ANCESTRAL DAWN / SOULDANCE

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南米ペルー出身のメロディック・パワー・メタルのデビュー・アルバム。

ペルーのメロディック・パワー・メタル・バンドというと、2013年にデビューしたNAUTILUZが思い浮かぶが、このバンドの中心人物であるホルヘ・ヒギンソン(B)はかつてそのNAUTILUZのメンバーでもあり、このバンドのヴォーカリストであるホルヘ・セヘルスボルもまたNAUTILUZのメンバーだったということで、ある意味「兄弟バンド」のような観もある。

ただ、2人のNAUTILUZからの脱退は、必ずしも円満なものではなかったようで、『BURRN!』誌のインタビューによると既にわだかまりは解消している、と語っているが、少なくともNAUTILUZに復帰することはなさそうな雰囲気だ。

NAUTILUZはどちらかというと正統派と呼ばれるスタイルに近かったが、このANCESTRAL DAWNはもっとあからさまにメロディック・パワー・メタル寄りのサウンド(とはいえやはりNAUTILUZに似ている、と感じるパートも多い)。

ホルヘ・ヒギンソンはペルーの民俗楽器であるパンフルートにおいても、子供の頃に全国大会で優勝したこともある腕前だったそうで、そのパンフルートの物悲しい調べがアルバムのイントロ#1やインタールード#5などで使用され、基本的に欧州的な音楽であるメロディック・パワー・メタルに母国のアイデンティティを絡めようとしてくるあたり、その姿勢は極めてANGRAに近い。

というか、そのイントロ#1に続く実質的オープニング・チューンの#2「The Traveller」のリフは、ANGRAの「Spread Your Fire」にインスパイアされたものであることが明らかである(苦笑)。ひょっとすると曲名さえかつてエドゥ・ファラスキがANGRA加入以前に在籍していたSYMBOLSの名曲のオマージュかもしれない。

また本作は、彼らの母国ペルーにかつて栄えたインカ文明をモチーフにしたストーリーを持つコンセプト・アルバムだそうで、その辺も含めANGRAの名盤『TEMPLE OF SHADOWS』(2004)を彷彿させる。

本作の特徴のひとつは、ラルフ・シーパース(PRIMAL FEAR)、ヨナス・エイジャート(DRAGONLAND)、マーク・ボールズ(元YNGWIE MALMSTEEN, RING OF FIRE, ROYAL HUNT他)、リック・アルツィ(AT VANCE / MASTERPLAN)、ファビオ・リオーネ(元RHAPSODY OF FIRE, ANGRA)、アマンダ・ソマーヴィルなど、豊富なゲスト・シンガーを迎えていることで、コンセプト・ストーリーを複数のゲスト・シンガーを迎えて描くというアイディアはトビアス・サメット(EDGUY)のAVANTASIAに着想を得たことは間違いないだろう。

いずれのゲストも特にコネなどがあったわけではなく、単に好きなミュージシャンにFacebookのアカウントを通じてコンタクトをとった結果、ゲスト参加を了承してもらえたということで、SNSやインターネットが存在しなかった時代を知る世代としてはあらためて「世界が近くなった」ことを感じさせられる。

NAUTILUZもそうだったが、このバンドも楽曲のクオリティ、演奏力、サウンド・プロダクションといった点で欧州のバンドになんら引けを取っておらず、これはペルーのレベルが高いのか、たまたま人脈的にもつながっているこの2バンドのみが突然変異的な存在なのか、なにぶん情報の少ない国だけに判断がつかないが、「南米のバンドなんてイモなんじゃないの…?」と警戒してしまう人にも安心して薦められる質を備えたバンドであることは間違いない。

パンフルートの導入を除けば音楽的に「このバンドならでは」という個性はまだ感じられないが、メロディック・パワー・メタルのファンであれば一聴の価値がある充実作。【84点】

◆本作収録「Rise Of Ancestor」のLyric Video


◆本作収録「StormHaze」のMV


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SERENITY IN MURDER / THE ECLIPSE

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国産シンフォニック・デス・メタル・バンドのサード・フルレンス・アルバム。

前2作は「SPIRITUAL BEAST」からリリースされていたが、本作は「OYSTER BROTHERS RECORDS」なるインディーズ・レーベルからのリリースとなっている。

