アメトーーク:GEININ OF HARD ROCK 感想

9月26日(木)、テレビ朝日の人気深夜バラエティ番組「アメトーーク!」でハード・ロック、ヘヴィ・メタルを扱うということで、「これは観なければ」と思っていました。

しかし、悲しいかな、日付が変わる前に仕事が終わることが少ない社畜人生を歩む身には23時に始まる番組をリアルタイムで視聴することはかなわず、それを見越してBD/HDDレコーダーに録画しておき、それを本日観ました。

この番組の名物である、共通の趣味を持った芸人による「くくりトーク」のテーマとして「ハード・ロック/ヘヴィ・メタル」が選ばれたわけである。誰かスタッフに好きな人がいたんでしょうかね。

ゲストとして出演した芸人はビビる大木、富澤たけし(サンドウィッチマン)、椿鬼奴、レイザーラモンRG、大地洋輔(ダイノジ)、大谷ノブ彦(ダイノジ)、藤井ペイジ(飛石連休)、さがね正裕(X-GUN)。

オープニングはDEEP PUEPLEの「BURN」に合わせて全員がエアバンドをやる、というこの番組には珍しいフォーマット。日本におけるDEEP PURPLE人気の根強さを感じさせる幕開けです。

ついでに言うと、「ハードロック芸人」ではなく「GEININ OF HARD ROCK」だと言い張るあたり、日本におけるHR/HMファンの洋楽偏重な姿勢を端的に表していますね(LOUDNESSについては多少触れましたが)。

ゲストとして登場した芸人たちは皆HR/HM界の有名人のコスプレをしており、その配役は以下の通り。

ビビる大木→イングヴェイ・マルムスティーン
富澤たけし→ジェイムズ・ヘットフィールド(METALLICA)
椿鬼奴→スティーヴン・タイラー(AEROSMITH)
レイザーラモンRG→アクセル・ローズ(GUNS N' ROSES)
大地洋輔→スラッシュ(元GUNS N' ROSES)
大谷ノブ彦→アンガス・ヤング(AC/DC)
藤井ペイジ→ジミー・ペイジ(LED ZEPPELIN)
さがね正裕→リッチー・ブラックモア(元DEEP PURPLE/RAINBOW)

スティーヴン・タイラーに対して「リヴ・タイラーのお父さん」と表現されていたが、さすがにリヴ・タイラーよりはスティーヴン本人の方が有名なのでは…。

ロブ・ハルフォードがいなかったのはやっぱりちょっと変態っぽくなってしまうからですかね(笑)。JUDAS PRIESTがほとんど触れられなかったのも、一般人にとってエッジの立ったネタというとどうしてもロブの同性愛ネタになってしまいそうだから自粛したのでしょうか。

とりあえず番組の構成としては以下の通り。

◆基本情報オブHARD ROCK
◆衝撃映像オブHARD ROCK
◆あるあるオブHARD ROCK
◆思い出オブHARD ROCK
◆伝説オブHARD ROCK

しかし、やはり一般人(雨上がり決死隊の二人が一般人と言えるかかどうかはわかりませんが)はオジー・オズボーンを知らないのはともかくとして、VAN HALENと聞いて映画「ヴァン・ヘルシング」と間違うレベルなのかと思うと愕然としますね。

MOTLEY CRUEさえ知らない風だったので、「80年代に売れていたバンドであれば、30代半ば以上の人であれば名前くらいは知っているだろう」という私の思い込みさえ完全否定された気分です。

エディ・ヴァン・ヘイレンのライトハンド奏法やら、イングヴェイ・マルムスティーンの速弾きといった派手なギター演奏はHR/HMの華なので取り上げられて不思議はないとしても(とはいえクリス・インペリテリまで登場したのは少々意外でしたが)、まさかCINDERELLAのエリック・ブリッティンガムのベース回しなんて微妙な技(?)なんてのまで出てくるとは予想外でした(トミー・リーの回転ドラムは想定の範囲内でしたが)。

