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映画『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』感想

フィンランド映画史上最大規模の制作費を投じて作られたという触れ込みのメタル映画、それも私が愛してやまない「北欧メタル」をタイトルに冠しているとあっては観に行かないわけにはいかないと思っていました。

しかも音楽を手掛けているのがSTRATOVARIUSのラウリ・ポラー(B)ですから、それだけでもチェックせずにはいられません(というか、私が知らなかっただけで彼は他にも映画音楽やオーケストラ作品を手掛けているそう。さすがシベリウスの曾孫ですね)。

結論から言います。めっちゃ笑えます。

正直、欧米人の笑いの感覚って日本人とはちょっと違うよな、と思っている私ですが、今回はまあ~笑いましたね。

私は映画館で声出して笑うのってマナー的にどうなの、なんて思ってしまうどちらかというと堅い人間なのですが、もう周りが途中で徐々にこらえきれずに噴き出していき、途中からは「この映画は笑ってもいいんだ」という空気になっていたので、後半はもうドッカンドッカン笑いが起きてました。

ドッカンドッカンと言っても、客入りそのものが5割以下だったので音量としては大したデシベルではないのですが。

公開直後の週末でこの客入りだと上映期間は長くないと思われるので(苦笑)、ご興味ある方はさっさと観に行きましょう。

ネタバレと言われない程度にざっくりとストーリーを話すと、フィンランドの陰キャ揃いのデス・メタル・バンドがノルウェーの大規模メタル・フェスに出ることを目指す話で、それだけ聴くとそんなに面白くなさそうなのですが(?)、ひとつひとつのシーンがもうネタとユーモアの連続。

特にメタルについて詳しくない人でも笑える普遍性もありますが、メタルについて詳しい人ならなおのこと笑えます。ミリタリーネタがぶっ込まれている意味とか、ヴァイキングが出てくる意味とか、北欧のメタルをよく聴いている人でないとわかりませんよね。

メタルを題材にしたコメディ・ムービーというと日本にも『デトロイト・メタル・シティ』という作品があるわけですが、あれはメタルに対する誤解や偏見に立脚していて、メタル・ファンにとっては手放しで楽しめない部分もあったのですが、本作はさすが世界一メタルが盛んな国として知られるフィンランドの映画だけあって、ちゃんとメタルのことをわかっている、そして愛していることが明らかで、純粋に笑うことができる。

オリジナル曲を作ろうしてギタリストが弾くリフが「そりゃPANTERAの"Walk"だろ」「それはCHILDREN OF BODOMの"Every Time I Die"だ」とベーシストに次々突っ込まれ、しまいにはMORS SUBITAの"The Sermon"などというコアな所までたどり着いてしまうあたり、「ああ、この作品は信頼できるな」と思えます(笑)。

ちょっとネタバレですが、途中メンバーの1人が亡くなった時にベーシストが読み上げる弔辞(?)がBLACK SABBATHの"CHILDREN OF THE SEA"の歌詞だったりするあたりもニヤリとさせられます。

ちょっと意外だったのは、人口10万人に対して53.2のメタル・バンドが存在する(ちなみに日本は1.1。つまり密度的には日本の50倍だ)とされるメタル大国であり、最も国際的に成功したアーティストはHIMとNIGHTWISH、2018年に国内で一番売れたアルバムはAMORPHISの"QUEEN OF TIME"という彼の国でも、メタル・ミュージシャン(風のルックスをした人)は地元のヤンキー(?)に「ホ~モ。髪切れよ」と茶化され、ブラック・メタルのコープス・ペイントは「タヌキ野郎」と罵倒されている、ということ。

相対的には世界一のメタル大国であるフィンランドでも、やはり世間一般においてはキワモノでしかないというのは「やっぱりメタルはそういう存在でしかありえない」ということを実感させられる光景でした。

デス・メタル・バンドのメンバーである主人公たちがそれぞれ介護の仕事や図書館の司書やトナカイの食肉工場(実家)勤務など地味な仕事をしている辺りはリアリティがあるし(前述の通り、2018年フィンランドで一番売れたアルバムはAMORPHISのアルバムなわけですが、それでも1万枚程度の売上というから、マイナーなバンドが音楽で飯が食えるはずもない)、主人公の移動手段もバイクではなく自転車、女の子をデートに誘うときも「飲みに行かない?」ではなく「コーヒーでも一緒にどう?」というあたりも、当地でメタルをやっているのは意外とこういう素朴な人たちなのかもなあ、という気分にさせられます。

主人公たちのバンドが標榜する「終末シンフォニック・トナカイ粉砕・反キリスト・戦争推進メタル」というジャンルも、一番意味不明な「トナカイ粉砕」の意味がわかるシーンは場内爆笑でした(※前述の通り総音量は小さめ)。

しかし、面白いは面白いのですが、これがフィンランド映画史上最大規模の費用が投じられていると聞くと、これまでどんだけ低予算な映画ばかりだったのか、という気にさせられます(笑)。

たしかにアキ・カウリスマキの映画とか地味だったもんなあ…。まあ、人口が500万人くらいしかいないという時点で、かけられる予算もそれに見合ったものにしかならないというのはわかるのですが。

ちなみにパンフレットも「お勧めフィンランド・メタル20選」とか、メタル・ファンであれば楽しめるコンテンツが色々と載っているので、劇場に行かれた方はお買い求めを。私は買いませんでしたが、Tシャツもありました。



『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』公式サイト

映画『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』 応援コメント大量到着&シネマート新宿“デスボイス”割引実施決定(amass)

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コメント

非公開コメント

No title

見に行きました。

神戸の映画館では客が7人しかいなかったので笑いの量的には何とも言えませんが、後半の畳みかけは凄かったですね。
東京では立ち見も出ているみたいですね。

先にこのブログを見ていたので、彼が出てきた段階で誰が亡くなるかはモロバレでしたが、それでもスリリングでした。

見てよかったと思いました。

>名無しのメタラーさん

7人…(苦笑)。もうちょっと観られてもいいくらいには面白いと思うんですけどね。

ネタバレしてしまってすみません。ただ、初見の私でも彼がドラムをプレイし始めた時点できっとコイツがプレイすることになるんだろうな、と見当がつきました(笑)。

そしておっしゃる通り、後半の国境突破辺りからの畳みかけは凄かったですね。メタル映画屈指の(随一かも?)傑作だと思います。