前作発表後、ドラムのShoheiとキーボードのShuntaroが脱退しており、ドラムにはサポートメンバーとして、モデルとしても活躍するイケメン、Allen(TYRANT OF MARY)が参加してその穴を埋め、キーボード・パートは元々Freddy(G)が書いていたので、特にレコーディングに置いて支障は出なかったようだ。

前作もかなり良かったので期待していたが、これは期待を上回る素晴らしいアルバムだ。

アルバムのオープニングを飾るのは、前作同様壮大な映画かRPGゲームのサウンドトラックを思わせるインストで、そこで高められた期待感を受け継ぐイントロを持つ#2「A Torch For Avengers」からして本作のエッセンスを濃縮した強力な一撃。

Emi(Vo)の日本人女性とはとても信じられない強烈な咆哮と共にブラストめいたドラムが激しく炸裂した瞬間に一気にテンションがブチ上がる。Aパートでヘヴィにスローダウンして、Bパートで再び加速、そこから和音階の登場するメロウなパートを聴かせ、そしてヘヴィなリフがしばらく刻まれた後、メロディックかつスリリングなギター・ソロ・パートへ突入し、その後は劇的極まりないエンディング・パートへ、という繰り返しなんて全然ない贅沢な構成の1曲である。

この緩急のメリハリが効いたドラマティックな構成はこの曲に限らず全ての楽曲に適用され、さらにはアルバム全体にも同じことがいえる。

シンフォニック・デス・メタルというと、かなりメロメロな、人によっては軟弱と感じられるようなバンドも存在するが、このバンドの場合、美しいシンフォ・アレンジをまとっていようとも、決してエッジとアグレッションを忘れることがなく、緊張感に満ちているのが非凡な所。

それでいて、決してノーマル・ヴォイスで歌っているわけではなく、アップテンポなパートや、2バスがベタ踏みされているようなパートさえ含まれているのにバラード的な印象を与える感動的な#7「The Sea Is…」(何となくV系バンドの曲名っぽい?)、などが程よく緊張感を緩和しつつ、ダンサブルな要素も取り入れ、キャッチーさのある#10「Dreamfall」のような楽曲が存在するなど、この手のバンドとしては珍しいほどに楽曲もバリエーション豊か。

そして楽曲には充分なバラエティが存在しているにもかかわらず、アルバムを通じて一貫した「哀しみ」がヒシヒシと伝わってくる。これが強烈で、まだ自分にこんな感情の熱量が残っていたのかとちょっと驚かされるほど聴いていて込み上げてくるものがある。

この音楽があれば、壇ノ浦の戦いのける平家方、大坂夏の陣における大坂方のように、「負けたら後がない、そして勝てる見込みはほとんどない」絶望的な戦いにさえ誇り高く勇敢に臨むことができるのではないかという気さえする。

実質的ラスト・ナンバー(アルバムのエンディング曲#12「The Eclipse」はインスト)である「Land Of The Rising Sun」が、これまた「和」を感じさせるオリエンタルな要素がフィーチュアされた名曲で、愛国心(?)が刺激される。切なさに満ちた「Dreamfall」からこの曲への流れはまさにハイライト、クライマックスといえよう。

5分を超える楽曲は存在せず、アルバムトータルでも40分程度と非常にコンパクトながら、それでいてアルバムを通して聴くと壮大な映画を観終えたかのような感覚が得られるのだから、「ドラマを描くのに尺の長さは必ずしも必要ない」ということをあらためて教えてくれる作品でもある。

バンド名が覚えにくかったり、アルバムのアートワークが毎回カッコよくもちょっと地味だったり、プロモーションの弱さ、あるいはPR戦略の問題か、メンバーのキャラクターが今ひとつ伝わってこなかったりと、「見せ方」の問題で色々損をしている気がするが、GYZEやTHOUSAND EYESといった同世代の同系バンドはもちろん、世界的に見ても現在これだけの煽情力を持つメタル・バンドはそうはいないと思わせる強力盤である。これがバンドにとって最高傑作でないとしたら、逆に空恐ろしい。【89点】

◆本作収録「Dancing Flames」のオフィシャル・オーディオ


◆本作収録「Land Of Rising Sun」のオフィシャル・オーディオ