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BEAST IN BLACK / BERSERKER

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バンドの創設者であり、作詞・作曲・アレンジ・プロデュースのほぼ全てを担う音楽的な中心人物だったにもかかわらず(だからこそ他のメンバーの不満が募り)BATTLE BEASTを解雇されたアントン・カバネン(G, Vo)による新バンドのデビュー・アルバム。

いや~、2017年も終盤になってようやく出てきましたね、今年のブライテスト・ホープ(この言葉、『BURRN!』誌がなかったら一生使うことはなかっただろうなあ)と呼ぶべき存在が。

まあ、基本的にはある程度のレベルで活動実績がある人たちの集まりで、ド新人のバンドではないので新人扱いは不適切かもしれませんが、なんというか、新鮮味があるんですよね、サウンドと存在感に。

メンバーはアントンの他、同じフィンランドのメロディック・パワー・メタル・バンド、MERGING FLAREの中心人物であり、昨年にはU.D.O.のメンバーとして来日もした(現在は脱退)、カスペリ・ヘイッキネン(G)、アントンが2015年から掛け持ちで在籍しているハンガリーのパワー・メタル・バンド、WISDOMのマテ・モルナール(B)、BATTLE BEASTのヤンネ・ビョルクロト(Key)とヨーナ・ビョルクロト(G)兄弟が在籍していたBRYMIRのメンバーだったサミ・ハンニネン(Dr)、そしてギリシャのメロディック・メタル・バンド、WARDRUMのヤニス・パパドプロス(Vo)という、メロディック・メタル系のマニアであればなんとなく知っている顔ぶれ。

当初「BEAST IN BLACK」いうバンド名のみが発表されたとき、明らかに自らを追い出したBATTLE BEASTを意識したバンド名に、その意識がサウンドにどのような形で反映されるのか、期待と不安が入り混じる気持ちがありました。

かつてRHAPSODY OF FIRE在籍時のルカ・トゥリッリが一時ブラック・メタルにハマり、メロディック・ブラック・メタルのプロジェクトを企画していた(結局実現はしなかったが)時に用意していたバンド名が「RHAPSODY IN BLACK」というもので、それはまあアメリカのクラシック/ジャズ作曲家、ガーシュウィンの名曲「Rhapsody In Blue」のパロディなわけですが、ある意味そういう「エクストリーム・メタル・サイド」への傾倒を示すサウンドになるのではないかという危惧(それはそれで聴いてみたい気分もあったので危惧という言い方は適切ではないかもしれないが)があったわけです。

アントン脱退後のBATTLE BEASTからは明らかに、デビュー当時に色濃く存在したACCEPTを思わせる鋼鉄成分が失われてしまったので、もしかするとそういうメタリック・サイドが強く押し出されたサウンドになるのかも…と。

しかしそれは杞憂というか深読みし過ぎで、本作で展開されているサウンドはBATTLE BEASTで展開されていたものとほぼ同じものであり、しかもよりエネルギッシュだ。

そのエネルギッシュな印象に、シンガーのヤニス・パパドプロスの、マイク・ヴェセーラ(LOUDNESS, YNGWIE MALMSTEEN他)やユーリ・サンソン(HIBRIA)を思わせる熱い歌声による貢献が大であることは間違いない。

そして驚いたのはそのヤニスの歌唱の幅の広さで、彼が熱い歌声を持っていることはWARDRUMで知っていたが、本作ではグロウルめいた歪んだ歌声から、最初はゲスト女性シンガーによるものかと思ってしまったほどの女性的な艶のあるメロウな歌声まで、まさに「七色の歌声」という形容が相応しい素晴らしい歌唱を聴かせてくれる。こんなに器用な人だったとは。

ここ日本ではあまり認知されていないが、フィンランドを代表するテクニカルな速弾きギタリストの一人であるカスペリ・ヘイッキネンによるシュレッド・ギターも、サウンドをよりスリリングなものにしている。

