HELLOWEEN 来日公演 at 日本武道館 2023.9.16
HELLOWEENのUNITED FORCES TOUR 日本武道館公演を観てきました。
「ついにHELLOWEENが日本武道館の舞台に立つ!」というのが今回の来日公演の最大の「売り」だったわけですが、個人的にはそこまで「日本武道館」にありがたみは感じていなかったんですよ、正直。
別にもっと大きな会場は国内にいくつもあるし、国内アーティストに限って言えば(誰とは言いませんが)「え、この程度のアーティストが武道館でやれるの?」みたいな例もいくつも見てきているので。
しかし、かつてTHE BEATLESもそのステージに立ち、CHEAP TRICKが"CHEAP TRICK AT BUDOKAN"という名作ライブ・アルバム(中身は大半が大阪公演のものだったようですが)で国際的に有名にしたこの会場が、こと海外のアーティストにとってシンボリックな意味合いを持つことは事実。
私がHELLOWEENのライブを最初に観たのは"THE TIME OF THE OATH"(1996)に伴うツアーの東京公演、今は亡き東京ベイNKホール(キャパ6,000人強)での公演で、その後それを超える規模の会場でのライブは行われていません。
20万枚以上を売り上げてバンド史上(日本では)最も売れたアルバム(正確な記録はないものの、ロングセラーで相当な枚数を積み上げているという"THE KEEPER OF THE SEVEN KEYS"2作を除く)のツアーより大きな会場でプレイできるというのは、本人たちにとっても感慨深いものがあることでしょう。
物販は開始14時に並んだ時点で3時間待ちという惨状だったようなので、31℃超え、しかも湿度の高い不快な暑さだったこの日のコンディションだと、その後のライブを楽しむ上で差し障りが出かねないと思っていたので最初から諦め、「どうせ後日ネット販売があるだろ」と見越して華麗にスルー、開演30分ほど前に現地に到着。

席は南東ブロックの2階席というお世辞にも良いとは言えない席。私が過去に観た武道館のライブはMR.BIG、JUDAS PRIEST、DEF LEPPARD & WHITESNAKEのものですが、どれも2階席か1階席で横から見るアングルになる席で、どうも武道館とは相性が良くないようです(苦笑)。
て言うか、アリーナ席と1階席と2階席、さらに正面とそうでない席、全部分けて売ってほしいんですけどね。今回もしかするとアリーナは全て料金倍のプレミアムシート扱いだったのかもしれませんが、それでも1階席と2階席が同じ料金というのは心情的になんとなく釈然としないものがあります。
まあ、今回WOWOWでのライブ中継があり、LOUD PARKの放送があった時期以来久方ぶりにWOWOWを契約し、予約録画してあるので「見やすいアングル」はそちらで保証されています。そういう意味で、ファンとしては「現場にいて見届ける」ことに意味があり、もはやステージがちゃんと見えるかどうかはどうでもいい話(?)だと割り切ることにしました。
私はシャイなので、移動中はシャツを上から羽織っていましたが、席に着くとシャツを脱ぎ、2年前に上野のマルイで行われたHELLOWEENポップアップショップで購入し、今日まで未開封だった「Seven Keys Tour ‘87」の復刻ツアーTシャツを開陳する(誰に?)。
定刻である18時近くになり、BGMでGUNS N' ROSESの"Welcome To The Jungle"が流れ始めるとなんとなく場内が盛り上がり始めて手拍子が起こり、18時を少し過ぎた所で場内が暗転、記念すべきコンサートが幕を開ける。
オープニング曲は最新作"HELLOWEEN"からの"Skyfall"。オールド・ファンとしては"Halloween"で始まった前回のツアーほどの「うおおおお!!」感はないものの、このライブはあくまでアルバム"HELLOWEEN"のツアーであることを考えれば順当な選曲。
そしてもちろん、"Skyfall"は、10分以上の尺を飽きさせずに聴かせる彼らならではの巧みな構成力を見せつける素晴らしい楽曲で、自然と「う~ん、さすがだな」という気持ちにさせられる。
間奏部で、アンディ・デリス(Vo)とマイケル・キスク(Vo)の両フロントマンが会場内の全ての方角、全ての階層に向けて挨拶ともとれるジェスチャーを送り、オーディエンス全員を意識していることをアピールする。場内の一体感を作る上でこういうの大事ですね。
