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TEMPERANCE "VIRIDIAN" アルバム・レビュー

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イタリア北部の都市、アローナ出身のモダン・メロディック・メタル・バンドの、これまで所属していた"Scarlet Records"から"Napalm Records"に移籍して発表された通算5作目のフル・アルバム。

2009年から2017年までSECRET SPHEREに在籍していたマルコ・パストリーノ(G, Vo)のメイン・バンドということでデビュー当時から注目とは言わないまでも認知はしていた。

そして作品の出来も常に当サイト/ブログ基準で82~85点クラスのものをクリエイトしていたのだが、SECRET SPHEREのファンが気に入るようなメロディック・パワー・メタル的エレメントもありつつ、モダンなヘヴィさや、エレクトロニックなキーボード・アレンジ、曲によってはフォーキッシュな味わいもありつつ、プログレッシヴなエッセンスもある、多様性があると言えば聞こえはいいが、言葉では簡単に説明しづらい音楽性がレビュー的文章を書きづらく、これまでこのブログではスルーしてしまっていたバンドである。

本作は前作"OF JUPITER AND MOON"(2018)と同じラインナップで制作されており、ミックス&マスタリングも前作同様ヤコブ・ハンセンが手掛けているので、大きく変わりようがない…はずなのだが、これが明らかに前作より良い。

いや、前作も充分に良質な作品だったのだが、今回はひと皮剥けたなと。

先述した彼らのサウンドの持つ多様性に基づく楽曲のバラエティ、実はそれはピュアであることを良しとするメタル・ファンにとって必ずしも加点ポイントではなかったりするのだが、このクオリティとバラエティを両立させられたらグウの音も出ない。

オープニングを飾る#1 "Mission Impossible"こそ、そのヘヴィなリフに私のような保守的なメタル・ファンは一瞬怯むものの、イントロがテレビアニメ『北斗の拳』の主題歌として知られるクリスタル・キングの「愛を取りもどせ!!」を彷彿させる#2 "I Am The Fire"の北欧メロハーを思わせる味わいに身を乗り出し、MVになった名曲#4 "My Demons Can't Sleep"を聴く頃にはすっかり本作に心奪われている。

パワー・メタリックな疾走パートを持つ曲などももちろん魅力的なのだが、個人的に心打たれたのが#7 "Scent Of Dye"や"#10"Gaia"、#12 "Lost In The Christmas Dream"など、バラード調の楽曲の素晴らしさ。

メタル・バンドのやるバラードというのは往々にして、アルバムにメリハリをつけるためだけの箸休め的存在になってしまいがちだが、本作に収められたバラード系の曲はいずれも独自の景色を見せてくれる、単体で魅力的な楽曲に仕上がっている点にソングライティング力の高さを感じずにいられない。

モダンなアレンジや、女性1人と男性2人の3人のシンガーを擁しているという編成などから、彼らをAMARANTHEのフォロワーと片付けるのはたやすいが、楽曲のクオリティにおいてはもはや本家を凌駕している。

一歩間違うと散漫で取っ散らかった印象になりそうな音楽性を、メロディとフックの強さというシンプルな楽曲の良さで筋を通した本作、これは今年のダークホースかも。

#9 "Nanook"もドラマティックな名曲なので、そのドラマ性に相応しいMVを作ってほしいですね。【87点】





LOVEBITES “ELECTRIC PENTAGRAM” アルバム・レビュー

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今最も勢いのあるガールズ・メタル・バンド、LOVEBITESの3枚目のフル・アルバム。

今回もフィンランドのFINNVOX STUDIOにおける、ミッコ・カルミラによるミックス、ミカ・ユッシラによるマスタリングを経て、欧州パワー・メタル然としたサウンドが追求されている。

いわゆるメロディック・パワー・メタルの典型というべきスピード・チューンから、IRON MAIDENを彷彿とさせる三連の曲、スラッシュ・メタルばりのアグレッションを放つ曲から、本作の新境地と言える70年代ハード・ロックの趣を持つ曲まで、これまで以上にバリエーションを見せつつ、70分に及ぶ長丁場をダレさせずに聴かせるテンションがある。

日本のガールズ・メタルというのはえてして「歌謡メタル」に流れがちだが、このバンドはストイックに欧州型メタルのスタイルを貫いており、その辺がこのバンドをして頭一つ突き抜けさせたのだろう。

ちょっと気になるのは、「ガールズ・バンド」ということでナメられないようにということなのか、殊更にテクニカルな演奏をフィーチュアしようとし過ぎるきらいがあり、その結果として楽曲が全体的に長尺になる傾向があること。

