DIRKSCHNEIDER来日公演 at 品川ステラボール 2016.5.13

ACCEPTのオリジナル・シンガーであるウド・ダークシュナイダーは、ACCEPT脱退後は(再結成していた時期を除いて)自己のバンドであるU.D.Oで活動しており、少なくとも本国ドイツを中心とした欧州ではそれなりに順調に活動している。

そのウドがDIRKSCHNEIDER名義(メンバーは現在のU.D.Oと同じ)で来日しACCEPT時代の楽曲のみをプレイするライブをやると聞き、これは行かねばと思いました。

しかも、ウドがACCEPT時代の曲を歌うのはこのDIRKSCHNEIDER名義のツアーが最後になるとのこと。

個人的にはACCEPTの名曲が聴けるなら、という思いだけでU.D.Oを観たいと思う人だって結構な数いると思うし、これから新曲を1曲も出さなくてもACCEPTの曲だけ歌って食べていけるんじゃないの、という気がするだけに、完全引退するならともかく、ACCEPTの楽曲を「封印」する意味がわかりませんが、本人としては思う所があったのでしょう。

私はLOUD PARKに2006年の初開催から皆勤賞で参加しており、数々の名バンドのライブを観ることができたわけですが、LOUD PARK史上で最も感動したライブは2010年のACCEPTでした。

そのためその後の来日公演も欠かさず馳せ参じているわけですが、それだけに現在のACCEPTはあまりプレイしないような曲も聴けそうだという期待があり、平日、しかも職場からのアクセスはあまりよくない品川へと駆けつけました。

実際の所、職場を出るのがギリギリになったためタクシーに乗ってみたら、週末の夜だけに道が激混み、仕方がないので途中のJRの駅で降ろしてもらって電車に乗ろうとしてみたら車内に急病人発生とかで電車がストップ、やべー間に合わねーと焦りましたが、なんとか照明が落ちるのと同時に場内に入ることができました。

ギリギリに入った私で700番台前半。ステラボールのキャパは1,800人だからかなり寂しい客入り(予想はしていましたが…)。左右のスペースをグッと絞ってスカスカ感が出ないようにしていましたね。

1曲目は「BREAKER」収録の「Starlight」。本サイトのレビューにも書きましたが、私がACCEPTに初めて触れた思い出深い曲で、個人的な思い出を抜きにしても切れ味鋭いギター・リフと緊張感溢れる中間部、華麗なツイン・リードのギター・ソロが印象的な名曲だ。この曲を聴きたいがためにタクシーに乗ってまで遅刻を避けようとしたと言っても過言ではない(この曲がオープニングであることは事前に知っていた)。

この曲はウドの持ち味であるヒステリックなシャウト・ヴォーカルが特にインパクト強くフィーチュアされている曲で、正直マーク・トーニロをフロントに迎えた再結成ACCEPTのライブで一番違和感を覚えたのがこの曲だったのだが、さすがは本家、キーは下がっているものの、その歌声に違和感はない。

ただ、逆にそのサウンドにはちょっと違和感を覚えた。かつて同じ会場でACCEPTを観ているが、その時のサウンドはソリッドに引き締まった極上のものだったが、それに比べるといささか軽さがある(一般的な水準を下回っているわけではない)。

パフォーマンスも、本家ACCEPT同様、弦楽器隊が並んで同時にネックを上げたりというフォーメーションを頻繁に行っているが、ちょっとラフな感じが否めない。本家ACCEPTが「ドイツ正規軍」的な規律を感じさせるのに対し、「傭兵部隊」のような印象だ(もっともロックはキッチリしているよりもラフなくらいのほうがいい、という価値観もあると思うので、その辺は好みの問題か)。

もちろん傭兵部隊とはいっても、欧州では確固たる地位を築いているU.D.Oのレギュラー・メンバーたち、技術的な水準は高い。ロシア人ギタリスト、アンドレイ・スミルノフとフィンランド人ギタリスト、カスペリ・ヘイッキネンの繰り出すシュレッドはオリジナル以上だ。

ただ、弦楽器隊に比べるとドラムの技術レベルがちょっと甘いかな…と思ってライブ後に調べてみたら、現在のドラマーってウドの息子さんなんですね。縁故採用とあっては仕方ない(?)。てか父親とバンドやるってどういう気分なんでしょう。

しかしやはり本日のライブは選曲に尽きるでしょう。以下、本日のセットリスト。

1. Starlight
2. Living for Tonite
3. Flash Rockin' Man
4. London Leatherboys
5. Midnight Mover
6. Breaker
7. Head Over Heels
8. Princess of the Dawn
9. Winterdreams
10. Restless and Wild
11. Son of a Bitch
12. Up to the Limit
13. Wrong Is Right
14. Midnight Highway
15. Screaming for a Love Bite
16. Monsterman
17. T.V. War
18. Losers and Winners
アンコール:
19. Metal Heart
20. I'm a Rebel
21. Fast as a Shark
22. Balls to the Wall
23. Burning

