LOUD PARK 17 二日目の感想

昨日の反省(寝坊)を活かせずこの日も寝坊。さいたまスーパーアリーナに駆けつけた時にはオープニング・アクトであるCRY VENOMが最後の曲をプレイしていました。

CRY VENOM

とりあえずメンバーが若くてグッド・ルッキンなこと、パフォーマンスがポスト・パンクっぽいヤンチャな感じであること、楽曲がDRAGONFORCEタイプのわかりやすいメロスピであることは1曲観ただけでわかりました。終演後のBGMがEDMっぽい曲であることも含めてチャラっとしたイマドキな感じで、レコード会社的には若い人へのメタル入門バンドとして期待しているんだろうな、という気がしました。

真面目なメタルおじさんには「ケッ」とバカにされそうなバンドという気もしますが、X JAPANでメタル入門した人間としては「チャラいバンドで入門したからといって、いつまでもチャラいバンドしか聴かないわけじゃない」ということを知っているので、わかりやすい入口はとても重要だと思います。アルバムを聴いてみようかな。


BLACK EARTH

本日(オープニング・アクトを除く)1バンド目は「シークレット・アクト」扱いでした。

正直な所、あまり期待していませんでした。アイドルとかアニソン歌手のような企画モノの類か、レコード会社ゴリ押しの嬢メタルか、せいぜい来日したばかりのバンドが「早くも戻ってきたぜ」と出てくるくらいの話だろうと思っていました。普通に発表したら反感を食らいそうなアーティストですね。まあ指定席で高みの見物ですよ。

しかし、開演時間が近づき、BGMが大音量の「Ace Of Spades」(MOTORHEAD)になったとき、あれあれ、この展開はなんかかつて経験したことがあるぞ、デジャヴを感じました。

そして現れたのは、BLACK EARTH。思わず腰を浮かせました。

「Black Earth」のイントロから「Bury Me An Angel」が始まると、たちどころにアリーナ前方にピットが発生する。シークレット・アクトなのにやけに人が集まっているな、と思っていましたが、知っている人は知っていたということなんでしょうね(後で知りましたが、ヨハン・リーヴァ(Vo)がTwitterで「日本に向かっている」とツイートしていたらしい)。

アリーナには後方含めてどんどん人が集まり、朝イチだというのにまるでヘッドライナーかのような人集まり。もう今後ARCH ENEMYはトリ扱いでいいんじゃないですかね。その方が興行主としてもトリ探しに苦労しなそうですし。

私もできることならアリーナに駆け下りたかったのですが、本日の指定席がステージ正面という初体験のエリアで、この席からだと一度通路に出ないとアリーナに降りられない。1音たりとも聞き逃したくないので、やむなくそのまま指定席で観覧することにしました。

やっぱりARCH ENEMY組の演奏は素晴らしい。タイトでありつつアグレッシヴなそのパフォーマンスはある種メタルの理想形だ。シャーリー・ダンジェロ(B)が以前に比べると動きが少なくなったのが年齢を感じさせてちょっと寂しいが、1バンド目にして早くも本日ベストアクトなんじゃないの? この後のバンドはご愁傷様、という感じのカッコよさ。

マジックを感じるほどに日本人の琴線に触れる「Silverwing」では、ヨハンお得意の(?)「アラレちゃんの『キーン』のポーズ」(若い人にはわからないのだろうか…)を見ることができ、自然と笑みがこぼれました。

告知した方が絶対集客は伸びたと思うのですが、アーティスト側の意向でシークレットのままになったという今回。まあオーディエンスとしては「粋な計らい」として素直に喜ぶべきでしょう。

ただ、これで今後「シークレット・アクト」がアイドルだったり嬢メタルだったり、日本在住のギタリストだったりしたら暴動が起きるのではないでしょうか(笑)。


OUTRAGE

BLACK EARTHの後という厳しいポジションを任されたのはOUTRAGE。その厳しさはなまじBLACK EARTH同様エクストリーム系寄りの音楽性であるだけになおのことである。これがメロハーとかメロスピだったら全く別物として切り替えができたと思うのですが。

しかし、結果から言うと大健闘だったんじゃないでしょうか。「My Final Day」から「Madness」という、名盤『FINAL DAY』冒頭の鉄板の流れで場内をOUTRAGEの空気に力づくで切り替える。

実は私はBLACK EARTH終演後すぐに外に出て朝食を食べていたため、「My Final Day」をプレイしている最中は通路にいたのですが、「My Final Day」のイントロ・パートが終わってアグレッシヴなパートに切り替わった途端、近くにいた若者が「えっ、何このバンド」とビビッドに反応していました(通路にも激しく音漏れしていたので)。

しかし、一緒にいた友人が入口で配られるタイムテーブルを見て「OUTRAGEだって」と言うと、「なんだ、日本人か」と言ってそのままフードの屋台に向かってしまいました。

「日本人だから聴かない」なんてのは80年代の玉石混交(というか石だらけ?)のジャパメタを目の当たりにしてきたような世代の人たちだけの意識かと思っていましたが、若い人たちでもそうなんだなあ、とちょっと切なくなりました。音で惹かれたなら観てみればいいのに。と、ルーロー飯をビールで流し込みながらそう思いました。

実際、OUTRAGEのパフォーマンスは、少なくとも演奏に関しては海外のバンドに何ら引けを取らないパワーを放っていました。橋本直樹(Vo)の服装がちょっとカジュアル過ぎるのと、ステージ・アクションがちょっと挙動不審なのがやや気になりましたが、歌声については日本人離れした芯の太さがあって、これまた世界基準を余裕でクリアしていたと思います。

