DGM "TRAGIC SEPARATION"アルバム・レビュー

イタリアのプログレッシヴ・メタル・バンド、というよりは、もはやプロデューサーやエンジニアとして多くのバンド/プロジェクトを手掛けるシモーネ・ムラローニ(G)が在籍するバンド、と言った方がむしろ通りがいいかもしれないDGMの、通算10作目となるフル・アルバム。
バンド通算で10作目、そしてシモーネ・ムラローニが加入してから5作目という「節目」のアルバムだから、ということなのかどうか不明だが、これまで彼らが実践してきたスタイルの集大成的な印象さえ感じる充実したアルバムに仕上がっている。
アルバムのオープニングを飾る#1 “Flesh And Blood”は、一般に「プログレッシヴ・メタル・バンド」として認知されている彼らのパブリック・イメージを完璧に体現する楽曲で、このスタイルならではの緊張感と、彼らならではのメロディによる聴きやすさが絶妙のバランスで均衡する楽曲。
一方で続く#2 “Surrender”は彼らのレパートリーでも1、2を争うであろうキャッチーな曲で、もはやメロディアス・ハードと呼んでも過言ではなく、本作を貫く豊かなメロディを象徴している。
アウトロ的なインストの小曲 #10を除くとアルバムのラストとなる#9 “Turn Back Time”が、パワー・メタリックな疾走パートを持つ楽曲であることが、プログレッシヴ・メタル×パワー・メタルという、このバンドの持つ2つのエレメントが本作には非常に良いバランスで(均等という意味ではない)同居する本作の作風をわかりやすく象徴している。
プログレッシヴでテクニカルな要素も決して演奏者のオナニーにならず、楽曲に緊張感とフックを与える役割に徹しており、マーク・バジーレの情熱的なヴォーカルが歌い上げるメロディは常に叙情的で、「プログレッシヴ」という言葉にあまり良い印象を持っていないメロディ志向のリスナーにも取っつきやすいアルバムといえよう。
演奏、サウンド・プロダクション、楽曲、そして全体から醸し出されるスケール感と全く非の打ち所がないアルバムで、完成度だけで言うならもしかすると今年リリースされたHR/HM作品の中で随一と言っても過言ではないかもしれない。
もちろん音楽、特にロック/メタルは完璧であることが必ずしも魅力につながらないのだが、それでも本作のクオリティはもっと広く認知され、高く評価されて然るべきものであることは間違いない。【87点】
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