80年代ACCEPTの名曲が目白押し。現在のACCEPTがプレイしないような曲をたくさん聴くことができ、恐らく私よりもACCEPTに対する思い入れと思い出が深いような80年代リアルタイム組の方々にとってたまらなかったことでしょう。

もう「Breaker」あたりで、あまりにカッコよくて泣けてくる、という謎の事態に。マジで涙がこみあげ、うっかりすると嗚咽さえしてしまいそうでした。メタルという音楽に出会えてよかった、普通の人はこのカッコよさ、興奮、高揚感を知らずに死んでいくなんて、なんて気の毒な、という思いで胸がいっぱいでした。

しかし「Princess of the Dawn」は何度聴いてもマジックがありますね。シンプルなリフが淡々と繰り返されるだけ(だけってことはないが)なのに不思議な迫力がある。このリフ、このリズムに乗せて重装歩兵部隊が進軍してきたら威圧感あるだろうな、みたいな妙な妄想を掻き立てられました。

ウドのヴォーカル・スタイルもあってAC/DCに例えられることも多いACCEPTですが、決定的に違うのは、徹底的にシンプルなAC/DCに対して、ツイン・リードやコーラス、リフ展開などの「仕掛けの多さ」と、メタリックな中に滲む哀愁ですね。これが絶妙なフックとなり、ライブの盛り上げどころになっています(AC/DCにフックがないというわけではない)。

「Winterdreams」のような哀愁のバラードや、「Screaming for a Love Bite」のような80年代的なキャッチーさを備えた曲もまた上手いもので、やはりソングライティングのセンスがずば抜けていたのだと思います。

特殊な歌唱スタイルゆえにウドが歌うヴォーカル・ラインを普通の人が歌うのは難しいわけですが、その分低音コーラス・パートが実に歌いやすくできているのがACCEPTの楽曲の秀逸なところで、気分はすっかりACCEPTをサポートする合唱隊です。残念ながらあそこまで迫力のある低音は出せないのですが(苦笑)。

そういう意味で、本日のバンドのコーラスは本家に比べると威厳不足だったのは否めませんが、そこはオーディエンスが支えるべき所でしょう(笑)。「Restless And Wild」のあのサビとか、「Losers And Winners」のブリッジの掛け合いとかやっぱ燃えますね。

あえて特筆するなら初めてライブで聴いた「T.V. War」のスピード・メタルとしての完成度の高さで、思わず首ももげよとばかりにヘドバンに打ち込んでしまいました。

アンコールは「Metal Heart」、「Fast As A Shark」、「Balls To The Wall」という、どれか1曲でも書けたらメタル史に名を残せるであろう超名曲ラッシュですから満足しないはずがありません。

「Balls To The Wall」の演奏前に、「この曲を東京でプレイするのもこれが最後だ」としんみりさせておきつつ、実際のラストは彼らのレパートリーの中で最もノリノリなメタル・ロケンロー・チューン「Burning」で締めたというのも、変に湿っぽくならずによかった気がします。

全23曲をほぼピッタリ2時間でプレイしたわけですが、その辺のタイムコントロールもベテランならではでしたね。オーディエンスに歌わせるのも、ギタリストとのアドリブっぽいやりとりも含め全てちゃんと計算されていたのだと思います。MCも「ロック・ライブの定型句」みたいなわかりやすくシンプルなものばかりなのも日本人にはありがたかったですね(笑)。

ウドはもともとドイツ人としては珍しいほど低身長で、しかも歳を重ねてちょっとずんぐりと丸くなっているので遠目にはマトリョーシカのようで可愛らしい(笑)。動きも64歳という年齢相応に緩慢でしたが、そのフロントマンぶりは想像以上に貫禄あふれるもので、さすがかつてドイツを代表するメタル・バンドのヴォーカリストを務めていただけあるな、と今更感心しました。

というのも、実はウド・ダークシュナイダーという人に関しては、その歌声がメタルという音楽に限って言えば強力な武器となる個性ながら、一般的な感覚では耳障りな歌声だし、ルックスもおよそロック・スターのイメージとはほど遠いだけに「なんでこの人がそもそもヴォーカリストになろうと思ったんだろ?」という大変失礼な思いを抱いていたくらいだったからです。

しかし64歳になってなお、(キーは下げているとはいえ)この歌唱スタイルで2時間に渡るショウをやりきることができるという点についてはリスペクトしかありませんね。

あらためてACCEPTの楽曲の素晴らしさと、ACCEPT以外のバンドがそれをプレイすることを聴いたことで、いかにACCEPTというバンドのサウンドが特別であるかということを思い知らされた一夜でした。

ACCEPTが国際的な知名度を得た1984年くらいを境に、いわゆる「正統派メタル」といわれるヘヴィ・メタルのスタイルは下火になり、スラッシュ・メタルやデス・メタル、PANTERAに代表されるグルーヴ・メタルといった新しいスタイルが台頭してきたわけですが、思うにそれは「正統派」と言われるようなスタイルでACCEPTを超えることは不可能なのでそうせざるをえなかったということなのではないか…などという説が私の中で思い浮かぶほど、素晴らしい楽曲、素晴らしいリフが満載のライブでした。大満足です。

◆3/16 アテネ公演の「Fast As A Shark」

何度聞いてもアドレナリンが暴走するのを抑えられません。

◆名古屋公演のドラムカメラ映像

ウドの息子であるスヴェン君がアップしていました。やはり親父さんに似てますね。
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コメント

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レポありがとうございます。

700番台でしたか...クアトロなら「まずまずの入り」でした 笑。

Breakerからとは、早いですね!