往年のクラシックはもちろん、新曲としてプレイされた曲もカッコよくて、後日アルバムを購入してしまいました。

気になったのは、橋本直樹がMCをしていると、必ずと言っていいほど丹下眞也(Dr)がカットインしてきて話を奪ってしまうこと。かつてバンドメンバーの仲が悪いことで有名だった時期のDOKKENに、ドン・ドッケンがMCをしているうちにジョージ・リンチが次の曲のリフをプレイし始めた、みたいなエピソードがありましたが、なんとなくそれを彷彿とさせる状況で、これ、橋本さんはどう思ってるんだろう…と心配してしまいました(大きなお世話ですが)。

今回も「Blind To Reality」を観られなかったのが残念です。そんなに観たけりゃ単独公演に行け、って話なんですけどね(苦笑)。


APOCALYPTICA

飯食って、ビール飲んで、OUTRAGEでアタマ振った後に着席してのチェロ四重奏。完全に休憩タイムです。

いっそ寝てしまうんじゃないかと危惧していましたが、何しろやっている曲がMETALLICAの楽曲ばかりなのでそうそう寝ていられない(笑)。

かつて一度観ているので物珍しさみたいなものは既になかったのですが、歌詞をちゃんと覚えていれば一種カラオケ的な楽しみ方ができたのではないでしょうか。アリーナはかなり盛り上がっていました。


LOUDNESS

直近のリリースが先月発売された『HURRICANE EYES』30周年記念盤ということで、同作をこよなく愛する私としては、完全再現とは言わないまでも、同作収録曲中心のセットリストを期待していました。

しかし、始まってみると5曲連続で2000年の「再結集」以降の曲。

当人たちとしては「攻めてみた」ということなんでしょうが、トリがSLAYERでトリ前がEMPERORだった昨日であればともかく、ヘッドライナーがマイケル・シェンカーで、トリ前はジーン・シモンズである本日にこの選曲は完全にミスジャッジ。コア・ファンが集結するアリーナ前方がどうだったかはわかりませんが、アリーナ後方では曲が進むごとにオーディエンスが冷めていくのがヒシヒシと伝わってきました。

6曲目、「Rock This Way」がかろうじて前述の『HURRICANE EYES』30周年を意識した選曲か。当時なりのキャッチーさが満載だったあの作品の曲で(「S.D.I」を別格として)、メンバーの(というか高崎さんの)「許容範囲」がこの曲だったということなんでしょう。ギター・ソロ・パートの途中、タッピングの指が追い付かなくなって「あ~、もうええわ」という感じにアドリブで誤魔化していたのを見て、長いこと弾いてない曲だと世界のアキラでもこうなるんだな、と思いました(笑)。

その後は「Crazy Nights」、「In The Mirror」、「Crazy Doctor」、「S.D.I.」という鉄板のクラシック連発で一気に盛り返し、私も歌いまくり、アタマ振りまくりだったわけですが、それだけに彼らのやりたいこと、見せたいものとオーディエンス(特に彼らのコア・ファン以外のオーディエンス)が求めるもののギャップが浮き彫りになってしまった観は否めません。

海外のフェスでは80年代のクラシック・ナンバー中心のセットリストでやっているようなので、彼ら自身フェスで求められているものは理解していると思うのですが…。

あとちょっと、毎回のことなんですが、音、特にギターの音、デカ過ぎじゃないですかね。これ、耳栓なかったらマジでヤバいですよ。まあ、バンド名がLOUDNESS(大音量、うるささ、やかましさ)ですからね、しょうがないんですけどね。

それとですね、髪を短くしてサングラスかけた二井原さん(Vo)、長渕剛にしか見えません(笑)。声はよく出ていたと思いますが。


DEVIN TOWNSEND PROJECT

前回、LOUD PARK 13に出演した際には寝坊して観損ねたDTP。その緻密に作り込まれたサウンドは、なんか今ひとつライブ映えするイメージがなくてさほど期待せずに観始めたのですが、極上でした。

とにかく音が良い。今年のLOUD PARKは例年に比べてサウンドが凄く良くて、この会場ってこんなに良い音鳴らせたのか、あるいは何か機材自体が変わったのかと思うほどだったのですが、中でもこのDTPは絶品でした。まあ音楽自体アンビエントのような音響要素があるのでそう感じた部分もあると思いますが。

これは座って観ちゃもったいないとアリーナ前方に行くことを決意。前述の通り私の指定席からはいったん通路に出ないとアリーナに降りられないのですが、出てみるとどの屋台にも人が並び、通路は地べたに座り込んで飯を食っている人たちであふれていました。まあ今の日本におけるDTPの人気だとこうなってしまうのでしょう。

おかげさまで、スイスイとアリーナ前方に進むことができました。前の方に行くとさすがにちょっとうるさいのですが、耳栓をしてしまうと途端に魅力がなくなってしまうタイプのサウンドのため、私にしては珍しくノー耳栓で音に浸る。

デヴィン・タウンゼンドをはじめ、メンバーは全てハ…スキンヘッドばかり。それがこの特別な音響と照明の中で慈愛に満ちたハーモニーを奏でている様は、一種荘厳ですらあり、メンバーは観衆に救済を与える司祭たちにすら見えてくる。「音のシャワー」という表現はよく目にしますが、言うなればこれは轟音のミストサウナ。音に包まれる感覚というのはこういうことを言うのでしょう。これはまさに26世紀の宗教音楽。

