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かつての「クサメタル」「漢メタル」ブームに思いを馳せて

私が大学生だった2000年前後の頃、日本で「クサメタル」および「漢メタル」のブームというのがあったんですよ(もう少し詳しく言うと1998年くらいから始まって、2001年にピークを迎えて、2003年くらいには沈静化していた)。

このブログをお読みになるような方であればご存じ、あるいはご存じなくとも想像がつくかと思いますが念のために説明しておくと「クサメタル」というのは文字通り「クサいメロディと展開を持ったメタル」のことで、「漢メタル」というのは「漢(ヲトコ)らしい勇壮な雰囲気のメタル」のことです。

広義で言うとメロデスやシンフォニック・ブラック、フォーク/ヴァイキング・メタルなども包含する用語でしたが、象徴的なイメージを担っていたのはメロディック・パワー・メタル・バンドで、メジャー所でいうとRHAPSODY OF FIREやSONATA ARCTICA、中堅どころとしてブームの層を厚くしたのがスペインのDARK MOORやフランスのHEAVENLY、そしてこのムーブメントの裏の顔として当時(バンドの実力に対して)高い知名度を誇っていたのが、イタリアのSKYLARKでした。

当時は日本におけるインターネットの普及期と重なっていて、インターネットの個人サイトを通じて草の根的に広まっていったムーブメントで、それまで良くも悪しくも『BURRN!』誌を中心としたメディア主導だった日本のHR/HMマーケットに一石を投じた動きでした。

このブームを牽引したのは今はもう閉鎖してしまった「MOONMADNESS」というサイトの管理人だったJIN氏、そしてその取り巻き的な人達が運営していた「XaMetal.net」というサイト(こちらは一応まだ存在している)で、当時日本一のメタル・レビュー・サイトだった「Castle Of Pagan」(現在はiMetalというサイト名でコンテンツを継承)でもその手のサウンドのバンドを好意的に取り上げていたことで、インターネットに日常的に触れる若年層を中心に広まっていきました。

当時全盛期だった「2ちゃんねる」のHR・HM板における「メロディック・スピード・メタル」スレッドにおいても「雷グループ」と呼ばれる愛好家たちを中心に熱心な情報交換が行われ、それら愛好家たちに導かれてイタリアのHIGHLORDのメンバーが2chに「降臨」したこともありました。

当時まだYouTubeなどはなかった代わりに、違法なアップロードによってインターネットを通じた「試聴」ができるような状況で、それがその手のバンドの人気拡大に大きく寄与しました。

私もこのムーブメントには大きく刺激を受け、ディスクユニオンや今は東京からは撤退してしまった西新宿のDISK HEAVENで、今だったら手を出さないようなマニアックな輸入盤を買いあさったものです(DISK HEAVEN、撤退したと思っていたら先月再び西新宿に復活していた!)。

なんでこんな懐古趣味的な文章を書いているかというと、今年になってやたらと当時名前を目にしていたようなマニアックなバンドの新作リリースの情報が飛び込んでくることが多く、ノスタルジーを刺激されたからです。

このMETALGATEというサイトも、このムーブメントに刺激されて生まれたサイトなのですが(ムーブメントが盛り上がっているうちにオープンすることはできませんでしたが…)正直私はあまりB級なバンドにはハマれず、その結果こういう「メロスピサイト」としては薄味なサイトに仕上がった次第です(笑)。

そんなムーブメントに対する一種のトリビュートとして、今年リリースされて「懐かしい!」と思ったバンドの新作を、MVを紹介するという形で取り上げたいと思います。

CRYONIC TEMPLE
スウェーデンのパワー・メタル・バンド。前作は2008年のようなので、実に約9年ぶりの新作リリースです。



これはかなりカッコいい。当時だったら確実に日本盤が出ていたクオリティですね。


WHITE SKULL
イタリアのパワー・メタル・バンド。1988年結成というベテランながら、日本で(ちょっとだけ)知られるようになったのは2000年前後。一時期看板だった魔女声(?)の女性ヴォーカルが脱退していたようですが(産休&育休?)、現在では復帰しています。



