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ALCATRAZZ “BORN INNOCENT” アルバム・レビュー

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今となっては、かのイングヴェイ・マルムスティーンを世に送り出したバンドとして知られるALCATRAZZの、34年ぶりとなる通算4作目のスタジオ・アルバム。

ALCATRAZZ名義の活動自体は2006年以降、ライブ活動に限って行なっており、2010年と2013年には来日公演も行なっていたが、80年代当時のオリジナル・メンバーはグラハム・ボネット(Vo)以外には一人もおらず、実質的にはグラハム・ボネットのソロ活動的なニュアンスが強かった。

しかし2017年に、既にジミー・ヴォルドー(Key)が参加していたGRAHAM BONNET BANDとのカップリングという形で行なわれた来日公演にはゲイリー・シェア(B)も参加。

さらにイングヴェイ・フォロワーとして知られるジョー・スタンプ(G)を加えたラインナップで、ここ日本で人気の高いデビュー・アルバム”NO PAROLE FROM ROCK ‘N’ ROLL”(1983)、そしてグラハムのキャリアにおける代表作と言えるであろうRAINBOWの”DOWN TO EARTH”(1979)の完全再現を含む企画公演を行なったことが、本作発表の大きな布石となった。

ジミーとゲイリーの「復帰」によってある程度の「大義名分」ができたこのタイミングでALCATRAZZ名義のアルバムを制作したというのは、恐らくは日本、さらに言うならリリース元であるワードレコーズのマーケティング的な思惑が大きく影響していることは確実だろう。

何しろALCATRAZZは全米チャートでは100位内にも入っておらず、グラハムがそれ以前に参加していたRAINBOWのアルバムは全英6位、M.S.G.のアルバムは全英19位だったにもかかわらず、全英チャートにはランクインすらしていないなど、商業的には全く成果を出しておらず、再結成アルバムを出して話題になることが期待できるのはここ日本だけだからである。

「ワードレコーズにおけるレーベル・メイト」という以外に接点の見えない若井望(G : DESTINIA, METAL SOULS)や、ドン・ヴァン・スタヴァン(B : RIOT)の参加などもその印象を強くしている。

しかし、裏事情はどうあれ、結果としていいアルバムが生まれるのであれば、リスナーにとってはどうでもいい。

ジョー・スタンプがギタリストということで、イングヴェイ路線、すなわち”NO PAROLE FROM ROCK ‘N’ ROLL”(1983)になることは期待、あるいは予想されており、そのことはメンバーたちもインタビューで肯定していた。

そして実際聴いてみると、大筋でそういうネオクラシカル路線のHR/HM作品であることは間違いない。

ただ、これは一種のサービス精神なのだと思うのだが、クリス・インペリテリやスティーヴ・ヴァイ、ボブ・キューリック、ダリオ・モロといった、過去にグラハムと活動を共にしたことがあるギタリストがこぞってゲスト参加し、ある意味グラハム・ボネットのキャリアの集大成的な事態になっていることが、結果として作品を散漫にしている感が否めない。

まあ、クリス・インペリテリはまだ方向性が一致しているからいいのだが、アルバムの1曲目、しかもタイトル曲で、メイン・ギタリストであるはずのジョー・スタンプではなくクリス・インペリテリがフィーチュアされているというのはいかがなものか(苦笑)。

ジョー・スタンプだってそれなりの矜持はあるだろうに、気を悪くしなかったのだろうか。

そのジョー・スタンプは弾きまくって結構頑張っていると思うのだが、やはり全体的に小粒というか、オーラ不足は否めず、これまでグラハム・ボネットが錚々たるギタリストと組んで制作したアルバムとはちょっと比較できないかなと…。

楽曲も、アルバム前半は悪くないのだが、後半になってだんだんテンションが下がってくることは否めない。というか15曲は明らかに過剰なので、せめて10~12曲に絞っていればまた少し印象が変わったかもしれない。

そして、あえて余計なことを言うなら、ぶっちゃけGRAHAM BONNET BAND名義で出したアルバムの方が楽曲のクオリティは高かったように思う。

グラハム・ボネットの歌唱は、衰えがないと言えばさすがに嘘になるが、70歳を超えてこれくらいパワフルに歌えていれば、少なくともこうしてスタジオ音源で聴く分には何の問題もない。

そのグラハム・ボネットが作曲した#15 “For Tony”は5年前に亡くなったというグラハムの兄のことを歌った曲で、HR/HM色皆無な楽曲であることは、本人の音楽的嗜好とは無関係にHR/HMを歌わされ続けたグラハムの、そして恐らくグラハム本人が望んで制作されたわけではないであろうこの「復活アルバム」における一種の自己主張、あるいは「抵抗」なのかもしれない。【81点】








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コメント

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No title

名作かどうかはさておいて、素晴らしいと思います今作。少なくとも買って損するアレじゃないかと。個人的にはFor Tonyが一番好きで、彼の適性や好みはこっちにあったのでしょうし、彼も承知でしょう。HMも嫌いじゃないと思う(と思いたい)。

ForcefieldⅢ,ⅣやLINE UP(Night Gameは彼の最高傑作)は一般的なロックで彼の歌が聞きたい人はチェック。

作曲を得手としてないからカバーも多いし、ギタリスト次第の作品になりがちな人ですが、それでもサマになるからそれでいいんです。

>名無しのメタラーさん

グラハムのファンを自認するような人にとっては本作は充実したアルバムとして楽しめるでしょうね。

さほど彼自身に対して思い入れのない私でも楽しめる作品ですが。

"Night Games"くらいのポップさでずっとやれていればグラハムとしてもハッピーだったのではないかと思いますが…。

ギタリスト🎸

オドレはクリス・インペリテリが嫌いなんか?

ワシャ、クリス・インペリテリもスティーヴ・ヴァイも好きや。二人で弾いてほしい。

だけんグラハム・ボネットいちばん最高じゃけえの。少女やった時に親父が聞かせてくれたんじゃ。

>メタル嬢さん

クリス・インペリテリは好きですよ(スティーヴ・ヴァイも)。ただ、本作の主役は正式メンバーであるジョー・スタンプであるべきなのではと思っただけで。

そしていいお父さんをお持ちですね(笑)。