BLACK EARTH 来日公演 at 東京 渋谷CLUB QUATTRO 2016/5/25

ARCH ENEMYのデビュー・アルバム「BLACK EARTH」リリースから20周年を記念して結成された、オリジナル・シンガーであったヨハン・リーヴァが、当時の(厳密に言えば「BURNING BRIDGES」期の)ARCH ENEMYのメンバーをバックに、自らが在籍していた時期のARCH ENEMYの名曲のみをプレイするプロジェクト、BLACK EARTH。

その来日公演(というか現状日本限定のプロジェクトのようだ)の東京会場がクアトロと聞いて、ARCH ENEMY本体じゃないとはいえ、さすがにそれは小さすぎるんじゃないの、と思っていたら案の定、近年のHR/HM公演にしては珍しい即完だったそうです。

だからせめてO-EASTにしておけばよかったのに、と思っていたら追加公演が組まれたので、足を運んできました。こんなに小さい会場でARCH ENEMY(ではないが)を観るのはかつて原宿アストロホールで観たとき以来だ。

平日の追加公演ながらソールド・アウト。HR/HM系のライブでここまで人口密度を感じたのは久しぶりだ。例によって仕事で開演直前の到着となったため、会場の上手(かみて)側の後方に陣取る。

私がフロアに入場してほどなくしてBGMが、BGMではない音量の「Ace Of Spades」(MOTORHEAD)に切り替わり、それがショウの幕開けを告げるものであることを知っているオーディエンスから歓声が上がる。

ショウはそのタイトルに反して「BLACK EARTH」アルバムに収録されていない「Black Earth」でスタート。彼らのレパートリーの中では比較的地味な部類の曲だと思っているが、このプロジェクト名だけにこの曲でスタートするのは必然性がある。

2曲目に人気曲「The Immortal」がプレイされると、場内に「ヨハン」コールが満ち溢れる。人口密度もさることながら、フロアにいるオーディエンスの熱気も近年のHR/HM系のライブではなかなかお目にかかれないレベルの高さだ。楽曲中のメロディアスなギター・フレーズは(恐らく合唱を想定していないようなものまで)ヲーヲーと合唱しまくり、クラウドサーフが行なわれる頻度も高い(というか、私が最近あまりそういうライブを観に行ってないだけかもしれませんが)。

ヨハン・リーヴァはLOUD PARKで観たときにはやっぱり現在のARCH ENEMYのフロントを張るにはいささかパフォーマンスがB級すぎる、ありていに言えばアンジェラやアリッサに比べてカリスマ性が無さすぎると感じたが、こういう小さいクラブであればそのアングラな存在感がむしろハマる。

なんかアニメに出てくる「悪役側なんだけど、なんか悪役になりきれない愛すべき敵キャラ」みたいな雰囲気のヨハンは、デス・メタルらしい禍々しさを表現しようとしつつもどこか重みに欠けるステージ・パフォーマンスが可愛らしい(?)。

何しろ自分がARCH ENEMYを脱退してからバンドはみるみるビッグになっていっただけに色々と思う所があったと思いますが、こうして再びオーディエンスの熱烈な歓迎を受け、ヨハンは本当に嬉しそう。

あまり上手ではない、しかしそれだけに日本人には聞き取りやすい英語でしゃべってくれるし、「なじみの顔がいるな、お前も、お前も、見覚えがあるぞ!」(きっと全国追っかけている人も多いのでしょう)とフロアをあちこち指差しながらフレンドリーに話しかけてくるあたり、その顔に反し(?)「いい人」感満載です。

ただ、ステージ上で一番アグレッシブに動き回っていたのはシャーリー・ダンジェロ(B)で、まあこれはいつものこと。ガタイがデカいだけに、本日のステージは狭そうです(苦笑)。

私の位置からは(前の人の頭で隠れて)マイケル・アモットはほとんど見えなかったのですが、要はほとんど動かなかったということでしょう。

個人的にはは2曲目からの「The Immortal」、「Dead Inside」、「Pilgrim」という、メロデス史上で5本、いや3本の指に入る名盤と確信している「BURNING BRIDGES」アルバムからの名曲3連発でもはや元が取れたという感じです。

