TIMO TOLKKI’S AVALON / THE LAND OF NEW HOPE

timotolkkisavalon01.jpg

元STRATOVARIUSのギタリスト、ティモ・トルキによるメタル・オペラ・プロジェクト。

プロジェクト名は有名な「アーサー王物語」に登場する、楽園とされる聖なる島の名前で、トビアス・サメットのAVANTASIAもこの「AVALON」と「FANTASIA」をミックスして名づけられたことが知られているだけに、随分とあざといネーミングである。

STRATOVARIUS脱退後は、REVOLUTION RENAISSANCE、SYMFONIAで計4作のアルバムをリリースしてきたが、そのいずれも少なくとも商業的には成功したとは言い難く、スランプに陥っているかのような観があった。

そこに手を差し伸べたのが「Frontiers Records」のオーナー、セラフィノ・ペルジーノで、「映画のように壮大なロック・オペラ的コンセプト・アルバム」の制作を、新たなティモのポテンシャル開発のために提案したのだという。

最近のセラフィノ・ペルジーノ氏は、かつて80~90年代にジョン・カロドナー氏がそうであったような「再生屋」を目指しているのでしょうか…。

ギター、ベースをティモ・トルキ本人が手掛け、ドラムにはRHAPSODY OF FIREのアレックス・ホルツヴァースを迎えている。

キーボードはイェンス・ヨハンソン(STRATOVARIUS)、デレク・シェリニアン(元DREAM THEATER)、ミッコ・ハルキン(元SONATA ARCTICA)の3名を迎え、ティモ自身がプレイした箇所も一部あるようだ。

この手のメタル・オペラ・プロジェクトの目玉であるゲスト・シンガーは、先行公開された「Enshirined In My Memory」を歌っているエリーセ(AMARANTHE)と、ロブ・ロック(IMPELLITTERI)がメインで多くの楽曲を歌っており、その他にラッセル・アレン(SYMPHONY X)、シャロン・デン・アデル(WITHIN TEMPTATION)、マイケル・キスク(元HELLOWEEN, UNISONIC)、トニー・カッコ(SONATA ARCTICA)などが参加、アレンジの一環としてのオペラ・ヴォイスはフィンランドのゴシック・メタル・バンド、TEARS OF MAGDALENAのマグダレーナ・リーが担当している。

本プロジェクトの持つストーリーは「西暦2055年、地球上の大半の国、地域は大地震に伴う津波や火災によって壊滅状態となり、人類は滅亡寸前になった。生き残った少数の人類は新たな生活の場として、聖なる島と呼ばれ、純粋で正直な心の持ち主しか受け入れないという伝説の地「The Land Of New Hope」を探し求める旅に出発する…というもの。

大地震に伴う津波、というのはもしかすると東日本大震災がインスピレーションを与えたのかもしれませんね。

内容に耳を傾けてみると、オープニングを飾る#1「Avalanche Anthem」こそ、なんとなくメタル・オペラっぽい大仰な雰囲気が漂っているものの、その後はコンパクトなメロディック・メタル・チューンが続き、それほど映画的というか、ドラマティックな雰囲気は強くない。

もっとも、STRATOVARIUS、REVOLUTION RENAISSANCE、SYMFONIAと、ティモ・トルキがクリエイトしてきたメタル・サウンドというのはだいたいこんな感じなので、恐らくティモが意図的にメタルを作ろうとするとこういう音楽性になってしまうのだろう。

それはそれで「ファンの期待に応えている」と解釈できなくもないのだが、ストーリーの演出上の理由からか、あるいは重厚な雰囲気を出そうとしたためか、全体的にミドルテンポの楽曲が多く、STRATOVARIUSのようなスピード・チューンが少ないことは、少なくとも日本のSTRATOVARIUSファンの期待に応えていないかもしれない。

そして、REVOLUTION RENAISSANCE、SYMFONIAでもそうだったが、随所にSTRATOVARIUS時代のフレーズやアレンジの焼き直しが頻出し、引き出しの少なさを感じさせられてしまうのが長年のファンにはややゲンナリ。

メイン・シンガーであるエリーゼとロブ・ロックのうち、エリーセはAMARANTHEよりもクリーンな歌唱によってこの音楽を魅力的に表現することに貢献しているが、ロブ・ロックの強力ながら一本調子な歌唱は、「ドラマ」を描く上ではいささかミスマッチのような気が…。

