LORDS OF BLACK / II

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アメリカ、LAの『GIT』仕込みのテクニカル・ギタリストで、スペインのベテラン・メタル・バンドのSARATOGAにも在籍していたトニー・ヘルナンドを中心に結成された、スペインのマドリードを拠点に活動しているメロディック・メタル・バンドのセカンド・アルバム。

HR/HM界のレジェンドであるリッチー・ブラックモアが約20年ぶりにハード・ロックに回帰してRITCHIE BLACKMORE'S RAINBOWを再始動するにあたって、このバンドのヴォーカリストであるロニー・ロメロを起用したことで俄然注目度が上がっている。

ロニー・ロメロはチリ出身で、Facebookで知り合ったマドリードの女性と結婚するために2009年にスペインに移住。普通の仕事をする傍ら、SANTELMO、JOSE RUBIO’S NOVA ERA、ROAD ON FIRE、ARIA INFERNOといったバンドで活動。さらにRAINBOWのトリビュート・バンドであるRISINGでも活動しており、ディオ・トリビュート・コンサートに参加した際にトニー・ヘルナンドと知り合い、トニーがやっていたカヴァー・バンドへの参加を経てこのLORDS OF BLACKを立ち上げている。

ちなみにドラマーのアンディ・Cもトニー同様、元SARATOGAで、それ以前には2003年から2007年までDARK MOORに在籍していた経歴がある。

それなりにキャリアと実力のある面々によるバンドということで、2014年にリリースされた前作の段階からローランド・グラポウ(元HELLOWEEN~MASTERPLAN)がプロデュースを手掛けており、本作も引き続きローランドのプロデュースによって制作されている。

そういう意味でスペイン・ローカルではない、インターナショナルなアプローチで活動していた(スペインのバンドはドイツや北欧に比べると日本同様、どちらかというと国内重視のアプローチをとるバンドが多い)バンドなので、日本盤リリースが実現したのは順当だが、ロニー・ロメロがRITCHIE BLACKMORE'S RAINBOWのシンガーに抜擢されるという話題がなければ日本盤がリリースされたかどうか怪しいのが世知辛い。

実際、本作は2000年初頭のメロディック・パワー・メタル・ブームのさなかであれば確実に日本盤が出たであろう高品質な作品であり、決して辺境マニア向けのB級アルバムではない。

サウンドの方向性といえば、プロデュースを手掛けているローランド・グラポウのMASTERPLANや、THUNDERSTONEといったバンドを彷彿させる、派手さには欠けるが、HR/HMとしてのしっかりした基礎を感じさせる、地に足のついたメロディック・パワー・メタル。

良くも悪しくもスペイン出身ならではの「お国柄」を感じさせることのない、洗練されたサウンドで、飛び抜けた個性や、スペシャルな何かを感じることはないが、楽曲、演奏、プロダクションともに穴がなく、この手の音楽が好きな人であれば安心して聴けるクオリティが備わっている。中でも個人的には#5「New World’s Comin’」がお気に入り。

リッチー・ブラックモアがロニー・ロメロのことを「ロニー・ジェイムズ・ディオとフレディ・マーキュリーを足して2で割ったような感じ」と表現していたことを意識してか、ボーナス・トラックはRAINBOWの「Lady Of The Lake」とQUEENの「Innuendo」のカヴァー。

注目のロニー・ロメロに関しては、「大仰な歌い方をする」という意味でロニー・ジェイムズ・ディオとフレディ・マーキュリーに近いタイプではあるものの、個人的にはジョニー・ジョエリ(HARDLINE, AXEL RUDI PELL)とパシ・ランタネン(THUNDERSTONE)を足して2で割ったような印象を受けました。充分上手いのですが、それほど特別な才能の持ち主だとは思わなかったというのが本音です。

かつてデイヴィッド・カヴァデール、ロニー・ジェイムズ・ディオ、グラハム・ボネットといった錚々たるシンガーを発掘してきただけに、「リッチー・ブラックモアが見出した」ということが過剰に評価されている節がありますが、前回の再結成のときに選ばれたのは結局ドゥギー・ホワイトであり、同時期に『BURRN!』誌や『MUSIC LIFE』誌のインタビューで「リッチーに声をかけられた」と言っていたヴォーカリストはマイク・ディメオ(元RIOT)やアンディ・デリス(HELLOWEEN)だったので、現在のリッチーはそれほどヴォーカリストに「卓越した歌唱力」や「スペシャルな何か」を求めているわけではないのではないか、という気がしています。【82点】

