DARE / CALM BEFORE THE STORM (1998)

前エントリーに書いた通り、ゲイリー・ムーアの死が結果的に当サイトで彼の作品をレビューするきっかけになったわけですが、ついでと言ってはなんですがこれをきっかけにもう一枚レビューを。
いや、必ずしもゲイリー関連の作品というわけでもないんですが、ゲイリー・ムーアを「THIN LIZZY人脈の人間」としてとらえるなら、このバンドも「THIN LIZZY人脈のバンド」なのでふと思い出したというか。
DARE、などと言っても日本での知名度を考えると「ダレ?」という感じかもしれませんが(寒)、このバンドは後期THIN LIZZYのKey奏者だったダーレン・ワートン(Vo & Key)を中心としたバンド。
元々はTHIN LIZZY解散後、ダーレンが地元マンチェスターの仲間たちとはじめたバンドが発端で、このバンド名はMOTORHEADのレミーの命名によるものだとか。
当時のギタリストは後にTENで(日本では)有名になるヴィニー・バーンズで、メジャーの「A&M」から88年にデビュー・アルバム「OUT OF THE SILENCE」をリリース。ジミー・ペイジのソロやEUROPE、そしてゲイリー・ムーアの前座としてツアーを行なった。
その後これまた後にTENのメンバーとなるグレッグ・モーガン(Dr)を迎え、91年にキース・オルセンをプロデュースに迎えた2nd「BLOOD FROM THE STONE」を発表するも、セールス不振で契約を失い、ヴィニー・バーンズをはじめとするメンバーの多くも脱退。解散こそしなかったが、ダーレンに子供が生まれたこともあり、その活動は大幅にスロー・ダウンする。
本作は「Frontiers」勃興以前にAOR系のバンドの宝庫としてメロハー・マニア御用達だった「MTM」レーベルからリリースされた、7年ぶりの「復活作」で、ダーレン以外のメンバーは一新されている。
そういう意味ではほぼ「新しく生まれ変わったニュー・バンド」と言ってもいい状態だが、本作のオープニングを飾る#1「Walk On Water」は、セカンド「BLOOD FROM THE STONE」からの先行シングルだった「We Don’t Need A Reason」のB面曲で、そういう意味では初期からの「連続性」が保たれている。
ただ、本作の全体的な作風は比較的ハードな仕上がりだったセカンドよりも、AORタッチだったデビュー作に近く、聴く人によっては全曲バラードに聴こえかねないほどメロウな仕上がり。
本作の日本盤解説を手掛けた伊藤政則氏は本作を「甘く切ない」とかなりベタな形容をしているが、まさにその表現がしっくり来る非常にウエットで叙情的な作風だ。
恐らくTHIN LIZZYというよりはTENやMAGNUM、あるいはFAIR WARNINGやZENOのような叙情的なメロディアス・ハードを好む人の琴線に触れるサウンドだろう(このバンドのサウンドはそれらと比べてもさらにソフトで落ち着いているが)。
それほど露骨ではないがほんのりと滲むケルト/アイリッシュ風味もエバーグリーンな雰囲気を醸し出しているし、「ムーア」という姓から恐らくアイルランド系であろうと思われるギタリスト、アンディ・ムーアも、派手ではないものの泣きの効いたエモーショナルなギターを奏でており、さらにダーレンによる甘い歌声もあって「癒し」すら感じる優しいサウンドである。
余談かもしれないが、本作は日本におけるケルティックなフォーク・メタルの代表バンド、BELLFASTのシンガーであるKohさんも自身のサイトで絶賛しており、私がBURRN!ではさほど目立った扱いをされていなかったにもかかわらず本作を購入したのはそのレビューがきっかけでした(笑)。
ちなみに#9「Still In Love With You」は曲名でおわかりの通り、ゲイリー・ムーアもカヴァーしたTHIN LIZZYの名バラードのカヴァー。
なお、このDAREは日本盤はリリースされていないものの現在も活動しており、現時点での最新作「ARC OF THE DAWN」(2009)では、これまたゲイリー・ムーアがカヴァーしたTHIN LIZZYの「Emerald」をカヴァーしている。【85点】
◆DAREの(ダーレン・ワートンの)MySpace
http://www.myspace.com/daredarrenwharton
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