DTPの音楽というのは、バンドの形態、そして基本的な音楽のスタイルという点では必ずしもHR/HMという枠から大きく逸脱しているわけではありません。

しかし、その音楽が与えるカタルシスは一般的なHR/HMとは根本的に異質なもので、非常にメロディアスであるにもかかわらず、なかなか普通の感性の人が日常的に聴くにはハードルの高いものだと思います。こういう音楽をガンガン量産できるデヴィン・タウンゼンドという人は間違いなく天才、あるいは鬼才というべき人でしょう。

私もご多分に漏れず彼らの音楽に日常的に親しんでいるとは言い難い(そもそも近年のアルバムはほとんどマトモに聴いていない)が、それだけに本日のステージでは多幸感とでも呼べる特別な非日常感を味わうことができた。

HR/HMのライブ・パフォーマンスとしては本日BLACK EARTHがベストだったと思いますが、体験として最も特別だったのはこのDTPだったと言えるでしょう。

そして終演を迎え、メンバーたちがオーディエンスに向かって礼をしたとき、唯一髪の毛があると思っていたキーボードの人も頭頂部が(以下自主規制)。


BLACK STAR RIDERS

来日せず、アルバムを出したわけでもなかったので日本ではあまり知られていませんでしたが、1996年から2012年まで「再結成THIN LIZZY」というものが存在していました。

当初のメンバーはスコット・ゴーハム(G)、ジョン・サイクス(G, Vo)、マルコ・メンドーサ(B)、ブライアン・ダウニー(Dr)、ダーレン・ワートン(Key)という、THIN LIZZYのラスト・アルバム『THUNDER AND LIGHTNING』のラインナップに限りなく近いものですが、THIN LIZZYというのは故フィル・ライノット(Vo, B)の存在感があまりにも大きいバンドだったので、どうしても「金目当ての紛い物」感が漂っていました。

とはいえこのメンツでツアーをやればかなり客は入ったようで、ジョン・サイクスが2000年代に新作を出さなかった原動力になっていたわけですが、そのTHIN LIZZYからジョン・サイクスが脱退した後、後釜に迎えられたのが元THE ALMIGHTYのリッキー・ウォーウィック(Vo, G)でした。

既にブライアンもダーレンも脱退していたので、もはやTHIN LIZZYの関係者はスコット・ゴーハムのみになってしまった状況に腹を括ったのか、THIN LIZZYの看板を捨てた結果誕生したのがこのバンド。

サウンド的にはいたってオーセンティックなハード・ロックというか、THIN LIZZYとTHE ALMIGHTYを7:3の割合でミックスしたような音で、今どき珍しい、男らしさを感じるサウンドを出している。

THIN LIZZYの大ヒット曲「The Boys Are Back In Town」、「Dancing In The Moonlight」もプレイしていましたが、完全にサービスって感じでしたね。あくまで新しいオリジナル曲で勝負している、という印象を受けました。

個人的にはあまり琴線に触れる音ではなく、ジョン・サイクスをフィーチュアしたTHIN LIZZYが『THUNDER AND LIGHTNING』の曲をガンガンやってくれた方が盛り上がったと思いますが、普通にカッコいいと思いました。

特にリッキーの佇まいがカッコよかったこともあって、久しぶりにTHE ALMIGHTYを聴きたくなりましたね。

最新作『HEAVY FIRE』が全英6位を記録したそうですが、その人気も納得のタイトなパフォーマンスでした。リーダーであるはずのスコット・ゴーハムがむしろ引き気味に見えたのが気になりましたが。


CRADLE OF FILTH

イギリスのシンフォニック・ブラック・メタル・バンド…などといちいち説明が必要になるようなレベルのバンドではないですね。この界隈の超有名バンドです。

ただ、個人的にはLOUDNESS、DEVIN TOWNSEND PROJECT、BLACK STAR RIDERSと3バンド立て続けにアリーナで立って観たので、少々お疲れ。ビールとツマミを買って指定席で座って観ていたら案の定途中で寝落ちしてしまいました。

ダニ・フィルス(Vo)が時折発する金切声と、キーボード&コーラスのおねいさんのむっちりしたボディだけが印象に残っています。


MESHUGGAH

前回のLOUD PARK出演時、場内があまりにも静かでメンバーがご機嫌ななめな感じだったスウェーデンの元祖ジェントなエクストリーム・メタル・バンド。

しかし今回はオーディエンス側も前回の反省を踏まえてか、積極的に盛り上げに行く。演奏中はみなバラバラのリズムで(変拍子なので)拳を振り上げ、モッシュピットなども生まれていたようだ。静かになってしまいがちな曲間には盛んに「メシュガー」コールが投げかけられ、ストイックな趣のメンバーたちも満更でもない様子。

それほどMCの言葉数が多いわけではないですが、何気にほぼ全てのMCが日本語で行なわれいたので、イェンス・キッドマン(Vo)が日本人女性と付き合っていた(いる?)というのはどうやら本当のようですね。

ネット上でも話題になっていましたが、彼らの複雑怪奇なリズムにピタリと合わせた照明ワークが凄まじかったことは特筆しておきます。常にカメラのストロボのように激しく照明が点滅していたので、ポケモンショックが起きるのではないかと思ってしまいました(笑)。というか、常に逆光状態で、アリーナからメンバーがほとんど見えないという(苦笑)。

ちなみに休暇中のフレドリック・トーテンダル(G)に代わってサポートしていたのはSCAR SYMMETRYや、最近ではNOCTURNAL RITESに加入したことでも知られるペア・ニルソンでした。