プロジェクトの趣旨からいえば、10曲目からの「BLACK EARTH」アルバム完全再現がこのショウの目玉だったのだろうと思いますが、個人的なハイライトはその直前、「Let The Killing Begin」から「Angelclaw」の流れでした。「Angelclaw」はかつてライブで聴いたときにも(その時のシンガーはアンジェラでしたが)あの疾走パートでゾクゾクしましたが、こうして聴くと改めてライブ映えが半端ない。毎回やってくれればいいのに。

「BLACK EARTH」アルバムのラスト・ナンバー(日本盤ボーナストラックを除く/笑)であり、今夜のショウの本編ラスト・ナンバーである「Fields Of Desolation」のエンディングのギター・ソロ、マイケルとクリスの兄弟が揃ってのツイン・ギターのハモリは圧巻でしたね~。これぞツイン・ギターの醍醐味。全身総毛立ちました。

一旦ステージから下りると、たちまち巻き起こる「BLACK EARTH」コール。その熱気にほだされるかのようにほどなくメンバー再登場。かつてIRON MAIDENのトリビュート・アルバムに提供していた「Aces High」をプレイ。メタル・ファンであれば必ず盛り上がる鉄板の選曲だ。

セカンド「STIGMATA」のリード・トラックであった「Beast Of Man」を挟み、恐らく日本では彼らの楽曲中でもトップクラスに日本人好みな名曲「Silverwing」がプレイされる。

そのデス・メタル離れした爽やかなメロディに包まれ、これでショウが終われば明るい気持ちで帰れるというものですが、彼らは北欧のメロディック・デス・メタル・バンド、笑顔で帰すわけにはいきません(?)。

ショウを締めくくる定番曲のひとつである「Bridges of Destiny」(なんかこの曲のときだけスネアドラムの音が変じゃありませんでした?)、そのエンディングのギター・ソロでたっぷり泣かせて、熱いライブが幕を閉じました。

以下、本日のセットリスト(たぶん今回のツアー共通?)。

1. Black Earth
2. The Immortal
3. Dead Inside
4. Pilgrim
5. Sinister Mephisto
6. Diva Satanica
7. Tears of The Dead
8. Let The Killing Begin
9. Angelclaw
10. Bury Me an Angel
11. Dark Insanity
12. Eureka
13. Idolatress
14. Cosmic Retribution
15. Demoniality
16. Transmigration Macabre
17. Time Capsule
18. Fields Of Desolation

アンコール:
19 Aces High
20 Beast of Man
21 Silverwing
22 Bridges of Destiny

ふとこういう、「オリジナル・シンガーが過去在籍していたバンドのベスト選曲で歌うプロジェクトのライブ」、というコンセプトにデジャヴを感じたわけですが、何のことはない、つい先日観てきたDIRKSCHNEIDERのライブでした(笑)。もっともあちらはヴォーカルだけがオリジナル・メンバーだったわけですが…。

きっかけはやはりLOUD PARK 15での共演だったのでしょうね。あのときのヨハン・リーヴァは本当に嬉しそう&楽しそうでした。「ヨハンのいるARCH ENEMYを観たい」というニーズがビジネスとして成立するほどあって、本人がやりたがっているということであれば、ヨハンとプライベートでは今でも親友だというマイケル・アモットとしてやらない理由はなかったのでしょう。

幸いなことに現在のARCH ENEMYのヴォーカリストは未だ「新入り」で自己主張の発言権が小さいであろうアリッサですし(笑)。

ていうか、現在同時期に行なわれているKAMELOTの来日公演でアリッサも今日本にいるんですよね。自分が所属しているはずのバンドが、違うヴォーカリストを迎えてライブをやっているというのはどんな気分なのでしょうかね。

私は別にヨハン期至上主義者ではなく、アンジェラの時代も、現在のアリッサも好きです。そしてそもそもフロントマンとしてはヨハンよりもアンジェラやアリッサの方がスター性があると考えており、現在のARCH ENEMYの地位はヨハンが歌い続けていたらなかっただろうと思っています。

