KAMELOT / HAVEN

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トミー・カレヴィック(Vo)加入後の第2弾となる通算11作目となるフル・アルバム。

前作「SILVERTHORN」はシンガー交代というデリケートなタイミングの作品だったため、「新入り」であるトミーは意図的にロイ・カーンを意識した歌唱を聴かせていたが、前作が概ね好意的に受け入れられた本作ではもう少し自分の色を出してくるかと思っていた。

しかし、冒頭を飾る#1「Fallen Star」の歌い出しの時点でトミーが本作においても「ロイ・カーンのクローン」としての生き様を選択したことが如実に伝わってくる。そういう意味では、前作同様、危ない橋を渡ることを避けた手堅い作品だ。

前作では「THE BLACK HALO」以降めっきり減退していた明朗なメロディを(恐らく意図的に)復活させており、それは私のような彼らに「メロディック・メタル」を求めているリスナーには好意的に受け止められた。

トミーの歌唱もロイ・カーンに比べるとクセのない歌声なので、よりストレートなメロディック・メタルが映えると思われ、個人的には本格的に「THE FOURTH LEGACY」~「EPICA」時代の路線に回帰してくれれば万々歳だったのだが、残念ながら本作ではより「ダークでメランコリック」な路線が選択された。

とはいえ、前作より全体的にダークな雰囲気が強まり、随所でヘヴィさが強調されているとはいっても、#4のようなメロディック・メタル然とした曲もあるし、アップテンポな楽曲もバランスよく収録されており、アルバムのメリハリは充分。

プロデューサーであるサシャ・ピートの差し金と思われる、クラウディ・ヤンやトーマス・リトケといったAVANTASIAと同じ顔ぶれを揃えた「HAVENコーラス」の導入も、彼らの特色であるシンフォ・アレンジをより重厚にすることに貢献しているし、#5におけるシャルロット・ウェッセルズ(Vo: DELEIN)、#10におけるアリッサ・ホワイト=グルーズ(Vo: ARCH ENEMY)といったゲストの起用も効いている。

らしさと新機軸が巧みなバランスで構築され、他のバンドの追随を許さないKAMELOTならではのドラマティックなメタル・ワールドを描き出す完成度の高いアルバムだが、メロディック・メタルとしてはいささかヘヴィな要素が強すぎて「わかりやすさ」に欠け、かといってダークなドラマに浸らせるという意味ではトミーのVoにカーンのような妖気が不足しているためにちと中庸な感があって、これまでのカタログと比して突き抜けた傑作としての手応えを感じられないのがもどかしい。

一方で、年々加速度的にCDが売れなくなっている昨今の状況にあって、本作がアメリカで過去最高の売上を記録していることは、長年のファンとしては喜ばしい。チャートアクション的にも、ドイツ(14位)や日本(28位)といった主要国で過去最高位を記録している。【85点】

◆本作収録「Insomnia」のMV




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WHITESNAKE / PURPLE ALBUM

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第3期・第4期DEEP PURPLEのヴォーカリストでもあったデイヴィッド・カヴァデール率いるWHITESNAKEによる当時のナンバーのカヴァー・アルバム。

元々はジョン・ロードが亡くなったことを機にデイヴィッドがリッチー・ブラックモアに歩み寄り、BLACKMORE / COVERDALE的なプロジェクト、あるいは第3期DEEP PURPLEの再結成を想定して動き出した話のようだ。

しかし結局リッチーは乗らず、計画が頓挫しかけたところ、デイヴィッドの妻であるシンディが、「ホワイトスネイクとしてパープル・アルバムを作ってみたら?」と提案し、このアルバムが誕生することになったそうだ。タイトルはそのときのシンディの言葉がそのまま採用されているが、あまりにヒネリがなさすぎるような…。

脱退したダグ・アルドリッチに代わってレブ・ビーチがメイン・ギタリストに昇格しており、もう一人のギタリストには元NIGHT RANGERのジョエル・ホークストラが迎えられている。

発売前に発表された「Burn」のMVを観て、「これはデイヴィッドの衰えを示すアルバムにしかならないのでは…」と思っており、ある意味それは予想通りだった。どの曲もチューニングが下がっており、伸ばす高音は全てフェイクで逃げている。

ところが、意外なことにそれでも楽しめてしまったのだ。ヴォーカルが衰えてなお、やはり曲自体に力がある。私のHR/HMにおける嗜好の基本は80~90年代ですが、やはり70年代のハード・ロックにはその後のHR/HMが失ってしまったダイナミズムと味わいがある。

現代的なサウンド・プロダクションはもちろん、アメリカ人で固めたバンド・メンバーのせいもあってか、サウンドの感触は結構変わっている。より現代的なテクニックを備えたギター隊はもちろん、一番大きいのはトミー・アルドリッチのドラミングがイアン・ペイスのスタイルを真似る気が皆無と思われることだろう(苦笑)。