AC/DCの「BACK IN BLACK」が世界で2番目に売れたアルバムであるとか、NAPALM DEATHの「You Suffer」やアンジェラ・ゴソウ(ARCH ENEMY)のデス声など、一般人にとってインパクトのありそうなネタを中心に構成されているのは、HR/HMファンではない人を対象にしているメディアの常。

ただ、「あるある」や「思い出」など、トーク中心のパートは正直HR/HMファンとしても、単純なお笑いトークとしても微妙だったような…。

椿鬼奴の「ジミー・ペイジにインタビューをしたことがある」という話はまだしも、ビビる大木のCOVERDALE PAGEのコンサートで警備員のバイトしたことがある、なんてオチも何もない話、そこらの一般人の話かっての(笑)。

最後は「シャウト IN アメトーク」と題してレイザーラモンRGと椿鬼奴がGUNS N' ROSESの「Welcome To The Jungle」をカラオケで歌う(短縮編集バージョン)。

「ヘビメタと言われるとイラっとする」とか、ライトハンド奏法を見た宮迫が「夜の営みに使えそう」的な下ネタを口にすると「そういう風に扱って欲しくない」とか「茶化さないでください」と抗議するなど、メタル・ファンにありがちな妙な潔癖さを露わにするなど、そういう良く言えば真面目、悪く言えば偏狭なメンタリティは、HR/HMを聴かない人にとっては不気味なんじゃないかなあと思っています。

あと、一番残念だったのはやはり90年代以降のHR/HMについてはRAGE AGAINST THE MACHINE、MARILYN MANSON、SLIPKNOTの3バンドが挙げられているのみにとどまったことかな。

それらのバンドも「一般人には知られていない」という点では、いわゆるBURRN!読者がイメージする「正統的な」HR/HMとなんら変わらないわけですがメロデスでもメロスピでもメタルコアでもいいから、もうちょっと自分の好きなバンドに触れてほしかったというのが正直な所です。

まあ、番組トータルとしてはさすが人気番組、それなりにバランス良くまとめてきたなという印象ではありますが、番組のファンにとってはどちらかというと「外れ回」だったのではないかという気が…。

週明け出社したら視聴率を調べてみようかな…(昨日はロケがあったので会社には行きませんでした)。

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ROCKOMANGA! の感想

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今月のBURRN!で久々に(といってもせいぜい1年半ぶりくらい?)、喜国雅彦氏のマンガが掲載されていた。

「当方の社内的な事情により他の長期連載共々2012年5月号でやむなく終了となり、単行本化も他社(リットー・ミュージック)により行なわれたが」と書かれており、自分が買っていた「ROCKOMANGA!」がリットー・ミュージックから出ていることに初めて気づきました。

何しろAmazonの包装段ボールからさえ出していなかったもので…。

危うく積んだままになる所だったので、この機会にあらためて読んでみました。

89年から連載されていたということで、私がBURRN!を読み始めた頃には既に連載されていたので、なんとなく読んだことのないネタがいっぱいあるのではないかと思っていたものの、実際未読の回は全体の1/4もなく、ほとんど見覚えのあるネタばかり。

考えてみれば1989年~1992年より、1993年~2012年の方がはるかに長いわけで、それも当たり前。

初期こそミュージシャンネタとでも呼ぶべきものが大半を占めているが、次第に作者のエッセイ的な色が強くなっていき、正直面白いと思ったことはほとんどなかった(今読むとノスタルジーは感じますが…)。

SLIPKNOTや、奥さんが好きだというRAMMSTEINは何度か登場しているが、基本的には登場するミュージシャンはBURRN!創刊の頃からビッグだったアーティストが大半で、00年代はおろか、90年代に登場したミュージシャン・バンドさえほとんど登場しない。

そのことについては、本書の最後に収録されている作者インタビューで「キャラの立っているミュージシャンが少なくなってきた」と説明されているわけだが、この辺は単に作者が新しいミュージシャンに興味を失っていたから、という考え方と、実際キャラ立ちするミュージシャンが登場していない、という考え方の2つがあり、恐らくどちらも間違いではないのだろう。