そして2曲目にして早くもバンド史上屈指の人気曲にして「明るいスピード・メタル」のお手本とも言うべき名曲"Eagle Fly Free"が炸裂し、オーディエンスがさらに湧き上がる。
正直、アンディには引き出せなかったこの楽曲の「飛翔感」がマイケルの伸びやかなハイ・トーンによって見事に引き出されている。感無量。
演奏終了後、マーカス・グロスコフ(B)がベースを弾く中、カイ・ハンセン(G, Vo)とアンディが交互にMCを取り、初めて日本武道館のステージに立ててとても光栄だ、ということを述べ、再び新作からの"Mass Polution"へ。
ロックン・ロール・フィーリングがあり、「Go, Go, Go, Go」という合いの手や曲名を叫べばいいわかりやすいサビ、そして「Make Some Noise」という煽りが含まれるこの曲は確かにライブ向きで、このツアーで演奏しない手はないだろう。
そして"Future World"に"Power"という、それぞれマイケル・キスク時代、アンディ・デリス時代を代表するポップ・ナンバーが立て続けにプレイされ、場内のボルテージは盛り上がりっぱなし。
続けてプレイされたのはちょっと意外な"Save Us"。"THE KEEPER OF THE SEVEN KEYS PT.2"にボーナス・トラック扱いで収録されていたこの曲は、なぜボーナス・トラック扱いだったのかよくわからないカッコいいスピード・ナンバーで、サビのコーラスもシンプルで合唱しやすいため、当然盛り上がる。
そこから展開されたのは「カイ・ハンセン・タイム」で、ギターを持たず、専任ヴォーカリスト然として登場したカイ・ハンセンが歌う初期曲メドレー。それまでの赤いジャケットから、黒いノースリーブのベストに着替えたカイは近年年齢を重ねるごとに「ロックスター」っぽいビジュアルを志向している印象。
"Metal Invaders"~"Victim Of Fate"~"Gorgar"~"Ride The Sky"とプレイされ、当然人気曲"Ride The Sky"ではひと際大きな盛り上がりを見せる。ちなみに"Gorgar"からはギターを持ちました。
さらにダメ押しで"Heavy Metal (Is The Law)"がプレイされ、「これはきっとかつて日本武道館でプレイされた中で最もB級なメタルだろうな…」と思うとなんだか微笑ましくなりました。
いや、本当に彼らのようなワールドワイドなポップ・ミュージック基準ではB級としか言いようがない存在がこうして日本を代表するコンサート・ホールでプレイして、当日券込みとはいえソールドアウトさせているという事実は、彼らの音楽がいかに日本人にとって特別なものであるかということを証明していると思います。
そしてこの「B級メタルタイム」を中和するかのように始まったのがアンディ・デリスとマイケル・キスクが椅子に座って、アコースティック・セット風にプレイされた名バラード、"Forever One"。
個人的にはこれはアンディのリサイタルでもよかったように思いますが、今回(も)アンディとマイケル(とカイ)のフィーチャー度バランスにはかなり気を使っている印象だったので、こういう形になったのでしょうね。
アンディからオーディエンスに、スマホのライトを点けることがリクエストされ、場内が一斉に煌めきだす。ただ、この曲はバラードにしてはテンポが速いので、律儀にドラムに合わせてスマホを揺らそうとすると結構腕が疲れます(苦笑)。

THE ALFEEの高見沢か往年のプリンスかという変形ギターと群を抜く長身が印象的なサシャ・ゲルストナーによるギター・ソロ・タイムを挟んで、新作から"Best Time"がプレイされる。アルバムで聴いた時と同様、"I Want Out"の元ネタになったと言われるGARY MOOREの某曲に似てるな…とあらためて思いました(笑)。
続けて彼らのドイツにおける最大のヒット・シングルである"Dr. Stein"がプレイされた後、カイ・ハンセンが「残念なおしらせだが、次の曲が今夜の最後の曲だ。…公式にはね」と告げてプレイされたのは、前回の「PUMPKINS UNITED TOUR」同様、"How Many Tears"。
これまでも何かが込み上げてきて胸がいっぱいになる感覚は何度もあったのですが、この曲が始まり、あの叙情的な間奏パートに入ると、いよいよ堰を切ったように涙と鼻水が止まらなくなり、何度も鼻をかむことになりました。しかもその間奏パートの途中でカイ・ハンセンが(GAMMA RAY)の"Heading For Tomorrow"のテーマ・メロディをブッ込んでくるもんだからもう…。
