フジロックフェスティバル '16 三日目 7/24 Sun 感想

フジロック3日目、行ってきました。恥ずかしながら39歳にして初のフジロックです。

思い起こすこと20年前、当時大学でバンドサークルに所属していた私は、サークルの有志で初開催のフジロックに行かないか、という誘いを受けて悩んでいました。

たしかに凄いメンツによる未曾有のイベントであるとは思ったものの、何しろ当時はお金のない学生の身分、自分の個人的な音楽的嗜好を考えるといささかコスパが悪い(当時コスパという言葉はありませんでしたが)と感じ、見送りました。

そしてフジロックから帰ってきたサークルの友人たちはみなグッタリし、「マジで死ぬかと思った…」と口々に語りました。そう、台風の直撃を受けて2日目は中止となった、野外フェスにはアウトドア装備が必要である、という認識が日本に普及していなかったために、Tシャツにビーチサンダルで現地に行った輩が大雨に打たれて凍死しかけ、救護室が溢れかえったというあの日です。行かなくてよかった、と当時心から思いました。

今となってはむしろそれは伝説、行っておけば後で一生のネタになったのに、という思いもありますが、私の体力では実際に生還できなかった可能性もあるので、あまりに危険な賭けだったと思います。

まあそんな思い出もあり、アウトドア派の対極にある私としてはなんとなく敬遠してしまうフェスでした。

一方でやはり日本でロック・ファンとして生を受けた以上、一度は行ってみたいという思いがあったのも確か。毎年その背中を押してくれる何かを待っていたと言っても過言ではありません。

そしてそれは2013年のKILLSWITCH ENGAGEや2015年のMOTORHEADでは充分ではありませんでした。だってどちらもラウパで観たことあったんだもん。むしろそれなら2010年のROXY MUSICや2011年のFACESの方がレアであるという意味で観たかった。

結果的に私の背中を押したのは、確実に楽しめることがわかっているBABYMETALという「保証となるアーティスト」と、近年のメタル・シーンにおける最大の注目株といっても過言ではないポスト・ブラック・メタルのDEAFHEAVENという、この機会を逃したら観る機会がないかもしれない「レアなアーティスト」が同日にそろい踏みするという状況だった。しかもトリもRED HOT CHILLI PEPPERSという「ロック好きであれば間違いのない」存在。ここまで条件が揃う日はもうないかもしれない。

そんなわけで「メタラーのフジロック体験記」を書くことにします。超長くなるのでご覧になる方は覚悟を決めて読んで下さい(笑)。


当日前夜、準備不足が仇となり寝るのが3時に。指定券を買っている新幹線の時間から逆算すると6時前には起きなくてはならないので、睡眠時間は3時間弱になってしまうという事態。体力勝負だけに厳しいが、まあ1日くらいならなんとかなるだろ、と開き直る。

そして朝、案の定メチャクチャ眠いのを我慢して無理矢理起床。とりあえず日焼け止めを塗りたくって家を出る。

私の家からだと新幹線は東京駅から乗るよりも大宮駅から乗ったほうが少し早いので、埼京線で大宮に出て、MAXとき号に乗車。やはりというか、周りはいかにもフジロックに行きます、という感じの人たちばかりだ。

私は家を出る前に送られてきていたリストバンドを忘れたり無くしたりしないように装着していたが、周りを見るとあまりリストバンドをしている人はいない。意外と現地でチケットとリストバンドを交換する人が多いのだろうか。それとも単に直前に付けるつもりなのか。

MAXとき号であれば、目的の越後湯沢駅まで1時間もかからない。早く着くのはありがたいが、足りない睡眠時間を補えないという意味では痛し痒し。

越後湯沢駅からはシャトルバスが出ているのでそちらに乗車。かなり並んでいるが、コンスタントに複数台のバスが来るので待ち時間自体はさほどでもない。とはいえきっと初日や昨日はもっと混んでいたに違いない。

40分ほどバスに揺られると到着。苗場プリンスホテルのそばで降車。帰りはオフィシャルツアーの夜行バスを予約しているので、軽くその乗り場への道筋を確認した後、会場入口に向かう。

入り口前の飲食ブース群にある名物屋台、「カドヤ横丁」で朝ビールをキメ、まずは景気づけ。

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ビールを飲み終え、会場入口に向かう。
会場のゲート自体は20周年にもかかわらず割と簡素。これならサマソニやロックインジャパンのほうが見栄えがする気が。

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そのままOASIS(インフォメーションや救護スペースなどがあるメインのパブリックスペース。飲食の屋台が場内で一番多く立ち並んでいる)に行き、このフェスの定番飯である(予習済み)苗場食堂でとろろ飯を注文。温泉玉子もトッピング。

