CAIN’S OFFERING 来日公演 at TSUTAYA O-EAST 感想

元SONATA ARCTICAのヤニ・リマタイネン(G)とSTRATOVARIUSのティモ・コティペルト(Vo)を中心としたプロジェクトであるCAIN’S OFFERING、2009年のデビュー作も、昨年のセカンド・アルバムも非常に耳なじみのいい哀愁系メロディック・パワー・メタルの秀作として愛聴していましたが、まさかライブが観られるとは思っていませんでした。

というか、むしろ昨年セカンド・アルバムがリリースされたことさえ驚きで、「きっとアルバム1枚の単発プロジェクトだろう」とさえ思っていました。基本的には日本のレコード会社主導の企画と聴いており、デビュー・アルバムも、私は大好きだったものの、さほど売れているという感じも、ネット上で騒がれている感じもなかったので、「次」を作るモチベーションはないだろうな、と。

もしライブの可能性があるとしたらFINLAND FEST(未だにLOUD & METAL ATTACKというフェス名になじめない)とか、そういうイベント的なものへの出演かな…と思っていただけに、こうして単独公演が決まったというのは本当に驚きというか、なにしろフィンランド本国を含め、一度もライブをやったことがないバンド(プロジェクト)なので、かなり招聘する日本側のパワープレイがあったのではないかと推察されます。

しかしタイミングが悪いですよ。何しろファン層がほぼ90%以上被っているであろうSTRATOVARIUSの来日公演の翌月。普通の人は月イチなんて頻度でライブに行かないですからね。しかもその後次々とファン層が被っていそうなバンドの来日が発表され、過当競争にさらされることに。

実際ネット上では公演日間近のタイミングで購入したチケットの番号の若さから、まったくチケットが売れていないのではないか…などと噂されていました。

そんなわけでファンとしてこの危機に馳せ参じねばなるまい、と妙な使命感を抱き、当日強引に仕事を切り上げて(というか後輩に押し付けて)渋谷のTSUTAYA O-EAST(この名前も未だになじめない)へ。

会場に入ってみて拍子抜け。結構入っている。まあ、密度的にはかなり余裕がある感じなので満員には程遠いものの、7割くらいは埋まっているのではないか。

ファン層は私のような30代~20代後半くらいがメインと思われ、平日だけに私のようなスーツ姿のサラリーマンが多いかと思いきや、意外と皆さん私服。メタT着用率も結構高い。有給を取られているのだとしたら、皆さんホワイト企業にお勤めで羨ましい(笑)。

唯一の懸念は、本当にチケットが売れてなくて招待券がバラまかれていて、さして興味のない人たちが「タダなら観てみるか」くらいのモチベーションで参加していて、まったく盛り上がらない、という事態である。

しかしそれは杞憂だった。客電が落ち、期待感を煽るSEが流れ始めると皆手拍子を始め、期待感を表明する。メンバーが登場してインスト・ナンバーの「I Am Legion」からセカンド・アルバムのタイトル曲「Stormcraw」に移行し、ショウがスタートする。

冒頭のあの印象的なコーラスはてっきり同期音源オンリーかと思いきや、実際にコーラスしている(同期音源も重ねているが)。髭を生やしてSONATA ARCTICA時代よりちょっと大人っぽくなった(でもやはり童顔&華奢なので、若干頭髪が後退していてもオッサン臭さはない)ヤニ・リマタイネンが意外といい声を出している。

「Stormcraw」のコーラスが終わってシンフォ疾走が開始された時点で鳥肌。やっぱこういう曲好きですわ。そして歌い出しに合わせてティモ・コティペルトが登場、得意の「マイクの左右持ち替え」をいつもより派手にキメる(笑)。ただしやはりリハ不足か、歌の入りが半拍ほど遅れてしまっていた(苦笑)。

この曲では恐らく現在のティモ・コティペルトの出せる最高音と思われるスクリームがスタジオ音源には収録されているが、さすがにあそこまでは上げていませんでした(笑)。でも、アレンジ上スクリームしなくても何とかごまかせそうな所を果敢にスクリームした所は評価されるべき(?)。

そしてティモ・コティペルトお得意の「アリガトー! ドモー!」という日本語を挟みつつ「The Best Of Times」、「More Than Friends」と続く。

ちょっと序盤イェンス・ヨハンソン(STRATOVARIUS)のキーボードがトラブっていたようだが(いつもの黄色いアヒルさんがいなかったせい?/笑)、サウンドは全体的には良好。ギターの存在感があまり強くなく、キーボードのサウンドのほうが目立つのはこのバンドの特性というべきだろう。