一度袖にはけた後、ほどなくしてちょっと寂しげな、聞き覚えのあるメロディが流れてくる。そう、"Perfect Gentleman"だ。これまた「アンディのいるHELLOWEEN」だからこそ作り得た、隠れた(?)名曲ですね。
中間部での"Perfect!"掛け合いは、変拍子なのでタイミングを外さないよう注意して頑張りました(笑)。
"MASTER OF THE RINGS"からの選曲であれば、いつかこのラインナップでの"Where The Rain Grows"が聴きたいですね。昨年は何公演かプレイしていたようなのですが。
そしていよいよプレイされたのは、バンド史上、いや、メタルの歴史上最高の大作曲と言っても過言ではないであろう超名曲、"Keeper Of The Seven Keys"。
いや、前回のツアーでも聴いてるんですよ? 聴いてるんですけど、やはりこのめくるめくドラマが眼前で展開されていく様には胸が熱くなるのを抑えられません。私の意志と関係なく鼻腔に湧き出してくる涙とも鼻水ともつかぬものによって、ポケットティッシュをまるまるひとつ消費してしまいました。
曲のエンディングでメンバー紹介が行われたのですが、紹介されたメンバーからひとりひとり袖にはけていき、最後に取り残されるサシャがなんとなく気の毒な感じでした(?)。
もうこれで終わっても文句はない、という気分でしたが、再度ドラム・キットにダニー・ルブレが登場、ドラム・ソロを展開する。
先ほどのサシャのギター・ソロといい、どうしても昔からいるメンバーにフォーカスされてしまいがちな今回のツアーで、新しいメンバー(と言っても、二人とももう20年近く在籍しているのですが)にもちゃんとスポットライトが当たるように、という配慮ですね。
カイとマイケルが復帰するからといってアンディとサシャを追放しなかったHELLOWEENならではの心配り、この辺も日本人の感覚的には非常に好ましいものに映ります。
ダニーはドラム・ソロ中に何度か「吠えた」のですが、生声がちゃんと2階席に届くのですから大した声量です。
そしてそのソロ中に場内に運び込まれたオレンジ色の「パンプキン・バルーン」が解き放たれて始まったのは、もはや彼らのショウの締めの定番というべき名曲"I Want Out"。
場内を跳ね回るバルーンと、メンバーとの掛け合いが場内の多幸感と一体感を一層盛り上げ、クライマックスを演出する。大団円です。

いや、予想以上に感動しましたね。なんだかんだ、カイとマイケルのいるHELLOWEENも二度目だし、冒頭触れた通り個人的にはさほど武道館という場所に特別な思い入れもなかったのですが、終わってみれば感無量でした。
右隣の人はメッチャ大声で歌いまくり、左隣の人は持ち込み禁止のプロ仕様カメラで写真を撮りまくり、前の席の人はしょっちゅうスマホで中国語(台湾語?)のFacebookやLINE、Wikipediaを開いてるという、私の周囲に限って言えば問題のあるオーディエンスばかりでしたが(苦笑)、場内のオーディエンス全体で見れば本当に素晴らしかったと思います。
だいたいこのクラスの会場になると、「出演アーティストには興味ないけど、連れに誘われてきちゃいました」とか「有名な曲しか知らないけど、ノリで来ちゃいました」みたいなオーディエンスが混入して微妙に客席のボルテージを下げてしまうものなのですが、今日に関しては相当HELLOWEENが好きな人しか集まっていなかったのではないでしょうか。
それは15,000円以下の席がないという強気な価格設定が逆に功を奏したのかもしれません(笑)。ご祝儀/お布施感覚を持てるほどのファンしか参加できないというか。それでソールドアウトしているのですから素晴らしいですね。
オーディエンスのHELLOWEEN Tシャツ着用率の高さも相当なものでしたしね。非常にロイヤリティの高い親密で熱心な空間でした。
今、録画していたWOWOWの中継を見ながらこの文章を綴っているのですが、抜かれるオーディエンスを見ると女性が多いものの、2階席にいた人間の体感としては女性は1割程度、どう多く見積もっても2割弱でした。アリーナは女性が多かったのか、WOWOWのカメラが意図的に女性を抜いていたのか、さてどちらでしょう?(笑)。
(いや、例え1割程度だとしても、近年のクラシック・メタルのコンサートとしてはだいぶ多いですけどね。とはいえ90年代のHELLOWEENのライブは3割以上女性だった印象ですが)
とにかく最高の夜をありがとう。カイ・ハンセンの関与が増えているというニュー・アルバムを楽しみに待っています。