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食べ終わると密かな目当ての一つだったfox capture planを観に移動開始。まるでハイキングコースのような自然を満喫できる道を抜け、ステージとしては最も奥地にあるFIELD OF HEAVENに辿り着く。

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このサイト/ブログをお読みになっているような方にどれだけなじみがあるかわからないが、fox capture planは日本人によるジャズ系のトリオで、タワーレコードやヴィレッジ・ヴァンガードなどがかなり力を入れてプッシュしているアーティスト。私が彼らを知ったきっかけもやはりヴィレッジ・ヴァンガードの店頭演奏によるものだった。

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そのどこか切ないピアノのメロディと、ジャズとは思えないほど躍動感のあるリズムのコンビネーションはライブで聴くと(MCは非常に淡々としているが)さらにエネルギッシュかつ感情の高まりを感じさせるもので、ラスト2曲、「疾走する閃光」から「RIGING」の流れではちょっと泣きそうになってしまいました。序盤から楽しませてくれるぜフジロック。

※「疾走する閃光」MV


次に予定していたのはWHITE STAGEのDEAFHEAVENだが、まだ時間があるのでステージ途中にある小ステージ、GYPSY AVALONで「ザ・なつやすみバンド」という、全然知らないが(失礼)、とても今の時期にピッタリな名前のバンドがプレイしていたので、足を止めて観てみる。

ピアノ・ヴォーカルの女の子がとてもピュアな佇まいと歌声の持ち主で、癒される。スティール・パンやトランペットがフィーチュアされていて、ちょっと変わったサウンドだが、楽曲そのものはいたってポップで可愛らしく、結構楽しめました。ただ、日差しが強すぎていささか夏休み感が強すぎました(苦笑)。

その後WHITE STAGEに移動すると、まだDEAFHEAVENの前のバンドであるBO NINGEN(棒人間?)という、これまた全然知らないロンドンを拠点とする日本人4人組バンドがプレイしている。

HAWKWINDや初期MOTORHEADのようなヘヴィ・ガレージ・サイケといった感じのそのサウンドはかなりラウドで、「貞子vs伽椰子」に登場しそうなルックスのベース・ヴォーカルには不思議なインパクトがある。

「今日は観に来てくれてありがとう。全員の目、見ました」という、ちょっと不気味なエンディングのMCを聴いたあと、ちょっと頭痛を感じ、熱中症になりそうだったので最寄の木陰のスペースに退避。この日のために購入したHelinoxのチェアを組み立てて座り、休憩する。この時間帯FIELD OF HEAVENでプレイしていたdCprG(BABYMETALのギタリストでもある大村孝佳が参加している)を観に行くという手もあったが、ここで30分くらいウトウトできたことは体力回復的には結構大きかった。


DEAFHEAVEN

さて、今回の目的のひとつ、DEAFHEAVENである。音楽的には実はこの時間帯に裏でやっている2CELLOSの方が好みだったのだが、彼らは今後も頻繁に来日しそうなので、今回を逃すともう観る機会がないかもしれないDEAFHEAVENを優先するのは仕方ない。

このサイトの読者にどこまで知名度があるか不明だが、DEAFHEAVENは世界で最も影響力のある音楽メディアとして知られるアメリカのインディー系ミュージック・サイト『Pitchfork』など、主に「メタル村」の外部で高く評価されているポスト・ブラック・メタル・バンドである。

ブラック・メタルのようなアグレッシヴなパートと、ポスト・ロックのようなメロウで、ある種叙情的なパートが交錯するそのサウンドはTOOLやISISなどに通じる内省的で密室的な印象もあり、およそこの真夏の陽光が降り注ぐステージには全くもって不似合いである(笑)。

バックの楽器陣はシューゲイザー・バンドのように動かないが、フロントマンであるヴォーカルのジョージ・クラークはまるでオーケストラの指揮者のようなナルシスティックにも映る不思議なアクションでオーディエンスを煽り、3曲目「Come Back」ではサークル・ピットを要求する。

そしてアグレッシヴなパートで巻き起こったサークル・ピットは乾いた大地から砂埃をもうもうと巻き上げていた。正直マスクが欲しい埃っぽさである。事前にチェックした「持ち物リスト」にマスクはなかったなー。

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彼らの楽曲は1曲1曲が長いので、およそ50分のステージで5曲しかプレイしなかった(できなかった)わけだが、歌がスクリームでなければかなりポップな曲になるであろう「Gift For The Earth」から、再びサークル・ピットやクラウド・サーフが巻き起こったアグレッシヴな「Dream House」で幕を閉じる。