認めたくない現実ではあるが(?)、ポップ・ミュージックが売れる上では音楽自体が良いことは前提として、ミュージシャンのキャラみたいなものが重視されるのが世の常で、そういう意味ではたしかに90年代以降、日本でHR/HMとされる音楽は、そういうキャラ立ちしたアーティストが出てこず、それもHR/HMという音楽のインパクトを弱めてしまう一つの要因になってしまったというのはひとつの事実なのだろう。

そして必然的にマンガもつまらなくなってしまった…と。

ただまあ、同じく巻末のインタビューで、ここに収録されている作品について「基本的には、原稿を渡すその日に描いていました。(中略)朝起きてから、受け渡しの10時までの間に描いていました」と言っているので、そもそもあまり真剣に描いていたとは思えないわけですが(苦笑)。

本書の一番最後には、「喜国雅彦が愛する極私的メタル・アルバム10選!」として、作者のチョイスする10枚のHR/HMアルバムが紹介されている。

読者がそれなりにコアなメタル・ファンであろうことを踏まえ、あえて王道を外したセレクトにしているようだが、それにしても基本的には80年代までに登場したアーティストによるアルバムが大半を占めており、新しいものを全く聴いていないわけでもなさそうだが、やはり過去のHR/HMが好きな人なんだなあ、と。

別にそれは人間としては当然のことで、私自身好きなアルバム10枚選べと言われたら、10代の頃に好きだったものが大半を占めると思います。

ただ、やっぱり今のBURRN!の読者ってこういう「好きなバンドの新譜が出れば聴くし、新しいバンドを聴いてみることもなくはないけど、やっぱり昔のメタルが一番だよね」って温度感の人が一番多いんだろうなあ、という印象を受けました。

描き下ろしの新ネタや、喜国氏が過去別な雑誌に描いた、未単行本化の作品なども「ボーナス・トラック」として収録されているが、一般のメタル・ファンには各年ごとの「メタル・シーンの出来事」と「この年にリリースされた代表的なメタル・アルバム」というページが一番興味深いのでは(笑)。

あと、「6コマ漫画」だから「ROCKOMANGA」というタイトルなのだということに今回初めて気づきました(笑)。
今までいかに気にも留めていなかったか、ということですが…(苦笑)。

◆出版元であるリットー・ミュージックのWebサイト
http://www.rittor-music.co.jp/books/12317105.html


BURRN!13年10月号の感想

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表紙は「SUMMER SONIC 2013」で来日したMETALLICAのジェイムズ・ヘットフィールド。この雑誌がライヴ風景の写真をジャケットに使うことは珍しいですが、恐らくこういう形でしかOKが出なかったのでしょう。

昔の『BURRN!』だったら「そんなら表紙にしねえよ!」と言えたのかもしれませんが、今はなかなかそうも行かないのか、近年ちょいちょい「定番フォーマット」から外れた写真が表紙を飾るようになっていますね。

METALLICAのインタビュアーは先々月号で久々に「誌面復帰」を果たした、元『BURRN!』副編集長にして最後の『MUSIC LIFE』編集長だった増田勇一氏。

ジェイムズがMOTORHEADの、ラーズがGIRLSCHOOLのTシャツを着ているあたり、「俺たちは今でも初心を忘れてないぜ」アピールなんでしょうか。

とりあえずラーズの『BURRN!』に対する「毎号ちゃんと違う人を表紙にしてね!(笑)」という言葉に苦笑せざるを得ませんでした。外タレ本人にさえそう思われているのかよ。

続くCHEAP TRICKのインタビューも増田氏で、元身内とはいえ、現在は外部フリーライターに過ぎない増田氏の大フィーチュアぶりはいったい何があったのでしょうか。

その後、例年になく「メタル度」の高かったSUMMER SONIC 2013に出演したバンドのライヴ・レポートに続き、同時期に来日していたAEROSMITH、およびTHE WINERY DOGSのライヴ・レポート。