「ついにHELLOWEENが日本武道館の舞台に立つ!」というのが今回の来日公演の最大の「売り」だったわけですが、個人的にはそこまで「日本武道館」にありがたみは感じていなかったんですよ、正直。
別にもっと大きな会場は国内にいくつもあるし、国内アーティストに限って言えば(誰とは言いませんが)「え、この程度のアーティストが武道館でやれるの?」みたいな例もいくつも見てきているので。
しかし、かつてTHE BEATLESもそのステージに立ち、CHEAP TRICKが"CHEAP TRICK AT BUDOKAN"という名作ライブ・アルバム(中身は大半が大阪公演のものだったようですが)で国際的に有名にしたこの会場が、こと海外のアーティストにとってシンボリックな意味合いを持つことは事実。
私がHELLOWEENのライブを最初に観たのは"THE TIME OF THE OATH"(1996)に伴うツアーの東京公演、今は亡き東京ベイNKホール(キャパ6,000人強)での公演で、その後それを超える規模の会場でのライブは行われていません。
20万枚以上を売り上げてバンド史上(日本では)最も売れたアルバム(正確な記録はないものの、ロングセラーで相当な枚数を積み上げているという"THE KEEPER OF THE SEVEN KEYS"2作を除く)のツアーより大きな会場でプレイできるというのは、本人たちにとっても感慨深いものがあることでしょう。
物販は開始14時に並んだ時点で3時間待ちという惨状だったようなので、31℃超え、しかも湿度の高い不快な暑さだったこの日のコンディションだと、その後のライブを楽しむ上で差し障りが出かねないと思っていたので最初から諦め、「どうせ後日ネット販売があるだろ」と見越して華麗にスルー、開演30分ほど前に現地に到着。

席は南東ブロックの2階席というお世辞にも良いとは言えない席。私が過去に観た武道館のライブはMR.BIG、JUDAS PRIEST、DEF LEPPARD & WHITESNAKEのものですが、どれも2階席か1階席で横から見るアングルになる席で、どうも武道館とは相性が良くないようです(苦笑)。
て言うか、アリーナ席と1階席と2階席、さらに正面とそうでない席、全部分けて売ってほしいんですけどね。今回もしかするとアリーナは全て料金倍のプレミアムシート扱いだったのかもしれませんが、それでも1階席と2階席が同じ料金というのは心情的になんとなく釈然としないものがあります。
まあ、今回WOWOWでのライブ中継があり、LOUD PARKの放送があった時期以来久方ぶりにWOWOWを契約し、予約録画してあるので「見やすいアングル」はそちらで保証されています。そういう意味で、ファンとしては「現場にいて見届ける」ことに意味があり、もはやステージがちゃんと見えるかどうかはどうでもいい話(?)だと割り切ることにしました。
私はシャイなので、移動中はシャツを上から羽織っていましたが、席に着くとシャツを脱ぎ、2年前に上野のマルイで行われたHELLOWEENポップアップショップで購入し、今日まで未開封だった「Seven Keys Tour ‘87」の復刻ツアーTシャツを開陳する(誰に?)。
定刻である18時近くになり、BGMでGUNS N' ROSESの"Welcome To The Jungle"が流れ始めるとなんとなく場内が盛り上がり始めて手拍子が起こり、18時を少し過ぎた所で場内が暗転、記念すべきコンサートが幕を開ける。
オープニング曲は最新作"HELLOWEEN"からの"Skyfall"。オールド・ファンとしては"Halloween"で始まった前回のツアーほどの「うおおおお!!」感はないものの、このライブはあくまでアルバム"HELLOWEEN"のツアーであることを考えれば順当な選曲。
そしてもちろん、"Skyfall"は、10分以上の尺を飽きさせずに聴かせる彼らならではの巧みな構成力を見せつける素晴らしい楽曲で、自然と「う~ん、さすがだな」という気持ちにさせられる。
間奏部で、アンディ・デリス(Vo)とマイケル・キスク(Vo)の両フロントマンが会場内の全ての方角、全ての階層に向けて挨拶ともとれるジェスチャーを送り、オーディエンス全員を意識していることをアピールする。場内の一体感を作る上でこういうの大事ですね。
そして2曲目にして早くもバンド史上屈指の人気曲にして「明るいスピード・メタル」のお手本とも言うべき名曲"Eagle Fly Free"が炸裂し、オーディエンスがさらに湧き上がる。