それでもARCH ENEMYで一番好きなアルバムは、と訊かれたらやはり「BURNING BRIDGES」なわけで、ヨハン時代に特別な思い入れがあることも事実。そして本日のライブはその思い入れに100%応えてくれる素晴らしいライブだったと言えるでしょう。

ただ、私が唯一恐れているのは、未だ発表されないLOUD PARK 16における恒例の「アモット枠」。それがこのBLACK EARTHなのではないかという事態です。何しろ昨年のDRAGONFORCEの例(単独公演が終わった後、LOUD PARKへの出演が発表された)があるだけに…。

CAIN’S OFFERINGも「この機を逃したらもう一生観れないかも!」と意気込んでライブに足を運んだらあっさりLOUD PARKへの出演がアナウンスされてちょっとズコーという感じでしたが、同じことが起こりうる可能性は決して低くないと思っています。

とはいえ、LOUD PARKであればここまで充実したセットリストを堪能することはなかったであろうし、ヨハンが輝くのは小さいハコだと思われるだけに、ここで観ておいて良かった、と自分に言い聞かせている今現在です(笑)。

それでは2年後、「STIGMATA」というプロジェクトでまた会いましょう(笑)。
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SUNRISE / ABSOLUTE CLARITY

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ウクライナ出身のメロディック・パワー・メタル・バンドの通算3作目となる日本デビュー作。

本作というか、このバンドを語る上でこのブログにありがちな冗長な言葉は要りません(笑)。初期SONATA ARCTICAが描いていたビジョンを継承するバンド、というひと言に尽きます。

即ち哀愁に満ちた透明感のあるメロディック・パワー・メタルということで、日本のメロディック・パワー・メタルのファンにとってはかなり食指をそそられるサウンドではないでしょうか。

実際、『BURRN!』誌のインタビューではこの手のサウンドに目覚めたきっかけはHELLOWEENで、2000年にSTRATOVARIUSの「INFINITE」とSONATA ARCTICAの「ECLIPTICA」を「発見」して方向性を決めた、と言っており、個人的には共感しかありません(笑)。

ウクライナとロシアは今では別の国(それも戦争するほどの)なので一括りで語るのは躊躇われるのですが、旧ソ連ということで一括りで語ってしまうと、フィンランドは「隣国」なので比較的情報も多いでしょうし、フィンランドのバンドに影響を受けるのは理解できます。

ウクライナのメタル・バンドで最初に日本デビューを果たしたのは恐らくCONQUESTですが、このバンドのヴォーカリストのラールス・K・ナウメンコは、現在そのCONQUESTのヴォーカリストも務めているそうです。このラールスの声がまたトニー・カッコ(SONATA ARCTICA)に似てるんですよ(笑)。より繊細でマイルドな感触ですけどね。

さすがにまだまだ北欧やドイツの一線級のバンドに比べると詰めの甘さもあるのですが、サウンドも軽めながらとりあえず気にならないレベルにまとまっているし、このメロディ・センスはそれだけで「好き者」を振り向かせる力があると思います(実際、私もディスクユニオン某店の店内演奏で本作を耳にして購入を決定しました)。

(またまた一括りで恐縮ですが)ロシアと言えばチャイコフスキーの昔から哀愁のメロディには定評のある国。人口規模も北欧よりはるかに大きいこのエリアが本気を出してメロディック・パワー・メタルを送り出してくるようになったら…楽しみな一方、北欧だけでも追いきれないのに、とてもフォローしきれない、という嬉しい悲鳴を上げることになってしまいそうです(笑)。【83点】

◆本作収録「Tower Of Fear」のMV

佇まいやパフォーマンスはとてもイモくさいですが、曲はかなり良いと思います。このサビは私のストライクゾーンど真ん中でした。


DIRKSCHNEIDER来日公演 at 品川ステラボール 2016.5.13

ACCEPTのオリジナル・シンガーであるウド・ダークシュナイダーは、ACCEPT脱退後は(再結成していた時期を除いて)自己のバンドであるU.D.Oで活動しており、少なくとも本国ドイツを中心とした欧州ではそれなりに順調に活動している。

そのウドがDIRKSCHNEIDER名義(メンバーは現在のU.D.Oと同じ)で来日しACCEPT時代の楽曲のみをプレイするライブをやると聞き、これは行かねばと思いました。

