2017年 印象に残った5枚

早いもので2017年も終わってしまいます。
ということで恒例のアレを。順番は順位ではなく思いついた順です(つまり限りなく順位に近いんじゃ…ってのは言いっこなしです/笑)。

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BEAST IN BLACK / BERSERKER
フック満載の秀曲揃い。解雇されたアントンには悪いが、BATTLE BEASTの新譜も悪くなかったし、ファンにとっては分裂は楽しみが2倍状態です。
この1曲:"Blind And Frozen"
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ARCH ENEMY / WILL TO POWER
古典的なHR/HMとエクストリーム・メタルの魅力を完璧なバランスで融合した、彼らにしか作れない激音。
この1曲:"The Race"
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SERENITY IN MURDER / THE ECLIPSE
やはり日本のバンドだからなんですかねえ、ここまで琴線に触れるのは。今年一番泣けた名盤。
この1曲:"Land Of Rising Sun"
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GALNERYUS / ULTIMATE SACRIFICE
10作目を超えてなお衰えるどころか充実を重ね、もはやジャパニーズ・メタルの王者としての風格さえ感じる一枚。
この1曲:"Ultimate Sacrifice"
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SERENITY / LIONHEART
勇壮にして壮麗、彼らにはもっと評価されてもらいたい。
この1曲:"Eternal Victory"
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今年は当たり年でしたね。ここ数年でかつてないほど高得点をつけたくなるアルバムにたくさん出会えました。

楽曲については、上記で触れたもの以外で印象に残っているのは下記の5曲ですね。

・ONE DESIRE / Hurt
・KEE OF HEARTS / The Storm
・KREATOR / Gods Of Violence
・GYZE / Hoskew
・BATTLE BEAST / Beyond The Burning Skies


前回のエントリーでレビューしたTHE DARK ELEMENTの「My Sweet Mystery」も捨てがたい魅力がありました。

それでは皆様よいお年を。
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THE DARK ELEMENT / THE DARK ELEMENT

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元NIGHTWISHのアネット・オルゾン(Vo)と元SONATA ARCTICAのヤニ・リマタイネン(G)によるプロジェクトのデビュー作。

「フィンランドのビッグ・バンドをクビになった者同士」という共通点のある二人ですが、アネットの歌声というのは北欧系の哀愁メロディにとても合うと思っている私にとってはその手のメロディの書き手であることをCAIN’S OFFERINGで照明したヤニ君とのコラボというのはいかにも相性が良さそうで、最初にこのプロジェクトが発表された時から期待していましたが、この手の秀逸なマッチングを仕掛けるのはやはり『Frontiers Records』。

二人以外のメンバーはヨナス・クフルベリ(B)にヤニ・フルラ(Dr)という、CAIN’S OFFERINGのライブでサポートを務めていた二人。そういう意味では、ティモ・コティペルト(Vo)とイェンス・ヨハンソン(Key)という、STRATOVARIUSという「本職」がある人を省いて、暇そうな(?)アネットを迎えたCAIN’S OFFERINGという見方もできなくない(ちなみにアルバムではヤニ・リマタイネン自身がKeyをプレイしている)。

このメンツであれば、CAIN’S OFFRINGよりライブを含めてコンスタントな活動ができそうで、その辺の期待も高まります(売れれば、でしょうけど)。

ただ、音楽的には単純にCAIN’S OFFERINGのアネット版、というわけではなく、むしろどちらかというとアネット在籍時のNIGHTWISHに近い印象。

とはいえNIGHTWISHほど大仰ではなく、メロディはむしろSONATA ARCTICAっぽいキャッチーな哀愁を湛えた流麗さがあって、そういう意味では「NIGHTWISH meets SONATA ARCTICA」という、この二人の名前に求められるだろうサウンドが実現している(CAIN’S OFFERINGのアネット版を期待していた人も多いと思うが)。

いや~、しかしヤニ・リマタイネンは本当にいいメロディ・メーカーですね。本作にも私のような北欧哀愁愛好家の琴線に触れるメロディが満載されていて、ついついリピートを誘われます。適度にモダンなアレンジも新鮮でいいと思います。

アネットの透明感のある可憐な歌声も相変わらず魅力的で、あれだけオールド・ファンに叩かれながらも何だかんだ言ってアネット在籍時のNIGHTWISHが商業的にはターヤ時代より成功していたことが、その声がメタル・ファンにとどまらない多くの人の心を捉えるものであることを証明している。

