NOZOMU WAKAI’S DESTINIA / ANECDOTE OF THE QUEENS

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昨年リリースしたデビュー・アルバム「REQUIEM FOR A SCREAM」が『BURRN!』誌で高評価を受け、年間投票ではブライテスト・ホープに選出されたプロジェクトの、前作の続編的な位置づけというミニ・アルバム。

デビュー・アルバムでは森川之雄(ANTHEM)、小野正利(GALNERYUS)、ロブ・ロック(IMPELLITTERI他)が歌っていたが、本作ではその前作でコーラスを務めていたFUKI(元LIGHT BRINGER)と声優歌手である榊原ゆいがメイン・ヴォーカルを務めている。

本作も前作に続き『BURRN!』誌の広瀬編集長に92点という大絶賛を受けているわけだが、冒頭を飾る「Breaking The Fire」を聴いてそれも納得。初期のCONCERT MOONを思わせるスピード・チューンはいかにも広瀬氏好みで、それは即ち「様式系正統派」を好むタイプのHR/HMファン(私です)の好みに合っているということである。ギター・ソロにクラシック(ドヴォルザークの「新世界より」)を挿入してくる所も、やや子供だましではあるが、その手のファンにはツボだろう。

とはいえアルバムを聴き進むと、いわゆる「様式系正統派」を基本路線としつつも、クラシカルなエッセンスが強く出た曲から、80年代スタイルのパワー・バラード、ハード・ロック然とした曲まで、結構バラエティに富んだスタイルを提示している。

楽曲のクオリティはおしなべて高く、寺沢功一(B: 元BLIZARD)や宮脇 “JOE” 知史(Dr: 元44MAGNUM~ZIGGY)といったジャパニーズ・メタル界を代表する歴戦のミュージシャンによるバックの演奏も文句なしだが、あまり強い個性を感じないのは本人が割とバックバンドなど裏方的なキャリアが長かったせいだろうか。好意的に考えれば「(日本のHR/HMファンが考える)王道をプロフェッショナルに追求している」ということかもしれない。

FUKIと榊原ゆいによるヴォーカルは、中途半端な男性日本人ヴォーカリストが歌ってしまったら月並みな「ジャパメタ」になってしまいそうな所を抑止するという意味で効果的に機能しているし、#2「I Miss You」や#3「Love To Love」(このタイトルでマイケル・シェンカー風味丸出しなギター・プレイはあざとすぎる/笑)などは女性が歌っていればこそ魅力が増している、という気がする。

ただ、やはりボーナス・トラックとして収録されている「Breaking The Fire」のロブ・ロック・バージョンを聴いてしまうと、やはりストロングな曲については男性ヴォーカルの方が映えるのかな…という気が。いや、FUKIも充分パワフルで上手なシンガーですが、英語歌唱のストイックなメタル・チューンだと彼女の歌唱の魅力が発揮しきれていない気がします。

でもまあ、「様式系正統派」なんていう日本人にしか通用しないコトバに魅力を感じてしまうタイプのファンであれば「Breaking The Fire」のロブ・ロック・バージョンを聴くためだけでも買う価値があると思います。あとは島さんのように広瀬氏から梯子を外されないといいですね…(苦笑)【81点】

◆本作のトレーラー映像


◆「Breaking The Fire」のリリック・ビデオ


◆「Love To Love」のリリック・ビデオ




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POWERWOLF / BLESSED & POSSESED

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前作「PREACHERS OF THE NIGHT」が本国ドイツでチャートのNo.1に輝いた、今最もホットなドイツのメタル・バンドの通算6作目のアルバムにして日本デビュー作。なぜか「狂気崇拝」というLOUDNESSみたいな邦題が付いています。

ドイツのチャートで1位って、HR/HMが強いとされるあの国でも他にはSCORPIONSとACCEPTしか獲ったことないですからね。そんなバンドが6枚目になるまで日本デビューできなかったというあたり、日本におけるメタルの状況が悪化していることを痛感させられます。

ゴシック・メタルとかブラック・メタルといった、欧州では人気のあるメタルのサブジャンルについて、なかなか日本ではその人気や認知が追い付かない状況で、メロディック・パワー・メタル系だけはかろうじてフォローできているか…? という感じだったのですが、ここ数年、その手のサウンドでさえ落伍しつつあるのが現状です。

このPOWERWOLFの音楽性はメロディックでドラマティック、速い曲もちゃんとやってる、かつての日本だったら青田買い間違いなしのサウンドなのですから、もうこの手の音ですら日本盤出すのに慎重にならざるを得ない、ということですよね(その割にはもっとB級なバンドがしれっと日本盤出していたりするのですが、その辺は所属レーベルとの契約の問題など、色々と「大人の事情」があるのでしょう)。

