陰陽座 / 迦陵頻伽

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唐突に重い話で恐縮ですが、今年、私の母が癌で亡くなったんです。

母の癌が発見された年にリリースされたのが、彼らのアルバム史上ある意味最もシリアスでダークと言ってもいい『鬼子神』でした。

『鬼子母神』は年末にリリースされており、年末年始、実家に帰って親と顔を合わせている時期にヘビロテしていたので、実家の風景と結びついて印象付けられています。

そして母が亡くなった今年にリリースされたのがこの『迦陵頻伽』。

迦陵頻伽とは、死後の世界である極楽浄土に住むとされる、美しい声を持つ上半身が人で下半身が鳥という、仏教における想像上の生物の名前。

そして彼らの13枚目のアルバムにして、13曲入り。これはどちらかというと西洋的な感覚ですが、13という数字も不吉な「忌み数」。

さらに、リーダー・トラックの曲名は「愛する者よ、死に候え」。

まるでこのバンドが私の母の死を見越していたかのようで、これはなかなか偶然にしては出来過ぎというか何というか。いや、偶然なんですけどね。

まあそんなわけで本作が、そして陰陽座というバンドが自分の中で特別な存在になっていくのを強く感じるわけですが、そんなことはこの文章をお読みになる方々にとってはどうでもいいこと。

本作のオープニングはタイトル・トラックである「迦陵頻伽」。期待感を高める神秘的なイントロから始まるこの曲は、勢いのある曲から始まる曲が多いHR/HMアルバムのオープニングとしては異色な、彼らとしても新境地な曲だが、素晴らしいスケール感を感じさせる名曲。何気にアルバム・タイトルがそのまま楽曲の名前になっている例は初めてかも。

その後、彼らの王道チューンというべき正統的HMナンバー#2、彼らなりのシンフォニック・メタル・チューン#3、和音階を隠し味的に織り交ぜつつキャッチーなメタル・チューンに仕上げた#4と、往年のファンの溜飲を下げる楽曲を取り揃えつつ、インダストリアル・スラッシュ的なギター・リフを持つ#5、オールド・スクールというかクラシックという趣のハード・ロック・チューン#6、ギャグかと思うほどディスコティックな#7と、バラエティも充分。

その#7「轆轤首(ろくろくび)」は4th『鳳翼麟瞳』収録の「飛頭蛮(ろくろくび)」とストーリー的なつながりがある、一種のアンサー・ソングになっていたりするのもファンにとっては楽しい。

定番の忍法帖ソング#8「氷牙忍法帖」は6th『臥龍點睛』収録の「蛟龍の巫女」を思わせるピュアなメロディック・スピード・メタル・チューンでこれまた素晴らしい。

彼らがアルバムに一曲は収めてくるドラマティックな長尺曲(といっても今回は長さ自体は7分程度と控えめだが)#9から終盤シリアスに盛り上がっていくアルバムの流れも相変わらずよく考えられており、哀しきバラードの#11から、パチスロ『バジリスク~甲賀忍法帖~III』主題歌であり、本作のリーダー・トラックといって過言ではないであろう#12「愛する者よ、死に候え」(リフがANGRA「Carry On」風)はまさにクライマックスといえるだろう。

こうしてほとんど全曲触れたくなってしまうほど充実した楽曲揃いであるのはこれまでも同様なのだが、本作を聴き終えて一番印象に残るのは、瞬火(B, Vo)にとっての迦陵頻伽、黒猫(Vo)のさらに表現力を増した歌声であり、その浜田麻里の正統的な後継者と呼ぶにふさわしい歌唱が、本作をして陰陽座史上最もヴォーカル・オリエンテッドなアルバムという印象に仕立てている。【86点】

◆「愛する者よ、死に候え」のMV


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コメント

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日本んのメタルとは

まずこの度は誠にご愁傷様でした。
お母様のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

陰陽座についてはマイナーキーの曲が多いイメージが強く(例外が何曲もあることは承知しています)、正直あまり視聴したことがないのですが、楽曲は勿論、ビジュアル的側面においても、非常にいい意味で日本を体現しているバンドだと思います。

これだけが良い楽曲を、高い演奏レベルでライブで再現し、しかも日本人としか言いようのないビジュアルで、アニメやゲームとのタイアップもあり、知名度が非常に高いバンドは日本国内でもそう多くはいないと思います。

