DREAM THEATER / THE ASTONISHING

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DREAM THEATERの新作が、SFっぽいストーリーを持った2枚組のコンセプト・アルバムになると聞いたとき、私の中では不安(というか懸念)と期待が入り混じっていた。

懸念事項は、単純に長さである。情報量が多く濃密な彼らの音楽をアルバム2枚分に渡って聴く、というのはなかなか気軽にはできないことである。「聴き疲れ」してしまうことが容易に想像できた。

期待というのは、マイク・マンジーニ(Dr)加入後に発表された「THE DRAMATIC TURN OF EVENTS」および「DREAM THEATER」は、どちらも充分に良作であったものの、やや保守的な印象の作風だったのに対し、今回はセールス的には下降が見込まれる2枚組にあえてチャレンジしているという点に「攻め」の姿勢を感じたからだ。

しかし、リリース前に公開されたトレーラー・ムービーを観て、その中途半端な仕上がりに若干の不安を感じてしまった。

DREAM THEATERの凄みというのは、何と言ってもその圧倒的なクオリティであって、個人的な好き嫌いの話はともかく、客観的なクオリティの点において中途半端なものは出さないだろうと思っていたのに、この映像のクオリティはいささか微妙と言わざるを得ない…。

まあ、彼らは映像アーティストじゃないし、と気を取り直して、Amazonから届いたCDを開封し、ブックレットを見てみると、そこに描かれていた「大北アメリカ帝国」と「レイヴンスキル反乱軍」という、時節柄『ス●ーウォーズ』を想起せざるを得ない陳腐極まりない設定を見てさらに萎えてしまった。

いやいや、元々歌詞とか気にしないタイプだし、そもそも英語で歌われたらストーリーなんてダイレクトに頭に入ってこないわけで、音楽さえ良ければ! と思って再生ボタンを押す。

正直に言うと、途中、ちょっと寝た。

いや、もちろん良く出来てるんですよ? 彼ら以外のプログレッシヴ・メタル・バンドがこれをリリースしたとしたら、「こりゃ力作を出したね!」と高く評価されると思います。1曲1曲をつまんで聴けば、どの曲もさすがによく練られている。

ただちょっと彼らにしてはイージーリスニングに過ぎるというか…。まあ、前作・前々作と、どちらも傾向としてはそういう傾向のアルバムだったので、マイク・ポートノイが抜けたDREAM THEATERというのはこういう整合感とメロディを重視する志向性を持っているということなのかもしれません。

そして、このサイト/ブログを定期的にご覧になっているような方であればお察しの通り、私はプログレッシヴなメタルよりメロディックでストレートなメタルを好むリスナーである。DREAM THEATERで言うなら、「TRAIN OF THOUGHT」より「OCTAVARIUM」の方が好きだし、「SIX DEGREES OF INNER TURBULENCE」ならDISC2の方が好きである。そう考えると、本作の方向性は私の嗜好にマッチするはずである。

ただなあ、やっぱり彼らには単純なメロディの良さ、楽曲の良さ以上のものを求めたくなるわけですよ。だって彼らにはそれができることがわかっているんだから。

例えとして適切かどうかわかりませんが、フィギュアスケートで4回転跳べることがわかっている選手なのに、なぜか3回転のみで無難にまとめた演技を見せられた気分というか。

この「おとなしい」アプローチは「曲の良さを生かすことに徹した」結果なのかもしれないが、その割には楽曲も彼らの往年の名曲と比べてしまうと淡白なような。

本当はコンセプト・アルバムということで劇的に盛り上がるはずなのだが、全体的に意外とあっさりしているのも物足りなさにつながっている。楽曲もさることながら、これはジェイムズ・ラブリエというシンガーが、歌唱力こそ抜群ながら、それほどエモーショナルかつシアトリカルな歌唱を得意とするタイプではない、ということも影響しているかもしれない。

本作をPINK FLOYDの「THE WALL」やRUSHの「2112」になぞらえる声もあるが、前者ほどに深みというか味わいというか、「雰囲気」を感じることもないし(これはちょっと世評に影響されている部分もあるかもしれない)、後者ほどの緊張感やテンションもないというのが率直な感想で(ただし構築力という一点に関してはDTの方が勝っている)、これは賛否両論というか、ネット上での評判を見る限りちょっと「否」が多いのもやむを得ないかなあ、という気がする。

まあ、これはこれで1枚ものだったら好きになれた気もするんだけど、ちょっとアルバム2枚分はキツいかな…。次作はもうちょっとやんちゃに演奏家としてのエゴを出しちゃってもいいかもしれません。