まあ、このバンドの場合メンバーのルックスや名前がちょっとイロモノっぽくて、日本の正統派メタル・ファンはそういうイロモノっぽさをあまり好まない傾向があるというのも事実ですし、アートワークも日本のメロディック・パワー・メタル・ファンの好みとはちょっと距離があるので、慎重にならざるを得ない気持ちもわからないではないのですが…。

で、本作の内容ですが、アンセム・タイプのタイトル曲#1からスピード・チューン#2へ、という流れで思わずデジャヴ的なものを感じるほど前作と似た仕上がり。特に私は前作と一緒に買っただけに「双子のアルバム」的な印象を抱いてしまいました。

チャート成績的には前作には及ばず、ドイツのチャートで3位にとどまったのは、ちょっぴりマンネリ感があったのかもしれませんが、もちろん前作が優れたメタル・アルバムだっただけに本作の仕上がりにも隙はない。いや、むしろ楽曲のクオリティだけで言ったら前作以上。全曲捨て曲なしですが、特に#2の疾走曲「Dead Until Dark」からリード・トラックである「Army Of The Night」の流れ、メチャクチャかっこいいんですけど!

本作はデビュー以来の付き合いとなるプロデューサーのフレドリック・ノルドストロームが手掛ける欧州型メロディック・パワー・メタル・サウンドとして洗練の極に達している観があり、もはやこの路線でこれ以上の物が作れるのか? などと思ってしまうほど。

コンセプチュアルなバンドの佇まいから音楽的方向性、本国では大人気なのに日本ではサッパリ、という所まで含めてスウェーデンのSABATONにかなり通じるわけですが、このPOWERWOLFもLOUD PARKに出てもらいたいですねえ。大きいステージでライブが観たいです。

日本盤はIRON MAIDENやBLACK SABBATHのような大御所から、AMON AMARTHの普通声カヴァーに、CHROMING ROSEなどというジャーマン・メタル第一世代感涙のカヴァーまで収録されたカヴァー・アルバム「METALLUM NOSTURM」がカップリングされて1枚分のお値段というお得仕様。これは買いですよ。【88点】

◆本作収録「Army Of The Night」のMV




POWERWOLF / PREACHERS OF THE NIGHT (2013)

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最新作「BLESSED & POSSESED」の日本盤リリースに合わせて、同時に「陰翳礼讃」なる陰陽座みたいな邦題で日本盤がリリースされた1作前の5枚目にして彼らの大出世作。

「出世作」などと言っても、この前作「BLOOD OF THE SAINTS」(2011)の時点で本国ドイツのナショナル・チャートで23位という、同時期のGAMMA RAYあたりと遜色ない成功を収めているのだが、何しろ本作はSCORPIONSの「CRAZY WORLD」以来、通算2作目となるドイツにおけるHR/HMアルバムのチャートNo.1獲得作である(ちなみに3作目となったのは本作の後にリリースされたACCEPTの「BLIND RAGE」でした)。

BLIND GUARDIANやEDGUY、AVANTASIAといった実力のあるアクトの力作があと一歩という所まで迫りながらたどり着けなかった本国のチャート1位をやすやすと(と言ってもデビューから8年、アルバム5枚を重ねているわけですが)獲得してしまったメロディック・パワー・メタル・アルバム、これは聴かないわけにいきません。

なるほど、これはなかなかにキャッチーに練り上げられたパワー・メタル・アルバムだ。明らかにHELLOWEEN以降の「ジャーマン・パワー・メタル」の伝統を踏まえつつ、その手のバンドが逃れられなかった「野暮ったさ」「イモ臭さ」がほとんどない。

そしてこのバンドの特色は何と言ってもメンバーがブラック・メタルのコープス・ペイントを思わせる白塗りメイクを施しており、「暗黒司祭と吸血鬼と狼男によるバンド」という設定があるらしい。まるで聖飢魔IIである。狼男的な意味ではMAN WITH A MISSIONか。

しかしそうしたキャッチーなキャラクター性やバンド・コンセプトもこれまでのメタル職人的なジャーマン・パワー・メタル・バンドにはないキャッチーさで、そういう部分もきっと人気の源なのだろうと思われる。

そういうキャラクター性やコンセプト(音楽性も)はスウェーデンの人気バンドSABATONにも通じるもので、欧州くらいHR/HMがポップ・ミュージックの一部として一般化している(?)と、ポップ・バンドと同様に「何をやっているか」と同じくらいに「どんな人がやっているか」が評価の対象になったりするのかもしれない。

もちろん「キャラが立っている」というだけでメタルが売れるはずもなく、実際の楽曲もいい。ちゃんとメロディック・パワー・メタルしていながらコンパクトかつキャッチーにまとまっていて、ライブで気持ちよく合唱できそうなアンセム感がある。

