DARK MOOR / PROJECT X

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前作発表後、初の来日公演が実現した彼らの通算10作目となるフル・アルバム。

前2作でプレイしていたビリー・シーン・タイプのテクニシャン、マリオ・ガルシア(B)が脱退しており、後任としてマリオの前任だったダニエル・フェルナンデスが復帰している(クレジットは「ダニ・フェルナンデス」になっている)。ただ、本作でベースをプレイしているのはリカルド・モレノという人物。

アルバム・タイトルは「10作目→ローマ数字で10はX→Xといえば『X-FILE』→じゃあPROJECT Xにしよう」という連想ゲーム的なプロセスで決定し(日本人には『X-FILE』というよりはかつてNHKで放送されていたドキュメンタリー番組を想起するが)、アルバムの歌詞テーマも『X-FILE』的な、SF的な要素を扱ったものになっている。

とはいえ一貫したストーリーを持つコンセプト・アルバムというわけではなく、共通のテーマを持つ独立した楽曲による「ゆるいコンセプト作」とのこと。

SFがテーマとはいえ、近未来的なスペーシーでコズミックなピコピコアレンジがされているということもなく(いや、一部それっぽいアレンジもなくはないが)、歌詞を読まずに音だけを聴いてSFを意識させられることはない。

前作「ARS MUSICA」の時点でパワー・メタル色は大きく後退してメロディアス・ハード的な雰囲気が出てきていたが、本作においてもその路線が推し進められ、もはやパワー・メタルどころかメタルと呼べるかどうかも怪しいレベルにソフトになっている。

特に本作では「MARA BOSTON」なる合唱隊が参加しており、そのクワイアが特に大きくフィーチュアされた#3、#5、#6、#10といった曲はもはやQUEENかMEAT LOAFかといった趣で、楽曲としてのクオリティは高いが、哀愁に乏しく、正直「これがDARK MOOR?」という違和感は禁じ得ない。

それらの曲のインパクトが良くも悪しくも強いため、本作の印象自体がちょっと「彼ららしくない」と感じてしまうものになってしまっているというのが本音で、音楽的なクオリティとは関係なく印象はあまりよろしくない。

しかし初期からの彼らのファンにとって本作の目玉は、彼らのメロディック・パワー・メタル・バンドとしての絶頂期である2nd、3rd時代の楽曲の現ラインナップにおけるリ・レコーディングを収めたボーナス・ディスクである。

ただ、ここ数年メロディック・パワー・メタル系のバンドにおける過去曲の再録はしばしば行なわれているが、残念ながらそれがオリジナルの魅力を上回っていた例はない。

SONATA ARCTICASECRET SPHEREをはじめ、やはりこの手の音楽というのは「若さの発露」なのか…と感じさせられる結果に終わっており、過度な期待はせずに聴いてみたところ、案の定でした。

まあ、ほぼSONATA ARCTICAのケースと一緒ですね。ギター・プレイから泣きとアグレッションが失われ、ドラム・サウンドも良く言えばナチュラルに、悪く言えば迫力不足になっており、およそパワー・メタルとしてのテンションに欠ける。

そう言うとサウンド・プロダクションの問題に聴こえるかもしれませんが、当時も今も同じスタジオで微妙なサウンド・プロダクションであることに変化はなく(変化してくれ)、それでも当時の音の方が悪いなりに迫力はあったのだから、やはり意図的な音作りの問題なのでしょう。

アルフレッド・ロメロのヴォーカルの持ち味を活かした結果こういうソフトなサウンドになったのかもしれないが、女性シンガーだったエリザ・C・マルティンより男性であるアルフレッドのヴォーカルの方が勇壮さやパワーに欠けるってのもどうなのか。

まあ、原曲が半端じゃなく良いし、アルフレッド・ロメロの方が上手いは上手いので、原曲への思い入れがそれほど強くなければ「これはこれでアリ」なのかもしれませんが…。

ひょっとするとこのボーナス・ディスクは、新機軸が目立つ本編でオールド・ファンが離れないように、「麗しき過去」を思い出させるために付けたのかもしれませんが、個人的には逆にこれを聴いてこのバンドへの思いが成仏してしまった感じです。【81点】

◆本作収録「Gabriel」のMV


◆本作収録「Imperial Earth」のMV




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DEF LEPPARD / DEF LEPPARD

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前作「SONGS FROM SPARKLE ROUNGE」以来7年ぶりとなる10作目のアルバム…って、前作のレビューを書いてからもう7年も経ったのか…。