しかも、ウドがACCEPT時代の曲を歌うのはこのDIRKSCHNEIDER名義のツアーが最後になるとのこと。

個人的にはACCEPTの名曲が聴けるなら、という思いだけでU.D.Oを観たいと思う人だって結構な数いると思うし、これから新曲を1曲も出さなくてもACCEPTの曲だけ歌って食べていけるんじゃないの、という気がするだけに、完全引退するならともかく、ACCEPTの楽曲を「封印」する意味がわかりませんが、本人としては思う所があったのでしょう。

私はLOUD PARKに2006年の初開催から皆勤賞で参加しており、数々の名バンドのライブを観ることができたわけですが、LOUD PARK史上で最も感動したライブは2010年のACCEPTでした。

そのためその後の来日公演も欠かさず馳せ参じているわけですが、それだけに現在のACCEPTはあまりプレイしないような曲も聴けそうだという期待があり、平日、しかも職場からのアクセスはあまりよくない品川へと駆けつけました。

実際の所、職場を出るのがギリギリになったためタクシーに乗ってみたら、週末の夜だけに道が激混み、仕方がないので途中のJRの駅で降ろしてもらって電車に乗ろうとしてみたら車内に急病人発生とかで電車がストップ、やべー間に合わねーと焦りましたが、なんとか照明が落ちるのと同時に場内に入ることができました。

ギリギリに入った私で700番台前半。ステラボールのキャパは1,800人だからかなり寂しい客入り(予想はしていましたが…)。左右のスペースをグッと絞ってスカスカ感が出ないようにしていましたね。

1曲目は「BREAKER」収録の「Starlight」。本サイトのレビューにも書きましたが、私がACCEPTに初めて触れた思い出深い曲で、個人的な思い出を抜きにしても切れ味鋭いギター・リフと緊張感溢れる中間部、華麗なツイン・リードのギター・ソロが印象的な名曲だ。この曲を聴きたいがためにタクシーに乗ってまで遅刻を避けようとしたと言っても過言ではない(この曲がオープニングであることは事前に知っていた)。

この曲はウドの持ち味であるヒステリックなシャウト・ヴォーカルが特にインパクト強くフィーチュアされている曲で、正直マーク・トーニロをフロントに迎えた再結成ACCEPTのライブで一番違和感を覚えたのがこの曲だったのだが、さすがは本家、キーは下がっているものの、その歌声に違和感はない。

ただ、逆にそのサウンドにはちょっと違和感を覚えた。かつて同じ会場でACCEPTを観ているが、その時のサウンドはソリッドに引き締まった極上のものだったが、それに比べるといささか軽さがある(一般的な水準を下回っているわけではない)。

パフォーマンスも、本家ACCEPT同様、弦楽器隊が並んで同時にネックを上げたりというフォーメーションを頻繁に行っているが、ちょっとラフな感じが否めない。本家ACCEPTが「ドイツ正規軍」的な規律を感じさせるのに対し、「傭兵部隊」のような印象だ(もっともロックはキッチリしているよりもラフなくらいのほうがいい、という価値観もあると思うので、その辺は好みの問題か)。

もちろん傭兵部隊とはいっても、欧州では確固たる地位を築いているU.D.Oのレギュラー・メンバーたち、技術的な水準は高い。ロシア人ギタリスト、アンドレイ・スミルノフとフィンランド人ギタリスト、カスペリ・ヘイッキネンの繰り出すシュレッドはオリジナル以上だ。

ただ、弦楽器隊に比べるとドラムの技術レベルがちょっと甘いかな…と思ってライブ後に調べてみたら、現在のドラマーってウドの息子さんなんですね。縁故採用とあっては仕方ない(?)。てか父親とバンドやるってどういう気分なんでしょう。

しかしやはり本日のライブは選曲に尽きるでしょう。以下、本日のセットリスト。

1. Starlight
2. Living for Tonite
3. Flash Rockin' Man
4. London Leatherboys
5. Midnight Mover
6. Breaker
7. Head Over Heels
8. Princess of the Dawn
9. Winterdreams
10. Restless and Wild
11. Son of a Bitch
12. Up to the Limit
13. Wrong Is Right
14. Midnight Highway
15. Screaming for a Love Bite
16. Monsterman
17. T.V. War
18. Losers and Winners
アンコール:
19. Metal Heart
20. I'm a Rebel
21. Fast as a Shark
22. Balls to the Wall
23. Burning

