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X.Y.Z.→A “WONDERFUL LIFE” アルバム・レビュー

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二井原実(Vo : LOUDNESS)、橘高文彦(G : 筋肉少女帯)、和佐田達彦(B : 元・爆風スランプ)、ファンキー末吉(Dr : 元・爆風スランプ)によるX.Y.Z.→A(海外ではASIAN TYPHOON名義で活動)の、デビュー20周年記念作となる7年ぶり8作目のオリジナル・アルバム。

このバンド、デビューした時から一応聴いてはいて、悪くないというか、客観的にはスター・プレイヤーが揃っていて、演奏力はバッチリ、楽曲の質もキャリア相応に高くて、文句なしにレベルの高いバンドだと思います。

それなのにイマイチ人気があるようには見えず、デビューから20年経つ今でも未だにバンド紹介する際にメンバーの名前と経歴を列挙して紹介しないといけない存在感に甘んじているというのが実際のところ。

個人的には橘高文彦氏の構築美とパッションを兼ね備えたギター・プレイが非常に好みで、それが目当てで聴いていたわけですが、このバンドのリスナーの多くはやはり「二井原実の歌が聴きたい」とか、「橘高文彦のギターが聴きたい」とか、そういうメンバー個人に付いているファンであって、バンド全体のファンではないような印象があります。

メンバーの過去のことを何も知らず(あるいは何の思い入れもなく)、たまたまこのバンドの音楽に出会ってファンになり、実はメンバーがそれぞれ過去に凄いキャリアを持っていたことを知った、みたいなファンって、皆無ではないにせよ、メチャクチャ少ないのではないでしょうか。

その理由としては、これまで発表してきたアルバムは、多少の波はあるにせよいずれも良作だったものの、新規ファンをガツンと得られるほどのキラー・チューンを生み出せなかったということなのだと思いますが、少なくとも橘高文彦ファンである私から見ると、結局このメンバーに音楽的にもバンド・イメージの面でもケミストリーが生まれていないということなのではないかと思います。

このバンドは基本的には二井原実を立てているバンドだと思っていて、ある意味、LOUDNESSが世界を目指さずに日本のマーケット中心で活動することにしていたらこういう方向性もありえたんじゃないかという、適度にモダンさやポップな要素もありつつ、全体の印象としてはいわゆる「ジャパメタ」にまとまっているのですが、そういう「ジャパメタ・ファン」みたいな人たちにとって「元・筋肉少女帯」とか「元・爆風スランプ」という、J-POPのフィールドでもある程度成功し、認知があるバンドのメンバーの存在はあまりプラスに働かなかったというか、むしろネガ要素ですらあったのではないかという気がします。

このバンドの前にやっていたSLYが上手くいかず、引退も考えていた二井原をシーンに引き留めるために橘高文彦が結成を持ちかけたというこのバンドに対してこんなことを言うのは野暮かもしれませんが、橘高文彦の描く世界に二井原実のヴォーカルは今一つマッチしていないんですよね。

というか、橘高文彦ファンという見地だけから言わせてもらえば、橘高文彦は自分のギターを引き立てるヴォーカリストと組んだことがない(苦笑)。

橘高文彦の曲やギターがマッチするのは、オペラティックにハイトーンで朗々と歌えるタイプのヴォーカリストだと思うのですが、大槻ケンヂにせよ二井原実にせよ、残念ながらそういうタイプではない(いや、二井原さんは結構なハイトーンですが、オペラティックではないですよね)。

脱線しますが、1994年にリリースされた橘高文彦のソロ・プロジェクト、FUMIHIKO KITSUTAKA'S EUPHORIAなんて、バンド名やアルバムのアートワークがモロに様式美風でメチャクチャ期待し、1曲目のイントロでガッツポーズを取りかけたのですが、Voが入ってきた瞬間に脱力した記憶があります…。なぜああいうV系崩れみたいな歌唱の人を起用したのか、今でも謎です。

一向に本作のレビューになっていないというか、もはや前フリ(?)だけで終わってしまいそうな文章なのですが(苦笑)、ようやく本作の内容に触れておくと、前述の通り、適度にモダンでポップな要素もある良質のジャパメタ作品です。

叙情的なイントロの1曲目から続く#2 “Give Us The Power”は、モダンなヘヴィさがフィーチャーされた曲ですが、疾走するサビはアニソンばりにキャッチーだし、続く#3 “Chapter Has Begun”は様式センスを感じさせる正統的なHMチューン。

一方で#5 “Here You Go!” なんて、LOUDNESSで言えば” Rock ‘N Roll Gypsy” などを思わせるような、80年代テイストバリバリのキャッチーな曲で、80年代通過組であればニヤリとしてしまうのではないでしょうか。

#4 “戦士たちのRequiem”、#7 “誰がために鐘は鳴る”、#10 “枯れない泉”など、二井原実のエモーショナルで濃厚な歌声がフィーチュアされたバラード・タイプの曲が3曲も収められている辺りに、このバンドが二井原の歌を聴かせるためのバンドであることを強くアピールしている。

橘高文彦ファンとしては#6 “至上の宝”なんかは彼の美学が強く打ち出されているし、疾走系様式ナンバー#8 “勇者を讃える鐘”なんかは「これを待っていた!」というカッコいい曲…なのだが残念ながらこういう曲ほど二井原実の歌が合っていないと思えてしまうのが残念(あくまで個人の見解です)。

一方で#9 “Hey! Hey! Hey!” みたいな曲はあまりHR/HMバンドがやらないタイプのポップな曲で、これは別にリズム・セクションが爆風スランプだから、というわけではなく、単にこのバンドの幅、ということなのでしょうか。

タイトル曲#11は上記、X.Y.Z.→Aの多様性を包含しつつ最大公約数的な魅力のあるメタル・チューンに仕上がっていて、歌詞も自分たちの音楽人生を振り返り、昇華するような内容になっている、ファンにとってはたまらなく感動的な曲。

そしてこの曲を聴くと、イントロだった1曲目につながるようにできていることに気づかされ、無限ループを余儀なくされる仕組みになっている(笑)。

正直、このアルバムでも新しいファンが獲得できるという気はあまりしないのですが、既存のファンであればきっと納得・満足がいくであろう充実したアルバムだと思います。

この文章を読むと、どちらかというと批判的な文章というか、もはや難癖に見える人もいるかと思いますが、このバンド以前から色々なものを背負ってきた一流のミュージシャンが20年取り組んできたバンドですから、相応の敬意と理解を持ってCDを何周かして(豪華盤付属のDVDはまだ1回しか観てませんが)この文章を書いたつもりです。

蛇足ですが、このアルバムのジャケット、まさか親父ギャグじゃないですよね…? 「わんダフルライフ」とか言う気じゃないですよね…?【85点】



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