BEAST IN BLACK "FROM HELL WITH LOVE" アルバム・レビュー

メイン・ソングライターとしてBATTLE BEASTを母国フィンランドのチャートで1位に持っていくほどの成功に導きながら、他メンバーとの不和によって追放されたアントン・カバネン(G, Vo)率いるBEAST IN BLACKのセカンド・アルバム。
前作はキャッチーな曲からメタリックな曲まで、とにかく楽曲が素晴らしく、ある意味「新人バンド」ながらフィンランドでは28週に渡ってチャート・インする、メタル・バンドにしては珍しいロングセラーな売れ方で最高7位を記録。
そして本作はフィンランドでは初登場1位、欧州最大のマーケットであるドイツでは、前作はかろうじて57位に1週ランクインするのみだったが、曲の良さが浸透した結果か、本作は初登場6位を記録するヒット作となっている。
そんな本作も、そのチャート成績に相応しい佳曲揃いの充実作に仕上がっている。キャッチーなヘヴィ・メタルが好きな人であれば、先行シングルだった#3"Sweet True Lies"くらいまで聴いたあたりで無条件降伏を余儀なくされることだろう。
もちろん3曲目以降も素晴らしく、どの曲もサビが強烈に頭に残り、曲名リストを見ただけでどの曲か思い出せるインパクトの強い楽曲が最後まで続く、近年では珍しいほどに楽曲の印象が強いアルバムである。
いや、近年の、特に大手レーベルからリリースされるHR/HM作というのは、それほど有名なバンドでなくとも楽曲、演奏、サウンド・プロダクションとも、ひと昔前に比べるとはるかに平均クオリティが高く、大外れをつかまされることはほとんどないのだが、このバンドについてはそういう「欠点が少ない」作品とは一線を画す、楽曲の良さが否応なしに心に刻み込まれる力がある。
人によっては「ポップ過ぎる」「80年代的過ぎる」と感じるかもしれませんが、そういう人でも本作に収められている楽曲を2回目耳にした時、そのサウンドが記憶と心に刻み込まれていることに気が付くことでしょう。
私が学生だった20年前にメタルを聴いていた友人の多くはもう積極的に新しいメタルを聴くことはなくなっている(当時好きだったバンドを聴くくらい)が、そういう友人に「なんか最近良いバンドいるの?」と聞かれた時に、久々に「いるよ!」と自信を持って薦められるバンドが出てきたな、という感じです。
YouTubeのコメントで「JUDAS PRIEST meets ABBA」という表現を目にしましたが、それはこのバンドの音楽を完璧に表現する、とてもわかりやすい表現だと思いました。超キャッチーなメロディを備えつつ、決して軟弱にならない鋼鉄感(って何だ)を備えたメタル、そんな稀有なサウンドがここに実現しています。
現在HR/HMは超エクストリームなサウンドからAORみたいなサウンドまで多様化・細分化が極限まで進んでいますが、このバンドの音楽には一定のヘヴィさに耐性がある人であれば皆わかる魅力があるのではないでしょうか。聖飢魔IIのファンならニヤリとしてしまうアルバム・タイトル含め、オススメです。【89点】
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コメント
すでにヘビロテ中
だってそのおかげでこんな素晴らしいアルバムが聴けるんですから(決してケンカ売ってるわけではなくて)
suomi feast 2019のためサビの歌詞を覚える今日この頃ですよ~。
私はアルバムの最後のno surrenderがすごく好きですなあ。B I Bには降服しまくってますけど。笑
2019-03-31 19:21 なな吉 URL 編集
>なな吉さん
これだけサビがキャッチーだと、ライブでもコーラスのし甲斐がありそうです。
2019-04-01 02:07 adore URL 編集
アントン恐るべし
個人的には前作のが好きでしたが、今年はAVANTASIAかこればっか聴いています。
ライヴで映えそうな曲ばかりです。
adoreさんに超おすすめのバンドがあります!
3/20に日本盤が出たばかりのORION'S REIGNというシンフォニック・パワー・メタルバンドなのですが、Vo、演奏、曲のクオリティいずれもかなりハイレベルです。(ゲスト陣も豪華!)
イェンス・ボグレンがミックスしているので音質も良いです。
2019-04-03 13:20 元学生メタラー URL 編集
>元学生メタラーさん
ORION'S REIGN、もちろんチェックしてます。おっしゃる通りなかなか良いのですが、個人的な基準からするとちょっとまだB級かなという印象です。
まだメンバーは若そうなので、次作以降に期待ですね。
2019-04-04 02:55 adore URL 編集