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GHOST / PREQUELLE

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年内最後のレビューは、メタル界隈における今年最大の話題作のひとつであるGHOSTの最新作。

本国スウェーデンの他、ノルウェー、フィンランドという北欧3国では軒並みチャート1位を獲得、ドイツで2位、アメリカで3位、イギリスでもTOP10入りと、今年最もチャート的な成功を収めたメタル作品です。

しかしそんな話題作もここ日本では国内盤のリリースさえなし。

デビュー当時はかなりレトロ・サイケなアンダーグラウンド感を醸し出していた(何しろデビュー作のリリース元はリー・ドリアンの『Rise Above』だ)が、前作『MELIORA』(2015)で一気にメジャー感を増し、商業的にも(それ以前から成果を出していたが)一気に飛躍、2016年にはグラミー賞の「ベスト・メタル・パフォーマンス」部門に輝き、名実ともに国際的トップ・メタル・バンドとなった。

一方で、昨年2017年に「Nameless Ghouls(名もなきグールたち)」と呼ばれるバック・バンドのメンバーからギャラや待遇の問題で訴えられ、それまで「パパ・エメリトゥス」と架空のキャラクターを演じていたヴォーカリストが公開された訴状などからトビアス・フォージという、初期CRASHDIETのメンバーでもあった(!)人物だということがバレてしまうというスキャンダルが発生したものの、特に人気に悪影響は及ぼさなかった模様。

やはりこのインターネット時代、バンドのキャラ設定などというものがエンターテインメントに過ぎないということが理解できないほどリスナーもナイーブではない、ということでしょうか。

事件の影響か、トビアス・フォージがパパ・エメリトゥスというキャラクターを捨て、新たに「コピア枢機卿」というキャラクターを演じる本作も、前作の流れを受け継ぎ、アンダーグラウンド臭をやや抑えた、持ち前のポップ・センスを生かしたキャッチーでオールド・ファッションなヘヴィ・メタル・サウンドを展開している。

いやでもホント不思議なんですよ、このバンドが売れてることって。日本にいるとさっぱり理解できません。

SLIPKNOTとかDISTURBEDとかAVENGED SEVENFOLDなどは、個人的な好みとは関係なく、売れている理由というのは、それまで売れていたものの文脈を見ればなんとなく理解できるんです。

しかし、このバンドについては、音楽的には完全にNWOBHM時代のHMで、アメリカで人気のあるオルタナティブ・メタルはおろか、スラッシュ・メタルの要素すらありません。バンドのイメージに反して(?)デス・メタルやブラック・メタルなどのエクストリーム・メタル的な要素もなし。

スウェーデン出身ということも踏まえれば、私が大好きな(しかし英米でほとんど人気のない)欧州メロディック・メタルに含まれる音楽性と言っても過言ではありません。

それがこのローマ法王パロディみたいな設定だけでここまで売れるのか(イタリアやフランス、アイルランドなどカトリックが強いエリアでは全く売れていないようなので、ポイントはやはりそこなのではないでしょうか)? 

現地の人に聞いたわけではないので確信はありませんが、これはいわゆる「メタル文脈」で売れたというよりは、BABYMETALのような「突然変異」なのではないかと考えています。カギは「意外性」と「わかりやすさ」の両立でしょうか。

いずれにせよ、このバンドがビジュアル含めて表現する反キリスト的な世界観と、意外なほどキャッチーな楽曲のマッチングが、キリスト教圏の人たちにとっては斬新かつ面白かった、ということなのではないかと。

本作の楽曲も非常にメロディアスかつキャッチーで、コンパクトさを増したこともあって、ある意味「ポップ・ロック」とさえ言えてしまう親しみやすさがある。

個人的には、このバンドの持つメロウなムードというのはあまりメタルに求めるものではなく、もっと熱いメタルが趣味なのですが、楽曲のクオリティの高さは認めざるを得ない、という感じですかね。

このバンドの成功を見ると、モダンな要素のないクラシックなヘヴィ・メタルでも売れる可能性がある、と考えることもできる一方、普通に音楽をやっているだけではクラシックなヘヴィ・メタルは売れない、ということがわかってしまった観もあり、個人的にはやや複雑な感情をこのバンドに対して抱いています。【85点】






ちなみに、「Dance Macabre」のこのリミックスは80年代ユーロみたいで結構お気に入りです。

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