高校に入学したばかりだった人が大学を卒業するくらいの年月。私は当時もサラリーマンで、今も同じ会社でサラリーマンをやっているので、そんなに時が流れた実感がありませんが、前作発表時に学生さんだった読者の方はきっと人生が大きく変わっていたりするんでしょうね、などとつい感傷に浸ってしまったり。

その間、ライブ・アルバム「MIRROR BALL – LIVE&MORE」や、ラスヴェガスでのレジデンシー公演の様子を収録した映像作品「VIVA! HYSTERIA」がリリースされていたこともあって、余計にそんなにご無沙汰感もないのですが。

前作を最後に、デビュー以来所属していたUNIVERSAL MUSIC GROUP傘下の『Phonogram / Mercury』を離れている。

レコード会社は契約更新を希望しなかったし、バンド側もそれを求めなかったそうだが、前作を全米5位に送り込んだバンドでさえ契約更新されないとは世知辛い時代ですね。

そんなわけで本作は日本では新興のワードレコーズ、海外では90年代までにヒットを飛ばしたアーティストが数多く所属する(そしてなぜか欧米におけるBABYMETALのリリース元でもある)ドイツの大手インディー・レーベル『earMUSIC』からのリリースとなっている。

正直な所、「ADRENALIZE」以降のDEF LEPPARDのアルバムというのは、どれも単体で見たときに文句をつける要素などない(問題作とされた「SLANG」でさえも)のですが、ふと「久しぶりにDEF LEPPARD聴こうかな」と思ったときに手が伸びるのはやはり「HYSTERIA」か「PYROMANIA」であり、そういう意味では新譜を聴く意味あるのか? という疑念が頭をもたげていた昨今。

ただ、本作はメンバーが「HYSTERIA」以来の傑作、と発言し、10作目にして初のセルフ・タイトル作ということもあって、ちょっと期待させられてついポチってしまった。

冒頭を飾る「Let’s Go」のリフなどはモロに往年の大ヒット曲「Pour Some Sugar On Me」を彷彿させ、2曲目「Dangerous」はメンバーいわくこれまた「HYSTERIA」収録の「Run Riot」で表現しきれなかったものを実現できた曲、とのことでそれっぽい。

ベースがリードするファンキーな#3「Man Enough」もHR/HMではないが80年代っぽくて気に入ったし、メンバー全員が交互に歌うパートがある#4「We Belong」はなんともノスタルジックで感傷的な気持ちにさせられる(実際どこかで聴いたことあるメロディのような/笑)佳曲。続く「Invincible」もアップテンポでノリがいいのに、郷愁とも何ともつかぬ暖かい気持ちにさせられる秀曲で、これはたしかに傑作かも…と思った。

ただ、残念ながらその後5曲目までで高まった気持ちをさらに高めてくれる瞬間はなく(それ以降の曲がつまらないというわけではない)、私の中で「PYROMANIA」「HYSTERIA」越えをすることはなかった。そういう意味ではやはり「ADRENALIZE」以降のDEF LEPPARDのアルバムのひとつ、ですね。

もちろんそんじょそこらのバンドのアルバムとは比較にならないクオリティだし、聴いて損をしたとは全く思わないどころか、頭5曲を聴けただけでも買ってよかった、と思ってますけどね!

個人的にセルフタイトルの所以は、前々作「X」や、前作「SONGS FROM SPARKLE ROUNGE」に多少あったトレンドへの目配りがない、純度100%のDEF LEPPARDサウンドを、(外部ソングライターを入れない)メンバーだけの力で実現した、ということなのではないかと思われます。いや、インタビューで語られる通り「いいタイトルが思い浮かばなかった」という事情もあるんでしょうけど(笑)。

◆本作収録「Let's Go」のMV




FOR MY PAIN… / FALLEN (2003)

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前回、フィンランドのノリノリ系ゴシックについてのエントリーを書いたわけですが、そこで紹介しきれなかったアルバムを一枚紹介したいと思います。

本作はフィンランドにおけるノリノリ系ゴシック・メタルのブームが頂点に達しつつあった2003年に発表されたアルバム。

ただ、このバンドはプロジェクトで、メンバーは皆それぞれ自分のバンドを持っているキャリアのある人間の集まりだった。その参加メンバーは以下の通り。

Vo:ユハ・キルマネン(REFLEXION)
G:ラウリ・トゥオヒマー(CHARON)
G:オリ=ペッカ・テッレ(元ETERNAL TEARS OF SORROW)
B:アルッティ・フェテレイネン(元KALMAH, ETERNAL TEARS OF SORROW)
Key:ツォーマス・ホロパイネン(NIGHTWISH)
Dr:ペトリ・サンカラ(元KALMAH, ETERNAL TEARS OF SORROW)

