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WORK OF ART “EXHIBITS” アルバム・レビュー

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個人的に現在世界最高のAOR/メロハー・バンドだと思っているスウェーデンの3人組の、前作”FRAMEWORK”(2014)以来約5年ぶりの4thアルバム。

前作発表時に「デビュー作からの3部作が完結」というようなことを言っており、商業的に成功している雰囲気もなかったので、このまま活動停止してしまうのではないかと危惧していたが、まずはこうしてカムバックしてくれたのはまずそれだけでありがたい。

ラーズ・サフスンドの艶も張りもある爽やかな歌声と、瑞々しいKeyアレンジに彩られた麗しきAORサウンドは健在で、これまでの彼らの作品を気に入っていた人であれば#1 “Misguided Love”のイントロで軽くガッツポーズ、MVが先行公開されていた#2 “Be The Believer”で本作も傑作であることを確信することだろう。

ただ、本作は過去作に比べると楽曲がバラエティに富んでいるというか、彼らのイメージであるクリーンで洗練されたAOR/産業ロック・サウンドの文脈を逸脱するような楽曲も収録されている。

“Rising Force”みたいなイントロで始まる#6 “Come Home”なんかは彼らの楽曲の中ではかなりヘヴィだし、#9 “Scars To Prove It”みたいな「黒っぽい」曲も珍しい(こういう黒人的な曲を歌うとラーズ・サフスンドの歌声はヨラン・エドマンっぽく響く)。

そしてラーズ・サフスンドの歌声もこれまでよりややラフに歌っている観があり、サウンド・プロダクションもやや生々しくアナログ的に録られている気がするので、これまでほど「カッチリした」音楽を志向せず、語弊を恐れずに言えば「ロックっぽい」アルバムを狙ったのではないかと思われる。

なお、本作には映画『ロッキー4』のサウンド・トラックを手掛けたことで知られるヴィンス・ディコーラ(Key)が#4 “This Isn’t Love”にゲスト参加しており、その『ロッキー4』のテーマ曲だった”Burning Heart”を手掛けたSURVIVORのジム・ピートリック(G)が一部ソングライティングに絡んでいる。2曲目のMVに選ばれた#3 “Another Night”がどことなく”Burning Heart”風なのは、きっと偶然ではなくオマージュだろう。

いずれにせよ豊穣なメロディに満ちた極上に心地よいサウンドであることは間違いなく、それだけにこれほどのバンドが公式サイトも存在せず(Facebookのページはある)、Wikipediaに彼らについて記述するページもないという状況は、この手のサウンドが世界的に廃れていることを感じさせられる悲しい事実である。【85点】





PRETTY MAIDS “UNDRESS YOUR MADNESS” アルバム・レビュー

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昨年、代表作のひとつである”FUTURE WORLD” 30周年記念公演で来日したPRETTY MAIDSの、前作”KINGMAKER”(2016)から約3年ぶりとなる通算14枚目のオリジナル・アルバム(”STRIPPED”と”LOUDER THAN EVER”は企画盤扱いということで)。

前作発表後、キーボーディストとしてクリス・レイニーが加入、ドラマーが元ROYAL HUNTのアラン・チカヤから同じく元ROYAL HUNTのアラン・ソーレンセンに交代している(しかしアラン・ソーレンセンは本作発表後既に脱退)。

本作発表直前の10月に、フロントマンであるロニー・アトキンス(Vo)に肺癌が見つかり手術を受けたという心配なニュースが発表されましたが、本作を聴く限り未だ衰えが見られない力強い歌声を聴くことができます。

実際、このバンドを他のメタル・バンドから際立たせているのは、楽曲の良さもさることながら、ロニー・アトキンスのエモーショナルでパワフルなハスキー系の歌声だと思うんですよね。パワフルでハスキー、というと暑苦しい感じになりがちなのですが、ロニー・アトキンスに関しては、温もりこそ感じれど暑苦しさは感じないんですよね。

元々彼らの楽曲はパワー・メタル的な色とメロディアス・ハード的な色の両方を持っているが、本作は後者の色がやや強め。

とはいえ力強いヘヴィなリフがフィーチュアされた曲も多く、軟弱な印象は全くない。この軟弱さを感じさせない要因も、ロニー・アトキンスの歌声に拠るところが大きい。

哀愁を感じさせつつもクサくはならないメロディ作りの妙はすでに職人の域だし、歌を主役に据えた曲における、ロニーの優しさと郷愁のようなものを感じさせるメロウ・サイドの歌声は本当に魅力的。

ついついロニーの歌にフォーカスしてしまいますが、ケン・ハマー(G)のギター・ワークもまた匠の技で、リフ・メイキングはもちろん、何気ないバッキングのアレンジに潜むセンスが彼らの楽曲を単調にさせず、歌を邪魔することなくエッジを効かせるという非凡なことを易々とやってのけている。

往年の名盤を超えているとまでは言わないにせよ、聴き劣りすることもない、ベテランならではの熟練と安定を感じさせる間違いのない一枚。【83点】




この曲のサビなんかは、ロニー・アトキンスの声だから魅力的になっていると思いますね。祈・回復。

SCORPIONSの『モスクワ・ミュージック・ピース・フェスティバル 1989』オフィシャル・ライブ映像

1989年にソビエト連邦(当時)の首都モスクワのレニングラード・スタジアム(現ルジニキ・スタジアム)を中心に開催され、10万人以上のオーディエンスを集めた伝説的ロック・フェスティバル、"Moscow Music Peace Festival 1989"。

このフェスティバルにおけるSCORPIONSのライブ・パフォーマンス映像がなぜか最近になって彼らの公式YouTubeチャンネルで公開されていました。

このフェスティバルの模様は過去に映像商品化されているという意味では別にレアなものではありませんが、今現在入手しやすいかというと決してそうではないので、ありがたい公開です。

このフェスティバルはソ連において観客が立ち上がって観ることができた最初のコンサートで、ソ連政府はこの日のために天候を晴れにするロケット(そんなものあるんですね)を打ち上げたという話があるので、凄いイベントであることは間違いありません。

ちなみにこの歴史的なフェスティバルに出演していたのはBON JOVI、OZZY OSBOURNE、SCORPIONS、MOTLEY CRUE、CINDERELLAにSKID ROWというHR/HMバンドばかり。

たまたまその時期欧米で人気があるポップ・ミュージックのジャンルがHR/HMだったから、と言われてしまえばそれまでですが、HR/HMってこういう歴史的な貢献のようなものもしているのにあまりその辺も評価されていない気がします。

ヘッドライナーはBON JOVIでしたが、SCORPIONSはその前年1988年に単独公演も行なっていたので、既にファンベースもあり、ただでさえロックに飢えていたソ連の若者の盛り上がりはかなりのものです。

1988年の初公演の時と、1989年のこの公演におけるソビエト連邦における「空気の変化」をSCORPIONSのメンバーが感じ取った結果、HR/HM史上最もワールドワイドで売れたシングルとなった名曲"Wind Of Change"が生まれたそうです。

2019年12月4日現在公開されているのは以下の5曲。80年代、最もエネルギッシュなライブをするバンドとしての評価をほしいままにしていた彼らならではのキレキレなパフォーマンスが楽しめます。