というかヤニ・リマタイネンの、メタル・ギターにしてはちょっとソフィスティケイトされた音作りが、イェンス・ヨハンソンの硬質でちょっとギターっぽいキーボード・サウンドと似通っていて、ソロをユニゾンで聴くと完全に一体化して聴こえてしまうことがより「ギターの存在感が薄い」という印象につながっていた気もする。

「11年ぶりの来日だ」と紹介されたヤニ・リマタイネンはオーディエンスの喝采を浴びて感無量といった感じでちょっと涙ぐんでいました。SONATA ARCTICAを解雇されたタイミングなど、結構しんどい時期もあっただろうと思われるだけに、見ているこちらもちょっとグッときましたね。

基本的にはセカンド・アルバムの曲を中心にセットリストは組み立てられており、ファーストからの曲はわずかに2曲。
個人的には曲単位でいうとむしろファーストの方に好きな曲が多いので、その点はちょっと残念。

このバンド(プロジェクト?)のサウンドやメロディというのは私にとってまるでスポーツドリンクのようにスッと身体に浸みわたるもので、ややもすると楽曲や演奏の細部に意識がいかなかったりするのだが、こうしてライブで観ると見えてくるものもある。「A Night To Forget」の低音パートは意外と歌いづらそうだな、とか(笑)。

とはいえ、ティモ・コティペルトは先日の来日公演同様、全体的には好調。ハイトーンも伸びているし、「Too Tired To Run」のようなバラードの歌唱にも艶がある。

そう、90年代の『BURRN!』誌では「劣化版マイケル・キスク」みたいな扱いを受けていたティモ・コティペルトですが、たしかに声域や歌唱の安定感といった点ではマイケルに劣るものの、この声の人間味溢れる艶はマイケルにはないんですよ。ファンの贔屓目かもしれませんが。

そしてライブ中盤で「ヤニと一緒に作ったSTRATOVARIUSの曲だ」とMCしてSTRATOVARIUSの最新作「ETERNAL」から「Shine In The Dark」がプレイされる。

先月のSTRATOVARIUSの来日公演で聴いたばかりなので、わずか1か月ほどのインターバルで、同じ曲を違うバンドの演奏で聴くというのはなかなかレアな体験である(笑)。こうして聴くとやはりCAIN’S OFFERINGっぽい曲だ。

ついでに言うと、日本盤ボーナス・トラックだったにもかかわらずプレイされた「Child Of The Wild」はアルバムで聴いたときと同様、あまりにもSONATA ARCTICAっぽい印象で、「まるでソナタだな」と思いました。その後「まさにソナタ」が来るとも知らずに。

冒頭でもちょっと触れたが、本日のライブは文字通りこのバンドの初ライブで、海外のメタル・バンドが日本で初ライブを行なう、なんていうのは私が記憶する限りSYMPHONY Xくらいのもので(ARMAGEDDONもそうだったかな?)、極めてレアなケースである。

それだけに、正直ライブの前半はまだバンドとしての一体感みたいなものはあまり感じられなかったし、NIGHTWISHを思わせる、あまりSTRATOVARIUSではやらない曲調の「Antemortem」をプレイしているときのティモ・コティペルトはステージ・アクションをどうすべきか模索しているようにも見えたが、ショウが後半に進むにつれ、パフォーマンスにバンド・グルーヴが感じられるようになってきた。きっと明日の大阪のライブは今日より良いのでは。

ヤニ・リマタイネンはティモ・コティペルトに負けじとよく動いており、このプロジェクトの中心が自分であることをステージングで主張していた。ソロの時はモニターに片足を上げ、上げた片脚にギターを乗せて垂直に立てて弾く通称「アレキシ弾き(別名・ザック・ワイルド弾き)」である(笑)。

一方、バンドにおける担当楽器を当てろと言われたら、恐らく10人中10人がドラマーだと当てそうなルックスのヤニ・フルラ(Dr)は割と縁の下の力持ちに徹している観があったが、ベースのヨナス・クフルベルグ(元MYGRAIN)はイマドキなルックスのイケメンさんで、なかなか存在感がある。

「Constellation Of Tears」や「Stolen Waters」といった疾走感の心地よさは今さら語るまでもないが、「My Heart Beats For No One」のような、最近のSTRATOVARIUSの音楽などにも顕著な、モダンなエッセンスのある曲がこのバンドの音楽を古めかしいクラシック・メタルの焼き直しに響かせることを防いでいる。