NIGHTWISHのツォーマスが参加しているというだけで豪華なわけですが、当時KALMAHやETERNAL TEARS OF SORROWといったバンドも気に入ってよく聴いていただけに、このアルバムはチェックせずにいられませんでした。

赤髪のヴォーカリスト、ユハ・キルマネンのみほぼ無名でしたが、ETERNAL TEARS OF SORROWの「A VIRGIN AND A WHORE」でゲスト・ヴォーカルとして参加しており、個人的に彼が参加していた曲が非常にツボだったので、そういう意味でも期待値が高かったと言えます。

で、アルバム内容は、これが笑ってしまうほど典型的なノリノリ系ゴシック・メタル。KALMAHやETERNAL TEARS OF SORROWのようなメロデス的要素も、NIGHTWISHのようなシンフォニック・メタル的な要素もなく、完全に当地のトレンド・フォーマットをなぞった感じです。

「ちょっと流行りの音楽をやってみたかった」のか「小遣い稼ぎ」なのかわかりませんが、もちろん優れたミュージシャンの集まりだけにその完成度は高く、本国フィンランドのヒット・チャートで7位にランクインする成功を収めます。

翌年に出たシングル「Killing Romance」のクレジットには既にツォーマス・ホロパイネンの名前が消えていましたが、こちらもフィンランドのシングル・チャートで7位を記録とまずまずの成果を残しましたが、そのシングルを最後に活動を停止しています。

何しろメンバー全員掛け持ちの「プロジェクト」だけに無理もありませんが、本作の完成度の高さを考えると5年に1枚とか、そういうペースでもいいので続けてほしかった気もします。

実際このメランコリックかつキャッチーなサウンドは、当時かなりの勢いで量産されていたこの手のバンドの中でもトップクラスの完成度で、ヴォーカルのクセがあまり強くなく、ナルシスティックな印象が(比較的)薄いこともあって、聴きやすさではピカイチでした。強いて難点を言えば、楽曲の平均点が高いがゆえに「キメ曲」を欠くように映ることでしょうか(個人的にはアップテンポの#5「Rapture Of Lust」などかなりのお気に入りですが)。

このメンツ、このレベルの作品が日本盤リリースされなかったのですから、この手のサウンドは日本で売れないと思われていたんでしょうねえ…。実際には結構日本人好みの音楽だと思うんですけどね(当時リリース元だった「Spinefarm」が「UNIVERSAL MUSIC」に買収されたばかりのタイミングで、その辺の権利問題が色々あったのかもしれませんが)。【85点】

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◆本作収録の「Queen Of Misery」

これ以外の動画は現地のユニバーサル・ミュージックによってガッチリ保護されていて日本では観られないようになっていました…。これも発見されたら観られなくなるのかも。

◆本作収録の「Rapture Of Lust」のライブ映像(オーディエンス録画)

ヴォーカルも割と美形クンなんですけどね。


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フィンランドのノリノリ系ゴシック・メタルを振り返る

来週行なわれるVAMPSのライブにフィンランドのHIMがゲストとして参加するそうですね。

HIMのライブは一度観てみたいと思っていたし、ラルク世代な私としてはむろんVAMPSに対してもネガティブな感情は一切ないので、観られるものなら観たいのですが、なにぶん平日で、最近ちょっと忙しいのでなかなか難しそうです。

せっかくフィンランド屈指の大物であるHIMが来日するということで、それをきっかけにHIMを含む、というかHIMが創ったと言ってもいい00年代に一世を風靡したフィンランドの「ノリノリ系ゴシック」ブームについて回顧したいと思います。

「ノリノリ系ゴシック」というのは日本のマニアの間での呼び方で、フィンランド本国では単に「ゴシック・メタル」と呼んでいたようですし、日本でもレコード会社やメタル専門媒体でそういうマニアの間での俗称を使うケースはほとんどなかったと記憶しています。

ただ、フィンランドにおけるゴシック・メタルは、特に日本人がイメージするところのそれにくらべると格段にキャッチーで、しかもヴォーカルにカリスマ的な魅力を持つ(そしてクセの強い歌い方をする)人が多く、個人的には日本のヴィジュアル系に通じるものを強く感じていました。そういう意味で、VAMPSのファンとの相性は悪くないのではないかと思います。