基本線は全然変わってません。サウンド・プロダクションが良くなった分B級感は薄れていますね。


CUSTARD
ドイツのパワー・メタル・バンド。デッサンの狂った「FOR MY KING」(内容はB級というかC級ながら結構カッコいい)のジャケットである意味強烈なインパクトを残したバンドです。

custard_formyking.jpg
とても近年のAVANTASIAのアルバムをはじめ、数多くの素晴らしいアートワークを手掛けたThomas Ewerhard氏によるものとも思えません…。



メンバーの容姿・体型含め、愛すべきMVと言えるでしょう。日本のPhantom Excaliverに通じるものを感じる…と言ったら怒られますね。


VHALDEMAR
スペインのパワー・メタル・バンド。アルバムではなくEPのリリースですが、メタルが盛んとは言い難いスペインでこのクラスのバンドが活動継続していたことが驚きです。



熱い。元々暑苦しいバンドでしたが、さすがは情熱の国のバンドというべきか…。


KALEDON
クサメタル・ブームの末期である2003年に、Voの新興宗教の信徒めいたちょっと異様な佇まいが話題となった「The New Kingdom」のMVで話題になったイタリアのパワー・メタル・バンド。



ヴォーカルが変わって随分男臭くなりましたね。これもまた普通にカッコいいです。


これらのバンドの多くは別に解散していたわけではなく、恐らくは昼間の仕事との兼ね合い上、作品のリリース・サイクルが長くなっているために4、5年に一回くらいしか新作が出ないというだけで、こうしてリリースが重なったからといってもそれは単なる偶然であり、クサメタル/漢メタルが再興してきている、というわけではないと思われます。

皆さんいい歳でしょうに、おそらくこれで飯が食えるわけではないであろう音楽活動を続けているバンドのメタル愛は凄いなあ、と感服せざるを得ませんね。

このブログでは日本盤が出ないようなマイナーなアーティストはほとんど取り上げていないので、たまにはこういうエントリーもありかな、と思って書いてみました。


今回一番驚いたのは、スペインのAVALANCH、スペイン語で歌われるメロディック・パワー・メタルの秀作としてデビュー作「La llama eterna」(1997)がマニアの間で好評を博していたバンドが、ギタリストであるアルベルト・リオンダのソロ・プロジェクト的な形となり、ベースにマグナス・ローゼン(元HAMMERFALL)、ドラムにマイク・テラーナ(元YNGWIE MALMSTEEN, RAGE, AXEL RUDI PELL他)を迎えた強力布陣となっていたこと。

地元スペインや南米ではかなり人気があるらしく、まだまだ日本からは見えにくい世界というのがあるんだな、と思わされました。

※AVALANCHが出演したテレビ番組の様子


最新作「El ángel caído」(2017)、日本のAmazonでは見つけられず…。

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コメント

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全部!

No title

VHALDEMAR!?……なんだって……知らなかった……Metal Of THe Worldの次ってことかしら? 手に入れねば……!

そういえば今さらですかノクタ復活おめでとうございますですね。私のメタル初体験であり未だにマイ・メタル史上No.1に燦然と輝き続けるバンドだけに実に嬉しいです。というか、メタル(というか洋楽そのもの)を聴き始めたのが2007年で丁度ノクタが「第八の罪」を出した年だったので、ついに今年、初めて洋楽/メタルの格好良さを教えてくれたバンドのアルバムをリアル・タイムで聴けるということで今から楽しみでしょうがないです。
当時からMETALGATEさんにはお世話になってましたので時の流れになんともいえないキモチになりますねえ。色んなバンドを教えて貰いました。
さてノクタもサンダーストーンもアイアン・ファイア(これはメンバーチェンジのごたごたかな?)も復活してこのところマイ・メタル・ライフはなかなかの充実なのですが、このいきおいで是非LEVERAGEにも復活して欲しいものです(BROTHER FIRETRIBEは割と活動してるのになぁ……)。