彼らの日本における知名度の低さと、最大15,000人を収容できるWHITE STAGEの規模を考えると、ガラガラなのではないかと危惧していたが、そこそこ客入りはあり、盛り上がっていた。BABYMETALのTシャツを着た人も多く、そういった人たちはジョージ・クラークが激しくスクリームするたびに盛り上がっていたので、私のような「BABYMETAL+DEAFHEAVEN」を目的にしていた人も少なくなかったのではないだろうか。

※「Luna」のNYでのライブ映像


その後OASISに戻り、これまたこのフェスの定番フードとされる「元祖 越後もち豚」の豚串焼きを食べる。たしかにジューシーでなかなか旨い。

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ひどい後ピンである…。お恥ずかしい。

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ラウパでは一番人気のあのケバブ屋も、フジロックにおいては「その他大勢」な感じです。

食べ終わって、OASIS最寄にあるこのフェス唯一の屋内ステージRED MARQUEEを覗きに行く。ちょうど直前に出演していたTROYE SIVANのステージが終わった直後でガラガラだったが、既に次のSHERBETS(元BLANKEY JET CITYの浅井健一率いるバンド)待ちと思われる人たちがステージ前に貼りついていた。

単純にどんな場所か興味本位で観に行ったRED MARQEEを出ると、苗場スキー場とかぐらスキー場を結ぶ、日本最長のゴンドラ、ドラゴンドラの入口があった。「待ち時間0分」という状況だったため、マンガ『モテキ』で主人公が乗っていて楽しそうだったのを思い出し、観ようかと思っていたSTEREOPHONICSを蹴ってゴンドラに乗る。残念ながら傍らに土井亜紀のような素敵な女の子はいませんでしたが(苦笑)。

25分におよぶゴンドラからの眺めはまさに大自然と呼ぶに相応しいもので、なかなか気分が良かったが、こんな山奥にこれほどの巨大ゴンドラ施設をいったいどのように工事したのか、全くもって想像がつかない。

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そしてゴンドラから下りると、標高が上がっているので体感気温が明らかに低い。小さなステージはあるものの、大して興味のあるアクトがプレイしていたわけでもないので軽く冷やかして戻ろうとしたら、帰りの行列はいったいどこが最後尾なのかわからないほど長大で愕然とする。「行きはよいよい、帰りは怖い」とはこのことか。並んでいる間、あまりに暇なので前日から始めたポケモンGOをやってみるも、田舎ゆえほとんどポケモンはいない。電池の無駄なのでピードルを1匹とパラスを1匹捕まえて終了する。

20分強ほど並んで帰りのゴンドラに搭乗。となりに座っていたカップルの会話がなかなか面白かった(女の子がなかなか面白い子だった)のだが、印象に残ったのが次の会話。

「BABYMETALな人たちって、BABYMETAL終わったら帰るのかな? 他は興味ないよね、きっと」
「まあレッチリくらいは観て帰るんじゃないの」

やっぱりBABYMETALが好きな人というのは広く音楽一般、ロック一般が好き、というタイプの音楽ファンだとは思われてないんだなあ、と思いました。まあ実際私もBABYMETALとレッチリが主な目的なので苦笑せざるを得ませんでしたが。

ゴンドラから降りて再びOASISへ行き、今度は「殿堂入り店舗」である「ジャスミンタイ」のマッサマンカレーを食べる。マッサマンカレーといえば2015年にアメリカの人気情報サイト「CNN Go」が「世界で最も美味しい食べ物」に認定したことで話題となり、私も何度か食べたことがあるが、たしかにここのカレーはなかなかマイルドで美味しかった。

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食後、この後観たいステージが連続するので念のために行っておこう、とトイレに行くと、恐ろしい行列ができており、これは切羽詰まった尿意/便意が起きてから行くと地獄を見るな、と思いました(実際の所、かなり暑くて汗をかきまくっていたのでトイレに行ったのはこの1回だけだったのですが)。

トイレを終えてBABYMETALが出演するWHITE STAGEに向かうも、同じくBABYMETAL目当ての人たちで大混雑しており、なかなか進まない。

ようやくステージが近づいたところで、財布がないことに気付いて青ざめる。

ヤバい、トイレが和式だったので、落とさないよう尻ポケットから取り出して、そのまま置いてきてしまったのだ。お金はもちろん、クレジットカードや家のカギも入っているのであわてて引き返し、インフォメーションに向かう。

インフォメーションに着くと、幸いなことに無事財布は届いていた。お金もなくなっていない。民度の高い国に生まれてよかったと心底思う瞬間でした。届けてくれた方、本当にどうもありがとうございます。