強いて粗探しをするなら、ちょっと楽曲の「色」が画一的で、決して似たような曲ばかりというわけではないにもかかわらずアルバムとしてのメリハリにやや欠けることですかね。

バンド名の通りというか、歌詞のムードはやや暗めというか恨み言っぽく、それは曲調にマッチしているのですが、アネットのNIGHTWISH脱退の経緯を知っている人間には何となくNIGHTWISHに対して向けられたメッセージなんじゃないかと思えてしまいます。

しかし実際に歌詞を書いているのはヤニ・リマタイネンなので、実はヤニからSONATA ARCTICAへの恨み言なのかもしれません(笑)。そういう意味では本作はヤニの心の中の「The Dark Element」なんでしょうか。【85点】

◆本作収録「My Sweet Mystery」のMV


◆本作収録「The Ghost And The Reaper」のMV


BEAST IN BLACK / BERSERKER

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バンドの創設者であり、作詞・作曲・アレンジ・プロデュースのほぼ全てを担う音楽的な中心人物だったにもかかわらず(だからこそ他のメンバーの不満が募り)BATTLE BEASTを解雇されたアントン・カバネン(G, Vo)による新バンドのデビュー・アルバム。

いや~、2017年も終盤になってようやく出てきましたね、今年のブライテスト・ホープ(この言葉、『BURRN!』誌がなかったら一生使うことはなかっただろうなあ)と呼ぶべき存在が。

まあ、基本的にはある程度のレベルで活動実績がある人たちの集まりで、ド新人のバンドではないので新人扱いは不適切かもしれませんが、なんというか、新鮮味があるんですよね、サウンドと存在感に。

メンバーはアントンの他、同じフィンランドのメロディック・パワー・メタル・バンド、MERGING FLAREの中心人物であり、昨年にはU.D.O.のメンバーとして来日もした(現在は脱退)、カスペリ・ヘイッキネン(G)、アントンが2015年から掛け持ちで在籍しているハンガリーのパワー・メタル・バンド、WISDOMのマテ・モルナール(B)、BATTLE BEASTのヤンネ・ビョルクロト(Key)とヨーナ・ビョルクロト(G)兄弟が在籍していたBRYMIRのメンバーだったサミ・ハンニネン(Dr)、そしてギリシャのメロディック・メタル・バンド、WARDRUMのヤニス・パパドプロス(Vo)という、メロディック・メタル系のマニアであればなんとなく知っている顔ぶれ。

当初「BEAST IN BLACK」いうバンド名のみが発表されたとき、明らかに自らを追い出したBATTLE BEASTを意識したバンド名に、その意識がサウンドにどのような形で反映されるのか、期待と不安が入り混じる気持ちがありました。

かつてRHAPSODY OF FIRE在籍時のルカ・トゥリッリが一時ブラック・メタルにハマり、メロディック・ブラック・メタルのプロジェクトを企画していた(結局実現はしなかったが)時に用意していたバンド名が「RHAPSODY IN BLACK」というもので、それはまあアメリカのクラシック/ジャズ作曲家、ガーシュウィンの名曲「Rhapsody In Blue」のパロディなわけですが、ある意味そういう「エクストリーム・メタル・サイド」への傾倒を示すサウンドになるのではないかという危惧(それはそれで聴いてみたい気分もあったので危惧という言い方は適切ではないかもしれないが)があったわけです。

アントン脱退後のBATTLE BEASTからは明らかに、デビュー当時に色濃く存在したACCEPTを思わせる鋼鉄成分が失われてしまったので、もしかするとそういうメタリック・サイドが強く押し出されたサウンドになるのかも…と。

しかしそれは杞憂というか深読みし過ぎで、本作で展開されているサウンドはBATTLE BEASTで展開されていたものとほぼ同じものであり、しかもよりエネルギッシュだ。

そのエネルギッシュな印象に、シンガーのヤニス・パパドプロスの、マイク・ヴェセーラ(LOUDNESS, YNGWIE MALMSTEEN他)やユーリ・サンソン(HIBRIA)を思わせる熱い歌声による貢献が大であることは間違いない。

