AVANTASIA / GHOSTLIGHTS

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もはやすっかりレギュラー・プロジェクトとして定着し、下手な「バンド」より作品を重ねているトビアス・サメット(Vo : EDGUY)によるメタル・オペラ・プロジェクトの通算7作目となるフル・アルバム(ライブ・アルバムは含まず)。

ストーリーとしては前作『THE MYSTERY OF TIME』から始まった物語の第2章に当たるという。

基本的なバックはサシャ・ピート(G,B, Key)、オリヴァー・ハートマン(G, Cho)、マイケル“ミロ”ローデンバーグ(Key)、フェリックス・ボーンケ(Dr)といった「レギュラー・メンバー」が務めており、マイケル・キスク(UNISONIC)やボブ・カトレイ(MAGNUM)、ヨルン・ランデ(JORN)といったシンガーたちはもはや「常連」であり、準レギュラー・メンバーのようである。

今回の目玉キャストは、このプロジェクトにおいてはかつてアリス・クーパー(ALICE COOPER)やジョン・オリヴァ(SAVATAGE)が務めてきた作中におけるトリックスター的な役回りを#3で演じるディー・スナイダー(TWISTED SISTER)、そして#4に参加するジェフ・テイト(元QUEENSRYCHE, 現OPERATION : MINDCRIME)、これまたこのプロジェクトにおいては「お約束」に近い、ハリウッド映画のエンディング・テーマに使えそうなスケール感とポピュラリティを備えたバラードでトビアスとデュエットする、「METAL OPERA Part.2」(2002)以来の参加となるシャロン・デン・アデル(WITHIN TEMPTATION)といったあたりであろうか。

このプロジェクトは主にヨーロッパで支持されていて、アメリカやイギリスではあまり売れていないが、毎回英米での知名度があるミュージシャンを参加させて「実績」を作ることで、大御所ミュージシャンが参加しやすいメジャー感ある雰囲気や交渉材料を計画的に積み上げようとしていると思われるトビアス・サメットは実にクレバーである。

壮大なメタル・オペラのオープニングにしては割と軽めなミュージカル風の#1で幕を開け、#2はいきなり12分を超える大作というトビアス・サメットお得意の(?)「序盤にハイライト」攻撃。この#2で見せ場を与えられているのがLYNCH MOBで知られ、現在はジェイニー・レイン亡き後のWARRANTでヴォーカリストを務めているというロバート・メイソンという人選が渋い。

#3、#4とストーリーに求められた割とクセのある曲が続いた後で、マイケル・キスクをフィーチュアしたメロディック・スピード・メタル・チューンのタイトル曲#5を持ってくるあたりは、やはりトビアス・サメットは己に求められるものをかなり客観的に把握していると思わざるをえない。

ここまで説明してきたように前半もこれまでの作品同様、練り込まれた素晴らしいエピックなのだが、今回は特に後半のメロディの充実度が個人的には好印象。前述のシャロン・デン・アデルが歌う幻想的なバラード#8から、テクニカルなイントロが印象的なメロディック・メタル・チューン#9、エモーショナルなヨルン・ランデの歌声が胸を打つバラードの#10、再びマイケル・キスクをフィーチュアしたメロディック・メタル・チューンの#11、そして大団円を感じさせるコーラスがドラマティックな#12と、どの楽曲にも汲めども尽きぬ豊かなメロディが流れており、あらためてトビアス・サメットという人物の途方もない才能を思い知らされる。

もはや「メタル・オペラ」というコンセプトに新鮮味はなく、豪華なゲスト・ミュージシャンさえ「当たり前」になりつつあるが、その音楽の魅力だけでもリスナーを振り向かせ、説得する力が「AVANTASIA」にはある。

本国ドイツにおけるチャート成績が今回も2位にとどまったため、これで3作続けて2位。しかもEDGUYの最新作も2位なので、トビアスは本当に1位が遠いと感じていることでしょう(笑)。【87点】

◆本作のオープニング・チューン「Mystery Of A Blood Red Rose」のMV


◆本作で一番メロディック・パワー・メタル然としたタイトル曲のリリック・ビデオ





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コメント

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もはやEDGUYよりもAVANTASIAの方がトビアス・サメットにとってのメインバンドっぽくなっちゃったような気さえします。まあEDGUYもちゃんとアルバムリリースしてますが。