悪く言うと「肩の力が入りすぎ」ということで、私としてはむしろ4分台くらいのコンパクトな楽曲も聴いてみたいと思ったり。

ライブを観るとかなりいっぱいいっぱいな感じで、余裕たっぷりには見えないし(苦笑)。いや、付属のライブDVDを観てもその危うさは魅力にこそなれ、決して悪印象なものではないのですが。

とはいえ、こういうがむしゃらで全力投球な感じはまだ3枚目というキャリアの浅さであればむしろ好感を持って迎えられるべきもので、この「なんちゃってメタル」になるまいとする気概をよしとすればこそ、オリコン週間チャートで9位という「成果」に結びついたということなのかもしれない。

Voも以前はちょっと畑違い? と思っていましたが、だいぶメタルが板についてきた感じがします。【86点】


"Ride The Sky"風のメロディに乗せて"Carry On"と歌う、高度な(?)オマージュが込められたメロディック・パワー・メタルど真ん中の曲。



VICTORIUS “SPACE NINJAS FROM HELL” アルバム・レビュー

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ドイツ出身のパワー・メタル・バンドの通算5作目となるフル・アルバム。

ドイツ出身の、ファンタジックなテーマをモチーフにしたメロディック・パワー・メタルというと、「ああ、HELLOWEENやBLIND GUARDIANのフォロワーね」と思われるだろうし、実際そういったバンドからも影響を受けていると思われる。

しかし、欧州のHELLOWEENフォロワーのバンドの多くがトールキンやムアコックといった半世紀以上前の古典的なファンタジー小説や、さらに大きくさかのぼって神話や民話の類を世界観のバックボーンにしているのに対し、このバンドの描くファンタジーというのは現代的なアニメやゲーム、現代ハリウッドのエンターテインメント映画に近いノリで、良い意味での「軽さ」がある。

それが顕著になったのが、前作EP”DINASAUR WARFARE – LEGEND OF THE POWER SAURUS”(2018)からで、それまでは凡百の欧州メタルのイメージに埋もれがちだった彼らの、「男の子が好きなモノ」に対する愛情が暴走する独自性のあるスタイルを世に知らしめることになった。

そう、彼らにとってはドラゴンや魔法使いといった、いかにも欧州の伝統を踏まえたスタイルのハイ・ファンタジーも、『ジュラシック・パーク』に出てくるような恐竜も、そして本作でテーマとしている『ニンジャやサムライ』も、どれも「カッコいいもの」なのである。そしてその感性は男の子(かつて男の子だった男性)にはよく理解できるものだろう。

メロディック・パワー・メタルのファンであればご存じの通り、メロディック・パワー・メタルというスタイルは日本人の感覚だと「アニメの主題歌みたい」と言われることもしばしばなのだが、このバンドの音楽もまさにそれで、言うなれば戦隊ヒーロー物のテーマ曲に通じるカッコよさと親しみやすさがある。

そういう、このバンドが描くカッコよさを「表面的」とか「軽薄」と感じる向きもあるかもしれないが、アラフォーになっても少年の心を忘れられない私のような人間(苦笑)にとっては、このサウンドはなかなかに魅力的。

ちょっと軽薄に響くメロディック・パワー・メタルという意味で、結果としてDRAGONFORCEに近い雰囲気があり、実際、速い曲の多さや、あまりウエットにならないサウンド作りといい、彼らを意識している部分は確実にあると思われる(というかアルバムのジャケットがDRAGONFORCEの最新作”EXTREME POWER METAL”に瓜二つである/笑)。

本作でテーマになっている「ニンジャ」や「サムライ」も、欧米人ならではの誤解に満ちたものだが、今日びネットで忍者や侍というのが実際にはどのようなものであったかはちょっと探求心があれば簡単に知ることができるので、あえて虚構の「ニンジャ」や「サムライ」のカッコよさを確信犯的に楽しんでいると考えるべきだろう。

バンドのメンバー・ショットもコスチュームめいた衣装に身を包んでおり、そういう意味でもこのバンドはまさしくSABATON、POWERWOLF以降の、GLORYHAMMERやTWILIGHT FORCEなどと並ぶ「ヴィジュアルも含めてコンセプチュアルにバンドの世界観を構築する」新世代パワー・メタルの一員である。

「オタクというのは“探求心が強く知識が豊富な人”ではなく、単に“子供向けの趣味から卒業できない人”のことを指す」という言説に照らせば、彼らの音楽はまさしく「オタク・メタル」だし、実際「Cheezy=安っぽい、子供だまし」と評されることも多いようだが、個人的には嫌いじゃないです。てかむしろ好き(笑)【86点】






これだけニッポン推しでやってくれてるわけですから、日本のメタル・ファンとしては応援してあげたいですね。