SABATON

LOUD PARK 15において、裏でやっていたAT THE GATESを見ていた人以外からはベストアクトの声が高かったスウェーデンの大人気バンド。

私を含め場内の期待も高く、開演前から「SABATON」コールで大盛り上がり。ステージに鎮座しているのはもちろん今回もYAMAHAの戦車ドラムだ。

ショウは定番の「Ghost Division」でスタート。ヨアキム・ブローデン(Vo)のキレのいいアクションも相変わらずだ。

新加入のトミー・ヨハンソン(G, REIN XEED)もしっかりフィーチュアされ、彼らのライブの特徴であるコント・パートで「バカ」を「乾杯」の意味だと教えられ、会場全体で「バカ!」と叫ぶなど、笑いを取っていました。トミーにはせっかくこういう軍隊バンドに入ったのだから、鍛えて身体を引き締めてもらいたいです(笑)。

どの曲もバックに楽曲のイメージ映像が流れ、合唱すべきパートでは歌詞も映る初心者に優しい親切設計。これは他のバンドも取り入れてほしい。

そしてパイロもさながらトリかというほどバンバン使われ、会場をさらにヒートアップさせる。

日本の西南戦争を題材にした「Shiroyama」ではヨアキムに「友人だ」と紹介されて出てきた「山岡さん」がゲストでギターをプレイ。「Shiroyama」自体は別に日本だからプレイしているわけではなく、今回のアルバムのツアーのセットリストにレギュラーで組み込まれている曲だが、ここ日本ではそれを特別なものにしようというヨアキムの粋な計らいだろう。

問題は山岡さんが誰なのか、場内の大半の人はわかっていなかったということですが(私も後で知りましたが、その筋では有名なゲーム音楽のクリエイターだそうです。今回のLOUD PARKの場内モニターで盛んにプロモ映像が流れていた『World Of Tanks』というオンラインゲームはSABATONとコラボしているのですが、このゲームに山岡氏が関わったことが縁でのゲスト出演と相成ったようです。紹介が雑だったのは、ヨアキムが山岡さんの日本のメタル・ファンにおける知名度を読み誤ったということでしょう)。

今回もエンターテインメント精神にあふれた楽しいショウを提供してくれたわけですが、何が起きるか既に知っていた分、前回観た時よりもインパクトは薄かったかな。初見の人はより楽しめたのではないでしょうか。


GENE SIMMONS BAND

失礼ながら、KISSアーミーならぬ私にとっては今年一番どうでもいい出演者でした。

KISSの名曲がたくさん聴ける、って、KISSの曲はKISSがやるから特別なんじゃあ、と。こんなあからさまな副業/趣味バンドがトリ前ということ自体、ちょっと釈然としませんでした。

とはいえそんな不心得者は私くらいのものかと思いきや、トリ前だというのにアリーナはガラガラ。オープニング・アクトを別にすると今日イチ少ないかもしれない。

LOUD PARKに行ったことがない人のために説明しておくと、一般的にトリ前というのは一番人が多くなることが多いのです。もちろんそれなりの集客力があるアクトが出演しますし、反対側のステージ前にはトリ待ちの人がスタンバっています。そしてトリの時間になると、トリに興味がない人や、遠方から来ていて終電が早い人は帰ってしまうので、通常、トリよりもトリ前の方が場内に人が多くなる、というわけです。

然るにこのガラガラ具合…。皆さん私と思いは遠からず、ということでしょうか。私もトリに備えて飯タイムにしようと思っていましたが、まだそれほどお腹が空いていなかったので、アタマくらいは観ておこうか、と指定席に座って開演を待ちました。

ショウは「Deuce」で始まり、「Parasite」、「I Love It Loud」と、KISSナンバーのオンパレードだ。プレイは当然悪くない。ステージ前はそれなりに盛り上がっている。

そしてジーンは百戦錬磨のショウマンでエンターテイナー。巧みに日本語を交えたMCでアリーナを盛り上げていく。これがお昼頃のステージだったら、普通に良かったと思えたかもしれない。

しかし、しばらくすると観客?がぞろぞろとステージに登場。その数20~30人ほど。これはいったい何事?(後で知ったが、ジーンは2000ドルでステージに上がる権利を販売していたらしい。さすがというか何というか)

個人的には素人がステージに上がっても特にショウに貢献できるわけでもなく、手持無沙汰な雰囲気が醸し出されがちなので、こういう演出は好きではない。IRON MAIDENがかつてやっていた「Heaven Can Wait」のアレなんかはやることが明確だからまだいいのですが。

そして、ステージ上にいる人たちが、2000ドルという安からぬお金を払っているということを考えれば当然ながら、皆さん結構いい歳で、フォトジェニックとは言い難い。これが「ジーンが会場で選んだかわいい女の子ベスト20」とかだったらまだ見て楽しめたかもしれませんが(女の子たちにとっては貞操の危機になりますが/笑)。

正直ちょっといたたまれなくなってきたので、予定より少し早めに通路に出てしまいました。


MICHAEL SCHENKER FEST

以前MICHAEL SCHENKER FESTの単独公演の告知を見た時、イベント名だと思っていたのですが、実際はプロジェクト名だったようです。

ゲイリー・バーデン、グラハム・ボネット、ロビン・マッコーリーという、かつてM.S.G.に在籍した歴代のシンガーをフィーチュアした同窓会的な企画で、単独公演も盛況だったようなので、集客力という意味ではLOUD PARK歴代のトリと比較してなんら見劣りしないといえるでしょう。

ショウはマイケル・シェンカーというギタリストの名刺代わりと言える「Into The Arena」でスタート。曲名的にもショウのスタートにピッタリである。マイケルはすこぶる機嫌が良さそうでニッコニコである。そしてそれは本日ずっとそうで、とてもかつてコンサートを放棄して帰ってしまった、などという情緒不安定なエピソードを持つ人には見えない。

