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映画『ロード・オブ・カオス』感想

ブラック・メタル黎明期の出来事を、MEYHEMのギタリストであり、BURZUMのカウント・グリシュナック(ヴァーグ・ヴァイカーネス)に刺殺されたユーロニモスを主人公に描いた映画、『ロード・オブ・カオス』を観てきました。

原作は『ブラック・メタルの血塗られた歴史』という本で、これも読んだことがありましたが、関係者インタビュー集のような本で、ほとんど頭に残っていなかったというのが実際のところ。

ただ、このユーロニモス殺害に至るエピソードというのは『BURRN!』誌でも掲載されたことがあったし、この映画の字幕監修をしている川島未来氏がやっていたSIGHのホームページ(当時)などにも情報が記載されており、事実としてのアウトラインは把握していた。

そして本作のストーリーはほぼそのアウトラインに沿って展開しており、登場人物の性格や関係性、細かいエピソードなどについては脚色されているにせよ、「きっとこんな感じだったんだろうな」と納得できるものになっている。

基本的にはイキりたいだけの若者だったユーロニモスが、デッドやヴァーグ(ヴァイカーネス)のような本当にヤバい奴が寄ってきてしまったことで破滅する物語で、教会を燃やすのも、殺人事件も、ひと昔前の不良少年の「誰が一番ワルか」を競うようなメンタリティと変わらない。

どれだけイキろうと、結局警察に見つかったら終わり、という時点で大した存在になれていないということを認識できないのが若さというものなのでしょうか。

そういうリアルな面が描かれていることで、ブラック・メタルを神聖視(悪魔崇拝を打ち出す音楽に対してこの言葉を使うのも妙な話だが)し、ユーロニモスやヴァーグを本気で崇拝しているようなコアな筋からは批判もあるようだが、そういう新興宗教じみた所も含めて本作はある種の真実を浮かび上がらせている。

ただ、個人的にはそのリアルさは正視に耐えないもので、R-18なのも納得。特にデッドの自傷シーンの生々しさは思わず目を閉じずにはいられませんでした。

このサイト/ブログを長年お読みいただいている方であればご存知の通り、私はブラック・メタルを愛好する人間ではなく、90年代にはちょっと面白いと思って半ば怖いもの見たさでBURZUMやEMPEROR、DARKTHRONE、MURDUKなどを聴いてみたりもしましたが(周囲に好きな友人がいたことが大きいですが)、結局魅力を感じたのはCRADLE OF FILTHやDIMMU BORGIRなど、シンフォ・アレンジによってメロディ的なフックが備わっていたバンドくらいでした。

そんな私でも、この映画は人間社会の中で、特に閉じられた狭い集団の中でどのような狂気が起きうるかを描く、ある意味普遍的な内容として考えさせられるものがありました。ここまで過激な挙には及ばないにせよ、インナー(ブラック)・サークルは様々な組織、企業、学校の中に存在していると思います。

なお、個人的に本作にまつわる情報を集めて一番驚いたというか感銘を受けたのは、この映画の監督であるジョナス・アカーランドが、元々は元祖ブラック・メタルとされるBATHORYのメンバーで、その後映像監督に転身し、マドンナやポール・マッカートニー、ローリング・ストーンズやレディー・ガガ、メタリカなどのMVを手掛ける売れっ子監督になったという事実。この界隈の出世頭ですね。



▼本作の撮影中に、本作のキャストやセットを使って撮影されたMETALLICA "Manunkind"のMV


lordsofchaos.jpg

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コメント

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事件から25年経って

映画未視聴ではありますが原作本を読んでいます。

個人的にはこの作品が映画化された事自体が驚きでしたが、ましてや日本で公開されるとは思ってもいなかったので、映画としては成功したんだな、という認識です。

EMPEROR初来日時の川島未来氏のインタビューで、イーサーンがLORD OF CHAOSはフィクションだというような発言をしていたので、やはり結構な部分が脚色されているのは間違いなさそうですが、それだけエンターテイメント性に溢れた題材だったのでしょう。

私の記憶が間違っているかも知れないのですが、事件当時 B!はこのムーブメントには殆どノータッチだったと思うのですが、ブラックメタルについては、今は亡きEAT MAGAZINEで積極的に取り上げられていて、私も事件から大分経ってEATを読んで事件の全容を知って衝撃を受けた記憶があります。

事件当時はサタニストとかネオナチの犯行とか言われていましたが、結局は普通の若者達の衝動的犯行がエスカレートしていった、という認識に直ぐに変わって行ったと思います。

事件当事者としてはもう25年以上経っているものを今更蒸し返されたくはないのでしょうが、こうして映画化される程に奇怪な事件でしたし、グランジに支配された90年代においての、数少ないメタルムーブメントの一つだったと思うので、こういう形でも取り上げられるのは個人的には嬉しいです。

余裕が出来たら見に行きたいですね。

>Ario✠cH さん

ブラック・メタルの人気が高いとは言い難い(もはやブラック・メタルに限りませんが)日本で公開されたのはたしかに驚きですね。

当然、現実の人柄や人間関係をそのまま描いたら映画的なエンターテインメントにはならないので、当事者が観たらフィクションなのでしょうが、デッドの自殺や、ヘルヴェテの開店、教会の放火やユーロニモスの刺殺などといった事件があった、ということ自体は事実に基づいていると言えるのではないでしょうか。

『BURRN!』誌はリアルタイムではほとんど扱っていませんでしたね。数年経って、欧州でブラック・メタルがそれなりの地位を築いてから記事にしていたと思います。

なお、客足は正直イマイチだったので、観に行くならお早めの方がよろしいかと思います(苦笑)。