本編最後の曲が「On The Shore」というのは随分辛気臭い選曲だな…と思ったが、エンディングでスタジオ版よりはるかに長いヤニ・リマタイネンの熱いギター・ソロが展開され、ああ、これはヤニ君をフォーカスするためにこのタイミングでプレイしたんだ、と気づかされました。

一度袖に引っ込んでほどなくアンコールで再登場。「ヤニ・リマタイネンが昔いた、SONATA ARCTICAの曲だ」という曲紹介から、まさかの「My Selene」がプレイされる。曲名がコールされると場内は本日一番と言ってもいいほどの盛り上がりを見せ、あの時期のSONATA ARCTICAがいかに愛されていたかを感じさせられた。

こうして聴くと、10年以上前に作曲されたこの曲の時点で完全にCAIN’S OFFERINGと同じ作風である。ティモ・コティペルトが歌うことでより楽曲の輪郭が明確になり、キャッチーさを増したような印象を受ける。

いや~、しかしよくティモにSONATA ARCTICAの曲を歌わせたねえ。ティモにとっては後輩バンドというか、はっきり言えば「格下」であろうバンドの曲なのに、わざわざ新たに曲と歌詞を覚えさせてまで。これには招聘元や日本レコード会社からの強いリクエストがあったのではないでしょうか。

そしてラストは、近年稀に見る「明朗系メロスピ」の名曲として評価されていた「I Will Build You A Rome」。

哀愁派である私は、実はそれほどこの曲を高く評価していなかったのですが、こうしてショウのラストで聴くには実にピッタリな曲で、この例えにどれくらいの人が共感してもらえるかわかりませんが、LUNA SEAのライブが「Wish」で幕を閉じるときのような「終わってしまう名残惜しさと、それを明日への希望につなげていけるポジティブな気持ち」でなんとも胸がいっぱいになりました。

終わってみると90分、先日のSTRATOVARIUS同様、ややコンパクトで物足りなさもあったのですが、きっとこれくらいがティモにとってベスト・パフォーマンスができる長さなのかもしれません。

アンコールを2部構成にして、KOTIPELTO & LIIMATAINENでやっていたアコースティック・セットをやってくれても嬉しかったんですけどね!

アルバム2枚しか出していないこのバンドですら「Thorn In My Side」や「Rising Sun」のような私の好きな曲をやってくれない(後者なんて絶対日本向けの曲なのに!)という不満が出るわけですから、「ライブの選曲不満」というのはどんなバンドでも永遠に解決できない課題なんだなあ、とあらためて感じさせられました(笑)。

そして会場を出ると雨が降っている。本当にティモは(イェンスかも?)雨男なんですねえ(笑)。

◆(実質)オープニング・ナンバーはこれ


◆そしてラストはこれ



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DREAM THEATER / THE ASTONISHING

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DREAM THEATERの新作が、SFっぽいストーリーを持った2枚組のコンセプト・アルバムになると聞いたとき、私の中では不安(というか懸念)と期待が入り混じっていた。

懸念事項は、単純に長さである。情報量が多く濃密な彼らの音楽をアルバム2枚分に渡って聴く、というのはなかなか気軽にはできないことである。「聴き疲れ」してしまうことが容易に想像できた。

期待というのは、マイク・マンジーニ(Dr)加入後に発表された「THE DRAMATIC TURN OF EVENTS」および「DREAM THEATER」は、どちらも充分に良作であったものの、やや保守的な印象の作風だったのに対し、今回はセールス的には下降が見込まれる2枚組にあえてチャレンジしているという点に「攻め」の姿勢を感じたからだ。

しかし、リリース前に公開されたトレーラー・ムービーを観て、その中途半端な仕上がりに若干の不安を感じてしまった。

DREAM THEATERの凄みというのは、何と言ってもその圧倒的なクオリティであって、個人的な好き嫌いの話はともかく、客観的なクオリティの点において中途半端なものは出さないだろうと思っていたのに、この映像のクオリティはいささか微妙と言わざるを得ない…。

まあ、彼らは映像アーティストじゃないし、と気を取り直して、Amazonから届いたCDを開封し、ブックレットを見てみると、そこに描かれていた「大北アメリカ帝国」と「レイヴンスキル反乱軍」という、時節柄『ス●ーウォーズ』を想起せざるを得ない陳腐極まりない設定を見てさらに萎えてしまった。