ゲイリー・バーデンはサビをオーディエンスに丸投げでしたが、私が以前に観た時もそうでしたし、この人は若い頃からそうだったようなので、ファンにとっては許容範囲でしょう(?)。

グラハム・ボネットはカンペをガン見していましたが、この人も昔からそうだったようなので、これもファンにとっては許容範囲でしょう。というか、むしろまだこれだけパワフルな声が出るのか、とポジティブに驚かされました。

この人の場合、スーツ姿で登場した瞬間に場内に笑いが巻き起こっていたので、出てきた時点で勝ち、という感じでしたけどね(笑)。

個人的にハイライトだったのはロビン・マッコーリーのパート。単純にMICHAEL SCHENKER GROUP時代の曲よりMcAULEY SCHENKER GROUP時代の曲のほうが私の肌に合うというのもありますが、ロビン・マッコーリーの声が衰えるどころかむしろMcAULEY SCHENKER GROUPのスタジオ盤より出てるんじゃないの? と思えるほどの素晴らしさでした。

なんかこの人はリアルタイム組の人たちには「マイケルには不釣り合い(実力不足という意味で)」という評判だったようですが、単純にMcAULEY SCHENKER GROUPの音楽性がアメリカナイズされた方向性に向かっていたことに対する不評の戦犯にされてしまったというだけなのではないでしょうか。

「Save Yourself」をやってくれたのは嬉しい驚きでしたが(結構難しい曲なので)、「Destiny」と「Anytime」も聴きたかったですね。そんなこと言っていたらキリがありませんが。

ラストはUFOナンバーで、「Rock Bottom」(Voはロビン・マッコーリー)で恒例の壮絶な、長いのに緊張感が切れないギター・ソロを披露、さらに3シンガー揃い踏みで「Doctor Doctor」をプレイして締め。

若い人は翌日が休みではないということもあってGENE SIMMONS BANDあたりでもう帰ってしまったのではないかという疑惑もありますが、残っていたのが「エクストリーム厨」な人たちであったとしても、マイケル・シェンカーが「神」と呼ばれる所以は伝わったのではないかと思います。技術的にはDEVIN TOWNSEND PROJECTやMESHUGGAHのギタリストの方が圧倒的に上手いのでしょうが、やはりこのトーン、アドリブの冴え、余人を寄せ付けぬものがありました。


正直な所、今年は歴代でも屈指の地味なラインナップだと思っていました。昨年、SCORPIONSにSYMPHONY Xという、長年の宿願というべきアーティストを観ることができたこともあって、今年はRPGでいえばラスボスクリア後のサブクエスト消化みたいな気分というか(笑)。

しかし終わってみるとその満足度は決してアベレージを下回るものではなく、充分に楽しめたと言っていいでしょう。特に初日のALICE COOPER、2日目のシークレット・アクトのサプライズは非常に印象的でした。他にEMPEROR、DEVIN TOWNSEND PROJECT 、MESHUGGAHのステージも「特別なものを観た」という気がします。

そんな満足感を胸にさいたまスーパーアリーナから出ると、ここ2、3年、毎回会場で見かけている(髪型が髪型だけに目立つ)PHANTOM EXCALIVERのVoの人に12月の赤坂BLITZ公演のフライヤーを渡されました。

私の今年のライブ納めはサイン入りポストカードが当選してしまった12月8日(金)のSECRET SPHEREになるのか、はたまたこの12月15日(金)PHANTOM EXCALIVERになるのか、どちらも仕事が長引きがちな金曜日のライブということもあって予断を許しません(苦笑)。

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LOUD PARK 17 一日目の感想

ふと目覚めると、まだ朝7時前。私の家からさいたまスーパーアリーナまではドアtoドアで40分程度。「まだ余裕だな」と再び眠りにつく。

そして再び目覚めると、11時過ぎ。イングヴェイの「I’ll See The Light Tonight」冒頭のジェフ・スコット・ソート渾身のシャウト「No~~~~!! No!!!」が脳内に響き渡る。

慌てて家を飛び出し、さいたまスーパーアリーナに向かったものの、到着したときにはL.A.GUNSがプレイしていました。

かつて観たことがある、というか昨年観たばっかりのALDIOUSはともかく、レゲエやヒップホップという、HR/HMとはいささか相性が悪い(と思われている)ジャンルを取り入れたSKINDREDや、女性Voが大層キュートだったというドイツのシンフォニック・メタルBEYOND THE BLACKのような、単独での来日は難しそうなバンドこそぜひ観たかったのですが、残念ながら見逃してしまいました…。

なお、今年も私は指定席を購入しており、その席がBIG ROCK STAGE側だったため、基本的にBIG ROCK STAGEに出演したバンドは指定席で、ULTIMATE STAGEに出演したバンドはアリーナで観ています。

L.A.GUNS

メジャーからのドロップ後、もはやメンバーの変遷だけでWikipediaの1ページが作れてしまうほどの激しいメンバー・チェンジを繰り返し、さらにはVoのフィリップ・ルイスとGのトレイシー・ガンズがそれぞれにL.A.GUNSを名乗って活動するなどの迷走を経て、ついに今年そのフィル・ルイスとトレイシー・ガンズが合流したことで、こうしてLOUD PARK出演を果たした彼ら。

正直、「落ちぶれたロートル・バンド」的なイメージがあったし、個人的には全盛期の代表曲でさえあまり琴線に触れないバンドだったので特に期待していませんでしたが、バンドのパフォーマンスはタイトで、ドサ回りとはいえライブを続けてきたバンドの強さを感じました。