そして驚いたのはそのヤニスの歌唱の幅の広さで、彼が熱い歌声を持っていることはWARDRUMで知っていたが、本作ではグロウルめいた歪んだ歌声から、最初はゲスト女性シンガーによるものかと思ってしまったほどの女性的な艶のあるメロウな歌声まで、まさに「七色の歌声」という形容が相応しい素晴らしい歌唱を聴かせてくれる。こんなに器用な人だったとは。

ここ日本ではあまり認知されていないが、フィンランドを代表するテクニカルな速弾きギタリストの一人であるカスペリ・ヘイッキネンによるシュレッド・ギターも、サウンドをよりスリリングなものにしている。

BATTLE BEAST時代もたびたび取り上げていた、アントンのフェイバリットである、欧州でも高い人気を誇る日本のコミック『ベルセルク』の世界観もこれまで以上にフィーチュアされており、ACCEPTを彷彿させる剛強なメタル・ナンバー#5「Zodd The Immortal」なんてキャラ(ゾッド)の名前がそのまま使われているし、続く#6「Fifth Angel」も、原作を読んだことがある人であれば、それが第五のゴッドハンド(使徒)、フェムトとなったグリフィスを意味することはすぐに察しがつくことだろう(ちなみに私も『ベルセルク』は大好きです。作者が生きているうちに完結する気がしないけど)。

そもそもアルバム・タイトル自体が『ベルセルク』と同じ語だし、バンド名の「BLACK」の由来も、『ベルセルク』の主人公、「黒い剣士」ガッツであろうことは間違いなく、逆にここまで特定の作品に寄せていいの? って余計な心配さえしてしまいます(笑)。

ジャケットの獅子頭の戦士はBATTLE BEASTのデビュー・アルバムからアントンが在籍していたサード・アルバムまで多少姿を変えてジャケットのアートワークに描かれていたものと同じであり、BATTLE BEASTの最新作ではアントン同様ジャケットから追放されていたことを考えると、アントンにとってこれは自身の象徴であり、バンドにとってはIRON MAIDENのエディのような存在になるのだろう。

いや~、しかし本当に隙がない。バンド名を冠したオープニング・トラックの「Beast In Black」の、アントン自身によるものと思われる「バーサーカー!」というスクリームからしてインパクト絶大だし、続くリード・トラックとなった「Blind And Frozen」は琴線を掻き毟るかのような素晴らしいコーラスがフィーチュアされた名曲。その後もフック満載なメタル・チューンが立て続き、前述の「Zodd The Immortal」のようなゴリゴリした曲から、BATTLE BEASTでもやっていたディスコティックなダンサブル・チューン#7「Crazy, Mad, Insane」のような他のバンドがやらないような異色の(しかし中毒性のある)曲、EUROPEのあの有名曲のオマージュと思しき#9「Eternal Fire」までバラエティ豊かな楽曲をラインナップしつつ、最後は北欧ならではの哀愁に満ちたバラードの#12「Ghost In The Rain」で幕を閉じるアルバム構成も美しい。

うん、序盤の文章ちょっと訂正。これは今年のブライテスト・ホープであるだけじゃなく、単純にベスト・アルバムですわ。既に決定している『SUOMI FEAST 2018』での来日公演もぜひ観に行きたいです。というかLOUD PARKにもぜひ出演してほしい。【91点】

◆本作収録「Blind And Frozen」のMV


SERENITY / LIONHEART

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デビュー10周年を迎えた、中欧オーストリアの芸術の都・ウィーン出身のシンフォニック・パワー・メタル・バンドの通算6枚目のフルレンス・アルバム。

いや~、2017年も終盤になってようやく出てきましたね、勇壮系シンフォニック・メタル・ファン必聴の傑作が。

歴史好きには有名な名前だし、SAXONも同名タイトルのアルバムを制作しているので、タイトルを見ただけでコンセプト・アルバムである本作のテーマをすぐに理解出来る人も多いだろう。アラブの名将サラーフ・アッディーン(欧米ではサラディンと呼ばれる)との激闘によって語り継がれる第三次十字軍遠征において勇名を馳せたイギリスの獅子心王、リチャードI世が本作のモチーフである。

リチャードI世は戦闘のさなか、肩に受けたボウガンの傷が元で41歳という若さで死去したのだが、本作のアートワークはまさに肩に矢を受けたリチャードI世。騎乗する馬に寄り添うように死神が歩いているという、そのものズバリな代物。