コメントをするのは2回目ですが、いつも更新を楽しみにしております。

レポから伝わってくる素晴らしいライブだった感、参加できなかったのが残念です。

貼ってあるアテネ公演の映像も観ましたが、ウドは64歳と考えると本当にすごいですね。初めてあの声を聴いたときは「なんじゃこりゃ」と思いましたが(笑)、慣れてくるとACCEPTの楽曲とのマッチングの素晴らしさに興奮した記憶があります。
マーク・トーニロも素晴らしいので、現行のACCEPTをしっかり体験できているのは嬉しいですが、「ウドが歌うACCEPTの曲」を体験できずじまいなのが本当に無念です。

本当に素晴らしいライブでしたね!
自分が合唱大好き合唱パートくれくれマンになった理由は紛れもなくウド在籍時のAcceptです。
まだほとんどニューメタルしか聞いてなかった自分に正統派の良さを教えてくれたのもAccept
ファン歴でいうと一桁前半程度で皆さんには到底かなうわけもありませんが、思い入れは自分もかなり強かったです。
もう見れる事はないと思っていたウドを初めて目の当たりにすると、予想以上の腹の出っぷりに笑っちゃいましたねww
髪型も相まってBallsそのものでした!
楽器隊は少々動きがラフでしたが、ウドのバックバンド扱いなどされておらず、全メンバーが平等に扱われてるのが見ていて良かったです(本家は・・・)

封印する理由はAcceptの再結成が大成功を収めたから、自分がAcceptの曲を歌う理由が無くなったとかそんな所かなーと思っております。

鉄の心臓

ダークシュナイダー氏って64歳なんですか!恐るべき歌唱力ですね。
しかし、ヴァンヘイレン氏もしかりですが、息子をバンドに入れてしまうってのは誰も止めないんでしょうかね?
私も高校生の息子がいるので、親バカの気持ちってのは理解できなくはないですが…レジェンドに意見するようなタイプの人は、いつしか排除されてしまうのでしょうかね?笑

まさか管理人さんと同い年とは、自身の無知ぶりがお恥ずかしい限りです。我々ってHRHM氷河期世代ですよね?にも関わらず、管理人さんのメタルチャージ量とその質には畏怖の念さえ抱いてます。まさにメタルハートの持ち主dethね。

ACCEPTはメタルハートと現在の作品あとウド時代の有名曲しか聴いたことが無いですが
ブログを読んで行けば良かったと後悔しています。
私もウドの声(シャウトは好きです)が苦手というかゴニョゴニョ言っている様にしか聴こえない場面がちらほらあります。
今年のラウパにACCEPT来て欲しいと思ったり...

まとめてお返事

>udometalさん
たしかにクアトロなら適正サイズでしたね(笑)。
とはいえステラボールはステージが広いので、広いステージで観ることができたのはバンドにとってもファンにとってもラッキーでした。


>kimさん
今回のライブが良かったのは事実ですが、ぶっちゃけACCEPT本体の方がパフォーマンスの質は高いので、今回プレイされ、ACCEPTがプレイしていない曲にさほど思い入れがなければ、今のACCEPTで充分だと思いますよ!(笑)。


>エメッソンさん
ACCEPTのコーラス・パートは燃えますよねー。
Nu Metalから入った人がACCEPTに目覚めるとは驚きです。

私もACCEPTを聴いたのは20年近く前ですが、ファンと言えるほど好きになったのはLOUD PARK10で実際にライブを観てからなので、かろうじて一桁後半ですよ(笑)。

ウドはたしかに丸かったですね(笑)。

封印の理由はそうでもしないと今回の来日を含め、U.D.Oの現メンバー(特に息子?/笑)の魅力を見せつける機会がなかなか作れなかったからではないかという気もしています。


>学生気分39さん
本当に、64歳にしては(それも大阪、名古屋の後なのに)頑張っていたと思います。

息子の加入については、VAN HALENにせよU.D.Oにせよ、オーナー企業みたいなバンドなのでその辺は他メンバーとしては「しゃーねーな」って感じなんじゃないでしょうか。

我々はHR/HM氷河期世代ですね。
ただ、私がHR/HMに出会った1992年にはまだ日本に関しては結構人気があったと思いますので、滑り込みですかね(笑)。

大学の音楽サークルなどではかなり肩身が狭かったですね(笑)。


>かつ丼さん
ウドのヴォーカル・スタイル自体は私もどちらかというと苦手ですよ(笑)。
ただ、このヴォーカルだからこそ、という曲があるのも事実だと思ってます。

ACCEPT、またLOUD PARKでメタルの魅力を広く伝えてもらいたいですね。
新作が出ないと難しいでしょうけど…。