今年の来日ラッシュを象徴するライヴ・レポート波状攻撃に続くのは、来年10月号で30周年を迎える『BURRN!』誌の「創刊30周年カウントダウン企画」。

1年前からカウントダウンって長過ぎねーか? 3号くらい前からやれば充分だろ、とも思いましたが、まあ、1年前から始めておけば、向こう1年間、この雑誌の好きな懐古趣味的な記事を続けられる大義名分になるわけで、まあそういう魂胆なのではないかと勝手に思ってます。

『BURRN!』が創刊された84年のアルバムや来日公演の紹介記事はまさにその懐古趣味が端的に表れているわけだが、ここに紹介されているバンド群を見て、「やっぱりこの時期のバンドは偉大だったな」と思えるかどうか、が『BURRN!』の読者であり続けられるかどうかの分かれ道なのではないかという気がします。

そして、おそらく長年の読者にとって一番興味深いと思われるのが、広瀬編集長と増田氏による対談記事でしょう。

私のように20年近く読んでいる読者でさえ知らない話(読者になる前の話なのだから当然ですが)が満載で、このブログの感想を楽しみにして下さっているというようなタイプの「BURRNウォッチャー」的な人にとってはいろいろ思うところのある記事なのではないかと思われます。

『BURRN!』の部数が一番多かったのが、HR/HMバブルだった86~92年ではなく、97年だった、というのは単純に事実として驚きだし、創刊当時からこの雑誌の問題は「どのアーティストをどれくらい扱うべきか」ということだったんだなあ、とあらためて考えさせられました。

正直この対談記事を読んでいると、どうも現在に至る問題の多くが酒井康前編集長に押し付けられている観がありますが、日本でHR/HMの王道とされているような音楽を好むようなタイプの人にとって、酒井氏の偏狭な「HR/HM美学」というのは相性が悪くなかったというのもまた事実なのではないでしょうか。

長年ファンをやっていて思うのは、HR/HMというのはルックスから音楽性に至るまで、何事につけても「変化」を嫌うタイプの保守的な(ある意味真面目な)人が好む音楽だというのが個人的な印象でもあるので…。

後はまあ、個々のインタビューにも興味深いものはあるけど、今回ピックアップしたいのは、時折興味深い内容のティモ・イソアホ氏によるコラム「TALES FROM THE DARK」。

今回のテーマは世界最大級のメタル・フェスティヴァルとして名高い『WACKEN OPEN AIR(以下W.O.A)』。

来年で25周年を迎えるというW.O.Aはここ8年連続でソールドアウトしており、今年の開催直後に売り出された来年のチケットは、どのバンドが出演するかもほとんど明らかになっていないのに75,000枚が発売から48時間以内に売り切れてしまったという。

それはもはやW.O.Aが単なるフェスではなく、「ライフスタイル全体を表すもの」だからという記述があるが、そういう意味ではLOUD PARKはそういうものには全くなれていないなあ、という感想を持たざるをえない。

日本でもフジロックやROCK IN JAPANには少なからずそういうニュアンスがあるような気がしますが、LOUD PARKはおろかSUMMERSONICにもそういうニュアンスは薄いように思われ、出演するアーティストの魅力=イベントの魅力になってしまっている観が否めない。

その理由は運営元であるクリエイティブマンのせいなのではないかと思ってここまで文章を書いてきましたが、冷静に考えると、会場内で宿泊するオーディエンスが多いか否か、というのが大きいのではないかという意外とつまらない結論に自分で辿り着いてしまってちょっと落胆している今現在(苦笑)。

アウトドアで宿泊すると、いろいろ面倒はあるし、体力的にもしんどいけれども、やはり体験としてはスペシャルなものになるんですよね。W.O.Aも「見渡す限りどこまでもキャンピング・サイトが果てしなく連なっている」そうだし。

まあ、とにかく私が言いたかったのは、「フェスの魅力ってのは単純にアーティストのメンツだけじゃない、イベントとしてのムードそのものにあるんだよ」ということで、LOUD PARKに対して「メンツが微妙だから行かない」なんてのはメタラーとしてもったいないですよ、ということです。

