ALMANAC / TSAR

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2015年2月にRAGEを脱退したヴィクター・スモールスキ(G)によるニュー・バンドのデビュー・アルバム。
バンドとはいえ、ヴォーカルにはBRAINSTORMのアンディ・B・フランクやPINK CREAM 69のデヴィッド・リードマンなど、他に「本業」がある複数の人間を起用しており、パーマネントな「バンド」というよりは「プロジェクト」的な色彩が強い。

このバンドは2013年にアルバムを発表したRAGEのシンフォニックな側面にフォーカスしたプロジェクトであるLINGUA MORTIS ORCHESTRA feat. RAGEのコンセプトを継承するものだそうだが、メタル・バンドとオーケストラが「共演」しているかのようだったL.M.O.と異なり、基本的にはメタル・バンド・サウンドのアレンジの一環としてシンフォニックなサウンドが機能するという、言ってしまえばオーソドックスなシンフォニック・メタルのフォーマットに則ったスタイルである。

とはいえ、例えばRHAPSODY OF FIREのようなシンフォニック・メタルに比べると大仰さは控えめで、意外なほどストレートにメロディック・パワー・メタル的である。RAGEでも随所に顔を出していたプログレッシヴ・メタル的なエッセンスも端々に感じられるが、難解な印象を与えるほどのものではない。

「皇帝」を意味するロシア語のワードをタイトルに冠しているだけあって、ベラルーシ出身ならではのロシアンな(スラヴ的な、という方が正確か)メロディ・センスも垣間見えるが、ひと昔前の東欧のメロスピ・バンドのようなイモ臭さとは無縁で、ちゃんと抑制が効き、洗練されているのは流石の手腕である。

もちろん、欧州メタル・シーンで随一と言っても過言ではないヴィクター・スモールスキのテクニカルなギター・ワークも存分にフィーチュアされており、その点に期待している向きにも納得の仕上がりだろう。

RAGEのファンであればご存じの通り、ヴィクターのギターはクラシックの素養がある欧州のギタリストにしては珍しく「泣き」を感じさせないフラッシーなタッチで、そういう点から共通点を感じたのは、ヴィクターと同じく音楽の博士号を持つマグナス・カールソンがかつて率いていたLAST TRIBEだ。

そして、当然と言えば当然だが、ヴィクターがRAGE加入前に在籍していたMIND ODYSSEYのサウンドにも通じるものがある。

そういう意味で、本作からあまり「RAGEっぽさ」を感じないのは、いかにピーター“ピーヴィー”ワグナーという人間の個性が強烈だったかということを示す事実で、その強烈なRAGEの個性の中でも充分にヴィクターの個性は活きていたと思うので、やはりRAGEにはケミストリーがあったのだな、とあらためて感じさせられた。

とはいえ、「何をやってもRAGE」になってしまうあのバンドよりも、複数のシンガーを起用することができるこのバンド(プロジェクト?)のほうがクラシックからジャズまでを究めたヴィクターの才能の多様性は表現しやすいはずで、そういう意味では一般的なメタル・リスナーに受け入れやすい作風に手堅くまとめてきたようにも映る本作からの次の一手に期待したくなる。【85点】

◆本作収録「Self-Blinded Eyes」のMV




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LORDS OF BLACK / II

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アメリカ、LAの『GIT』仕込みのテクニカル・ギタリストで、スペインのベテラン・メタル・バンドのSARATOGAにも在籍していたトニー・ヘルナンドを中心に結成された、スペインのマドリードを拠点に活動しているメロディック・メタル・バンドのセカンド・アルバム。

HR/HM界のレジェンドであるリッチー・ブラックモアが約20年ぶりにハード・ロックに回帰してRITCHIE BLACKMORE'S RAINBOWを再始動するにあたって、このバンドのヴォーカリストであるロニー・ロメロを起用したことで俄然注目度が上がっている。