個人的には疾走感溢れるスピードメタルナンバーをもっと!と思ってしまうのですが、これほどメロディが充実しているのならそれは贅沢というものでしょうか。

しかしトビアスといい、Primal Fearのマグナス・カールソンといい本隊でもプロジェクトでもレベルの高い作品をキチンと生み出し続けるってスゴイ!作曲のネタ枯渇しないのかちょっと心配になっちゃうくらいです。

>翔さん

トビアスにEDGUYとAVANTASIA、どちらにより時間を割いているか訊いてみたいところですね(笑)。

やろうと思えば疾走曲などいくらでも作れそうなだけに、「もっと!」と思ってしまう気持ちは同じく疾走厨である身としてよくわかりますが、ストーリーの起承転結の中で疾走するパートがそれほど多くない、ということなのだろうと思います。

…単にライブでやるのが疲れるからかもしれませんが(笑)。

様々な大御所が幕を閉じた十何年後にトビアスが率いるバンドはきっと大トリクラスになってるだろうと疑念の余地もない快作で安心しました。
この先もジャーマンパワーメタルシーンはまだまだ安心ですね

>エメッソンさん

トビアスが今後の欧州メタル・シーンをリードしていくキーマンの一人であることは間違いないでしょうね。
とはいえトビアス以降、あまり目立った才能が出てきていないようにも映るので、その点はちょっと気がかりですが…。

アルバム後半充実していますよね。
オープニングナンバーがイマイチとの声もあるようですが自分は好きです。
あと特筆すべきはサシャが今回ギターソロを弾きまくってくれていること。
特に#9の長いソロは久々にHEAVENS GATEを彷彿とさせる弾きっぷりでした。
来日公演も楽しみです!

>元学生メタラーさん

オープニングナンバーは、パワー・メタル・ファンにとってはやや物足りないものがありますが、このプロジェクトのなんたるかをコンパクトに提示した曲だと思います。

#9はこのプロジェクトにしては珍しく、楽器が主張している曲ですね。

きっと来日公演もこれまでの例にもれず充実したものになると思います。
ただ、私はその日に別件があって行けないのですが…。

いつもお世話になっております。

「あー、1人だけVocalわかんない」
CD探すのめんどかったので、こちらのDB?を参照しました。ロバート君だったのですね。ありがとうございます。(笑)

今作は、なぜかとても耳あたりがよいです。
いい意味でジャーマン臭さがない、というか。
リピート率高いです。

Deeはロケンローラーなので、ちょいキャスティングミスなイメージ。
Geoffは、どうせなら、Kiskeとのかけあいてもやってほしかったですね。低音パートのすごみはさすがでした。

「序盤に大曲」って、HRHM/界では、Destiny@Stratovarius が最初なんですかね?

次作には Rob@JP、Blackie@WASP あたりを勝手に期待してます。

>Metal88さん

普通にウィキペディアとかをご覧になったらキャストはわかったのではないかと思いますが、お役に立てたら何よりです(笑)。

ディー・スナイダーはあえて違和感を出すことを狙ったのではないかと思いますが、深読みですかね。

「序盤に大作」、私がパッと思いつく限りではMANOWARの「THE TRIUMPH OF STEEL」がこの手のメタルでは最初かな? という気がしますが、プログレ系だといっぱいありそうです。PINK FLOYDの「ATOM HEART MOTHER」とか。

No title

MANOWAR のオリジナルアルバムは2枚しか聴いていないので、気づきませんでした。

これ、1曲目というか、A面丸ごとというか、悩ましいいところですね。
1992年作というとCDの時代ですから、1曲目、という扱いになるのでしょうか。

AppleMusicで早速視聴してみましたが、ちょと散漫な印象ですね。
曲としてのまとまりや全メンバーの演奏への関わり、を考慮すると、やっぱりStratoが最初かな、って思っちゃいます。

大Timoって、一人でほとんどの作曲を手掛け、それでいて10年以上にわたって作品ごとに新しい試みをしてきた、という点では、JudasやMiaddenと同等かそれ以上の存在だった、と思わされますね。
(過去形でスミマセン)

>Metal88さん

MANOWARのあの曲は、かの『BURRN!』誌でも「ある種の忍耐を必要とする」と形容されていたと記憶しています(笑)。

部分的にはカッコいいパートもあるんですけどね…。

90年代後半から2000年代初頭のティモ・トルキは凄かったと思いますよ。なんだかんだ言って欧州メロディック・メタルの基本を作ったのはHELLOWEENとSTRATOVARIUSだと思います。

私より年配のメタル好きの方で彼らのことを高く評価する人が少ないので、そう評価していただけると一ファンとして嬉しいですね(笑)。