そしてあらためてWHITE STAGEに向かうと、途中で混雑のため、ステージが見られない可能性があるので他のステージへの移動を促すアナウンスがある。

こうなるとインフォメーションに引き返したことが悔やまれる。どうせ届くか、盗まれるか二者択一なのだから、BABYMETALのステージを見てからインフォメーションに行っても結果は同じだったのだ。ここは腹をくくるべきだった。

しかし、何とかWHITE STAGEに潜り込むことに成功。文字通り寿司詰めである。本日来場者のTシャツを見る限り、RED HOT CHILLI PEPPERSの次に多かった(あるいは同等に多かった)のがBABYMETALのものであり、セカンド・ステージでやらせるのは無理があったのではないか。

とはいえアイドルかつメタルという、本来のフジロックの属性からは程遠い存在をメイン・ステージであるGREEN STAGEに立たせるのはフジロック運営者の矜持が許さなかったのだろう(実際、彼女らが記念すべき20周年に出演することを非難する声もネット上でしばしば目にした)。個人的にはつまらない矜持だと思いますが。


BABYMETAL

BABYMETALの開演時間が近づくと、これまで晴れていた会場に雨が落ちてくる。山の天気は変わりやすいとは言いますが、何もこの逃げようのない満員電車状態のシチュエーションで…。

これでゲリラ豪雨でも降ったら「BABYMETALが嵐を呼んだ!」みたいな新たな伝説になってしまうところでしたが、幸いパラついた程度で済んだ。Fox Godの加護だろうか。とりあえず持ってきていたモンベルのバーサライト・ジャケットを狭い隙間をぬってカッパ代わりに着用(ポンチョも持ってきていたが、そこまで強い雨ではなかったので出さなかった)。

ステージは定番の「BABYMETAL DEATH」でスタート。これは一種のイントロダクションみたいなものだとすれば、実質1曲目は「ギミチョコ!!」。メタル・ファンが少ないであろうことが予想されるフジロックでは、最も一般層に対する知名度が高いであろうこの曲で始めることは理解できる。

「ギミチョコ!!」の後、いきなり神バンドのソロタイム。フジロックにはおよそ似つかわしくない、むしろそういうものを嫌う人が多そうなこの場で速弾き中心の「演奏テクニックの見せつけ」が行なわれたことは個人的には痛快。

そしてソロからつながる「Catch Me If You Can」から、「YAVA!」というどちらかというとメタル色薄めの楽曲が続く。SU-METALの煽りは基本的にほぼ英語で、これはここまで長い海外ツアーを経験してきた「世界的アーティスト」ならではのアピールか。個人的にはここは日本で、彼女たちは日本人なんだから日本語でいいんじゃないの、と思いましたが。

先に満員電車状態だったと書きましたが、1曲終わるごとにかなりの人数がコンスタントに離脱していて(ちょっと興味本位で観てみたい、という人たちだったのでしょう)、徐々に前の方に進むことができた。特に5曲目、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」の前には、私の脇を通り過ぎた人だけで100人近くが流出する大量離脱があり、だいぶ前の方まで行くことができた。

「イジメ、ダメ、ゼッタイ」がプレイされると、ステージ上の大型モニターに巨大なサークル・ピットの様子が映し出され、私のいる後方でどよめきが起きる。私の近くにいた人が発した「マジで走ってる奴とかいるんだ? ステージ見えないじゃん」という言葉には苦笑せざるを得ませんでしたが、普段フジロックに出演するようなアーティストのライブしか観たことがない人にとってサークル・ピットというのは目新しいものであったに違いありません。

SU-METALは私がこれまで観た5回ほどのステージ(全部フェス)と比べ、必ずしも絶好調という感じではなかったが、それでもかつてはただまっすぐだった歌唱に抑揚がつくようになっており、成長を感じることができた。彼女の「少女性」を強く感じさせる歌声こそが、BABYMETALの大きな求心力となっていることは間違いない。

YUI-METALとMOA-METALによるダンスも、かつてはちょっとシンクロ具合や位置取りの左右対称性に甘さを感じることもあったが、もはやほぼ完璧で、世界のステージで鍛えられたエンターテインメント・アクトとして既に完成形に達したことを印象付けられた。

「イジメ、ダメ、ゼッタイ」の後は「メギツネ」に「KARATE」と、やはりどちらかというと一般受けしそうな楽曲がプレイされ、私の近くにいた、父親に肩車された3歳くらいの子供も両手を上げて盛り上がっていた。

それにしても「KARATE」、個人的には苦手なタイプのリフで、楽曲テーマであるあざとい「ジャパン・アピール」もちょっと気に入らないのだが、SU-METALの歌い上げるサビのメロディにはグッと来てしまう。