そして本作の音楽はKAMELOTとDARK MOORを足して2で割ったようなSERENITYのシンフォニック・パワー・メタル・サウンドの魅力が、勇壮なテーマによってこれまで以上に煽情力を増した仕上がり。

イントロダクションである「Deus Lo Vult」(ラテン語で「神の欲するままに」の意で、十字軍が鬨の声として使っていた)が、まずハリウッド映画のようなドラマティックさで素晴らしい。個人的に序曲が素晴らしいメタル・アルバムに外れはないと思っているのだが、本作もその例に漏れない。

MVになった「United」、「Lionheart」という強力な2曲でツカミはバッチリ。ヘヴィかつ緊張感に満ちた「Hero」から、ライブでの大合唱が目に浮かぶ「Rising High」がさらなるストーリーへの没入を呼び、女声Voとのデュエットが美しいバラード「Heaven」から、エレガントなピアノ・インストの「King’s Landing」で酔わされた後に来るキラー・チューン「Eternal Victory」で完全に昇天。

これまたイントロのコーラスはライブで合唱必至の「Stand And Fight」も、トビアス・サメット(EDGUY, AVANTASIA)似の声を持つベーシスト、ファビオ・アモーレと、ヴォーカリストであるゲオルグ・ノイハウザーのコンビネーション歌唱が印象的なアンセム・ソング。

アルバム終盤も、物語が終焉に向かっていくことをしっかりと描き切る、説得力に満ちたソングライティングが光る楽曲が並んでおり、最後まで緊張感を保ちながらドラマを堪能させてくれる。

いや~、前作『CODEX ATLANTICUS』がちょっとヌルい仕上がりだったので、実はあまり期待していなかったのですが、今回はMy琴線にドンピシャです。音の風格というか説得力のようなものはまだ及ばないかもしれないが、楽曲のクオリティだけに関していえば既にRHAPSODY OF FIREやKAMELOTに比肩しうる、あるいは凌駕してさえいるかもしれません。

コンセプト・アルバムって往々にしてライブ映えしなかったりするものですが、本作は1曲1曲を紐解くと、かなりライブ映えを意識したと思われる楽曲が揃っていて、ライブを観たい気持ちが募ります。ぜひLOUD PARKの大舞台で、と言いたい所ですが、このクラスのバンドだと現実的にはEvoken de Valhallさんに期待ですかね(苦笑)。【88点】

◆本作収録「Lionheart」のMV


◆本作収録「United」のMV



SECRET SPHERE 来日公演 20th Anniversary Show at 新宿BLAZE 2017.12.8

まさかの3年連続来日。一昨年、もう二度と来日しないだろうから、という理由で名古屋遠征までした自分に、タイムマシンで翌年も、さらにその翌年もSECRET SPHEREは来日するよ、と伝えたい気持ちでいっぱいですが、SECRET SPHEREが3年連続で来日する、なんて、当時の私に言っても絶対信じなかったでしょうね(笑)。

そんなわけで行ってきました、SECRET SPHEREの結成20周年公演@新宿BLAZE。
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前座は同じイタリアのARTHEMISに、日本のCROSS VEIN、そしてMARCO ANGELOなるソロ・ギタリストが付く豪華仕様…なのはいいのですが、平日に開場17:00って、どんな会社でもギリギリ定時ですがな。

正直オーディエンスは学生さんより社会人の方がはるかに多いと思われるだけにかなり厳しいスケジュール。

MARCO ANGELO氏はともかく(失礼)、CROSS VEINは観たい所でしたが、16時から打ち合わせがあったため、案の定間に合わず。到着した時にはARTHEMISがプレイしていました。フロアの入り口に向かう途中の通路で、ミケーレ・ルッピが普通にスタッフ?と立ち話をしていたのがライブハウスならでは。

会場の新宿BLAZEは、公称キャパシティはMAX800なので、まあまあ大き目のハコだ。正直SECRET SPHEREとARTHEMISではガラガラなのでは…と危惧していたが、どうにかカッコが付くだけの客入り。仮にもメジャー所属であるCROSS VEIN効果でしょうか。

