TREAT / GHOST OF GRACELAND

treat07.jpg

前作「COUP DE GRACE」は「最後の一撃」を意味するタイトルの通り、ラスト・アルバムとなることが想定されて制作された作品だった。

しかし、その出来栄えは最後にしてしまうにはあまりにももったいないと言わざるをえない完成度を誇り、同作に伴って行なわれたライブはいずれも大好評で(来日公演も素晴らしかった)多くの北欧メタルファンに惜しまれていたが、その想いに応えるかのようにこうして再結成後の第2弾となるアルバムが届けられた。

前作はアップテンポでいかにもHR/HMアルバムのオープニングに相応しい「The War Is Over」でスタートし、北欧メロディアス・ハードというイメージを完全に体現した作風だったが、本作ではいささか様相が異なる。

オープニングを飾るタイトル曲は重厚な感触さえある、落ち着いたミドルテンポのナンバーだし、続く#2「I Don’t Miss The Misery」は、彼らにしては異色のAC/DC風なリフがフィーチュアされた(彼らにしては)ヘヴィなロックナンバー。

これらの楽曲に象徴されるように、全体的にヘヴィな感触とロック然としたバンド・グルーヴが強調された作風であり、そういった要素は基本的に歌謡曲的であることを歓迎する北欧メロディアス・ハードのファン(私とか私とか私とか)にとっては必ずしも歓迎される要素ではない。

しかし、そういったヘヴィさが押し出されていてもなお、絶品なのだ。メロディが。

21世紀に入って以降、特に『Frontiers Records』のようなメロハーをある種工業的に生産するレーベルが出現して以降、世に出回るメロディアス・ハードのクオリティというのは飛躍的に底上げされた。90年代以前に比べて総合的な平均点が上がっていることは間違いない。

しかし最終的に心の琴線に触れるか否か、というのは、それは単純な楽曲のクオリティ、ましてや演奏の巧拙やサウンド・プロダクションの良し悪しとは関係ない、センスの世界である。

然るに、本作に収められた楽曲群のサビにおける「胸締めつけられ度」の高さはどうだろうか。割と平凡なハード・ロック・チューンかのように始まった楽曲でさえサビに辿り着くと泣かされるのである。この煽情力は半端ではない。

6年ぶりの新作となる本作について、バンドのリーダーであり、嵐が2007年にリリースしたオリコンNo.1ヒットシングル「We Can Make It!」の作曲者でもある(どうでもいい?)アンダース・ヴィクストロム(G)は「このアルバムを作るために25年かかったと思っている。TREATを始めた日からこのアルバムは俺達の中に存在していたんだ。当時からヴィジョンもアイディアもあったけど、それを具現化させるための正しいツールを見つけるのにこれだけ時間がかかってしまった。これを完成させるまでに6枚のアルバム、何百キロにおよぶツアー、13年間の活動休止、そして新たな人生観が必要だったんだ。以前は気づいていなかったけど、俺達はこれを目標にして歩み続けてきたんだよ」と語っている(ライナーノーツより)。

実際に「SCRATICH AND BITE」という、どちらかというとチャラめのアルバムでデビューした時期に本作のようなやや渋め(?)な作品を作りたいと思っていたとは考えにくく、上記の発言は「ずっと理想的なアルバムを作りたいと思っていて、今回それが実現できた」というくらいの意味だと思うが、本作に活動休止期間も含む、キャリアとは関係ない人生を含む経験が必要だったというのは、何となく理解できる。そういう味わいというか深みが本作には感じられるのだ。

本作の作風は前作のような日本の北欧メタル愛好家が思い描く「理想的メロディアス・ハード」そのものではないかもしれないが、一歩間違えるとAORになってしまいがちな北欧メロディアス・ハードにあって、年齢相応の落ち着きと、ハード・ロックらしいエッジを絶妙なバランスで共存させるという高度なソングライティングを実現した、年季を重ねた芳醇なワインの如き趣がある佳作である。

なお、北欧らしい哀愁に満ちたバラード(イントロのピアノだけで泣けます)の#11「Together Alone」はなぜかアンダース・ヴィクストロム(G)が歌っており、それも悪くはないのだが、やはりロバート・アーンルンドの甘くマイルドな「北欧ヴォイス」で聴きたかったというのが本音(日本盤ボーナス・トラックで「Different Version」を収録しているのだから、そちらだけでよかったのに…)、」【85点】