80年代ACCEPTの名曲が目白押し。現在のACCEPTがプレイしないような曲をたくさん聴くことができ、恐らく私よりもACCEPTに対する思い入れと思い出が深いような80年代リアルタイム組の方々にとってたまらなかったことでしょう。

もう「Breaker」あたりで、あまりにカッコよくて泣けてくる、という謎の事態に。マジで涙がこみあげ、うっかりすると嗚咽さえしてしまいそうでした。メタルという音楽に出会えてよかった、普通の人はこのカッコよさ、興奮、高揚感を知らずに死んでいくなんて、なんて気の毒な、という思いで胸がいっぱいでした。

しかし「Princess of the Dawn」は何度聴いてもマジックがありますね。シンプルなリフが淡々と繰り返されるだけ(だけってことはないが)なのに不思議な迫力がある。このリフ、このリズムに乗せて重装歩兵部隊が進軍してきたら威圧感あるだろうな、みたいな妙な妄想を掻き立てられました。

ウドのヴォーカル・スタイルもあってAC/DCに例えられることも多いACCEPTですが、決定的に違うのは、徹底的にシンプルなAC/DCに対して、ツイン・リードやコーラス、リフ展開などの「仕掛けの多さ」と、メタリックな中に滲む哀愁ですね。これが絶妙なフックとなり、ライブの盛り上げどころになっています(AC/DCにフックがないというわけではない)。

「Winterdreams」のような哀愁のバラードや、「Screaming for a Love Bite」のような80年代的なキャッチーさを備えた曲もまた上手いもので、やはりソングライティングのセンスがずば抜けていたのだと思います。

特殊な歌唱スタイルゆえにウドが歌うヴォーカル・ラインを普通の人が歌うのは難しいわけですが、その分低音コーラス・パートが実に歌いやすくできているのがACCEPTの楽曲の秀逸なところで、気分はすっかりACCEPTをサポートする合唱隊です。残念ながらあそこまで迫力のある低音は出せないのですが(苦笑)。

そういう意味で、本日のバンドのコーラスは本家に比べると威厳不足だったのは否めませんが、そこはオーディエンスが支えるべき所でしょう(笑)。「Restless And Wild」のあのサビとか、「Losers And Winners」のブリッジの掛け合いとかやっぱ燃えますね。

あえて特筆するなら初めてライブで聴いた「T.V. War」のスピード・メタルとしての完成度の高さで、思わず首ももげよとばかりにヘドバンに打ち込んでしまいました。

アンコールは「Metal Heart」、「Fast As A Shark」、「Balls To The Wall」という、どれか1曲でも書けたらメタル史に名を残せるであろう超名曲ラッシュですから満足しないはずがありません。

「Balls To The Wall」の演奏前に、「この曲を東京でプレイするのもこれが最後だ」としんみりさせておきつつ、実際のラストは彼らのレパートリーの中で最もノリノリなメタル・ロケンロー・チューン「Burning」で締めたというのも、変に湿っぽくならずによかった気がします。

全23曲をほぼピッタリ2時間でプレイしたわけですが、その辺のタイムコントロールもベテランならではでしたね。オーディエンスに歌わせるのも、ギタリストとのアドリブっぽいやりとりも含め全てちゃんと計算されていたのだと思います。MCも「ロック・ライブの定型句」みたいなわかりやすくシンプルなものばかりなのも日本人にはありがたかったですね(笑)。

ウドはもともとドイツ人としては珍しいほど低身長で、しかも歳を重ねてちょっとずんぐりと丸くなっているので遠目にはマトリョーシカのようで可愛らしい(笑)。動きも64歳という年齢相応に緩慢でしたが、そのフロントマンぶりは想像以上に貫禄あふれるもので、さすがかつてドイツを代表するメタル・バンドのヴォーカリストを務めていただけあるな、と今更感心しました。