とはいえ余裕はたっぷりで(苦笑)、その気になれば簡単に前の方に行けそう。いったんフロアの外に出て、コインロッカーにキルティングジャケットとビジネストートを押し込むと、再度入場し、前の方に進んでARTHEMISを鑑賞。

ARTHMISは、個人的には既に興味を失ったバンドで、長らくアルバムは聴いておらず、「予習」は本日に備えてYouTubeに上がっている最近のMVを3曲ほどチェックしてきた程度。

その「予習」で、彼らが日本デビュー当時のようなメロディック・パワー・メタルとは全く異なる音楽性になっていることは承知しており、そのスタイルは必ずしも私好みではないにせよ、ライブで観ればカッコよさそうだったのでそれなりに楽しみにしていた。

そして実際好演と言っていいライブだった。パフォーマンスはキャリア相応の安定感があったし、イタリア人らしい男の色気と愛嬌があるヴォーカリストのファビオ・デッシがなかなか好感の持てるフロントマンぶりで、オーディエンスを上手く味方にしていた。

今年リリースされた彼らの最新作の邦題が「カクメイノノロシ(革命の狼煙)」だというのはこの日この場で知りました(笑)。

Aクラスに行くにはややフックと個性不足ではあるものの、それなりにキャッチーでイキのいいヘヴィ・メタル・サウンドは観ていて気持ちが良かったし、ある意味失礼な物言いかもしれないが、前座として理想的な会場の温め方をしていたと思う。

私が予習した曲のひとつ、「Vortex」でARTHEMISのステージが終わると、会場内のSEとしてDOMINEの超名曲「The Hurricane Master」が流れて個人的な心のボルテージがARTHEMISの演奏中より高まる。「アイ、アム、ズィハリーケンマストァ」というサビは口ずさまずにいられないし、ギター・ソロ前の「So, Here I Go!」ももはや意識せずに口をつく。エンディングで「A Justice Is Done」というスクリームがどんどん高くなっていく様にはエクスタシーを禁じ得ない。危うくライブ中でもないのにパンツを汚すところでした。

その後もDRAGONLANDやらDRAGONFORCEやらELEGYやら、私のような往年のメロディック・メタル・ファン感涙の選曲が続き、気持ちの高まりを持続させてくれる。

そして、そのBGMがフェードアウトし、客電が落ち、SECRET SPHEREのショウがスタート…するかと思いきや、もう一度客電が点き、BGMが流れ出す。誰かトイレにでも行きたくなったのでしょうか(苦笑)。

そんなこんなで事前に告知されていたタイムテーブルより遅れてSECRET SPHEREのショウがスタート。前回観た時には長かったアルド・ロノビレ(G)の髪が短くなっている。生え際がだいぶキているので、落ち武者にならないよう潔く断髪したのでしょうか。てかこの人、髪の毛短くなるとニコラス・ケイジにそっくりだわ。

前半は、事前に聞いていた通り、最新作であるコンセプト・アルバム『THE NATURE OF TIME』の完全再現。

もはや純然たるプログ・メタル・スタイルとなった同作のサウンドは必ずしもライブ映えするとは思えないものだったが、やはりミケーレ・ルッピの歌唱が素晴らしい。いや、他のメンバーのプレイも非常にプロフェッショナルなのだが、やはりルッピは次元が違う。

声自体の美しさ、声量の豊かさもさることながら、ちょっとした息遣いのひとつひとつにまで歌心が満ちていて、聴き惚れざるを得ない。SECRET SPHEREのことを全然知らない、なんならメタルは嫌いという人でさえ、ここに連れて来たらミケーレ・ルッピというシンガーが非凡であることだけはたちどころに理解することだろう。

スピード・メタル・チューンである「Courage」におけるオーディエンスの熱い反応から、何だかんだ言って「そういう曲」が好きなオーディエンスが(私も含めて)集まっていたと思われるが、メロウな曲ではミケーレ・ルッピの卓越した歌唱に、プログレッシヴな曲では楽器隊のスリリングな演奏によって、まったく退屈させられることがない。

「Kindness、君たちのようなね」というMCに導かれて始まった「Kindness」ではあまりのミケーレ・ルッピの歌声の素晴らしさに、思わず涙ぐんでしまいました。

もし、地上では歌うことが許されない天上のメロディというものがあったとして、それが地上でただ1回だけ歌うことが許されるとしたら、その任はこのミケーレ・ルッピが担うべきだろう。そんなとりとめのない妄想が浮かぶような素晴らしい歌唱だった。