いやいや、元々歌詞とか気にしないタイプだし、そもそも英語で歌われたらストーリーなんてダイレクトに頭に入ってこないわけで、音楽さえ良ければ! と思って再生ボタンを押す。

正直に言うと、途中、ちょっと寝た。

いや、もちろん良く出来てるんですよ? 彼ら以外のプログレッシヴ・メタル・バンドがこれをリリースしたとしたら、「こりゃ力作を出したね!」と高く評価されると思います。1曲1曲をつまんで聴けば、どの曲もさすがによく練られている。

ただちょっと彼らにしてはイージーリスニングに過ぎるというか…。まあ、前作・前々作と、どちらも傾向としてはそういう傾向のアルバムだったので、マイク・ポートノイが抜けたDREAM THEATERというのはこういう整合感とメロディを重視する志向性を持っているということなのかもしれません。

そして、このサイト/ブログを定期的にご覧になっているような方であればお察しの通り、私はプログレッシヴなメタルよりメロディックでストレートなメタルを好むリスナーである。DREAM THEATERで言うなら、「TRAIN OF THOUGHT」より「OCTAVARIUM」の方が好きだし、「SIX DEGREES OF INNER TURBULENCE」ならDISC2の方が好きである。そう考えると、本作の方向性は私の嗜好にマッチするはずである。

ただなあ、やっぱり彼らには単純なメロディの良さ、楽曲の良さ以上のものを求めたくなるわけですよ。だって彼らにはそれができることがわかっているんだから。

例えとして適切かどうかわかりませんが、フィギュアスケートで4回転跳べることがわかっている選手なのに、なぜか3回転のみで無難にまとめた演技を見せられた気分というか。

この「おとなしい」アプローチは「曲の良さを生かすことに徹した」結果なのかもしれないが、その割には楽曲も彼らの往年の名曲と比べてしまうと淡白なような。

本当はコンセプト・アルバムということで劇的に盛り上がるはずなのだが、全体的に意外とあっさりしているのも物足りなさにつながっている。楽曲もさることながら、これはジェイムズ・ラブリエというシンガーが、歌唱力こそ抜群ながら、それほどエモーショナルかつシアトリカルな歌唱を得意とするタイプではない、ということも影響しているかもしれない。

本作をPINK FLOYDの「THE WALL」やRUSHの「2112」になぞらえる声もあるが、前者ほどに深みというか味わいというか、「雰囲気」を感じることもないし(これはちょっと世評に影響されている部分もあるかもしれない)、後者ほどの緊張感やテンションもないというのが率直な感想で(ただし構築力という一点に関してはDTの方が勝っている)、これは賛否両論というか、ネット上での評判を見る限りちょっと「否」が多いのもやむを得ないかなあ、という気がする。

まあ、これはこれで1枚ものだったら好きになれた気もするんだけど、ちょっとアルバム2枚分はキツいかな…。次作はもうちょっとやんちゃに演奏家としてのエゴを出しちゃってもいいかもしれません。

あと、どうでもいいですが、本作のテーマはディストピア、MEGADETHの最新作タイトルも「DYSTOPIA」 、そしてこれまた同時期にリリースされた浜田麻里の新作にも「Dystopia」という楽曲が収録と、今年のHR/HMは空前のディストピア・ブームですね(笑)。【82点】

◆本作収録「The Gift Of Music」のMV


◆本作収録「Moment Of Betrayal」のOfficial Audio

この曲が一番「らしい」魅力があるかなぁ。



SERENITY / CODEX ATLANTICUS

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「叙情性と甘さを増したKAMELOT」のような「これぞ欧州ロマン!」な作風(KAMELOTはアメリカのバンドだが)で私の個人的なツボを突きまくってきたオーストリア出身のシンフォニック・メタル・バンドの5作目のアルバム。

前作で正式メンバーとして加入していた女性ヴォーカリストのクレモンティーヌ・ドロネイ(WHYZDOM, VISIONS OF ATLANTIS)が早くも脱退、その理由はツイン・ヴォーカル体制から再びゲオルグ・ノイハウザー単独体制に戻るから、とのことだったが、このバンドの場合クレモンティーヌ加入前からちょいちょい女性ヴォーカリストを「彩り」として使っており、クレモンティーヌの存在感もその「彩り」としての存在感を大きく超えるものではなかった。

しかも、本作でもAVANTASIAなどでメロディック・メタル・ファンにはおなじみのアマンダ・サマーヴィル、そして同郷オーストリアのポップ・ロック・バンドTASHAのナターシャ・コークといった女性ゲスト・シンガーを迎えているだけに、クレモンティーヌの脱退には何か実務上以外の感情的、あるいは金銭的な理由があるのではないかと勘繰ってしまう(笑)。