いや、ティモ・コティペルトよりもロブ・ロックの方が声量や安定感はあると思いますが、やはりその辺は相性というか「ケミストリー」の問題ですかね。

クライマックスを飾る#10「The Land Of New Hope」は「Visions」のイントロで始まり、「Destiny」のアウトロで終わる「Keeper Of The Seven Keys」(いずれもアルバム名ではなく楽曲名)の短縮版のような曲で、この曲をマイケル・キスクに歌わせたのは確信犯でしょうね(苦笑)。

まあ、客観的に見ればそれなりに高品質なメロディック・メタル作品だと思いますが、好調だった時期のティモ・トルキを知るものとしてはやはりちょっと作曲面において煮詰まっている感が否めず、手放しで絶賛するのは憚られる。

本作は「AVALON」プロジェクトの第1章であり、将来的には3部作とすることを視野にいれている、とのことだが「立ち消え」の前科の多いティモのこと、予断は許しません(苦笑)。

幸い本作は久々にそこそこ商業的な成功を収めたようだし、今回はちゃんとしたレーベルがバックアップしているので(実はREVOLUTION RENAISSANCEのファーストも「Frontiers Records」からリリースされているが、当時はまだ弱小レーベルだった)、恐らく大丈夫なのではないかと思いたいですが…。【83点】

◆本作の先行シングル「Enshrined In My Memory」のPV



スポンサーサイト

TIMO TOLKKI / HYMN TO LIFE (2002)

timotolkki02.jpg

STRATOVARIUSのギタリストだった(発表当時)ティモ・トルキの2枚目のソロ・アルバム。

94年に発表された前作のファースト・ソロ・アルバムはクラシック曲のカヴァーなどを含む、ネオ・クラシカルなインストゥルメンタル曲を中心に、STRATOVARIUSのアルバムに入っていてもおかしくない、自身がVoをとるメロディック・メタル・チューンを収めた「いかにも」な作品だったが、本作の音楽性はそれとはガラッと変わっている。

全体的には当時ティモ・トルキがハマっていたというQUEENからの影響も感じられるメロディアスなポップ・ロック・サウンドが中心で、メタル色は極めて薄い。

基本的にはティモ・トルキ自身が大半の曲でヴォーカルを務めているが、ゲスト・ヴォーカリストとして元HELLOWEENのマイケル・キスクが#2「Key To The Universe」を、そして自身が参加したAVANTASIAのアルバムでの歌声を聴き気に入ったというWITHIN TEMPTATIONの歌姫、シャロン・デン・アデルが#7「Are You The One?」に参加している。

この時期、ティモがセラピーや自己啓発セミナーに傾倒し、12歳のときに父親が自殺したというトラウマを克服しようと戦い、癒しを求めていたことはファンには比較的よく知られている。

本作発表時点でのSTRATOVARIUSの最新作だった「INFINITE」にもそのセミナーからの影響が随所に出ていたが、本作はそうしたセラピーの集大成とも言える、非常に内省的で繊細な作品である。

問題の父親をテーマにした#8「Father」の歌詞を読む限り、ティモは全く父親のことを許せておらず、セミナーやセラピーによって彼の心が全く陶冶されていないことが容易に窺い知れるのが気がかりではあるが。

興味深い所では、STRATOVARIUSのオリジナル・メンバーの一人で、88年まで在籍していた(つまり、レコード・デビューの直前にバンドを去った)ミカ・エルヴァスカリがキーボード奏者として参加している。ミカは現在クラシック・ピアニストとして活動しているという。

ちなみにドラマーはNYLON BEATというフィンランドのポップ・バンドのメンバーで、セッション・ミュージシャンとしても活動しているアンシ・ヌカネンという人物。NYLON BEATという名前は、ヤンネ・ウィルマン(Key: CHILDREN OF BODOM)のソロ・プロジェクトWARMENにそのシンガーが参加していたことで名前くらいはご存じの方もいるかもしれない。

正直な所、STRATOVARIUSで書いた名曲の数々に比べると特筆すべき点のない楽曲ばかりではあり、やはりメタルをやった方がいいんじゃないの、という思いが去来しつつ、とはいえいくつかの曲にはそれなりに印象的なフックやメロディがあり、そういう意味ではティモ・トルキというソングライターのポテンシャルを証明する作品と言うことができよう。

