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TURILLI / LIONE RHAPSODY “ZERO GRAVITY” アルバム・レビュー

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アレックス・スタロポリ(Key : RHAPSODY OF FIRE)抜きで行なわれたRHAPSODYデビュー20周年のフェアウェル・ツアーは大成功を収め、メタルを離れてアコースティックな音楽、もしくはQUEENのようなロック・オペラを始めようと思っていたルカ・トゥリッリ(G)に「自分とファビオ・リオーネ(Vo)のコンビこそが、ファンの望む最強タッグである」という理解を促すことになった。

それは少なくともRHAPSODY時代から彼らを支持する私のようなファンにとって完全に事実で、「今更それに気づいたのかよ」という感じなのだが(苦笑)、結果的にルカ・トゥリッリという才能がこういう形でメタルのフィールドに留まってくれたことは喜ばしい。

ルカ・トゥリッリとファビオ・リオーネ以外のメンバーもドミニク・ルアキン(G)、パトリス・ガース(B)、アレックス・ホルツワース(Dr)という元RHAPSODY OF FIREのメンバーなので、どうしても「アレックス・スタロポリのいないRHAPSODY OF FIRE」というか、むしろメンツ的にはこっちが本家で、現RHAPSODY OF FIREの方がパチモンのように映ってしまうが、本作を聴けば音楽的に”RHAPSODY”というブランドに期待されているものを継承しているのがアレックス・スタロポリの現RHAPSODY OF FIREであることが明確にわかる。

本作で展開されている音楽はシンフォニック・プログレッシヴ・パワー・メタル(長い)とでも形容すべきもので、現RHAPSODY OF FIREに比べるとやや複雑で、語弊を恐れずに言えば高尚な印象を与えるものである。

アルバムのタイトルやアートワーク、バンド(ルカいわくプロジェクトではなくバンドだそうです)のロゴデザインなどを見るとちょっと近未来的な印象で、これまでルカ・トゥリッリが制作してきた作品の中で見られたSF趣味が強く押し出された、デジタルな音色がフィーチュアされたサウンドになるのかと予想していたが、パッと聴きそういう印象は薄く、その点は意外。

そういう意味ではファビオと組んでいた時期のRHAPSODY(OF FIRE)のサウンドを再現するものというよりは、LUCA TURILLI'S RHAPSODYのサウンドを発展させたものであり、バンド名がLUCA TURILLI'S RHAPSODYではなくTURILLI / LIONE RHAPSODYなのは単にファビオ・リオーネの顔を立てたというか、マーケティング的な思惑によるものでしかなさそうだ。

シンフォニック・アレンジのクオリティはさすがこのジャンルのオリジネイターと言うべきクオリティで、この手の音楽でこれ以上のレベルに達しているものはほぼ皆無だと思われる。

サウンド・プロダクションの上質さも本作のクオリティに大きく貢献しており、そこはミキシングとマスタリングを手掛けたシモーネ・ムラローニ(DGM)の手腕に帰せられる所が大だろう。

そしてクレジットによると本作のリズム・ギター・パート(つまりバッキングのギター)はルカ・トゥリッリによって書かれてはいるものの、演奏はシモーネ・ムラローニが担当しており(いくつかの曲でギター・ソロも)、もはやルカ・トゥリッリはギタリストとしての自己主張は捨て、プロデューサー/コンポーザーとしてこのプロジェクトのクオリティアップに徹している。

作曲者が演奏者としての自分に重きを置いていないことで、プログレッシヴ・メタルにありがちな楽器のソロ・パートばかりが延々と続いて10分とか20分とかのやたらに長い曲になる、という私の苦手なパターンが回避されているのは、シモーネ・ムラローニというルカ・トゥリッリが自らの代わりに演奏を託すに相応しいと思える人材がいたことの副産物と考えることもでき、そういう意味で本作におけるシモーネ・ムラローニの貢献は大きい(もう一人のギタリストであるドミニク・ルアキンは立場がないが)。