ラストは「Road of Resistance」で激しく疾駆して終了。私の周囲で聞こえてきた感想は主に「かわいい」という音楽とは無関係なものが多かったが、概ね好意的に受け止められていた様子。

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BABYMETAL終了後、GREEN STAGEに移動。私と同じく本日単日で来場している職場の上司イチオシのBEN HARPER & THE INNOCENT CRIMINALSを観る。

個人的には「渋めのレニー・クラヴィッツ」くらいの印象だったベン・ハーパーだが、時にジミヘンやSANTANA、LED ZEPPELINなどを彷彿させるそのサウンドはライブで観ると非常にグルーヴィーでカッコいい。特にベン・ハーパーのスライド・ギターと激ウマなベースの絡みは絶品で、ある意味本日一番「ロック」らしいステージを観た気がしました。

BEN HARPER & THE INNOCENT CRIMINALSを少し早めに抜け、最後のエネルギーチャージ。昨年のフェス飯ランキングで1位に輝いた「博多もつ鍋 うみの」の「もつ鍋ちゃんぽん」を食べる。スープが絶妙で、「フェス飯にしては」などという注釈なしで素直に美味しかったです。

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RED HOT CHILLI PEPPERS

GREEN STAGEに戻り、ヘッドライナーのRED HOT CHILLI PEPPERS待機。再びHelinoxのチェアが活躍。この待ち時間を座って待てるというのは、もうだいぶ体力が削られているだけにありがたい。そもそもアウトドア派ではない自分的にはもう一生使う機会がないかもしれないが、買っておいてよかった。

とはいえ、開演20分くらい前になると人口密度が上がりすぎて椅子は片づけざるをえない状況。ソールド・アウトしているだけあって、凄い人口密度だ。

そして21時、いよいよヘッドライナーであるRED HOT CHILLI PEPPERSのステージがスタート。

ヴォーカルのアンソニー・キーディスは口髭を生やしてキャップを被っており、その姿はさながらマリオを彷彿させる(笑)。アンコール時にキャップを外したときにはフレディ・マーキュリー(QUEEN)みたいに見えましたが(笑)。

事前にチェックしておいた最近のセットリストでは「Can’t Stop」で始まることが多かったが、「Goodbye Angels」からという意外なスタート。その後、日本映画『デスノート』主題歌だった「Dani California」から「Scar Tissue」、「Dark Necessities」という流れは予想通りというか、最近の定番である。

もちろん演奏は素晴らしい。フリーのベース・プレイには既に巨匠の風格が漂っているし、チャド・スミスのドラムもパワフルかつグルーヴィーで、この強力無比なリズム隊が歌モノっぽい曲でさえ単なる歌モノにしない。

前作から正式加入したイケメンギタリストであるジョシュ・クリングホッファーも、前任のジョン・フルシャンテほどの風格はないものの、そのプレイに特に過不足は感じなかった。

アンソニーは、曲によっては終始音程が外れているようなこともあったが、声自体はよく出ていたと思う。
本日サウンド(音響)がイマイチで、ひょっとするとモニターの返りが悪かったりしてアンソニーの音程に悪影響を与えていたのかもしれない。

でもやっぱり、一番存在感があったのはフリーかな。プレイの凄さもさることながら、ステージ・アクションがいちいちカッコいいし、アンコールの際、逆立ち歩きで登場したのもインパクトがあった。

両サイドのモニターに加え、ステージの後ろにある4つの円形のモニターにも映像が映し出されるステージの仕様や、モノクロ映像を効果的に使った演出、それと対比するかのようにカラフルなライティングなど、ステージ演出もカッコ良かった。そして彼らのステージの際には終始撮影用と思しきドローンが飛び回っていた。

ただ正直、睡眠不足に加え、疲労がピークにきていたこともあり、近年の歌モノ路線の曲が連発された中盤、ちょっと眠くなってしまったことは否定できない。オーディエンスとのコミュニケーションもあまり多くなく、割と淡々と曲がプレイされていったこともその理由のひとつかもしれない。毎回こんなものなんでしょうか。

まあ、そもそも近年の彼らの曲というのは歌モノ路線と言われますが、個人的な感覚では彼らの「歌モノ」というのはサビでの盛り上がりに欠けるというか、ありていに言えば歌謡曲っぽさが乏しく(きっとファンはだからカッコいい、と言うのでしょうが)、ちょっと平坦に聴こえる、というのが個人的な感想。

むしろ初期の、ファンクっぽさバリバリのヤンチャでわんぱくな頃の曲を多めにやってくれたほうが楽しめた気がする、と、ラストの定番曲「Give It Away」を聴いて思いました。