IRON MAIDEN等を手掛けたディレク・リッグスによる美麗なアートワーク、伊藤政則氏による日本盤ライナーノーツと、ティモ・トルキが一番注目されていた時期のアルバムであることは間違いない。

そして、この後ティモ・トルキが産み出した音楽を聴いた後に振り返ると、過去の焼き直しではない新しい音楽を創造しようという意欲が感じられ、しかもそれなりの成果は出しているという意味で、ティモのクリエイティヴィティのピークを記録したアルバムという形容もできるかもしれない。【78点】


LOUD PARK 13 第2弾アーティストが発表に

何の前触れもなく、不意打ちのような感じで発表された第2弾アーティスト。

昨日の段階で現地ポスターに印刷されていたANGRA出演の情報がネット上に出回っていたので、「さっさと発表しちまえ」って感じだったんですかね。

追加されたのは以下の4組。

・YNGWIE MALMSTEEN
・ANGRA
・MOKOMA
・LAST SOCIETY

イングヴェイとANGRAはこのサイト/ブログをお読みになっているような方であれば説明不要ですね。

MOKOMAとLAST SOCIETYはそれぞれフィンランドのマイナーバンド。

MOKOMAは先日のLOUD&METAL ATTACKの際のTwitterリクエスト企画で選ばれたバンドですね。
本当はTURISASを呼ぶための企画だったと踏んでいますが、MOKOMAが一番リクエストが多かったのでしょう。

まあ、TURISASは単独でもそこそこ客呼べそうだし、あのノリはちょっと内輪ウケっぽい所があるので、単独で盛り上がってください、という感じでしょうか。

LAST SOCIETYは若手のスラッシュ・バンド。ちゃんとパフォーマンスできるのであれば結構盛り上がるのではないでしょうか。

ANGRAはこのフェス3回目なので特に新鮮味はありませんが、エドゥ・ファラスキ(Vo)が脱退し、現在はファビオ・リオネ(RHAPSODY OF FIRE)をゲスト・ヴォーカルに迎えているだけに、その編成で観られるとしたらちょっとレアな感じで楽しみですね。

ファビオはもはや伝説というべきRHAPSODY来日公演以来約10年ぶりに日本に来ることになるのかな?

問題はイングヴェイだな。誰が歌うんだ?

本人が全部、みたいなジャイアンのリサイタル状態(いや、イングヴェイは別に音痴なわけではないが、ネオクラシカルな曲には合わない歌声なので)は避けたい。

というか最近はキーボードのニック・マリノなる誰だかよくわからん地味な人が歌っているようなので、普通に考えたらそのまま、なのかもしれませんが…。

長年彼を支えた日本のファンのためにも、この日だけでもいいからちゃんとしたシンガーを迎えて、良いステージを見せてもらいたいものです。

最悪SPIRITUAL BEGGARSのアポロ・パパサナシオをレンタルするとか。
いや、単にイングヴェイの音楽にマッチしそうだ、というだけですけれども(笑)。

あ、THERIONのトーマス・ヴィクストロムもいいな! トーマスがイングヴェイの曲を歌うというなら、現状の「やや不安」から「超期待」に一気に格付けが上がるんですけど(笑)。

とりあえず、あのやたらと長いギター・ソロはフェスでは自粛の方向でお願いしたい。
「Far Beyond The Sun」プラスアルファ、くらいだったら我慢しますが。

公式サイトのバンド名の記載を見ると、どうやらSTONE TEMPLE PILOTSは間違いなくトリのようだが、KING DIAMONDとYNGWIE MALMSTEENは文字の級数がひと回り小さいのでトリ前かな?

KING DIAMOND→STONE TEMPLE PILOTS の流れにせよ、YNGWIE MALMSTEEN→STONE TEMPLE PILOTSの流れにせよ、ストテンを観ずに帰宅するオーディエンスが大量発生することが目に見えていますが…。

トリ前以下の層はやや地味ながらなかなか充実していると思えるだけに、もう1日のトリには、納得感のあるバンドが収まってくれるといいのですが…。

◆LOUD PARK 13公式サイト
http://www.loudpark.com/13/

続きを読む

『ヘドバン!』感想

hedoban01.jpg

Amazonではあっという間に品切れになり重版がかかる(そもそも初版が何部なんだ、という話もありますが)など、一部で話題のムック本、「ヘドバン」。

表紙にある見出しは「BABYMETAL巻頭超絶大特集」、「X『VANISHING VISION』再検証」、「世間と対峙し続けたメタル・レジェンド、デーモン閣下に吉田豪が迫る!」、「メタルゴッド祝還暦!伊藤政則ストーリーズ」。