そんなわけで実はクレモンティーヌの脱退はそれほどバンドのサウンドに影響を与えていないのだが、デビュー以来のギタリストであるトーマス・ブッフベルガーも脱退しており、後任としてVISIONS OF ATLANTISでクリス・ティアンという芸名でギターをプレイしていたドイツ人ギタリスト、クリス・ヘルムスドーファーが加入している。

また、これまでデビュー・アルバム以来プロデューサーとして関わってきたオリヴァー・フィリップス(Key : EVERON)の関与がなくなり、オリヴァーと共にプロデュースで関わってきたヤン・ヴァツィク(Key : DREAMSCAPE)のみ継続してプロデュースを手掛けている。

そういう様々な転機を感じさせるタイミングで発表された本作はレオナルド・ダ・ヴィンチをテーマにし、タイトルはダヴィンチの著名なコレクション集である『Da Vinci Codex Atlanticus』に由来しているが、明確なストーリーを持つという意味でのコンセプト・アルバムではないようだ。

基本的には従来の流れを汲む叙情的なメロディをフィーチュアしたドラマティックなシンフォニック・メタル・サウンドで、方向性という点でメンバー・チェンジの影響はない。

これまでで最もアグレッシヴかもしれない#3「Sprouts Of Terror」のような曲から、AVANTASIAやロビー・ヴァレンタインさえ彷彿させる#9「The Perfect Woman」のようなバラードまで、これまで以上に楽曲のバラエティは豊かになっている。

一方で、前作は「Age Of Glory」に「Legacy Of Tudors」という2大キラー・チューンを擁しており、特に後者は当サイトの2013年ベスト・チューンに選んだほどのお気に入りだったが、本作にはそこまでのインパクトを持つ楽曲が存在しないため、作品全体としてはやや盛り上がりに欠ける印象になってしまっているのが残念。

作品テーマのせいなのかもしれないが、これまでの作品に比べ、パワー・メタリックな面よりもメロウに歌を聴かせるパートが多く、勇壮な要素が少ないこともややおとなしい印象を強めている感がある。

ただ、『BURRN!』誌で90点という過去最高点をとっていたこともあり、私の個人的な期待が異様に大きくなっていただけで、客観的にはメロディアスなシンフォニック・メタルとしてもはやシーンでもトップクラスのクオリティを誇っていると思うので、その手の音楽が好きな人はぜひご自分の耳でチェックしてみて頂きたい。

実際、本作はバンド史上初めて母国オーストリアおよびドイツのナショナル・チャートにランクインする成功を収めていたりするので。【84点】

◆本作収録「Follow Me」のMV


◆本作収録「Spirit In The Flesh」のMV


◆つい先日行われたパリ公演の模様

ゲスト・シンガーであるターシャがエロい感じでとてもいいですね(笑)。




MEGADETH / DYSTOPIA

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ANGRAのキコ・ルーレイロ(G)、LAMB OF GODのクリス・アドラー(Dr)という他バンドに在籍するスター・プレイヤーを迎えて制作された通算15作目。

もっとも、デイヴ・ムステイン(Vo, G)にしてみればクリス・アドラーはともかくキコ・ルーレイロについてはスター・プレイヤーを迎えたという意識はさほどなく、「ブラジルのローカル・バンドから上手い奴を引っぱり上げてやった」くらいの気分かもしれないが、個人的にはキコの加入がなかったら本作を買って聴くことはなかったかもしれない、というくらいの期待ポイントである。

前作・前々作と、シュレッドの達人だったクリス・ブロデリック(G)が飼い殺しに思えるようなキャッチーな歌重視路線(もちろんこのバンドにしては、だが)で、「デイヴ・ムステインの歌声でキャッチーな路線を狙われてもなあ…」と感じていたが、今作ではキコ・ルーレイロの加入が関係しているのかどうかはともかく、私がMEGADETHに期待しているテクニカルかつ攻撃的なサウンドが復活している。

路線としては「UNITED ABOMINATIONS」(2007)と「ENDGAME」(2009)の中間というか、過剰な期待を煽ることを承知で言えば「RUST IN PEACE」(1990)に近い、彼らならではのテクニカルさと、適度なキャッチーさが共存する攻撃的なメタル・サウンドだ。