No title

ノクターナル・ライツが10年ぶりの新作を出すってだけでもうメロスピ厨としては感涙ものです・・・もうメロスピとはいえないですけど

まとめてお返事

>Loki Holstさん
スカ全、懐かしいですね(笑)。


>チャンさん
今日本にVHALDEMARを愛する人がいたとは…。アルバムではなくEPなせいか、Amazonでは扱ってなかったですね。

というか「METAL OF THE WORLD」の後にもう一枚アルバムが出ているようです。

2007年にNOCTURNAL RITESでメタルに目覚めたということであれば、当サイトは相性がよかったかもしれませんね。長年のご愛読ありがとうございます。


>肋骨さん
NOCTURNAL RITESを待っていた人はかなり多そうですね。
この記事で紹介したバンドはいわば日本で興味を失われたバンドたちだったりするわけですが、ノクタには10年経ってもなお失われない求心力があったということですね。

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

No title

なんという無知……確かにもう1枚「Shadows of Combat」というのが出てますね。どうもデジタル・リリースのみっぽいので、それで情報掴み損ねていたみたいです……。
最新EPもデジタルと枚数限定リリース……なのかな。「Shadows of Combat」はbandcampにあるけど最新はiTunesにしか今のところ出てないっぽいですね。フルの方はbandcampでいいとして最新作をどう買うか悩ましいですな。

当時はノクタ→ガルネリ→ハロウィン・ガンマ→キャメロット→ヘヴンズ・ゲイト……みたいな感じでMETALGATE街道まっしぐらな感じでしたね(笑)。ジューダスの「ペインキラー」初めて聴いた時あの超絶ハイ・トーンに拒否反応が出たときMETALGATEのレビュー見てほっとした想い出もありますw(いまじゃ狂おしいほど好きですが)
これからものんびりお付き合いさせていただきますのでよろしくお願いします^^

あ、今回のエントリで紹介されてたCRYONIC TEMPLEは発売前からすっげー楽しみにしてたんですが、良い出来ながら漢度/勇壮度↓でなんか妙に切なくなりました(汗)。

>チャンさん

VHALDEMARの情報なんて私もそれこそ10年ぶりくらいに触れた気分なので、無知でも何でもないと思います。

METALGATE街道(笑)。いや、日本におけるごく普通のメロスピ/メロパワ街道だと思いますが、HEAVENS GATEにまでたどり着いたのはちょっと珍しいですね。

「Painkiller」は、大抵の人は最初は「うわっ、何じゃこりゃ」と思うのですが、メタルという音楽に対する免疫みたいなものができてくるとメチャクチャカッコよく聴こえるんですよね。本当にマジックのある曲だと思います。

CRYONIC TEMPLE、確かに漢度は下がってますね。北欧っぽい感じで(実際北欧のバンドですが)、個人的には好きなタイプの音ですが。

No title

2ちゃんねるのHR/HM板界隈の話もあるような(笑)
あの時はメロスピブームだったからいまいちコテコテなメタルに乗れなかったぼくには肩身が狭いものがありました
HR/HM板で発見されたコルピクラーニは出世できましたがSKYLARKはイマイチ出世できませんでしたね
と言っても自国や欧米での人気具合は知らないのですが

>人さん

漢メタルはコテコテなメタルですが、SKYLARK的なメロスピというのはコテコテなメタルのある意味対極にあるもののような気がします。

いずれにせよああいう音に馴染めないという人にとってはキワモノが流行っているように見えたかもしれませんね。

KORPIKLAANIは自国を中心に欧州ではそこそこ人気があるようですが、SKYLARKはさっぱりみたいですね。

ネットに疎いので

そういう流れがあった事を知らずに、何となく当時、今までとちょっと違うクサメタル人気があった認識があり、何となくその辺のバンドを聞いてました。
だからこの文章で色々腑に落ちて、面白かったです。

>たまさん

たしかにそれまでとちょっと違う感じがありましたよね。
それは新鮮な感じというか、どんなバンドが出てくるのかわからないワクワク感というか。最近のバンドは客観的には当時のバンドより高品質なものが多いと思いますが、そういうワクワク感に欠ける気がします。

No title

初めまして。
以前より拝見しておりましたがこのたびBBSに初めて書き込みさせていただきます。

私もメタル音楽を聴き始めたのが1991年ぐらいの高校入学ぐらいだったので同じような世代なのかなと思います。
嗜好が似ているのと端的でとてもわかりやすい文章の為、うなづきながら何度も読んでしまいます(笑)
今回紹介されているバンドはどれも懐かしい気持ちでいっぱいのバンドです!
CUSTARDがうれしいです!新曲はスラッシーでかっこいいですね。

