BABYMETAL "THE OTHER ONE" アルバム・レビュー

先月4月に新メンバーMOMOMETALこと岡崎百々子の加入が発表され、人気YouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」でのパフォーマンスも話題になったBABYMETALの、通算4作目となるフル・アルバム。
まず、個人的な感想を言っておくと、かなり気に入っています。予想していたよりもずっと。
本作で聴くことができる、SU-METALの10年以上の活動を経てなお変わらぬ穢れなき歌声によって歌われるメロディは、かつてないほどに私好みの哀愁とドラマティックなスケール感に満ちていて、これまでの作品にあった、私好みのメロディック・パワー・メタル・チューンが存在しないにもかかわらず、私の心の琴線に触れる瞬間の多さという点では過去最高だった。
ただ、一方で「これでいいのかな?」という気分になってしまったのもまた事実。
彼女らは単に「いい曲」を提供すればいい、という存在ではない。メタルにあまり興味がない人にも「こんなメタルがあるんだ」という気付きと驚きを与える存在であったからこそ、日本のメタル・アーティストとして最高レベルの国際的成功を収め、紅白歌合戦にも出演することができたはず。
それはやはり「メタル×アイドル」「Kawaii-METAL」というわかりやすいコンセプトの勝利で、そのコンセプトを面白がった人たちが求めているのはやはり「ギミチョコ!!」のような、むしろ私好みではない曲なのではないか。
まあ、「気付き」や「驚き」というのは長続きさせられないものだし、彼女らもデビューから10年を過ぎ、BABYと呼ぶのはいささか失礼な年齢にもなっているだけに、「カワイイ」路線を続けるのは「痛い」というのも事実なので、ファースト・インパクトとはまた異なる魅力を打ち出していく必要があるというのは理解できるのだが。
本作はコンセプト・アルバムで、メタルバースが云々というバックグラウンド・ストーリーが存在しているが、コンサート中に映像によって寸劇が挟まれているくらいであればともかく、メイトと呼ばれるような熱心なファン以外にはなかなかそこまで世界観に入れ込めないというのが現実だろう。
しかし一方で、その世界観があってこそ、この美しくエピカルな作品が生まれたというのもまた事実で、その辺は痛し痒しというか。
ただ、そもそも彼女らの真の魅力というのは、メタルに興味のない大衆が面白がる所とは別な次元に存在していたのはこれまでもそうだったので、彼女らが今後その孤高性を維持して活動していく上では、こういう一見さんにはやや敷居の高い音世界を追求していくというのもまたひとつの戦略なのかもしれません。
なお、本作で展開されている音楽というのは私が考える「狭義のメタル」からは逸脱する部分が多く、個人的にはむしろ梶浦由記さんの書く音楽などに通じる魅力を見出していますが、全ての垣根が消えつつある現代においては「これもメタル」として受け容れるべきなのだろうと思っています。
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