というのも、実はウド・ダークシュナイダーという人に関しては、その歌声がメタルという音楽に限って言えば強力な武器となる個性ながら、一般的な感覚では耳障りな歌声だし、ルックスもおよそロック・スターのイメージとはほど遠いだけに「なんでこの人がそもそもヴォーカリストになろうと思ったんだろ?」という大変失礼な思いを抱いていたくらいだったからです。

しかし64歳になってなお、(キーは下げているとはいえ)この歌唱スタイルで2時間に渡るショウをやりきることができるという点についてはリスペクトしかありませんね。

あらためてACCEPTの楽曲の素晴らしさと、ACCEPT以外のバンドがそれをプレイすることを聴いたことで、いかにACCEPTというバンドのサウンドが特別であるかということを思い知らされた一夜でした。

ACCEPTが国際的な知名度を得た1984年くらいを境に、いわゆる「正統派メタル」といわれるヘヴィ・メタルのスタイルは下火になり、スラッシュ・メタルやデス・メタル、PANTERAに代表されるグルーヴ・メタルといった新しいスタイルが台頭してきたわけですが、思うにそれは「正統派」と言われるようなスタイルでACCEPTを超えることは不可能なのでそうせざるをえなかったということなのではないか…などという説が私の中で思い浮かぶほど、素晴らしい楽曲、素晴らしいリフが満載のライブでした。大満足です。

◆3/16 アテネ公演の「Fast As A Shark」

何度聞いてもアドレナリンが暴走するのを抑えられません。

◆名古屋公演のドラムカメラ映像

ウドの息子であるスヴェン君がアップしていました。やはり親父さんに似てますね。

DYNAZTY / TITANIC MASS

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「生まれ変わり/再生」を意味するラテン語「RENATUS」をタイトルに冠した前作で、そのタイトル通りの変化を遂げた彼らの「再生」後2作目、通算5作目となるアルバム。

デビュー当時はワイルドでスリージーなロックン・ロール寄りのサウンドだったのが、前作でグッとパワー・メタル寄りのサウンドに変貌したわけだが、それはさながらSKID ROWのファーストからセカンド「SLAVE TO THE GRIND」への変貌を思わせるものがあった。

実際、ヴォーカルのニルス・モーリンは「人生を変えた5枚のアルバム」のひとつにその「SLAVE TO THE GRIND」を挙げており、セバスチャン・バックをフェイバリット・シンガーと公言しているので、実際この方向性の変化はその辺を意識しているのかもしれない。

前作も溌剌としたエナジーに満ちた傑作だったが、本作も同様の方向性の力作に仕上がっており、彼らが自分たちのサウンドを確立したことを窺わせる。

『BURRN!』誌のレビューではNOCTURNAL RITESやSYMPHONY Xを引き合いに出されており、モダンなセンスを持ったパワー・メタル・サウンドに熱唱型のヴォーカルという点ではまさに後期NOCTURNAL RITESだし(あそこまでドラマティックではないが)、ヘヴィなリフ・ワークとテクニカルなギター・ソロのコンビネーションという点でSYMPHONY Xに通じるものがある(あそこまでプログレッシヴではないが)。

アグレッシヴな中にもキャッチーなセンスもあり(#9「Crack In The Shell」、#10「Free Man’s Anthem」は彼らのキャッチーなセンスがよく出ている)、それでいて北欧のバンドにありがちな甘さに流れず、HR/HMが好きなら誰が聴いてもカッコいいと思えるであろう普遍的なカッコよさを備えたサウンドに仕上がっている。

そしてニルスのセバスチャン・バック型の「絶唱」ヴォーカルが、まるで少年マンガのような「熱さ」を感じさせるのも好ましい。HR/HMってこういう「俺は今、猛烈に熱血している!」みたいなノリを表現するのに向いている音楽形態なのに、意外とこういう路線のバンドって少ない気がするので、個性も充分。

個人的にはこういうヴォーカルがカッコ良くて、ギターが上手くて、充分にキャッチーではあるけれども、キャッチーさよりはアグレッシヴな印象が前に出るこういうバンドこそ「HR/HMの王道」だと思っているし、そういうポジションを築いてほしいと思っているのですが、ちょっと懸念もある。