これからも良質なレビュー、コラム等
たのしみにしております。

>みさごさん

はじめまして。BBSではなくコメント欄ですが(笑)。

1991年に高校入学ということは、私よりちょっと年上ですね。

そこから聴き始めて今なおCASTURDをカッコいいと思えるということは、私同様結構重症ですね(笑)。

最近はちょっとドラクエにハマっていて更新が滞っていますが(笑)、クリアすればまた更新すると思いますので、気が向いたらご覧いただけると幸いです。

No title

とても楽しいレビューありがとうございます。
CUSTARDのpvを見て「ド・・ドワーフ!?」と衝撃を受けました。
さすがファンタジーが似合うはずですねえ、ヨーロッパの方は(←褒め言葉)
そしてVHALDEMARのpvはあまりの熱さに思わずモニターから顔が引けました。おかげでイヤホンが抜けそうになりました。

No title

コルピクラーニは良く聞いてましたね。
ウォッカ、ウォッカって友人と騒いでました(笑)

イタメタも聞いたけど、やっぱりドイツが好きで、ATTACKとかABRAXASとか、好きでしたねぇ。
ちょっと路線ずれるけどSUBWAYとか、SAXが入っててよくわからないサウンドでしたけど、今でも手放さず持ってます(^^ゞ

>なな吉さん

CASTURDのPVは、イケメン/美女が演じていない所がある意味リアリティがありますね(笑)。

VHALDEMAR、イヤホンが抜けそうになるほどのアツさを感じさせるとは、メタルとしては「勝ち」ですね。

>珍獣メガネコアラさん

ATTACKとかABRAXASの名前が出てくるあたりで同世代を感じます(笑)。

SUBWAYは結構作曲センスのある良いバンドだったと思います。

こんばんは

KALEDONなんて懐かしいですね。イタリアものはよく聞いた覚えがあり、ここに出ていないSKYLARKなんて演奏力が低いのにクセになりましたね(笑)。

あと、返信見ちゃったけどドラクエやるんですね(笑)。そういうイメージがなかったですが、同世代だと再確認しました。私はファイナルファンタジー15を買いましたけどね(笑)。

http://www.jp.square-enix.com/ff15/

むだい

雷グループの名前を久々に聞いたっす。
最終的に何人いたんでしょうかね。
ヘッコウィンとか唐突に思い出しました。
終わり。

>ストラディキャスターさん

SKYLARKは私も一時期よく聴きました。
ここに挙げたバンドと違って全くスキルアップしないある意味不思議なバンドでしたね(笑)。

もちろん世代ですからドラクエもFFも大好きですよ。といってもドラクエは5まで、FFは6までしかプレイしていないのですが(要は当時プレステを買わなかった)、今回たまたまなんかピンと来て買ったドラクエ11は素晴らしく面白かったです。

長いことゲーム会社の広告を担当していたのでゲーム自体は結構ちょこちょこやっていたのですが、100時間以上もプレイするほどハマったのは初めてかもしれません。

>殺村凶子さん

雷グループは私も久々に思い出しました(笑)。
今は皆さんどうしていらっしゃるんでしょうね。まだメタル聴いているのでしょうか。
最終的に何人いたのかは当時でさえよくわかりませんでしたが。

HELLOWEENもなぜかヘッコと呼ばれていましたね。何故そう呼ばれていたのか由来は知らないのですが。


お久しぶりです

コメント欄を眺めてたら、唐突にSUBWAYの話題が出て驚きました。こんなマイナーなバンドを(失礼)憶えてらした方がまさか2名もいらっしゃるとは^^;⁉️自分の場合は当時ドリーム・シアターのイメージズ アンド ワーズにハマっていて、アナザーディにサックスが使われていたので、SUBWAYに興味を持ち購入しました(笑)。

>ゆうていさん

SUBWAYのバラード「Hear You Cry」は当時やはりDREAM THEATERの「Another Day」を引き合いに出して語られていた記憶があります。どちらも名曲ですね。

サックスがある必然性は感じませんでしたが、特に違和感もなかったので、そういう意味では音楽性自体はいたってオーソドックスでしたが、結構珍しいセンスを持ったバンドだったと思います。