BATTLE BEAST時代もたびたび取り上げていた、アントンのフェイバリットである、欧州でも高い人気を誇る日本のコミック『ベルセルク』の世界観もこれまで以上にフィーチュアされており、ACCEPTを彷彿させる剛強なメタル・ナンバー#5「Zodd The Immortal」なんてキャラ(ゾッド)の名前がそのまま使われているし、続く#6「Fifth Angel」も、原作を読んだことがある人であれば、それが第五のゴッドハンド(使徒)、フェムトとなったグリフィスを意味することはすぐに察しがつくことだろう(ちなみに私も『ベルセルク』は大好きです。作者が生きているうちに完結する気がしないけど)。

そもそもアルバム・タイトル自体が『ベルセルク』と同じ語だし、バンド名の「BLACK」の由来も、『ベルセルク』の主人公、「黒い剣士」ガッツであろうことは間違いなく、逆にここまで特定の作品に寄せていいの? って余計な心配さえしてしまいます(笑)。

ジャケットの獅子頭の戦士はBATTLE BEASTのデビュー・アルバムからアントンが在籍していたサード・アルバムまで多少姿を変えてジャケットのアートワークに描かれていたものと同じであり、BATTLE BEASTの最新作ではアントン同様ジャケットから追放されていたことを考えると、アントンにとってこれは自身の象徴であり、バンドにとってはIRON MAIDENのエディのような存在になるのだろう。

いや~、しかし本当に隙がない。バンド名を冠したオープニング・トラックの「Beast In Black」の、アントン自身によるものと思われる「バーサーカー!」というスクリームからしてインパクト絶大だし、続くリード・トラックとなった「Blind And Frozen」は琴線を掻き毟るかのような素晴らしいコーラスがフィーチュアされた名曲。その後もフック満載なメタル・チューンが立て続き、前述の「Zodd The Immortal」のようなゴリゴリした曲から、BATTLE BEASTでもやっていたディスコティックなダンサブル・チューン#7「Crazy, Mad, Insane」のような他のバンドがやらないような異色の(しかし中毒性のある)曲、EUROPEのあの有名曲のオマージュと思しき#9「Eternal Fire」までバラエティ豊かな楽曲をラインナップしつつ、最後は北欧ならではの哀愁に満ちたバラードの#12「Ghost In The Rain」で幕を閉じるアルバム構成も美しい。

うん、序盤の文章ちょっと訂正。これは今年のブライテスト・ホープであるだけじゃなく、単純にベスト・アルバムですわ。既に決定している『SUOMI FEAST 2018』での来日公演もぜひ観に行きたいです。というかLOUD PARKにもぜひ出演してほしい。【91点】

◆本作収録「Blind And Frozen」のMV


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コメント

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Until Rainのファンだったので、ヤニスが有名になるキッカケが訪れたのが嬉しいです!

No title

wardrumのAwakeingが前作に比べていまひとつだなあと感じてしまっていたのですが、これはいいですね!買います!

>Loki Holstさん

WARDRUMではなくUNTIL RAINとはマニアですね(笑)。

どんなに実力があっても所属しているバンドがマイナーだとなかなか評価されるのは難しいだけに、このバンドが有名になって、ヤニスにも実力に相応しい評価がなされるといいですね。

>ばきゅらさん

WARDRUM、カッコいいことは確かなのですが、ちょっとフックが弱いかな、と感じることもありますね。

そういう意味だと本作はフック満載、ほぼ間違いなく楽しめると思うので、ぜひ買って応援してあげてください。

今年のベストアルバムです!

久々にadoreさんのレビューで年間に90点台を2回以上見た気がします。
いやー、全曲シングルカットできるくらいアルバム全体通してスキがないですね!
「Band Of The Hawk」「Iron Hand」系の#3や#7のような曲にアントンのセンスを感じます。

ブライテストホープといえば今年はCRY VENOMやKEE OF HEARTS、CYHRAといった今後が楽しみなバンドが多かったですね。

>元学生メタラーさん

今年は当たり年だったと思います。
特に後半、次々と良いアルバムに出会えてハッピーでした。

本作は本当に隙がないです。楽曲のクオリティ、バラエティ共に文句なしです。

KEE OF HEARTSやCYHRAのようなキャリア組だけでなく、CRY VENOMのようなフレッシュなバンドが次々と出てきてくれるといいのですけどね。

No title

背景白だと眩しい。色を變更してほしい。

>myloveS.I.Sさん

デバイス/モニター側の設定でご対応お願いします。