あと今月号で印象的なのはCARCASSの大フィーチュアぶりですね。台割としては後ろの方とはいえ、8ページカラーでの掲載に加え、ビル・スティアー(G)の参加しているGENTLEMANS PISTLESも、フジロックでのライヴ・レポートとインタビューでカラー4ページの扱い。

そしてクロスレビューのトップも、なんとDREAM THEATERを押しのけてCARCASSの新譜が抜擢されている。まあ確かに(個人的には予想外に)優れた出来の作品ではあありましたが…。

今月のマストバイは、購入済みのそのCARCASSの新作、GALNERYUSのセルフ・カヴァー第2弾を除くと、DREAM THEATERくらいか。

あとは再録ベストを聴いてみたいANNIHILATOR、試聴サンプルがいい感じだったGLAMOUR OF THE KILL、WIG WAMのティーニーがギターを弾いているというJORNの新作なども興味深いし、北欧メロハー・ファンとしては「TNTの黄金時代作品に匹敵する」というNIVAは要チェックだし、メロスパーとしてはOPERADYSEもちょっと気になるかな。

◆発行元であるシンコー・ミュージックのWebサイト
http://www.shinko-music.co.jp/main/ProductDetail.do?pid=2175011310

QUEENSRYCHE / FREQUENCY UNKNOWN

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QUEENSRYCHEを実質「追放」されたジェフ・テイトだが、QUEENSRYCHEというバンド名は自分一人のものである、と主張して裁判を起こし、その判決が出ていないグレーな時期であることをいいことにQUEENSRYCHE名義でリリースしたアルバム。

ジャケットのアートワークを見ると、「FQU(ファック・ユー)」と読めるワードによるパンチが描かれており、ジェフが自分を追放したメンバーに対する気持ちがストレートに伝わってくる。アルバム・タイトルはこのデザインありきで付けられたのだろう。

QUEENSRYCHE名義を名乗っているものの、メンバーは楽曲ごとに流動的で、ジェフ以外でレギュラー的に参加しているのはQUEENSRYCHEのツアー・キーボディストだったランディ・ジーン(Keyが使用されていない半数の曲には不参加だが)、「リズム・ギター」としてクレジットされているクレイグ・ロシセーロ(元FORBIDDEN)くらいのもの。

ベースは本作を含め近年のQUEENSRYCHEのアルバムのプロデュースに関わってきたジェイソン・スレイターが半数以上の曲でプレイし、ルディ・サーゾ(元QUIET RIOT, WHITESNAKE他)や、Keyでもあるランディ・ジーンが残りの曲をプレイしている。

ドラムはサイモン・ライト(元AC/DC, DIO他)とポール・ボスタフ(元FORBIDDEN, SLAYER)、そしてセッション・ドラマーであるエヴァン・ボーティスタが分け合ってプレイしている。

当初は固定メンバーによるレコーディングを目指していたようだが、結果的にはうまくいかなかったようで、このようなソロ・プロジェクト的な形での制作になってしまったようだ。

ソロ・プロジェクトらしく(?)ゲストはそれなりに豪華で、元JUDAS PRIESTのK.K.ダウニング(G)、NIGHT RANGERのブラッド・ギルス(G)、Y&Tのデイヴ・メニケッティ(G)、元MEGADETHのクリス・ポーランド、KING’S Xのタイ・テイバー(G)、元HURRICANEのロバート・サーゾ(G)などがギター・ソロを弾いている。

QUEENSRYCHE名義でのアルバムを発表するだけでも充分他のメンバーに対するあてつけなのだが、リリース時期ももう一方のQUEENSRYCHEに合わせて、むしろ少し早めに出してくるあたり、いやがらせもここまで徹底しているとむしろすがすがしい(笑)。

恐らくバンド形式ではない形で録音することになったのは、複数の人間で分業した方が早く完成させることができ、先にリリースすることができるから、という理由なのではないかと個人的には勘繰っています(笑)。

実は、ほぼ同時期に発表された先行シングルを比較したとき、もう一方のQUEENSRYCHEの「Redemption」より、本作の#1「Cold」の方がリフが印象的で良く聴こえ、もしかするとこっちの方が音楽的にはイイんじゃないの…? などという疑惑(期待と言うべきか)を胸に聴いてみたのですが…やっぱり近年のQUEENSRYCHE的な音楽で退屈でした(苦笑)。

