映画『スパイナル・タップ』感想

なぜかオリジナルの公開(アメリカ)から34年経った中途半端なタイミングで日本初劇場公開されている『スパイナル・タップ』を新宿武蔵野館で観てきました。

ヘヴィ・メタルと何かしらの形でゆかりのある映画というのはぼちぼちあるのですが、映画としてマトモに評価されているのは『アンヴィル! 夢を諦めきれない男たち』とこの作品くらいのものでしょう(あと強いて言えば『ウェインズ・ワールド』?)。

今日はたまたま仕事が早く切り上げられたから21時の回を観に行ったのですが、「映画の日」でチケット代が1000円だからか、上映開始から既に2週間以上経った平日夜の回にもかかわらず半分以上の席が埋まっている。

内容については、ロキュメンタリー(ロック・ドキュメンタリー)を装ったモキュメンタリー(モック・ドキュメンタリー=ニセのドキュメンタリー)で、架空のバンド「スパイナル・タップ」のツアー・ドキュメンタリー的な内容になっている。

基本的にアメリカ人と日本人のユーモア・センスというか笑いのツボは異なるので(当時日本公開されなかった理由のひとつだろうと思われる)、アメリカ人ほどに本作で笑える日本人は少ないと思われるが、ボリュームの目盛りが11まであるアンプ、発注時に単位を間違えてミニチュア・サイズで出来上がってしまったステージ・セット、楽屋からステージまでの導線で迷子になるメンバーなど、劇場内でも笑いが起きた、わかりやすいシーンも結構ある。

しかし、本作が特にミュージシャンに高い人気を得たのは、ヴォーカリストとギタリストの確執、やたら交代するドラマー、トレンドに合わせて節操なく変わっていく音楽性、メンバーの彼女がバンド活動に口出ししてきてメンバー間の仲が悪くなることなど、当時の「バンドあるある」な話が盛り込まれていたからだという。

DOKKENのジョージ・リンチはこの映画を観て「自分たちの映画だ」と思ったそうだし、オジー・オズボーンやディー・スナイダー(TWISTED SISTER)も楽屋からステージまでの導線で迷子になったことがあるという(笑)。

極めつけは、METALLICAのメガ・ヒット作である『ブラック・アルバム』のアートワークは、本作で描かれる彼らの真っ黒なジャケットのアルバム『SMELL THE GLOVE』へのオマージュだというエピソードが、本作のHR/HM界隈への影響力を示す最たるものだろう。

その『SMELL THE GLOVE』が真っ黒なジャケットになった理由が、「オリジナルのアートワークがあまりにスキャンダラスだから」というのも、SCORPIONSのファンを筆頭に、レコード会社との軋轢エピソード含めて、歴の長いHR/HMファンなら「あるある」な話だと思うことだろう。

ネタバレながら本作のラストは大成功の日本公演で幕を閉じるのだが、欧米では「終わった」バンドが、日本だけで人気がある、みたいな現象も含めて、「ロックあるある」な話であると個人的には強く感じさせられた。

冒頭でも述べた通り、本作は純粋に映画として高く評価されていて、映画史に残るカルト映画的なポジションを確立している。その辺の話はウィキペディアでも読んでいただくとして、本作が「メタルな映画なのか?」ということこそがこのブログの読者の方にとっては重要なことだろう。

ただ、残念ながらその問いに対しては「否」と答えざるを得ない。

確かに本作は基本的にHR/HMバンドのモキュメンタリーである。何度も映し出されるライブ映像シーンで演奏される音楽は、本作が制作された1984年当時、まさに人気絶頂を迎えようとしていたHR/HMと思しきサウンドである。

だが、本作で描かれているのはそういう人気絶頂のHR/HMに対する風刺やパロディであって、ジョークとユーモアに貫かれている。

それに対して、私が愛しているHR/HMという音楽は、いかに傍から見て滑稽であろうと、その音楽世界は決してジョークではなく「マジ」なのであり、「マジ」であるからこそアツい魅力に満ちているのだ。

とはいえ、現実社会に生きる人間としてHR/HMのカッコよさと滑稽さの紙一重な部分は認識しておくべきだし、単純に映画として面白かったりするので、HR/HMファンの一般教養(?)としてこの機会にご覧になってはいかがでしょうか。

ちなみに、私はDVD持ってるのに観に行きました(笑)。

映画『スパイナル・タップ』公式サイト

※映画館内の展示風景
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SERENITY "Eternal Victory"のMV

オーストリアのシンフォニック・パワー・メタル・バンド、SERENITYが最新作"LIONHEART"から新しいMV "Eternal Victory"を公開していました。

同作で1、2を争う好きな曲なのでアピールの材料が出来たことは嬉しいのですが、オフショット集みたいな作りはちょっと楽曲に対してチープな感じ。せっかくスケール感があるドラマティックな曲なのに、楽曲の世界観を生かせてないのが残念です。

まあ、ツアーの告知的なニュアンスで制作・発表されたもののようなので、こういう映像にならざるを得ないのかもしれませんが。

正直11月に行なわれるKAMELOT来日公演のサポート・アクトは、音楽的な親和性からいくとこのバンドが務めると一番相乗効果が高いと思うのですが、もはやこのバンドが日本に来るとしたらEVPの力を借りるしかないのでしょうか。

でもEVPもイタリアと北欧には強いけど、中欧はそうでもないような気がするので難しいのでしょうかね。