特に今年還暦を迎えたはずのフィル・ルイスが今なおフロントマンとしての華と毒と色気を保っており、さらには声もよく出ていて、いい意味で驚かされました。


ANTHEM

このバンドも一昨年に観たばっかりだったのであまりありがたみはありませんでしたが、「Bound To Break」で始められたら盛り上がらないわけはない。

森川之雄のMCがちょっと時代錯誤でこっ恥ずかしい(「ANTHEMの猛攻撃だ!ぶっ飛ばしていくぜ!」みたいなMCには思わず赤面してしまいました)ことと、決してパフォーマンスに足りないものがあるわけではないのになぜか全く華がないフロントマンぶりは前回観た時と変わらず、ライブ・パフォーマンスとしては坂本英三在籍時の印象を超えることはなかったのですが、ベテランにありがちな手抜き感のない全力投球のパフォーマンスは相変わらず好感が持てました。

ANTHEMを観ること3回目にしてようやく森川時代で一番好きな「Hunting Time」を観ることができたのは嬉しかったですね。でもライブではその後にプレイした「Venom Strike」の方が映えていた気がします。


BRUJERIA

メキシコ出身の謎の覆面集団…という設定のバンド。デス/グラインド系のバンドということで個人的には興味の対象外で、前半は通路で昼飯を食べてました。

アルバムを聴いたことはありませんでしたが、私が一番熱心にHR/HMを聴き、『BURRN!』誌を読み込んでいた頃にリリースされたデビュー・アルバムは人の生首の写真というショッキングなアートワークで印象に残っています。当時からNAPALM DEATHやFEAR FACTORYやFAITH NO MOREのメンバーが関わっている、という噂を聞いていましたが、とりあえず本日についてはベースがシェーン・エンバリー(NAPALM DEATH)であることは体型と髪型ゆえに覆面をしていても一目瞭然でした(笑)。

ヴォーカル・パートがメキシコの公用語であるスペイン語であるということは、デス系の音楽ゆえにどうでもよかったのですが、MCまでスペイン語なので、時折挟まれる英語以外は何を言っているかさっぱりわからず。とりあえずバンド名の読み方が「ブルヘリーア(リにアクセント)」であることを知りました(笑)。たしかにそう発音するとスペイン語っぽいですね。

とりあえず何も考えずに爆音に包まれて暴れたい人にはピッタリという感じのサウンドで、アリーナ前方では盛んにモッシュが行なわれていました(私は指定席で高みの見物)。

メンバーが時折ポーズめいたものをキメていましたが、あれは何だったのでしょう。「俺達テロリスト集団だぜ」みたいな雰囲気は出ていましたが。


WINGER

BRUJERIAの後にWINGER。激辛料理の後にスイーツといった趣の流れ。これは確信犯でしょう。

全米チャートにおける実績という意味ではALICE COOPER、SLAYERに続いてトップクラスの実績を持つバンドですが、本日のアリーナの人集まりは少なめ。以前彼らのライブを観た時、その巧さに舌を巻いた記憶があったので、アリーナ前方に進んで観てみることにしました。

やっぱり上手い。やっている音楽はキャッチーでコンパクトだが、そこらのプログレッシヴ・メタル・バンド顔負けの演奏力。フェスで、持ち時間も少ないというのにドラムとギターのソロ・タイムがあるというのが自信の表れでしょう。ソロ・タイムというのは楽器をやらない人にとっては往々にしてトイレタイムになってしまいがちですが、これだけわかりやすく超絶技巧を披露されれば、エクストリーム厨と呼ばれるような人でさえ、退屈した人はそんなに多くないのではないでしょうか。

あと、彼らの場合、キップ・ウインガー(B)、レブ・ビーチ(G)、ロッド・モーゲンステイン(Dr)のメイン3人とも、いい歳のとり方をしているというか、変な若作りをするわけでもなく、中年なりのカッコよさをちゃんと身に付けているあたりがいいですね(セカンド・ギタリストであるジョン・ロスもちょっと地味ながらちゃんと上手くてカッコいい)。

惜しむらくは、このバンドの代表曲が「Seventeen」というティニー・ポップな曲である、ということですね。もちろんヒットしただけあってキャッチーでいい曲ですが、このバンドの魅力の本質を伝える曲ではないかなと。

個人的にはとても楽しめたショウでしたが、今回も「Rainbow In The Rose」が観られなかったのが残念です。まあメタル・フェス向きの曲とは言い難いのでやむを得ないですが。

ライブを観終わって指定席に戻る途中、川島未来さん(SIGH)とすれ違いました。


OPETH

彼らを観るのはLOUD PARK 06以来、約10年ぶり。先ほどのBRUJERIAからWINGERの流れもドラスティックでしたが、WINGERからOPETHの落差もかなりのもの。

OPETHの音楽が「深イイ」ものであることは理解できるものの、個人的にHR/HMにはもっとわかりやすいものを求めているので、何枚かアルバムは購入して聴いていつつも、あまり親しんでいるとは言い難いのが実情。

酒飲んで、スタンディングで盛り上がった後に座って観たら寝てしまうだろうなあ、と思っていましたが、案の定寝てしまいました(苦笑)。

1曲目からウトウトし、2曲目「Ghost Of Perdition」で「おお、この曲は知ってるぞ」と目を覚まし、3曲目でまた眠りに落ち、5曲目にしてラスト(彼らの曲は長いので…)の「Deliverance」のヘヴィなイントロでようやく目を覚ます、という体たらく。大変失礼いたしました。


OVERKILL

このバンドもライブが強力、という評判を耳にしていたので期待していました。

スラッシュ・メタルとビールって合うよね、とアリーナ後方のオフィシャルバーでドリンクチケットをビールに換え(それまでは普通に屋台でフードと一緒にビールを買っていました)、ビールを飲みつつOVERKILLの開演を迎える。

