方の人間(=オヤヂ?)に支持されているだけじゃないの、って疑惑もあったりするのですが(苦笑)。

ちなみにこのIRON MAIDENの新作である「FINAL FRONTIER」、彼らの本国であるイギリスのチャートでは1位に輝くようです。

さらに余談ながら、ここ日本では同日発売のBLIND GUARDIANの新作「AT THE EDGE OF TIME」も本国ドイツのチャートで過去最高となる2位を記録。

来てますね…時代が。



DRAGON GUARDIAN / 真実の石碑

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前作「DRAGONVARIUS」がBURRN!誌(というか藤木記者個人?:笑)でも高評価を得たことによって、メタル・ファンの間でも注目度の上がったDRAGON GUARDIANのニュー・アルバム。

前作のリリース元であったSOUNDHOLICがレーベル閉鎖してしまったため、本作はメディアファクトリーからのリリースとなっている。

前作のアートワークもライトノベルの表紙みたいだったが、本作のアートワークはまるでOVAのパッケージで、いい年齢したオトナが買うにはちょっと気恥ずかしい代物(苦笑)。

しかし内容は今回も素晴らしい。ファンタジックかつファンタスティックなシンフォニック・パワー・メタル・アルバムだ。

しかも聴いていて前作ほど恥ずかしくないのはナゼ? と思ってみると、あのアニメ調のセリフがなくなっているんですね。ストーリーの表現は男声ナレーターによる「語り」のみになっている。

CHILDREN OF BODOMやメタルコアなどを彷彿させる攻撃的なリフや、ブラスト・ビートの導入など、前作に比してヘヴィな要素が明らかに増しているが、あくまで楽曲のスパイスとして機能しており、これまでファンを心酔させてきたクサいメロディはアグレッシヴな楽曲においても充実している。

単純にメロスピとしての快感指数で言えば前作の方が上かもしれないが、メタルとしての完成度は上がっていると思う。
同人音楽恐るべしだね。

DISARMONIA MUNDIなどを手掛けたアレッサンドロ・ヴェナーラがマスタリングを手掛けたことが功を奏したのか、音質も前作より向上しているし、初期においては頬を赤らめて「恥知らず!」とビンタの一発も喰わせたくなるほどベタベタだったシンフォ・アレンジがかなり洗練されてきているのもマル。

そして本作のクオリティには前作に引き続き参加しているLIGHT BRINGERのVoであるFuki嬢の貢献も大きい。
きっとアニメの声優であれば気丈な女の子の役が回ってきたであろう彼女の張りのある歌声が作品の勇壮な力強さを表現している。

静かなパートでの抑えめな歌唱にはまだ説得力が不足しているが、まだ若そうなのでその辺は今後改善されていくだろうし、凛々しく歌っているパートの魅力は技術的な未熟さを補って余りある。

前作と本作の間にリリースされたEPや、先週末のコミケで発売されたEPなど、このプロジェクトのFuki嬢が歌っていない音源を聴くと彼女のポテンシャルの高さが群を抜いているのは明らかだろう。

このプロジェクトの売りのひとつであるストーリーについては正直ファンタジー系ライトノベルに頻出する名詞やフレーズの継ぎ接ぎのように感じられてしまうが、あくまで「歌詞」であるからその辺の陳腐さはやむを得ないところか。

しかし、私が以前関わっていた、その筋では人気のあったアニメなどもそうだったが、世界を救う/世界を変える、みたいなスケールの大きなストーリーなのになぜか「学園生活」がぶち込まれていて、「生徒会長」なんていう妙に日常感のあるワード・設定が登場するのが個人的には理解できないんだよなぁ…。

メインターゲットに高校生くらいの層を想定していて、その辺に対する共感を狙っているせいなのか、それともこの手のストーリーを愛する人たちは「学園生活」に何か特別な思い入れ(未練?)のある人が多いのか。
だとしたらそりゃ「学園生活に満足すれば成仏する」なんてアニメも登場するわな。

欧州のシンフォニック・メタルを「映画音楽的」と形容するなら、彼らの音楽は「(RPG)ゲーム音楽的」なので、必ずしも欧州のシンフォニック・メタル・ファンのツボに入るかどうかはわからないが、オタク臭いイメージで敬遠しているメロディック・メタル・ファンは一度トライしてみる価値あり。【85点】 


BURRN!10年9月号の感想

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表紙はニュー・アルバムを発表するIRON MAIDENのスティーヴ・ハリス。

この表紙じゃ若者は手に取らんだろ、という開き直りか、全体的に目新しさのない誌面で、個人的にはあまり面白くない、感想の書きにくい号だ。

特集は「LAメタルの真実」3回目。3号連続で、さらに次号に続くとなるともはや「特集」って感じはせず、単なる連載コーナーに思えてくる。

もはや特集を考えることさえ面倒になったのか、という疑念さえ湧いてくるが、とりあえずクリス・ホルムズ(元W.A.S.P.)のものとドン・ドッケン(DOKKEN)のインタビューはちょっと興味深い。

ただ、あのクリス・ホルムズが現在では(バンド活動もやってはいるみたいだが)エロ雑誌(←アダルトサイト注意)の照明の仕事をしているという落ちぶれ感はやっぱり元ファンにとってはいささか読んでてつらい話なんじゃないですかね。

そんなに必然性のないBON JOVIやらAEROSMITHやらの海外ライヴ・レポートもオールド・ファン向けの号というイメージを助長している。

IRON MAIDENについてOUTRAGEのメンバーが語る、という企画もなんでOUTRAGE? って感じ。

対談を読むとOUTRAGEのメンバーも(あまり彼らの音楽からは感じられないが)IRON MAIDENからの影響を受けているみたいで、やっぱりミュージシャンが語ることっていうのは評論家めいた人間とは違う視点を持っていて興味深いのですが、どうも奥野記者が名古屋出張をしたかっただけなんじゃないかって気がしてしまいますね(笑)。編集後記でひつまぶし食ったとか言ってるし。

IRON MAIDENやBLIND GUARDIAN、ANGRAの新作に関するインタビューはファンなら興味深いかもしれませんが、レビューを併せて読むと過大な期待は禁物かな、と(苦笑)。

100%満足できないであろうことがレビューから読み取れてもとりあえず買ってしまうであろう自分にはちょっと複雑な思いがありますね(笑)。

先月「あれ?」と思った表2の広告は、今月もキングレコードではなくEMIのIRON MAIDEN。
こりゃ本格的にキングレコードは降りたのかな。

キング所属だったKAMELOTがAVARONレーベルに移籍していることなども考えると、キングレコードはHR/HMから手を引き始めているんでしょうか。

そう考えると広瀬編集長がNoGoDなるキングレコード所属の最近ありがちな「メタル色の強いヴィジュアル系バンド」に90点という高得点レビューを献上しているのも一種の「ご機嫌取り」に思えてしまったり(穿ち過ぎかもしれませんが)。

ただこの手のバンドを「一般ウケしそう」などと書いてしまう広瀬氏の感覚は相変わらず世間とズレてるなあ、って感じ。それなりのパイがあるからチャートなどに顔を出してくるだけで、ヴィジュアル系もメタルと同様「一般人」とは全く異なるマニアックなリスナーだけに支えられている音楽ですよ。

◆発行元であるシンコーミュージックのWebサイト
http://www.shinko-music.co.jp/main/ProductDetail.do?pid=2175011009