伊藤政則氏のことを別にすると、メタル関連とはいえ、いわゆるBURRN!誌が避けて通るような話題がメインで、意図的にその辺を狙って作られたのだろう。

正直これ買った人の半分かそれ以上が今や本体であるさくら学院をはるかに超える動員力を獲得したBABYMETALのファンなんじゃないか、って気がするくらいの、60ページにおよぶBABYMETAL特集は読みごたえがある。ファンならぬ者には完読できないほどに…。

一応シンコーミュージックから出てはいて、奥野氏をはじめBURRN!関連の人も一部原稿を書いているものの、企画は外部っぽく、あんまりシンコーミュージックの書籍っぽくない。

判型が『Quick Japan』などと同じであることが示すように(?)、いわゆるサブカル誌のノリで、良くも悪しくもプロの仕事っぽくない内容である(誤植と思われる箇所の多さも含めて…)。

まあ、これはこれで個人的には楽しめたし、作っている側も楽しそうな感じではあるものの、やっぱりまあマニア向けの代物かな。BURRN!より遊び心があるのはいいものの、その遊び心はやっぱり閉じた世界に向けられたもので、ライトなファンや、ましてや一般人に伝わるようなものではない。

そもそも論として、本誌中のデーモン閣下のインタビューでもそんなようなことを言っているけど、聖飢魔IIとかXとか、こういう存在を「味方」にしなかったことが日本におけるHR/HMを、変にマジメでマイナーな音楽にしてしまったような気がするんですよね。

イロモノやミーハーなファンを嫌う、妙に理屈っぽいマニアがHR/HMを閉ざされたものにしてしまったというか。

KISSだってIRON MAIDENだって、オジー・オズボーンだって、一般人にとってはイロモノに映る側面は確実にあるはずだし、LAメタル系のバンドのルックスなんて総じてイロモノ以外の何物でもないわけじゃないですか。それらを許容して聖飢魔IIやXを認めない、って感覚に歪みを感じるわけですよ(まあ、LAメタルは当時から許容していなかった人も多いみたいですが…)。

ぶっちゃけ、彼らが一般人に(特に女性に)人気があって売れていたから僻んでいただけじゃないの、みたいな(笑)。

80年代、メタル・バブルで、まだメタルが良い意味で猥雑でチャラチャラしていた時期に、一般人の興味を引きそうな「おもしろい」部分を当のHR/HMファンたちが否定してしまったことが、日本におけるHR/HMの「終わりの始まり」だったんだろうと思います。

まあでも、一方でHR/HMがこうしてサブカルとしてでも細々と生き続けてくることができたのは、そういう芸能界色のあるミーハーな部分を切り捨てて、求道的と言えるほどにストイックにHR/HMを愛し続けてきたファンがあってこそ、というのもまた一面の真実で、本当にどちらが良かったのかは神のみぞ知る、なんですけどね。

ちょっと話が変な方向にズレましたが、ある程度キャリアと知識のあるメタル・ファンなら単純に面白いですよ。ヘッドバンギングやメロイック・サインなどについての「メタルのフォーマルを極める」特集とか、知ってても知らなくてもいい、でも知ってるとメタル通っぽい(?)知識や小ネタが満載で楽しいです。

ただ奥野さん、「ハイトーン・メタル」や「ビッチ・メタル」はともかく、「シケ・メタル」はちょっと難易度高すぎやしませんかね(苦笑)? このワビサビがわかる境地に辿り着くのはなかなか…(笑)。


※公式ツイッターによると、重版分は7月31日の発売になるようです。

ALIEN / ALIEN (1988)

alien01_1.jpg

毎日暑いですね。

こう暑いと暑苦しいコテコテ/ゴリゴリのメタルより、涼しげな音楽を聴きたくなるのが人情というもの。

そしてそんな寝苦しい夜にオススメなのが北欧メロディアス・ハード。

今回は、数ある北欧メロディアス・ハードの中でも最高傑作のひとつと疑わない、ALIENのファーストを取り上げたいと思います。

いつかはこの作品について書きたい…と思っていつつ、これまで何となくその機会を逸していましたが、今年25周年記念リマスター盤がリリースされたので、この機会に書いてみたいと思います。

