FC2ブログ

POWERWOLF / THE SACRAMENT OF SIN

powerwolf07.jpg

ドイツの大人気パワー・メタル・バンド、POWERWOLFの、ライブ作品『THE METAL MASS LIVE』(2016)を挟んでリリースされた、スタジオ・アルバムとしては前作『BLESSED & POSSESED』(2015)以来、約3年ぶりとなるフル・アルバム。

彼らのこれまでの作品は全てフレドリック・ノルドストロームがプロデュースしてきていたが、本作では当代随一の売れっ子と言っても過言ではないだろうイェンス・ボグレンをプロデュースに迎えて制作されている。

とはいえ、これまでの音楽性に大きな変化はなく、言われてみれば心持ちサウンドがファットかつパワフルになったかな…? くらいの印象はあるものの、基本的には既に確立されたPOWERWOLFの世界が展開されている。

荘厳にして勇壮、それでいてキャッチーなパワー・メタル・サウンドのクオリティは盤石の安定感で、色物風のイメージとは裏腹に、彼らのソングライティング能力の高さは間違いなくEDGUY以来の才能と言えるだろう。

前作『BLESSED & POSSESED』のオマケとして(というには充実し過ぎた内容だったが)カヴァー・アルバム『METALLUM NOSTURM』を制作したことが、本作におけるソングライティングのバラエティにつながったそうで、極めて明確な「バンドの世界」を持ち、楽曲の長さも3~4分台とコンパクトに統一されているにもかかわらず、バンド初のバラードを収録しているという事実に端的に表れている通り、アルバムの起伏やメリハリは過去最高。

ジャケットのアートワークを見た時点で「これは傑作だろうな」と予感していたが、その予感を裏切らない、非の打ち所がないメロディック・パワー・メタルの秀作であり、本国ドイツでは再びナショナル・チャートのNo.1に輝いたというのも納得である。

ただ、ここまで絶賛しておいてナンですが、このバンドが日本でどこまで人気が出るかというと、個人的にはやや疑問がありまして。

まず、このバンドの魅力の大きなパートを占めている(はずの)「世界観」が、非キリスト教文化圏の人間には今一つピンと来ないこと。これはゴシック・メタル系のバンドが日本で人気が出ないのに通じる話ですね。欧米では大人気のGHOSTが日本ではサッパリ、なのもこの辺の事情でしょう。

あと、日本人って重厚で濃厚なものより、あっさりしてスッキリしたものの方が好きという人の方が多いと思うんですよ。音楽に限らず食べ物の好みとか色使いのセンス、極論すればどんなルックスの異性に魅力を感じるかという話にも通じるものがあると思うんですが、BLIND GUARDIANやRHAPSODY OF FIREあたりが欧州における評価ほどに日本で人気が出ないのは、要は「濃すぎる」のではないかという仮説ですが、このバンドにもその傾向があるのではないかと。

そして、これは私の勝手な印象ですが、日本の正統派/メロディック・メタルのファンというのは、なんだかんだ言って「ロック・スターっぽいヴォーカルと、ギター・ヒーローっぽいギタリストがいるバンド」が好きなんだと思うんですよね。

それは必ずしもヴォーカルとギターがイケメンである、ということではなく、バンドにおける存在感というかキャラ立ちの意味で、なかなか万人に理解してもらうことは難しい感覚なのですが、日本で売れたメロディック・パワー・メタル・バンドの例でいうと、HELLOWEENのマイケル・キスクとカイ・ハンセン、ANGRAのアンドレ・マトスとキコ・ルーレイロ、SONATA ARCHTICAのトニー・カッコとヤニ・リマタイネン、みたいな組み合わせは「わかりやすかった」のだと思います。

日本ではIN FLAMESよりARCH ENEMYの方が人気が高いというのも、そういう「メンバーのキャラ」の問題が結構大きいのではないかと思ってます。

そういう意味でいうと、POWERWOLFのメンバーの出で立ちというかキャラクターは、日本のメロディック・パワー・メタル・ファンの憧れを刺激しない、平たく言えばカッコいいと思われないのではないかと。

そして、その問題はPOWERWOLFと同じく欧州で大人気のSABATONにも共有されるものだと思います。いや、問題といってもバンド側の問題ではなく、日本のファンの嗜好の問題なのですが。

とはいえ、国民性の違いで受け入れられない商品というのは別に音楽に限らずあらゆるカテゴリーで存在するので、別におかしな話ではなく、「欧米で評価されているものなんだから日本人も評価すべき」という言説の方がむしろ不自然かつ不健全です。

欧米で売れているものが売れない日本はグローバル化してない後進国だ、みたいな意見は、日本人の独自性、日本の文化環境、そういう嗜好を育んできた歴史や風土を否定するファシスト的な、最もグローバル感覚から遠いものでしょう。

話がものすごく逸れたので強引に本筋に戻すと、POWERWOLFの音楽というのは必ずしも日本人好みというわけではないかもしれませんが、メロディック・パワー・メタルとしての完成度は非常に高いので、その手の音楽が好きだという自覚がある人はぜひ一度トライしていただきたいな、ということです。

なお、本作の限定盤にはボーナス・ディスクとして、EPICAやHEAVEN SHALL BURN、AMARANTHEやELUVEITIEといったバンドがPOWERWOLFの過去の名曲をカヴァーした音源が10曲収められた「逆カヴァー・アルバム」、『COMMUNIO LUPORUM』が付属しています。

こうして他バンドがカヴァーした音源を聴くと、その世界観ゆえに特別なものに響く彼らの楽曲が、普遍的なメロディック・メタルとして完成度が高いものであることがよく理解できるという意味で良い企画といえるでしょう。オマケとしては今回も非常に豪華なので、皆さん通常版ではなく限定盤を買いましょう(ワードレコーズの回し者ではありません)。【88点】





ついでにボーナス・ディスク収録のEPICAによる「Sacred & Wild」のカヴァーのリリック・ビデオもご紹介。


スポンサーサイト