いやいや、後ろで飲みながらまったり観ている場合じゃないですよ。まず出音が違う、キャリア30年以上におよぶベテランとは思えないほどの荒々しい勢いがサウンドに漲っている。当然のごとく盛り上がっていて、アリーナ後方からだと見えないものの、きっと前方ではサークル・ピットやモッシュピットが発生していることは間違いなかったでしょう。

てか、私もピットの側にいたら年甲斐もなく飛び込んだかもしれません。それくらいイキリ立って飲み終えたビールのカップをゴミ箱に放り込むと、アリーナ前方に走ったのですが、人が多すぎてスゴスゴとアリーナ後方に引き返しました(苦笑)。

正直、ボビー“ブリッツ”エルスワース(Vo)のミッキーマウス的なハイトーン・ヴォイスはちょっと苦手で、アルバムで聴くことはあんまりないのですが、ライブは素晴らしいですね。こういうスラッシュ・メタル・バンドはフェス1日にひとつは欲しい気がします。

ラスト、ボビーの「俺は、日本語はほとんど喋れない。英語だってひどいもんだけどな。だけど、このサインだけは完璧だ!」と言って中指を立て、カナダのパンク・バンドSUBHUMANSのカヴァーであり、既に彼らの代表曲となっている「Fuck You」がプレイされる。平均年齢は若く見積もっても30歳、下手すると40歳を超えるであろうオーディエンスが「Fuck You!」と絶叫できるこの空間は全銀河系でも貴重なものだと言えるでしょう。痛快なライブでした。


ALICE COOPER

開演前、ステージに張られたアリス・クーパーのパンダ風メイク柄の幕からして期待感を煽りましたが、照明が落ち、ただならぬ存在感とオーラを身にまとって登場したアリス・クーパーがとても御年69歳とは思えぬキレキレの動きでステッキをクルクルと回した瞬間、これは特別なショウになると予感しました。

1曲目は2000年の『Brutal Planet』からのヘヴィなタイトル曲で、ALICE COOPERがメタル・フェスに出演するに相応しい存在であることをアピールしつつ、2曲目は「No More Mr. Nice Guy」、3曲目は「Under My Wheels(邦題:『俺の回転花火』)」と、クラシック・ナンバーがプレイされる。正直70年代の曲は本日の他のバンドの楽曲に比べると古臭いというかのどかな印象を受けるが、アリス・クーパー御大のカリスマ性が有無を言わせず、そしてバンド・メンバーのパフォーマンスがソリッドなので充分にカッコいい。

てか、スティックをクルクル回しながらパワフルなドラミングを聴かせているドラマーはどこかで見たことがあると思ったら、元IMPELLITTERIのグレン・ソーベルだ。実力に相応しい就職先を見つけましたね。

『俺の回転花火』の後、リズム・ギターを引いていたブロンドの女性ギタリストのソロ・タイム。ライブが始まったときからダントツで目立っていた(こんなに動き回るギタリストは他にイングヴェイくらいしか知らない)彼女、めちゃくちゃカッコよくて、一発でファンになってしまいました。そういう人は私以外にも多かったのではないでしょうか。

後で調べてみた所、彼女はオリアンティの後任として2014年にこのバンドに加入したニタ・ストラウスという女性で、女性のみによるIRON MAIDENのカヴァー・バンドとして有名なTHE IRON MAIDENSでの活動経験があるようだ。そしてなんと「美しく青きドナウ」など数々のウインナ・ワルツの名曲を作曲したことで知られるクラシック作曲家、ヨハン・シュトラウスII世の末裔とのことで、シベリウスの曾孫であるSTRATOVARIUSのラウリ・ポラー(B)と並ぶ音楽サラブレッドでした。

そんなバンド・メンバーのみならず、ステージの演出やギミックがスペシャル。パイロやスモークはもちろん、「Feed My Frankenstein」ではIRON MAIDENのエディよろしくフランケンシュタインが登場、他にもダンサーのような女性も登場して小芝居を展開、しまいにはアリス・クーパーがギロチンで処刑されるなど、ステージがさながら劇場と化す。こりゃ曲を知らなくても単純に見世物として楽しい。

ラストの全米TOP10ヒット曲、クラシック・ロックのコンピレーションにもよくピックアップされている代表曲「School’s Out」では場内にカラフルなバルーンのようなものが投げ込まれ、インスタ映え(笑)する光景に。

いや~、参りました。正直、最初は単に『観たことがあるロック・レジェンド・スタンプカード』を埋めるだけ、くらいの気持ちで観始めたのですが、ぶっちぎりのベスト・アクトです。ショウとして楽しめた度ではLOUD PARK史上屈指でしょう。なんでこれがトリどころかトリ前ですらないのか。60分そこそこで終わらせるにはあまりにももったいない、最高のエンターテインメントでした。


EMPEROR

前評判というか、ネット上の評判を見るに、本日一番注目/期待されていたのはこのブラック・メタル・レジェンド、EMPERORだったのではないでしょうか。

私のようなメロディ派の人間が彼らについて何を言っても説得力に欠けるので多くは語りませんが、そんなメロディ派の人間でもこのバンドの音楽が「ブラック・メタル」というジャンルを超越した完成度と説得力を備えていることは充分に感じ取れました。会場の空気も本日一番緊張感がありましたね。

メンバーも、もはやブラック・メタル独特のコープス・ペイントなどはしていませんが、それでも皆さん充分に怖い。私がこの手のバンドのライブを観るのはほぼLOUD PARKに限られるわけですが、これまで観たブラック・メタル・バンドの中で一番凄味を感じました。


