LIV MOON / DOUBLE MOON

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元タカラジェンヌによるシンフォニック・メタルとして話題になっているプロジェクト、LIV MOONのファースト・アルバム。

シンフォニック・メタルというと欧州では確固たる支持を獲得しており、一部の人気バンドについてはそれこそポップ・ミュージックのカテゴリー全体でもトップ・クラスの支持を得ているジャンルだが、日本ではほぼ無名に近かった。

それだけに私のようなこのジャンルの創成期からのファンにとっては「ついに日本でもメジャー・レーベルからシンフォニック・メタルが…」という感慨とともに大きな期待を寄せていた作品である。

しかし、正直に告白すると本作は完全に満足できる仕上がりとは言い難い。

このプロジェクト発足の「きっかけ」であったというNIGHTWISHに似ていない、という点については、インタビューによると意図的にそうしたようだし、似ていたら似ていたで「劣化コピー」呼ばわりされるのは目に見えているのでまあいいとしよう。

ただ、「70~80年代のHR/HMに影響を受けた音楽だけがメタルを名乗れる」という私の考えにおいては、本作のサウンドはへヴィであってもメタルではなく、全くカタルシスを感じないのである。

まあ、この感覚は主観的なものなので、わかる方にはわかっていただけるだろうし、わからない方には「何言ってんだコイツ」という感じだろうが、いずれにせよ、このプロジェクトの音楽面での中心人物である西脇辰弥氏、そしてギタリストである黒田晃年氏の両名は察するにメタル好きではない、ということがあまりにもあからさまに伝わってきてしまうことが残念を通り越して腹立たしくさえある。

ついでに言うと、肝心のシンフォ・アレンジも淡白で物足りない。どうせやるならマーラーばりにド派手にブチかましていただきたい。

とはいえ、その辺のメタル者としてのもどかしさを一旦脇に置いて、虚心に音楽に向き合えば、それなりのインパクトとクオリティはある、とフォローしておきます。

楽曲もそれぞれちゃんと個性があって、凡庸なシンフォニック・メタルにありがちな「どの曲も同じに聴こえる」という事態は回避できている。

クラシカルな歌唱が悲愴感を感じさせる#7「オトナキサケビ」、J-POPというかアニソンのようなキャッチーさのある#8「鮮やかに…」、劇的でスケール感のあるサビが印象的な#11「Escape」はなかなかいい。

ただ、上記の3曲もそうだが、その他の曲についても「いい感じ」だと思えるのはへヴィさを押し出していないパートばかりで、へヴィさを強調するパートほど退屈になってしまっているのがプロジェクトのコンセプトを揺るがす事実だと思う。

アルバム1曲目という重要な位置に本作で一番へヴィな#1「HISUI~Nephrite」を持ってきたのはシンフォニック・「メタル」であることのアピールと思われるが、結果としてこの曲が一番つまらない曲になっているのが痛い。

最大の救いはアカネ・リヴ嬢(と言っても私とほぼ同世代だから結構いい歳だが)の歌唱がかなりハイレベルで、その点は期待通りであるという点。

ただ、#1や#2のサビなどで聴けるようなエキセントリックな高音は魅力薄なのでやめたほうがいいのでは。こういうシアトリカルな歌い回しは宝塚歌劇団出身というキャリアならではのものなのかもしれませんが…。

いずれにせよ、私のような欧州のシンフォニック・メタル・ファンをターゲットにするなら(そうでないならシンフォニック・メタルを標榜する意味がないと思いますが)、KeyとGのチェンジが必須でしょう。

「宝塚×シンフォニック・メタル」という企画コンセプト自体は秀逸で、歌い手の力量も充分なだけに、なんとか次作ではメタル・ファンを満足させてくれる音楽を期待したいところです。

なお、余談ですが、アカネ・リヴこと岡本茜嬢のブログで、本作の完成に際して、彼女の幼馴染(!)であるという元HAMMERFALL、現REVOLUTION RENAISSANSEのベーシスト、マグナス・ローゼンから送られてきたメッセージが公開されており、意外な「メタルとの縁」を感じさせてくれています。

◆ビクターの本作紹介ページ
http://www.jvcmusic.co.jp/-/Discography/A022867/VICL-63512.html


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