そんなわけでオリジナルに思い入れがある人には違和感がある仕上がりかもしれないが、完コピをするのであればわざわざアルバムを作る意味はあまりない。今のWHITESNAKEがやったらこうなりました、ということで、これはこれでいいんじゃないでしょうか。少なくとも後追い世代である私はそう思いました。

オリジナルより良い、とは思いませんが、若い人にはサウンド・プロダクションが古臭いオリジナルより聴きやすい可能性はあると思います。そういう若いオーディエンスに70年代のハード・ロックの魅力が伝わるとしたら本作をリリースした意味があるというものではないでしょうか(とはいえ本作を聴くのは基本的にオリジナルを知っている人たちばかりのような気もしますが)。

「Sail Away」や「Soldier Of Fortune」のようなバラード・タッチの曲は現在のデイヴィッドの枯れた歌唱が映えていて味わい深く聴けますね。

とはいえやはりここに収められた曲で私が一番好きなのは、デイヴィッド・カヴァデールが呼ぶところの「ヘヴィ・メタルと呼べる2曲」である「Burn」と「Stormbringer」なのですけどね!(もっともデイヴィッドが意味するヘヴィ・メタルというのは音楽的な意味というよりは「エモーショナルなテーマのない、SF/ファンタジー的な曲」という意味合いのようですが)。

なお、メロディック・パワー・メタル愛好家にとってWHITESNAKEといえばミケーレ・ルッピ(元VISION DIVINE, 現SECRET SPHERE)がキーボーディストとして加入した、という話題がホットなわけですが、どうせなら本作制作前に加入して、グレン・ヒューズ・パートを全て歌っていただきたかったという気持ちでいっぱいです。ライブに行けばミケーレの歌が堪能できるのでしょうか…?

◆「Stormbringer」のMV


◆「Soldier Of Fortune」のMV




CAIN’S OFFERING / STORMCROW

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元SONATA ARCTICAのヤニ・リマタイネン(G)と、STRATOVARIUSのティモ・コティペルト(Vo)を中心としたプロジェクトの、約6年ぶりとなるセカンド・アルバム。

6年ぶりとはいえ、ヤニとティモの二人はKOTIPELTO & LIIMATAINENの名義で「BLACKOUSTIC」というアコースティック・アルバムを発表しており、本国フィンランドではしばしばライブなどもやっているようなので、本人たちにはそれほど「久々」感はないのかもしれない。

前作でKeyをプレイしていたのは元SONATA ARCTICAのミッコ・ハルキンだったが、本作ではなんとSTRATOVARIUSの(今や元SILVER MOUNTAINだのRISING FORCEの名前を出す必要もあるまい)イェンス・ヨハンソンが加入している(加えてベーシストもMyGRAINのヨナス・クフルベルグに交代している)。

STRATOVARIUSからティモ・トルキが脱退した際、ヤニ・リマタイネンが加入するのでは? という噂もあっただけに、ここで「もしもマティアス・クピアイネンではなくヤニ・リマタイネンがSTRATOVARIUSに加入していたら」というパラレルワールド的なIFの世界が実現したようなものである(大袈裟ですが)。

本作で聴かれるのは、前作同様の哀愁系叙情メロディック・パワー・メタルであり、イェンスの加入効果なのかどうかは不明だが、よりシンフォニックで大仰になったアレンジが前作とのわずかな差異である。

いや~、期待してましたが、やっぱいいですね。こういうキレイめのメロディック・パワー・メタルこそ私のストライクゾーンど真ん中です。速い曲から泣きのインスト、バラードまで、どの曲にも流麗かつキャッチーなメロディが満ち満ちており、琴線に触れまくってきます。

ギタリストであるヤニ・リマタイネンが全ての作曲を手掛けているにもかかわらず、ギター・ソロの存在感が希薄なのが不思議だが、前作同様ティモ・コティペルトの歌唱は時にSTRATOVARIUS以上ではないかと思えるほどに輝いており、その独特の艶のある歌声の魅力を最大限に引き出している。もはやティモのことをマイケル・キスクやジェフ・テイトの出来そこない呼ばわりする人はいないだろう。

しかし本当にプロジェクトにしておくのはもったいないほどに哀メロのフックが効いている。ヤニ・リマタイネン脱退後のアルバムの方が好き、という奇特な方(失礼)を別にすると、SONATA ARCTICAファンが望む音はここにある、と言ってしまっていいだろう。【87点】

◆本作収録「Stormcrow」のオフィシャル・オーディオ


◆本作収録「I Will Build You a Rome 」のオフィシャル・オーディオ