陰陽座 / 覇道明王

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密教における五大明王の中でも恐らく最も有名であり、仏教における戦闘部門(?)代表というべき存在である不動明王と、儒教の説く「武力による支配」を意味する覇道を掛けたタイトルを冠した14作目のフル・アルバム。

そのタイトルに違わず、本作は彼らのアルバムの中でも1、2を争う攻撃的な作風である。

陰陽座はそのバンド名の通り、「陰」「陽」どちらの要素も備えたバンドであるが、その陰陽のバランスは作品によって微妙に異なり、絶妙に中庸を行くものが多い中、どちらかと言えば「陰」な印象の作品と敢えて言うなら「陽」な印象の作品(もちろん能天気に明るいということではない)、というのが存在する。

前作はヴォーカル・オリエンテッドな作風だったという意味で「陽」な印象の作品だったが、本作はヘヴィさやアグレッシブな面を強調した「陰」サイドの作品と言えるだろう。

再生を開始するなり緊張感を掻き立てる、不穏なピアノの調べで幕を開けるオープニング・ナンバーの「覇王」はこのバンドには珍しい、ややエクストリーム・メタルのエッセンスが強い楽曲で、芸風が確立されているがゆえに印象が似通ってしまいがちな彼らの作品群において本作の個性を強く主張する。

これはこれでカッコいいが、全曲こうもダークでヘヴィだったらどうしよう、と不安になるような彼らの「陽」サイドを愛するようなファンを2曲目の王道HMチューン「破邪の封印」ですぐに安心させるあたり、瞬火はさすがに計算高い。

パワー・メタリックなスピード・チューンは#8「飯綱落とし」くらいだが、それ以外の曲もアップテンポなものが多く、ダーク&ヘヴィでありつつスピード感はアルバム全体を貫いており、勢いよく聴くことができるのはメタル・アルバムとして非常に優秀。

一方でバラードはなく、長尺曲や民謡っぽい泥くさい曲やあからさまにキャッチーな曲もないので(シングル曲の「桜花忍法帖」もアルバム用にヘヴィにリミックスされている)、彼らの魅力を陰陽両面に渡るバラエティ感にあると感じる向きには、やや一面的というか一本調子に響くかもしれない。

しかし、恒例のオマケ的「アンコール・チューン」である「無礼講」まで含めても前10曲、53分程度にまとめたコンパクトな構成が単調さを感じさせることなく一気に聴かせてくれる、という感想を持つリスナーの方が多いに違いない。

ある意味、陰陽座の持つ楽曲パターンの中でもクセが強いものや、ポップで軟弱に響く可能性のある曲を排したことで、現代の一般的なメタル・ファンにとっては最も普遍的な魅力を持つメタル・アルバムと言えるかもしれず、『BURRN!』誌における96点という高評価はそういう点を評価したものではないかと思われる。

私自身はと言うと、本作で一番気に入った曲はサビの歌詞の「腐乱せし尊厳」と「触らす韻文で」の箇所が英語っぽく聞こえる、翳りつつもキャッチーな#6「腐触の王」であるという人間なので、もう少し彼ら独自のアクの強さが出ていてもよかったのに、という気がしているのが正直な所。

とはいえ、本作が極めて優れたメタル・アルバムであることに異論の余地はない。【87点】



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コメント

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No title

魔王戴天に近い感じですかね?

No title

たしかに「腐触の王」は「喰らいあう」以上に英語に聞こえますね。

瞬火さんは今も昔の楽曲のリメイクに否定的なスタンスなんですかね?今の実力で初期の作品リメイクしてくれないかな。

>人さん

狙い所としては近いのかもしれませんが、アルバムとしての統一感と、サウンドから漂う風格という点で本作の方がだいぶ優れていますね。

>名無しのメタラーさん

あの英語っぽさは、瞬火のやることですからきっと確信犯なのでしょうね。

今でもこれくらいのペースとクオリティで新曲を書けるのであれば、過去の曲をリメイクする意味を見出せなくても仕方ないでしょうね。