正直、アンディには引き出せなかったこの楽曲の「飛翔感」がマイケルの伸びやかなハイ・トーンによって見事に引き出されている。感無量。
演奏終了後、マーカス・グロスコフ(B)がベースを弾く中、カイ・ハンセン(G, Vo)とアンディが交互にMCを取り、初めて日本武道館のステージに立ててとても光栄だ、ということを述べ、再び新作からの"Mass Polution"へ。
ロックン・ロール・フィーリングがあり、「Go, Go, Go, Go」という合いの手や曲名を叫べばいいわかりやすいサビ、そして「Make Some Noise」という煽りが含まれるこの曲は確かにライブ向きで、このツアーで演奏しない手はないだろう。
そして"Future World"に"Power"という、それぞれマイケル・キスク時代、アンディ・デリス時代を代表するポップ・ナンバーが立て続けにプレイされ、場内のボルテージは盛り上がりっぱなし。
続けてプレイされたのはちょっと意外な"Save Us"。"THE KEEPER OF THE SEVEN KEYS PT.2"にボーナス・トラック扱いで収録されていたこの曲は、なぜボーナス・トラック扱いだったのかよくわからないカッコいいスピード・ナンバーで、サビのコーラスもシンプルで合唱しやすいため、当然盛り上がる。
そこから展開されたのは「カイ・ハンセン・タイム」で、ギターを持たず、専任ヴォーカリスト然として登場したカイ・ハンセンが歌う初期曲メドレー。それまでの赤いジャケットから、黒いノースリーブのベストに着替えたカイは近年年齢を重ねるごとに「ロックスター」っぽいビジュアルを志向している印象。
"Metal Invaders"~"Victim Of Fate"~"Gorgar"~"Ride The Sky"とプレイされ、当然人気曲"Ride The Sky"ではひと際大きな盛り上がりを見せる。ちなみに"Gorgar"からはギターを持ちました。
さらにダメ押しで"Heavy Metal (Is The Law)"がプレイされ、「これはきっとかつて日本武道館でプレイされた中で最もB級なメタルだろうな…」と思うとなんだか微笑ましくなりました。
いや、本当に彼らのようなワールドワイドなポップ・ミュージック基準ではB級としか言いようがない存在がこうして日本を代表するコンサート・ホールでプレイして、当日券込みとはいえソールドアウトさせているという事実は、彼らの音楽がいかに日本人にとって特別なものであるかということを証明していると思います。
そしてこの「B級メタルタイム」を中和するかのように始まったのがアンディ・デリスとマイケル・キスクが椅子に座って、アコースティック・セット風にプレイされた名バラード、"Forever One"。
個人的にはこれはアンディのリサイタルでもよかったように思いますが、今回(も)アンディとマイケル(とカイ)のフィーチャー度バランスにはかなり気を使っている印象だったので、こういう形になったのでしょうね。
アンディからオーディエンスに、スマホのライトを点けることがリクエストされ、場内が一斉に煌めきだす。ただ、この曲はバラードにしてはテンポが速いので、律儀にドラムに合わせてスマホを揺らそうとすると結構腕が疲れます(苦笑)。

THE ALFEEの高見沢か往年のプリンスかという変形ギターと群を抜く長身が印象的なサシャ・ゲルストナーによるギター・ソロ・タイムを挟んで、新作から"Best Time"がプレイされる。アルバムで聴いた時と同様、"I Want Out"の元ネタになったと言われるGARY MOOREの某曲に似てるな…とあらためて思いました(笑)。
続けて彼らのドイツにおける最大のヒット・シングルである"Dr. Stein"がプレイされた後、カイ・ハンセンが「残念なおしらせだが、次の曲が今夜の最後の曲だ。…公式にはね」と告げてプレイされたのは、前回の「PUMPKINS UNITED TOUR」同様、"How Many Tears"。
これまでも何かが込み上げてきて胸がいっぱいになる感覚は何度もあったのですが、この曲が始まり、あの叙情的な間奏パートに入ると、いよいよ堰を切ったように涙と鼻水が止まらなくなり、何度も鼻をかむことになりました。しかもその間奏パートの途中でカイ・ハンセンが(GAMMA RAY)の"Heading For Tomorrow"のテーマ・メロディをブッ込んでくるもんだからもう…。
一度袖にはけた後、ほどなくしてちょっと寂しげな、聞き覚えのあるメロディが流れてくる。そう、"Perfect Gentleman"だ。これまた「アンディのいるHELLOWEEN」だからこそ作り得た、隠れた(?)名曲ですね。