ロニー・ロメロはチリ出身で、Facebookで知り合ったマドリードの女性と結婚するために2009年にスペインに移住。普通の仕事をする傍ら、SANTELMO、JOSE RUBIO’S NOVA ERA、ROAD ON FIRE、ARIA INFERNOといったバンドで活動。さらにRAINBOWのトリビュート・バンドであるRISINGでも活動しており、ディオ・トリビュート・コンサートに参加した際にトニー・ヘルナンドと知り合い、トニーがやっていたカヴァー・バンドへの参加を経てこのLORDS OF BLACKを立ち上げている。

ちなみにドラマーのアンディ・Cもトニー同様、元SARATOGAで、それ以前には2003年から2007年までDARK MOORに在籍していた経歴がある。

それなりにキャリアと実力のある面々によるバンドということで、2014年にリリースされた前作の段階からローランド・グラポウ(元HELLOWEEN~MASTERPLAN)がプロデュースを手掛けており、本作も引き続きローランドのプロデュースによって制作されている。

そういう意味でスペイン・ローカルではない、インターナショナルなアプローチで活動していた(スペインのバンドはドイツや北欧に比べると日本同様、どちらかというと国内重視のアプローチをとるバンドが多い)バンドなので、日本盤リリースが実現したのは順当だが、ロニー・ロメロがRITCHIE BLACKMORE'S RAINBOWのシンガーに抜擢されるという話題がなければ日本盤がリリースされたかどうか怪しいのが世知辛い。

実際、本作は2000年初頭のメロディック・パワー・メタル・ブームのさなかであれば確実に日本盤が出たであろう高品質な作品であり、決して辺境マニア向けのB級アルバムではない。

サウンドの方向性といえば、プロデュースを手掛けているローランド・グラポウのMASTERPLANや、THUNDERSTONEといったバンドを彷彿させる、派手さには欠けるが、HR/HMとしてのしっかりした基礎を感じさせる、地に足のついたメロディック・パワー・メタル。

良くも悪しくもスペイン出身ならではの「お国柄」を感じさせることのない、洗練されたサウンドで、飛び抜けた個性や、スペシャルな何かを感じることはないが、楽曲、演奏、プロダクションともに穴がなく、この手の音楽が好きな人であれば安心して聴けるクオリティが備わっている。中でも個人的には#5「New World’s Comin’」がお気に入り。

リッチー・ブラックモアがロニー・ロメロのことを「ロニー・ジェイムズ・ディオとフレディ・マーキュリーを足して2で割ったような感じ」と表現していたことを意識してか、ボーナス・トラックはRAINBOWの「Lady Of The Lake」とQUEENの「Innuendo」のカヴァー。

注目のロニー・ロメロに関しては、「大仰な歌い方をする」という意味でロニー・ジェイムズ・ディオとフレディ・マーキュリーに近いタイプではあるものの、個人的にはジョニー・ジョエリ(HARDLINE, AXEL RUDI PELL)とパシ・ランタネン(THUNDERSTONE)を足して2で割ったような印象を受けました。充分上手いのですが、それほど特別な才能の持ち主だとは思わなかったというのが本音です。

かつてデイヴィッド・カヴァデール、ロニー・ジェイムズ・ディオ、グラハム・ボネットといった錚々たるシンガーを発掘してきただけに、「リッチー・ブラックモアが見出した」ということが過剰に評価されている節がありますが、前回の再結成のときに選ばれたのは結局ドゥギー・ホワイトであり、同時期に『BURRN!』誌や『MUSIC LIFE』誌のインタビューで「リッチーに声をかけられた」と言っていたヴォーカリストはマイク・ディメオ(元RIOT)やアンディ・デリス(HELLOWEEN)だったので、現在のリッチーはそれほどヴォーカリストに「卓越した歌唱力」や「スペシャルな何か」を求めているわけではないのではないか、という気がしています。【82点】