曲名からしていかにも来日公演で演奏しそうだと思っていた新作のラスト曲「Dreams Of A Samurai」は、案の定アンコール1曲目でプレイされましたが、まだ浸透していなかったのと、曲調がおとなしい(ありていに言えば地味)なこともあって、一番盛り上がらない曲になってしまいました…。バンドとしては日本のファンに対するサービスだったと思うのですが。

全体としての印象はMETALLICAなどを見たときに通じる「大御所感」に満ちたもので、オーディエンスの反応含めて、彼らこそ現在のロック界を代表するバンドであるということに納得させられる風格と力強さは感じました。

彼らがデビューした80年代にはどちらかというと「ロック界の異端児」的なポジションだったと思うのですが、いつの間にかこうして「ロック界の代表」になっているのですから、世の中どう変わっていくかわかりませんね。

個人的には、正直それほどメロディが(歌謡曲的という意味で)良いとは思わないし、パッと聴きのラウドさ、ヘヴィさではHR/HMやパンクのようなわかりやすい派手さもなく、さらに楽器初心者がコピーするにはちょっと難しすぎるという意味でとっつきやすいバンドではないと思っています。

ただ、それでも彼らの持っている「特別な何か」がちゃんと世の中に理解されたのは、もちろんバンドとしての実力もさることながら、歌モノ路線にシフトしていくタイミングとか、バンドの歴史に伴うストーリー、あと単純にバンド名にインパクトがあって覚えやすいこととか、色々な理由が複合的にあったから、なのでしょう。


ヘッドライナーが終わっても朝までライブが続く(一部ステージ)のがフジロック。レッチリが終わっても大半のオーディエンスがそのままGREEN STAGEに残っている。

私も深夜バスの発車時刻までまだ時間があるので、そのままGREEN STAGEに残ってSPECIAL GUESTである電気グルーヴを待つ。もちろんこの時もHelinoxのチェアは大活躍だ。てかもう黙って立っているのが体力的につらい。

電気グルーヴなんてメタルどころかロックですらないじゃないか、と言われそうですが、個人的にはテクノとかEDMとかも嫌いじゃないです。家ではあまり聴きませんが、クラブとか然るべきシチュエーションで聴けば盛り上がります。

そもそも「気持ちのいいフレーズ(HR/HMで言えばギター・リフ)の反復が生み出す快感」という点でHR/HMとテクノは共通点があるんですよ(ホントかよ)。

クラブではなく屋外でテクノを聴くのは実は初めてで、それがちょっと楽しみなポイントでした。

さらに電気グルーヴについては、昨年末に公開された彼らのドキュメンタリー映画『DENKI GROOVE THE MOVIE ?-石野卓球とピエール瀧-』を観てしまうくらいに関心があったのです。

そして実際、日曜の深夜に聴くテクノというのはなんだかむやみな高揚感と多幸感があって、年甲斐もなく踊り狂ってました。

ステージバックの映像には「終電が終わったので、もう踊るしかありません」というメッセージが映し出されましたが、しかし私には深夜バスがあるのです。

年齢相応の分別があるので、深夜バスの集合時間に遅れないようにアンコールは切って深夜バス乗り場に向かう。しかし後でアンコールは「Shangri-La」に「虹」という超名曲だったと聴いて最後まで聴いていけばよかったと大後悔。実際深夜バス乗り場で行列に並んでいた時間を考えるとラストまで聴いても充分間に合った気がするだけになおさら。

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そして深夜バス乗り場では、新宿行きとそれ以外(東京駅、羽田空港、横浜、船橋、池袋、さいたま新都心)に分かれて並ばされる。なんて大ざっぱな分け方だと呆れましたが、実際それで2つの列が同じくらいの長さなので、いかに新宿が最大公約数的に使用されているかということを実感させられました。「それぞれ帰り先が違うメンバーのグループが、あえてひとつのゴールを選ぶならそれは新宿」という感じなのだろうと思います。神奈川方面、千葉方面、埼玉方面にそれぞれ一本で出られる電車がありますからね。

夜行バスなんて学生時代にはスキーなどでよく利用していましたが、社会人になってからはほとんど乗る機会がなく、15年ぶりくらいでしたが、幸いにして近くにイビキのうるさい人や体臭のキツい人もおらず、ほぼ眠って帰ることができました。

とはいえ所詮4時間ほどのバス旅で熟睡できるはずもなく、帰宅後はシャワーを浴びて泥のように眠り込み、目が覚めたのは夕方になろうかという時間でした(もちろん会社は休みをとっていました)。