ライブ・レポートというよりは単なるミケーレ・ルッピのヨイショ記事みたいになってしまっているが、実際目も耳もミケーレに釘付けだったのだから仕方がない。ついでにちょっと痩せて、前回観た時より腹が引っ込んでいた気がします。

アルバム同様、曲と曲の間にはストーリーを暗示するSEが流れるのだが、これは正直スタジオ音源を聴いている分には想像力が働いて雰囲気があるものの、ライブ会場ではなんだかメンバーも手持ち無沙汰な感じでちょっと微妙。イメージ的なものでいいので、何か映像が欲しかったですね。まあ、コンセプトアルバム再現の合間にベラベラMCされるよりは手持ち無沙汰な方がマシだったとは思いますが。

そして『THE NATURE OF TIME』完全再現が終わると、「この後は違うバンドが出てくるよ~、チャオ!」というミケーレのお茶目な挨拶と共にバンドはいったん引っ込む。

ここからはバンド結成20周年記念公演ということで過去の楽曲をメインにプレイされることになっている。プロモーターであるEvoken de Valhall PRのTwitterではプレイしてほしい曲のリクエストを募っていた。

そして流れるデビュー・アルバムのイントロ、「Dawn Of Time」が流れる。非常に幻想的で美しい、数あるメタル・アルバムのイントロの中でも個人的に1、2を争うほど好きな序曲だ。

この曲が流れるということはまさか、のまさかで始まった「Age Of Wizard」…だが、メンバーたちの様子がおかしい。みんな動物の被りものに、「オヤジギャグ製造機」だの「自分、何松?」だの「動けるデブ」だのといった日本語が書かれたいわゆる「ネタTシャツ」に身を包んでいる。
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そしておかしいのはメンバーの服装だけでなく、「Age Of Wizard」に歌が乗らない(苦笑)。ミケーレ・ルッピが完全に入るタイミングを間違ったようだ。まあ恐らくライブでプレイするのは初めての曲だから無理もないといえば無理もないが…。

というわけで、アマチュアのライブであればしばしば目にするものの、プロのライブで目にするのは珍しい「もう一回最初からやり直し」が発生。あのイントロから続くから感動的なのに…。

そしてやり直しての「Age Of Wizard」も、ミケーレ・ルッピの歌はヨレヨレ(苦笑)。まあ、正直この曲の歌メロは前任Voであるロベルト・メッシーナ独特の歌い回し満載で、普通の人にはいささか歌いにくそうであろうことは素人目(耳)にもなんとなく想像がつくが、やはりミケーレほどに歌が上手い人であっても苦手な曲があると知ってなんとなく安心しました(笑)。

そして続くはデビュー・アルバムからの流れ通り、「Recall Of The Valkyrie」。この曲名がコールされるとフロアが大いに沸き、人気曲であることが窺われる。個人的にもATHENAの「Twilight Of Days」やSKYLARKの「Belzebu」、HIGHLORDの「Frozen Heaven」などと並ぶB級イタリアン・クサメタル・ブームを象徴する名曲のひとつとして前述のTwitterでリクエストしていた曲のうちのひとつだ。

しかし「Age Of Wizard」以上に「ロベルト・メッシーナ節」全開のこの曲もやはりミケーレには歌いにくいらしく、歌メロは大幅に改変されていた。そして「Age Of Wizard」もそうだったが、ミケーレ・ルッピは足元のカンペを見まくり(苦笑)。

まあ、それでもライブで「リコール・オブ・ザ・ヴァルキ~リア!」の合唱ができる日が来るとは思っていなかっただけに、感無量である。演奏に関してはちょっとKeyの音色が地味になっているものの、ほぼ完コピだしね。

その後「ファストでハイな曲をやるぜ」というMCの後に「Loud & Raw」がコールされると、場内に妙な沈黙が満ちる。私もそうだったが、皆「どの曲だっけ?」と記憶を掘り返していたのかもしれない。

いささか気まずく始まった「Loud & Raw」だったが、もちろん実際に演奏が始まれば盛り上がる。ただ、『HEART & ANGER』アルバムからプレイするなら「Where The Sea Ends」にしていただきたかったというのが個人的かつ率直な思い(笑)。

