ARCH ENEMY / WILL TO POWER

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前作『WAR ETERNAL』はメロデスの傑作と言っていい良質なアルバムだった。前々作『KHAOS LEGIONS』 が(彼らにしては)地味な仕上がりだったのは、人気フロントマンだったアンジェラ・ゴソウからアリッサ・ホワイト=グルーズへのVo交代をファンに納得させるための意図的な仕業だったのではないかと勘繰ってしまうほどに…。

初代シンガー、ヨハン・リーヴァを迎えて初期曲のみをプレイするBLACK EARTHでの活動を挟み、アリッサ・ホワイト=グルーズ加入後第2作目となる通算10作目のフル・アルバム。

#1「The Race」は、こりゃまたずいぶんと単刀直入に来ましたね、という感じの怒涛のスラッシュ・チューン。思わずアタマを振らずにいられない、問答無用のカッコよさ。

その後、#2「Blood In The Water」、#3「The World Is Yours」、#4「The Eagle Flies Alone」と、ヘヴィだがモダンではないギター・リフとメロディアスな「アモい」リード・ギターが絡み合う実に彼ららしい曲が立て続き、個人的には彼らに求めているものがバッチリ提供された満足感に浸ることができた。

そして#5「Reason To Believe」は、なんとアリッサのノーマル・ヴォイスによる歌唱をフィーチュアした、バラードと呼んでもいいような曲。以前インタビューでマイケル・アモット(G)はこのバンドではノーマル・ヴォイスによる歌唱は取り入れない、というようなことを言っていたような気がするが、どういう心境の変化なのか。

まあ、マイケルが忌避していたのはメタルコアのような「リフはヘヴィなのにサビで突然ポップス」みたいな方法論であって、ノーマル・ヴォイスによる歌唱そのものを嫌悪していたわけではないということですかね。

まあ、SPIRITUAL BEGGERSは全編ノーマル・ヴォイスな訳で、そりゃそうですね。実際、バラードといっても決して甘口な売れ線曲や、北欧のバンドにありがちなトラッド/フォーク路線ではなく、ブルーズの影響さえ感じられる70年代ロック・バラードといった趣な曲。個人的には甘口バラードやフォークっぽい曲の方が好みだが、これはこれでアルバムのアクセントとしては悪くない。

そして#6「Murder Scene」、これは個人的にはストライクゾーンど真ん中。このサビで鳴り響いているようなリード・ギターが大好物なんですよ、僕は。

イントロ的な小曲インストの#8「Saturnine」に導かれる#9「Dreams Of Retribution」はまるでSTRATOVARIUS(と言ってもティモ・トルキ在籍時ではなく近年の)のような、彼らにしては珍しいほどストレートに疾走する曲で、KeyのアレンジまでSTRATOVARIUSっぽい…と思ったらゲストでイェンス・ヨハンソン(STRATOVARIUS)がプレイしていました(笑)。ええ、STRATOVARIUSの大ファンである私はもちろんこの手のスピード・チューンはツボです。

アルバムのエンディングとなる#11「A Fight I Must Win」は、クライマックスに相応しい劇的なイントロと、80年代HR/HM的なダシの効いた展開が美味しい楽曲で、充実のアルバムの幕切れに相応しいスケール感のある楽曲。

全体的にリフやアレンジが現代的だった前作に比べるとシンプルかつわかりやすい作風で、ひょっとすると若いメタル・ファンには前作の方がエクストリーム・メタル然としていてカッコいい、と感じられるかもしれないが、私のようにこのバンドの魅力は70年代、80年代のクラシックなHR/HMの要素が強く感じられることだと思っている人間にとっては過去最高級の満足度が得られるアルバムである。

なお、本作の日本盤は本編のラストがオリジナルの海外版では1曲目のイントロダクションとなっている「Set Flame To The Night」になっているのだが、アウトロとして使うにはあまりにもイントロっぽい曲で、なぜこの曲順に変更したのかは謎。「The Race」のインパクトを最大化したかったからなのか、あるいはまさか日本盤ボーナス・トラックであるPRETTY MAIDSのカヴァー、「Back To Back」のイントロにしたかったから、じゃないですよね?【90点】

◆本作収録「The World Is Yours」のMV


◆本作収録「The Eagle Flies Alone」のMV


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コメント

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このバンドとBODOMは、メロデスとして邪道という扱いがされていた時代がありましたが、
今や、エクストリーム・メタル・シーンのトップですね!

No title

ほぼほぼ同じ感想でホッとしました(^^♪
イエンスのゲスト参加は嬉しいですね。
来日公演、きっとするでしょうから楽しみですね!

ヘビロテ

ただいまヘビロテ中です。

頑固一徹なマイケル・アモット(G)が多彩な音楽性を示したという事実だけでビックリ仰天です(笑)。

まとめてお返事

>Loki Holstさん
実力的には常にトップ・バンドだったと思いますが、今作はドイツやフィンランドのチャートでTOP3入りしたそうなので、名実ともにトップ・メタル・バンドと言っていいでしょうね。


>珍獣メガネコアラさん
なぜホッとするんですか?(笑)
世界的に人気が上がっている上にラウパのアモット枠がなくなったので頻度は下がると思いますが、きっと来日はするでしょうね。


>ストラディキャスターさん
これまでもこの手のジャンルのバンドの中では比較的音楽性に多様性があるほうだと思いますが、ノーマル・ヴォイスの導入は確かに驚きましたね。

私もヘビロテを誘われています。

No title

adoreさんと同世代かと思いますが、今回初めてこのバンドのCDを購入しました。
女性のデスVoがどうしても苦手でして、、
ただ、kamelotの公演でアリッサさんを観てあまりに素敵だったので、前作から気にはなっていました。

私もストラト大好きですので、Dreams Of Retribution、ヤバいです。
てか、月並みな言葉ですが、アルバム通して捨て曲なしですね。

食わず嫌いな自分を後悔しました。。
来日したら絶対行きます。

>とうもろこしさん

私はデス声になってしまうと男性でも女性でも聴覚上はほとんど変わらないので、ある程度のレベルに達していれば性別は気にならない、というか区別がつきませんね(笑)。

KAMELOTにおける「白アリッサ」とこのバンドにおける「黒アリッサ」はほとんど別人ですが(?)、結果としてこのバンドの魅力に気付いていただけたのであれば何よりです。

ぜひヨハン時代の名盤「BURNING BRIDGES」と、アンジェラ時代の名盤「WAGES OF SIN」もどうぞ。

彼らはライブ・パフォーマンスも素晴らしいですよ!

No title

Amazonでは前作のほうが良かったとの意見も多いようですが、メロディ派の自分は今回のアルバムのが好きです。
特にイェンスが参加したネオクラシカルメタル風の#9は素晴らしいですね!
ただアーティストの意向を無視した曲順は許せません。この件に関しては「Back To Back」のイントロとして使おうとした、で間違いないでしょう(笑)

ちなみに「Saturnine」は#9のイントロというよりは#7のアウトロではないでしょうか?
シームレスに繋がっているので。

>元学生メタラーさん

前作の方が好き、という意見もわからなくはないですが、私も今作のほうが好きですね~。
よりストレートなHR/HMらしさが感じられます。

「Saturnine」もイェンス・ヨハンソンが参加していたので、てっきり「Dreams Of Retribution」のイントロかと思っていました。

でもたしかにつながっているのは#8「First Day In Hell」ですね。

イントロの件については、発案者である宮本氏はやはり「The Race」でガツンと始めたかったから、と言っていたようですね。まあ狙いはわからなくもないですが、ネット上の評判を見る限り不評な感じですね(苦笑)。