フジロック、これはたしかになかなか非日常な空間・体験で、毎年通う人がいるのも頷けます。ただまあ、個人的には苗場プリンスに泊まれないなら1日が体力の限界ですね(苦笑)。でも、このイベントを体験できて良かったです。思わずこんな1万字を超えるレポ(というか日記ですね)を書いてしまうほどに記憶に残したい体験でした。

◆FUJI ROCK FESTIVAL公式サイト
http://www.fujirockfestival.com/

◆FUJI ROCK EXPRESS '16
http://fujirockexpress.net/16/
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WHITESNAKE / SLIP OF THE TANGUE (1989)

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レビューのアウトテイク放出企画その3。ストックはまだあるけどとりあえず今回はこの辺でやめておきます。

前作「WHITESNAKE(邦題「白蛇の紋章~サーペンス・アルバス~」)がアメリカだけで800万枚を超えるメガヒットを記録したWHITESNAKEの通算8枚目のアルバム。

前作における大成功の音楽面の主軸だったジョン・サイクスはアルバムの発売を待たず解雇され、前作のツアーにはエイドリアン・ヴァンデンバーグ(G:元VANDENBERG)とヴィヴィアン・キャンベル(G:元DIO)が参加していた。

しかし、エイドリアンはより技術を高めるために使用していたピッキングのトレーニングマシンせいで腱鞘炎になり、ヴィヴィアンはバンドに対する貢献が足りないという理由で解雇され、レコーディングは延期されていた。

そして89年3月2日、元ALCATRAZZ~DAVID LEE ROTHのスティーヴ・ヴァイが加入するという、ある意味衝撃的な人事のもとに制作されたのが本作。

スティーヴ・ヴァイとWHITHSNAKEの相性については多くのファンが疑問を抱いており、スティーヴは彼なりにエイドリアンのスタイルを模したと思しきプレイも披露しているが、やはり前作以上にフラッシーでブライトなテイストがアルバム全編を覆い、正直ヴァイにサウンドを乗っ取られてしまった感は否めない。

特に前作で大ヒットした過去の楽曲のリメイク「Here I Go Again」の柳の下のドジョウを狙った#3「Fool For Your Loving」を収録してしまったのが敗因で、この曲のせいで現在のサウンドが過去と全く違うことが際立ってしまった感がある。

とはいえ、初期の彼らにさほど思い入れがなく、WHITESNAKE初体験が前作であるという私のようなファンにとってはそれほど本作のサウンドに違和感はなく、これはこれでカッコいいハード・ロックだと思える。特に#6「Wings Of The Storm」なんて最高にカッコいいじゃん。

ただ実際本作は前作と違って商業的には今ひとつ(とはいえ全米10位)だったため、初期ファンの不評もあいまって「駄作」「黒歴史」呼ばわりされることも少なくないのが実情。

確かに前作ほど良いか、と言われるとそんなことはないのだが、クオリティの高いハード・ロック・アルバムであることは間違いない。古参のファンには批判されたスティーヴ・ヴァイの弾きまくりも私にとっては聴き所。

まあ、このアルバムの収録曲を(「Fool For Your Loving」を除いて)今年のLOUD PARKでプレイするかというと、多分しないと思うんですけどね(苦笑)。

◆本作収録バージョンの「Fool For Your Loving」のMV


◆オリジナルバージョンの「Fool For Your Loving」のMV


◆本作収録「The Deeper The Love」のMV


◆本作収録「Now You're Gone」のMV


◆個人的に好きな「Wings Of The Storm」



GTR / GTR (1986)

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レビューのアウトテイク放出企画その2。

元YES~ASIAのギタリスト、スティーヴ・ハウと、元GENESISのギタリスト、スティーヴ・ハケットが結成したプロジェクトのアルバム。

他のメンバーはマックス・ベーコン(Vo:元BRONZ)、フィル・スポルディング(B)、ジョナサン・ムーヴァー(Dr:元MARILLION)で、プロデューサーはASIAでスティーヴ・ハウの同僚だったジェフリー・ダウンズ(Key)である。

だからというか、本作で聴ける音楽性はYESやGENESISのようなプログレッシヴ・ロックではなく、極めてASIA的なポップさを備えたメロディックなものである。

Voを務めるマックス・ベーコンのクリアで伸びやかな歌声がまたこのメロディアスでスケール感のある音楽によくマッチしている。

一部のモダンなアレンジには「Owner Of The Lonely Heart」の大ヒットを生んだ90125YESに対する意識も感じられ、ハッキリ言って柳の下のドジョウを狙ったことが見え見えの商業的なサウンドであるが、そのクオリティは高く、聴きやすい仕上がり。