その後にプレイされた前任Vo時代の曲は「The Scars That You Can’t See」に「Legend」、そして「Lady Of Silence」と、過去2回の来日公演でもプレイされたいわば定番曲。もちろん「Legend」はこのバンドで1、2を争う人気曲なので、この日最高の盛り上がりを見せたし、「Lady Of Silence」では、オーディエンスをしゃがませて、曲に合わせてジャンプさせるという、あまり経験のない演出があり、印象深い体験になりました(ミケーレ・ルッピ自身も素直にしゃがむオーディエンスに感銘を受けたようだった)。
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前述のネタTシャツは、少なくともミケーレ・ルッピとアルド・ロノビレは普通のTシャツの上から着ていたので途中で脱いだのですが、アルド・ロノビレが脱ぐときにはミケーレが「Naked! Naked!(裸になれ!裸になれ!)」とコールを掛けたり(もちろん裸にはなりませんでした/笑)、演奏中に最前列にいたファンの持っていたスマホを借り、しばらく動画撮影をしながら歌って返すなど、フランクなステージを観ることができました(あの時のスマホの持ち主の方、動画YouTubeにアップしてください/笑)。

そういう意味ではアルド・ロノビレは前半の「完全再現」はそれなりに緊張していたようで、終始表情が硬かったが、この後半では笑顔が多く見られ、やはりこの後半パートは「ファンサービス」というニュアンスだったんでしょうね。

メンバー紹介では、メンバー自身が驚くほどの大歓声が彼らを包み、場内のムードはすこぶる良く、メンバー自身もご満悦な感じでした。本国や、まして欧州の他の国ではここまで暖かい反応は珍しいのかもしれません(そもそも彼らはそんなに多くのライブをやっていませんが)。

終盤はミケーレ・ルッピ加入後の「Union」、「Lie To Me」、そしてアンコールのような形で「Healing」がプレイされて終演を迎えたわけですが、どうも本来はもっとプレイするつもりだったよう。

というのも、その時点で既に終了予定時刻である22時を15分近く過ぎており、「もう1曲プレイしていい? あ、ダメ?」みたいなやり取りがステージ上のミケーレとステージ袖のスタッフの間で行なわれていたからです。

結局時間切れということで「じゃあ、写真、写真を撮ろう!」と、最近のライブではどのバンドでもお約束になりつつある「オーディエンスを背景にしての写真撮影」が行なわれて本日のライブは幕を閉じました。アルド・ロノビレはちょっと不満そうでしたが(笑)。

そんなちょっとグダグダな感のある終わり方ではありましたが、演出からハプニングまで様々な「印象に残るポイント」があり、そしてもちろんパフォーマンスがこのクラスのバンドとしてはありえないほどに充実していたので、ライブトータルでの満足度はかなり高かったです。

心残りは、リクエストした曲のうちのひとつ「The Brave」がプレイされなかったことと、そのリクエストキャンペーンに参加したことでメンバーのサイン入りポストカードが当選していたのですが、引き換え場所である物販ブースが見つけられずに結局受け取れなかったことですね(苦笑)。CROSS VEINの音源とグッズを売っているブースは見つかったんですけどね。

終演後、ドリンクチケットと引き換えたビールを飲みながら場内を歩き回ったのですが、コインロッカーしか見当たらず。いったい物販ブースというのはどこにあったのでしょう。

まあ、別にポストカードが欲しくて楽曲のリクエストをしたわけではないので別にいいのですが。

しかしやはりミケーレ・ルッピの歌は絶品でした。今度、元RHAPSODY OF FIRE、現ANGRAのVoであるファビオ・リオーネと、LUCA TURILLI'S RHAPSODYのVoであるアレッサンドロ・コンティによるプロジェクト、LIONE/CONTIのアルバムがリリースされるそうですが、個人的にはミケーレ・ルッピとファビオ・リオーネのコラボ・アルバムも聴いてみたいですね。

個人的なイメージではファビオ・リオーネは「騎士の声」、ミケーレ・ルッピは「貴族の声」という印象を(勝手に)持っているので、プロジェクト名は「KNIGHT & NOBLE」でお願いします(誰に言っているんだって? そりゃ『Frontiers Records』のオーナー、セラフィノ・ペルジーノ氏ですよ/笑)。