◆本作収録「Everything You're Not」のMV



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BURRN! 16年4月号メモ

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表紙はDREAM THEATERのジェイムズ・ラブリエ(Vo)。華のある人じゃない(失礼)なのに、黒い服を着せて、背景色まで黒なせいで地味極まりないものになっている。せめて背景色は明るいものにすべきだったのではないでしょうか。

DREAM THEATERのインタビューというのはいたって真面目で面白くはない。特にマイク・ポートノイという多弁なスポークスマンを欠いて以降はその傾向が明らかである。

特集は先日亡くなったジミー・ベイン(B: 元RAINBOW, DIO)の追悼記事と、「GUNS' N' ROSES再結成への長い道」なるコラム的な記事とあと、「ロック・バー特集」なる、全国のHR/HMをかけるロック・バーの紹介記事。

ジミー・ベインはベース・プレイヤーとしては悪意のある人なら「地味ー・ベイン」と誤変換してしまうほど凡庸なプレイヤーで、このクラスの人の死を特集扱いにしたのはRAINBOW信者である人が編集長を務めていればこそでしょう。

とりあえず少なくとも人柄は良かったようで(それゆえに搾取され、ずっと貧乏だったようですが…)、とりあえずDIOの「Rainbow In The Dark」のイントロ(のキーボード・フレーズ)を考えたのが彼であることはわかりました。

失礼ながらガンズに関するコラムは、さすがにジミー・ベインだけではページがもたないからこその「穴埋め」的な文章と映りました。

読者人気投票の結果は以下の通り。

ベスト・グループ:IRON MAIDEN
ベスト・ヴォーカリスト:ブルース・ディッキンソン(IRON MAIDEN)
ベスト・ギタリスト:高崎晃(LOUDNESS)
ベスト・ベーシスト:スティーブ・ハリス(IRON MAIDEN)
ベスト・ドラマー:トミー・リー(MOTLEY CRUE)
ベスト・キーボーディスト:イェンス・ヨハンソン(STRATOVARIUS/CAIN'S OFFERING)
ブライテスト・ホープ:BE THE WOLF
シャイニング・スター:レミー・キルミスター(MOTORHEAD)
ソングライター:SYU(GALNERYUS)
ライブ・パフォーマンス:MOTLEY CRUE
ベスト・アルバム:IRON MAIDEN「THE BOOK OF SOULS」
ベスト・チューン:SLAYER「Repentless」
アルバム・カヴァー:HELLOWEEN「MY GOD-GIVEN RIGHT」
DVD/Blu-ray:AEROSMITH「ROCKS IN DONINGTON 2014」

ベスト・アルバムに選出されたアルバムを見る限り、2016年にこの雑誌の読者が評価したアルバムはIRON MAIDEN、DEF LEPPARD、SLAYER、HELLOWEEN、WHITESNAKEのもので、もうそれだけでこの雑誌の人気投票に票を投じる世代が丸わかり。

とはいえ、この辺のバンドの最新作がバンドの最高傑作であると思って票を投じている人がいるとは思えず、その辺が日本のHR/HMマーケットにおける閉塞感につながっていると思います。

マジでWeb投票の仕組みを作らないとまずいんじゃないですかね。「雑誌は買いたくないけど、投票はしたい」という層は結構いると思うし、その結果は今後の雑誌作りのヒントになりうるものだと思うのですが。

ディスク・レビューについては、METAL CHURCHやSPIRITUAL BEGGERSをクロスレビューするよりは、なんとソニーからのリリースとなり、前作が全米チャートでも健闘したAMON AMARTHや、全米TOP10アーティストで、日本でも人気がなくはないと思われるKILLSWITCH ENGAGEのほうが適格だったのではないでしょうか。

AVANTASIA / GHOSTLIGHTS

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もはやすっかりレギュラー・プロジェクトとして定着し、下手な「バンド」より作品を重ねているトビアス・サメット(Vo : EDGUY)によるメタル・オペラ・プロジェクトの通算7作目となるフル・アルバム(ライブ・アルバムは含まず)。