というのも、現代の細分化が進んだHR/HMに「王道」なんてマーケットは存在しない、ということだ。「メロディック・パワー・メタル」「スラッシュ・メタル」「メロディアス・ハード」「プログレッシヴ・メタル」「メタルコア」「ロックン・ロール」など、わかりやすいラベルが付いたバンドでないと売れにくい。

そして本作のライナーノーツでは本作は「メロディック・パワー・メタル」と形容されており、確かに充分メロディックで、かつパワー・メタリックなサウンドなのだけれども、お聴きになればわかる通り、日本のメロスピ・ファンが「メロディック・パワー・メタル」と聞いて想像する音像とは距離がある。このバンドにはわかりやすいラベルが貼りにくいのだ。

「現代版METAL HEART」みたいなジャケットのアートワークも前作に引き続きなかなか内容を想像させにくいものだし、かつてのTWILIGHTNINGみたいに「普遍性と個性を両立させることを狙った結果、マーケットの居場所を失う」みたいな自体に陥ることをちょっと危惧してしまいます。

実際に見たわけではありませんが、なんとなくカッコいいライブをやってくれそうな気がするので、ぜひLOUD PARKに出演して、私のつまらない懸念などを吹っ飛ばすようなパフォーマンスを見せてほしいですね。【86点】

◆本作収録「THE HUMAN PARADOX」のMV



DANGER DANGER / DANGER DANGER (1989)

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THE DEFIANTSからの流れでポール・レインのソロも紹介したので、ついでに私が愛するDANGER DANGERのデビュー作も紹介しておきます。LOUD PARKにも来ることですし。

1982年にCHIEP TRICKのコンサートで知り合ったというブルーノ・ラヴェル(B)とスティーヴ・ウェスト(Dr)を中心に、1987年にニューヨークで結成されたバンドのデビュー作。

ヴォーカリストのテッド・ポーリーは、『BURRN!』誌の藤木氏のフェイバリットとして知られる(?)プログレ・ハード・バンド、PROPHETのドラマーだったという経歴の持ち主。

音楽的にはBON JOVIとNIGHT RANGERの中間を行くかのような、当時最も売れ線なハード・ポップ路線ど真ん中。バンド名に反して、全く危険さのない超健康的なサウンドだ。

当時インタビューで「楽曲作りは数学みたいなものだ。計算して作るんだよ」という発言をして読者の反感を買ったらしいが、個人的には計算して曲を作れることがプロの条件だと思うので、そこに全く異論はない。

ただまあ、そういうことを思っていたとしても口に出しちゃうのはあんまりロック・バンドのイメージ戦略というものを計算できてないな、って気もするのですが(苦笑)。

とはいえ実際、本作の楽曲はとても完成度が高く、ポップ&キャッチーにできている。そのクオリティは極上と言っていいが、ちょっとあざとすぎたのか、単純にこの手のサウンドが飽きられ始めていたのか、全米最高位は88位と、それほどの成功は収められなかった(一応ゴールド・ディスクは獲得している)。

個人的にはWARRANTやWINGER、WHITE LIONといったバンドと同格かそれ以上の商業的成功を収めてもおかしくないポテンシャルがあったと思うんですけどね…。

本作でギタリストとしてクレジットされているアンディ・ティモンズは、その後ソロで(ギター・フリークの間ではあるが)成功を収め、ギター・ヒーローとして評価されているが、本作では#3と#7のGソロのみに参加していて、他の楽曲ではトニー“ブルーノ”レイというギタリストがプレイしている。

アンディが全曲プレイしたセカンド「SCREW IT!」(1991)は本作よりハードなエッジを増した佳作だが、個人的にはよりキラキラ感の強い本作のほうが好きかな。

たぶん、LOUD PARKでは本作の楽曲を中心にプレイされるのではないかと思うので、皆さんこれを聴いて予習しておきましょう(笑)。【87点】

◆本作収録「Bang Bang」のMV


◆本作収録「Naughty Naughty」のMV


◆本作収録「Rock America」の日本限定MV

この曲が一番好きなのですが、途中までしかありません…。誰かこのMVフルでアップしてくれませんかねえ…。