◆本作収録「Everything You're Not」のMV




【おまけ】

おそらくリッチーも観たのであろう、ロニー・ロメロのリッチー関連楽曲パフォーマンス映像を集めてみました。

◆「Stormbringer」(DEEP PURPLE)


◆「Kill The King」(RAINBOW)


◆「I Surrender」(RAINBOW)


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コメント

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連続投稿しつこくて申し訳ありません。
今回も緻密でわかりやすいレビューで、その情報収集力・構成力・文章力うらやましいです。

「スペインのメロディック・メタル・バンド」というキーワードがひっかかったので、ご存知かどうか、Sphinxというバンドです。
https://www.youtube.com/watch?v=NR_BPmfWDJk
1990年以降のバンドで、私のツボにはまった数少ないバンドのひとつです。

RAINBOW再始動だけで嬉しいですね

確かに派手さはないですが、かなり完成度の高いバンドですね。
あとはキラーチューンとメンバーの個性が出れば日本でも人気がでるかもしれませんね。

リッチーも年齢を考えると、ハードロック路線はノスタルジー的な活動のようなので、強烈なヴォーカリストよりも、手堅い実力者を求めてる感じですね。

ロニー・ロメロはadoreさんが挙げられてますように、ジョニー・ジョエリの声質が近いと感じました。
全盛期RAINBOWの歴代シンガーと比較するとインパクトは弱いですが、これからに期待したいです。
個人的には、せめて短髪と髭ではなく、もっとメタルシンガーらしいルックスにして欲しいですね。

>Metal88さん

お褒め頂きありがとうございます。
文章力・構成力はともかく、情報収集はライナーノーツ+BURRN!+公式サイトやWikipediaをチェック、というくらいなので特筆するようなものはないのですが(笑)。

ご紹介いただいた曲、メッチャかっこいいですね。私がB級メロスピに求めるものを凝縮したような曲です。
基本的に日本盤が出てないバンドのことはほとんどチェックしていないのでノーマークでした。ご紹介ありがとうございます。


>なっつさん

おっしゃる通り、現段階ではキラー・チューンと個性に欠けますね。そういう意味ではまだマニア向けでしょう。

リッチーは20年前の再結成の時点で商業的な大成功は狙っていなかったと思います(ジョーを入れた時期などは本気で売れることを狙っていたと思いますが)。
もはやヴォーカルに求めることは「好みの歌い方ができること」と「エゴがないこと」くらいなのではないでしょうか。

ルックスについては、かつてグラハム・ボネットという先例があるだけに(リッチーは気に入っていなかったようですが)、もはやあれこれ言うのも野暮というものでしょう。
パーマネントなバンドとして雇ってくれるならともかく、3回のショウをやることが決まっているというだけでは彼も昼間の仕事を辞めるわけにもいかないでしょうし。

SPHINX ヤフオクに出しました。ご検討ください(笑)

そうでしたか、輸入盤はチェックされないのですね。
では情報を少し。
マニア向けのCDや旧譜再発を多数扱っている ROCK AVENUE RECORDS というネットショップがあります。SPHINXはここで掘りあてました。
店長(オーナー?)がレビューするのですが、基本的にべたほめレビューばかりで、2000年代はここで何度も釣られて散財しました(苦笑)

その他に日本盤未発売で、adoreさんにおすすめなのはこんな感じ↓です。

メジャーレーベル(多分)
 WAYSTED / SAVE YOUR PRAYERS(私にとって神盤)
TOBURUK / WILD ON THE RUN(LPは出てたはず)
KANE ROBERTS / S.T. (日本盤も出ましたが流通少数?)
FATE / 1ST & 2ND (日本盤出てたかも?)

