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AZRAEL / MOONCHILD

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レビューに先んじて年間ベスト的なものに選出してしまったので、傑作であることは前提です(笑)。

恐らく、日本で意識的にメロディック・パワー・メタル・バンドとしてアルバムを出すことに漕ぎつけた初めてのバンドであると思われるAZRAELの、神奈川大学のサークル・バンドとしての結成から数えて25年目となる年にリリースされた通算5作目のフル・アルバム。

私がこのバンドの存在を知ったのは、デビュー・アルバムがリリースされた1997年当時、行きつけだったCDショップで試聴機展開されていたのがきっかけですが、その時の「ついに日本にもこんなバンドが…!」という衝撃は今でも鮮明に覚えています。

デビュー当時の演奏力やサウンド・プロダクションはややアレでしたが、その辺も当時の感覚では親近感につながって、このバンドに対しては常に特別な思い入れを持って見守ってきましたが、前作から8年の年月が経ち、「もう普通のサラリーマンになっちゃったのかな…?」と思い始めていたタイミングでの嬉しいリリース。

前作『DREAM ON』発表後、TACKY(G)とAOI(B)が脱退、本作ではYASU(B/GRAND FINALE)、AKKKI(G/ちびらり)が加入して制作されています。

とはいえ、このバンドの中心はリーダーのTAKE(G)と、ヴォーカルのAKIRAの2名なので、音楽的には何も変わっていない。

デビュー以来の(と言ってもいいですよね?)ファンとしては、まずはこの「変わらなさ」が嬉しい。

変わらないことが良いことか悪いことかというと、それは色々な価値観があると思いますが、こと音楽に関しては人間20代以降大きく嗜好が変わるはずがないと思っています。

にもかかわらず多くのアーティストのサウンド・スタイルが変わるのはビジネス的な意図かマイブーム的な「気分」でしかないと思っており、そういう意味で私の好きなスタイルを貫いてくれるこのバンドには正直さと誠実さを感じます。

そして本作の出来の良さがまた嬉しい。

「宇宙誕生」という超壮大でちょっと中二病なテーマを40歳を超えた(オリジナル・メンバーは超えているはず)いい大人が打ち出してくることもまた個人的には嬉しくなってしまうのですが、新加入のYASU(B)がオーケストラ・アレンジを手掛けたという序曲の#1「Birth Of The Universe」から、スケール感あるサビを持つスピード・チューンのタイトル曲#2の流れで既にこみ上げてくるものがある。

そして続く#3「Surveillance Society」冒頭の、AKIRAさん必殺の超ハイトーン・スクリームでガッツポーズ。これぞAZRAEL節ですよ。ライナーノーツで自らEDGUYの「Babylon」を「参考にした」とネタバレしているのも微笑ましい。

#4「Fly Till The End Of Time」は2005年に発表したEP「MY BLACKEST HEART」収録曲。サウンド・プロダクションの向上もあってオリジナルよりスケール感を大きく増している。

#5「Dream Die Hard」は、2nd『KING OF STEELY NATION』収録の「Hold On To The Young Love」以来(いや、デビュー作の「Calling You」以来かな?)、AZRAELの芸風のひとつとなっているホープフルなハード・ポップ・ナンバー。メロパワもメロハーも好き、という私のようなリスナーにとっては、中途半端なミドルテンポの曲をプレイされるくらいなら、こういう曲でアルバムに起伏をつけてくれるのはありがたい。

#6「Fight It Out」は、2011年の東日本大震災を受けて、現在の彼らの所属レーベルである『Black-listed Records』からリリースされたチャリティ・オムニバス・アルバム『METAL BLESS JAPAN』にデモ・バージョンが収録されていた楽曲の「完成版」で、イントロ部分で参考にしたのがSTRATOVARIUSの「Freedom」であることを素直にライナーノーツで明かしているのも微笑ましい(2回目)。

#7「Infinity」は新メンバーYASUによる楽曲で、典型的なAZRAEL節とは異なる、ちょっとプログレッシヴな構成を持った楽曲だが、印象的な歌メロとメロディックなギター・ソロ・パートは私のような古参のAZRAELファンにも容易に受け容れられる魅力がある。

#8「Heaven Or Hell」、これはメロディック・スピード・メタル・ファンにとってはキラーでしょう。速い曲の多い本作の中でも最も速い曲。とはいえただ速いだけでなく絶妙な緩急と起伏があって、だからこそキラーになっている曲と言える。

#9はこれまたメロハーな曲で、ライナーノーツで「哀愁はありつつも、それでいて何か勇気が沸くような楽曲」と形容している通りの力強さがあり、サビも日本人にしか作れないだろうフックが印象的な佳曲。

#10「Legacy Of Tragedy」は新メンバーAKKKIの作曲による哀愁が強調された楽曲で、これまた歌メロ、ギター・ソロ共に日本人ならではの歌謡センスが活きた楽曲で、Keyのスペーシーな音色も楽曲のムードを引き立てている。

#11「Servant Of Steel」は#4「Fly Till The End Of Time」同様、2005年に発表したEP「MY BLACKEST HEART」収録曲。アルバム終盤に相応しい緊張感のある疾走曲で、リメイクにもかかわらずアルバムの流れにピッタリとマッチしている。

ラストを飾る#12「Sun Will Rise」はYASUがリーダーを務めているELENDIRAの楽曲で、まあカヴァーというか、作曲者本人がいるので「AZRAELバージョン」といった感じか。

これまたこのアルバムのために作られた楽曲ではないにもかかわらず、疾走感と希望に満ちたこのアルバムのエンディングにピッタリな素晴らしい曲…と感じるのはオリジナルを未聴だからでしょうか。

前作『DREAM ON』は全体的にマイナー調の哀メロがフィーチュアされた、哀愁派である私には好ましい作風だったはずだが、それまでの作品に比べて今一つ満足できなかったというのが正直な所。

その満足できなかった理由が、本作を聴いて納得できました。

このバンドの持つ最大の魅力は「希望」を感じさせるメロディなのです。Aメロからヴァースまでは哀愁を湛えつつ、サビでは明るい希望をコーラスする、これこそこのバンドの「黄金律」なのだということを、本作のキラー・チューンたちが雄弁に物語っています。

過去に発表された楽曲のリメイクが12曲中3曲と1/4もあることをネガティブに見る人もいるかもしれませんが、いずれの楽曲も本作に完全になじんでおり、過去の音源は決して入手しやすい状況ではない以上、新規のファンにとってはありがたい話でしょう。

私より「ちょっと先輩、ほぼ同世代」なこのバンドが、こうして「いい歳」になって最高のアルバムをリリースしてくれたことが本当に嬉しい。点数はちょっと個人的な思い入れ込みかもしれませんが、メロディックなメタルが好きな人であれば聴いて損はしない、素晴らしいアルバムであることは間違いないと思います。【90点】



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