そんな「ノリノリ系ゴシック」のバンドを紹介していきます。だいぶ縦にスクロールが長いエントリーですが、それは主にYouTubeのせいなので、動画を観なければそんなに時間かからずに読めます(笑)。

HIM

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ヴィレ・ヴァロー(Vo)を中心に1991年に「HIS INFERNAL MAJESTY」として結成され、1997年にデビューした、言うまでもなくこの手のジャンルのパイオニアであり代表格。自らの音楽を「LOVE METAL」と形容し、本国フィンランドはもちろん、ドイツをはじめとする欧州各国で絶大な人気を誇る。2005年にアルバム「DARK LIGHT」で全米デビュー。50万枚以上を売り上げてゴールド・ディスクに輝くというフィンランドのアーティスト史上最高の成功を収め、押しも押されもせぬ世界的な人気バンドの仲間入りをする。





SENTENCED

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彼ら自身が「ノリノリ系ゴシック」にカテゴライズされることはあまりないが、ノリノリ系ゴシックにカテゴライズされるバンドの音楽スタイルをいち早く世に提示した、いわば「先駆者」というべきバンド。元々はデス・メタル・バンドで、メロディック・デス・メタルの先駆けのひとつでもあった(日本では未だにそのイメージの方が強い)。2005年、永眠。





TO/DIE/FOR

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1993年から活動していたハード・ロック・バンドMARY-ANNを母体に、1999年に誕生したバンド。この手のバンドで最も早く日本盤リリースが実現したバンドのひとつでもある。ニュー・ロマンティックをはじめとするニューウェーブからの影響色濃いキャッチーなサウンド、それに対してメタリックな感触も他の同系バンドより強かったことが日本で注目されたポイントだった。数多くのメンバーチェンジや活動休止を挟みつつ、現在も活動中で、今年アルバムもリリースした。





THE 69 EYES

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1991年結成。元々はMOTLEY CRUEや母国の英雄HANOI ROCKSに影響を受けたスリージーなハード・ロックン・ロールをプレイするバンドだったが、THE CULTやTHE MISSONの影響の下、ダークでゴシックな音楽性に移行していき、1999年にHIMのヴィレ・ヴァローがコーラスで参加したシングル「Wasting The Dawn」が本国でヒットして注目され、2000年のアルバム「BLESSED BE」で本格的にブレイク。次作「PARIS KILLS」(2004年)でドイツでも成功を収め、欧州における人気を確立した。





ENTWINE

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1995年から活動しているバンドだが、人気を得るようになったのは現在のヴォーカリストであるミカ・タウリライネンが加入した2000年以降。ダークでゴシックな中にもキャッチーな曲作りのセンスが光り、本国ではシングル・ヒットも多かったが、次第にHR/HM色が薄くなり、エモ/スクリーモ寄りの音楽性に移行していった。





NEGATIVE

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ここに紹介したバンドの中で唯一(?)『BURRN!』誌にプッシュされ、日本での知名度がそこそこあるバンド。Voのヨンネ・アーロンが日本人好みの美形(欧米人にとってはやや女性的過ぎてオトコとしての色気が足りないようだが)だったことに加え、ゴシック色がそれほど強くなく、グラマラスなハード・ロックとして聴けるのがポイントか。本国でも人気が高かったが、2010年の「NEON」を最後に実質的に活動休止状態に。





POISONBLACK

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SENTENCEDのヴォーカリストであり、ギターも相当な腕前であるヴィレ・レイヒアラが2000年に自らがギターを弾くためのサイド・プロジェクトとして結成。2003年のデビュー・アルバムではCHARONのJ.P.レパルオトがVoを務めていたが、セカンド・アルバムからはヴィレ・レイヒアラがヴォーカルも兼任するようになる。後期SENTENCEDを少し大衆的にしたようなサウンドを展開、そのやさぐれた男臭いサウンドはこの手のバンドの中では異色ながら、なかなか魅力的である。





CHARON

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1992年に結成され、当初はデス・メタル寄りのスタイルだったという。SENTENCEDのツアーの前座を通じて知名度を上げたという縁も強く、基本的には後期SENTENCEDのフォロワーといっていいだろう。他のノリノリ系ゴシック・バンドに比べて硬派な印象が強い。本国でもアルバムやシングルがチャートの上位に入るなどそこそこ成功していたが、2005年の「SONG FOR THE SINNERS」を最後にアルバムのリリースが絶え、2011年に解散が報じられた。VoのJ.P.レパルオトはPOISONBLACKのファースト・アルバムでヴォーカリストに抜擢された。