あと、どうでもいいですが、本作のテーマはディストピア、MEGADETHの最新作タイトルも「DYSTOPIA」 、そしてこれまた同時期にリリースされた浜田麻里の新作にも「Dystopia」という楽曲が収録と、今年のHR/HMは空前のディストピア・ブームですね(笑)。【82点】

◆本作収録「The Gift Of Music」のMV


◆本作収録「Moment Of Betrayal」のOfficial Audio

この曲が一番「らしい」魅力があるかなぁ。



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コメント

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「THE ASTONISHING」感想

自分は「IMAGES & WORDS」と「SIX DEGREES OF INNER TURBULENCE」が好きなメロディ派なので(笑)好みの作風のはずですが、1回通しで聴いただけで中々2回目を再生する気になれません。

感想はadoreさんと同意見なので、改めて述べる必要も無いのですが、あえて例えるならイエス/テイルズ・フロム・トポグラフィック・オーシャンズ 邦題 『海洋地形学の物語』かなぁ。

主要メンバー2人が好き勝手やった挙げ句、ただ長いだけで1枚で納まらず2枚組になってしまった冗長な作品という意味です。

やはり

adoreさんはじめまして。
自分もDTは初期からずーっと聞いてて、
前作辺りから不安にはなっていたんですが。
今回の作品を聞いて(見て)、
ポートノイ不在が露骨に表れたのでは?
正直アートワークも「アレ?これSYMPHONY Xの近作」って感じだし。

>ゆうていさん

さすがに海洋地形学よりは聴きやすいと思いますが、なかなか進んで繰り返し聴きたい気持ちにならないという点では同じかもしれませんね(笑)。

せめて1枚にまとめればよかったのに、無駄に長くなってしまったのはストーリーにこだわりすぎたのでしょうか。

>紅ノ猫さん

はじめまして。
アートワークに関しては個人的に好きなタイプのネタなのでいいのですが、マイク・ポートノイに関してはプレイよりもセンスの面でこのバンドの重要な部分を担っていたんだな、ということを感じさせられましたね。

前作、前々作は悪くなかったと思っていますが、スリルやサプライズはありませんでしたしね。

期待とは少し違うアルバム?

adoreさんの感想に納得してしまいました。
このバンドのポテンシャルと過去の名作を考えると、物足りないですよね。このような芸術的にチャレンジをしているバンドの姿勢は素晴らしいと思いますが、だからこそ圧倒されるようなアルバムが聴きたかったです。
ただ質は十分高いので、次作はプロデューサーを入れるなりしてリフレッシュすれば、また良いアルバムができるような気がしますね。
あとは、マイク・マンジーニの技術以外のインプットが見えるようになればいいのですが、難しそうですね。

>なっつさん

今回は物足りなさ(長さはむしろ過剰ですが/笑)を感じてしまいましたが、マイク・ポートノイ脱退後も一応彼らなりに作品ごとにテーマを変えて取り組んでいる印象ではあるので、次作のアプローチに期待したい所です…。

おっしゃる通り、あえてこのタイミングで外部プロデューサーを入れてみるのも面白いかもしれませんね。

結構何回も聞いたのですが・・・

いまだピンと来ず・・・。いや、「Images and Words」以外のDTのアルバムってどれも即効性がなくって、スルメ盤的なものが多いので、きっと「Astonishing」もいずれ愛聴盤になるハズなんです。きっと、、たぶん、、。
で、もし「Metropolis Pt2」の次作にこのアルバムが出てたらどんな評判になっただろうか・・・などと想像したり・・・(苦笑)
実は恥ずかしながら「Falling Into Infinity」以降のアルバムは14年のラウパでDT観た後に慌てて勉強しまして(遅いって…)、頑張って聴きこんだ結果、「Train of Thought」から「Black Clouds & Silver Linings」までの4枚がかなりお気に入りなのですが、あの頃の演奏の緊迫感はどこへ行ったやら・・・。
最近の3作、特にDrの覇気の無さがちょっと気になるんですよ。やはりプロデュースが悪いのかなぁ・・・。ラウパで聴いた時は結構感銘を受けたんだけど・・・。
Dr復帰がかなわぬならば、思い切ってマイク・ポートノイをプロデューサーとして雇うというのはどうでしょうか?(マジで笑)

>Zeppさん

DREAM THEATER、スルメですよね。
正直私はなんでここまで人気があるのか理解できません(笑)。決して大衆受けする音楽ではないと思うのですが。

マイク・マンジーニはANNIHILATORやEXTREMEで聴いた時にも思いましたが、「上手いけど面白くない」ドラマーですよね…。

マイク・ポートノイの存在がこのバンドの音楽に面白みとスリルを与えていたんだなあ…というのは前作と本作を聴いて痛感させられましたね。残念ながら。

いつからAORバンドになったのでしょうか?
次回作はFrontiersから出すつもりですか?

と言いたくなる程...。