SLAYER

もはやLOUD PARKのトリ常連と言っていいでしょう。正直「またか」という気持ちもある一方、SLAYERのステージを観ることで「ああ、今日もLOUD PARKが終わるな」という気分が生まれるようになったということもまた事実です(笑)。

彼らに関しては「SLAYER is SLAYER」なので、特に過去に観たライブと比べて何が変わるということもなく、このブログの過去の感想をコピペして貼り付けてもいいくらいなのですが(笑)、本日このフェス史上最も音響が良かったこともあり、SLAYERの純度100%のスラッシュ・サウンドが一層研ぎ澄まされて聴こえました。こんなにアホみたいに速い(褒めてます)タテノリのリズムを刻んでいるのに一種のグルーヴが生まれているあたり、本当にSLAYERというのはモンスター・バンドだと思います。

クライマックスの「Raining Blood」、「Chemical Warfare」、「Angel Of Death」の畳み掛けは、我々の首を折りに来ているとしか思えませんでした(笑)。完全燃焼です。

しかし毎年思いますが、この時間にサークル・ピットでグルグル回っている人たち、凄い体力ですね。いや、LOUD PARKの華はこの巨大ピットだと思います。今年はプレミアムチケット用のスペースが確保されたせいでアリーナ前方が狭くなっていて、ピットもその分小さくなったり少なくなったりしていたような気がしますが、ガラガラのVIPスペースで観ていた人たちより、ピットで走っていた人の方がきっとこの時間を楽しんでいたと思います。

てか、あのプレミアムチケット用のスペース、あの場所でいいんですかね? アリーナ最前列の前にスペース取ってあげればよかったのに。それならあんなにガラガラにならなかったと思うのですが。


そして終演してふと気づくと例年サッシャ氏かDJ BOO氏が務めていたMCがいない。しかしこのイベントに関しては別段困ることはない。毎年MCって別にいらないんじゃね? と薄々思っていましたが、経費削減の結果?その疑惑が正しかったことが証明されてしまった感じです。

KEE OF HEARTS / KEE OF HEARTS

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「心の鍵(Key of Hearts)」ではありません。「KEE」of HEARTSです。

KEEとは元EUROPEのギタリストとして知られるキー・マルセロのことで、そのキーとFAIR WARNINGのヴォーカリスト、トミー・ハートによるプロジェクトによるファースト・アルバム(と言ってもセカンドがあるかどうかは本作の売れ行き次第でしょうが)。

まあ、「KEE & TOMMY」とか「MARCELLO & HEART」よりは気の利いたプロジェクト名ですよね。悪くないと思います。

この手の「あのバンドの有名人とこのバンドの有名人をくっつけてできました」というプロジェクトの仕掛け人といえばもはやメロディックなHR/HMのファンにはおなじみのイタリアの『Frontiers Records』。

正直な所、『Frontiers Records』が送り出すプロジェクトというのはどれも高品質ながら、ちょっと人工甘味料めいた印象があってそんなに期待しておらず、ましてキー・マルセロというギタリストについても、技術的には相当高度なものを持っている人だし、ポップス畑の歌手に楽曲提供をしていたり、プロフェッショナルなミュージシャンだとは思っていたが、私個人のツボに入る音楽のクリエイターとしては認識していなかった。

まして、トミー・ハートが歌う曲に期待するのはどうしてもFAIR WARNING。SOUL DOCTORじゃダメなんですよ。

そんなわけでさほど期待せずにYouTubeにリコメンドされたアルバムのオープニング曲、「The Storm」を試聴してみたら、これはもうイントロからしてFAIR WARNING。サビの熱唱を聴く頃にはアルバムをポチっていました。

そして届いたアルバムを最後まで聴き、呟きました「これだよ、FAIR WARNINGに求めていたのは…」。

ブックレットのクレジットを見る限り、作曲にはトミー・ハートもキー・マルセロもタッチしておらず、プロデューサーであるアレッサンドロ・デル・ヴェッキオがソングライティングのイニシアティブを握っているようだが、結果としてこれだけ充実した楽曲が揃っているのであれば文句はない。

聴き込んでみればやはりFAIR WARINGに比べると洗練されたAOR風味が強いが、それでも充分にエッジがあって、近年のレイドバックした本家よりずっとメロディアス・ハード然とした「熱さ」がある(もっともその熱さを担っているのはやはりトミー・ハートの歌声だが)。ぶっちゃけ『GO!』以降のどのFAIR WARNINGのアルバムより楽曲が充実している。

キー・マルセロもさすがのギターを聴かせているものの、さすがにヘルゲ・エンゲルケやアンディ・マレツェクほどの強烈な泣きは発散しておらず、別にキー・マルセロである必然性はなかったのではないかという気もするが、これもまた結果良ければ全て良し。ベースやドラムも全然知らない人ですが、まったく問題なし。

しかし驚きなのは、FAIR WARNINGなんておよそ日本以外では全く無名だったはずなのに、ここまでFAIR WARNING然としたサウンドを人工的にクリエイトしてきたこと。90年代ならいざ知らず、このご時世に日本市場向けの商品なんか作る意味はないでしょうに。

やっぱり欧州でもこの熱き叙情に満ちた天空のメロディアス・ハードの魅力、わかる人はわかってたってことなんですかね。その辺、『BURRN!』誌はぜひインタビュー(トミー・ハートとキー・マルセロだけじゃなく、アレッサンドロ・デル・ヴェッキオにぜひ話を聞いてほしい)してもらいたいものです。【87点】

◆本作収録「The Storm」のMV