◆本作収録「Inferno」のOfficial Audio


◆本作収録「Endangered」のOfficial Audio


◆本作収録「Do Your Own Stunts」



スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

スウェーデン人が羨ましい

プードルズなど、こういったリフや歌メロで演奏するバンドが作品を発表し、活躍できるできる環境があるスウェーデンが羨ましいです。
記述されている通り、サビの歌い上げが、なんとも懐かしくというか、ある種の演歌的なコブシが感じられて素晴らしいですよね。
サビをとっておきにするためなんでしょうかね?A~Bメロまでの歌い方の平坦な感じが、妙にメタリカのジェイムスと似てると重うのは私だけdethかね?笑

>学生気分38さん

METALLICAとの共通点は全く気づきませんでした。

ECLIPSEのエリック・モーテンソンいわく「スウェーデンにはメロディック・ロックのシーンがあると思われているけど、実際にはないし、そんなシーンは世界のどこにもないと思うよ」とのことらしいですよ…。
http://metalgateblog.blog107.fc2.com/blog-entry-802.html

THE POODLESはたまたま売れていますが、今のTREATは本国では別に売れているわけではないみたいですしね…。

そうだったのですね!

過去記事、拝読しました。いつだったかスウェーデンでメタル依存症が認定されたとかいうニュースがあったりしたので、てっきりスウェーデンではメタルやハードロックが極めて日常的なものだとばかり重ってました。一度行ってみたい国ナンバー1だったので、ちょっと残念deth…笑

現在、本アルバムの到着待ちの身です。
察するに「スルメアルバム」のようですね。

ようやく新譜を聞きたくなるまで回復しました。
Treat、Dynazty、Avantasia、MetalChurchなどの到着を待っているとことです。

2015年は、Treatを含むKawasakiRockCity、Raven.PrayingManitsなど、80’sメタラー(もどき)にとっては、LoudParkを含め、とても貴重な年でした。
今年のLoudParkはNightwish、MetalChurch、Queensrycheが来日することもあり、ぜひとも参加したいです。
もうひとつのトリは、ずぇーーーーったいにRainbowであってほしいです。リッチーも受けが良いようであれば続けたい、ような記事を読んだような気が。。。。

>学生気分38さん

いや実際メタルは盛んな方の国だと思いますよ。
パッと思いつくだけでもIN FLAMES、HAMMERFALL、SABATON、THE POODLESそしてEUROPEと、チャートの1位を狙える自国のバンドが5つもあるわけですから。

ただ、メロディアス・ハードやAORについては、良質な産地でありつつも人気があるわけではない、ということなのでしょう。

>Metal88さん

回復されたようで何よりです。
反動なのか、ずいぶん急ピッチで新譜をお買い求めですね(笑)。

LOUD PARK、NIGHTWISHの追加でさらにモチベーションが上がりましたね。

RAINBOWは私もすごく観たいのですが、トリがSCORPIONSにRAINBOWというのはいささか懐古趣味的に過ぎないか? という気もします。

そもそもRAINBOWであれば単独でもSSAはともかく武道館くらいなら、少なくとも東京国際フォーラムAホールは確実に埋められると思いますので、単独でやった方がプロモーターとしては儲かるのでは…という気がしてしまいます(LOUD PARKの客層より上の世代も呼べそうですし)。

回復は道半ばです。ただ通常の生活は送れるようになりました。
ほんっっっっとにMETALGATEをはじめ、メタルブログには助けられました。

現在、会社清算中なので、経費で落とせるものはじゃかじゃか買い込んでいます。

LP2日連続は体力的に厳しいので、MCとQRとNWとスコピは同日になってほしいです。
Rainbowが来たら、2日間這ってでもいきますが(笑)

ただリッチーはお金のために今回のRainbowをやっているわけではないので、LPのみも可能性はあるのではないでしょうか?
でも、そんなことするとLPの会場が荒れるので(苦笑)、実現するとしたらLPと単独両方やってほしいですね。

>Metal88さん

こういうメタルブログが他人にとって役立つとしたら、それは一種のバイヤーズ・ガイドとしての機能しかないと思っているのですが、知らないうちに人助けもできていたとは驚きです(笑)。

経費で落とせるものって、メタルのアルバムも落とせるんですか? だとしたら清算するのもったいないですね(笑)。

LOUD PARKはやはり2日通って疲労困憊することで一種の達成感に浸るのが醍醐味ではないでしょうか。
指定席だと結構楽ちんですよ(笑)。3ステージだと痛し痒しですが。