TRICK OR TREAT / TIN SOLDERS

trickortreat02.jpg

イタリアのメロディック・パワー・メタル・バンドの日本デビュー作となるセカンド・アルバム。

この、日本人の感覚では何とも妙なバンド名は、10月31日のハロウィンに、仮装した子供たちが各家庭をまわってお菓子をもらう際に発する「決まり文句」のこと。

察しのいい方はここまでお読みになって見当がつくかもしれないが、彼らはもともとHELLOWEENのカヴァー・バンドとして02年に結成されたバンドである。

オリジナルをプレイし始めた現在もHELLOWEENからの影響は色濃く、彼らのMySpaceにある「サウンドタイプ」の説明には臆面もなく「Helloween and...Ourselves, hihihi 」と書かれている。

そう聞くと「ああ、またメロスピね」と思う方もいるかもしれないが、漢臭かったり、シンフォニックだったり、プログレッシヴな要素を備えていたりと拡散の傾向にあるこのジャンルで、ここまで「ド真ん中」のサウンドを出しているバンドは実は結構希少だったり。

バンド名も含め、ちょっとオチャラケているような雰囲気があり、「ピュア・ハッピー・メタル」などというバンド・コンセプトを聞いて、HELLOWEENのコミカルな部分(あんまり好きじゃない)だけをフィーチュアしたノーテンキなバンドなのでは…とちょっと警戒していた。

そして実際聴いてみると、冒頭のSEに導かれて始まる#2「Paper Dragon」はまさに「そんな感じ」の曲で、「ああ、やっぱり…」と落胆しかけたが、聴き進むとこれがなかなかどうして、ちゃんとワビサビを心得ているというか、適度に哀愁を感じさせたり、ドラマティックなムードを醸し出したりと、なかなか惹き付けてくる。

聴き終えての感想は、コミカルな部分を含め、カイでもアンディでもない、「ヴァイキーのHELLOWEEN」だな、というもの。

Voがかなりマイケル・キスクに似ていることもあり(かなり上手い)、否応なしに「KEEPER OF THE SEVEN KEYS PART II」を想起させる。

もちろんあれほどの凄み、完成度はないが、2部構成の大作「Tin Soldiers」のPT2など特に「あの音」をふと思わせる瞬間があって思わずグッと来る。

大手レーベル所属ではない割には音質もマトモ(欲を言えばもう少し奥行きがほしいが)だし、そしてVoを含め演奏もちゃんとしているので安心して聴ける。

そして何より素晴らしいのが、速さに頼りすぎない、スケール感のある曲を書けているということで、この手のバンドに多い露骨に他のバンドの特定の楽曲を思い出させるような「パクリっぽさ」が薄いこと。いやマジでこれはかなりの逸材なんじゃないかな。

ただ、惜しむらくはバンド名とジャケットがこれでは、日本のマニアの琴線に触れてこないだろうなぁ。
もっと「らしい」バンド名に改名して、ファンタジックなアートワークに差し替え、ついでにアルバムタイトルも「なんとかかんとかオブなんとかかんとか」みたいに大仰なものに変えればマニア騒然だったのでは。

まあ、DRAGONFORCEほど速くもなく、RHAPSODY OF FIREのように大仰なシンフォ・アレンジもなく、SONATA ARCTICAのような、むせかえるほどの哀愁もないこのサウンドは、21世紀に入ってからメタルを聴き出したような若者にとっては物足りなく響くのかもしれないが、私のような「やっぱ基本はハロウィンの『守護神伝』だね!」というような人間であれば「これぞ王道!」と感じられるはず。

ちなみに本作には同郷イタリアの名シンガー、ミケーレ・ルッピ(元VISION DIVINE)と、そしてなんとマイケル・キスク御本人がゲスト参加しており(速い曲を避けて参加しているのはやはりわざと、なのかな?)どちらも素晴らしい歌唱を披露している。

点数は控えめですが、それは今後の大化けを期待してバッファをとっておいたものとお考えください。
少なくとも今年の3分の1が過ぎた4月末現在、09年最高のメロディック・パワー・メタル作品だと思います。【84点】


◆TRICK OR TREATのMySpace
http://www.myspace.com/trickortreatband
スポンサーサイト

コメント

非公開コメント