中間部での"Perfect!"掛け合いは、変拍子なのでタイミングを外さないよう注意して頑張りました(笑)。
"MASTER OF THE RINGS"からの選曲であれば、いつかこのラインナップでの"Where The Rain Grows"が聴きたいですね。昨年は何公演かプレイしていたようなのですが。
そしていよいよプレイされたのは、バンド史上、いや、メタルの歴史上最高の大作曲と言っても過言ではないであろう超名曲、"Keeper Of The Seven Keys"。
いや、前回のツアーでも聴いてるんですよ? 聴いてるんですけど、やはりこのめくるめくドラマが眼前で展開されていく様には胸が熱くなるのを抑えられません。私の意志と関係なく鼻腔に湧き出してくる涙とも鼻水ともつかぬものによって、ポケットティッシュをまるまるひとつ消費してしまいました。
曲のエンディングでメンバー紹介が行われたのですが、紹介されたメンバーからひとりひとり袖にはけていき、最後に取り残されるサシャがなんとなく気の毒な感じでした(?)。
もうこれで終わっても文句はない、という気分でしたが、再度ドラム・キットにダニー・ルブレが登場、ドラム・ソロを展開する。
先ほどのサシャのギター・ソロといい、どうしても昔からいるメンバーにフォーカスされてしまいがちな今回のツアーで、新しいメンバー(と言っても、二人とももう20年近く在籍しているのですが)にもちゃんとスポットライトが当たるように、という配慮ですね。
カイとマイケルが復帰するからといってアンディとサシャを追放しなかったHELLOWEENならではの心配り、この辺も日本人の感覚的には非常に好ましいものに映ります。
ダニーはドラム・ソロ中に何度か「吠えた」のですが、生声がちゃんと2階席に届くのですから大した声量です。
そしてそのソロ中に場内に運び込まれたオレンジ色の「パンプキン・バルーン」が解き放たれて始まったのは、もはや彼らのショウの締めの定番というべき名曲"I Want Out"。
場内を跳ね回るバルーンと、メンバーとの掛け合いが場内の多幸感と一体感を一層盛り上げ、クライマックスを演出する。大団円です。

いや、予想以上に感動しましたね。なんだかんだ、カイとマイケルのいるHELLOWEENも二度目だし、冒頭触れた通り個人的にはさほど武道館という場所に特別な思い入れもなかったのですが、終わってみれば感無量でした。
右隣の人はメッチャ大声で歌いまくり、左隣の人は持ち込み禁止のプロ仕様カメラで写真を撮りまくり、前の席の人はしょっちゅうスマホで中国語(台湾語?)のFacebookやLINE、Wikipediaを開いてるという、私の周囲に限って言えば問題のあるオーディエンスばかりでしたが(苦笑)、場内のオーディエンス全体で見れば本当に素晴らしかったと思います。
だいたいこのクラスの会場になると、「出演アーティストには興味ないけど、連れに誘われてきちゃいました」とか「有名な曲しか知らないけど、ノリで来ちゃいました」みたいなオーディエンスが混入して微妙に客席のボルテージを下げてしまうものなのですが、今日に関しては相当HELLOWEENが好きな人しか集まっていなかったのではないでしょうか。
それは15,000円以下の席がないという強気な価格設定が逆に功を奏したのかもしれません(笑)。ご祝儀/お布施感覚を持てるほどのファンしか参加できないというか。それでソールドアウトしているのですから素晴らしいですね。
オーディエンスのHELLOWEEN Tシャツ着用率の高さも相当なものでしたしね。非常にロイヤリティの高い親密で熱心な空間でした。
今、録画していたWOWOWの中継を見ながらこの文章を綴っているのですが、抜かれるオーディエンスを見ると女性が多いものの、2階席にいた人間の体感としては女性は1割程度、どう多く見積もっても2割弱でした。アリーナは女性が多かったのか、WOWOWのカメラが意図的に女性を抜いていたのか、さてどちらでしょう?(笑)。
(いや、例え1割程度だとしても、近年のクラシック・メタルのコンサートとしてはだいぶ多いですけどね。とはいえ90年代のHELLOWEENのライブは3割以上女性だった印象ですが)
とにかく最高の夜をありがとう。カイ・ハンセンの関与が増えているというニュー・アルバムを楽しみに待っています。
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