とにかく鋭利な緊張感が冴える#1「The Threat Is Real」から、前作・前々作の路線とは異なる意味でのキャッチーさとドラマティックさが「UNITED ABOMINATIONS」収録の名曲「Washington Is Next!」を思わせるタイトル曲#2の流れが白眉で、この「アルバム冒頭2曲にインパクトがあること」がまた「RUST IN PEACE」に近い印象を与える。

インスト・パートの精緻な構築感と緊張感が久々に全盛期を彷彿させるレベルになっているのがキコ・ルーレイロの加入効果なのだとしたら、このメンバー・チェンジは(少なくともMEGADETHにとって)成功だったのだろうが、キコが作曲にクレジットされているのは#6、#7、#8の3曲のみなので、音楽的なインプットという意味で真価が発揮されるのは次作以降かもしれない。

#11「Foreign Policy」は、かつてデイヴ・ムステインと一緒にMD.45というプロジェクトをやったリー・ヴィング(Vo)率いるLAのベテラン・ハードコア・パンク・バンド、FEARのカヴァー。

本作は全米チャートで3位という、彼らのカタログで最も成功した「COUNTDOWN TO EXTINCTION」(1992)以来の好成績を記録するなど好評を博しており、キコ側に問題がなければこの「キコ・ルーレイロ体制」は継続されることだろう。

むしろそのことでANGRA側に影響がでなければいいのだが、というのは実はANGRAファンとしての本音だったりもするのだが(苦笑)。【85点】

◆本作収録「The Threat Is Real」のMV


◆本作収録「Dystopia」のMV




PRIMAL FEAR / RULEBREAKER

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前作発表後、7年ぶりの来日公演も実現させたPRIMAL FEAR。しかしその後、約10年間に渡ってバンドの屋台骨を担ってきたドラマーのランディ・ブラックがメンバーと仲違いして脱退。

後任に元ANGRAのアキレス・プリースターの加入が報じられるも、やはりドイツとブラジルの距離の問題は克服できず、1年ももたずに数回のライブをこなしたのみで脱退。本作でプレイしているのは元U.D.Oのフランチェスコ・ジョヴィーノである。

また、ツアーに出たがらないマグナス・カールソンの代わりにツアー・ギタリストを務めていたトム・ナウマンが再び正式メンバーとして加入、クレジット上はギタリスト3人の6人体制というIROM MAIDEN状態になっている。

普通に考えたらライブをやりたがらないギタリストなんてクビにされても不思議ではないですが、やはりマグナス・カールソンの卓越した作曲能力は捨てがたいのでしょう。実際マグナスが関与して以降メロディの質が明白に向上しているし、本作の作曲クレジットもSinner / Karlsson / Scheepers名義になっているので。

しかしトム・ナウマンはSINNER時代から考えていったい何回出たり入ったりを繰り返しているのでしょう(笑)。個人的にこの人はお金に困るとマット・シナーの所に「仕事くれ」とタカりに来ているのではないかとさえ思っています(笑)。

そんな人事異動・組織変更を経た本作だが、相変わらず内容的には非常に高い水準で安定している。パワフルな正統派メタル・チューンを軸に、10分を超えるドラマティックな大作#6「We Walk Without Fear」や、サビの盛り上げに胸締めつけられる美旋律バラードの#10など、バラエティも申し分ない。

骨太かつ切れ味鋭いギター・リフ、そしてキャッチーなサビを備えたメタル・チューンの数々は正統派メタルの教科書と呼ぶべき出来栄えで、中でも#5「In Metal We Trust」は「Metal Is Forever」に続く新たなアンセムと呼ぶべき名曲に仕上がっている。

ドラムがランディ・ブラックから交代した影響か、単純に楽曲の方向性の問題か、前作に比べるとソリッドさは若干落ちている気がするものの、その分メロディの充実は前作以上。本当に楽曲粒ぞろいである。

何しろボーナス・トラックである「Final Call」もスラッシュ・メタルばりのアグレッションを誇る本作随一の高速ナンバー、そして「Don’t Say You’ve Never Been Warned」は本作で最もメロディックなサビを持つ個人的には前述の「In Metal We Trust」と並ぶ本作のベスト・チューンと思える楽曲と、まさに才能がアルバム本編に収まりきらない状態(しかしこの素晴らしき名曲が初回限定盤にしか入っていないというのはちょっと理解不能)。

もうこのバンドがメタルゴッドでいいですよ。何か問題あります?【88点】

◆本作収録「Angels Of Mercy」のMV


◆本作収録「The End is Near」のMV