FIREWIND / IMMORTALS

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2013年のアポロ・パパサナシオ(Vo)脱退後、ADAGIOのケリー・サンダウン・カーペンターをゲスト・シンガーに迎えてライブなどは行なったものの、その後開店休業状態が続いていたFIREWINDの約5年ぶりとなるニュー・アルバム。

所属元であった「Century Media」が2015年に「Sony Music Germany」に買収されたためか、日本盤はソニー・ミュージックからのリリースとなっている。

本作で新たなヴォーカリストとして迎えられたのは、07年のツアー時、家庭の事情で参加できなかったアポロ・パパサナシオに代わってゲスト・シンガーを務めていたへニング・バッセ(元METALLIUM)で、過去にジョイントしたことがあるという意味では順当な人選といえる。

本作の原型は、2009年にガス・Gが本作のプロデューサーであるデニス・ワード(PINK CREAM 69)と、ギリシャ戦記をテーマにしたメロディック・パワー・メタルをプレイするために立ち上げたプロジェクトで、その後ガス・GがOZZY OSBOURNEのギタリストに抜擢されたこともあって棚上げされていたマテリアルだという。

そういう、元々FIREWINDとして作曲が始まったわけではない、という事情が大きいのか、デニス・ワードが、このバンドにとって初の外部プロデューサーを迎えたことが大きいのか、もちろんヴォーカリストの交替も大きいのか、本作はこれまでのFIREWINDの作品とは一線を画する、メロディック・パワー・メタル色の強い作品に仕上がっている。

本作発表前にガス・Gがソロ・アルバムを制作、リリースしていたこともあってか、本作については「俺自身のニーズを必ずしも満たさなくてもいいから、ファンを満足させたいと思ったんだ」とインタビューで語っている。

私自身はこのバンドに必ずしもメロディック・パワー・メタルを求めていたわけでもないのだが、このバンドがプレイしていた王道感のあるHR/HMというのは、必ずしも商業的には王道ではなく、パワー・メタルのほうが市場のニーズがある、というのは事実だろう。

何しろアルバムのオープニング・トラックである「Hands Of Time」という曲名を見て、「なんだかSTRATOVARIUSみたいだな」と思って再生ボタンを押したら、モロにSTRATOVARIUSなイントロでちょっと笑ってしまいました(笑)。

新ヴォーカリストであるへニング・バッセの時にロブ・ロック(IMPELLITTERI)や森川之雄(ANTHEM)を彷彿させるアツい歌声も、こういうパワー・メタルなスタイルにマッチしている(個人的にはちょっと暑苦しさも感じるけど/笑)。

また、本作はガス・Gの出身地であるギリシャの古代戦史という、ギリシャ人にとって「とっておき」のネタをテーマにしたコンセプト・アルバムとなっており、そういう意味でも自らのアイデンティティを託した力作と言えるだろう(とは言ってもガス・Gは所詮ギター小僧、必ずしも自国の歴史に詳しいわけではなく、実際に歌詞テーマを掘り下げたのはデニス・ワードだったそうだが)。

個人的にはこういう母国の歴史をテーマにした作品を作るならドイツ人であるへニング・バッセに歌わせるのではなく、同じギリシャ人だったアポロ・パパサナシオがいるうちに作るべきだったんじゃないの、というツッコミもしたいし、パワー・メタル・バンドは掃いて捨てるほどいるのに対して、FIREWINDのような「ハード・ロック」の要素を強く宿したバンドは昨今貴重だったので、この「方向転換」を必ずしも手放しで絶賛できない思いもある。

ただ、それでも凡百のモダンなパワー・メタル・バンドに比べると、80年代以前のHR/HMの滋味は強く感じられ、ミドルテンポの楽曲やバラードにも説得力があるし、ガス・Gの古典的なギター・ヒーロー然としたソロ・ワークは流石としか言いようがなく、基本的にパワー・メタルが好きなこともあって、彼らのカタログの中で過去最高級の満足度を感じることができたというのも事実。

3月にはソロとして来日するガス・G(へニング・バッセも同行する)だが、この熱いサウンドはLOUD PARKなど大きな会場で聴きたいものである。

どうでもいいですが、タイトルの「IMMORTALS」は、日本盤タイトルである「不滅神話」みたいなニュアンスではなく、ギリシャに遠征してきたアケメネス朝ペルシアの中核をなす精鋭部隊だった「アタナトイ(不死隊)」のことだと思うのですが。【86点】

◆本作収録「Ode To Leonidas」のMV


◆本作収録「Hands Of Time」のOfficial Audio




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コメント

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No title

たしかに1曲目はティモ・コティペルトに歌わせたらもろSTRATOVARIUSですね(笑)
今作を聴いて「FIREWINDってこんなテンション高いバンドだったっけ?」とびっくりしてしまいました。
パワー・メタル好きなのでこの作風は大いに歓迎します。

Ode To Leonidasを聴いて
興味を持ったので
Amazonで早速、注文しました(笑)
前から気にはなっていたのですが
地味もしくは煮え切らないみたいな評価が多いのでパスしてました(苦笑)

>元学生メタラーさん

1曲目は完全に確信犯でしょうね(笑)。

こういうタイプの楽曲はこれまでのFIREWINDにはなく、それでいて特にファンに抵抗感を与えない新境地だと思うので、パワー・メタルのファンを獲得できそうな作風ですね。

>かつ丼さん

このバンドは確かにこれまで決め手に欠くというか中庸なイメージがあり、私も物足りなさを感じていました。

本作でもそういう部分は無きにしも非ずですが、これまでより即効性のある作風ではあるのでだいぶインパクトは強まったのではないでしょうか。

でも「THE PREMONITION」アルバムもなかなか良いですよ。

No title

ヘニング・バッセは見た目も歌唱も暑苦し過ぎで(笑)、いいアクセントになる個性だと思います。個人的にはアポロ・パパサナシオの声のほうが好みなんですが、FIREWINDの楽曲と組み合わさると残念ながら地味に聞こえてしまう・・・。
ガス・Gのソロプレイはやっぱり凄まじいし、彼の音作りはものすごく好みにストライクなのですが、相変わらずリフは地味なんですよね(苦笑)。抑揚に欠けるというか、一本調子というか・・・。
そういう意味では、パワー・メタル的な作風で疾走感とメロディを押していくのは、弱点を上手くカバーしてる感もあります。実際、聴いててダレる感じは大分無くなったと思いますし。
ただ、adoreさんの述べたように彼らのポテンシャルや希少性を削ぐ事にもなりうるので、何とも煮え切らない感情が渦巻いています(笑)。これはこれでいいんだけど、正統派のままもう一皮剥けて欲しいのが正直な気持ちです。

>kimさん

まったくもって同感です。
アポロは良い「ハードロック声」の持ち主でしたが、それだけにFIREWINDの音楽にはなじみ過ぎてしまって没個性な印象になってしまっていたように思います。

おっしゃる通りガス・Gはソロイストとしては卓越した技量とセンスの持ち主ですが、リフ・メイカーとしてはやや凡庸なので、リフが良くてナンボの王道HR/HM路線ではちょっとパッとしない感じを与えていた感は否めません。

このバンドのほかにクラシックなHR/HM路線で高いポテンシャルを感じるバンドがいっぱいいれば別にいいのですが、そうではないだけにこの路線を手放しで喜べない自分もいます(苦笑)。