 マイナーレーベル
HIGH SPIRITS / ANOTHER NIGHTS
 EXCALIBUR / ONE STRANGE NIGHT (日本盤も出ましたが流通少数)
LETTER 7 / 3作あります
FIRES OF BABYLON / S.T. (ROB ROCKですがいまいち)
LIEGE LORD / BURN TO MY TOUCH
PHANTOM / CYBERCHRIST (日本盤も出ましたが流通少数?)
MAMMOTH / S.T. (Voがニッキー・ムーア)
 SEVEN'S SEAL / MESSENGERS OF LOVE
TRIOSPHERE / THE ROAD LESS TRAVELLED
RANDY PIPER'S ANIMAL & W.A.S.P. の近作(最新作は久しぶりに日本盤が出ましたね)

OUTLOUD や H.E.A.T.なども、日本でビューするずいぶん前に先述のSHOPで購入していたような記憶があります。

>Metal88さん

色々とご紹介ありがとうございます。
聴いたことがあるものもいくつかありますが、聴いていないものが大半ですね。機会があれば聴いてみたいと思います(特に神盤とまでおっしゃってるものは)。

ROCK AVENUE RECORDSは存じ上げています。
あまりに何でもかんでも褒めているので逆に胡散臭くて買ったことはありませんが…(笑)。

Waysted の86年のこの作品は、いわゆるアメリカでのHM/HRポップ化現象に誘発されてできたメロハーの良盤です。それまではハードロックンロール?のような音楽をやっていたようです。(ちゃんと聴いていないので。。。)
当時はメロハーというジャンルがなかったので、まさにメロハー黎明期の作品といえるでしょう。

この前後の時期、主にイギリスでは露骨なポップ化にはならず、SHYやWhiteSister,Tobruk、WhiteWolf(カナダ)などに代表される「ブリテッィシュなウェット感に富んだ良作が多数発表されました。

そして私にとっての神盤 SHY/EXCESS ALL AREAS が登場しました。
(たしかKohさんも大絶賛してましたよね。。?)
メロハー好きであれば、28年前のこの作品のすばらしさに異論を唱える人はいないでしょう。。。(多分)

ちなみにWastedは、当時林立していた西新宿の輸入盤屋でジャケ買いしたものです。
私は90年までLP派だったので、Painkiller(輸入盤) や Predetor in Disguise(国内盤) などのLPを持ってたりします。(ちょっと自慢^^)

>Metal88さん

80年代に流行ったキャッチーなHRは、当時は売れ線狙いだったのでしょうし、センスのないバンドがそれをやったときには痛々しくなりがちですが、今となってはメロディアス・ハードというスタイルのプロトタイプとして評価できますね。

SHYの「EXCESS ALL AREAS」はメロディアス・ハード草創期の名盤でしょう。個人的にはラスト・アルバムの方が好きですが。

西新宿の輸入盤屋街、懐かしいですね。
Amazonなどの台頭によってああいう「マニアックな音源探し」の楽しみはなくなってしまいましたね…。

これまでのパターンからすると
ロニーロメロはイングヴェイの新Voの有力候補ですかね。

レインボーにイェンスが参加するみたいですが
イングヴェイ→レインボーの
逆パターンもあるってのが少し驚きです。

いずれにしてもレインボーの再始動が
最近調子の良くないイングヴェイにとって良い刺激なることを祈ります。

LORDS OF BLACKとあまり関係なくてすいません(苦笑)

>ノバックさん

ロニー・ロメロ、イングヴェイの音楽にも合いそうですが、もうイングヴェイには専任ヴォーカリストを入れるつもりはないんじゃないですかね。
新作も自分で歌っているようですし…。

イェンスのRAINBOW参加は、たしかに今までの元RAINBOW→イングヴェイのバンド、という人の流れの逆を行っていますね。
ひょっとしたら意図的にそうしてみせたのかもしれません(笑)。

イングヴェイは別に調子が良くないとは思ってなさそうですね。
「俺は何も変わってない。音楽業界がクソになっただけ」と思っているのではないでしょうか。

お久しぶりです

>新作も自分で歌っているようですし…

BURRN!でその記事を読んでガッカリしまいましたorz。過去の名作群のお蔭で困らないけど。

イェンスはYNGWIEの処を辞めた後、Dioに参加しましたのでそんなに驚きはしなかったです(;^_^A。

>ゆうていさん

以前コメントをいただいてから1ヶ月も経っていないので、私としてはそれほどお久しぶり感はないですね(笑)。

イングヴェイは完全に「旧作を聴いていれば充分」なアーティストになってしまいましたね…。残念です。

イェンスは実力と、キーボード奏者としてのHR/HM業界におけるプレゼンス、そして通ってきたバンドの音楽性を考えればリッチーと一緒にやるのは全く意外ではないですね。

しかしRAINBOWの曲名を冠したバンドでデビューした人がRAINBOWに加入する(という表現が適切かどうかわかりませんが)、というのはなかなか感慨深いものがありそうです。