こうしたバンドが『メタル』の名の下に存在するということは、この音楽の普遍性を高めるのにも非常に有効だと思いますが、同時にもっと海外で評価されるべきバンドだとも思います。

海外で評価される日本の音楽が西洋的音楽というわけではない、という図式を陰陽座にはこれからも作り出していってほしいと思います。

No title

かなり久しぶりのコメントになります。

お母様のご逝去心よりご冥福をお祈りいたします。
私は知人が今冬に亡くなっており人生の無常観について思いをはせました。

そして「愛する者よ死にそうらえ」という楽曲。この曲に限らず、深い意味を込めつつ魅力的な楽曲を産み出せる陰陽座は世界に誇れる人達だと思います。

>Ario✠cHさん

お悔みありがとうございます。

陰陽座に限らずメタルというのは(80年代型のアメリカンHR/HMを除き)基本的にマイナーキーの曲が多いものだと思いますが、彼らが日本の音楽シーンの中で、いわゆる「ジャパメタ」なシーンとは一線を画した独自の地位を確立することができた稀有な存在であることは間違いないと思います。

ただ、陰陽座の場合、その世界観をある程度正確に理解できるのは日本人に限られ、海外の人にとってはどうしても薄っぺらな「エキゾチック・ジャパン」に見えてしまうのと、なまじ日本国内でそこそこの成功を収めてしまっただけに、日本より格段に不利な条件の海外で勝負するのは難しいという事情があるような気がします。

個人的にはもはやこのクオリティをどこまで維持し続けられるか、という点に興味がありますね、このバンドの場合。

>まかさん

お悔みありがとうございます。
母の場合、平均寿命に比べればかなり短命だったとはいえ、若いとは言えない年齢でしたし、闘病期間も長かったのである意味覚悟はできていましたが、年齢の近い知人が亡くなったりするとやはり無常を感じますよね。

陰陽座は必ずしも世界的に人気があるバンドではないかもしれませんが、このバンドのビジョンの確かさとそれを具現化する力、それは主に瞬火という人のリーダーシップによるものという気がしますが、これは本当に世界的に見ても稀有な存在だと思います。

R.I.P.

今年の春先に私の父も長い入院生活の末、合併症で亡くなりましたので、親を亡くした悲しみは痛い程分かります。私は父親とあまり仲良く無かったので、今更ながら後悔ばかりしています。

3月にはEL&Pのキース・エマーソンが拳銃自殺し、12月にはグレッグ・レイクが癌で亡くなったりと、ヘヴィな1年がようやく終わろうとしています。

・・・・・・エマーソン、レイク&パウエルでも久しぶりに聴くかな( ゜ □ ゜) 。

お悔み

母方のご逝去、心よりお悔やみ申し上げます。

実は私もすでに妹を脳腫瘍で亡くしており、諸行無常を感じました。
死に年齢は関係ない。必ずしも順番通りでないと思うと、一分一秒の重さを肌で感じるようになりました。

今回は「愛する者よ、死に候え」に何かを感じ取ろうとしっかり聴きましたし、これだけクオリティの高いアルバムをリリースし続けるとなると、どこまで成長・進化をし続けるのか楽しみなバンドでもありますね。

>ゆうていさん

ゆうていさんも親御さんを亡くされたのですか。ご愁傷様です。

当サイト/ブログにおいては「対象外」のアーティストですが、デヴィッド・ボウイやプリンスを筆頭にミュージシャンの訃報が相次いだ年でした。

ミュージシャンの死以外にもイギリスのEU脱退やアメリカ大統領選など衝撃的なニュースが多く、個人的にもかなりバタバタした年だったので、来年はもう少し平穏な年になることを願いたいものです。

>ストラディキャスターさん

お悔みありがとうございます。
妹さんという年下の親族を亡くしていらっしゃるというのはショックでしょうね。
そういう体験をされていると、たしかに生きることの意味についてより真剣に向かい合うことになりそうです。

陰陽座は作品のリリースもコンスタントですし、ツアーも精力的に回っていて、それに見合った(不足かもしれませんが))成果も付いて来ている。こういう活動の在り方というか、大げさに言えば「生き様」は一つの模範としたい、そんな風に思える数少ないバンドです。