ただ、聴きやすいといってもそれはシンプルであるということではなく、よく聴けばサウンドの端々にテクニシャンならではの小技が潜んでいるし、曲によっては一筋縄ではいかないコード進行も駆使されている(なんと本作の日本盤解説では全曲のコード進行が解説されている!)。

ギターが2人いることの利点を生かし、当時主流であったシンセサイザーを中心にした音作りを極力排しているところは「こだわり」なのだろう。全体的にはコンパクトながら、両スティーヴによるギターの掛け合いは随所で堪能することができる。

個人的にはやはりポップな曲よりも緊張感のあるインストゥルメンタルの#9から、テクニカルでいてリリカルな#10につながる、本作中で最もプログレッシヴな流れが一番グッと来たな。

残念ながらこのプロジェクトは全米11位を獲得したにもかかわらず本作一枚で分解してしまったが、曲によってはハード・ロック的な骨太さを感じさせるし、メロディアス・ハード系のファンであれば聴いてみても損はない。もちろんASIAのファンであれば確実に楽しめる作品だ。

◆本作収録「When The Heart Rules The Mind」のMV



ANATHEMA / ALTERNATIVE 4 (1998)

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しばらくネタとヒマの不足で更新が途絶えていたので、これまで「書いてはいたけど公開はしなかった」アウトテイク的なレビューをいくつかアップして「つなぎ」にしようと思います。

元々はドゥーム/デス系のバンドとしてデビューしたANATHEMAだが、当時「Peaceville」のレーベルメイトだったPARADISE LOSTの後を追うように、音楽性にクラシカルな要素を加えてゴシック化していった。

その傾向が顕著になったセカンド「THE SILNET ENIGMA」でマニアの間で評価を高め、日本デビュー作となった前作「ETERNITY」はBURRN!誌での高評価も追い風となり、この時期におけるゴシック・メタルの代表格の一翼を担う地位を確立。

本作はその「ETERNITY」に続く4作目のアルバムで、タイトルはレズリー・ワトキンスという作家の著した「オルタナティヴ3」という本のタイトルに影響されている。

彼らがゴシック化したセカンド「THE SILNET ENIGMA」の時点で、PINK FLOYD的なプログレッシヴ・ロックからの影響は感じさせており、前作「ETERNITY」ではそれがさらに顕著になっていたが、基本的なサウンドの手触りはメタルだった。

しかし、本作における変化はかなりドラスティックなもので、ここで聴ける音楽はパッと聴きでは非メタルである。

むろん、一般的なロックに比べればへヴィな要素は強いのだが、HR/HM的なリフはほとんど登場せず、メランコリックな歌メロを中心としたそのサウンドは「へヴィでダークなPINK FLOYD」とでも形容すべきものである。

ダークでメランコリック、しかもこのタイトルなので「オルタナ化した」という受け止め方をする人も少なくなかったが、別にPEARL JAMやALICE IN CHAINSのようなサウンドに変化したわけではない。

強いてオルタナティヴ的な要素を探すなら(そんな必要は全くないのだが)、#3「Empty」にドラム・ループが導入され、少々インダストリアル的なニュアンスを醸し出している程度である。

正直ゴシック・メタルとは呼び難い音楽ではあり、かと言って他のジャンルにカテゴライズすることも難しい。

こういう「ジャンルの谷間」に位置するアルバムは特に日本では売れにくく、実際本作はあまり売れなかったようだが、リリース当時(98年)若さゆえの憂鬱を抱えていた身には、本作のムーディーな音楽はなかなか「気分」であり、結構気に入っていた。

特に#8「Regret」の歌詞には結構感じるものがあったな。

And sometimes I despair at who I’ve become
I have to come to terms with what I’ve done
(そして時には 自分がなってしまった人物に絶望する
今までしてきたことに 俺は屈伏している)

My future is not set, for the tide was turned
But still I never learned to live without regret.
(俺の将来はまだ決まっていない 情況は変わったというのに
まだ後悔のない生き方を 身につけていないんだ)


「後悔のない生き方」は今でも見つけられてはいませんが、今は忙しくて後悔している暇がない分、あの頃より生きるのは楽ですね。

何しろ、今や歌詞を読むことさえしないんですから(苦笑)。あの頃はあの頃で授業にサークルにバイトに忙しかったけど、やっぱり今よりはゆとりがあったんだなぁ。

ちなみに日本盤ボーナスはセカンド「THE SILENT ENIGMA」のタイトル曲の別バージョンで、オーケストラ・アレンジを施したのはなんと、かのドン・エイリー(元RAINBOW~OZZY OSBOURNE他、現DEEP PURPLE)。

◆公式MVじゃないけど400万回以上再生されていた本作収録の「Lost Control」

憂鬱な気分に浸りたい方だけ聴いてください。