LOVEX

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フィンランド国内におけるノリノリ系ゴシックの大流行を受けて2004年に大手メジャー『EMIフィンランド』が契約、2006年にデビューするや1枚目のシングル「Bleeding」がいきなり2位、2枚目のシングル「Guardian Angel」で早くも1位を獲得するという大ヒットを記録。もはやゴシックの持つアンダーグラウンドなムードはほぼ皆無のメジャー感溢れるサウンドで、正直僕はこのバンドが出てきたときもはやノリノリ系ゴシックは終わったと思いました。現在は「脱ヴィジュアル系」して、ポップ・ロック・バンドとして活動中。日本の雅-MIYAVI-とのコラボレーション実績もあり。




HIMが欧州で本格的にブレイクした2000年ごろから始まったこのブームは、2003年~2005年ごろをピークに徐々に沈静化していき、2010年になるころにはほぼ終息していました。

正直日本では(レコード会社的な問題があったとはいえ)HIMのアルバムが日本盤リリースされたのさえ2005年に彼らが全米デビューを果たしてから、という有様で、いくつかのバンドがポニーキャニオンやキングといった、ワールドワイドのメジャー契約を持たないアーティストのCDをリリースしているレコード会社から日本盤リリースにとどまったため、一部のメタル・ファン以外の注目を集めることはありませんでした。

個人的にはV系のバンドを好むリスナーにとって一番親和性のある洋楽ロックだったと思っているのですが、私の周囲にいたV系バンドのファン(バンギャ)を見る限り、彼女らは基本的に海外のバンドにあまり興味を示さないし、示したとしてもMARYLIN MANSONやSLIPKNOTといったアメリカのメジャー・バンド止まりでした。

そして個人的な所感としてはそれらにしても「洋楽も聴く自分アピール」のために聴いている感じで、「日本のロックと全然違ってすごい」くらいの感想は持っていても、自分が追っかけている日本のV系バンドと同じような意味で「好き」という感じではなさそうでした(彼女たちにとってはやはりライブを通じて実際に「触れ合える」ということが重要だったというのも大きそうです)。

私はV系の「適度にハードで哀愁がある」という、文字で形容すると北欧メロディアス・ハードとそんなに変わらない音楽そのものが好きだったので、この手のノリノリ系ゴシック・バンドも好きでよく聴いていました。私と同じような嗜好を持っている人であれば気に入る人もいるのではないでしょうか。

実際フィンランドでは日本のV系バンドも結構人気があって、かのティモ・トルキの娘などもヴィドールやらGACKTやら、日本のV系アーティストに入れ込んで父親を困惑させていたようですし、たぶんファン層は被っていたんじゃないかと思います。

まあ、V系としてこれらフィンランドのノリノリ系ゴシック・バンドを見ると、だいたいのバンドにおいてイケメン(?)なのはヴォーカリストだけで、他のメンバーはただのメタル野郎、というケースが多かったのも、バンギャの皆さん的には評価できないポイントだったかもしれません(笑)。

そして、HR/HMファンにとってはいささか軟弱というかオカマっぽいイメージのため、メタル・ファンの間での人気も今一つ盛り上がらなかったという、V系にもメタルにもなりきれないどっちつかずな存在で終わってしまったのが残念なところです。

今でこそフィンランドといえば世界でも屈指のメタル大国として知られていますが、2000年代初頭は「メロスピ」と呼ばれたメロディック・スピード・メタルと、この「ノリノリ系ゴシック」のバンドが次々登場したおかげで「すごい! フィンランドからは次々と僕好みのバンドが出てくる! どうなってんだこの国は!」と興奮したものです。

メロディック・パワー・メタルと違って、基本的にはフィンランドローカルのムーブメントで終わってしまったジャンルなので、インターナショナルな「HR/HMの歴史」に載ることもなく、再評価されることも当分なさそうなので、こうしてちょっとまとめめいた文章を書いてみました。

MAGNUS KARLSSON’S FREEFALL / KINGDOM OF ROCK

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今やメロディアスなHR/HMを好むファン御用達となっている『Frontiers Records』お抱えの職人ソングライター/プレイヤーとして知られるマグナス・カールソンのソロ・プロジェクト第二弾。