ぶっちゃけ、ちょっともったいぶる気持ちもあったんですよね。だってこれが最高峰だから、これ取り上げちゃったらもう後がない、みたいな(笑)。

というわけで本題ですが、88年にリリースされたスウェーデンのメロディアス・ハード・ロック・バンド、ALIENのファースト・アルバム。

バンド名もジャケットもセンス皆無ながら、リリース当時、本作収録の「Only One Woman」が本国スウェーデンのチャートで6週連続No.1に輝く大ヒットを記録、本アルバムも現地ではかなりの成功を収めたらしい。

ちなみにその「Only One Woman」はカヴァー曲で、オリジナルはグラハム・ボネット(元RAINBOW, M.S.G., ALCATRAZZ, IMPELITERRI他)が、母国オーストラリアで活動していた頃にやっていたポップ・グループTHE MARBLESのヒット曲のカヴァー。ギタリストであり、リーダーでもあるトニー・ボルグが大のRAINBOWファンということで、きっとグラハムのルーツを辿って「発見」したのではないかと思っています。

本作が成功したことで、EUROPEの成功以後「第二のEUROPE」を探していたレコード会社はこのバンドをアメリカ進出させることを目論む。

その結果、本作は「U.S.A.バージョン」として、ジャケットのアートワークを変更、収録曲を一部差し替え、リミックスを施し、さらにVoをオリジナルのジム・ジッドヘッドから、後年北欧の渡り鳥シンガーとして名を馳せる、当時まだ駆け出しのピート・サンドベリに歌い直させたアルバムを「Virgin」からリリースさせた。

こちら↓がU.S.A.バージョンのジャケット。
alien01_2.jpg

(なぜピート・サンドベリが歌い直すことになったのか、その辺の経緯をご存じの方がいたらぜひ教えてください。前任のジム・ジッドヘッドがその後ソロ・デビューしているので、ジムが本作の成功を背景にソロ活動のためにバンドを離れたため、その後の活動を見据えて、あらかじめ新しい顔を迎えてアメリカ・デビューしようとピートを獲得し、歌い直させたのではないか、と推察しているのですが…)

個人的にはその「U.S.A.バージョン」は、音質こそ向上しているものの、オリジナルに収録されていた名曲がカットされているために受け入れ難かったのだが、今回リリースされた25周年記念盤は2枚組仕様でオリジナルとセットになっているので、「オマケ」と考えれば文句はない。

まあそんな前書きはさておき、とにかく本作の楽曲は素晴らしい。哀愁の北欧メロディアス・ハードの理想型が体現された作品で、捨て曲は一切ない。

それどころか、オリジナル版の前半(アナログ盤におけるA面)に収められた曲は全てが名曲クラスと言っても過言ではない(B面がつまらないというわけではない)。

ハッキリ言って、先述のヒット曲、「Only One Woman」が(哀愁が薄いという意味で)一番つまらない曲だと言いたくなるほど。

本作を初めて聴いたのは大学1年生のとき、同じ語学のクラスにいたデス・メタル・バンドをやっていた友人に借りて聴きました。

そして本作は、私が「自分は哀愁のメロディがツボなのだ」という自覚を持つきっかけになる重要な作品となったのです(それまでは単にメロディアスな音楽が好き、くらいの認識で、特に哀愁にこだわってはいなかった)。

BURRN!誌の広瀬編集長も本作収録の「Go Easy」を絶賛していましたが、まさにこの曲は「北欧メロディアス・ハード」の理想型じゃないですかね。ギター・ソロ前の「Remenber!」というシャウトを聴くたびに鳥肌が立ちます。

あえてもう1曲キラー・チューンを挙げるなら、個人的には「I’ve Been Waiting」におけるむせかえるほどの狂おしい哀愁がたまりません。

陳腐な表現ですが、珠玉の哀愁メロディが満載された極上の北欧メロディアス・ハード作。北欧メタルが好きだという自覚がある人は、本作を聴かずに生きていてはいけません。【91点】

◆本作収録「Go Easy」のPV

まったく曲にマッチしていない80年代ならではのダメクリップだが、曲は最高。