ストーリーとしては前作『THE MYSTERY OF TIME』から始まった物語の第2章に当たるという。

基本的なバックはサシャ・ピート(G,B, Key)、オリヴァー・ハートマン(G, Cho)、マイケル“ミロ”ローデンバーグ(Key)、フェリックス・ボーンケ(Dr)といった「レギュラー・メンバー」が務めており、マイケル・キスク(UNISONIC)やボブ・カトレイ(MAGNUM)、ヨルン・ランデ(JORN)といったシンガーたちはもはや「常連」であり、準レギュラー・メンバーのようである。

今回の目玉キャストは、このプロジェクトにおいてはかつてアリス・クーパー(ALICE COOPER)やジョン・オリヴァ(SAVATAGE)が務めてきた作中におけるトリックスター的な役回りを#3で演じるディー・スナイダー(TWISTED SISTER)、そして#4に参加するジェフ・テイト(元QUEENSRYCHE, 現OPERATION : MINDCRIME)、これまたこのプロジェクトにおいては「お約束」に近い、ハリウッド映画のエンディング・テーマに使えそうなスケール感とポピュラリティを備えたバラードでトビアスとデュエットする、「METAL OPERA Part.2」(2002)以来の参加となるシャロン・デン・アデル(WITHIN TEMPTATION)といったあたりであろうか。

このプロジェクトは主にヨーロッパで支持されていて、アメリカやイギリスではあまり売れていないが、毎回英米での知名度があるミュージシャンを参加させて「実績」を作ることで、大御所ミュージシャンが参加しやすいメジャー感ある雰囲気や交渉材料を計画的に積み上げようとしていると思われるトビアス・サメットは実にクレバーである。

壮大なメタル・オペラのオープニングにしては割と軽めなミュージカル風の#1で幕を開け、#2はいきなり12分を超える大作というトビアス・サメットお得意の(?)「序盤にハイライト」攻撃。この#2で見せ場を与えられているのがLYNCH MOBで知られ、現在はジェイニー・レイン亡き後のWARRANTでヴォーカリストを務めているというロバート・メイソンという人選が渋い。

#3、#4とストーリーに求められた割とクセのある曲が続いた後で、マイケル・キスクをフィーチュアしたメロディック・スピード・メタル・チューンのタイトル曲#5を持ってくるあたりは、やはりトビアス・サメットは己に求められるものをかなり客観的に把握していると思わざるをえない。

ここまで説明してきたように前半もこれまでの作品同様、練り込まれた素晴らしいエピックなのだが、今回は特に後半のメロディの充実度が個人的には好印象。前述のシャロン・デン・アデルが歌う幻想的なバラード#8から、テクニカルなイントロが印象的なメロディック・メタル・チューン#9、エモーショナルなヨルン・ランデの歌声が胸を打つバラードの#10、再びマイケル・キスクをフィーチュアしたメロディック・メタル・チューンの#11、そして大団円を感じさせるコーラスがドラマティックな#12と、どの楽曲にも汲めども尽きぬ豊かなメロディが流れており、あらためてトビアス・サメットという人物の途方もない才能を思い知らされる。

もはや「メタル・オペラ」というコンセプトに新鮮味はなく、豪華なゲスト・ミュージシャンさえ「当たり前」になりつつあるが、その音楽の魅力だけでもリスナーを振り向かせ、説得する力が「AVANTASIA」にはある。

本国ドイツにおけるチャート成績が今回も2位にとどまったため、これで3作続けて2位。しかもEDGUYの最新作も2位なので、トビアスは本当に1位が遠いと感じていることでしょう(笑)。【87点】

◆本作のオープニング・チューン「Mystery Of A Blood Red Rose」のMV


◆本作で一番メロディック・パワー・メタル然としたタイトル曲のリリック・ビデオ