ただ、参加メンバーはみな名のある実力派揃いだけあって、プレイ自体はなかなか充実しており、演奏自体のパワーによって、フックに乏しい楽曲に幾分勢いが生まれているのが救いではある。

もう一方のQUEENSRYCHEにとって最大の嫌がらせができるとしたら、本当は本作で初期QUEENSRYCHEの音楽性を再現してみせることだったと思うが、やはりそれはジェフにはできなかった(もしくはやりたくなかった)ようで、せいぜい過去の名曲のリメイクを収録するくらいが限界だったようだ。

そのリメイク音源は、オリジナルはおろか、良好とは言えない本作の本編の音質と比べてさえも随分とチープなプロダクションで、スケール感が削がれていることおびただしく、このQUEENSRYCHEに全盛期の素晴らしさを再現することができないことだけを証明してしまっている。

まあ、ジェフの目的が過去の名曲を汚し、冒涜することだったとしたら、それは達成されているのかもしれないが。【75点】

◆本作収録「Cold」のPV(?)[YouTube]



QUEENSRYCHE / QUEENSRYCHE

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看板シンガーであるジェフ・テイトおよび彼の妻によるマネージメントとの関係の悪化が限界に達した残りのメンバーが、CRIMSON GLORYのVoだったトッド・ラ・トゥーレを迎えてRISING WESTというバンドを結成。

しかし、紆余曲折の末、ジェフ・テイトを「追放」し、そのRISING WESTが「QUEENSRYCHE」というバンド名を使用して活動する形になった。

本作は、そのジェフ・テイトを除くメンバーたちによる「新生」QUEENSRYCHEによる初のアルバム。

元々ファンの望む「EMPIRE」以前の路線に回帰するとアナウンスされており、実際その通りの、「THE WARNING」から「EMPIRE」にかけてのプログレッシヴなムードを感じさせるメタル・サウンドが展開されている。

ただ、プログレッシヴとは言っても、多くの楽曲は3分台~4分台のコンパクトなものであり、演奏技術を誇示するような場面などもなく(もともとそういうバンドではなかったが)、あくまで雰囲気レベルの話である。

個人的には、ジェフ・テイト加入以前にはJUDAS PRIESTフォロワー的なピュアな正統派メタル・バンドとしてスタートした彼らだけに、そういうもっとストレートなメタル・サウンドを期待していたりもしたのだが、まあ、往年のファンがQUEENSRYCHEと聞いてイメージするのはこんな感じ音のだろう。

プロデューサーに往年の名作を手掛けたジェイムズ“ジンボ”バートンを迎えていることも功を奏したのか、長いことこの路線から離れていたにもかかわらず、過去のムードを上手く再現した作風ではある。

しかし、だからと言って「満足!」とまでは言えないのは、単純に楽曲のクオリティが全盛期に及んでいないからなのだろうなあ。

これが当時のメイン・ソングライターだったクリス・デ・ガーモ(G)の不在によるものと断ずるのは簡単だが、仮にクリスがいたとしても恐らく全盛期ほどの輝きは取り戻せなかったに違いない。あれは、あの時代、あの年齢だからこそ生み出すことができた奇跡なのだろうと思う。

本作のサウンドはイマドキの日本のメタル・ファンにとってはいささか地味なのではないかという気がするが、サビが印象的な#6、ムーディなバラード調の#8、共に印象的なイントロで始まるメタル・チューンの#9、#10など、中盤から後半への流れはなかなか良い。

ジェフ・テイトの後任という大役を務めることになったトッド・ラ・トゥーレは、ライヴ映像などを見るとむしろブルース・ディッキンソン(IRON MAIDEN)に近いフィーリングを感じるが、本作ではなかなか巧妙にジェフ・テイトに似せた歌唱を披露しており、器用なシンガーであることを示している。【80点】

◆本作収録「Fallout」のPV [YouTube]