個人的にはヴォーカルの芝居がかった感じがあまり好みじゃないのと、もうちょっとインスト・パートに面白みというか聴かせ所がほしいという思いがあって、心の琴線にどストライクというわけではないのですが、このクオリティは充分評価に値すると思います。【85点】

◆本作収録「Amen & Attack」のPV



SYMPHONY X / UNDERWORLD

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私の宿願だったLOUD PARK 14への出演をわざわざキャンセルして制作した9枚目のオリジナル・アルバム(根に持ってる)。

前年の10月のライブをキャンセルしてからかれこれ9ヶ月近く待たせてリリースするんだから、よっぽど渾身のアルバムなんだよな…? とちょっと意地悪な思いで聴いてみた。

しかし残念ながら、「渾身」感は前作の方が上。前作は単純に二枚組でボリュームもあったし、作風もかなりヘヴィかつ高密度な、緊張感が高すぎて正直聴き疲れするほどの作品だった。

然るに本作は、ダンテの「神曲」にインスパイアされたコンセプト・アルバム、という、いかにも重そうな触れ込みに反して、ここ数作の彼らの作品の中では最もコンパクトというか、誤解を恐れずに言えば「肩の力が抜けた」作風だ。

前作ではガナるばかりという印象だった(よく聴けば必ずしもそうではないのだが)ラッセル・アレンも、本作では「メロディを歌っている」という印象が強い。

とはいえ基本的な方向性は変わっていない。ヘヴィなリフと、プログレッシヴ・メタル風の緊張感ある曲構成・アレンジによるコンビネーションの妙が彼らの音楽の骨格を成しており、その点に裏切りは一切ない。

リフ・ワークもね、あらためて思うのは故ダイムバッグ・ダレルのいわゆる「PANTERA風リフ」に影響を受けたギタリスト/バンドは数多けれど、ここまでそれを「自分のもの」として消化し、バンドのオリジナリティに還元、昇華させたのはマイケル・ロメオだけなんじゃないかということですね。

真面目な話、PANTERAファンとSYMPHONY Xファンってほとんど被ってなさそうだけど、実はPANTERAのイメージではなくサウンドが好きな人だったら、近年のSYMPHONY Xは結構楽しめるんじゃないか、って気がしてます(だからこそ、LOUD PARKのような色々な層のメタル・ファンが集う場でプレイしてほしい)。

本作の「肩の力が抜けた」コンパクトな作風は、バンドの成熟を感じさせる完成度の高さだし、単純に聴きやすくもあって印象は悪くないのだが、これといったキメ曲の不在、そして(これはここ15年近くずっとだが)かつて私が愛した叙情性の不足が、「満足」まではもたらしてくれないというのが正直な所(#10のピアノ・パートなどはかなり良い線いっているのだが)。

今年はスケジュール的に無理っぽいので、来年のLOUD PARKでお待ちしています(しつこい)。【84点】

◆本作収録「Nevermore」のリリック・ビデオ


◆本作収録「Without You」のリリック・ビデオ



VOLCANO / MELT

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前作発表後、坂本英三とのアニメタル的プロジェクト「哀戦士」や、かつての「STAND PROUD!」に続くメタル名曲カヴァー・アルバムの発表を経てリリースされたニュー・アルバム。

前作はサウンド・プロダクションに難があったが、本作ではかなりその点が改善されており、楽曲自体もよく練り込まれていて、磨き抜かれた刃物を思わせるソリッドさがある。

このモダンではないがエクストリームなメタル・サウンドにNOVのアグレッシヴでありながらメロディを歌える声はベストマッチで、これはケミストリーと呼ぶべきものに違いない。

セカンド「DAVI」や前作にあったジャパメタ風味は今回控えめで、攻撃的であることに焦点を絞ったと思われる作風が潔い。

とはいえ、古典的なHR/HMの旨味をたたえた#4や、かつて在籍したGARGOYLEをブルータルにアップデートしたかのような#5などがアルバムを一本調子にさせないスパイスとして機能させているのもベテランならではの妙技。

本作の私的ベスト・チューンは#10~#11の組曲構成な「Fire Sky」、という私の個人的な趣味としてはもう少しドラマティックな泣きの要素をフィーチャーしてほしいが、今回全体的にギター・ソロはコンパクトながら、やはり随所にハッとさせられるリード・ギターのフレーズが配されているし、これくらい削ぎ落とされ、絞り込まれていた方がメタルとして「クール」というものだろう。

これだけのメタル・アルバムを作り出すことができるにもかかわらず、どうもご本人の人柄(酒癖?)に問題があるようで、自ら手売りに近いような形でアルバムを売ることを強いられているというのが非常にもったいない。

その奏でるリード・ギターを聴けばものの10秒でこの人には特別な才能があることが明らかなのだから、屍忌蛇氏に創作と演奏だけに集中できる環境が用意されることを願ってやまないのですが…。【84点】

◆本作のトレーラー映像