楽曲は複雑ながら随所に耳を引くメロディも存在しているので、退屈することはないどころか聴くたびに新たな発見があり、聴き込めば聴き込むだけ入り込むことができる音楽作品であると言えるだろう。

一方で、これだけ大量の音楽が世の中に供給され、Webサービスを介して低コストで次々と新しい音楽を聴くことができる環境においては、ひとつの作品を何度も聴き込むという向き合い方はなかなか難しく、本作の真価が広く理解されることは難しいような気がしないでもない。

「聴き込みたい」というモチベーションを作るにはやはりそれなりのファースト・インパクトを与えなくてはならず、恐らく本作を手に取るリスナーの大半を占めるであろう「オリジナルRHAPSODYのファン」が期待する「勇壮なシンフォニック・パワー・メタル」のスタイルではない本作がそこまでのモチベーションを喚起できるかというと、なかなかそれは難しいのではないかというのが正直な所。

そういう意味で、今年リリースされたRHAPSODY OF FIREの”THE EIGHTH MOUNTAIN”が彼らの主戦場であるドイツのチャートで過去最高の22位を記録し、本作が51位にとどまったのは、リスナーが”RHAPSODY”というブランド名にどのようなサウンドを求めているかを端的に表す事実だと思う。【85点】







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コメント

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No title

ご無沙汰しております。
DGM好きにとっては、ZERO GRAVITY(曲名)の構成は非常に琴線に触れるものがあります。

往年のリスナーとしては、セールス云々より少しでもルカが歌っているシーンが見られる事の方が何よりも嬉しく思ってしまう有様です。

しかし、なんとかtionというフレーズを何回入れてることやら。

>chigoさん

お久しぶりですね。

DGMがお好きであれば本作の作風は割とすんなり受け容れられそうですね。

なんとかtionが多いのは、(言われるまでもないと思いますが)いわゆる韻を踏むために意図的にやっていることかと思いますが、何か問題ありますでしょうか?(笑)

ルカの作ったメロディをファビオがまた歌うということで楽しみにしてました。

仰る通り、rhapsodyに求められている物とは少し違いますがこれはこれでいいと素直に思いました。ANGRAのOMNIを聴いた時にも思いましたがやはりファビオがスケール感のあるメロディを歌うと説得力が違いますよね。
ただ、疾走系の曲でなくても2曲目のD.N.Aのようなわかりやすい曲が後ろにもあった方がアルバム全体で聴く時にはいいかなとは思いましたが(笑)

No title

モダンだったりデジタルだったりと、私にはピンと来ないものになっているかもしれないと覚悟して聴きましたが、意外とメロディアスな曲が多くホッとしました。
来日公演が控えていることもあって何度も聴き込んでいます。
みんな大好きな初期ラプソとは異なりますが、それは今に始まったことではないですし、ルカの新たな引き出しを見せてくれた納得のいく作品だと思います。

この作品やツアーに対するリアクションを受けて次はどうするのか?そもそも続くのか?ファビオはANGRAに居続けてくれるのか?が気になるところですね。
個人的にはどっちも継続してくれたらなと思ってます。

>ごえたさん

正直、最初に聴いた時には「あー、やっぱりこういうちょっとわかりにくい路線で来たか」と思いつつ、印象は決して悪くなく、何度か聴き込んだら「これはこれでいいんじゃないの」と思えましたね。

おっしゃる通り、こういうスケール感のある音楽にファビオの歌声はうってつけだと思います。

わかりやすい曲は、たしかにもう1曲くらいほしかったですね(笑)。

>pndnskさん

私も先にアートワークを見た時点で「これは期待しているものにはならなそうだ…」と思いましたが、聴いてみたら、少なくともルカが在籍していた時期のRHAPSODY OF FIRE名義のいくつかの作品よりいいな、と思いました。

幸か不幸かさほど成功は収めていないようなので、ファビオが「見切り」をつけない限り、ANGRAの活動と共存できそうな気がしますが…。