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MYRATH "SHEHILI" アルバム・レビュー

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ここ日本でもかなり話題になった前作"LEGACY"リリース後、LOUD PARK 16、さらに2018年4月に行なわれたPagan Metal Horde vol.3と、2回も来日公演を行なったチュニジアのプログレッシヴ・メタル・バンドの通算5作目となるフル・アルバム。

DREAM THEATERやKAMELOTなどと比較されるメロディックなプログレッシヴ・メタル・サウンドに、彼らのルーツであろうアラビアンなメロディ・センスを融合したサウンドの基本線はもちろん変わることなく、前作で一気に増したポピュラリティを順当に受け継いだ作品に仕上がっている。

ただ、特にアルバム後半ややメロウな歌モノ路線の楽曲が多かった前作に比べると、彼らの本質であるプログレッシヴ・メタルとしてのエッジが気持ち強まった感があり、個人的には本作の方がメタル・アルバムとして「締まって」いると感じる。

前作に収録されていた、恐らくキャリアを代表することになるであろう名曲"Believer"は、クラウドファンディングによって制作費を調達して作られたMVがまた素晴らしかったが、本作からのMV曲"Dance"や"No Holding Back"はその"Believer"のMVのストーリーを継承するものとなっており、もはやハリウッド映画ばりのスケール感を感じさせる。

こういうMVを観ているからこその先入観もあるかもしれないが、彼らの音楽は決して長尺ではなく、むしろプログレッシヴ・メタルとしては異例なほどにコンパクトであるにもかかわらず、イマジネーションを刺激するドラマ性を感じさせ、聴くだけで違う世界に連れて行ってくれるのが素晴らしい。

そしてその世界観に雰囲気と説得力を与えているザヘル・ゾルガティのヴォーカルも、欧米のプログレッシヴ・メタル・バンドにはあまり見ないタイプのエモーショナルな熱唱によって感情に訴えてくる。

しかしこんな凝ったMV、ひと昔前だったらそれこそ何百万枚もアルバムを売るようなトップ・バンドしか作れなかったはずなのに、北アフリカのマイナー・バンド(いや、この世界ではそこそこ有名ですが、一般レベルでは無名と言っていいでしょう)が作れてしまうんですから、すごい時代になりましたね。

チュニジアはアフリカと言っても地中海を隔ててヨーロッパに接していて、旧宗主国であるフランスとの縁は今でも強い欧州色の強い国なのであまり辺境扱いするのは不当なのですが、とはいえ恐らくかの地ではインターネット普及以前にはメタルについての情報はほとんどなかったはずで、そういう意味で「メタルが始まったばかり」のエリア。

そういうエリアは世界中にまだまだたくさんあり、そういう地域から次々とMYRATHのようなハイ・クオリティなバンドが登場するとしたら、英米日のようなメタルが「過去の音楽」になってしまった国のメタル・ファンは今後そういう「これからのエリア」に注目していくことになりそうな予感がします。【87点】





▼本国チュニジアでのライブの様子。結構規模の大きな会場で、ステージにはダンサーの他、ゲスト・ミュージシャンも多数の豪華セット、オーディエンスもかなり熱く盛り上がっており、彼らが母国で相当な人気を誇っていることが感じられます。

さすがにMVに出てくるようなドラム・セットやキーボードまでは用意できないようですが(笑)。


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コメント

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No title

前作に続いて、いや、それにも増してこれは名盤。
現時点での2019私的ベストアルバムランキングでは断トツで1位です。
楽曲の持つスケール感、情緒豊かで力強いヴォーカル、メロディアスでありながらエッジの効いたギター、個々のメンバーのキャラ立ち、そして熱気あふれるパフォーマンス。
プログレッシブでありながら大きな武器になりうるレベルの大衆性を備えた実力は、もはや期待の新星などという枠には収まってないように感じます(大手のearMUSICと契約した辺りからも評価の高さが伺えますね)。

是非、再来日を。またあの熱狂のステージを楽しみたいです。有給使って北海道から駆け付ける価値は十分にあると判断します。

>kimさん

素晴らしい音楽、作品ですよね。

プログレッシブでアラビアンという日本人好みとは言い難い要素が満載なのに、これだけキャッチーに響くというのが驚異的です。

ここに貼ったライブ映像くらいのちゃんとしたセットのライブをぜひ観てみたいですね。

前作が良かっただけに、ある意味心配でした。
結果的には杞憂でしたね。
前作の、ある意味「クドい」感じがなくなったというか、垢抜けたというか、聞きやすくなったと思います。

末永く楽しめそうです。

個人的にはOpera Magna(新作というかEP3部作を1枚にまとめたやつですが)と並んで、今のところメタルの上半期のNo1候補です。アラビアンなアレンジも幅広いメタラーに受け入れられそうなバランスで効果的に使えるセンスが素晴らしい。
ボーナストラックの日本語Ver発音も特に気になる箇所もないですし、結構練習したんだろうなというのが伝わるのも良いです。

No title

ご無沙汰しておりました。
このバンド気になってたんですよねー。プログレ系が少し苦手なんですけど、前作の評判良かったですもんね。前前作は、まぁ可もなく不可もなくという印象だったんですけど…。すみません偉そうですね。

この地域からバンドが出だしたら、追いきれませんよね。うれしい悲鳴かもしれませんけど。

>yoshiさん

洗練されてますよね。
前作は「まぐれ」ではなく彼らの実力であることを示した好盤だと思います。

>YTさん

このコメント欄だけを見ても大好評ですね。

フォーク・メタル・バンドなどにありがちですが、クセの強いメロディを使うと全曲同じに聞こえてしまうことが多いのに、これだけアラビアンなメロディをフィーチュアしてもちゃんと曲の個性が明確なのが素晴らしいですね。

日本語Ver.も、単なるローマ字読みではなくちゃんと発音指導があったんだろうなという感じですね。

Black &greenさん

お久しぶりですね。

洗練という意味では前作でひと皮剥けた感じがありますね。

歌メロのキャッチーさが増しているので、プログレッシヴ・メタルが苦手な人も聴きやすいとは思います。

おっしゃる通り、世界中から良質なメタルバンドが次々と出てきても、一人の人間には追いきれないという現実がありますね(笑)。

今でさえ追いきれていませんし…(苦笑)。