本作も前作同様、マグナスが全ての曲を書き、ドラムを除く全てのパートを演奏(ドラムは彼のキャリアのスタートとなったMIDNIGHT SUN時代からの付き合いである凄腕、ハイメ・サラザールがプレイ)しており、それぞれの曲に異なるヴォーカリストをゲストとして迎えている。

今回の楽曲とシンガーの一覧は以下の通り。

01. Kingdom of Rock (ヨルン・ランデ:元MASTERPLAN他, JORN, ALLEN / LANDE)
02. Out of The Dark (ヤコブ・サミュエル:THE POODLES)
03. No Control (ジョー・リン・ターナー:元RAINBOW, YNGWIE MALMSTEEN’S RISING FORCE, DEEP PURPLE, H.T.P.他)
04. When The Sky Falls (トニー・マーティン:元BLACK SABBATH)
05. Angel Of The Night (デヴィッド・リードマン:PINK CREAM 69)
06. I Am Coming For You (マグナス・カールソン)
07. Another Life(リック・アルツィ:AT VANCE, MASTERPLAN)
08. Never Look Away (トニー・ハーネル:元TNT, STARBREAKER)
09. A Heart So Cold (ハリー・ヘス:HAREM SCAREM)
10. The Right Moment (レベッカ・デ・ラ・モッテ)
11. Walk This Road Alone(マグナス・カールソン)

ヨルン・ランデやトニー・ハーネルといった、マグナスと一緒にプロジェクトをやっている人たちもいるが、本作はどちらかというと『Frontiers Records』人脈のゲストを集めたという感じで、本人的にはジョー・リン・ターナーやトニー・マーティンといった人たちが目玉という感じのようだ。

しかしかと言ってその二人が歌う曲がベストかというと、むしろジョーの歌う「No Control」なんて本作で一番地味なんじゃないかと思うほどで、前作同様、凡百のバンドであればキャリアの代表曲となるような充実した楽曲が目白押し。

前作に何曲かあったあからさまにメタリックな曲はないものの、まったりしてしまうようなミドルテンポの曲などはなくスムーズに最後まで聴き通せるのは卓越したソングライティング力の賜物だろう。

どの曲も秀逸ですが、マグナスのデビュー・バンドであるMIDNIGHT SUNのシンガーでもあったヤコブ・サミュエルが歌う「ベース以外はMIDNIGHT SUN再結成」な#2「Out Of The Dark」、トニー・マーティンが歌う、まさにトニー・マーティン在籍時のBLACK SABBATHを思わせる荘厳かつドラマティックな#4「When The Sky Falls」、前作に引き続き参加トニー・ハーネルが歌る胸キュンなハード・ポップ・チューン#8「Never Look Away」あたりは堪らないものがある。

唯一の女性シンガーであるレベッカ・デ・ラ・モットは本作が実質的なデビュー曲らしいが、この錚々たるゲスト・シンガー陣の一角として抜擢されただけあって堂々たる歌唱を披露しており、さながらハリウッド大作映画のエンディング・ロールに流れたとしてもおかしくないようなメジャー感を放っている。

そして実はヴォーカリストとしてもそんじょそこらの専任シンガーより上手いイケメン・ヴォイスの持ち主マグナス・カールソンが歌う2曲はどちらも哀愁が効いていて個人的なツボにグイグイ入ってきます。この人は本当に天から二物も三物も与えられてますね…。

音楽的には全く隙のない本作に何かしらケチをつけるとしたら「ロックの王国」なんていう中学生がつけそうなタイトルのセンスと、アートワークのセンスですかね(苦笑)。まあHR/HMというのは世の中一般でいう「センスの良さ」なんてクソくらえ、なジャンルなので小さな話ですが。

一時期、ちょっと「お仕事」感のある作品が目立ったマグナス・カールソンですが、前作といい本作といい、自分の名前が出る作品だとこうもクオリティの高い作品を出してくるあたり、やはり人間裏方よりもフロントに出たほうがいい仕事をするということでしょうか(笑)。

惜しむらくはメンバーとして活動しているPRIMAL FEARのツアーですら「家族と一緒にいる時間を優先させたい」という理由で参加しなかったマグナスだけに、この素晴らしい楽曲をライブで体験する機会がなさそうなことですね…。まあ、元々AVANTASIAくらいにならないとこういうゲストだらけの作品をライブで披露するのは難しいわけですが…。【87点】

◆本作収録「Out Of The Dark」のオフィシャル音源